説明

ジカーボネート前駆体、その製造方法およびその使用

本発明は、下記の式(I)


式中、
− Rは、Hまたはアルキル基であり、
− Aは、二価の直鎖もしくは分岐したアルキレン基であり、そして
− Aは、−O−A−O−基であり、Aは、二価の直鎖もしくは分岐したアルキレン基である、
の化合物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の主題は、ジカーボネート前駆体およびその製造方法に関する。更なる主題は、ポリウレタンの製造におけるその使用である。
【背景技術】
【0002】
直鎖状ポリウレタンの合成は、ジオールとジイソシアネートの間の反応を伴う。イソシアネートは、吸い込んだ場合にそれ自体が高度に毒性であるホスゲンから得られる毒性の化合物であり、酩酊を起こす。用いられる工業的プロセスは、アミンの、過剰のホスゲンとの反応であり、イソシアネートおよび塩化水素とホスゲンの混合物を形成する。
【0003】
従って、ポリウレタンの合成のイソシアネートなしの代替案への探求が、大きな課題である。
【0004】
現在では、トリグリセリドのカーボネート化が知られている。しかしながら、トリグリセリドのカーボネート化は、明確に定義されていない数の環式カーボネート基を有する合成等価体(シントン)得ることに導く。従って、これらの前駆体の官能度は、制御されず、そして2よりも大きい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、制御された官能度を有する合成等価体(シントン)を提供することである。
【0006】
本発明の目的は、正確に2の官能度を有する合成等価体(シントン)を提供することである。
【0007】
本発明の更なる目的は、正確に2の制御された官能度を有する合成等価体(シントン)から、制御された構造および性質を有する直鎖状ポリマーの合成である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
従って、本発明は下記の式(I)の化合物に関する。
【0009】
【化1】

【0010】
式中、
− Rは、Hまたは、1〜20個の炭素原子を含む直鎖もしくは分岐したアルキル基であり、
− Aは、2〜14個の炭素原子を含む、二価の直鎖もしくは分岐したアルキレン基であり、
− Aは、−O−A−O−基であり、Aは、1〜20個の炭素原子、好ましくは1〜10個の炭素原子を含む、二価の直鎖もしくは分岐したアルキレン基であり、所望により、1個もしくは2個以上の置換基を含むか、またはフェニレン基および式−(CHOCH−の基からなる群から特に選ばれた1個もしくは2個以上の基で中断されており、nは、1〜100、好ましくは6〜50の範囲の整数を表し、そして好ましくは6、13または45であるか、あるいはAは、式−(OCHCH−O−の基であって、nは、上記で規定したとおりである。
【0011】
例えば、上記の基Aは、式−CH−A−CH−を有する基であることができ、Aは、式−(CHOCH−の基であり、nは、1〜100の範囲の整数を表し、好ましくは6、13もしくは45であるか、あるいはフェニレン基である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
好ましい態様によれば、本発明の化合物は、下記の式(I−1)に合致する。
【0013】
【化2】

【0014】
およびAは、式(I)中に規定したとおりである。
【0015】
従って、これらの化合物は、RがHであるところの、上記で規定した式(I)の化合物である。
【0016】
本発明の好ましい化合物の他の種類は、Rが、1〜20個の炭素原子、そして好ましくは1〜12個の炭素原子を含む、直鎖または分岐したアルキル基であるところの、上記で規定した式(I)の化合物で形成される。
【0017】
具体的な態様によれば、上記の式(I)において、Aは、7個の炭素原子を含む直鎖のアルキレン基である。
【0018】
他の具体的な態様によれば、上記の式(I)において、Aは、3、4、5または6個の炭素原子を含む直鎖のアルキレン基である。
【0019】
本発明による好ましい化合物の他の種類は、下記に規定する式(I−2)の化合物で形成される。
【0020】
【化3】

【0021】
は、上記で規定したとおりである。
【0022】
本発明の好ましい化合物の他の種類は、下記に規定する式(I−3)の化合物で形成される。
【0023】
【化4】

【0024】
は、上記で規定したとおりである。
【0025】
また、本発明は、下記の式(II)の化合物のカーボネート化工程を含んだ、上記で規定した式(I)の化合物の調製方法に関する。
【0026】
【化5】

【0027】
、AおよびRは、式(I)で規定したとおりであり、そしてRは、好ましくはHである。
【0028】
好ましくは、このカーボネート化工程は、いずれかの形態、例えば液体の、気体の、または超臨界の形態の(圧力に応じて)CO、ならびにテトラブチルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシドおよび四塩化スズ(SnCl:5HO)の混合物の中から選ばれた試薬の存在下で行われる。超臨界COおよびテトラブチルアンモニウムブロミドの存在下で行われることが好ましい。
【0029】
有利な態様によれば、上記のカーボネート化工程は、80℃〜150℃の範囲、そして好ましくは120℃の温度で行われる。この温度が80℃より低ければ、反応速度は、ずっと遅く、そして活性化エネルギーは不十分であり、そしてこの温度が、150℃よりも高ければ、触媒の劣化が観察される。
【0030】
好ましくは、上記のカーボネート化工程では、二酸化炭素は、100バール〜200バールの範囲の圧力で加えられる。
【0031】
具体的な有利な態様によれば、上記で規定した式(II)の化合物は、下記の式(III)の化合物のエポキシ化によって調製される。
【0032】
【化6】

【0033】
、AおよびRは、式(I)で規定したとおりである。
【0034】
好ましい態様によれば、本発明の方法の工程b)は、過酸の存在の下で行われ、この工程は、特に真空下で、200℃で、少なくとも3分間行われる。
【0035】
過酸の中では、特に、メタクロロ過安息香酸(m−CPBA)およびモノペルオキシフタル酸マグネシウム六水和物過酸(MMPP)を挙げることができる。
【0036】
この方法の特異性は、予め形成された過酸の使用にある。
【0037】
具体的な有利な態様によれば、上記で規定した式(III)の化合物は、下記の式(IV)化合物の下記の式(V)のジオールとのエステル交換によって調製される。
【0038】
【化7】

【0039】
H−A−H (V)
【0040】
、AおよびAは、上記の式(I)で規定したとおりであり、そして
は、1〜10個、好ましくは1〜6個の炭素原子を含む直鎖もしくは分岐したアルキル基である。
【0041】
化合物(III)を調製するための本発明の方法は、不均一系触媒(酸化マグネシウムまたは他の不均一系触媒)の下で行われ、そして好ましくは溶媒の存在なし(クリーン合成)で行われるエステル交換工程からなっている。
【0042】
好ましい態様によれば、このエステル交換工程は、酸化マグネシウム、酢酸亜鉛およびナトリウムメタノラートから形成される群から選ばれる触媒の存在下で行われる。
【0043】
好ましくは、この工程は、150〜200℃の範囲の温度で、窒素流の下で行われる。この温度範囲は、用いられる触媒の種類に関連して選択される。例えば、この温度が200℃よりも高ければ、触媒が劣化する。
【0044】
好ましい態様によれば、この工程は、溶媒なしで行われ、それは環境上の条件では高度に有利である。
【0045】
従って、本発明は上記で規定した式(I)の化合物を調製するための、下記の工程を含んだ方法に関する。
【0046】
a)下記の式(IV)の化合物の下記の式(V)のジオールとのエステル交換工程
【0047】
【化8】

【0048】
H−A−H (V)
【0049】
、AおよびAは、式(I)で規定したとおりであり、そして
は1〜10個、好ましくは1〜6個の炭素原子を含む直鎖もしくは分岐したアルキル基であり、下記の式(III)の化合物が得られる。
【0050】
【化9】

【0051】
、AおよびAは、式(I)で規定したとおりである。
【0052】
b)下記の式(II)の化合物を得るための上記の式(III)の化合物のエポキシ化工程
【0053】
【化10】

【0054】
、AおよびAは、式(I)で規定したとおりである。
【0055】
c)上記で規定した式(I)の化合物を得るための、上記の式(II)の化合物のカーボネート化工程、ならびに
【0056】
d)上記で規定した式(I)の化合物を回収する工程
【0057】
また、本発明の上記の方法は、工程a)と工程b)との間に中間の工程を含むことができ、それは、特にはシリカカラム上で、または高真空下での蒸留によって、式(III)の化合物を精製することからなっている。
【0058】
また、本発明の上記の方法は、工程b)と工程c)の間に中間の工程を含むことができ、それは、特にはシリカカラム上で、式(II)の化合物を精製することからなっている。
【0059】
<本発明の方法の工程の詳細な説明>
1.式(IV)の化合物のエステル交換反応
本発明の方法では、このエステル交換は好ましくは、オレインヒマワリ油の軽質アルコール(特にはメタノールまたはエタノールなど)のエステル(式(IV)の化合物)とジオール(式(V)の化合物)から開始して、特には酸化マグネシウムの触媒としての存在の下で、行われる。モノマーの、そしてそれによって結果として得られるポリマーの性質を調製するために異なるジオールで、種々の合成が行われる。従って、エステル交換は、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、エチレンポリオキシドおよび1,4−ベンゼンジメタノールから行われた。
【0060】
この反応は、150℃および200℃で、窒素流の下で起こる。この反応の進行は、種々の分析、そして特にはNMR(メチル基シングレットの消失)によって監視される。
【0061】
より少量のジオールが加えられる(例えば、式(IV)の化合物1モル当たりに0.5モル)。
【0062】
用いられる合成経路は、「クリーン」であり、何故ならそれは不均一系触媒(酸化マグネシウム)によっており、そしてこの合成は溶媒なしで起こるためである。工業的な精製は、高真空下の蒸留を用いることができる。
【0063】
2.エステル交換後に得られた化合物のエポキシ化
その場で形成された過酸を用いた、連鎖の末端の第1級アルコールを有する脂肪のエポキシ化は、これまで全く開示されていなかったし、そしてこれまでに開示されたのと同じ条件下では行うことはできない。このエポキシ化反応は、カルボン酸を形成するオレインヒマワリモノエステルの末端アルコールの二次酸化反応によって有効に妨げられる。試薬が、この二次反応によって消費されるので、エポキシ化は起こらない。
【0064】
本発明の方法において用いられる、式(III)の化合物のエポキシ化のためのプロセスでは、既に調製され、そして商業的に入手可能な過酸、すなわち、メタクロロ過安息香酸(m−CPBA)、が使用され、そして従って潜在的に毒性の金属の使用を回避される。
【0065】
本発明では、エポキシ化は、過酸(mCPBA、MMPPなど)で行われる。この反応は、NMRによって監視することができ、5.2ppmの二重結合のプロトンのダブルレットの消失と2.8ppmの広幅のピークの発生が、この反応の進行を監視することを可能にする。二重結合の完全な変換は、3時間後に得られる。過剰のm−CPBAは、硫酸ナトリウムの飽和溶液で、対応するカルボン酸に還元される。有機相は、ジクロロメタンで抽出され、次いで残留するカルボン酸は、重炭酸ナトリウム溶液での2回の洗浄によってナトリウムクロロベンゾアート(水に可溶)へと転換される。
【0066】
また、本発明は、上記の式(I)の化合物の、ポリウレタンの調製のための使用に関する。
【0067】
エポキシ化植物油および二酸化炭素からのポリウレタンの合成は、毒性の化合物であるイソシアネートの使用の必要性を克服する。含まれる反応は、植物油のエポキシド基とCOとの反応を通して環式カーボネー基を得ることである。重合の間に、このカーボネートは、次いで水素ドナー、例えばアミンと反応してウレタン基を形成する。
【0068】
また、本発明は、式(I)の化合物と水素ドナーとの反応によって得られるポリウレタンに関する。
【0069】
また、本発明は、上記で規定され、RがHであるところの、式(II)の化合物の、ポリエポキシド樹脂の調製のための使用に関する。
【0070】
また、本発明は、上記で規定し、RがHであるところの、式(II)の化合物の水素ドナーとの反応によって得られるポリエポキシド樹脂に関する。
【実施例】
【0071】
<実験の部>
例1:内部に環式カーボネート基を備えたジカーボネートの調製
これらの化合物は、以下の反応スキームに従って調製した。
【0072】
【化11】

【0073】
化合物4’は、上記で規定した式(I−3)の化合物に相当する。この化合物では、Aは下記の基、−OCO−、−OCO−、−OC10O−、−OC12O−、−OHC−(CHOCH−CHO−、−OHC−(CHOCH13−CHO−、−OHC−(CHOCH45−CHO−または−OHC−C−CHO−の中から選ばれた基であることができる。
【0074】
工程1:化合物2’の合成
オレインメチルエステル(1)とジオールH−A−H(Aは上記で規定したとおり)のエステル交換反応を行った。
【0075】
オレインメチルエステル(1)を、ディーンシュタークトラップを備え、そして冷却器を上に付けた250mLフラスコ中に容れた。反応は、真空中で、ジエステル(2’)の形成を促進するように、0.5ジオール当量の存在の下で開始し、1質量%の酸化マグネシウムで触媒された。媒質の温度を、160℃に上げ、そして生成したメタノールは、ディーンシュタークトラップによって連続的に除去した。7時間の後に、温度を30分間180℃に上げ、残留するオレインメチルエステル(1)を除去した。収率は、95%であった。
【0076】
上記の手順は、エステル交換に用いられたジオールの種類とは関係なく同じであった(すなわち、Aの性質とは関係なく)。用いられた種々のジオールは、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、エチレンポリオキシド(300g/モル、600g/モル、2000g/モル)および1,4−ベンゼンジメタノールであった。
【0077】
1,4−ベンゼンジメタノールでのエステル交換は、このジオールの昇華を避けるために、140℃で行われたことに注意しなければならない。
【0078】
工程2:化合物3’の合成
エステル交換されたオレインメチルエステル(2’)を、100mLのメタクロロ過安息香酸(m−CPBA(二重結合あたりに1.2当量))中に容れた。この混合物を、撹拌下に、周囲温度に置いた。二重結合の完全な転換が、3時間後に得られた。過剰のm−CPBAを、硫酸ナトリウムの飽和溶液(100mL)で相当するカルボン酸に還元した。有機相をジクロロメタンで抽出し、次いで残留するカルボン酸を、ナトリウムジカーボネート(2×100mL)の飽和溶液で2回洗浄することによって、ナトリウムクロロベンゾアート(水に可溶)に転換させた。収率は、80%であった。
【0079】
工程:化合物4’の合成
カーボネート化は、化合物(3’)および1質量%のテトラブチルアンモニウムブロミド(TBABr)の存在下で、高圧反応器中で行われ、この反応器を、120℃の温度に加熱し、次いで二酸化炭素を、100バールの圧力に到達するまで加えた。この反応は、エポキシドが完全に転換したら止めた。収率は、90%であった。
【0080】
例2:末端に環式カーボネート基を備えたジカーボネートの調製
これらの化合物は、下記の反応スキームに従って調製した。
【0081】
【化12】

【0082】
化合物6は、上記で規定した式(I−2)の化合物に相当する。この化合物では、Aは、以下の基、−OCO−、−OCO−、−OC10O−、−OC12O−、−OHC−(CHOCH−CHO−、−OHC−(CHOCH13−CHO−、−OHC−(CHOCH45−CHO−または−OHC−C−CHO−の中から選ばれた基であることができる。
【0083】
工程1:化合物2および3の合成
10gの乾燥したオレインメチルエステル(3.4×10−2モル)(1)を、250mLフラスコ中で、20mLの蒸留したトルエン中に溶解させた。250mL(2.5質量%)のHoveyda触媒を加え、そして1バールのエチレン。この媒質を、周囲温度で電磁式撹拌下に置いた。反応は6時間後に止めた。
【0084】
工程2:化合物2の抽出
平衡状態で、この媒質は、46%の出発のオレインメチルエステル(1)、26%のデセン(3)および26%の10−ウンデセン酸メチル(2)から構成されていた。後者は、真空蒸留によって抽出され、100℃の第1留分はデセン(3)を含み、10−ウンデセン酸メチル(2)は、温度が180℃に達したら回収された。残渣は、オレインメチルエステル(1)で構成されていた。工程1+2の合計の収率は、25%であった。
【0085】
工程3:化合物4の合成
10−ウンデセン酸メチル(2)のエステル交換反応は、H−A−H(Aは上記で規定したとおりである)を用いて行われた。
【0086】
2gの10−ウンデセン酸メチル(1)を、ディーンシュタークトラップを備え、そして冷却器を上に付けた50mLフラスコ中に容れた。反応は、真空中で、ジエステルの形成を促進するように、0.5ジオール当量の存在の下で開始し、これは1質量%の酸化マグネシウムで触媒された。媒質の温度を、160℃に上げ、生成されたメタノールは、ディーンシュタークトラップによって連続的に除去した。7時間後に、温度を180℃に30分間上昇させて、残留する10−ウンデセン酸メチルを除去した。工程3の収率は、90%であった。
【0087】
上記の手順は、エステル交換に用いたジオールに関係なく同じであった(すなわち、Aの性質に関係なく)。用いた種々のジオールは、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、エチレンポリオキシド(300g/モル、600g/モルおよび2000g/モル)および1,4−ベンゼンジメタノールであった。
【0088】
1,4−ベンゼンジメタノールでのエステル交換は、ジオールの昇華を避けるために140℃で行ったことに注意しなければならない。
【0089】
工程4:化合物5の合成
最後の工程は、エステル交換によって得られた生成物の二重結合のエポキシ化からなっている。エステル交換された10−ウンデセン酸メチル(4)を、50mLフラスコ中で、20mLのジクロロメタン中に溶解させた。メタクロロ過安息香酸(m−CPBA)を加えた(二重結合当たりに1.2当量)。この混合物を、周囲温度で、撹拌下に置いた。二重結合の完全な転換は、3時間後に得られた。過剰のm−CPBAは、硫酸ナトリウムの飽和溶液(30mL)で相当するカルボン酸に還元した。有機相をジクロロメタンで抽出し、次いで残留するカルボン酸を、重炭酸ナトリウムの飽和溶液(2×40mL)で2回洗浄することによって、ナトリウムクロロベンゾアート(水に可溶)に転換した。工程4の収率は、85%であった。
【0090】
ビスエポキシド合成等価体(シントン)および種々のジアミンの間の重縮合は、ポリエポキシド材料をもたらした。
【0091】
工程5:化合物6の合成
カーボネート化は、化合物(5)および1質量%のテトラブチルアンモニウムブロミド(TBABr)の存在下で、高圧反応器中で開始する。この反応器の温度を、120℃に上昇させ、次いで二酸化炭素を、100バールの圧力に達するまで加えた。この反応は、エポキシドが完全に転換すると停止した。収率は、90%であった。
【0092】
例3:種々のジカーボネート前駆体(末端および中間)からのポリマーの合成
1gのジカーボネート前駆体(4’)または(6)を、50mLフラスコ中で、ジアミン(例えば、エチレンジアミン(EDA)、イソホロンジアミン(IPDA),ヘキサメチレンジアミン(HMDA)、アミノエチル−ピペラジン(AEP)、ジエチレントリアミン)に加えた。アミン基の数は、化合物(4’)または(6)のカーボネート基の数に対して化学量的比率で加えた。この混合物を、70℃で電磁撹拌下に置いた。カーボネート基の消失を、赤外分析によって監視した(1803cm−1のバンドの消失)。反応は、8時間後に停止した。ポリマーの分子量は、サイズ排除クロマトグラフィーによって得、そしてそのガラス転移温度を、示差走査熱量測定によって測定した。
【0093】
<A=−OC10O−の例>
1gの(4’)を、0.079gのEDAの存在下で50mLフラスコに加えた。この混合物を、70℃で電磁撹拌下に置いた。反応は、8時間後に停止した。ポリマーの分子量を、サイズ排除クロマトグラフィーによって得、そしてそのガラス転移温度を、示差走査熱量測定によって測定した。
【0094】
同じ手順を、A=PEG300および−CH−C−CH−(式(I)参照)に適用した。
【0095】
下記の表に、結果を与えた(ガラス転移温度および分子量)。
【0096】
【表1】

【0097】
例4:ビスエポキシド前駆体(R=Hである式(II)の化合物)からのポリエポキシド樹脂の合成
ビスエポキシド合成等価体(シントン)および種々のジアミンの間の重縮合が、ポリエポキシド材料をもたらした。
【0098】
<ポリエポキシド樹脂の例>
0.5gの化合物(5)(1.06e−3モル)を、ジエチレントリアミン(またはエチレンジアミン(EDA)、ヘキサメチルジアミン(HMDA)、イソホロンジアミン(IPDA)およびアミノエチルピペラジン(AEP))と共にアルミニウム皿中に置いた。アミン基の数は、化合物(5)のエポキシド基の数に対して、化学量論的比率で加えた。次に、この混合物を矩形(長さ1cm、厚さおよび幅0.5cm)の型中に置き、そして90℃のオーブン中に24時間置いた。合成された樹脂のガラス転移温度を、示差走査熱量測定によって測定した。
【0099】
下記の表に、得られた結果を与えた(化合物(5)および種々のジ−もしくはトリアミンの間の重縮合から誘導されたエポキシ樹脂のガラス転移温度)。
【0100】
【表2】

【0101】
<ビスフェノールAジグリシジルエーテル(BADGE)と化合物(5)との混合物から形成されたエポキシ樹脂の例(A=−OC10O−である)>
【0102】
0.48gのBADGE(MBADGE=340.4g/モル)を、アルミニウム皿中で、0.12gの化合物(5)(R=C10)と混合した。0.068gのDETAを加えた。次いで、この混合物を矩形の型(長さ1cm、厚さおよび幅0.5cm)中に容れ、そして90℃のオーブン中に24時間置いた。
【0103】
同じ手順を、BADGEの比率を変えて適用した。
【0104】
合成された樹脂のガラス転移温度を、示差走査熱量測定によって測定した。
【0105】
得られた結果を下記に与えた。
【0106】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の式(I)
【化1】

式中、
− Rは、Hまたは1〜20個の炭素原子を含む直鎖もしくは分岐したアルキル基であり、
− Aは、2〜14個の炭素原子を含む、二価の直鎖もしくは分岐したアルキレン基であり、そして
− Aは、−O−A−O−基であり、Aは、1〜20個の炭素原子、好ましくは1〜10個の炭素原子を含む、二価の直鎖もしくは分岐したアルキレン基であり、所望により、1個もしくは2個以上の置換基を含むか、またはフェニレン基および式−(CHOCH−の基からなる群から特に選ばれた1個もしくは2個以上の基で中断されており、nは、1〜100、好ましくは6〜50の範囲の整数を表し、そして好ましくは6、13または45であるか、あるいはAは、式−(OCHCH−O−の基であって、nは、上記で規定したとおりである、
の化合物。
【請求項2】
が、Hである、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
が、1〜20個の炭素原子、好ましくは1〜12個の炭素原子を含む直鎖もしくは分岐したアルキル基である、請求項1記載の化合物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項記載の前記式(I)の化合物の調製方法であって、下記の式(II)
【化2】

式中、A、AおよびRは、請求項1で規定したとおりである、
の化合物のカーボネート化工程を含む、方法。
【請求項5】
請求項4記載の前記式(I)の化合物の調製方法であって、カーボネート化工程が、好ましくは100バール〜200バールの範囲の圧力での、超臨界COおよびテトラブチルアンモニウムブロミドの存在下で行なわれ、該工程が好ましくは80℃〜150℃の範囲の温度で行なわれる、方法。
【請求項6】
請求項4または5記載の前記式(I)の化合物の調製方法であって、前記式(II)の化合物が、下記の式(III)
【化3】

式中、A、AおよびRは、請求項1で規定したとおりである、
の化合物のエポキシ化によって調製され、この工程が、好ましくは、メタクロロ過安息香酸(m−CPBA)および過酸モノペルオキシフタル酸マグネシウム六水和物(MMPP)によって形成された群から特に選ばれた、過酸の存在下で行なわれる、方法。
【請求項7】
前記式(III)の化合物が、下記の式
【化4】

の化合物の、下記の式(V)
H−A−H (V)
式中、
、AおよびAは、請求項1で規定したとおりであり、そして
は、1〜10個、好ましくは1〜6個の炭素原子を含む直鎖もしくは分岐したアルキル基を表す、
の化合物とのエステル交換によって調整され、このエステル交換工程が、好ましくは、酸化マグネシウム、酢酸亜鉛およびナトリウムメタノラートによって形成される群から選ばれた触媒の存在下で、好ましくは150〜200℃の範囲の温度で、窒素流の下で、そしてより好ましくは溶剤なしで、行なわれる、請求項6記載の方法。
【請求項8】
請求項1〜3のいずれか1項記載の前記式(I)の化合物の、ポリウレタン調製のための使用方法。
【請求項9】
請求項1〜3のいずれか1項記載の前記式(I)の化合物と、アミンの中から特に選ばれた水素ドナー化合物との反応によって得られたポリマー。
【請求項10】
がHであるところの請求項4記載の前記式(II)の化合物と、アミンの中から特に選ばれた水素ドナー化合物との反応によって得られたポリマー。

【公表番号】特表2013−511500(P2013−511500A)
【公表日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−539390(P2012−539390)
【出願日】平成22年11月19日(2010.11.19)
【国際出願番号】PCT/FR2010/052457
【国際公開番号】WO2011/061452
【国際公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(501089863)サントル ナシオナル ドゥ ラ ルシェルシェサイアンティフィク(セエヌエールエス) (173)
【Fターム(参考)】