説明

ジクロロブテンの製造方法

【課題】ジクロロブテンを高収率で、後工程での溶媒分離に要するエネルギーが少なくて済む、濃度の高い反応液を得る製造方法を提供する。
【解決手段】溶媒中、触媒の存在下、1,3−ブタジエンに塩素を反応させる方法により3,4−ジクロロ−1−ブテンおよび1,4−ジクロロ−2−ブテンの混合物を連続的に製造するジクロロブテンの製造方法であって、ブタジエン混合溶解ゾーン、塩素化反応ゾーン、除熱ゾーン、抜出しゾーンおよび循環ポンプを有し、これらが循環している反応装置を用い、循環する反応液に、飽和炭化水素およびトリクロロエチレンより選択される溶媒と原料および触媒をフィードし均一に溶解した後、塩素をフィードし20℃から70℃の温度において反応させる際、以下の式1で規定される条件において反応させ、その後抜出しゾーンにおいて反応液および副生塩酸ガスを抜き出すことを特徴とするジクロロブテンの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶媒中にてブタジエンに塩素を付加し、3,4−ジクロロ−1−ブテンおよび1,4−ジクロロ−2−ブテンを製造するジクロロブテンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
商業規模のプラントにおいて、3,4−ジクロロ−1−ブテンおよび1,4−ジクロロ−2−ブテンは、220〜300℃の気相反応により、大過剰のブタジエンと塩素を接触させ製造されている。この方法では、収率が90%程度と低く、大量の廃棄物が発生する。
【0003】
この問題点を解決するために従来より液相において低温下で1,3−ブタジエンを塩素化する方法が検討されている。例えば、特許文献1では、反応溶媒として主に四塩化炭素を使用し、1,3−ブタジエンの液相塩素化反応について詳細な検討をしており、反応条件、触媒種、触媒濃度など反応の基礎的事項を解明している。
【0004】
商業規模で適用可能な生産方法としては特許文献2に、常圧における沸点が−15〜40℃の溶媒を用い、反応で発生する熱を溶媒および未反応1,3−ブタジエンの揮発により除去しつつ反応し、反応器底部より反応液を取出す方法の記載がある。この方法では、溶媒として、塩素ガスと実質的に反応しないフロン類、またはn−ブタン、ペンタンを使用し、加圧条件下、ピリジン触媒の存在下において、1,3−ブタジエンベースで96%以上の高収率で、目的とするジクロロブテン類を製造することが可能である。
【0005】
【特許文献1】英国特許第1435826号公報
【特許文献2】米国特許第5077443号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1では、溶媒として現在利用が困難な四塩化炭素が使用されている。また、特許文献2記載の方法で使用されているフロン類は、1,2−ジクロロテトラフルオロエタン(沸点4℃),1,1−ジクロロ−1−フルオロエタン(沸点32℃)など、オゾン層破壊係数の大きい特定フロンであり、現在では使用することは困難である。一方、n−ブタンおよびペンタンなどの炭化水素類も使用されているが、これらは塩素化を受け易く溶媒のロスが多い。更に、この方法で反応器底部より得られる反応混合物中の総ジクロロブテンの濃度は、1,2−ジクロロテトラフルオロエタンを溶媒として使用した実施例1および実施例5〜15において、溶媒/総ジクロロブテン重量比で6〜10(モル比では4.4〜7.3)と希薄なため、溶媒分離工程での熱エネルギー消費量が多い。
【0007】
本発明の目的は、ジクロロブテンを高収率で、後工程での溶媒分離に要するエネルギーが少なくて済む、よりジクロロブテン濃度の高い反応液を得る方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、以上の課題を解決すべく鋭意検討した結果、所定の条件下で1,3−ブタジエンの液相塩素化方法を行う場合には、ジクロロブテン濃度の高い反応液を得られることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。すなわち、本発明は、溶媒中、触媒の存在下、1,3−ブタジエンに塩素を反応させる1,3−ブタジエンの液相塩素化方法により3,4−ジクロロ−1−ブテンおよび1,4−ジクロロ−2−ブテンの混合物を連続的に製造するジクロロブテンの製造方法であって、ブタジエン混合溶解ゾーン、塩素化反応ゾーン、除熱ゾーン、抜出しゾーンおよび循環ポンプを有し、これらが循環している反応装置を用い、循環する反応液に、炭素数が5から7の飽和炭化水素およびトリクロロエチレンより選択される溶媒と1,3−ブタジエンおよび触媒をフィードし均一に溶解した後に、塩素をフィードし20℃から70℃において反応させる際、以下の式1で規定される1,3−ブタジエンのモル倍率が7以上100以下、かつ、反応液の1,3−ブタジエン濃度が5g/L以上の条件において反応させ、その後抜出しゾーンにおいて反応液および副生塩酸ガスを抜き出すことを特徴とするジクロロブテンの製造方法である。
【0009】
【数1】

以下、本発明について詳細に説明する。
【0010】
本発明の製造方法に使用する溶媒は炭素数が5から7の飽和炭化水素およびトリクロロエチレンより選択される溶媒である。炭素数が5から7の飽和炭化水素とはペンタン、ヘキサン、ヘプタン等が例示されるが、直鎖でも分枝構造を持つものでも環状物でも良い。また、工業用ヘキサンのような各種成分の混合物でもかまわない。
【0011】
本発明の製造方法においては、触媒の使用は必須である。この触媒としては、塩素アニオンの供給源となりうる多くの化合物、例えば、四級アンモニウムクロライド、四級ホスホニウムクロライド、四級スルフォニウムクロライドなどの四級塩、反応系内で塩化物を生成するピリジン、トリエチレンジアミンに代表される各種アミン類、またN−メチル−2−ピロリドン、テトラメチル尿素、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等のアミド類があげられる。これらのうち、本発明で特に好適に使用できる触媒は、ジクロロブテンが高収率で得られる、ピリジン、トリエチレンジアミン、N−メチル−2−ピロリドン、テトラメチル尿素または1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンである。トリエチレンジアミンは1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタンとも呼ばれる3級アミンである。これらの量は特に限定するものではないが、反応液中に20から500mg/L存在すれば良い。
【0012】
本発明の製造方法で使用される反応装置は、ブタジエン混合溶解ゾーン、塩素化反応ゾーン、除熱ゾーン、抜出しゾーンおよび循環ポンプを有し、これらが循環している。これらを図で示すと、図1の通りであり、反応液の循環ループを形成している。これは本発明の目的を達成する上での基礎であり、1,3−ブタジエンを反応液中に導入し混合溶解するブタジエン混合溶解ゾーン、塩素と1,3−ブタジエンとの反応を行う塩素化反応ゾーン、反応液からの除熱ゾーン、反応液および副生塩酸ガスの系外への抜出しゾーン、並びに循環ポンプにより構成される。各ゾーンは直接配管で結合されており循環ポンプにより反応液は循環流通している。
【0013】
ブタジエン混合溶解ゾーンでは、1,3−ブタジエンが溶媒および触媒と共に反応液中に均一に溶解される。不均一な溶解状態は、塩素との反応において望ましくない副反応の増加を招く恐れがあるため、スタティックミキサーなどの挿入物を配管内に設置するのが望ましい。スタティックミキサーは、反応液の流路内に設置したエレメントと呼ばれる挿入物、または管壁に取付けたバッフル状の突起物などにより、強制的に乱流を発生せしめ混合効率を高める装備であり、種種の形式が考案されている。どの形式を用いても良いが、圧力損失の小さいものが良い。混合溶解に必要な時間は0.2秒から1秒で十分である。液線速度は0.2m/秒から4m/秒の範囲で、1,3−ブタジエン混合溶解ゾーンの長さが決定される。なお、反応装置は、この1,3−ブタジエン混合溶解ゾーンを有するものであるが、循環ポンプのインペラー部において、1,3−ブタジエン混合溶解ゾーンの機能を付加しても良い。
【0014】
塩素と1,3−ブタジエンとの反応を行う塩素化反応ゾーンにおいては、フィードされた塩素は高乱流域において、できる限り短時間のうちに均質に混合分散されなければならない。塩素の不十分な分散状態は副反応生成物のみならず、溶媒の塩素化ロスをも増大させる。そのため、ベンチュリノズルなどの高度分散が可能な吹きこみ手段の使用、又はスタティックミキサーなどの挿入物を配管内に設置することが望ましい。更に、塩素のフィードは式1で規定される1,3−ブタジエンのモル倍率が7以上100以下の条件を満足するように成されることが必須である。この範囲を外れるとジクロロブテン類の収率が低く、メリットが損なわれる。
【0015】
【数2】

塩素は分割してフィードすることが可能である。このとき各塩素フィード点における式1で規定される1,3−ブタジエンのモル倍率は小さくなるため、循環流量を下げる、又は反応液の1,3−ブタジエン濃度を下げることができる。循環流量を下げることで循環ポンプ能力、配管径の縮小が可能など設備負担が軽減される。他方反応液の1,3−ブタジエン濃度を下げれば、その重合による損失を抑制することが可能で、塩素分割のメリットは大きい。
【0016】
反応時間は、2秒から5秒とれば良い。
【0017】
液線速度は0.2m/秒から4m/秒の範囲で、塩素フィード点における塩素の分散が十分迅速に行われ副生成物が抑制できるように設定され、反応ゾーンの長さが決定される。
【0018】
反応温度は20℃から70℃において、選択された溶媒の常圧での沸点を超えない範囲において実施する。反応温度が20℃未満であると反応熱の除去が難しくなり、70℃を超えると溶媒の塩素化が促進され運転コストが嵩む。好ましい反応温度は30℃から60℃である。
【0019】
反応液の1,3−ブタジエンの濃度は5g/L以上であることが必要である。5g/L未満では塩素とジクロロブテンの反応が起こり易く、収率悪化が顕著となる。好ましくは5〜40g/Lである。
【0020】
反応熱の除去は熱交換器により行う。熱交換器の位置は循環ループ内のどこに設置してもよく、熱交換器を塩素化反応ゾーンに使用し除熱ゾーンを兼ねることもできる。除熱の条件としては特に限定するものではない。
【0021】
抜出しゾーンにおいては、反応液および副生塩酸ガスを抜き出す。抜き出す条件としては特に限定するものではないが、反応液中の副生塩酸の溶存量を制御し、副反応を起こりにくくするためには、圧力がゲージ圧で5〜100kPaの範囲に制御されるようにすることが好ましい。抜出設備の液滞留時間はできる限り短くするのが望ましい。
【0022】
反応器全体の液滞留時間は、ジクロロブテン収率を高く維持し、装置サイズをあまり大きくしないために、好ましくは2分から35分、さらに好ましくは2分〜20分である。
【発明の効果】
【0023】
本発明の方法により、高収率でジクロロブテンの製造が可能であり、さらに反応液のジクロロブテン濃度が高く、溶媒を分離するためのエネルギーが少なくて済む効果を有するものである。
【実施例】
【0024】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0025】
なお、実施例等において使用した反応装置は以下の通りである。
【0026】
<反応装置1>
マグネット式循環ポンプ(接液部テフロン(登録商標))の吐出口の後に、塩素化反応ゾーンとして、スタティックミキサー(ノリタケMX−756:径5/8インチ×長さ0.4m×12エレメント)が挿入されたテフロン(登録商標)製熱交換器が繋がり、内径5/8インチのテフロン(登録商標)管を介して流量計、圧力センサーおよび反応液抜出部(気液分離サイクロン:内径60mm×高さ70mmの円筒状)が直列に接続され、気液分離サイクロンの液出口がマグネット式循環ポンプの吸液口へ接続されループを構成している(ループ全長1.4m;内容積0.5L)。気液分離サイクロンのガス出口には、圧力センサーに連動する開閉バルブが取付けられており、反応液の一部と副生する塩酸ガスを系外に抜き出すようになっている。
【0027】
<反応装置2>
マグネット式循環ポンプ(接液部SUS316)の吐出口の後に、1,3−ブタジエン混合溶解ゾーンおよび塩素化反応ゾーンとして、それぞれ0.1mおよび2mのSUS316製チューブ(内径10mm)が接続され、ついで圧力センサー、反応液抜出部(気液分離サイクロン:内径30mm×高さ70mmの円筒状)、超音波式流量計、更にSUS316製の熱交換器(内径10mm×0.5m)が直列に接続され、熱交換器の出口はマグネット式循環ポンプの吸液口へ繋がりループを構成している(ループ全長約3m;内容積0.3L)。塩素のフィードは反応ゾーンの開始点から0.5m間隔で設置された3つのフィード点より等分添加した。各塩素フィード点にはスタティックミキサー(ノリタケMX−666:径10mm×長さ105mm×6エレメント)が挿入してある。気液分離サイクロンのガス出口には、圧力センサーに連動する開閉バルブが取付けられており、反応液の一部と副生する塩酸ガスを系外に抜き出すようになっている。
【0028】
実施例1
反応装置1を使用し、液の循環流量を13L/minに調節し、溶媒ヘキサン(工業用1級;ピリジン0.2g/L含有)を毎分30.0mLおよび1,3−ブタジエンを毎分4.8gでマグネット式循環ポンプの吸液口の前へフィードした。塩素ガスはスタティックミキサーの入口に毎分5.7gでフィードし反応温度50℃において反応させ、反応液および副生する塩酸ガスを圧力が5〜10kPaに維持されるように連続的に抜き出した。反応液抜出量は毎分30.5g、滞留時間は13.0分、反応液の1,3−ブタジエン濃度は0.28モル/L(15.12g/L)、式1で規定される1,3−ブタジエンのモル倍率は45.4であった(塩素フィード速度:4.81モル/Hr,循環流量:780L/Hr)。反応液の組成分析はガスクロマトグラフィー(キャピラリーカラム:J&W DB−5;0.25mmI.D.×30m)により行った。1,3−ブタジエン転化率は88.0%、反応液の総ジクロロブテン濃度は31.6重量%、溶媒/総ジクロロブテン重量比は2.1(モル比3.0)で、反応収率は表1に示す通りであった。
【0029】
【表1】

実施例2
反応装置1を使用し、液の循環流量を13L/minに調節し、溶媒ヘキサン(工業用1級;ピリジン0.5g/L含有)を毎分30.5mLおよび1,3−ブタジエンを毎分6.7gでマグネット式循環ポンプの吸液口の前へフィードした。塩素ガスはスタティックミキサーの入口に毎分7.5gでフィードし反応温度52℃において反応させ、反応液および副生する塩酸ガスを圧力が5〜10kPaに維持されるように連続的に抜き出した。反応液抜出量は毎分34.6g、滞留時間は11.6分、反応液の1,3−ブタジエン濃度は0.49モル/L(26.46g/L)、式1で規定される1,3−ブタジエンのモル倍率は60.3であった(塩素フィード速度:6.33モル/Hr,循環流量:780L/Hr)。反応液の組成分析はガスクロマトグラフィー(キャピラリーカラム:J&W DB−5;0.25mmI.D.×30m)により行った。1,3−ブタジエン転化率は83.0%、反応液の総ジクロロブテン濃度は37.0重量%、溶媒/総ジクロロブテン重量比は1.6(モル比2.3)で、反応収率は表2に示す通りであった。
【0030】
【表2】

実施例3
反応装置1を使用し、液の循環流量を13L/minに調節し、溶媒ヘプタン(ピリジン0.5g/L含有)を毎分31.8mLおよび1,3−ブタジエンを毎分4.8gでマグネット式循環ポンプの吸液口の前へフィードした。塩素ガスはスタティックミキサーの入口に毎分5.7gでフィードし反応温度50℃において反応させ、反応液および副生する塩酸ガスを圧力が5〜10kPaに維持されるように連続的に抜き出した。反応液抜出量は毎分32.2g、滞留時間は12.4分、反応液の1,3−ブタジエン濃度は0.24モル/L(12.96g/L)、式1で規定される1,3−ブタジエンのモル倍率は38.9であった(塩素フィード速度:4.81モル/Hr,循環流量:780L/Hr)。反応液の組成分析はガスクロマトグラフィー(キャピラリーカラム:J&W DB−5;0.25mmI.D.×30m)により行った。1,3−ブタジエン転化率は89.1%、反応液の総ジクロロブテン濃度は30.2重量%、溶媒/総ジクロロブテン重量比は2.2(モル比2.8)で、反応収率は表3に示す通りであった。
【0031】
【表3】

実施例4
反応装置1を使用し、液の循環流量を13L/minに調節し、溶媒シクロヘキサン(ピリジン0.5g/L含有)を毎分30.7mLおよび1,3−ブタジエンを毎分4.8gでマグネット式循環ポンプの吸液口の前へフィードした。塩素ガスはスタティックミキサーの入口に毎分5.7gでフィードし反応温度50℃において反応させ、反応液および副生する塩酸ガスを圧力が5〜10kPaに維持されるように連続的に抜き出した。反応液抜出量は毎分34.3g、滞留時間は13.1分、反応液の1,3−ブタジエン濃度は0.26モル/L(14.04g/L)、式1で規定される1,3−ブタジエンのモル倍率は42.1であった(塩素フィード速度:4.81モル/Hr,循環流量:780L/Hr)。反応液の組成分析はガスクロマトグラフィー(キャピラリーカラム:J&W DB−5;0.25mmI.D.×30m)により行った。1,3−ブタジエン転化率は88.8%、反応液の総ジクロロブテン濃度は28.0重量%、溶媒/総ジクロロブテン重量比は2.5(モル比3.7)で、反応収率は表4に示す通りであった。
【0032】
【表4】

実施例5
反応装置1を使用し、液の循環流量を12L/minに調節し、溶媒ヘキサン(テトラメチル尿素0.5g/L含有)を毎分31.0mLおよび1,3−ブタジエンを毎分4.7gでマグネット式循環ポンプの吸液口の前へフィードした。塩素ガスはスタティックミキサーの入口に毎分5.7gでフィードし反応温度50℃において反応させ、反応液および副生する塩酸ガスを圧力が5〜10kPaに維持されるように連続的に抜き出した。反応液抜出量は毎分31.2g、滞留時間は12.8分、反応液の1,3−ブタジエン濃度は0.24モル/L(12.96g/L)、式1で規定される1,3−ブタジエンのモル倍率は35.9であった(塩素フィード速度:4.81モル/Hr,循環流量:720L/Hr)。反応液の組成分析はガスクロマトグラフィー(キャピラリーカラム:J&W DB−5;0.25mmI.D.×30m)により行った。1,3−ブタジエン転化率は89.5%、反応液の総ジクロロブテン濃度は30.2重量%、溶媒/総ジクロロブテン重量比は2.2(モル比3.2)で、反応収率は表5に示す通りであった。
【0033】
【表5】

実施例6
反応装置1を使用し、液の循環流量を12L/minに調節し、溶媒ヘキサン(ジメチルイミダゾリジノン0.2g/L含有)を毎分30.9mLおよび1,3−ブタジエンを毎分4.8gでマグネット式循環ポンプの吸液口の前へフィードした。塩素ガスはスタティックミキサーの入口に毎分5.7gでフィードし反応温度50℃において反応させ、反応液および副生する塩酸ガスを圧力が5〜10kPaに維持されるように連続的に抜き出した。反応液抜出量は毎分31.2g、滞留時間は12.8分、反応液の1,3−ブタジエン濃度は0.25モル/L(13.5g/L)、式1で規定される1,3−ブタジエンのモル倍率は37.4であった(塩素フィード速度:4.81モル/Hr,循環流量:720L/Hr)。反応液の組成分析はガスクロマトグラフィー(キャピラリーカラム:J&W DB−5;0.25mmI.D.×30m)により行った。1,3−ブタジエン転化率は89.2%、反応液の総ジクロロブテン濃度は30.3重量%、溶媒/総ジクロロブテン重量比は2.2(モル比3.2)で、反応収率は表6に示す通りであった。
【0034】
【表6】

実施例7〜14
実施例1と同じ反応装置1、溶媒ヘキサン、触媒ピリジンを用い、表7および表8に示す条件にて反応を行った。その結果を表7および表8に示す。
【0035】
【表7】

【0036】
【表8】

実施例15〜18
反応装置2、溶媒ヘキサン、反応触媒としてトリエチレンジアミンを用い、表9に示す条件で反応を行った。その結果を表9に示す。
【0037】
【表9】

比較例1〜4
実施例1と同じ反応装置1、溶媒ヘキサン、触媒ピリジンを用い、表10に示す条件にて反応を行った。その結果を表10に示す。
【0038】
【表10】

比較例5〜6
反応装置2、溶媒ヘキサン、触媒ピリジンを用い、表11に示す条件で反応を行った。その結果を表11に示す。
【0039】
【表11】

比較例1〜6の操作条件は、本特許請求の範囲を外れており、ジクロロブテン収率は低かった。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明で用いられる反応装置における循環ループを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶媒中、触媒の存在下、1,3−ブタジエンに塩素を反応させる1,3−ブタジエンの液相塩素化方法により3,4−ジクロロ−1−ブテンおよび1,4−ジクロロ−2−ブテンの混合物を連続的に製造するジクロロブテンの製造方法であって、ブタジエン混合溶解ゾーン、塩素化反応ゾーン、除熱ゾーン、抜出しゾーンおよび循環ポンプを有し、これらが循環している反応装置を用い、循環する反応液に、炭素数が5から7の飽和炭化水素およびトリクロロエチレンより選択される溶媒と1,3−ブタジエンおよび触媒をフィードし均一に溶解した後に、塩素をフィードし20℃から70℃の温度において反応させる際、以下の式1で規定される1,3−ブタジエンのモル倍率が7以上100以下、かつ、反応液の1,3−ブタジエン濃度が5g/L以上の条件において反応させ、その後抜出しゾーンにおいて反応液および副生塩酸ガスを抜き出すことを特徴とするジクロロブテンの製造方法。
【数1】

【請求項2】
触媒がピリジン、トリエチレンジアミン、N−メチル−2−ピロリドン、テトラメチル尿素または1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンであることを特徴とする請求項1に記載のジクロロブテンの製造方法。
【請求項3】
反応装置に、複数の塩素フィード口を設けることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のジクロロブテンの製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2008−247770(P2008−247770A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−88129(P2007−88129)
【出願日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】