説明

ジベンゾシロール誘導体、その前駆化合物及び製造方法

【課題】ジベンゾシロール誘導体及びその前駆化合物、並びにそれらの製造方法の提供。
【解決手段】式1で示されるジベンゾシロール誘導体を、その前駆化合物であるベンゾシクロブタジハロビフェニル誘導体をジリチオ化及び/又はジグリニャール化し、さらに脱離基を有するシラン化合物と反応させて得る。


(R〜R10は水素原子、アルキル基若しくはハロゲン化アルキル基、又はアリール基を示す。nは0又は1であり、A環はベンゾシクロブタ型構造、ベンゾ型構造、又はナフト型構造のいずれかを示す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なジベンゾシロール誘導体及びその前駆体である新規なベンゾシクロブタジハロビフェニル誘導体、並びにそれらの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機薄膜トランジスタに代表される有機半導体デバイスは、省エネルギー、低コスト、及びフレキシブルといった無機半導体デバイスにはない特徴を有することから近年注目されるようになった。有機薄膜トランジスタは有機半導体活性相、基板、絶縁相、電極等数種類の材料から構成されるが、中でも電荷のキャリアー移動を担う有機半導体活性相は該デバイスの中心的な役割を有している。この有機半導体活性相を構成する有機材料のキャリアー移動能により半導体デバイス性能が左右される。
【0003】
有機半導体活性相を作製する方法としては一般的に、高温真空下、有機材料を気化させて実施する真空蒸着法、及び有機材料を適当な溶媒に溶解させその溶液を塗布する塗布法が知られている。塗布法は高温高真空条件を用いることなく印刷技術を用いても実施することができる。印刷によりデバイス作製の大幅な製造コストの削減を図ることができることから、経済的に好ましいプロセスである。しかし、従来、有機半導体性能が高い材料ほど塗布法での半導体活性相形成が困難になるという問題があった。
【0004】
例えば、ペンタセン等の結晶性材料はアモルファスシリコン並みの高いキャリアー移動度を有し、優れた半導体デバイス特性を発現することが報告されている(非特許文献1参照)。しかし、ペンタセンはその強い凝集性のため溶解性が低く、一般的には経済的な塗布法には適用することができない。また、ポリ−(3−ヘキシルチオフェン)等の自己組織化材料は溶媒に可溶であり、塗布によるデバイス作製が報告されているが、移動度が結晶性化合物より1桁低いことから(非特許文献2参照)デバイス特性が低下することは避けられない。
【0005】
また、シロール類は低いLUMO(最低空軌道)のエネルギー準位を有することから良好な電子物性を与えることが期待されている。例えば、2,5−ビス(ビピリジル)−3,4−ジフェニルシロールが開示されている(非特許文献3参照)。しかし、その薄膜は蒸着により作製されており、塗布性については記載されていない。しかもその分子構造上は分子の平面剛直性が低いため電子移動度は2×10−4cm/Vsと低いという問題点があった。さらに該開示化合物の製法は、ビス(フェニルエチニル)シランのリチウムによる分子内還元的環化、続いてパラジウム触媒クロスカップリング反応により合成されるため、得られるシロール生成物の骨格が限定される問題があった(非特許文献4参照)。
【0006】
【非特許文献1】「ジャーナル オブ アプライドフィジックス」、(米国)、2002年、92巻、5259−5263頁
【非特許文献2】「サイエンス」、(米国)、1998年、280巻、1741−1744頁
【非特許文献3】「アプライド フィジックス レターズ」、(米国)、2002年、80巻、189−191頁
【非特許文献4】「ケミストリー ア ヨーロピアン ジャーナル」、2000年、6巻、1683−1692頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の従来技術が有する問題点に鑑み、新規なジベンゾシロール誘導体及びその前駆体である新規なベンゾシクロブタジハロビフェニル誘導体、並びにそれらの製造方法を提供することを目的とする。特に、平面剛直性の高い分子構造を有するジベンゾシロール誘導体の提供により、優れた半導体デバイス特性を有し、且つ塗布法が適用可能な新規な有機半導体活性材料の提供を目的とする
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題を解決するため鋭意検討の結果、剛直なビフェニレン構造を有するジベンゾシロール誘導体が、優れた半導体デバイス特性を有し、且つ塗布法が適用可能な有機半導体デバイス材料になることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0009】
以下に本発明を詳細に説明する。説明はジベンゾシロール誘導体、ベンゾシクロブタジハロビフェニル誘導体、及びそれらの製造方法の順に行う。
(ジベンゾシロール誘導体)
まず、本発明のジベンゾシロール誘導体について述べる。
【0010】
本発明のジベンゾシロール誘導体は下記一般式(1)で示される。
【0011】
【化1】

(ここで、置換基R〜R10は同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基若しくはハロゲン化アルキル基、炭素数4〜20のアリール基、又はフッ素、塩素、臭素、ヨウ素から選ばれるハロゲン原子を示す。なお、R〜Rの内、任意の二以上のものは互いに結合することができる。nは0又は1であり、A環は下記一般式(A−1)で示されるベンゾシクロブタ型構造、一般式(A−2)で示されるベンゾ型構造、又は一般式(A−3)で示されるナフト型構造を有する。
【0012】
【化2】

【0013】
【化3】

【0014】
【化4】

ここで、置換基R11〜R24は同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基若しくはハロゲン化アルキル基、炭素数4〜20のアリール基、又はフッ素、塩素、臭素、ヨウ素から選ばれるハロゲン原子を示す。なお、R11〜R14、R15〜R18、及びR20〜R23は、それぞれに、その置換基の内、任意の二以上のものは互いに結合することができる。)
本発明の一般式(1)の置換基について、さらに述べる。
【0015】
置換基R〜R10における、炭素数1〜20のアルキル基は特に限定されず、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、ネオペンチル基、オクチル基、ドデシル基等を挙げることができ;炭素数1〜20のハロゲン化アルキル基は特に限定されず、例えばトリフルオロメチル基、トリフルオロエチル基、パーフルオロヘキシル基等を挙げることができ;炭素数4〜20のアリール基は特に限定されず、例えばフェニル基、p−トリル基、p−フルオロフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、p−(トリフルオロメチル)フェニル基、ピリジニル基、テトラフルオロピリジニル基、2−チエニル基、2,2’−ビチエニル−5−基、ビフェニル基、パーフルオロビフェニル基、ビピリジニル基等を挙げることができる。
【0016】
なお、置換基R〜Rの内、任意の二以上のものが互いに結合した場合、その結合は特に限定はなく、例えば、置換基を有してもよいベンゼン環、置換基を有してもよいシクロヘキサン環、置換基を有してもよいチオフェン環等を挙げることができる。
【0017】
置換基R〜R10におけるハロゲン原子は好ましくはフッ素である。
【0018】
さらに、置換基R〜Rは好ましくは水素原子及び/又はフッ素であり、置換基R〜R10は好ましくは炭素数1〜20のアルキル基及び/又はフェニル基である。
【0019】
一般式(1)のnは、好ましくは1である。
【0020】
一般式(1)のA環は、好ましくは一般式(A−1)で示されるベンゾシクロブタ型構造である。
【0021】
さらに、A環の置換基について述べる。
【0022】
置換基R11〜R24における炭素数1〜20のアルキル基は特に限定されず、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、ネオペンチル基、オクチル基、ドデシル基等を挙げることができ;炭素数1〜20のハロゲン化アルキル基は特に限定されず、トリフルオロメチル基、トリフルオロエチル基、パーフルオロヘキシル基等を挙げることができ;炭素数4〜20のアリール基は特に限定されず、例えばフェニル基、p−トリル基、p−フルオロフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、p−(トリフルオロメチル)フェニル基、ピリジニル基、テトラフルオロピリジニル基、2−チエニル基、2,2’−ビチエニル−5−基、ビフェニル基、パーフルオロビフェニル基、ビピリジニル基等を挙げることができる。
【0023】
なお、R11〜R14、R15〜R18、及びR20〜R23が、それぞれに、その置換基の内、任意の二以上のものと互いに結合した場合、その結合は特に限定はなく、例えば、置換基を有してもよいベンゼン環、置換基を有してもよいシクロヘキサン環、置換基を有してもよいチオフェン環等を挙げることができる。
【0024】
置換基R11〜R24におけるハロゲン原子は好ましくはフッ素である。さらに、置換基R11〜R24は、好ましくは水素原子及び/又はフッ素である。
【0025】
本発明の一般式(1)で示されるジベンゾシロール誘導体は特に限定はなく、例えば以下の化合物を挙げることができる。
【0026】
【化5】

【0027】
【化6】

【0028】
【化7】

(ベンゾシクロブタジハロビフェニル誘導体)
次に、本発明の一般式(1)で示されるジベンゾシロール誘導体の前駆化合物であるベンゾシクロブタジハロビフェニル誘導体について述べる。
【0029】
本発明の一般式(1)で示されるジベンゾシロール誘導体の前駆化合物であるベンゾシクロブタジハロビフェニル誘導体は下記一般式(2)で示される。
【0030】
【化8】

(ここで、置換基R25〜R32は同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基若しくはハロゲン化アルキル基、炭素数4〜20のアリール基、又はフッ素、塩素、臭素、ヨウ素から選ばれるハロゲン原子を示す。なお、R26〜R29の内、任意の二以上のものは互いに結合することができる。X及びXは同一又は異なって、臭素、ヨウ素、塩素のハロゲン原子を示し、nは0又は1であり、B環は下記一般式(B−1)、(B−2)又は(B−3)で示される構造を有する。
【0031】
【化9】

【0032】
【化10】

【0033】
【化11】

ここで、置換基R33〜R46は同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基若しくはハロゲン化アルキル基、炭素数4〜20のアリール基、又はフッ素、塩素、臭素、ヨウ素から選ばれるハロゲン原子を示す。R33〜R36、R37〜R40、及びR42〜R45は、それぞれに、その置換基の内、任意の二以上のものは互いに結合することができる。)
本発明の一般式(2)の置換基について、さらに述べる。
【0034】
置換基R25〜R32における、炭素数1〜20のアルキル基は特に限定されず、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、ネオペンチル基、オクチル基、ドデシル基等を挙げることができ;炭素数1〜20のハロゲン化アルキル基は特に限定されず、トリフルオロメチル基、トリフルオロエチル基、パーフルオロヘキシル基等を挙げることができ;炭素数4〜20のアリール基は特に限定されず、例えばフェニル基、p−トリル基、p−フルオロフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、p−(トリフルオロメチル)フェニル基、ピリジニル基、テトラフルオロピリジニル基、2−チエニル基、2,2’−ビチエニル−5−基、ビフェニル基、パーフルオロビフェニル基、ビピリジニル基等を挙げることができる。
【0035】
なお、置換基R26〜R29の内、任意の二以上のものが互いに結合した場合、その結合は特に限定はなく、例えば、置換基を有してもよいベンゼン環、置換基を有してもよいシクロヘキサン環、置換基を有してもよいチオフェン環等を挙げることができる。
【0036】
置換基R25〜R32におけるハロゲン原子は好ましくはフッ素である。さらに、置換基R25〜R32は、好ましくは水素原子及び/又はフッ素である。
【0037】
及びXは、好ましくは臭素及びヨウ素である。
【0038】
一般式(2)のnは、好ましくは1である。
【0039】
一般式(2)のB環は、好ましくは一般式(B−1)で示されるベンゾシクロブタ型構造である。
【0040】
さらに、B環の置換基について述べる。
【0041】
置換基R33〜R46における、炭素数1〜20のアルキル基は特に限定されず、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、ネオペンチル基、オクチル基、ドデシル基等を挙げることができ;炭素数1〜20のハロゲン化アルキル基は特に限定されず、例えばトリフルオロメチル基、トリフルオロエチル基、パーフルオロヘキシル基等を挙げることができ;炭素数4〜20のアリール基は特に限定されず、例えばフェニル基、p−トリル基、p−フルオロフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、p−(トリフルオロメチル)フェニル基、ピリジニル基、テトラフルオロピリジニル基、2−チエニル基、2,2’−ビチエニル−5−基、ビフェニル基、パーフルオロビフェニル基、ビピリジニル基等を挙げることができる。
なお、R33〜R36、R37〜R40、及びR42〜R45が、それぞれに、その置換基の内、任意の二以上のものと互いに結合した場合、その結合は特に限定はなく、例えば、置換基を有してもよいベンゼン環、置換基を有してもよいシクロヘキサン環、置換基を有してもよいチオフェン環等を挙げることができる。
【0042】
置換基R33〜R46におけるハロゲン原子は好ましくはフッ素である。さらに、置換基R33〜R46は、好ましくは水素原子及び/又はフッ素である。
【0043】
本発明の一般式(2)で示されるジベンゾシロール誘導体の前駆化合物であるベンゾシクロブタジハロビフェニル誘導体は特に限定はなく、例えば以下の化合物を挙げることができる。
【0044】
【化12】

【0045】
【化13】

(ジベンゾシロール誘導体製造方法)
次に、本発明の一般式(1)で示されるジベンゾシロール誘導体の製造方法について述べる。
【0046】
本発明の一般式(1)で示されるジベンゾシロール誘導体は一般式(2)で示されるベンゾシクロブタジハロビフェニル誘導体から製造することができる。
【0047】
即ち、一般式(2)で示されるベンゾシクロブタジハロビフェニル誘導体をジリチオ化及び/又はジグリニャール化し、さらに脱離基を有するシラン化合物と反応させることで一般式(1)で示されるジベンゾシロール誘導体を製造することができる。
一般式(2)で示される前駆化合物をジリチオ化する場合、用いるジリチオ化剤は、一般式(2)におけるハロゲンX及びXをリチウムに置換することができるものである限り特に限定されず、例えば、有機リチウム試薬、有機リチウムアミド試薬、リチウム金属を挙げることができる。該有機リチウム試薬として、例えばn−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、メチルリチウム、フェニルリチウム等を挙げることができ;該有機リチウムアミド試薬として、例えばN,N−ジイソプロピルアミド、リチウムヘキサメチルジシラジド等を挙げることができる。係るジリチオ化剤は、好ましくはn−ブチルリチウムである。
【0048】
ジリチオ化反応は、好ましくは溶媒中で実施する。用いる溶媒は特に限定されず、例えばテトラヒドロフラン(以後、THFと略す)、ジエチルエーテル、ジオキサン、トルエン、ヘキサン、シクロヘキサン等であり、好ましくはTHFである。又、これら溶剤は1種若しくは2種以上の混合物を用いても良い。
【0049】
ジリチオ化剤は一般式(2)で示される前駆化合物に対し1.5〜3.0当量、好ましくは1.8〜2.5当量用いる。ジリチオ化反応の温度は−100〜50℃、好ましくは−90〜20℃であり、反応時間は1〜120分、好ましくは3〜60分である。
【0050】
一般式(2)のベンゾシクロブタジハロビフェニル誘導体をジグリニャール化する場合、用いるジグリニャール化剤は一般式(2)におけるハロゲンX及びXをMgX(ここで、Xは塩素、臭素、又はヨウ素を示す。)に置換できるものであれば良く、例えば、Mg金属、アルキルグリニャール試薬を挙げることができるが、好ましくはMg金属である。Mg金属の形態は特に限定されず、例えば、削り状、リボン状、粒状を挙げることができる。
【0051】
ジグリニャール化反応は、好ましくは溶媒中で実施する。用いる溶媒は特に限定されず、例えばTHF、ジエチルエーテル、ジオキサン、トルエン、ヘキサン、シクロヘキサン等であり、好ましくはTHFである。
【0052】
ジグリニャール化剤は、例えばMg金属の場合、一般式(2)で示されるベンゾシクロブタジハロビフェニル誘導体に対し好ましくは1.8〜20当量の範囲で用いる。ジグリニャール化反応の温度は好ましくは−20〜80℃であり、反応時間は好ましくは1〜120分の範囲である。
【0053】
上述のように一般式(2)で示される前駆化合物をジリチオ化及び/又はジグリニャール化した後、係る反応物を脱離基を有するシラン化合物と反応させることで一般式(1)のジベンゾシロール誘導体を製造することができる。
【0054】
ここに、脱離基を有するシラン化合物とは一般式(3)で表される化合物であり、
【0055】
【化14】

(式中置換基R及びR10の記号は一般式(1)で示される記号と同意義を示す。X及びXは同一又は異なって、ハロゲン原子、炭素数1〜20のアルコキシ基、又は炭素数1〜20のジアルキルアミノ基を示す。)
及びXの2つの脱離基を有し、ジリチオ化及び/又はジグリニャール化した上記一般式(2)の化合物と反応し、一般式(1)のジベンゾシロール誘導体を与えるものであれば特に限定されない。ここに、脱離基の種類としては、例えば塩素、臭素、ヨウ素のハロゲン、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基、又はジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等を挙げることができる。脱離基を有するシラン化合物の例として、ジクロロジメチルシラン、ジクロロジエチルシラン、ジクロロジ(n−ブチル)シラン、ジクロロジ(イソブチル)シラン、ジクロロジ(ネオペンチル)シラン、ジクロロジ(n−ヘキシル)シラン、ジクロロジ(n−オクチル)シラン、ジクロロジフェニルシラン、ジクロロジ(p−フルオロフェニル)シラン、ジクロロジ(ビフェニル)シラン、ジクロロジ{ビ(ペンタフルオロフェニル)}シラン、ジクロロジ(ビピリジニル)シラン、ジブロモジ(n−オクチル)シラン、ジメトキシジ(n−オクチル)シラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジフェノキシシラン、ジメチルビス(ジメチルアミノ)シラン等を挙げることができる。
【0056】
一般式(3)で示されるシラン化合物との反応は好ましくは溶媒中で実施する。用いる溶媒は特に限定されず、例えばTHF、ジエチルエーテル、ジオキサン、トルエン、ヘキサン、シクロヘキサン等であり、特に好ましくはTHFである。又、これら溶剤は1種若しくは2種以上の混合物を用いても良い。
【0057】
一般式(3)で示されるシラン化合物は一般式(2)で示される前駆化合物に対し、0.8〜4.0当量、好ましくは0.9〜1.5当量の範囲で用いる。該シラン化合物との反応の温度は−100〜50℃、好ましくは−90〜30℃であり、反応時間は1〜48時間の範囲が好ましい。
【0058】
かくして得られた、本発明の一般式(1)で示されるジベンゾシロール誘導体は、さらに精製することができる。精製する方法は特に限定されず、例えばカラムクロマトグラフィー、再結晶化、あるいは昇華による方法を挙げることができる。
(ベンゾシクロブタジハロビフェニル誘導体製造方法)
次に、本発明の一般式(2)で示されるベンゾシクロブタジハロビフェニル誘導体の製造方法について述べる。係る製造方法は(前駆体製造方法I)と(前駆体製造方法II)が可能である。なお、(前駆体製造方法I)は(前駆体製造方法II)に比べ工程が簡便であり経済性に優れる。特に(前駆体製造方法I)は一般式(2)において、n=1であり且つB環が一般式(B−1)であるベンゾシクロブタジハロビフェニル誘導体(以下、ビス(ベンゾシクロブタ)ジハロビフェニル誘導体と称する。)の効率的な製造に適する。
(前駆体製造方法I)
まず、(前駆体製造方法I)について、ビス(ベンゾシクロブタ)ジハロビフェニル誘導体の製造を例に、述べる。
【0059】
該ビス(ベンゾシクロブタ)ジハロビフェニル誘導体は、下記一般式(4)で示される2,3−ジハロビフェニレン誘導体を、
【0060】
【化15】

(ここで、置換基X及びXは同一又は異なって、臭素又はヨウ素を示し、R25〜R30の記号は一般式(2)で示される記号と同意義を示す。)
リチオ化剤を用いてホモカップリング反応させ、即ち2つの2,3−ジハロビフェニレン誘導体を単結合させて、得ることができる。
【0061】
該ホモカップリング反応に用いるリチオ化剤は、一般式(4)におけるハロゲンX及びXの何れか一つをリチオ化することができるものである限り特に限定されず、例えば、有機リチウム試薬、有機リチウムアミド試薬、リチウム金属を挙げることができる。有機リチウム試薬として、例えばn−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、メチルリチウム、フェニルリチウム等を挙げることができ;有機リチウムアミド試薬として、例えばN,N−ジイソプロピルアミド、リチウムヘキサメチルジシラジド等を挙げることができる。係るリチオ化剤は、好ましくはn−ブチルリチウムである。
【0062】
該リチオ化反応は、好ましくは溶媒中で実施する。用いる溶媒は特に限定されず、例えばTHF、ジエチルエーテル、ジオキサン、トルエン、ヘキサン、シクロヘキサン等であり、好ましくはTHFである。又、これら溶剤は1種若しくは2種以上の混合物を用いても良い。
【0063】
リチオ化剤は一般式(4)で示される2,3−ジハロビフェニレン誘導体に対し0.3〜1.2当量、好ましくは0.4〜0.7当量用いる。リチオ化反応の温度は−110〜40℃、好ましくは−100〜30℃であり、反応時間は1〜240分、好ましくは3〜120分である。
【0064】
なお、この方法でビス(ベンゾシクロブタ)ジハロビフェニル誘導体以外の一般式(2)で示されるベンゾシクロブタジハロビフェニル誘導体を製造する場合は、原料として一般式(4)で示される2,3−ジハロビフェニレン誘導体と下記一般式(5)で示されるアリールジハライドとを用いて前述の方法及び条件で行うことができる。
【0065】
【化16】

(ここで、置換基Xは臭素、塩素、又はヨウ素を示し、その他の記号は一般式(2)で示される記号と同意義を示す。)
(前駆体製造方法II)
次に、(前駆体製造方法II)について述べる。
【0066】
ベンゾシクロブタジハロビフェニル誘導体は、上記一般式(4)で示される2,3−ジハロビフェニレン誘導体と下記一般式(6)で示される2−ハロアリール金属試薬をパラジウム及び/又はニッケル触媒存在下で反応させることにより得ることができる。
【0067】
【化17】

(ここで、MはMg、B、Zn、Sn、又はSiのハロゲン化物、ハイドロオキサイド、アルコキサイド、又はアルキル化体を示し、その他の記号は一般式(2)で示される記号と同意義を示す。)
係る反応は、例えば、THF溶剤中で、アリール金属試薬として2−ハロアリールジンククロライドを一般式(4)で示される2,3−ジハロビフェニレン誘導体に対し0.8〜2.2当量、触媒としてテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム等の0価のパラジウム化合物又はジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム等の2価のパラジウム化合物を0.1モル%〜20モル%用い、反応温度10〜100℃、反応時間は0.5〜48時間で実施される。
【0068】
一般式(6)で示される2−ハロアリール金属試薬は公知の方法により得ることができる。例えば、アリールジハロゲン置換体をイソプロピルマグネシウムブロマイド等のグリニャール試薬、あるいはn−ブチルリチウム等の有機リチウム試薬によりハロゲン/金属交換反応を行った後、塩化亜鉛あるいはトリメトキシボラン等と反応させることで調製することができる。トリメトキシボランと反応させた時は、酸性水溶液でさらに処理することでB(OH)基を導入することができる。
(ベンゾシクロブタジハロビフェニル誘導体の製造原料である2,3−ジハロビフェニレン誘導体の製造例)
次に、一般式(2)で示されるベンゾシクロブタジハロビフェニル誘導体の製造原料である、一般式(4)で示される2,3−ジハロビフェニレン誘導体を得る方法、及びさらにその原料である一般式(7)で示されるテトラハロビフェニルを得る方法について述べる。
【0069】
一般式(4)で示される2,3−ジハロビフェニレン誘導体を得る方法は、係る構造が得られる限り、特に限定はない。好ましい例として下記の方法が挙げられる。
【0070】
即ち、一般式(4)で示される2,3−ジハロビフェニレン誘導体は、下記一般式(7)で示される化合物を、
【0071】
【化18】

(ここで、置換基X及びXは同一又は異なって、臭素、塩素、又はヨウ素を示し、X及びXは同一又は異なって、臭素又はヨウ素を示し、R25〜R30は一般式(2)で示される記号と同意義を示す。)
アリールリチウムを用いて置換基X及びXをジリチオ化し、銅化合物と反応させることにより得ることができる。
【0072】
係る反応は、例えば、THF溶剤中で、p−フルオロフェニルリチウムを一般式(7)で示されるテトラハロビフェニルに対し1.2〜3.8当量用い、反応温度−110〜20℃、反応時間0.5〜120分の下で実施される。係るジリチオ化物は引き続いて銅化合物と反応させる。係る反応はTHF溶剤中で、塩化銅(II)を一般式(7)で示される化合物に対し、0.8〜10.0当量用い、反応温度−110〜50℃、反応時間は1〜24時間で実施される。
【0073】
さらに、一般式(7)で示されるテトラハロビフェニルを得るための、好ましい例として、下記の方法が挙げられる。
【0074】
即ち、一般式(7)で示されるテトラハロビフェニルは、下記一般式(8)で示されるテトラハロベンゼンと下記一般式(9)で示される2−ハロアリール金属試薬をパラジウム及び/又はニッケル触媒存在下で反応させることにより得ることができる。
【0075】
【化19】

(ここで、Xは臭素又はヨウ素を示し、その他の記号は一般式(7)で示される記号と同意義を示す。)
【0076】
【化20】

(ここで、MはMg、B、Zn、Sn、又はSiのハロゲン化物、ハイドロオキサイド、アルコキサイド、又はアルキル化体を示し、その他の記号は一般式(7)で示される記号と同意義を示す。)
係る反応は、例えば、THF溶剤中で、アリール金属試薬として2−ハロアリールジンククロライドを一般式(8)で示されるテトラハロベンゼンに対し0.8〜2.2当量、触媒としてテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム等の0価のパラジウム化合物又はジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム等の2価のパラジウム化合物を0.1モル%〜20モル%用い、反応温度10〜100℃、反応時間は0.5〜48時間で実施される。
【0077】
一般式(9)で示される2−ハロアリール金属試薬は公知の方法により得ることができる。例えば、アリールジハロゲン置換体をイソプロピルマグネシウムブロマイド等のグリニャール試薬、あるいはn−ブチルリチウム等の有機リチウム試薬によりハロゲン/金属交換反応を行った後、塩化亜鉛あるいはトリメトキシボラン等と反応させることで調製することができる。トリメトキシボランと反応させた時は、酸性水溶液でさらに処理することでB(OH)基を導入することができる。
本発明の一般式(1)で示されるジベンゾシロール誘導体は平面剛直性が高いことから優れた半導体特性を与えることが期待できる。
【0078】
従来、ペンタセンが結晶性の有機半導体薄膜材料として広範に検討されているが、ペンタセンの強い分子凝集力が災いし、基板等の他の材料との接着性が低く剥がれやすいあるいは結晶が脆く亀裂が入りやすい等の不都合が生じ易かった。さらにペンタセンは溶剤への溶解性が乏しく、しかもその溶液は極めて容易に空気で酸化されることから、塗布プロセスで薄膜を作製するには扱いが非常に難しい。
【0079】
しかし、本発明の一般式(1)で示されるジベンゾシロール誘導体は、適度な分子凝集力を有し結晶の柔軟性も高い。さらに、トルエン、ヘキサン等の無極性溶媒にも溶解することから加工性も優れている。又、溶液状態であっても容易には空気で酸化されることはない。従って、塗布プロセスにより容易に薄膜を作製することができる。
【0080】
本発明の一般式(1)で示されるジベンゾシロール誘導体を構成成分とする有機薄膜は、電子ペーパー及び有機EL等のフレキシブルディスプレイ、又はICタグ用のトランジスタの半導体活性相用途、さらに有機半導体レーザー材料に利用することができる。
【発明の効果】
【0081】
本発明によれば、一般式(1)で示される新規なジベンゾシロール誘導体及びその前駆体である新規なベンゾシクロブタジハロビフェニル誘導体、並びにそれらの製造方法を提供することができる。該ジベンゾシロール誘導体は優れた半導体デバイス特性を有し且つ塗布法が適用可能な新規な有機半導体活性材料を提供することができる。
【実施例】
【0082】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。
【0083】
生成物の同定にはH NMRスペクトル及びマススペクトルを用いた。なお、H NMRスペクトルは日本電子製JEOL GSX−270WB(270MHz)を用いて、マススペクトル(MS)は日本電子製JEOL JMS−700を用いて、試料を直接導入し、電子衝突(EI)法(70エレクトロンボルト)を用いて測定した。
【0084】
反応における溶媒は市販の脱水溶媒をそのまま用いた。
【0085】
参考例1 (4,5−ジブロモ−2,2’−ジヨードビフェニルの合成)
1,2−ジブロモ−4,5−ジヨードベンゼンをシンレット、2003年、29−34頁に記載されている方法に従い、1,2−ジブロモベンゼンから合成した。
【0086】
窒素雰囲気下、300mlシュレンク反応容器に1,2−ジヨードベンゼン(東京化成工業製)8.13g(24.6mmol)及びTHF35mlを加えた。この溶液を−70℃に冷却し、イソプロピルマグネシウムブロマイド(関東化学製、0.65M)のTHF溶液40ml(26mmol)を滴下した。30分間かけて−65℃まで温度を上げた後、その温度で塩化亜鉛(シグマ−アルドリッチ製、1.0M)のジエチルエーテル溶液26ml(26mmol)を滴下した。溶液を徐々に室温まで昇温した後、生成した白色スラリー液を減圧濃縮し白色固体を得た。
【0087】
得られた白色固体に、1,2−ジブロモ−4,5−ジヨードベンゼン10.08g(20.6mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(東京化成製)691mg(0.597mmol)、及びTHF56mlを添加した。加熱還流条件で3時間反応を実施した後、容器を水冷し3N塩酸20mlを添加することで反応を停止させた。反応後の混合液を減圧濃縮し、溶媒を留去した。析出した固体を濾液が中性になるまで水で洗浄し、さらにヘキサンで洗浄した。得られた固体を減圧乾燥した後、トルエン22mlを用いて、再結晶で精製した。析出した固体を濾過し、トルエン2ml及びヘキサン8mlで洗浄した。減圧乾燥後、4,5−ジブロモ−2,2’−ジヨードビフェニルの白色固体を得た(7.58g,収率65%)。
融点:177−179℃(分解)
H NMR(CDCl,21℃):δ=8.16(s,1H),7.93(d,J=7.8Hz,1H),7.43(s,1H),7.42(t,J=7.6Hz,1H),7.17−7.06(m,2H)
MS m/z: 564(M,25%),437(M−I,80),310(M−2I,26),150(M−(2Br+2I),100)
参考例2 (2,3−ジブロモビフェニレンの合成)
窒素雰囲気下、100mlシュレンク反応容器にp−フルオロブロモベンゼン(和光純薬工業製)1.43g(8.16mmol)及びTHF50mlを添加した。この溶液を−72℃に冷却し、n−ブチルリチウム(関東化学製、1.59M)のヘキサン溶液4.8ml(7.6mmol)を滴下した。−72℃で15分間反応を行った後、−98℃に冷却しp−フルオロフェニルリチウムの溶液を調製した。
【0088】
一方、窒素雰囲気下、300mlシュレンク反応容器に参考例1で合成した4,5−ジブロモ−2,2’−ジヨードビフェニル2.00g(3.55mmol)及びTHF65mlを添加した。この溶液を−98℃に冷却し、ここにp−フルオロフェニルリチウムの溶液をキャヌラーを用いて導入した。2分間撹拌後、−97℃で塩化銅(II)(和光純薬工業製)1.45g(10.8mmol)を投入した。一晩かけて室温まで反応温度を上げた。3N塩酸を添加した後、トルエン(40ml)及びNaClを加えた後分相し、有機相を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧濃縮後、反応混合物をシリカゲルフラッシュクロマトグラフィーで精製し(溶離液;ヘキサン)、目的物を含む固体627mgを得た。ヘプタン5.8mlを用い再結晶化による精製を行い、2,3−ジブロモビフェニレンの黄色固体を得た(300mg)。さらに濾液を濃縮後、ヘキサンから再結晶化することで2,3−ジブロモビフェニレンの黄色固体を得た(57mg)。(合計収率32%)。
融点:152−153℃
H NMR(CDCl,21℃):δ=6.86(s,2H),6.83(dd,J=5.0Hz,2.9Hz,2H),6.70(dd,J=4.9Hz,2.9Hz,2H)
MS m/z: 310(M,73%),229(M−Br,5),150(M−2Br,100)
実施例1 (3,3’−ジブロモ−2,2’−ビス(ベンゾシクロブタ)ビフェニルの合成)
窒素雰囲気下、50mlシュレンク反応容器に参考例2で合成した2,3−ジブロモビフェニレン178mg(0.574mmol)及びTHF6mlを加えた。これを−95℃に冷却し、n−ブチルリチウム(関東化学製、1.59M)のヘキサン溶液0.18mL(0.286mmol)を滴下した。−95℃で1時間反応後、3N塩酸を加えた。トルエン及びNaClを添加し分相し、さらに有機相を飽和食塩水で洗浄した。減圧濃縮し、得られた固体残渣をトルエン6.2mlを用い再結晶化した。析出した固体を濾過、乾燥し3,3’−ジブロモ−2,2’−ビス(ベンゾシクロブタ)ビフェニルの黄色固体を得た(83mg,収率63%)。
融点:294−298℃
H NMR(CDCl,21℃):δ=6.89(s,2H),6.81(dd,J=5.0Hz,2.8Hz,4H),6.70(dd,J=5.4Hz,2.8Hz,4H),6.48(s,2H)
MS m/z: 460(M,30%),300(M−2Br,100),150((M−2Br)/2,81)
H NMRスペクトルを図1に示した。
【0089】
実施例2 (ジメチル(ビス(ベンゾシクロブタ)ジベンゾシロールの合成)
窒素雰囲気下、100mlシュレンク反応容器に実施例1で合成した3,3’−ジブロモ−2,2’−ビス(ベンゾシクロブタ)ビフェニル79.3mg(0.172mmol)及びTHF8mlを加えた。−85℃に冷却し、n−ブチルリチウム(関東化学製、1.59M)のヘキサン溶液0.23ml(0.37mmol)を滴下した。−85℃で5分間撹拌した後、ジクロロジメチルシラン23.4mg(0.181mmol)を滴下した。一晩かけて室温まで昇温した後、水を加えた。トルエン及びNaClを添加し分相し、有機相をさらに飽和食塩水で洗浄した。無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧濃縮した。得られた粗生成物をシリカゲルフラッシュクロマトグラフィーで精製した後(溶離液;ヘキサン:トルエン=50:1)、ジメチルビス(ベンゾシクロブタ)ジベンゾシロールの濃黄色固体を得た(31.5mg,収率51%)。
融点:251−254℃
H NMR(CDCl,21℃):δ=7.03(s,2H),6.85(s,2H),6.77−6.71(m,4H),6.71−6.64(m,2H),6.64−6.58(m,2H),0.35(s,6H)
MS m/z: 358(M,100%),343(M−CH,42),328(M−2CH,10)
H NMRスペクトルを図2に示した。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】実施例1で合成した3,3’−ジブロモ−2,2’−ビス(ベンゾシクロブタ)ビフェニルのH NMRスペクトル(CDCl,21℃)
【図2】実施例2で合成したジメチルビス(ベンゾシクロブタ)ジベンゾシロールのH NMRスペクトル(CDCl,21℃)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で示されるジベンゾシロール誘導体。
【化1】

(ここで、置換基R〜R10は同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基若しくはハロゲン化アルキル基、炭素数4〜20のアリール基、又はフッ素、塩素、臭素、ヨウ素から選ばれるハロゲン原子を示す。なお、R〜Rの内、任意の二以上のものは互いに結合することができる。nは0又は1であり、A環は下記一般式(A−1)、(A−2)又は(A−3)で示される構造を有する。
【化2】

【化3】

【化4】

ここで、置換基R11〜R24は同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基若しくはハロゲン化アルキル基、炭素数4〜20のアリール基、又はフッ素、塩素、臭素、ヨウ素から選ばれるハロゲン原子を示す。なお、R11〜R14、R15〜R18、及びR20〜R23は、それぞれに、その置換基の内、任意の二以上のものは互いに結合することができる。
【請求項2】
請求項1に記載される一般式(1)で示されるジベンゾシロール誘導体において、n=1であり且つA環が一般式(A−1)であるジベンゾシロール誘導体。
【請求項3】
下記一般式(2)で示される、請求項1乃至2記載のジベンゾシロール誘導体の前駆化合物であるベンゾシクロブタジハロビフェニル誘導体。
【化5】

(ここで、置換基R25〜R32は同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基若しくはハロゲン化アルキル基、炭素数4〜20のアリール基、又はフッ素、塩素、臭素、ヨウ素から選ばれるハロゲン原子を示す。なお、R26〜R29の内、任意の二以上のものは互いに結合することができる。X及びXは同一又は異なって、臭素、ヨウ素、塩素のハロゲン原子を示し、nは0又は1であり、B環は下記一般式(B−1)、(B−2)又は(B−3)で示される構造を有する。
【化6】

【化7】

【化8】

ここで、置換基R33〜R46は同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基若しくはハロゲン化アルキル基、炭素数4〜20のアリール基、又はフッ素、塩素、臭素、ヨウ素から選ばれるハロゲン原子を示す。なお、R33〜R36、R37〜R40、及びR42〜R45は、それぞれに、その置換基の内、任意の二以上のものは互いに結合することができる。
【請求項4】
請求項3に記載される一般式(2)で示されるベンゾシクロブタジハロビフェニル誘導体において、n=1であり且つB環が一般式(B−1)であるビス(ベンゾシクロブタ)ジハロビフェニル誘導体。
【請求項5】
請求項3乃至4に記載のベンゾシクロブタジハロビフェニル誘導体をジリチオ化及び/又はジグリニャール化し、さらに脱離基を有するシラン化合物と反応させることを特徴とする請求項1乃至2記載のジベンゾシロール誘導体の製造方法。
【請求項6】
脱離基を有するシラン化合物が下記一般式(3)で示されるシラン化合物である、請求項5に記載のジベンゾシロール誘導体の製造方法。
【化9】

(式中置換基R及びR10の記号は請求項1に記載の一般式(1)で示される記号と同意義を示す。X及びXは同一又は異なって、ハロゲン原子、炭素数1〜20のアルコキシ基、又は炭素数1〜20のジアルキルアミノ基を示す。)
【請求項7】
下記一般式(4)で示される2,3−ジハロビフェニレン誘導体を、リチオ化剤を用いてホモカップリングすることを特徴とする、請求項4に記載されるビス(ベンゾシクロブタ)ジハロビフェニル誘導体の製造方法。
【化10】

(ここで、置換基X及びXは同一又は異なって、臭素又はヨウ素を示し、R25〜R30の記号は請求項3に記載の一般式(2)で示される記号と同意義を示す。)

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−312620(P2006−312620A)
【公開日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−71436(P2006−71436)
【出願日】平成18年3月15日(2006.3.15)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】