説明

ジャイロセンサ

【課題】小型かつ簡単な構成でありながら、回転方向を識別することができるとともに微小な回転角速度を高精度に計測することのできるジャイロセンサを提供する。
【解決手段】LD1からのレーザー光は、分岐部である偏波スプリッタ4並びに偏波フィルタ5および6により、偏光状態が互いに異なる第1の光Lと第2の光Lに分岐され、環状ファイバ7を互いに逆方向に通過する。環状ファイバ7は、少なくとも一部に偏光状態に応じて通過する光の速度が異なる媒質を含む。環状ファイバ7を通過した第1の光Lと第2の光Lとの干渉光を、光電変換部8により検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はジャイロセンサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ジャイロセンサとしてはコリオリ力を検出して、角速度の検出を行うものが知られている。加速度や遠心力が小さい時は、振動子に働く力がコリオリ力となり、このコリオリ力から角速度を計算することができる。この計算は、加速度や遠心力が小さいときに、比較的ゆっくりと変化する計測には適用可能である。しかし、加速度や遠心力が大きくなると、振動子に加わる、慣性力や遠心力が大きくなる。例えば、ロボットのように動的に運動するものの計測では、直線加速度や、角加速度、遠心力の効果が無視できず、ドリフトを引き起こす原因となっていた。現在ロボット用途のジャイロセンサに対して、ドリフトを除くことが強く求められている。さらに、コリオリ力などの慣性力は質量に比例する、つまり、寸法の3乗に比例するので、MEMSのように小型化すると感度が悪くなるという課題がある。
【0003】
また、3軸電子コンパスでドリフトのゼロ点補正をすることが考えられる。しかし、電子コンパスは、静止した状態で地磁気と重力の方向を見るのに適しているが、動きの大きいものは原理的に測定できないと考えられる。
【0004】
一方、ジャイロセンサの中でも、光の干渉効果を利用する光ファイバジャイロは、振動子を用いるジャイロセンサとは異なり、コリオリ力を検出するものではないため、上述のような加速度や遠心力によるドリフトが生じない。光ファイバジャイロでは、環状に構成された光ファイバを光が周回する際、周回に要する時間が光ファイバジャイロ自身の回転角速度に応じて変化する(サニャック効果)。したがって、右回りおよび左回りに周回してきた光の間には、回転角速度に応じた位相差が生じることになり、両者を合波した光の強度を測定することで位相差を検出し、これに基づいて回転角速度を検出することができる。
【0005】
しかし、環状ファイバを互いに逆周りに周回した光を合波してその強度を計測しても、ジャイロが回転する方向を区別することはできない。合波した光の強度はジャイロが静止しているときに最大値をとり、ジャイロが右回りに回転しても左回りに回転しても、回転角速度が等しければ光の強度は等しくなるためである。こうした課題を解決するために、例えば特許文献1では、出力側の光路を2つ設け、その一方に可変位相器を設けることによって、ジャイロ自身の回転方向を識別する方法が提案されている。また、非特許文献1では、誘導ブリルアン散乱現象を利用することで、回転方向を識別している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−42153号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】田中ほか、電子情報通信学会総合大会講演論文集(1996 年)、エレクトロニクス(1)、p.285
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1や非特許文献1に記載された方法では、光ファイバジャイロの装置が大きくなる上に、付加的な光路や可変位相器を設けることによる装置の複雑化により製造コストの増大が生じる。このため、機械的な可動部を必要とせず小型軽量に構成できるという、光ファイバジャイロ本来の利点が失われてしまう。さらに、従来の光ファイバジャイロには、回転角速度が0の近傍で、ジャイロセンサの出力変化が小さいため、微小な回転角速度を高精度に計測できないという問題もあった。
【0009】
したがって、これらの点に着目してなされた本発明の目的は、簡単な構成でありながら、回転方向を識別することができるとともに微小な回転角速度を高精度に計測することのできるジャイロセンサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するジャイロセンサの発明は、
レーザー光を発生する光源と、
該光源からの前記レーザー光を、偏光状態が互いに異なる第1の光と第2の光に分岐させる分岐部と、
前記分岐部から出力された前記第1の光と前記第2の光とを、互いに逆方向に通過させる環状の光路と、
前記環状の光路を通過した前記第1の光と前記第2の光との干渉光を検出する干渉光検出部とを備え、
前記環状の光路は、少なくとも一部に偏光状態に応じて通過する光の速度が異なる媒質を含むことを特徴とするものである。
【0011】
好ましくは、前記環状の光路は、光ファイバにより構成される。あるいは、前記環状の光路は、メタマテリアルまたはフォトニッククリスタルによりMEMS上に形成されても良い。
【0012】
また、前記分岐部は、前記第1の光と前記第2の光とを互いに逆向きに回転する円偏光として出力し、前記偏向状態に応じて通過する光の速度が異なる媒質は、カイラリティを示す媒質とすることができる。
【0013】
あるいは、前記分岐部は、前記第1の光と前記第2の光とを互いに直交する直線偏光として出力し、前記偏向状態に応じて通過する光の速度が異なる媒質は、複屈折を示す媒質としても良い。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、偏光状態を異ならせた第1の光と第2の光とを、少なくとも一部に偏光状態に応じて通過する光の速度が異なる媒質を含む環状の光路に、互いに逆方向に通過させて、それら第1の光と第2の光の干渉光を検出するようにしたので、単純な構成でありながら、回転方向を識別することができるとともに、微小な回転角速度を高精度に計測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1実施の形態に係るジャイロセンサの概略構成図である。
【図2】回転角速度に対するジャイロ出力を示すグラフである。
【図3】図2のグラフの回転角速度が0の近傍を拡大した図である。
【図4】本発明の第2実施の形態に係るジャイロセンサの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0017】
(第1実施の形態)
本発明の第1実施の形態に係るジャイロセンサの概略構成図である。このジャイロセンサは、光源であるレーザーダイオード(LD)1、光量安定化回路2、光サーキュレータ3、偏波ビームスプリッタ4、偏波フィルタ5および6、環状の光路である環状ファイバ7、干渉光検出部である光電変換部8、同期回路9およびロー・パス・フィルター(LPF)10を含んで構成される、光ファイバジャイロである。ここで、偏波ビームスプリッタ4、偏波フィルタ5および6は、分岐部を構成している。この図において、LD1と光サーキュレータ3との間、光サーキュレータ3と偏波ビームスプリッタとの間、および、光サーキュレータ3と光電変換部8との間の光路、並びに環状ファイバ7は、光ファイバ、好適には偏波保持ファイバにより構成され、それら光ファイバは図において太い線で表される。
【0018】
LD1は、連続発振するレーザー光源である。LD1の出力の一部は、LD1内に設けられた図示しない受光素子により検出され、光量安定化回路2に送信される。光量安定化回路2は、この信号に基づいて、LD1の出力が一定となるようにLD1を制御するとともに、LD1からの光信号を電気信号に変換し同期信号として同期回路9に送信する。
【0019】
光サーキュレータ3は3つのポートA,B,Cを有し、図1においてポートAに入力した光をポートBに、ポートBに入力した光をポートCに出力する。LD1から出射されたレーザー光は、光サーキュレータ3を介して、偏波ビームスプリッタ4に送信される。
【0020】
偏波ビームスプリッタ4は、無偏光の光を縦偏光(偏光方向が紙面に垂直な直線偏光:S偏光)と横偏光(偏光方向が紙面内にある直線偏光:P偏光)とに分波する。LD1からは直線偏光が出射されるが、その偏光方向が紙面法線と45度の角度をなすようにして偏波ビームスプリッタ4のポートDへ入力することにより、レーザー光は偏波ビームスプリッタ4内を直進して出力される横偏光と、偏波ビームスプリッタ4内で反射され出力される縦偏光とに分離される。さらに、偏波ビームスプリッタ4には、複屈折を示す偏波フィルタ5および6が設けられており、偏波フィルタ5は、横偏光を右回り円偏光へ変換してポートEから出射させ、偏波フィルタ6は、縦偏光を左回り円偏光へ変換してポートFから出射させる。偏波フィルタ5および6は、例えば1/4波長板である。なお、図1において、各光ファイバと偏波ビームスプリッタおよび偏波フィルタ5,6を結合させる光学系は省略している。
【0021】
環状ファイバ7は、カイラル媒質を含んで構成される。カイラル媒質とは、逆回り円偏光(右回り円偏光と左回り円偏光)に対して異なる分散特性を示す媒質であり、らせん形状の単位セルからなるメタマテリアルなどを用いて構成することができる(例えば、J. B. Pendry, Science Vol.306, p.1353-1355 (2004)参照)。また、スプリットリング共振器をらせん状に結合させたメタマテリアルを用いて、逆周り円偏光に対する屈折率を1以上異なるようにできることも知られている(例えば、B. Wang et al., Journal of Optics A: Pure and Applied Optics Vol.11, 114003 (2009)参照)。このように、逆周り円偏光に対して異なる光学特性を示すことを、以下では、光学的カイラリティと呼ぶ。
【0022】
分岐部(偏波ビームスプリッタ4、偏波フィルタ5,6)のポートEへ出力された右回り円偏光は環状ファイバ7を右回りに周回し、分岐部のポートFへ入力される。一方、分岐部のポートFへ出力された左回り円偏光は環状ファイバ7を左回りに周回し、分岐部のポートEへ入力される。環状ファイバ7は、カイラル媒質を含んで構成されているため、ジャイロセンサの角速度が0の場合でも、右回り周回光と左回り周回光の間には所定の位相差が生じる。なお、図1において、環状ファイバ7は1回のみ周回しているが、実際には環状に複数回周回するように構成しても良い。
【0023】
ポートFへ入力された右回り円偏光は、偏波フィルタ6により縦偏光となり、偏波ビームスプリッタ4に入力される。また、ポートEへ入力された左回り円偏光は、偏波フィルタ5により横変更となって偏波ビームスプリッタ4に入力される。これらの光は偏波ビームスプリッタ4により合成されて、ポートDへ出力される。
【0024】
ポートDから出力された光は、光サーキュレータ3を介して光電変換回路8へ入力され、電気信号に変換される。この電気信号は、光量安定化回路2から得られる同期信号とともに、 同期回路9へ入力され、位相差に対応する検出信号を取り出し、低域通過フィルタ(LPF)10によって不要波を取り除いてジャイロ出力信号とされる。
【0025】
次にジャイロセンサの出力信号について説明する。
【0026】
ジャイロセンサ自身が環状ファイバの中心軸線周りに回転していると、その回転角速度ωに応じて、光が環状ファイバを周回するのに要する時間が変化する。右回りおよび左回りに周回する光の所要時間tおよびtは、(1)式により表される。
【0027】
【数1】

【0028】
ここでνおよびνは、右回りおよび左回りに周回する第1の光および第2の光の速度、aは環状ファイバを円環状とした場合の環の半径である。それぞれの周回光の振幅(複素振幅の実数部)は、(2)式により表される。
【0029】
【数2】

【0030】
計測される光量は、(3)式に示すように、両者の和の自乗の時間平均に比例する。
【0031】
【数3】

【0032】
従来のジャイロセンサでは、環状ファイバ7として用いられている材料はガラスなどの等方性誘電体なので、ファイバ中の光の速度は周回する向きによらず、(4)式で表される。
【0033】
【数4】

【0034】
したがって、(3)式の中の時間差Δtは、(5)式のようにジャイロセンサ自身の回転速度ωに比例する。
【0035】
【数5】

【0036】
(3)式はΔtの偶関数であるから、ωの符号が正であっても負であっても、絶対値が等しければ検出される光量は変化しない。つまり、ジャイロ自身が慣性系に対して右回りに回転していても、左回りに回転していても、その回転方向をジャイロ出力信号からは識別できないことになる。
【0037】
そこで本発明では、ジャイロの環状ファイバ内にカイラル媒質を配することにより、光ジャイロファイバが抱える上記の問題点を克服する。図1において、右回り周回光と左回り周回光を互いに逆向きの円偏光となるようにすると、環状ファイバ7内での光の速度、すなわちνとνとは異なる値をとり(つまり、(4)式が成りたたず)、時間差Δtは、(6)式のように表される。
【0038】
【数6】

【0039】
図2は、通常の等方的な媒質により構成される光ファイバジャイロと、カイラル媒質を用いて構成した光ファイバジャイロとにおいて、(3)式に基づいて回転角速度ωに対するジャイロセンサの出力の計算値をグラフ化したものである。ここで、等方的な媒質に対しては(5)式を、カイラル媒質に対しては(6)式を、時間差Δtを求める式としてそれぞれ用いた。いずれの媒質に対しても、ジャイロ出力は静止時(ω=0)の値で規格化した。また、用いる光の周波数を600THzとし、環状ファイバ7の環の半径をa=500mm、ファイバの屈折率を、等方的な媒質では1.5、カイラル媒質では周回方向に応じて1.5×(1±α)、α=5×10−8とした。
【0040】
等方的な媒質の場合、ジャイロ出力はω=0を中心にして軸対称なグラフになっており、ジャイロ出力のみからは、回転角速度ωの符号を決めることができない。一方、カイラル媒質の場合には、回転角速度ωが0から変化するとき、ωが正の値をとればジャイロ出力が低下し、ωが負の値をとればジャイロ出力が増大する。したがって、静止状態からジャイロ自身が回転を始めたときに、符号をも含んだ回転角速度ωの値を、ジャイロ出力のみから知ることができる。
【0041】
図3は、図2の一部(ω=0の近傍)を拡大図示したものである。等方的な媒質からなる光ファイバジャイロでは、微小な回転角速度に対してはジャイロ出力の変化が非常に小さく、これを高精度に検出するのは難しい。時間差Δt(ωに比例する)が非常に小さい場合、(3)式は(7)式のように近似できる。
【0042】
【数7】

【0043】
したがって、微小回転によるジャイロ出力の変化量は回転角速度ωの2乗に比例することがわかる。一方、カイラル媒質を用いた場合には、微小回転に対してジャイロ出力が大きく変化し、回転角速度を高精度に検出することができる。図2からわかるように、回転角速度ωが大きく変化したときのジャイロ出力の変動周期は、等方的な媒質でもカイラル媒質でも同程度である。つまり、カイラル媒質を用いた光ファイバジャイロは、計測可能な回転角速度の範囲(ダイナミックレンジ)を犠牲にすることなく、微小回転に対する高精度計測を可能とする。
【0044】
以上により、本発明の光ファイバジャイロは、システムを大型化させたり、高価な構成要素を追加したりすることなしに、ジャイロの回転方向を識別でき、且つ、微小回転を高精度に検出することを可能とする。
【0045】
なお本実施の形態では、環状ファイバ7は全体に渡りカイラル媒質を含んで構成される必要は無く、環状ファイバ7の環状部分の一部のみがカイラル媒質を含む場合にも同様の効果が得られることは言うまでもない。通常の光ファイバには光学的カイラリティがないため、異なる2つの逆周り円偏光に対して、環状ファイバ中のカイラル媒質を含む一部の領域で付与された位相差は、両偏光が環状ファイバを周回して出力光として取り出されるまで保持される。一方、本発明の光ファイバジャイロでは、静止時の前記位相差がπ/10程度あればその効果を発揮することができる。したがって、逆周り円偏光に対して屈折率が1程度異なるようなカイラル媒質(例えば、B. Wang et al., Journal of Optics A: Pure and Applied Optics Vol.11, 114003 (2009)参照)であれば、環状ファイバ7のごく一部(波長より小さな領域)を、このカイラル媒質で満たせばよい。あるいは、逆周り円偏光に対する屈折率の差が1よりずっと小さなカイラル媒質を用いて、環状ファイバのより大きな領域を満たしてもよい。例えばπ/10の位相差を生じさせるためには、逆周り円偏光に対する屈折率差と、カイラル媒質が配されている領域の光路に沿った長さとを乗じたものが、用いる波長の1/20となればよい。
【0046】
(第2実施の形態)
図4は、本発明の第2実施の形態に係るジャイロセンサの概略構成図である。本実施の形態は、環状ファイバ7の媒質に、直線偏光の偏光方向に応じて光の速度が異なる複屈折媒質を用いたものである。
【0047】
このため、本実施の形態では、第1実施の形態に係るジャイロセンサにおいて、光サーキュレータ3を設けず、LD1からのレーザー光を光ファイバを介して偏波ビームスプリッタ4に直接入力させる。偏波ビームスプリッタ4は4つのポートD,E,F,Gを有しており、ポートDに入力された光が、ポートEから出力される縦偏光(p波)とポートFから出力される横偏光(s波)とに分離され、且つ、ポートEから入力される横偏光(s波)とポートFから入力される縦偏光(p波)とが、合波されてポートGから出力されるように構成される。さらに、偏波フィルタ5および6は設けない。その他の構成は、第1実施の形態と同様であるので、同一の構成要素には同一の参照符号を付して説明を省略する。
【0048】
この場合、LD1から偏波ビームスプリッタ4のポートDに入力されたレーザー光は、縦偏光と横偏光とに分離され、それぞれ、ポートEおよびポートFに出力される。ポートEに出力された縦偏光(第1の光)は、環状ファイバ7を右回りに周回してポートFに入力され、ポートFから出力された横偏光(第2の光)は、環状ファイバ7を左回りに周回してポートEに入力される。これら、ポートEに入力された横偏光とポートFに入力された縦偏光は、偏波ビームスプリッタ4により合波されポートGから、光電変換部8に入力される。以下の処理は、第1実施の形態と同様である。
【0049】
なお、横偏光と縦偏光に対する屈折率の差は、方解石などの複屈折媒質では0.1より大きな値を示し、本発明を実施するのに十分な大きさである。カイラル媒質を用いた例と同様、環状ファイバの全体を複屈折媒質で構成してもよいし、環状ファイバの一部を複屈折媒質で構成してもよい。
【0050】
本実施の形態によれば、環状ファイバ7を構成する複屈折媒質は縦偏光と横偏光に対して異なる屈折率を示すので、カイラル媒質の場合と同様に、環状ファイバが静止している状態であっても、縦偏光と横偏光との間には位相差が生じる。したがって、第1実施の形態と同様に、光電変換部8、同期回路9およびLPF10を介して得られるジャイロ出力に基づいて、回転角速度を検出することが可能になる。
【0051】
なお、本発明は、上記実施の形態にのみ限定されるものではなく、幾多の変形または変更が可能である。たとえば、分岐部として、偏波ビームスプリッタと偏波フィルタとを組み合わせた構成を用いたがこれに限られず、種々の光学系の構成が可能である。
【0052】
また、光のサニャック効果(回路を逆向きに進む光の光路長が回転によって長くなったり短くなったりする相対論的効果)による光の干渉を利用したジャイロセンサは、加速度や遠心力によるドリフトは発生しないが、小型化使用とする場合、MEMSの小さなパッケージに長い光路長をとれないという弱点がある。しかし、メタマテリアルやフォトニッククリスタルをMEMSとして構成することによって、その媒質中の光の速度をたとえば1/100に落とすことができるので、光ファイバジャイロの1/100の寸法でつくっても干渉性能を落とすことがなく、ドリフトのない高性能なジャイロセンサを実現することができる。
【0053】
したがって、第1および第2実施の形態の環状ファイバ7に代えて、メタマテリアルまたはフォトニッククリスタルによりMEMS上に環状の光路を形成し、この光路に異なる偏光状態の光を逆方向に通過させ、それらの光の干渉を検出するようにすれば、第1および第2実施の形態の効果に加えて、さらに、小型のジャイロセンサを実現することができる。このような小型のジャイロセンサは、特にロボットなどの分野に好適である。
【符号の説明】
【0054】
1 LD
2 光量安定化回路
3 光サーキュレータ
4 偏波ビームスプリッタ
5 偏波フィルタ
6 偏波フィルタ
7 環状ファイバ
8 光電変換部
9 同期回路


【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザー光を発生する光源と
該光源からの前記レーザー光を、偏光状態が互いに異なる第1の光と第2の光に分岐させる分岐部と、
前記分岐部から出力された前記第1の光と前記第2の光とを、互いに逆方向に通過させる環状の光路と、
前記環状の光路を通過した前記第1の光と前記第2の光との干渉光を検出する干渉光検出部とを備え、
前記環状の光路は、少なくとも一部に偏光状態に応じて通過する光の速度が異なる媒質を含むことを特徴とするジャイロセンサ。
【請求項2】
前記環状の光路は、光ファイバにより構成されることを特徴とする請求項1に記載のジャイロセンサ。
【請求項3】
前記環状の光路は、メタマテリアルまたはフォトニッククリスタルによりMEMS上に形成されることを特徴とする請求項1に記載のジャイロセンサ。
【請求項4】
前記分岐部は、前記第1の光と前記第2の光とを互いに逆向きに回転する円偏光として出力し、前記偏向状態に応じて通過する光の速度が異なる媒質は、カイラリティを示す媒質であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のジャイロセンサ。
【請求項5】
前記分岐部は、前記第1の光と前記第2の光とを互いに直交する直線偏光として出力し、前記偏向状態に応じて通過する光の速度が異なる媒質は、複屈折を示す媒質であることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載のジャイロセンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−19813(P2013−19813A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−154257(P2011−154257)
【出願日】平成23年7月12日(2011.7.12)
【出願人】(504137912)国立大学法人 東京大学 (1,942)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】