説明

ジョブ実行装置、ジョブ実行方法、およびコンピュータプログラム

【課題】プルプリントのようなジョブを実行させる装置を後から指定する場合であっても、ユーザが希望する条件によるジョブの実行を従来よりも確実にする。
【解決手段】画像形成装置2に次の機能部を設ける。ユーザが指定した複数の条件のうちのいずれかに基づいてプリントジョブを実行することできるか否かを判別する印刷可否判別部203と、複数の条件のうちのいずれかに基づいてプリントジョブを実行することできると判別された場合に、これらの条件のうちの、プリントジョブを実行することができる条件のうちのいずれかに基づいてプリントジョブを実行する、第一の印刷処理部205と、を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷などのジョブを実行する装置およびジョブの実行方法などに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ジョブを実行するためのデータをサーバに蓄積しておき、複数台の装置の中からユーザが任意に選択した装置によってジョブを実行する方法が提案されている。
【0003】
例えば、書類を印刷するジョブを実行するためのデータをサーバに蓄積しておき、複数台のプリンタの中からユーザが任意に選択したプリンタによってジョブを実行する方法が提案されている。ユーザが選択したプリンタがサーバに対してジョブのデータを要求し取得してジョブを実行する形態は、一般に「プルプリント」と呼ばれることがある。プルプリントに関する技術は、特許文献1に開示されている。
【0004】
プルプリントは、例えば次のような場合に好適に用いられる。ユーザは、営業所αから営業所βへ出張する前に、営業所αのパーソナルコンピュータで書類を作成し、それを印刷するためのジョブのデータをサーバに保存しておく。ユーザは、営業所βに着くと、営業所βに設置されているプリンタの中から任意のプリンタを選択しログインする。
【0005】
すると、選択されたプリンタは、サーバに対してジョブのデータを要求して受信し、書類を印刷する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−293266号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
また、ユーザは、ジョブのデータが生成される際に、ジョブを実行する条件を指定する。しかし、プルプリントにおいてはジョブのデータの生成時に出力を実行する装置を指定しない。よって、後でユーザがジョブの実行のために選択した装置が、ユーザが指定した条件の通りにジョブを実行することができる、とは限らない。よって、ユーザは、希望する条件通りの結果物を得られないことがある。
【0008】
本発明は、このような問題点に鑑み、プルプリントのようなジョブを実行させる装置を後から指定する場合であっても、ユーザが希望する条件によるジョブの実行を従来よりも確実にすることを、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一形態に係る、ジョブを実行するジョブ実行装置は、前記ジョブを実行する際の複数の条件を受け付ける条件受付手段と、当該ジョブ実行装置が前記複数の条件のうちのいずれかに基づいて前記ジョブを実行することできるか否かを判別する、ジョブ実行可否判別手段と、前記複数の条件のうちのいずれかに基づいて前記ジョブを実行することできると判別された場合に、前記複数の条件のうちの、前記ジョブを実行することができる条件である実行可条件のうちのいずれかに基づいて前記ジョブを実行する、ジョブ実行手段と、を有する。
【0010】
好ましくは、前記条件受付手段は、前記複数の条件とともに当該各条件の優先順位を受け付け、前記ジョブ実行手段は、前記実行可条件が複数ある場合は、当該複数の実行可条件のうちの優先順位が最も高い実行可条件に基づいて前記ジョブを実行する。
【0011】
または、前記複数の条件のうちのいずれに基づいても前記ジョブを実行することできないと判別された場合にユーザに対してその旨のメッセージを出力するメッセージ出力手段、を有する。
【0012】
または、前記複数の条件のうちのいずれに基づいても前記ジョブを実行することできないと判別された場合に1台または複数台の他のジョブ実行装置が前記複数の条件のうちのいずれかに基づいて前記ジョブを実行することできるか否かを判別する第二のジョブ実行可否判別手段と、前記複数の条件のうちのいずれかに基づいて前記ジョブを実行することできると判別された前記他のジョブ実行装置の識別情報を出力する、他装置通知手段と、を有する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、プルプリントのようにジョブを実行させる装置を後から指定する場合であっても、ユーザが希望する条件によるジョブの実行を従来よりも確実にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】印刷システムの全体的な構成の例を示す図である。
【図2】画像形成装置のハードウェア構成の例を示す図である。
【図3】画像形成装置の機能的構成の例を示す図である。
【図4】端末装置のハードウェア構成の例を示す図である。
【図5】端末装置の機能的構成の例を示す図である。
【図6】ジョブ中継サーバの機能的構成の例を示す図である。
【図7】条件設定画面の例を示す図である。
【図8】条件設定データの例を示す図である。
【図9】オプション機能テーブルの例を示す図である。
【図10】印刷可否判別処理の流れの例を説明するフローチャートである。
【図11】印刷不能通知画面の例を示す図である。
【図12】案内画面の例を示す図である。
【図13】画像形成装置の全体的な処理の流れの例を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本願の発明の一実施形態について説明する。
【実施例】
【0016】
図1は印刷システム1の全体的な構成の例を示す図、図2は画像形成装置2のハードウェア構成の例を示す図、図3は画像形成装置2の機能的構成の例を示す図、図4は端末装置3のハードウェア構成の例を示す図、図5は端末装置3の機能的構成の例を示す図、図6はジョブ管理サーバ4の機能的構成の例を示す図である。
【0017】
印刷システム1は、図1に示すように、LAN(Local Area Network)11、12、13、…、および通信回線5などによって構成される。
【0018】
印刷システム1は、パーソナルコンピュータで作成した書類を印刷したり用紙に記されている書類を読み取って電子データ化したりするためのシステムである。印刷システム1は、企業、役所、または学校などの組織において使用される。
【0019】
以下、印刷システム1の構成を、営業所A、営業所B、および管理部門Cの3つの拠点を有する企業Xにおいて印刷システム1が使用される場合を例に説明する。
【0020】
営業所AにはLAN11が設けられており、営業所BにはLAN12が設けられており、管理部門CにはLAN13が設けられている。
【0021】
LAN11には、画像形成装置2および端末装置3が設けられている。LAN12にも、画像形成装置2および端末装置3が設けられている。LAN13には、ジョブ管理サーバ4が設けられている。以下、各画像形成装置2を「画像形成装置2A」、「画像形成装置2B」、…と区別して記載し、各端末装置3を「端末装置3A」、「端末装置3B」、…と区別して記載することがある。また、印刷システム1内の各装置には、ユニークな装置名およびIPアドレスが与えられている。
【0022】
そのほか、LAN11〜13には、ルータが1台ずつ設けられている。ルータ同士は、通信回線5を介して互いに接続されている。これにより、LAN11〜13の各装置は互いに接続可能である。通信回線5として、インターネット、公衆回線、または専用線などが用いられる。
【0023】
画像形成装置2は、一般に複合機またはMFP(Multi Function Peripherals)などと呼ばれる装置であって、コピー、ファックス、ネットワークプリンティング、およびスキャンなどの機能を集約した装置である。
【0024】
ネットワークプリンティング機能は、画像データを端末装置3から受信して画像を用紙に印刷する機能である。「ネットワークプリンタ機能」または「PCプリント機能」などと呼ばれることもある。本実施例では、端末装置3から発信された画像データ(後述する印刷ジョブデータ7)は、一旦、ジョブ管理サーバ4に蓄積される。そして、要求に応じて画像形成装置2へ送られ、この画像形成装置2によって印刷が行われる。つまり、ジョブ管理サーバ4を介していわゆるプルプリントが行われる。
【0025】
画像形成装置2は、図2に示すように、CPU(Central Processing Unit)20a、RAM(Random Access Memory)20b、ROM(Read Only Memory)20c、ハードディスク20d、スキャナ20e、印刷ユニット20f、ネットワークインタフェース20g、タッチパネル20h、およびモデム20iのほか、種々の制御用回路などによって構成される。
【0026】
スキャナ20eは、用紙に記されている写真、文字、絵、図表などの画像を読み取って画像データを生成する装置である。
【0027】
印刷ユニット20fは、スキャナ20eによって読み取られた画像または他の装置から受信した画像データに示される画像を印刷する。なお、各画像形成装置2において、共通のページ記述言語が用いられる。
【0028】
タッチパネル20hは、ユーザに対してメッセージまたは指示を与えるための画面、ユーザが処理の指令および条件を入力するための画面、およびCPU20aの処理の結果を示す画面などを表示する。また、ユーザが指で触れた位置を検知し、検知結果を示す信号をCPU20aに送信する。
【0029】
ネットワークインタフェース20gは、通信回線5を介して端末装置3などの他の装置とTCP/IP(Transmission Control Protocol/Internet Protocol)で通信を行うためのNIC(Network Interface Card)である。
【0030】
モデム20iは、固定電話網を介して他のファックス端末との間でG3のプロトコルで画像データをやり取りするための装置である。
【0031】
ROM20cまたはハードディスク20dには、図3に示すユーザ認証部201、ジョブデータ取得部202、印刷可否判別部203、第一の印刷処理部204、画面表示制御部205、印刷条件再設定受付部206、第二の印刷処理部207、印刷可能装置検索部208、印刷実績通知部209、およびMFP属性データ記憶部211などを実現するためのプログラムおよびデータが記憶されている。これらのプログラムおよびデータは必要に応じてRAM20bに呼び出され、CPU20aによってプログラムが実行される。図3に示す各部は、主に、プルプリントによるネットワークプリンティングのサービスをユーザに提供するための処理を行う。
【0032】
そのほか、画像形成装置2には、Z折り仕上げ、カラー印刷、ステープル綴じ、または縮小印刷などのオプションの機能を任意に付けることができる。
【0033】
図1に戻って、端末装置3は、ネットワークプリンティングのサービスを画像形成装置2から提供してもらうクライアントである。
【0034】
端末装置3は、図4に示すように、CPU30a、RAM30b、ROM30c、ハードディスク30d、ディスプレイ30e、ネットワークインタフェース30f、キーボード30g、およびポインティングデバイス30hなどによって構成される。
【0035】
ディスプレイ30eは、ユーザに対してメッセージまたは指示を与えるための画面、ユーザが処理の指令および条件を入力するための画面、およびCPU30aの処理の結果を示す画面などを表示する。
【0036】
キーボード30gおよびポインティングデバイス30hは、ユーザが端末装置3にコマンドおよびデータなどを入力するための装置である。
【0037】
ネットワークインタフェース30fは、通信回線5を介して画像形成装置2などの他の装置とTCP/IPで通信を行うためのNICである。
【0038】
ROM30cまたはハードディスク30dには、図5に示す印刷条件設定画面表示制御部301、印刷条件設定受付部302、ジョブデータ生成部303、およびジョブデータ送信部304などの果たす機能を実現するためのプログラムおよびデータが記憶されている。これらのプログラムおよびデータは必要に応じてRAM30bに呼び出され、CPU30aによってプログラムが実行される。図5に示す各部は、主に、画像形成装置2のネットワークプリンティングのサービスを受けるための処理を行う。つまり、プリンタドライバの役割を果たす。
【0039】
図1に戻って、ジョブ管理サーバ4は、各端末装置3から出力された印刷ジョブデータ7(後述する)を蓄積し、要求に応じて画像形成装置2へ転送する。つまり、印刷ジョブデータ7の中継を行う。
【0040】
ジョブ管理サーバ4のハードウェア構成は、端末装置3のハードウェア構成と基本的に同じである。ただし、ジョブ管理サーバ4のハードディスクには、図6に示すジョブデータ受付部401、ジョブデータ記憶部402、ジョブデータ提供部403、およびジョブデータ削除部404などを実現するためのプログラムおよびデータが記憶されている。
【0041】
図7は条件設定画面WD1の例を示す図、図8は条件設定データ71の例を示す図、図9はオプション機能テーブルTL1の例を示す図、図10は印刷可否判別処理の流れの例を説明するフローチャート、図11は印刷不能通知画面WD2の例を示す図、図12は案内画面WD3の例を示す図である。
【0042】
次に、図3に示す画像形成装置2の各部、図5に示す端末装置3の各部、および図6に示すジョブ管理サーバ4の各部について説明する。
【0043】
図5において、端末装置3の印刷条件設定画面表示制御部301は、端末装置3自身がワープロなどのアプリケーションによって書類を開いている状態で、ユーザによって印刷コマンドが入力されると、図7のような条件設定画面WD1をディスプレイ30eに表示させる。
【0044】
ここで、ユーザは、その書類を印刷する際の条件を入力し指定する。ただし、画像形成装置2によっては、条件通りに印刷または仕上げを行えないことがある。そこで、ユーザは、複数の条件を、希望する順番(以下、「希望順」または「優先順」と記載する。)とともに指定することができる。図7の例では、ユーザは第2希望までの条件つまり2つの条件を指定している。
【0045】
印刷条件設定受付部302は、ユーザが条件設定画面WD1に指定した各条件を希望順とともに受け付ける。
【0046】
ジョブデータ生成部303は、その書類のデータを、画像形成装置2に対応したページ記述言語に変換することによって、その書類を印刷するための印刷ジョブデータ7を生成する。この際に、図8のように、印刷条件設定受付部302によって受け付けられた各条件およびその希望順(優先順)を示す条件設定データ71を印刷ジョブデータ7に含めておく。
【0047】
ジョブデータ送信部304は、ジョブデータ生成部303によって生成された印刷ジョブデータ7を、ユーザを識別するユーザID(identification)と対応付けて、ジョブ管理サーバ4へ送信する。
【0048】
図6において、ジョブ管理サーバ4のジョブデータ受付部401は、端末装置3から送信されてきた印刷ジョブデータ7を受け付ける。
【0049】
ジョブデータ記憶部402は、ジョブデータ受付部401によって受け付けられた印刷ジョブデータ7を記憶する。この際に、ユーザのユーザIDとの対応関係も、維持する。つまり、印刷ジョブデータ7を、ユーザの識別情報と対応付けたまま記憶する。さらに、その印刷ジョブデータ7を他の印刷ジョブデータ7と区別するためのデータIDを付与する。ジョブデータ提供部403およびジョブデータ削除部404については、後述する。
【0050】
図3において、画像形成装置2のMFP属性データ記憶部211には、図9のような、各画像形成装置2に備わっているオプションの機能を示すオプション機能テーブルTL1が記憶されている。オプション機能テーブルTL1は、オプションの機能が追加されまたは削除されるごとに、管理者によって更新される。または、自らに備わっているオプションの機能についてはオペレーティングシステムに問い合わせ、他の画像形成装置2のそれぞれに備わっているオプションの機能についてはそれぞれに問い合わせることによって、オプション機能テーブルTL1を自動的に生成してもよい。
【0051】
なお。「A3 Z折り仕上げ」は、A3サイズの用紙に画像を印刷しその用紙をZ折り(山折りと谷折りとを組み合わせた三つ折り)に仕上げる機能である。「A4縮小印刷」は、A3サイズの画像をA4サイズに縮小しA4サイズの用紙に印刷する機能である。
【0052】
さらに、MFP属性データ記憶部211には、各画像形成装置2が設置されている位置を示すMFP位置データDT1および各施設の間取の画像を再現するための間取画像データDT2が記憶されている。
【0053】
ユーザ認証部201は、本画像形成装置2を直接操作するユーザの認証の処理を、次のように行う。例えば、ユーザは、端末装置3を操作してネットワークプリンティングの指令を与えた後、本画像形成装置2のところに訪れる。そして、本画像形成装置2のタッチパネル20hを操作して自分のユーザIDおよびパスワードを入力する。
【0054】
すると、ユーザ認証部201は、データベースに予め登録されている各ユーザのユーザIDおよびパスワードと入力されたユーザIDおよびパスワードとを照合する。そして、登録されているいずれかのユーザIDおよびパスワードと入力されたユーザIDおよびパスワードとが一致すれば、タッチパネル20hを操作するユーザを、正規のユーザであると、認証する。一致しない場合は、不正なユーザであると、判別する。
【0055】
または、生体認証またはIC(Integrated Circuit)カードなどを用いてユーザ認証を行ってもよい。
【0056】
ジョブデータ取得部202は、ユーザ認証部201によって認証されたユーザのユーザIDに対応する印刷ジョブデータ7を、ジョブ管理サーバ4から取得する。具体的には、ジョブ管理サーバ4に対してそのユーザIDを通知することによって、印刷ジョブデータ7を要求する。
【0057】
すると、ジョブ管理サーバ4のジョブデータ提供部403(図6参照)は、通知されたユーザIDに対応付けられてジョブデータ記憶部402に記憶されている印刷ジョブデータ7を呼び出し、要求元の画像形成装置2へ送信する。
【0058】
図3に戻って、印刷可否判別部203は、ジョブ管理サーバ4から取得された印刷ジョブデータ7に含まれる条件設定データ71(図8参照)に示されるいずれかの条件で本画像形成装置2が印刷および必要な仕上げを行うことができるか否かを判別する。これらの可否の判別は、図10のフローチャートに示す手順で行われる。
【0059】
図10において、印刷可否判別部203は、取得された印刷ジョブデータ7に含まれる条件設定データ71から、希望順(優先順)が1番である条件を抽出する(#101)。抽出した条件が、本画像形成装置2のMFP属性データ記憶部211に記憶されているオプション機能テーブルTL1(図9参照)の中の、本画像形成装置2のレコードに示されているか否かをチェックする(#102)。そして、示されていれば(#103でYes)、条件通りの印刷等が可能であると判別する(#104)。
【0060】
例えば、希望順が1番である条件として、図8のように「A3 Z折り仕上げ」が示される場合は、本画像形成装置2のレコードに「A3 Z折り仕上げ」が示されているか否かをチェックする。そして、その条件が示されていれば、条件通りの印刷等が可能であると判別する。
【0061】
図8の例では、1つの条件には1つの属性に関してしか示されていないが、1つの条件に複数の属性に関する条件が示される場合もある。例えば、1つの条件に「A3 Z折り仕上げ」かつ「カラー印刷」という複数の属性に関する条件を含ませることができる。その場合は、それらの属性の条件すべてが本画像形成装置2のレコードに示されていれば、条件通りの印刷等が可能であると判別する。
【0062】
希望順が1番である条件の通りの印刷等が可能であると判別できなかった場合は、その条件設定データ71に示される、希望順が2番である条件を抽出する(#105)。そして、上記の、希望順が1番である条件に基づく場合と同様に、抽出した条件の有無をチェックし(#102)、その条件に基づく印刷等の可否を判別する(#103)。ただし、希望順が1番で終わりの場合は(#106でNo)、条件通りの印刷等が不能であると判別する(#107)。
【0063】
以下、同様に、可能であると判別できるまで、希望順に条件を抽出し、本画像形成装置2のレコードに示されているか否かをチェックする。そして、ある条件がすべて本画像形成装置2のレコードに示されていれば(#103でYes)、条件通りの印刷等が可能であると判別する(#104)。最後の希望順の条件の有無までチェックしても、条件通りの印刷等が可能であると判別できなかった場合は(#103でNo、#106でNo)、条件通りの印刷等が不能であると判別する(#107)。
【0064】
図3に戻って、第一の印刷処理部204は、印刷ジョブデータ7の条件設定データ71に示される条件通りの印刷等が可能であると印刷可否判別部203によって判別された場合に、この条件設定データ71に基づいて書類を用紙に印刷するための処理を行う。
【0065】
具体的には、印刷ジョブデータ7に基づいて書類のビットマップのデータを生成し、そのビットマップが用紙に印刷されるように印刷ユニット20fを制御する。ただし、ビットマップのデータは、条件設定データ71に示される各条件のうちの、印刷可能であると印刷可否判別部203によって判別された際の条件に基づいて、生成する。また、その条件に基づいて印刷物が仕上げられるように印刷ユニット20fを制御する。
【0066】
画面表示制御部205は、条件設定データ71に示される条件通りの印刷等が不能である場合の応対のための画面を適宜、表示する。
【0067】
まず、画面表示制御部205は、条件設定データ71に示される条件通りの印刷等が不能であると印刷可否判別部203によって判別されたタイミングで、図11のような印刷不能通知画面WD2をタッチパネル20hに表示させる。印刷不能通知画面WD2には、ユーザの希望通りの印刷等が本画像形成装置2によって行えない旨が示される。さらに、この場合の対応策についての選択肢が示される。
【0068】
ユーザは、端末装置3を操作して指定した条件に合った印刷物が得られなくても本画像形成装置2で印刷物が得られるのであれば構わないのであれば、「印刷」ボタンを押す。または、条件に合った印刷物を得るために他の画像形成装置2に印刷処理を実行させたいのであれば、「変更」ボタンを押す。または、印刷処理を中止するのであれば、「中止」ボタンを押す。
【0069】
印刷条件再設定受付部206は、印刷不能通知画面WD2の「印刷」ボタンが押されると、書類を印刷する条件を指定し直すための画面をタッチパネル20hに表示させ、ユーザが指定し直した条件を受け付ける。ただし、この画面は、本画像形成装置2で実行可能な印刷および仕上げに関する条件だけが指定できるように構成される。また、ユーザは、希望する条件を1つ(1組)だけ指定することができる。
【0070】
第二の印刷処理部207は、第一の印刷処理部204と基本的に同様に、ジョブ管理サーバ4から受信した印刷ジョブデータ7に基づいて書類が用紙に印刷され印刷物が仕上がるように、ビットマップデータを生成し印刷ユニット20fを制御する。ただし、印刷ジョブデータ7に含まれる条件設定データ71に示される条件の代わりに印刷条件再設定受付部206によって受け付けられた条件に基づいて印刷および仕上げが行われるように、ビットマップデータを生成し印刷ユニット20fを制御する。
【0071】
印刷可能装置検索部208は、印刷不能通知画面WD2の「変更」ボタンが押されると、条件設定データ71に示されるいずれかの条件に基づいて印刷および仕上げを行うことが可能である他の画像形成装置2を検索する。つまり、他の画像形成装置2それぞれについて、いずれかの条件に基づいて印刷および仕上げを行うことが可能であるか否かを判別し、可能であるものを選出する。判別の方法は、図10で説明した、本画像形成装置2自身が印刷および仕上げを行うことが可能であるか否かを判別する方法と、同じである。ただし、オプション機能テーブルTL1に示されるレコードのうちの、本画像形成装置2のレコードではなく他の画像形成装置2それぞれのレコードが、用いられる。
【0072】
そして、図12のような、検索(選出)された他の画像形成装置2の一覧を有する案内画面WD3が、画面表示制御部205によってタッチパネル20hに表示される。案内画面WD3は、印刷可能装置検索部208による判別結果のほかMFP位置データDT1および間取画像データDT2に基づいて、生成される。
【0073】
ユーザは、案内画面WD3を参照しながら自分の希望する条件で印刷および仕上げができる画像形成装置2の設置場所を調べ、そこへ移動して上記の作業をやり直せばよい。これにより、希望する条件で印刷され仕上げられた印刷物を得ることができる。
【0074】
印刷実績通知部209は、第一の印刷処理部204または第二の印刷処理部207によって書類が印刷された場合に、印刷が完了した旨をジョブ管理サーバ4へ通知する。この際に、印刷のために用いられた印刷ジョブデータ7のデータIDを通知する。
【0075】
すると、ジョブ管理サーバ4のジョブデータ削除部404(図6参照)は、通知されたデータIDを有する印刷ジョブデータ7を、ジョブデータ記憶部402から削除する。
【0076】
また、印刷不能通知画面WD2において「中止」ボタンが押されると、印刷実績通知部209は、書類の印刷を中止する旨をジョブ管理サーバ4へ通知する。この際に、その書類の印刷のための印刷ジョブデータ7のデータIDを通知する。
【0077】
すると、ジョブ管理サーバ4のジョブデータ削除部404は、通知されたデータIDを有する印刷ジョブデータ7を、ジョブデータ記憶部402から削除する。
【0078】
図13は画像形成装置2の全体的な処理の流れの例を説明するフローチャートである。次に、営業所Bに所属するユーザYが営業所Aへ出張して画像形成装置2Dを使用する場合を例に、画像形成装置2の全体的な処理の流れを、図13のフローチャートを参照しながら説明する。
【0079】
ユーザYは、営業所Aへ出張する前に、端末装置3Mを操作してA3サイズの書類を作成し印刷のコマンドを入力する。この際に、第1希望の条件として「A3 Z折り仕上げ」を指定し、第2希望の条件として「A4縮小印刷」を指定する。
【0080】
すると、端末装置3Mは、ユーザYが作成した書類のデータをページ記述言語のデータに変換し、図8のような条件設定データ71を付加することによって、印刷ジョブデータ7を生成する。そして、その印刷ジョブデータ7を、ユーザYのユーザIDと対応付けてジョブ管理サーバ4へ転送する。これにより、ユーザYの出張の準備が完了する。
【0081】
ユーザYは、営業所Bを出発し営業所Aに到着すると、営業所Aに設置されている任意の画像形成装置2を操作してログインを試みる。つまり、自分のユーザIDおよびパスワードを入力する。ここでは、画像形成装置2DにユーザIDおよびパスワードを入力する。
【0082】
すると、画像形成装置2Dは、データベースに予め登録されている各ユーザIDおよびパスワードと入力されたユーザIDおよびパスワードとを照合することによって、ユーザYが正規のユーザであるか否かをチェックする(図13の#11)。つまり、ユーザ認証を行う。
【0083】
画像形成装置2Dは、ユーザYが正規のユーザであることを確認できたら(#12でYes)、入力されたユーザID(つまり、ユーザYのユーザID)をジョブ管理サーバ4に対して通知し、ユーザYの印刷ジョブデータ7を取得する(#13)。
【0084】
印刷ジョブデータ7に含まれる条件設定データ71は、印刷および仕上げに関する条件が1つまたは複数、示されている。画像形成装置2Dは、希望順の高い条件から順に、それに基づいて印刷および仕上げを行うことが可能であるか否かを判別する(#14)。判別の詳細な手順は、前に図10で説明した通りである。
【0085】
画像形成装置2Dは、いずれかの条件に基づいて印刷および仕上げを行うことが可能であると判別した場合は(#15でYes)、その条件(つまり、希望順が最も高い、画像形成装置2Dが適用可能な条件)に基づいて書類の印刷および印刷物の仕上げを行う(#16)。そして、その印刷ジョブデータ7のデータIDとともに印刷の完了の旨をジョブ管理サーバ4へ報告する(#17)。
【0086】
図8および図9の例によると、画像形成装置2Dは、ユーザYが指定した2つの条件のいずれに基づいても、印刷および仕上げを行うことができない。よって、ステップ#14において、そのように判別する。
【0087】
画像形成装置2Dは、いずれの条件に基づいても印刷または仕上げを行うことが不能であると判別すると(#15でNo)、図11のような印刷不能通知画面WD2を表示する(#18)。
【0088】
ユーザYは、端末装置3Mで指定した条件に合った印刷物が得られなくてもよければ、「印刷」ボタンを押す。
【0089】
すると(#19でYes)、画像形成装置2Dは、条件を指定し直すための画面を表示し(#20)、画像形成装置2Dが実行可能な範囲で、ユーザYが希望する条件を受け付ける(#21)。そして、その条件に基づいて書類の印刷および印刷物の仕上げを行う(#22)。さらに、その書類の印刷ジョブデータ7のデータIDとともに印刷の完了の旨をジョブ管理サーバ4へ報告する(#23)。
【0090】
または、ユーザYは、端末装置3Mで指定した条件に合った印刷物を他の画像形成装置2から得たければ、印刷不能通知画面WD2の「変更」ボタンを押す。
【0091】
すると(#24でYes)、画像形成装置2Dは、条件設定データ71に示されるいずれかの条件に基づいて印刷および仕上げを行うことが可能である画像形成装置2を検索する(#25)。つまり、営業所A内の他の画像形成装置2それぞれについて、条件設定データ71に示されるいずれかの条件に基づいて印刷および仕上げを行うことが可能であるか否かを判別する。判別の処理の手順は、前に図10で説明した通りである。
【0092】
そして、画像形成装置2Dは、検索した他の画像形成装置2それぞれの位置を、図12のような案内画面WD3を表示することによって、ユーザYに知らせる(#26)。ユーザYは、他のいずれかの画像形成装置2のところへ移動してログインし、印刷物を得る。
【0093】
図8および図9の例によると、画像形成装置2A、2B、および2Cが見つかる。よって、ユーザYは、これらのうちのいずれかへ移動してログインし、印刷物を得ることができる。なお、案内画面WD3において、単に画像形成装置2A、2B、および2Cの位置を示すだけでなく、各画像形成装置2がどの条件に基づいて印刷および仕上げを行うことができるのかをも、示してもよい。
【0094】
または、ユーザYは、書類を印刷する必要がなくなった場合は、印刷不能通知画面WD2の「中止」ボタンを押す。
【0095】
すると(#24でNo)、その書類の印刷ジョブデータ7のユーザIDとともに印刷の中止の旨をジョブ管理サーバ4へ報告する(#25)。
【0096】
ジョブ管理サーバ4は、印刷または中止の報告を受けると、それとともに受信したユーザIDに対応する印刷ジョブデータ7を削除する。
【0097】
本実施例によると、ユーザは、営業所Aで印刷の指令を発した後で営業所Bに出向き、営業所Bの画像形成装置2にプルプリントを行わせる場合であっても、従来よりも確実に所望の条件の印刷物を得ることができる。
【0098】
本実施例では、ジョブの例としてプリントジョブを挙げたが、他のジョブであっても、本発明を適用することができる。
【0099】
本実施例では、画像形成装置2が複数の条件を満たす場合は、複数の条件のうちの最上位の条件に基づいてジョブを実行したが、複数の条件のうちのいずれかをユーザに選択させ、選択された条件でジョブを実行してもよい。
【0100】
その他、印刷システム1、画像形成装置2の全体または各部の構成、処理内容、処理順序、テーブルの構成などは、本発明の趣旨に沿って適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0101】
2 画像形成装置(ジョブ実行装置)
202 ジョブデータ取得部(条件受付手段)
203 印刷可否判別部(ジョブ実行可否判別手段)
204 第一の印刷処理部(ジョブ実行手段)
205 画面表示制御部(メッセージ出力手段、他装置通知手段)
208 印刷可能装置検索部(第二のジョブ実行可否判別手段)
7 印刷ジョブデータ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジョブを実行するジョブ実行装置であって、
前記ジョブを実行する際の複数の条件を受け付ける条件受付手段と、
当該ジョブ実行装置が前記複数の条件のうちのいずれかに基づいて前記ジョブを実行することできるか否かを判別する、ジョブ実行可否判別手段と、
前記複数の条件のうちのいずれかに基づいて前記ジョブを実行することできると判別された場合に、前記複数の条件のうちの、前記ジョブを実行することができる条件である実行可条件のうちのいずれかに基づいて前記ジョブを実行する、ジョブ実行手段と、
を有することを特徴とするジョブ実行装置。
【請求項2】
前記条件受付手段は、前記複数の条件とともに当該各条件の優先順位を受け付け、
前記ジョブ実行手段は、前記実行可条件が複数ある場合は、当該複数の実行可条件のうちの優先順位が最も高い実行可条件に基づいて前記ジョブを実行する、
請求項1記載のジョブ実行装置。
【請求項3】
前記複数の条件のうちのいずれに基づいても前記ジョブを実行することできないと判別された場合にユーザに対してその旨のメッセージを出力するメッセージ出力手段、を有する、
請求項1または請求項2記載のジョブ実行装置。
【請求項4】
前記複数の条件のうちのいずれに基づいても前記ジョブを実行することできないと判別された場合に1台または複数台の他のジョブ実行装置が前記複数の条件のうちのいずれかに基づいて前記ジョブを実行することできるか否かを判別する第二のジョブ実行可否判別手段と、
前記複数の条件のうちのいずれかに基づいて前記ジョブを実行することできると判別された前記他のジョブ実行装置の識別情報を出力する、他装置通知手段と、を有する、
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のジョブ実行装置。
【請求項5】
装置にジョブを実行させるジョブ実行方法であって、
前記ジョブを実行する際の条件を複数、ユーザに入力させておき、
前記装置が複数の前記条件のうちのいずれかに基づいて前記ジョブを実行することできるか否かを、前記装置に判別させ、
複数の前記条件のうちのいずれかに基づいて前記ジョブを実行することできると判別された場合に、複数の前記条件のうちの、前記ジョブを実行することができるいずれかの条件に基づいて前記ジョブを前記装置に実行させる、
ことを特徴とするジョブ実行方法。
【請求項6】
ジョブを実行するコンピュータに用いられるコンピュータプログラムであって、
前記コンピュータに、
前記ジョブを実行する際の複数の条件を取得する処理を実行させ、
前記コンピュータが複数の前記条件のうちのいずれかに基づいて前記ジョブを実行することできるか否かを判別する処理を実行させ、
複数の前記条件のうちのいずれかに基づいて前記ジョブを実行することできると判別された場合に、複数の前記条件のうちの、前記ジョブを実行することができるいずれかの条件に基づいて前記ジョブを実行させる、
ことを特徴とするコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−178292(P2010−178292A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−21680(P2009−21680)
【出願日】平成21年2月2日(2009.2.2)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】