説明

ジンセノサイドを含む血管狭窄及び再狭窄の予防又は治療用組成物

本発明は、ジンセノサイドRg3、Rg5若しくはRk1又は前記ジンセノサイドを含有するニンジン、紅参又は加工ニンジンの抽出物の使用、前記ジンセノサイド又は抽出物を含む血管狭窄及び再狭窄の予防又は治療用組成物、上記ジンセノサイド又はそれを含有する抽出物を投与して血管狭窄及び再狭窄を予防又は治療する方法、並びに血管狭窄及び再狭窄の予防又は治療のための薬剤の製造方法に関するものである。本発明の組成物は、血管狭窄及び再狭窄を効果的に予防又は治療することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下記構造式のニンジンのサポニン系成分であるジンセノサイドRg3、Rg5若しくはRk1、前記ジンセノサイドを含有するニンジン、紅参若しくは加工ニンジンの抽出物、又は前記ジンセノサイド若しくは抽出物を含む組成物の使用;前記ジンセノサイド又はそれを含有する抽出物を投与して血管狭窄及び再狭窄を予防又は治療する方法;及びニンジン、紅参又は加工ニンジンを抽出して血管狭窄及び再狭窄の予防又は治療のための薬剤を製造する方法に関するものである。
【0002】
【化01】

【背景技術】
【0003】
血管障害は血管で発生し、心筋への血液供給を阻害する。この血管障害の最も一般的な原因は動脈硬化症である。コレステロール及びその他の脂肪質、急性の血栓生成(acute thrombosis)、血液内の他の成分と結合して増大するプラーク(augmented plaque)並びに白血球の活性化及び付着(leucocyte activation and adhesion)は、動脈の狭窄を引き起こし、これにより、血液供給が減少され、 酸素不足となる(Libby P et al., Circulation, 86(6), 47-52, 1992., Lundgren CH et al., Circulation, 90(4), 1927-1934, 1994., Harker et al., Ann. NY Acad. Sci., 275, 321-329, 1976.)。その結果として、狭心症及び心筋梗塞を引き起こし、重症のときには死に至る。
【0004】
現在、血管疾患の治療は、血管新生(angiogenesis)のための治療並びに筋肉細胞の増殖抑制による血管狭窄(angiostenosis)及び再狭窄(restenosis)の防止に分けられる。
【0005】
経皮経管冠動脈形成術(Percutaneous Transluminal Coronary Angioplasty)は狭くなった冠動脈を手術によらずに、拡張する方法であり、経皮的冠動脈バルーン拡張術(Percutaneous Coronary Balloon Dilation)、経皮的冠動脈ステント挿入術(Percutaneous Coronary Stent Insertion)などで構成される。経皮的冠動脈バルーン拡張術は、以下の方法で冠動脈流を改善する方法である。すなわち;大腿部や腕の動脈を通じてガイド用導管を挿入した後、導管を病変のある冠動脈の入口にセットし;ガイド用導管の位置を確認した後、この導管の内部を通じて端部にバルーンが装着されている導管を冠動脈の狭窄部位にセットし;バルーンを拡張させる。拡張されたバルーンは、プラークなどで圧搾されて狭くなった冠動脈を拡張し、冠動脈の血流を改善する。また、ステント挿入術は金網付きバルーンを狭窄部位にセットした後、バルーンを拡張して冠動脈の内壁を金網で覆う方法である。このようなステント法(stent method)は、バルーン拡張術のみのときより再狭窄の発生率が低い。ステントが血管内壁に対する支持体の役割をする特性があるので、ステント法はバルーン拡張時、発生する合併症の治療に使われている。
【0006】
このような冠動脈形成術は、手術より便利な点から、世界中で使われており、麻酔の危険性を低減することができ、高い成功率を有する。この方法は、高齢、心臓疾患及び呼吸器疾患ため手術や麻酔のリスクが高い患者にとって、望ましい方法として適用することができる。手術的治療が不可能な胃腸管又は胆管の末期癌の患者の場合、この方法は残余生存期間の間の身体状態を改善させることで生活の質を向上させることができる。
【0007】
しかし、冠動脈形成術の場合、損傷によって誘導される血管内膜の増殖の過程で、血管内皮細胞の損傷、壁在血栓症(mural thrombosis)、血管平滑筋細胞と血管線維芽細胞の移動、単核細胞及びリンパ球の浸透、新生内膜の細胞の増殖、内皮細胞での再被覆化(reendothelialization)、アポトーシス(apoptosis)などによって再狭窄が発生する。6.8%の患者に血栓症や血管痙攣などによる再狭窄が発生することがあり、血管拡張術後、3〜6ケ月後、激しい血管の再狭窄が発生することもある。また、40%の患者においてバルーン拡張術部位に再狭窄が発生しうる(Herrman J-PR et al., Drugs, vol. 46, 18-52, 1993)。動脈及び静脈の周囲の手術した血管、冠動脈及び大腿血管の動脈内膜切除(endarterectomy)部位の20%に於いて血管の二次的な変化によって血管が詰まることがある(Volteas N et al., Int. Angiol, 2:; 13(2), 143-147, 1994)。また、糖尿病、高齢、狭心症の初期、又は不安定狭心症の場合には、再狭窄が頻繁に生じる(Leimgruber PP et al., Circulation, vol. 73, 710, 1986)。
【0008】
冠動脈の再狭窄防止のために、アテローム切除(atherectomy)、レーザー血管形成、高速回転粥腫切除(ロータブレーター:rotablator)、切断バルーンを用いた冠状血管形成(cutting balloon angioplast)及び放射線照射などの新しいPTCA(経皮経管冠動脈形成術:Percutaneous Transluminal Coronary Angioplasty)の機器が導入された。抗血小板剤、抗血栓剤、血管拡張剤、細胞増殖抑制剤、脂質代謝改善剤、抗酸化剤などの種々の全身的及び局所薬物療法、及び遺伝子療法のような分子生物学的治療が開発され、そして試みられている。これらのうち、経口投与又は静脈投与のような全身的な薬物療法は最も容易に適用できる治療法であるが、動物実験での再狭窄防止効果が報告されただけである。すなわち、この方法は 薬物の副作用のために臨床実験で再狭窄を防止することができず、PTCAを施行した部位で目的とする薬物濃度に到達できなかった。理論的に再狭窄は、PTCAが行われた局所部位の冠動脈のみで起きているので、再狭窄の防止のためには全身的な薬物療法よりは部位特異的(site-specific)に高濃度薬物投与が可能な局所薬物療法(local drug therapy)がさらに有用である。
【0009】
最近、PTCAを行った部位に直接薬物を投与するために、ダブルバルーンカテーテル、ディスパッチ(dispatch)、微小孔バルーン(microporous balloon)などが開発されて臨床に用いられている。また、長期間、PTCA手術部位に薬物を伝達するために、徐放性微細粒子(slow release microsphere)又は薬物を被覆したステントで治療する試みが増えてきた。
【0010】
冠動脈再狭窄の予防及び治療のための公知の組成物としては、韓国特許出願公開第2001−84811号公報に緑茶抽出物であるカテキンが、韓国特許出願公開第2004−8013号公報にクロトリマゾールが開示されている。また、現在、多く使われているコーティング剤としては、ラパマイシン(rapamycin)、パクリタキセル(paclitaxel)、シロリムス(silorimus)、ベラパミル(verapamil)などがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従来の薬物は、値段が高く、その利用に制限があったので、費用が安価で、有機溶媒に対する溶解度が高く、実際、ステントなどに適用が容易であり、細胞増殖抑制効果だけでなく、血管拡張活性を有する優れた、血管狭窄及び再狭窄の予防及び治療用薬剤が必要とされている。そこで、本発明者らは新しい血管狭窄及び再狭窄の予防及び治療のための新薬剤を開発するために、鋭意研究を繰り返した結果、ジンセノサイドRg3、Rg5又はRk1、及び紅参抽出物が筋肉細胞の成長を抑制することによって、血管狭窄及び再狭窄の予防又は治療に使用することができることを見出した。この知見に基づいて、本発明者らは、ニンジン及び紅参を特殊に加工し、ジンセノサイドが強化された加工ニンジンの抽出物が、より顕著に血管狭窄及び再狭窄の予防又は治療することができることを確認し、本発明を完成するに至った。
【0012】
本発明の目的は、ジンセノサイドRg3、Rg5若しくはRk1、又はそれらジンセノサイドを含有する、ニンジン、紅参若しくは加工ニンジンの抽出物を含む、血管狭窄及び再狭窄の予防又は治療用組成物を提供することである。
【0013】
本発明の他の目的は、ジンセノサイドRg3、Rg5若しくはRk1、又はジンセノサイドRg3、Rg5若しくはRk1を含有するニンジン、紅参又は加工ニンジンの抽出物の治療有効量を、血管狭窄及び再狭窄の予防又は治療を必要とする患者に投与することを含んでなる、血管狭窄及び再狭窄を予防又は治療する方法を提供することである。
【0014】
本発明の他の目的は、血管狭窄及び再狭窄を予防又は治療するための、ジンセノサイドRg3、Rg5若しくはRk1、又はジンセノサイドRg3、Rg5若しくはRk1を含有するニンジン、紅参若しくは加工ニンジンの抽出物の用途を提供することである。
【0015】
本発明の他の目的は、ジンセノサイドRg3、Rg5又はRk1を含有する、ニンジン、紅参又は加工ニンジンを、水、C1−4アルコール又はその混合溶媒で抽出して、血管狭窄及び再狭窄の予防又は治療のための薬剤を製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するために、本発明は、有効成分として、ジンセノサイドRg3、Rg5又はRk1を含有する、血管狭窄及び再狭窄の予防又は治療用の組成物を提供する。
【0017】
上記組成物は、純粋なジンセノサイドRg3及び/又はRg5及び/又はRk1;又はこれらのジンセノサイドを含むニンジン若しくは紅参の抽出物;又はこれらジンセノサイドが強化された加工ニンジン若しくはその抽出物、を用いて製造することができる。
【0018】
また、本発明は、ジンセノサイドRg3、Rg5又はRk1を含有する、ニンジン、紅参又は加工ニンジンの抽出物を含んでなる、血管狭窄及び再狭窄の予防又は治療用ニンジン組成物を提供する。
【0019】
上記ニンジン又は紅参の抽出物は、特に制限されないが、水、又はメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのようなC1−4アルコール、又はその混合溶媒によるものが好ましく、常法によって水参(raw ginseng)から製造することができる。
【0020】
また、本発明は、上記組成物を含有するヘルスケア製品を提供する。
さらに、本発明は、上記組成物でコーティングされたステントを提供する。
また、本発明は、ジンセノサイドRg3、Rg5若しくはRk1、又はこれらのジンセノサイドを含有するニンジン、紅参若しくは加工ニンジンの治療有効量を、血管狭窄及び再狭窄の予防又は治療を必要とする患者に投与することを含んでなる、血管狭窄及び再狭窄を予防又は治療する方法を提供する。
【0021】
さらに、本発明は、血管狭窄及び再狭窄を予防又は治療するための、ジンセノサイドRg3、Rg5又はRk1を含有する、ニンジン、紅参又は加工ニンジンの抽出物の用途を提供する。
【0022】
また、本発明は、ジンセノサイドRg3、Rg5又はRk1を含有する、ニンジン、紅参又は加工ニンジンを、水、C1−4アルコール又はその混合溶媒で抽出して、血管狭窄及び再狭窄の予防又は治療のための薬剤を製造する方法を提供する。
【0023】
本発明において、ニンジンはオタネニンジン(高麗人参:Panax ginseng)、トチバニンジン(竹節参;P. japonicum)、セイヨウニンジン(アメリカ参:P. quinquefolium)、三七ニンジン(田七人参:P. notoginseng)、三葉参(P. trifolium)及びヒマラヤ参(P. pseudoginseng)よりなる群から制限なく選択して使用することができ、これらの根、茎、葉又は全草を使用することができる。
【0024】
上記ジンセノサイドRg3、Rg5若しくはRk1が強化されたニンジンの抽出物は、ニンジンサポニンを含有するニンジンの根、葉、頭及び花;ニンジンの組織培養物;又は、水又は低級アルコールによるそれらの抽出物から、酸、酵素又は高温の処理によって得られる。
【0025】
本発明の一様態では、上記加工ニンジンは、i)ニンジンを50〜80℃の温度にて酸で処理し、ii)処理されたニンジンを、110℃未満の温度で0.5〜15時間蒸気処理する、方法で得られる。
【0026】
本発明の組成物は、例えば、加工ニンジンの抽出物又はその凍結乾燥生成物を含有していてもよい。上記抽出物は、i)ニンジンを50〜80℃の温度にて酸で処理すること(第1工程);及び、ii)第1工程で処理されたニンジンを、110℃未満の温度で0.5〜15時間蒸気処理すること(第2工程)、で調製された加工ニンジンを、水、又はC1−4の低級アルコールのような通常の溶媒で抽出して製造される。
【0027】
本発明の組成物は、上記の加工ニンジンの抽出物又はその凍結乾燥物に、さらに粉末化した紅参又は白参を混合して製造でき、これは、明らかに、本発明の権利範囲に属するものである。
【0028】
本発明において、上記加工方法の第1工程でに用いられる酸は、ニンジンのジンセノサイドの20番目炭素に位置した置換基の置換を引き起こすことができるものであれば、特に制限されないが、酢酸が好ましい。酢酸を使用する場合、酢酸の濃度は特に制限されないが、20〜100%の濃度であってもよい。酢酸の沸点が約107℃であるため、別途の除去工程を用いることなく、 蒸気処理工程で除去され得るので、酢酸の使用が特に好ましい。
【0029】
上記第1工程の酸処理時には、酸による置換がこの範囲の温度で促進されるので、約50〜80℃、より好ましくは約65〜75℃の蒸気温度が好ましい。また、約70℃の温度で0.1〜10時間、好ましくは1〜5時間、特に好ましくは約3時間ニンジンを酸処理をすることが好ましい。
【0030】
本発明において、加工ニンジンは、上記第1工程で処理されたニンジンを110℃未満の温度で0.5〜15時間、蒸気処理して製造される。大韓民国特許第96−17670号に記述された加工方法の場合には、特に温度範囲を120〜180℃で継続して保持しなければならないという実用上の短所があり、経済性が落ちる。本発明のニンジンは、110℃未満の温度、好ましくは100℃、より好ましくは100〜20℃の温度で、0.5〜15時間、好ましくは0.5〜8時間、より好ましくは1〜3時間、蒸気処理されるので、本発明は、上記特許方法に比べて遥かに簡便であり、且つ高収率でジンセノサイドRg3、Rg5及びRk1の含有量を増大させることができる。
【0031】
本発明において、本発明の組成物に使用する抽出物又はその凍結乾燥品は、上記第2工程の後に、水若しくはメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのようなC1−4のアルコール、又はその混合溶媒を用いて、熱湯抽出(broth extraction)又は超音波処理のような常法によって製造することができる。
【0032】
本発明の組成物は、下記実験例のように、血管狭窄及び再狭窄を顕著に改善することから、血管狭窄及び再狭窄の予防又は治療の薬剤として使用することができる。
【0033】
本発明の組成物は、薬剤学的分野で公知の方法によって製剤化できる。すなわち、本発明の組成物は、薬剤学的に許容される担体、賦形剤などと混合し、通常の製剤、例えば、ドリンク剤のような液剤、シロップ剤及びカプセル剤に製剤化でき、これらは経口又は非経口で投与することができる。本発明の組成物は、迅速な効果を得るため、ドリンク剤として食前及び/又は食後に経口投与することが好ましい。
【0034】
本発明の組成物を含むカプセル剤及び液剤は、ヘルスケア製品として使用することが好ましい。本発明で使われる「ヘルスケア製品」は、人体に有用な機能性を有する原料や成分を使用して、錠剤、カプセル、粉末、顆粒、液剤、ピルなどの形態に製造加工した食品の製品をいう。
【0035】
本発明の組成物は、体内における有効成分の吸収度、排泄速度、患者の年齢、体重、性別及び状態、治療する疾患の重症程度などによって適宜選択される。しかし、通常は液剤として1日1〜3回、それぞれ0.5〜10mg/kg投与することが好ましい。その他の製剤にいても、上記液剤の投与量を考慮した適正量を経口投与できる。
【0036】
以下に、本発明を下記の実施例により更に具体的に説明するが、それにより本発明の範囲を何ら制限するものではない。
【実施例】
【0037】
A.20(R)及び20(S)ジンセノサイドRg3、Rg5及びRk1の製造
加工ニンジンの抽出物粉末30gを、メチレンクロリド/メタノール/水(v/v、75:30:10)の下の層を溶出液として用いて、シリカゲルカラム上でクロマトグラフィー処理して、ジンセノサイドRg3含有の分画物600mg、及びRg5並びにRk1含有の分画物400mgを得た。
【0038】
ジンセノサイドRg3含有の分画物600mgをメタノールで再結晶し、150mgの20(R)ジンセノサイドRg3を得た。残りのメタノール可溶性分画物400mgから、HITACHI社の分取HPLCシステム(ポンプ;L−7100、検出器;L−7455、インターフェース;D−7000、カラムオーブン;L−7300、自動フィーダー;L−7200)を使用し、20(S)ジンセノサイドRg3を単離した。分離条件は、固定相としてZorbax Eclipse XDB−C18 9.4×250mmを使用した;移動相の条件は、アセトニトリル/水(v/v、40:60);流速は4mL/min;総分離時間は90分であった;試料は100mg/mL濃度でメタノールに溶解して、50μLずつ注入し、UV検出器により203nmで検出した。分取HPLCを繰り返して、60mgのジンセノサイド(S)−Rg3を得た。
【0039】
20(R)ジンセノサイドRg3 13C−NMR(ppm、ピリジン−d):δ 15.73, 16.31, 16.51, 17.21, 17.63, 18.35, 22.52, 22.71, 25.77, 26.53, 26.64, 28.02, 31.31, 32.05, 35.07, 36.8, 39.01, 39.61, 39.90, 43.16, 49.10, 50.27, 50.49, 51.67, 56.25, 62.56, 62.73, 70.79, 71.49, 71.51, 72.89, 77.07, 77.84, 78.04, 78.21, 78.37, 83.34, 88.81, 105.05, 105.98, 125.95, 130.71
【0040】
20(S)ジンセノサイドRg3 13C−NMR(ppm、ピリジン−d):δ 15.73, 16.26, 16.31, 16.45, 17.39, 18.32, 22.39, 25.24, 26.12, 26.24, 26.64, 27.51, 30.72, 31.43, 35.27, 36.29, 37.34, 38.51, 39.09, 39.97, 47.94, 49.76, 51.10, 54.19, 55.74, 62.05, 62.21, 70.40, 70.99, 72.36, 72.40, 76.55, 77.33, 77.52, 77.80, 78.21, 82.80, 88.30, 104.52, 105.45, 126.95, 130.16
【0041】
ジンセノサイドRg5及びRk1含有の分画物400mgを、HITACHI社の分取HPLCシステム(ポンプ;L−7100、検出器;L−7455、インターフェース;D−7000、カラムオーブン;L−7300、自動フィーダー;L−7200)を使用して分離した。分離条件は、固定相としてZorbax Eclipse XDB−C18 9.4×250mmを使用した;移動相の条件は、アセトニトリル/水(v/v、48:52);流速は4mL/min;総分離時間は90分であった;試料は100mg/mL濃度でメタノールに溶解して、50μLずつ注入し、UV検出器により203nmで検出した。分取HPLCを繰り返し、目的とするジンセノサイドRg5及びRk1をそれぞれ30mg、10mg得た。
【0042】
ジンセノサイドRg5 13C−NMR(ppm、ピリジン−d):δ 13.0, 16.0, 16.5, 16.6, 17.0, 17.8, 18.5, 25.8, 26.7, 27.0, 27.4, 28.1, 32.3, 32.6, 35.3, 37.0, 39.2, 39.7, 40.2, 50.5, 50.9, 51.2, 56.4, 62.6, 62.8, 71.4, 72.4, 72.6, 77.2, 77.9, 78.1, 78.3, 78.3, 83.5, 88.9, 105.2, 106.1, 123.5, 124.6, 131.2, 140.2
【0043】
B.加工ニンジンの製造
1.酢酸処理工程
加工ニンジンの製造のために用いた蒸気処理器(ソガン(Seogang)ENG(株)製、韓国)、濃縮器(EYELA社製、日本)、凍結乾燥器(イルシンラップ(Ilshinwrap)(株)製、韓国)は、ユニゼン社の素材開発チームが保有している。4年根の水参(raw ginseng)(錦山;Keumsan)を工程の原料として用いた。また、ジンセノサイドRg3及びRg5の含有量を比較するために、4年根の水参以外に、紅参(red gindeng)、白参(white ginseng)、白尾参(white tail ginseng)、5年根の水参(錦山)を購入して使用した。95%以上の無水の醋酸(サムジェン化学(Samjeon)(株)製、韓国)を酢酸反応の溶媒として使用した。
【0044】
酢酸処理の最適濃度及び最適の処理方法を求めるために、4年根の水参100gを定量し、2つのプラスチック容器の各々に入れた後、無水の酢酸と水をそれぞれ1:1混合した50%の酢酸1.5Lと、水を混ぜない無水の100%の酢酸1.5Lをそれぞれのプラスチック容器に入れた。酢酸が投入された2つのプラスチック容器の一方のプラスチック容器を、水浴内で70℃に3時間加熱し、他方のプラスチック容器は熱処理することなく、2、4、6、8、10、24及び48時間、室温にて放置した。
【0045】
2.ニンジンの蒸気処理及び抽出物の製造
上記工程B.1.によって製造された加工ニンジンを、酢酸の除去、糖の追加及び加水分解処理のために、蒸気処理し、そして抽出した。最適の蒸気処理温度及び時間を求めるために、酢酸で処理された水参を、それぞれ120℃(8hr)、100℃(3hr)、80℃(8hr)及び80℃(3hr)の温度及び時間で蒸気処理し、試料9〜12に加工した。
加工ニンジンを70%のエタノールで、80℃にて6時間抽出した後、45℃にて約5時間抽出した。
【0046】
凍結乾燥中の温度上昇及び減圧による排気効果を低減するために、高粘度の反応物(約65〜70ブリックス)である抽出物を温水で希釈して、粘度を約24ブリックスに下げてから、この反応物を−70℃で約2日間、凍結した。反応物の凍結が完了した後、反応物を−70℃、10mtorrで2日間、凍結乾燥した。
【0047】
3.含有量分析
反応物の分析用HPLCとして、HITACHI社のシステム(ポンプ;L−7100、検出器;L−7455、インターフェース;D−7000、カラムオーブン;L−7300、自動フィーダー;L−7200)を使用した。分析条件は以下の通りであり;固定相としてCapcell PAK C18(5μm)、3.0×75mmを使用し;移動相の条件は、A溶媒:アセトニトリル及びB溶媒:水の傾斜制御した条件であり、流速は0.5mL/minとし;総分離時間は110分であり;カラムオーブンの温度は40℃であり;試料の注入量は10μLにし;そして、試料をUV検出器により203nmで検出した。ジンセノサイドRb1、Rb2、Rc、Rd、Re、Rf及びRg1は60分内に分離され、Rg3、Rg5及びRk1は70分以後に分離された。
【0048】
上記工程B.2.で製造された加工ニンジンの抽出物の分析用試料は、メタノールで2mg/mLの濃度に調製した。ジンセノサイドの標準試料は0.2mg/mLの濃度に調製し、標準試料と酢酸で処理した原料の試料の両方を、自動フィーダーに投入して分析した。
【0049】
4年根の水参を、上記の酢酸処理方法を使用して下記表1(試料1〜8)の条件に従って加工し、その結果は以下のように分析され、熱処理をしない場合は、Rg3及びRg5がほとんど生成されず、70℃で3時間熱処理を実施した場合には、50%の酢酸及び100%の酢酸のそれぞれの反応物でRg3及びRg5が生成された。ここで、大量生産工程へのスケールアップを考慮すると、反応溶媒である酢酸の濃度を最小化することが有利なので、50%の酢酸が最適濃度であると認められた。また、処理方法として、熱処理することに決定した。
【0050】
【表1】

【0051】
蒸気処理工程によるジンセノサイドの含有量を比較すると、120℃で8時間及び100℃で3時間の条件では、比較的高いRg3及びRg5の含有量を示した。そして、酢酸は100℃で完全に除去された。経済的効率の面から、温度及び時間を最小限にしなければならない。従って、100℃の蒸気処理温度及び3時間の蒸気処理時間が、この工程において最適であると評価された(表2)。
【0052】
【表2】

【0053】
ニンジンの種類によるジンセノサイドの含有量は、紅参、白参、水参の全てに於いて同様のものであることが示された(表3)。
【0054】
【表3】

【0055】
要約すると、ジンセノサイドRg3及びRg5の含有量を増加させるための既存の特許及び生産方法のうち、酵素を用いて特定のジンセノサイドを製造する方法は、単位当たりの製造コストが高く、製造工程が複雑であるため、大量生産の工程に応用するのは難しい。また、高温及び高圧の条件下でのジンセノサイドの加水分解反応を誘導する方法は、高温及び高圧条件を設定することが困難である。
【0056】
その意味で、本願発明は、高温及び高圧条件を設定せずに、酢酸のような溶媒を利用することによって、ジンセノサイドを高含有量で含む本発明の組成物を製造できるという利点がある。また、本発明組成物の製造工程も、その他の製造工程に比べて簡便なものなので、大量生産工程へのスケールアップに容易に適用できる。そして、酢酸の回収及び廃棄の面から、本発明の工程は、多量の酢酸を使用して、そして分離する工程とは異なり、ある特定量の50%の酢酸に浸漬した原料を加熱するものである。また、使用した酢酸は廃棄するのではなく、その状態で再使用が可能であり、本発明はMSDSで規定する環境要求事項を満たしている。
(実験例)
【0057】
1.細胞培養(Cell Culture)
SMCs(ヒト大動脈平滑筋細胞:human aortic smooth muscle cells, Cambrex, USA)を、10%のFBS(Cambrex, USA)を含有するSmGM−2 Bullet Kit(Cambex, USA)培地に100X抗生物質(Cambex, USA)と共に培養し、1X トリプシン−EDTA(Gibco BRL, USA)を利用して、37℃にて5%のCO条件を保持して継代培養した。
【0058】
2.細胞毒性実験(Cell Cytotoxicity)
ジンセノサイド及び紅参抽出物が、筋肉細胞の成長に影響を及ぼすのか否かを確認する前に、細胞毒性を、筋肉細胞でのジンセノサイドRk1、Rg3及びRg5、紅参抽出物、及び本発明の組成物による細胞毒性効果として測定した。
【0059】
試料に対する細胞毒性は、比色MTT試験(Scudiero D. A. et al., Cancer Res., 48: 4827-4833, 1988)で測定した。即ち、96ウェルマイクロタイター組織培養皿(Falcon)に筋肉細胞を1×10細胞/mLで塗抹し、それぞれのウェルを試料で処理した後、一定時間培養して、MTT試料で処理し、そしてホルマザン形成時、これを可溶化溶液で溶解し、540nmで吸光度を測定した。その結果を下記図1及び2に示した。
【0060】
図1及び2に示されるように、ジンセノサイドRk1、Rg3及びRg5、紅参抽出物、及び本発明の組成物は、いずれも適正濃度で細胞毒性を見出せなかった。
【0061】
3.細胞増殖実験(Cell Proliferation)
本実験では、筋肉細胞で、ジンセノサイド、紅参抽出物及び本発明の組成物による細胞増殖抑制効果を測定した。
【0062】
試料による細胞増殖効果を測定するために、細胞増殖 ELISA BrdU試験kit(Roche, USA)を購入して使用した。96ウェルプレートに細胞を入れて培養した後、試料で処理し、そして一定時間培養した。一定時間後に、BrdUラベリング溶液を細胞に入れ、5%のCO条件で37℃にて2時間反応させる。次いで、FixDenatを入れ、常温で30分間反応させた。その後、Anti−BrdU−POD希釈標準溶液を入れ、常温で1時間30分反応させた。その後、基質溶液を加えて、混合物を常温で約20分程度反応させた。硫酸を用いて反応を停止させた後、450nmで吸光度を測定した。その結果を図3及び4に示した。
【0063】
図3及び4に示されるように、ジンセノサイドRg3及びRg5は、5μg/mLの濃度で筋肉細胞の成長を50%抑制した。また、ジンセノサイド、紅参抽出物及び本発明組成物は、筋肉細胞の成長を濃度依存的に抑制した。しかし、ジンセノサイドRg3、Rg5及びRk1の含有量がさらに多い加工ニンジンの抽出物が、紅参抽出物(RG)より強力に筋肉細胞の成長を抑制していることを確認した。
【0064】
つまり、ジンセノサイドRg3、Rg5及びRk1が、筋肉細胞の成長を抑制することを確認した。また、紅参抽出物及びジンセノサイド含有抽出物も筋肉細胞の成長を抑制した。従って、これらの実験試料は、新生内膜形成抑制効果、そして血管狭窄及び再狭窄の予防及び治療に効果があると思料される。
【0065】
製剤例1:液剤の製造
試料14のエタノール抽出物 20g
砂糖 10g
異性化糖 10g
レモン香 適量
精製水を加えた後の総量 100mL
上記の成分を通常の液剤の製造方法により混合し、滅菌して液剤を製造した。
【0066】
製剤例2:液剤の製造
試料16のエタノール抽出物 30g
砂糖 10g
異性化糖 10g
レモン香 適量
精製水を加えた後の総量 100mL
上記の成分を通常の液剤の製造方法により混合し、滅菌して液剤を製造した。
【0067】
製剤例3:液剤の製造
ジンセノサイドRg5 3g
砂糖 10g
異性化糖 10g
レモン香 適量
精製水を加えた後の総量 100mL
上記の成分を通常の液剤の製造方法により混合し、滅菌して液剤を製造した。
【0068】
製剤例4:カプセル剤の製造
試料14のエタノール抽出物 500mg
ラクトース 50mg
でんぷん 50mg
タルク 2mg
ステアリン酸マグネシウム 適量
上記の成分を混合し、通常のカプセル剤の製造方法によりゼラチンカプセルに充填してカプセル剤を製造した。
【0069】
製剤例5:カプセル剤の製造
ジンセノサイドRg3 100mg
ラクトース 50mg
でんぷん 50mg
タルク 2mg
ステアリン酸マグネシウム 適量
上記の成分を混合し、通常のカプセル剤の製造方法によりゼラチンカプセルに充填してカプセル剤を製造した。
【0070】
製剤例6:飲料の製造
試料20のエタノール抽出物の凍結乾燥物6重量%、果糖5重量%、クエン酸0.1重量%及び適量のレモン香の混合物を調製し、それに精製水を添加して飲料を製造した。
(産業上利用可能性)
【0071】
ジンセノサイドRg3、Rg5又はRk1、又はこれらジンセノサイドを含有するニンジン、紅参又は加工ニンジンの抽出物は、血管狭窄及び再狭窄の予防又は治療に効果的である。特に、ジンセノサイドRg3、Rg5又はRk1の含有量が高い加工ニンジンは、血管狭窄及び再狭窄の予防又は治療に、より優れた効果を示す。経皮経管冠動脈形成術のような手術的方法を用いなくても、本発明の組成物は心臓疾患などを有効に予防及び治療することができる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】図1は、ジンセノサイドRg3、Rg5又はRk1による細胞毒性効果を示すグラフである。
【図2】図2は、紅参抽出物及び本発明の組成物による細胞毒性効果を示すグラフである。
【図3】図3は、ジンセノサイドRg3、Rg5又はRk1による筋肉細胞の増殖抑制効果を示すグラフである。
【図4】図4は、紅参抽出物及び本発明の組成物による筋肉細胞増殖抑制効果を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効成分としてジンセノサイドRg3、Rg5又はRk1を含有する、血管狭窄及び再狭窄の予防又は治療用組成物。
【請求項2】
ジンセノサイドRg3、Rg5若しくはRk1を含有する、ニンジン、紅参又は加工ニンジンの、水、C1−4アルコール又はその混合溶媒による抽出物を含む、血管狭窄及び再狭窄の予防又は治療用組成物。
【請求項3】
ニンジンを50〜80℃の温度にて酸で処理し、処理されたニンジンを110℃未満の温度で0.5〜15時間蒸気処理して得られた加工ニンジンの、水、C1−4アルコール又はその混合溶媒による抽出物を含む、血管狭窄及び再狭窄の予防又は治療用組成物。
【請求項4】
処理する酸が酢酸であることを特徴とする、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の組成物を含有する、血管狭窄及び再狭窄の予防又は治療用ヘルスケア製品。
【請求項6】
カプセル剤、錠剤、懸濁剤、顆粒、液剤又は散剤から選択される、請求項5に記載のヘルスケア製品。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれかに記載の組成物でコーティングされたステント(stent)。
【請求項8】
ジンセノサイドRg3、Rg5又はRk1の治療有効量を、血管狭窄及び再狭窄の予防又は治療を必要とする患者に投与することを含んでなる、血管狭窄及び再狭窄を予防又は治療する方法。
【請求項9】
ジンセノサイドRg3、Rg5若しくはRk1を含有する、ニンジン、紅参又は加工ニンジンの、水、C1−4アルコール若しくはその混合溶媒による抽出物の治療有効量を、血管狭窄及び再狭窄の予防又は治療を必要とする患者に投与することことを含んでなる、血管狭窄及び再狭窄を予防又は治療する方法。
【請求項10】
ニンジンを50〜80℃の温度にて酸で処理し、処理されたニンジンを110℃未満の温度で0.5〜15時間蒸気処理して得られた加工ニンジンの、水、C1−4アルコール又はその混合溶媒による抽出物の治療有効量を、血管狭窄及び再狭窄の予防又は治療を必要とする患者に投与することを含んでなる、血管狭窄及び再狭窄を予防又は治療する方法。
【請求項11】
処理する酸が酢酸であることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
加工ニンジンが、ジンセノサイドRg3、Rg5又はRk1を含有することを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
血管狭窄及び再狭窄を予防又は治療するための、ジンセノサイドRg3、Rg5又はRk1の使用。
【請求項14】
血管狭窄及び再狭窄を予防又は治療するための、ジンセノサイドRg3、Rg5若しくはRk1を含有するニンジン、紅参又は加工ニンジンの、水、C1−4アルコール若しくはその混合溶媒による抽出物の使用。
【請求項15】
血管狭窄及び再狭窄を予防又は治療するための、ニンジンを50〜80℃の温度にて酸で処理し、処理されたニンジンを110℃未満の温度で0.5〜15時間蒸気処理して得られた加工ニンジンの、水、C1−4アルコール又はその混合溶媒による抽出物の使用。
【請求項16】
処理する酸が酢酸であることを特徴とする、請求項15に記載の使用。
【請求項17】
加工ニンジンが、ジンセノサイドRg3、Rg5又はRk1を含有することを特徴とする、請求項15に記載の使用。
【請求項18】
ジンセノサイドRg3、Rg5若しくはRk1を含有する、ニンジン、紅参又は加工ニンジンを、水、C1−4アルコール又はその混合溶媒で抽出して、血管狭窄及び再狭窄の予防又は治療のための薬剤を製造する方法。
【請求項19】
上記加工ニンジンが、ニンジンを50〜80℃の温度にて酸で処理し、処理されたニンジンを110℃未満の温度で0.5〜15時間蒸気処理して得られることを特徴とする、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
処理する酸が酢酸であることを特徴とする、請求項18に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−501791(P2008−501791A)
【公表日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−527017(P2007−527017)
【出願日】平成17年6月10日(2005.6.10)
【国際出願番号】PCT/KR2005/001763
【国際公開番号】WO2005/120535
【国際公開日】平成17年12月22日(2005.12.22)
【出願人】(505219794)ユニジェン インク. (8)
【Fターム(参考)】