説明

スイッチモード電源装置用のデジタルICコントローラ

本発明は、複数の入力および複数の出力、並びにデジタルインタフェースを備えたスイッチモード電源(1)用のデジタルICコントローラに関する。ICコントローラ(3)は、コンフィギュレーションデバイス(5)によって予めコンフィギュレーションされたコントローラユニットおよびフィルタユニットと、他の機能とが選択およびパラメータ化され、デジタルインタフェースを用いてICコントローラ(3)に転送されるように、コンフィギュレーションデバイス(5)を用いてコンフィギュレーションされ得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部分によるデジタルICコントローラに関する。
【背景技術】
【0002】
本明細書で説明するタイプのICコントローラは、一般的に知られているものである。例えば、フライバックコンバータ、フォワードコンバータまたはステップアップコントローラおよびステップダウンコントローラ等の、スイッチモード電源とも呼ばれるスイッチモード電源装置は、FETまたはIGBT等の電力半導体を駆動するために、このようなICコントローラを必要とする。ICコントローラは、通常、電力半導体のゲート電圧を制御するので、「ゲートドライバ」とも呼ばれる。力率補正器(PFC)もまた、通常ICコントローラを必要とする。さらに、電源装置の電流および電圧プロファイルは、本明細書で説明するタイプのICコントローラによって制御されることを意図したものである。
【0003】
上記に説明したタイプのICコントローラは、アナログ技術から十分に知られている。しかしながら、このタイプのアナログコントローラには、幾つかの欠点がある。具体的には、部品公差による変動が内部で生じる。その結果、アナログ部品によってコンフィギュレーションされたコントローラが不安定になるという危険性がある。さらに、このタイプのアナログコントローラは、回路構成の観点から特に複雑である。具体的には、その適用に応じて、10〜30の追加の部品を設ける必要があり、これらは、もちろん、大きさを指定される必要がある。さらに、電力または温度制限、いわゆる「ディレーティング」により、出力電圧の制限等の機能性の実現は、非常に困難である。力率補正器(PFC=Power Factor Corrector)を実現するためには、例えば乗算器が必要となる。さらに、乗算器は、外部の回路相互接続によって考慮されなければならない回路構成の欠点を有する。
【0004】
さらに、製品寿命期間中のフィルタまたはコントローラ定数の変化は、多くの場合、回路基板のレイアウトの変更を意味し、これは回避されるべきである。
【0005】
従って、本発明の目的は、簡単に構築され、スイッチモード電源装置への高速アクセスを可能にするスイッチモード電源装置用のICコントローラを提供することである。
【0006】
この目的を達成するために、請求項1の特徴を備えたデジタルICコントローラが提案される。
【0007】
本発明によるスイッチモード電源用のデジタルICコントローラは、複数の入力および複数の出力と、デジタルインタフェースも備える。ICコントローラは、コンフィギュレーションデバイスを用いて予めコンフィギュレーションされたコントローラおよびフィルタユニットと、さらなる機能とが、選択およびパラメータ化され、デジタルインタフェースを用いてICコントローラに転送されるように、コンフィギュレーションデバイスによってコンフィギュレーションされることが可能であり、好ましくは、これらのコンフィギュレーションは、前記ICコントローラに恒久的に保存される。
【0008】
好ましくは、デジタルICコントローラは、以下の入力インタフェース:
− 実電圧(VACTUAL)、
− 実電流(IACTUAL)、
− 電源システム電圧(VLINE)、
− 温度(TEMP)、
− トランジスタスイッチングエッジの同期化インタフェース(SYNC_IN、SYNC_OUT)、
− 動作許可インタフェース(ENABLE)、および
− コンフィギュレーションインタフェース(CONF)
を有する。
【0009】
さらに、デジタルICコントローラは、好ましくは、少なくとも以下の出力インタフェース:
− 電力半導体のゲート信号(A、\A、B、\B)、
− エラー/ステータスメッセージ(\ERR)、および
− 設定電流(ISETP)
を有する。
【0010】
本明細書において提案されるスイッチモード電源装置用のデジタルICコントローラにより、このタイプのICコントローラのアナログ実施形態とは対照的に、外部のコンフィギュレーションデバイスを用いてICコントローラをコンフィギュレーションすることが有利に可能となる。従って、これは、プログラムされる必要がない。限られた数の入力インタフェースおよび出力インタフェースにより、さらに、ICコントローラの特に単純な設計が得られる。好ましくは、ICコントローラは、電流モード運転で動作する。さらに、好ましくは、コンフィギュレーションデバイスがPC上でコンピュータプログラムとして保存され、このようにして、パラメータを簡単に変更できるグラフィカルユーザーインタフェースへの開発者の簡単なアクセスが可能となることが規定される。従って、ICコントローラは、開発者がICのプログラミングを行う必要がないように、好ましくはプログラムされるのではなく、むしろ独占的にコンフィギュレーションされることが可能である。コンフィギュレーションデバイスの簡単な操作は、ICコントローラへの変更を行う、具体的には、予めコンフィギュレーションされたコントローラおよびフィルタユニットと、さらなる機能とを選択およびパラメータ化するのに十分なものである。好ましくは、ICコントローラは、スイッチモード電源装置の駆動に役立つ。コンフィギュレーションデバイスを用いて、開発者によって行われたコンフィギュレーション設定は、上記のように、デジタルインタフェースを介して、ICコントローラに転送され、好ましくは、そこで恒久的に保存される。ICコントローラの様々なコンフィギュレーションは、コンフィギュレーションデバイスを用いて行うことが可能である。設定可能なパラメータは、具体的には:
− 回路タイプ、
− スイッチング周波数または帯域幅、
− PWM変調限界値、
− フィルタ時定数、
− コントローラコンフィギュレーション、特に時定数、
− 電流および電圧の設定値および最大値、
− ターンオフ値、
− ソフト始動コンフィギュレーション、
− 電力および温度制限(ディレーティング)、
− 追加出力のコンフィギュレーション、
− 電源電圧監視のコンフィギュレーション、
− ブランキングモードのコンフィギュレーション
である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、完全に例示的な電源装置1の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
1つの図面を参照して、本発明を以下により詳細に説明する。
【0013】
図面は、完全に例示的な電源装置1の概略図を示す。このタイプの電源装置の機能は十分に知られているため、今回のケースでは、より詳細な説明を行わない。極めて重要な点は、スイッチング素子2、具体的には、ここではMOSFETとして具体化される電力半導体を駆動するためには、駆動が適切なICコントローラ3を用いて達成される必要があることである。この目的のために、ICコントローラ3の出力A1、B1、A2、およびB2は、電源装置1の電力半導体または(MOS)FETのゲート端子の入力に接続される。
【0014】
ICコントローラ3は、コンフィギュレーションデバイス5を用いてコンフィギュレーションされ得るデジタルICコントローラである。従って、慣習的なケースとは異なり、ICコントローラ3は、プログラミング言語を用いてプログラムされるのではなく、適用に応じて望ましい変更を、単にコンフィギュレーションデバイス5を用いることによって行うことができる。これは、例えばグラフィカルユーザーインタフェース(GUI)を用いてユーザーによって実現することが可能である。この場合、コンフィギュレーションデバイス5は、好ましくは、コンピュータプログラムとして具体化され、コンピュータの記憶媒体に保存される。コンフィギュレーションデバイス5を用いることによって、予めコンフィギュレーションされたコントローラおよびフィルタユニットと、さらなる機能とを選択およびパラメータ化することができる。
【0015】
ICコントローラ3は、好ましくは、電流モードで動作する。例として、ここではFETとして具体化される4つのスイッチング素子2、すなわちA1、B1、A2、およびB2を用いて、スイッチモード電源装置が提供される。電源装置1が1つ、または2つのみ、あるいは5つ以上の電力半導体2を有するように設けられることが可能であることは言うまでもない。原則として、本発明によるICコントローラ3は、実質的に所望の数のスイッチング素子とインタラクトすることが可能である。
【0016】
スイッチング素子2のクロッキングは、ICコントローラ3を用いて制御される。この様に、電源装置において電流および電圧プロファイルを調整することが可能である。コンフィギュレーションデバイス5を用いることによって行われたコンフィギュレーション設定は、好ましくは、例えばSDI(シリアル周辺インタフェース)(Serial Peripheral Interface)またはJTAG(Joint Test Action Group)等のデジタルインタフェースを介して、ICコントローラに転送される。コンフィギュレーション設定は、次に、好ましくは恒久的にICコントローラ3に保存される。
【0017】
従って、本発明によるICコントローラは、マイクロコントローラとは対照的に、プログラムされず、予めコンフィギュレーションされたコントローラおよびフィルタユニットと、さらなる機能性とのみが、選択およびパラメータ化され、その後、ICコントローラに転送される。
【0018】
コンフィギュレーションは、例えば、回路タイプの選択を含み得る。後者は、例えば、ステップアップコントローラ、ステップダウンコントローラ、フライバックコンバータ、PFC、SEPICまたはフォワードコンバータであり得る。どのようなコンバータタイプが選択されたかに応じて、ICコントローラ3の入力および出力の適切なコンフィギュレーションが、コンフィギュレーションデバイス5を用いて自動的に行われ得る。従って、本発明によるICコントローラ3は、所望のいずれの電源装置ともインタラクトすることが可能である。
【0019】
さらに、特にステップアップコントローラ、ステップダウンコントローラおよびPFCを駆動する際に、並列帰納分岐の位相シフト駆動、すなわち位相オフセット駆動が提供され得る。要求される可能性のあるスペクトル拡散のスイッチング周波数または帯域幅のコンフィギュレーションもまた考えられる。さらに、PWM変調の限界値DMINまたはDMAXを選択し、上側のスイッチング素子2と下側のスイッチング素子2との間に不感時間を設けることができる。
【0020】
フィルタ時定数の選択および設定、またはアナログ信号用の中央値フィルタにおける接続の可能性がさらに考えられる。さらに、例えば、P、PIまたはPIDコントローラであり得るコントローラ7のコンフィギュレーションが行われ得る。コントローラは、場合によっては、ローパスフィルタの挙動を示し得る。図に示すように、電位分離9が設けられる場合には、スタートアップまたは外部制御のための電圧コントローラ7の時定数ブリッジングをさらに設けることができる。さらに、特に過電圧および過電流の場合に、電流および電圧の設定値および最大値と、ターンオフ値とのコンフィギュレーションが行われ得る。さらに、ソフト始動コンフィギュレーションが達成され得る、または配線および温度制限が設けられ得る。さらに、例えばステータスメッセージのための追加の出力または突入電流制限器のブリッジングのためのリレー出力のセットアップが考えられる。さらに、電源電圧の監視、および特にスイッチオンおよびスイッチオフヒステリシスの監視のコンフィギュレーションが考えられる。トランジスタのスイッチングの瞬間にアナログ値のサンプリングが抑制されるように、ブランキングモードのコンフィギュレーションもまた、ICコントローラにおいて行われ得る。
【0021】
図面により、ICコントローラ3が以下のパラメータ:被制御変数実電圧:VACTUAL;下位被制御変数実電流:IACTUAL;PFC用の電源システム電圧:VLINE;温度:TEMP;トランジスタスイッチングエッジの同期化:SYNC_INおよびSYNC_OUT;動作許可:ENABLE;およびコンフィギュレーションインタフェースの入力:CONFに関する入力を有することが明らかであり、これらは、マルチワイヤ様式で具体化されることも可能である。
【0022】
さらに、ICコントローラは、以下のパラメータ:スイッチング素子7用の通常約2アンペアの増加したドライバ電力を有するゲート信号:A、\A、B、および\B;スイッチング素子の2相バリアントに関して、追加の出力が提供され得る:Cおよび\C;突入電流制限器のブリッジングのためのリレー出力:REL、およびエラーまたはステータスメッセージ出力:\ERRに関する出力を有する。エラーまたはステータスメッセージの出力は、マルチワイヤ様式で具体化され得る。例えば以下のタイプ:ICおよびCANの一方であり得るバスとして出力を具体化することも考えられる。最後に、好ましくはアナログ様式で達成され、かつコントローラの開発に役立つ設定電流事前定義ISETPにも出力が提供される。
【0023】
全体的に見て、本発明は、特に簡単かつ費用効果的な製造が可能で、開発者側のプログラミング行為を必要とせずにICコントローラのコンフィギュレーションを可能とするデジタルICコントローラを有利に開示することは明白である。ICコントローラの単純な構造は、限られた数の入力および出力によってさらに確実となる。上記に説明した入力および出力により、本発明によるICコントローラを用いて、所望のどのようなスイッチモード電源装置も駆動可能である。さらに、ICコントローラに対して多数のコンフィギュレーション設定を行うことができる。
【符号の説明】
【0024】
1 電源装置
2 スイッチング素子
3 ICコントローラ
5 コンフィギュレーションデバイス
7 コントローラ
9 電位分離


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の入力を備え、複数の出力を備え、デジタルインタフェースも備えたスイッチモード電源(1)用のデジタルICコントローラ(3)であって、前記ICコントローラ(3)は、コンフィギュレーションデバイス(5)を用いて予めコンフィギュレーションされたコントローラおよびフィルタユニットと、さらなる機能とが、選択およびパラメータ化され、前記デジタルインタフェースを用いて前記ICコントローラ(3)に転送されるように、前記コンフィギュレーションデバイス(5)を用いてコンフィギュレーションされることが可能であることを特徴とするデジタルICコントローラ。
【請求項2】
請求項1に記載のデジタルICコントローラにおいて、前記コンフィギュレーションが前記ICコントローラ(3)に恒久的に保存されることを特徴とするデジタルICコントローラ。
【請求項3】
請求項1または2に記載のデジタルICコントローラにおいて、以下の入力インタフェース:
− 実電圧(VACTUAL)、
− 実電流(IACTUAL)、
− 電源システム電圧(VLINE)、
− 温度(TEMP)、
− トランジスタスイッチングエッジの同期化インタフェース(SYNC_IN、SYNC_OUT)、
− 動作許可インタフェース(ENABLE)、
− コンフィギュレーションインタフェース(CONF)、
を有することを特徴とするデジタルICコントローラ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のデジタルICコントローラにおいて、以下の出力インタフェース:
電力半導体のゲート信号(A、\A、B、\B)、
エラー/ステータスメッセージ(\ERR)、および
設定電流(ISETP)
を有することを特徴とするデジタルICコントローラ。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載のデジタルICコントローラにおいて、「電流モード」で動作することを特徴とするデジタルICコントローラ。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載のデジタルICコントローラにおいて、前記コンフィギュレーションデバイス(5)がPC上でコンピュータプログラムとして保存されることを特徴とするデジタルICコントローラ。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載のデジタルICコントローラにおいて、独占的にコンフィギュレーション可能であることを特徴とするデジタルICコントローラ。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載のデジタルICコントローラにおいて、スイッチモード電源装置の駆動に役立つことを特徴とするデジタルICコントローラ。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載のデジタルICコントローラにおいて、前記コンフィギュレーションデバイス(5)が、以下のパラメータ:
− 回路タイプ、
− スイッチング周波数または帯域幅、
− PWM変調限界値、
− フィルタ時定数、
− コントローラコンフィギュレーション、特に時定数、
− 電流および電圧の設定値および最大値、
− ターンオフ値、
− ソフト始動コンフィギュレーション、
− 電力および温度ディレーティング、
− 追加出力のコンフィギュレーション、
− 電源電圧監視のコンフィギュレーション、
− ブランキングモードのコンフィギュレーション
の内の少なくとも1つのコンフィギュレーションを可能にすることを特徴とするデジタルICコントローラ。

【公表番号】特表2013−517750(P2013−517750A)
【公表日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−548364(P2012−548364)
【出願日】平成22年12月10日(2010.12.10)
【国際出願番号】PCT/EP2010/069326
【国際公開番号】WO2011/085881
【国際公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【出願人】(512037510)エルベ エレクトロメディジン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (5)
【氏名又は名称原語表記】ERBE ELEKTROMEDIZIN GmbH
【Fターム(参考)】