説明

スイッチング電源装置

【課題】スイッチング電源装置において、起動時に好ましい立ち上がり速度で、かつ、オーバーシュートがない特性を、簡素な回路で、安定して得る。
【解決手段】スイッチング電源装置1において、電力スイッチング回路70は、フォトカプラ73からの制御信号を受けて制御回路72により制御される。出力端子25、26から、リモートセンシング結合用抵抗器101〜105を介し、分圧用抵抗器111〜114により分圧された検出電圧がシャントレギュレータ120のリファレンス端子に接続され、シャントレギュレータ120のアノード端子がフォトカプラ73の発光素子に接続される。分圧用抵抗器111、112の各抵抗値比率とそれらの相互接続点とシャントレギュレータ120のリファレンス端子間に接続されたコンデンサ117の値との所定の条件で選定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチング電源装置に関するものであり、特に起動時のソフトスタート特性について、安定したソフトスタート特性を備えるスイッチング電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スイッチング電源装置において、入力電源接続などによる起動時において、設定の値までの出力電圧の立ち上がり特性は、負荷の性質に対応した立ち上がり特性の範囲内で、なるべく迅速な立ち上がりで、かつ、オーバーシュートがないことが望ましい。
【0003】
このオーバーシュートを抑制する目的の回路に関する、先行する発明としては、例えば、特開平6−046560号公報に開示された発明がある。その発明は、出力電圧を分圧する二つの抵抗器と、この中の一つの抵抗器の両端の電圧を入力とするシャントレギュレータと、このシャントレギュレータの負荷となるホトカプラと抵抗器とから構成され、特にシャントレギュレータのカソード電圧を制御するトランジスタと、このトランジスタへ動作電圧を供給するツェナーダイオードと二つの抵抗器とが付加されている。出力電圧が過電圧となったとき、トランジスタは即時に動作してシャントレギュレータのカソード電圧を強制的に下げ、これにより、制御回路は出力電圧を下げる方向に制御する。このようにして、制御回路は出力電圧のオーバーシュートを抑圧するように下げる方向に制御するとしている。
【0004】
また、特開平7−222442号公報に開示される発明は、DC−DCコンバータからの出力電圧を出力電圧検出回路で検出し、補助電源回路と電流制限用抵抗とによりオーバーシュート防止回路を構成するものである。これにより、出力電圧が立ち上がる直前に誤差増幅器の非反転入力端子にバイアス電圧が印加され、これにより、オーバーシュートを防止できる。
【0005】
また、特開2000−324816号公報に開示された発明は、抑制回路の付加によって始動時の出力オーバーシュートを抑制することができるDC−DCコンバータの出力オーバーシュート抑制回路の提供を目的としている。
【0006】
また、特開2006−288054号公報に開示される発明は、スイッチング方式DC-DCコンバータの起動時の出力電圧のオーバーシュートを緩和することを目的とし、複数のカウンタと、三角波とコンパレータなどを要する。
【0007】
また、特開2007−043847号公報に開示される発明は、誤差増幅器は、スイッチング素子をPWM制御する降圧型のDC−DCコンバータにおいて、出力電圧にオーバーシュートが発生するのを抑制することを目的とし、誤差信号と三角波電圧とをコンパレータで比較して、帰還信号のレベルに応じたデューティ比のパルスを生成する。
【特許文献1】特開平6−046560号公報
【特許文献2】特開平7−222442号公報
【特許文献3】特開2000−324816号公報
【特許文献4】特開2006−288054号公報
【特許文献5】特開2007−043847号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
以上の先行する発明の構成は、付加する回路部品の数が多いものであるか、または、能動部品を付加して使用しているものである。本発明は、スイッチング電源装置において、起動時に好ましい立ち上がり速度で、かつ、オーバーシュートがない特性を得ることを目的とするのであり、特に、能動部品の付加なく簡素な回路で、所定の特性を量産の場合に安定して得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的を達成するために、本発明は、以下の第1の手段を提案するものである。すなわち、直流入力電圧を所定の直流出力電圧に変換するスイッチング電源装置であって、一次巻線と二次巻線とを有する変圧器と該変圧器の一次巻線に接続されたスイッチング素子と、該変圧器の二次巻線に接続された整流回路と、該整流回路から直流出力を付与するとともに、
該直流出力を安定化する閉ループ帰還回路を有し、
該閉ループ帰還回路の構成は、
前記直流出力からフォトカプラの発光素子を介してシャントレギュレータのカソード端子とアノード端子に供給し、
該フォトカプラの受光素子が前記スイッチング素子を制御する制御回路に接続され、
前記シャントレギュレータのリファレンス端子とアノード端子とが、前記直流出力に接続された順次3組の直列接続された抵抗からなる分圧抵抗であって、該分圧抵抗の第2の抵抗と第3の抵抗との接続点に接続されるとともに、該第2の抵抗にコンデンサを並列接続してなることを特徴とするスイッチング電源装置を提案する。
なお、上記の変圧器は、一次巻線と二次巻線とを有するほかに、他の追加の巻線を備えることも可能であり、その構成も本発明の手段の一つである。また、上記の直流出力に接続された順次3組の直列接続された抵抗からなる分圧抵抗は、3組より多数の直列接続された抵抗として構成することも可能であり、その構成も本発明の手段の一つである。
【0010】
また、第2の手段として、第1の手段に加えて、前記分圧抵抗の第1の抵抗と第2の抵抗の抵抗値の比率が、0.5〜1.5の範囲の値に等しいことを提案する。
【0011】
また、第3の手段として、第1又は第2の手段に加えて、前記直流入力に整流回路を接続してなることを提案する。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、以上のように構成されており、入力電源の接続時のような起動時において発生するおそれのあるオーバーシュートを抑制することができる。本発明の構成は、回路構成と常数選定について、クリティカルな要素がないので、電源装置として好ましい特性を安定して供給することができる。量産時に、品質を恒常化できる。
【実施例】
【0013】
図1は、本発明に係るスイッチング電源装置の一実施例の概略図であり、以下、図1に基づき、説明する。
【0014】
まず、スイッチング電源装置1の電力供給に係る主回路の構成について説明する。スイッチング電源装置1は、入力端子21、22と、コモンモードフィルタ30と、整流回路40と、力率改善回路60と、電力スイッチング回路70と、変圧器71と、整流回路80と、出力端子25、26とから構成される。
入力端子21、22は、外部の商用交流電源に接続されており、これら入力端子21、22間の交流電圧は、コモンモードフィルタ30を経て、整流回路40と力率改善回路60によって直流電圧になり、端子61、62間に直流電圧が得られる。この端子61、62間の直流電圧は、電力スイッチング回路70と、変圧器71と、整流回路80とによって、目的の電圧の値の直流電圧となって、出力端子25、26間から出力される。
【0015】
次に、スイッチング電源装置1の出力電圧の制御に係る構成について説明する。電力スイッチング回路70は、制御回路72によって制御され、この制御回路72は、フォトカプラ73からの制御信号により制御される。出力端子25、26から、リモートセンシング結合用の抵抗器101、102の組と抵抗器103、104の組とを介し、これらに接続される分圧用の抵抗器111、112の組と、抵抗器113と可変抵抗器114の組との各組の抵抗値の比により分圧された検出電圧が、シャントレギュレータ120のリファレンス端子に接続される。シャントレギュレータ120のカソード端子は、フォトカプラ73の発光素子に接続されている。そして、フォトカプラ73の発光素子は、抵抗器121を介して、出力端子25が接続される線路に接続される。分圧用抵抗器111、112の各抵抗値の比率とそれらの相互接続点とシャントレギュレータ120のリファレンス端子間に接続されたコンデンサ117の値との以下に記載する所定の条件で選定する。
【0016】
ここで、シャントレギュレータについて説明する。シャントレギュレータ120は、よく知られた電子部品であり、アノード端子、カソード端子、リファレンス端子の三端子からなり、内部に例えば2.5Vのリファレンス電圧源を有し、この内部のリファレンス電圧源の電圧と、リファレンス端子に外部接続される検出電圧とを比較して制御され、カソード端子とアノード端子間に出力を発生して、構成された閉ループにおける被検出電圧が一定となるように制御されるものである。
【0017】
スイッチング電源装置1においては、シャントレギュレータ120のカソードは、出力端子25に接続される線路から抵抗器121とフォトカプラ73の発光素子とを介して動作電源が供給される。また、シャントレギュレータ120のリファレンス端子は、すでに述べたように検出電圧が接続されているので、構成された閉ループにおいて、出力端子25、26間が一定になるように制御される。
【0018】
出力電圧をVoとし、シャントレギュレータ120の内部リファレンス電圧源の電圧をVrefとし、抵抗器111、112、113、114の各抵抗値を、それぞれ、R1、R2、R3、R4とすると、内部リファレンス電圧源の電圧と検出電圧の値とは等しくなるように制御されるので、以下の式が成立する。なお、リファレンス端子に流れ込む電流は、無視できるものと仮定する。
Vref=Vo(R3+R4)/(R1+R2+R3+R4)…(1)
【0019】
この式(1)をVoについて解くと、以下の式になる。
Vo=Vref(1+(R1+R2)/(R3+R4)) …(2)
【0020】
この式(2)において、一例として、R1=R2=R3=R4として代入すると、以下の式になる。
Vo=Vref×2 …(3)
【0021】
式(3)に、例えば、Vref=2.5Vを代入すると、
Vo=5V …(4)となる。
【0022】
図1において、コンデンサ117は、抵抗器111、112の相互接続点に接続されているので、R1=R2の条件の下では、ほぼ、出力電圧設定値Vo=5Vの中間の値よりコンデンサ117への充電電流の効果が現れる。すなわち、起動初期は、出力電圧設定値Voの半分の値に到達するまでは、スイッチング電源装置1の固有の最も速い立ち上がり速度で立ち上がり、その後は、コンデンサ117の値と抵抗器111、112などで構成される回路の時定数に対応する速度で、目的の出力電圧まで、ややゆっくりした立ち上がり速度で立ち上がる。
この例では、R1=R2、すなわち、抵抗器111、112の抵抗値の比率は、1に等しく選んであり、一般には好ましい値であるが、この比率の値は、負荷の特性に良好に適合させるため、事例によって、1を中心に幅があり、0.5〜1.5の範囲の値の中から選ぶことにより、多くの事例に適合させることができる。
【0023】
この出力電圧の立ち上がりの時間経過は、図2に示すようになる。図2において、横軸は時間tであり、縦軸は出力電圧vである。起動初期は、出力電圧v=Vo/2になるまでは、比較的短い時間tiで立ち上がり、その後、出力電圧vo=Voになるまでは、やや長い時間t2で立ち上がる。時間0から時間tiまでの間において、シャントレギュレータ120内部の誤差増幅器を含めた閉ループの応答において振動的であっても、出力電圧v=Vo/2の上限値があるので、出力電圧v=Voを超えるようなオーバーシュートは避けられる。なお、図2においては、その振動的な動作は示されてはいない。また、時間tiからt2までの間は、コンデンサ117の充電がゆっくり進行している期間であるので、シャントレギュレータ120内部の誤差増幅器を含めた閉ループの応答において振動が抑制される。
【0024】
一方、本発明を適用しないスイッチング電源装置のある一例では、起動時の立ち上がり特性は、図3に示すように、オーバーシュートを避けることができるが、立ち上がり時間t3は、かなり長い時間となる。また、本発明を適用しないスイッチング電源装置の図4に示す例では、立ち上がり時間t4は短くすることができるが、オーバーシュートとなる。これらいずれの場合と比較しても、本発明は、オーバーシュートを避けつつ、所定の立ち上がり特性が安定して得られることがわかる。
【0025】
以上、図1に基づいて説明したスイッチング電源装置は、本発明の一実施定であって、交流入力だけでなく、整流回路40と力率改善回路を省いた形の直流入力のスイッチング電源装置として構成し、同様の効果を得ることができるのはもちろんのことである。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係るスイッチング電源装置の一実施例の概略図
【図2】本発明に係るスイッチング電源装置の起動特性の一例
【図3】従来のスイッチング電源装置の起動特性の一例
【図4】従来のスイッチング電源装置の起動特性の他の一例
【符号の説明】
【0027】
1 スイッチング電源装置
21、22 入力端子
24 リモートセンシング用端子
25、26 出力端子
27 リモートセンシング用端子
30 コモンモードフィルタ
40 整流回路
60 力率改善回路
70 電力スイッチング回路
71 変圧器
72 制御回路
73 フォトカプラ
80 整流回路
101、102、103,104 抵抗器
105、106 コンデンサ
111、112、113 抵抗器
114 可変抵抗器
117 コンデンサ
120 シャントレギュレータ
121、122、123 抵抗器
128 コンデンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流入力電圧を所定の直流出力電圧に変換するスイッチング電源装置であって、一次巻線と二次巻線とを有する変圧器と該変圧器の一次巻線に接続されたスイッチング素子と、該変圧器の二次巻線に接続された整流回路と、該整流回路から直流出力を付与するとともに、
該直流出力を安定化する閉ループ帰還回路を有し、
該閉ループ帰還回路の構成は、
前記直流出力からフォトカプラの発光素子を介してシャントレギュレータのカソード端子とアノード端子に供給し、
該フォトカプラの受光素子が前記スイッチング素子を制御する制御回路に接続され、
前記シャントレギュレータのリファレンス端子とアノード端子とが、前記直流出力に接続された順次3組の直列接続された抵抗からなる分圧抵抗であって、該分圧抵抗の第2の抵抗と第3の抵抗との接続点に接続されるとともに、該第2の抵抗にコンデンサを並列接続してなることを特徴とするスイッチング電源装置。
【請求項2】
前記分圧抵抗の第1の抵抗と第2の抵抗の抵抗値の比率が、0.5〜1.5の範囲の値に等しいことを特徴とする、請求項1に記載のスイッチング電源装置。
【請求項3】
前記直流入力に整流回路を接続してなることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載のスイッチング電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−95182(P2009−95182A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−265220(P2007−265220)
【出願日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【出願人】(399112470)イーター電機工業株式会社 (4)
【Fターム(参考)】