説明

スイッチング電源装置

【課題】負荷回路が待機状態または無負荷状態である場合における消費電力を低減する。
【解決手段】スイッチング電源装置1Aは、主出力電圧と従出力電圧とを出力可能に構成され、二次側直流電圧Pre.Vbbが主出力電圧に保たれて主出力端子から出力されるのを遮断し得る第2スイッチング素子Q2と、外部から入力される省電力制御信号EMに応じて第2スイッチング素子Q2を導通状態と非導通状態とに切り替える省電力モード制御回路3Aとを備え、省電力制御信号EMによって省電力モードに設定されると、省電力モード制御回路3Aは、第2スイッチング素子Q2を非導通状態に切り替え、二次側直流電圧Pre.Vbbが主出力電圧よりも低く従出力電圧よりも高い中間電圧に低下するように帰還回路4を介してスイッチング制御回路2を制御し、中間電圧を降圧スイッチングレギュレータICに入力させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主出力を含む複数の出力を有するスイッチング電源装置に関し、特に主出力による電力供給を停止する省電力モードを備えたスイッチング電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
各種電子機器の消費電力に対する各国の規制は、年々厳しくなってきている。例えば、欧州では、エネルギー使用製品に対して「EuP指令」による電力使用量などの環境配慮設計が義務付けられる。また、米国の消費電力規格である「ENERGY STAR」も、規制値(上限)が引き下げられてきている。また、このような消費電力に対する規制は今後もさらに厳しくなっていくことが予想される。
【0003】
上記規制に適合するために、スイッチング電源装置においては、従来から、(1)主出力の遮断、(2)バースト動作、(3)電力供給手段の切り替え、といった機能が備えられている。
以下、図5および図6を参照しながら、これらの機能について説明する。
【0004】
[主出力の遮断]
図5に示す従来のスイッチング電源装置1Cは、入力された交流電源電圧ACIN(100/240V)をダイオードブリッジDBと平滑コンデンサC1で整流・平滑し、得られた直流電圧(約130/315V)をスイッチング制御回路2の制御下にあるスイッチング素子Q1でスイッチングし、主出力から主出力電圧Vbb(例えば、37V)を出力するとともに、従出力から従出力電圧Vcc(例えば、5V)を出力するものである。また、主出力には、このスイッチング電源装置1Cによって電力供給される不図示の負荷回路が接続されている。
【0005】
「主出力の遮断」とは、主出力を遮断して負荷回路への電力供給を停止することにより負荷回路の電力損失を低減する機能であり、この機能は省電力モード制御回路3Cによって実現されている。
【0006】
図5に示すように、省電力モード制御回路3Cには、負荷回路が待機状態(主出力からの電力供給が不要な状態)になるとHighまたはオープンとなる省電力制御信号EMが入力される。この省電力制御信号EMがHigh/オープンになると、PNPトランジスタQ4がオフ状態となり、NPNトランジスタQ3もオフ状態となる。そして、主出力電圧Vbb供給ラインに直列に挿入されているスイッチング素子Q2(例えば、Power MOSFET)のゲート−ソース間電圧が低下し、スイッチング素子Q2もオフ状態となり、負荷回路への電力供給が停止される。
【0007】
図6は、スイッチング電源装置1Cの動作波形である。省電力制御信号EM(波形B)をHigh/オープンに設定した状態で交流電源電圧ACIN(波形A)を上昇させると、スイッチング電源装置1Cが起動し、従出力電圧Vcc(波形C)およびPre.Vbb(波形E)が上昇する。このとき、スイッチング素子Q2はオフ状態なので、主出力電圧Vbb(波形D)は0Vのままである。なお、図5に示すように、Pre.Vbbは、スイッチング素子Q2のソース側の電圧である。
【0008】
その後、省電力制御信号EM(波形B)をLowに設定して省電力モードから通常モードに移行すると、スイッチング素子Q2がオン状態となり、主出力からはPre.Vbb(波形E)と同じ37Vの主出力電圧Vbbが出力され始める(波形D参照)。つまり、「主出力の遮断」機能によれば、省電力制御信号EMをHigh(オープン)またはLowに設定することにより、負荷回路に電力を供給するか否かを切り替えることができる。
【0009】
[バースト動作]
「バースト動作」とは、スイッチング制御回路2の制御下にあるスイッチング素子Q1を間欠動作させる機能(起動と停止とを繰り返し動作させる機能。図7参照)であり、この機能はエネルギー規制に対応したスイッチング制御回路2(例えば、富士電機デバイステクノロジー製IC「FA5528」)によって実現されている。スイッチング制御回路2は、負荷回路や降圧型スイッチングレギュレータ回路IC1に向かって流れる電流が極めて少ない等、負荷条件が予め設定されている条件に一致した場合に「バースト動作」を行う。
【0010】
この機能によれば、トランスTの駆動損失、トランス一次側および二次側回路の損失、整流ダイオードD1による損失等を低減することができ、「主出力の遮断」のみを行った場合よりも、さらに消費電力を低減することができる。
【0011】
[電力供給手段の切り替え]
「電力供給手段の切り替え」とは、当該スイッチング電源装置1Cの起動時と起動後とで、スイッチング制御回路2への電力供給手段を切り替える機能であり、この機能も「バースト動作」の説明においてスイッチング制御回路2の一例として挙げた富士電機デバイステクノロジー製ICに内蔵されている。
【0012】
「電力供給手段の切り替え」は、具体的には以下のようにして行われる。
まず、スイッチング電源装置1Cの起動時において、スイッチング制御回路2には過電流防止のための起動抵抗R1を介して交流電源電圧ACINを整流・平滑して得た直流電圧が印加される。そして、起動抵抗R1を通って流れてきた電流は、スイッチング制御回路2の内部をSTART端子からVCC端子に向かって流れ、コンデンサC4を充電する。これにより、スイッチング制御回路2のVCC端子には、スイッチング制御回路2が動作するのに必要な電圧が発生する。
【0013】
その後、スイッチング電源装置1Cの起動が完了すると、コンデンサC4は補助巻線T3から整流ダイオードD2を通って流れてくる電流で充電されるようになり、これによりVCC端子の電圧が維持される。一方、起動抵抗R1から流れてくる電流はスイッチング制御回路2によって遮断され、結局、起動抵抗R1には電流が流れなくなる。
【0014】
以上のように、この機能によれば、多くの電流を必要とする起動時に起動抵抗R1を介してスイッチング制御回路2のVCC端子に電流を供給する一方、起動後は補助巻線T3から生成した補助電源に切り替えて起動抵抗R1に流れる電流を遮断しているので、起動抵抗R1における電力損失を0にすることができる。
【0015】
なお、上記3つの機能のうち、「バースト動作」と「電力供給手段の切り替え」の機能を備えた従来のスイッチング電源装置としては、非特許文献1に記載のものが知られている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】“富士スイッチング電源制御用IC Application Note”、富士電機デバイステクノロジー(株)、インターネット、<http://s-shopping.elisasp.net/PDF_J/F0400376.pdf>、p.33、2009年3月4日現在
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
図5に示す従来のスイッチング制御装置1Cによれば、上記3つの機能により、負荷回路が待機状態である場合に、ある程度までは消費電力を低減することができる。しかしながら、将来的にさらに厳しくなると予想されるエネルギー規制に対応するためには、さららなる消費電力の低減が求められ、上記従来装置ではそのような要求に十分に対応することが困難であった。
【0018】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、主出力と従出力とを含む複数の出力を有するスイッチング電源装置において、主出力側の負荷回路が待機状態または無負荷状態である場合における消費電力を低減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記課題を解決するために、本発明に係るスイッチング制御装置は、トランスの一次巻線に接続された第1スイッチング素子と、前記トランスの二次巻線に誘起される交流電圧を整流および平滑して二次側直流電圧を生成する整流平滑手段と、前記二次側直流電圧の電圧レベルに応じた二次側出力信号を一次側にフィードバックする帰還回路と、当該帰還回路からの前記二次側出力信号に基づき前記二次側直流電圧が所定の主出力電圧に保たれるよう前記第1スイッチング素子のスイッチング動作を制御するスイッチング制御回路と、前記二次側直流電圧を入力電圧として該二次側直流電圧を降圧して前記主出力電圧よりも低い従出力電圧を出力する降圧回路と、前記整流平滑手段と主出力端子の間に直列に接続され、前記二次側直流電圧が前記主出力端子から出力されるのを遮断し得る第2スイッチング素子と、外部から入力される省電力制御信号に応じて前記第2スイッチング素子を導通状態にして前記主出力端子から前記主出力電圧を出力させる通常モードと非導通状態にして前記主出力端子からの出力を停止させる省電力モードとに切り替える省電力モード制御回路と、を備えたスイッチング電源装置であって、前記スイッチング制御回路は、前記主出力端子に接続される負荷が待機状態または無負荷状態にあるときに前記第1スイッチング素子を間欠動作させ、前記省電力モード制御回路は、前記主出力端子に接続される負荷が待機状態または無負荷状態にあるときに前記省電力モードに切り替え、前記二次側直流電圧が前記主出力電圧よりも低く前記従出力電圧よりも高い中間電圧に低下するように前記帰還回路を介して前記スイッチング制御回路を制御し、前記中間電圧を前記降圧回路に入力させることを特徴とする。
【0020】
この構成によれば、外部から入力される省電力制御信号に応じて省電力モード制御回路が通常モードから省電力モードに切り替えることができるので、省電力モードに設定することで第2スイッチング素子を非導通状態にして主出力端子からの出力を停止させ、消費電力を削減することができる。ここで、従来装置では、主出力端子からの出力を停止させることで消費電力を削減することはできても、トランス2次側に誘起される交流電圧を整流・平滑して生成された二次側直流電圧を降圧して従出力電圧を出力する降圧回路には、主出力電圧が入力されていた。このため、主出力電圧から従出力電圧まで降圧させることに伴う降圧回路の電力損失が大きくなっていた。これに対し、この発明によれば、省電力モード時に二次側直流電圧が主出力電圧よりも低く従出力電圧よりも高い中間電圧に低下するようにスイッチング制御回路を制御し、当該中間電圧を降圧回路に入力させているので、降圧回路の電力損失を低減させることができる。
また、主出力端子に接続される負荷が待機状態または無負荷状態にあるときに、スイッチング制御回路が第1スイッチング素子を間欠動作させることで消費電力を低減しているが、この発明によれば帰還回路を介して主出力電圧よりも低電圧の中間電圧に制御しているので、第1スイッチング素子の間欠動作をさらに助長させることができる。よって、消費電力をさらに低減することができる。
したがって、この発明によれば、主出力側の負荷回路が待機状態または無負荷状態である場合における、消費電力の低減を図ることができる。
【0021】
また、上記スイッチング電源装置の前記省電力モード制御回路は、前記第2スイッチング素子が非導通状態から導通状態に切り替わるまでの時間を遅延させる遅延手段を備え、前記省電力制御信号によって前記省電力モードから通常モードに設定されると、当該二次側直流電圧が主出力電圧に上昇した後に、前記第2スイッチング素子が導通状態に切り替わることが好ましい。
【0022】
この構成によれば、二次側直流電圧が主出力電圧に上昇した後に第2スイッチング素子が導通状態に切り替わるので、主出力端子に接続された負荷に主出力電圧よりも低い昇圧途上の二次側直流電圧が出力されるのを確実に防止することができる。
【0023】
また、上記スイッチング電源装置の前記省電力モード制御回路は、複数の省電力制御信号が互いに独立して外部から入力されるように構成されるとともに、前記複数の省電力制御信号の高低レベルの組み合わせの数に対応した複数の省電力モードを設定可能とされ、外部からの前記複数の省電力制御信号の入力状態に応じて、該複数の省電力モードに対応した互いに異なる複数の前記中間電圧のうちの1つを生成するように前記スイッチング制御回路を制御し、当該中間電圧を前記降圧回路に入力させることが好ましい。
【0024】
この構成によれば、複数の省電力制御信号の高低レベルの組み合わせの数に対応した複数の省電力モードのうちの1つを任意に設定することができる。これにより、複数の省電力モードに対応した互いに異なる複数の中間電圧のうち1つを降圧回路に入力させることができ、事情に応じて中間電圧を選択することができる。具体的には、二次側直流電圧をあまり下げられない事情がある場合と、そのような事情がない場合とで、中間電圧を適宜、設定変更することで消費電力をさらに低減することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、主出力と従出力とを含む複数の出力を有するスイッチング電源装置において、主出力側の負荷回路が待機状態または無負荷状態である場合における、消費電力を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】実施例1に係るスイッチング電源装置の回路図である。
【図2】実施例1に係るスイッチング電源装置の動作波形である。
【図3】実施例2に係るスイッチング電源装置の回路図である。
【図4】実施例2に係るスイッチング電源装置の動作波形である。
【図5】従来のスイッチング電源装置の回路図である。
【図6】従来のスイッチング電源装置の動作波形である。
【図7】バースト動作の概略を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、添付図面を参照して、本発明に係るスイッチング電源装置の好ましい実施形態について説明する。
【実施例1】
【0028】
図1に、実施例1に係るスイッチング電源装置1Aを示す。スイッチング電源装置1Aは、入力された交流電源電圧ACIN(100/240V)をダイオードブリッジDBと平滑コンデンサC1で整流・平滑し、得られた直流電圧(130/315V)をスイッチング制御回路2の制御下にあるスイッチング素子Q1(「第1スイッチング素子」に相当)でスイッチングし、主出力端子から主出力電圧Vbb(例えば37V)を出力するとともに、従出力端子から従出力電圧Vcc(例えば5V)を出力するものである。また、主出力端子には、このスイッチング電源装置1Aによって電力供給される不図示の負荷回路が接続されている。
【0029】
本実施例では、スイッチング制御回路2として、富士電機デバイステクノロジー製のスイッチング電源制御用IC「FA5528」を使用した。前記の通り、このICには「電力供給手段の切り替え」機能が内蔵されているので、起動後に起動抵抗R1による電力損失が発生することはない。また、このICには「バースト動作」機能も内蔵されている。
【0030】
帰還回路4は、トランスTの二次巻線T2に誘起された交流電圧を、整流ダイオードD1と平滑コンデンサC2とからなる整流平滑手段で整流・平滑して得た二次側直流電圧Pre.Vbbの電圧レベルに応じた二次側出力信号を一次側にフィードバックする。
具体的には、Pre.Vbbが目標電圧(本実施例では、主出力電圧である37V)よりも上昇すると抵抗R4とR5の分圧(=シャントレギュレータIC2の制御端子電圧)も上昇し、抵抗R6またはR7を介してシャントレギュレータIC2に流れ込む電流が増加する。抵抗R6に流れる電流が増加すると、フォトカプラPCを構成するフォトダイオードの発光量が増加し、これによりPre.Vbbが高過ぎる旨が一次側のスイッチング制御回路2にフィードバックされる。そして、このフィードバック結果に基づいて、スイッチング制御回路2は、スイッチング素子Q1のオンデューティを低下させ、Pre.Vbbを低下させる。
一方、Pre.Vbbが目標電圧よりも低下した場合は、上記と反対の動作が行われる。つまり、スイッチング制御回路2はスイッチング素子Q1のオンデューティを増加させ、Pre.Vbbを上昇させる。
【0031】
降圧型スイッチングレギュレータ回路IC1は、Pre.Vbb(通常モード時は主出力電圧である37Vに等しい)を入力電圧として該Pre.Vbbを降圧して主出力電圧Vbbよりも低い従出力電圧Vcc(5V)を従出力端子から出力する。本実施例では、降圧型スイッチングレギュレータ回路IC1として、サンケン電気製のIC「SI−8050TFE」を使用した。ここで、通常モードとは、後述のスイッチング素子Q2が導通状態とされ、主出力端子から主出力電圧を出力する状態という。
【0032】
省電力モード制御回路3Aは、主に3つのトランジスタ(NPNトランジスタQ3、PNPトランジスタQ4、NPNトランジスタQ5)と遅延コンデンサC9とから構成されている。図1に示すように、PNPトランジスタQ4は、エミッタが従出力端子に接続され、ベースが省電力制御信号EMの入力端子に接続されている。NPNトランジスタQ5は、コレクタが抵抗R17を介して従出力端子に接続され、ベースが抵抗R12、R14を介してPNPトランジスタQ4のコレクタに接続され、エミッタがGNDに接続されている。NPNトランジスタQ3は、コレクタが抵抗R9を介してスイッチング素子Q2のゲートに接続され、ベースが抵抗R13、R14を介してPNPトランジスタQ4のコレクタに接続され、エミッタが抵抗R16を介してGNDに接続されている。また、遅延コンデンサC9は、NPNトランジスタQ3のベースとGNDとの間に接続されている。
【0033】
省電力モード制御回路3Aは、外部から入力される省電力制御信号EMに応じて、主出力電圧Vbb供給ラインに直列に挿入されているスイッチング素子Q2(「第2スイッチング素子」に相当。本実施例では、Power MOSFETを使用)のオン状態/オフ状態を相互に切り替える。
具体的には、省電力制御信号EMがHigh/オープンになると、PNPトランジスタQ4がオフ状態となり、NPNトランジスタQ3もオフ状態となる。そして、スイッチング素子Q2のゲート−ソース間電圧が低下してスイッチング素子Q2がオフ状態となる。これにより、主出力電圧Vbbは0Vとなり、主出力端子から負荷回路への電力供給が停止される(省電力モード)。
【0034】
この他、省電力モード制御回路3Aは、スイッチング素子Q2がオフ状態となって主出力端子からの電力供給が停止している(省電力モードに切り替えられている)間に、降圧型スイッチングレギュレータ回路IC1の動作や従出力端子からの電流供給能力等に支障をきたさない範囲でPre.Vbbを低下させる。
具体的には、省電力制御信号EMがHigh/オープンになると、PNPトランジスタQ4がオフ状態となり、NPNトランジスタQ5もオフ状態となる。すると、抵抗R17からNPNトランジスタQ5を通ってGNDに流れていた電流が、ダイオードD4を通って帰還回路4の抵抗R5に流れ込むようになり、シャントレギュレータIC2の制御端子電圧(帰還回路の検出電圧)はPre.Vbbとは無関係に上昇する。これにより、帰還回路4からスイッチング制御回路2に、Pre.Vbbが高過ぎる旨がフィードバックされ、スイッチング制御回路2はPre.Vbbが主出力電圧(37V)よりも低く従出力電圧(5V)よりも高い中間電圧に低下するようにスイッチング素子Q1のオンデューティを低下させる。すなわち、省電力モード制御回路3Aは、省電力モード時にPre.Vbbが中間電圧に低下するように帰還回路4を介してスイッチング制御回路2を制御し、当該中間電圧を降圧型スイッチングレギュレータ回路IC1に入力させる。
【0035】
Pre.Vbbを下げると、スイッチング制御回路2による「バースト動作」が助長されるという効果が得られる。つまり、本実施例では、主出力端子に接続される負荷が待機状態または無負荷状態にあるときにスイッチング制御回路2の制御下にあるスイッチング素子Q1を間欠動作させているが、Pre.Vbbを下げると、この間欠動作がより顕著になる。したがって、本実施例に係るスイッチング電源装置1Aによれば、通常の「バースト動作」を行う従来のスイッチング電源装置よりも、トランスTの駆動損失、一次および二次回路の損失、整流ダイオードD1の損失等をさらに低減することができる。
【0036】
ここで、消費電力の低減という観点からは、Pre.Vbbは低ければ低いほど好ましい。しかしながら、Pre.Vbbを低下させ過ぎると降圧型スイッチングレギュレータ回路IC1の動作に支障をきたしたり、従出力端子からの電流供給能力が低下して十分な電流を出力することができないといった問題が発生する。したがって、省電力モードにおいて、Pre.Vbbを何Vまで低下させるかは、上記メリットとデメリットを勘案して決定される。なお、本実施例では、従出力の出力電流を10mA(従出力電圧:5V)とし、Pre.Vbbを10Vに低下させることとした。Pre.Vbb(降圧型スイッチングレギュレータ回路IC1の入力電圧)が37Vの場合と、10Vの場合とでスイッチング電力損失を比較すると、PWMスイッチング動作のオンデューティやスイッチング動作電圧の関係から10V入力時の電力損失は37V入力時の電力損失に対し半減する。
【0037】
図2は、実施例1に係るスイッチング制御装置1Aの動作波形である。省電力制御信号EM(波形B)をHigh/オープンに設定した状態で交流電源電圧ACIN(波形A)を上昇させるとスイッチング電源装置1Aが起動し、Pre.Vbb(波形E)が上昇するとともに、従出力電圧Vcc(波形C)が5Vに上昇する。しかしながら、スイッチング素子Q2がオフ状態なので、Pre.Vbbが主出力から出力されることはなく、主出力電圧Vbb(波形D)は0Vのままである。なお、Pre.Vbbが約10Vで脈流しているのは、「バースト動作」が行われているからである。
【0038】
その後、省電力制御信号EM(波形B)をLowにして省電力モードから通常モードに移行すると、省電力モード制御回路3AのトランジスタQ4、Q5がオン状態となり、Pre.Vbb(波形E)が37Vに上昇する。また、NPNトランジスタQ3のベースとGNDとの間には、遅延コンデンサC9(「遅延手段」に相当)が接続されているので、NPNトランジスタQ3は、モードが切り替わってから所定の遅延時間が経過した後にオン状態となる。そして、これに応じてスイッチング素子Q2がオン状態となり、Pre.Vbb(波形E)と同じ37Vが主出力から出力され始める(波形D参照)。
【0039】
つまり、本実施例に係るスイッチング電源装置1Aでは、遅延コンデンサC9を備えたことにより、Pre.Vbb(波形E)が主出力電圧である37Vまで上昇した後に、スイッチング素子Q2がオン状態(主出力端子からPre.Vbbが出力)となる。したがって、負荷回路に主出力電圧よりも低い昇圧途上の電圧が出力されるのを確実に防止することができる。
【0040】
以上のように、この実施例によれば、省電力モード時にPre.Vbbが主出力電圧(37V)よりも低く従出力電圧(5V)よりも高い中間電圧(約10V)に低下するようにスイッチング制御回路2を制御し、当該中間電圧を降圧型スイッチングレギュレータ回路IC1に入力させているので、降圧型スイッチングレギュレータ回路IC1の電力損失を低減させることができる。また、主出力端子に接続される負荷が待機状態または無負荷状態にあるときに、スイッチング制御回路2がスイッチング素子Q1を間欠動作させることで消費電力を低減しているが、この実施例によれば帰還回路4を介して主出力電圧よりも低電圧の中間電圧に制御しているので、スイッチング素子Q1の間欠動作をさらに助長させ、消費電力をさらに低減することができる。したがって、主出力側の負荷回路が待機状態または無負荷状態である場合における消費電力の低減を図ることができる。
【実施例2】
【0041】
次に、図3を参照しながら、実施例2に係るスイッチング電源装置1Bについて説明する。スイッチング電源装置1Bは省電力モード制御回路3Bを備え、この省電力モード制御回路3Bには第1省電力制御信号EM1と第2省電力制御信号EM2の2つの信号が入力されるようになっている。そして、これらの信号を下表のように設定することにより、「通常モード」、「第1省電力モード」および「第2省電力モード」の3つのモードを切り替えることができる。
なお、省電力モード制御回路3B以外の部分については、実施例1に係るスイッチング電源装置1Aと同様なので、説明を省略する。
【表1】

【0042】
第1省電力制御信号EM1および第2省電力制御信号EM2をLowに設定した通常モードにおいては、NPNトランジスタQ5がオン状態であり、かつPNPトランジスタQ6がオフ状態なので、電流が、ダイオードD4またはダイオードD5を通って帰還回路4の抵抗R5に流れ込むことはない。したがって、このモードでは、Pre.Vbbは37Vに保たれる。また、PNPトランジスタQ4およびNPNトランジスタQ3はいずれもオン状態なので、スイッチング素子Q2もオン状態となり、Pre.Vbbの37Vがそのまま主出力端子から出力される。
【0043】
第1省電力制御信号EM1のみをHigh/オープンに設定すると、第1省電力モードとなる。このモードになると、PNPトランジスタQ4およびNPNトランジスタQ3がいずれもオフ状態となるので、スイッチング素子Q2もオフ状態となり、主出力端子から負荷回路への電力供給は停止する。また、NPNトランジスタQ5がオフ状態となるので、抵抗R17からの電流がダイオードD4を通って帰還回路4の抵抗5に流れ込むことになり、シャントレギュレータIC2の制御端子電圧はPre.Vbbとは無関係に上昇する。そして、スイッチング制御回路2はPre.Vbbが低下するようにスイッチング素子Q1のオンデューティを低下させる。なお、本実施例では、従出力の出力電流を150mA(従出力電圧:5V)とし、Pre.Vbbは約18Vまで低下する。
【0044】
第1省電力制御信号EM1をHigh/オープンに設定した状態で、さらに第2省電力制御信号EM2をHigh/オープンに設定すると、第2省電力モードとなる。このモードになると、NPNトランジスタQ7およびPNPトランジスタQ6がオン状態となるので、PNPトランジスタQ6のコレクタ電流がダイオードD5を通って帰還回路4の抵抗R5に流れ込むことになる。つまり、このモードでは、ダイオードD4からの電流に加えてダイオードD5からの電流も帰還回路4の抵抗R5に流れ込むので、第1省電力モードに設定した場合よりもさらにシャントレギュレータIC2の制御端子電圧が上昇し、Pre.Vbbが低下する。なお、本実施例では、Pre.Vbbは約10Vまで低下する。
【0045】
図4は、実施例2に係るスイッチング制御装置1Bの動作波形である。第1省電力制御信号EM1(波形B1)と第2省電力制御信号EM2(波形B2)をHigh/オープンに設定した状態(第2省電力モード)で交流電源電圧ACIN(波形A)を上昇させるとスイッチング電源装置1Bが起動し、Pre.Vbb(波形E)が上昇するとともに、従出力電圧Vcc(波形C)が5Vに上昇する。このとき、スイッチング素子Q2はオフ状態なので、Pre.Vbbが主出力から出力されることはなく、主出力電圧Vbb(波形D)は0Vのままである。なお、Pre.Vbbが約10Vで脈流しているのは、「バースト動作」が行われているからである。
【0046】
その後、第2省電力制御信号EM2(波形B2)のみをLowに設定して第2省電力モードから第1省電力モードに移行すると、Pre.Vbb(波形E)が約18Vに上昇する。なお、スイッチング素子Q2はオフ状態なので、このモードにおいても主出力電圧Vbbは0Vのままである。なお、Pre.Vbbが約18Vで脈流しているのは、「バースト動作」が行われているからである。
【0047】
さらにその後、第1省電力制御信号EM1(波形B1)をLowに設定して第1省電力モードから通常モードに移行すると、省電力モード制御回路3AのトランジスタQ4、Q5がオン状態となり、Pre.Vbb(波形E)が37Vに上昇する。また、NPNトランジスタQ3のベースとGNDとの間には、遅延コンデンサC9が接続されているので、NPNトランジスタQ3は、モードが切り替わってから所定の遅延時間が経過した後にオン状態となる。すなわち、Pre.Vbbが37Vに上昇した後にスイッチング素子Q2がオン状態となり、Pre.Vbb(波形E)と同じ37Vが主出力端子から出力され始める(波形D参照)。
【0048】
結局、本実施例に係るスイッチング電源装置1Bによれば、主出力端子からの負荷回路への電流供給を停止し、さらにPre.Vbbを10Vと18Vの2段階の中間電圧に任意に切り替えることができる。これにより、従出力に比較的高い電流供給能力が要求されるような事情がある場合は第1省電力モードに設定し、電流供給能力が低くても構わない場合は第1省電力モードよりもさらに消費電力を低減することができる第2省電力モードに設定することができる。
【0049】
[消費電力の測定結果]
続いて、本発明の効果を確認するために、第1および第2省電力モードに設定した実施例2に係るスイッチング電源装置1B(図3)と、省電力モードに設定した従来のスイッチング電源装置1C(図5)について、消費電力の測定を行った。
測定結果は、下表の通りである。
【表2】

【表3】

【0050】
上表から明らかなように、いずれの条件においても、実施例2に係るスイッチング電源装置1Bによれば、従来のスイッチング電源装置1Cよりも消費電力を低減することができた。
【0051】
以上、本発明に係るスイッチング電源装置の好ましい実施形態について説明してきたが、本発明はこれらの構成に限定されるものではない。
例えば、省電力モード制御回路3Aの具体的な回路構成は図1のものに限定されず、
省電力制御信号EMを変化させることにより、(1)スイッチング素子Q2をオン状態からオフ状態に切り替えることができるとともに、(2)Pre.Vbbを通常モードよりも低下させることができるあらゆる回路を適用することができる。
【0052】
同様に、省電力モード制御回路3Bの具体的な回路構成は図3のものに限定されず、
第1省電力制御信号EM1を変化させることにより、(1)スイッチング素子Q2をオン状態からオフ状態に切り替えることができるとともに、(2)Pre.Vbbを通常モードよりも低下させることができ、
さらに、第2省電力制御信号EM2を変化させることにより、(3)Pre.Vbbをより一層低下させることができるあらゆる回路を適用することができる。
【0053】
また、上記実施例2では、2つの省電力制御信号を入力可能に構成しているが、3つ以上の省電力制御信号を入力可能に構成し、きめ細かく中間電圧を設定することにより、さらなる消費電力の低減を図るようにしてもよい。
具体的には、省電力モード制御回路を、複数の省電力制御信号が互いに独立して外部から入力されるように構成するとともに、複数の省電力制御信号の高低(High/Low)レベルの組み合わせの数に対応した複数の省電力モードを設定可能とし、外部からの複数の省電力制御信号の入力状態に応じて、該複数の省電力モードに対応した互いに異なる複数の中間電圧のうち1つを生成するようにスイッチング制御回路2を制御し、当該中間電圧を降圧回路に入力させるようにしてもよい。
【0054】
また、上記実施形態では、省電力モード制御回路3A、3Bをディスクリート型のトランジスタで構成しているが、これに限定されず、ICにより論理回路を構成するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0055】
1A スイッチング電源装置(実施例1)
1B スイッチング電源装置(実施例2)
2 スイッチング制御回路
3A 省電力モード制御回路(実施例1)
3B 省電力モード制御回路(実施例2)
4 帰還回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランスの一次巻線に接続された第1スイッチング素子と、前記トランスの二次巻線に誘起される交流電圧を整流および平滑して二次側直流電圧を生成する整流平滑手段と、前記二次側直流電圧の電圧レベルに応じた二次側出力信号を一次側にフィードバックする帰還回路と、当該帰還回路からの前記二次側出力信号に基づき前記二次側直流電圧が所定の主出力電圧に保たれるよう前記第1スイッチング素子のスイッチング動作を制御するスイッチング制御回路と、前記二次側直流電圧を入力電圧として該二次側直流電圧を降圧して前記主出力電圧よりも低い従出力電圧を出力する降圧回路と、前記整流平滑手段と主出力端子の間に直列に接続され、前記二次側直流電圧が前記主出力端子から出力されるのを遮断し得る第2スイッチング素子と、外部から入力される省電力制御信号に応じて前記第2スイッチング素子を導通状態にして前記主出力端子から前記主出力電圧を出力させる通常モードと非導通状態にして前記主出力端子からの出力を停止させる省電力モードとに切り替える省電力モード制御回路と、を備えたスイッチング電源装置であって、
前記スイッチング制御回路は、前記主出力端子に接続される負荷が待機状態または無負荷状態にあるときに前記第1スイッチング素子を間欠動作させ、
前記省電力モード制御回路は、前記主出力端子に接続される負荷が待機状態または無負荷状態にあるときに前記省電力モードに切り替え、前記二次側直流電圧が前記主出力電圧よりも低く前記従出力電圧よりも高い中間電圧に低下するように前記帰還回路を介して前記スイッチング制御回路を制御し、前記中間電圧を前記降圧回路に入力させることを特徴とするスイッチング電源装置。
【請求項2】
前記省電力モード制御回路は、前記第2スイッチング素子が非導通状態から導通状態に切り替わるまでの時間を遅延させる遅延手段を備え、
前記省電力制御信号によって前記省電力モードから前記通常モードに設定されると、前記二次側直流電圧が前記主出力電圧に上昇した後に、前記第2スイッチング素子が導通状態に切り替わることを特徴とする請求項1に記載のスイッチング電源装置。
【請求項3】
前記省電力モード制御回路は、複数の省電力制御信号が互いに独立して外部から入力されるように構成されるとともに、前記複数の省電力制御信号の高低レベルの組み合わせの数に対応した複数の省電力モードを設定可能とされ、外部からの前記複数の省電力制御信号の入力状態に応じて、該複数の省電力モードに対応した互いに異なる複数の前記中間電圧のうちの1つを生成するように前記スイッチング制御回路を制御し、当該中間電圧を前記降圧回路に入力させることを特徴とする請求項1に記載のスイッチング電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−206982(P2010−206982A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−50904(P2009−50904)
【出願日】平成21年3月4日(2009.3.4)
【出願人】(000004606)ニチコン株式会社 (656)
【Fターム(参考)】