説明

スイッチング電源装置

【課題】スイッチング損失の低減を図ることと、ノイズ対策とを、簡単に両立させ得るスイッチング電源装置を提供する。
【解決手段】空調機の制御用電圧を生成するスイッチング電源装置において、スイッチングトランス1の1次側巻線1pへの通電をオン/オフするスイッチング素子4と、スイッチング素子4と並列に接続され、1次側巻線のインダクタンスとLC共振を生じる共振用コンデンサ3と、スイッチングトランス1の2次側電圧を整流及び平滑した出力電圧に基づいてスイッチング素子4のオン/オフ期間を制御する電圧制御回路7(フォトカプラ6,スイッチングIC5)と、出力電圧に含まれ得る過渡的な異常電圧を吸収することにより、当該異常電圧がそのままフォトカプラ6への入力となることを防止する異常電圧吸収用コンデンサ11とを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調機の制御用電圧を生成するスイッチング電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スイッチング電源装置は、スイッチングに伴って電力の損失(スイッチング損失)やサージノイズを生じる。このようなノイズは、外来ノイズも含めて、スイッチング電源装置の定電圧機能に深刻な影響を与える場合がある。従って、このようなスイッチング損失を低減し、かつ、ノイズ対策を講じることが、スイッチング電源装置にとって重要課題である。
【0003】
例えば、スイッチングトランスの1次側巻線に直列に接続されたスイッチング素子に対して並列にコンデンサを接続し、スイッチング素子のオフ時に、巻線のインダクタンスとコンデンサの容量とで、共振を生じさせ、スイッチング素子の出力端子間の電圧を低減するという技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。これにより、スイッチング損失の低減や、スイッチング素子をターンオンした時のサージノイズ低減が期待される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−100554号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1のスイッチング電源装置では、共振用のコンデンサの容量を大きくすると、ターンオフ時のサージノイズは低減できるが、ターンオン時のスイッチング損失は大きくなるという問題点がある(段落[0006]〜[0007])。上記特許文献1では、この問題を解決するために、マイクロコンピュータを用いて容量を可変にする提案をしているが、そのためにはマイクロコンピュータその他の制御回路が必要であり、回路構成が複雑化してコストも増大する。
【0006】
かかる従来の問題点に鑑み、本発明は、スイッチング損失の低減を図ることと、ノイズ対策とを、簡単に両立させ得るスイッチング電源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明は、空調機の制御用電圧を生成するスイッチング電源装置であって、スイッチングトランスと、前記スイッチングトランスの1次側巻線への通電をオン/オフするスイッチング素子と、前記スイッチング素子と並列に接続され、前記1次側巻線のインダクタンスとLC共振を生じる共振用コンデンサと、前記スイッチングトランスの2次側電圧を整流及び平滑した出力電圧に基づいて前記スイッチング素子のオン/オフ期間を制御する電圧制御回路と、前記出力電圧に含まれ得る過渡的な異常電圧を吸収することにより、当該異常電圧がそのまま前記電圧制御回路への入力となることを防止する異常電圧吸収用コンデンサとを備えたものである。
【0008】
上記のように構成されたスイッチング電源装置では、スイッチング素子がオフのときスイッチングトランスの1次巻線と共振用コンデンサとによって発生するLC共振により、スイッチング素子の出力端子間の電圧が低下する。スイッチング素子がターンオンしたときのスイッチング損失を低減するには、LC共振の振幅を大きくして当該電圧をより小さくすることが好ましく、そのためにインダクタンスを増大させた場合、ターンオフ時の2次側のサージノイズが大きくなる。また、外来ノイズがこれに重なる場合もある。しかし、このような異常電圧は異常電圧吸収用コンデンサによって吸収されるので、異常電圧がそのまま電圧制御回路への入力となることはなく、異常電圧に対する無用な電圧制御を抑制することができる。
【0009】
(2)また、上記(1)のスイッチング電源装置において、電圧制御回路は出力電圧により動作するフォトカプラを含み、前記異常電圧吸収用コンデンサは当該フォトカプラの入力回路に並列に接続されているものであってもよい。
この場合、高い周波数成分を持つ過渡的な異常電圧は、フォトカプラへの入力に対するバイパスを形成するコンデンサに導かれ、フォトカプラへ異常電圧がそのまま入力されることを、確実に防止することができる。例えば、高周波に対する応答性に優れたセラミックコンデンサを採用することにより、このような動作を容易に実現することができる。
【0010】
(3)また、上記(1)又は(2)のスイッチング電源装置において、インダクタンスを相対的に増大させることによってLC共振の振幅を大きくすることが好ましい。
この場合、LC共振の振幅を増大させた分だけ、スイッチング素子がオフのときの出力端子間の電圧が低下するので、スイッチング素子がターンオンしたときのスイッチング損失を低減することができる。また、インダクタンスの増大によって、スイッチングトランスの結合度が向上し、電力変換の効率が改善される。
【発明の効果】
【0011】
本発明のスイッチング電源装置によれば、スイッチング損失の低減を簡易に実現可能とする一方で、それによってノイズが増大しても出力電圧の変動を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係るスイッチング電源装置の主要部の回路図である。
【図2】図1におけるスイッチング素子のオン/オフに伴って、その出力端子間電圧であるコレクタ−エミッタ間電圧VCEと、出力電流であるコレクタ電流Icとが、どのように変化するかを示すタイムチャートである。
【図3】出力電圧(=Vcc)に乗るノイズの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、本発明の一実施形態に係るスイッチング電源装置の主要部の回路図である。このスイッチング電源装置は、空調機(主に室外機又は室内機、リモコン装置でも可)に使用されるものである。図において、スイッチングトランス1は、1次巻線1p及び2次巻線1sを有し、1次巻線1pのインダクタンスは、巻数を増やすことにより、従前の通常値と比べて2倍程度となっている。これにより、トランスの結合度が増大し、電力変換の効率が向上する。
【0014】
スイッチングトランス1の1次巻線1pには、直流電圧VDCが供給される。なお、この直流電圧VDCは、商用交流電圧を全波整流し、かつ、電解コンデンサ2によって平滑されることにより得られるものである。1次巻線1pには直列にスイッチング素子4(例えばパワートランジスタ)が接続されている。スイッチング素子4の出力端子(コレクタ−エミッタ)間には、並列に、共振用コンデンサ3が接続されている。
【0015】
また、スイッチング素子4のベースにはスイッチングIC5が接続され、さらに、フォトカプラ6の出力回路が接続されている。スイッチングIC5は、フォトカプラ6の出力電流が多いほどスイッチング素子4をオンにする期間が短くなるように、また、フォトカプラ6の出力電流が少ないほどスイッチング素子4をオンにする期間が長くなるように制御する。スイッチングIC5及びフォトカプラ6は、スイッチング素子4のオン/オフ期間を制御する電圧制御回路7を構成している。
【0016】
スイッチングトランス1の2次巻線1sに生じる電圧は、ダイオード8を介して電解コンデンサ9により平滑される。平滑後の出力電圧は、制御用の直流電圧Vccとしてマイクロコンピュータ13等の電子デバイスに提供される。また、出力電圧は、フォトカプラ6の入力回路と抵抗10との直列体にも印加され、フォトカプラ6の入力回路(発光ダイオード)に電流が流れる。このときフォトカプラ6に流れる電流は、出力電圧の増減に応じて増減する。
【0017】
具体的には、Vccの所定値(通常5V)を基準値として、この基準値より出力電圧が高くなると、フォトカプラ6の入力回路及び出力回路に流れる電流が相対的に増大し、スイッチングIC5はスイッチング素子4をオンにする期間を短くするように動作する。この結果、出力電圧は低下する。逆に、基準値より出力電圧が低くなると、フォトカプラ6の入力回路及び出力回路に流れる電流が相対的に減少し、スイッチングIC5はスイッチング素子4をオンにする期間を長くするように動作する。この結果、出力電圧は上昇する。このようなフィードバック動作によって、出力電圧は定電圧に保たれる。
【0018】
また、フォトカプラ6の入力回路には異常電圧吸収用コンデンサ11及び抵抗12がそれぞれ並列に接続されている。抵抗12は、抵抗10と共に出力電圧を分圧し、フォトカプラ6の入力回路に印加される電圧が許容範囲を超えないように規制している。異常電圧吸収用コンデンサ11は、スイッチングによるサージノイズや外来ノイズを吸収する。また、異常電圧吸収用コンデンサ11は、セラミックコンデンサであり、これは、スイッチングによるサージノイズや外来ノイズが持つ高周波成分に対しての応答性に特に優れている。なお、外来ノイズとは例えば、マイクロコンピュータ13が制御するインバータ回路から来るものである。
【0019】
図2は、スイッチング素子4のオン/オフに伴って、その出力端子間電圧であるコレクタ−エミッタ間電圧VCEと、出力電流であるコレクタ電流Icとが、どのように変化するかを示すタイムチャートである。まず、電圧VCEは、スイッチング素子4がオンのとき低電圧(ほぼ0)、オフのとき高電圧となる。オンからオフに転じた瞬間には過渡的なサージ電圧が生じる。
【0020】
また、電圧VCEは、LC共振波形の一部としてのカーブを描いて下降し、ターンオンにより共振終了となって電圧VCEは低電圧になる。ここで、二点鎖線で描いたカーブは、比較のために従前のインダクタンス(約2mH)の場合のLC共振による電圧低下を示す。実線は、本実施形態のインダクタンス(約4mH)の場合のLC共振による電圧低下を示す。低下の度合いが大きくなるのは、インダクタンスの増大によってLC共振波形の振幅が大きくなるからである。このように、インダクタンスの増加によって、ターンオン直前の電圧VCEを、より低い値にすることができ、ターンオン後の低電圧との落差を、より小さくすることができる。
【0021】
ターンオン前後の電圧の落差が、より低い値となっていることは、電流Icに現れるサージ電流を低下させる効果がある。すなわち、電流Icの、二点鎖線で示すパルス状波形は、従前のインダクタンスの場合のサージ電流を示し、実線は、本実施形態のインダクタンスの場合のサージ電流を示す。このように大幅にサージ電流が低下することにより、スイッチング損失を低下させることができる。
【0022】
図3は、出力電圧(=Vcc)に乗ってくるノイズ(図2のサージ電圧や、外来ノイズ)の例を示す図である。マイクロコンピュータ13に供給される定格電圧を例えば5Vとすると、その許容範囲は±5%程度であり、4.75〜5.25Vの範囲となる。図の二点鎖線は、比較のために、異常電圧吸収用コンデンサ11が設けられていない場合においてノイズが、図1における電圧Vccの電路に乗った場合の波形を示している。この場合、まず、急激な出力電圧の上昇がフォトカプラ6によって検知され、スイッチングIC5は、スイッチング素子4のオン期間を急激に短くする制御を行う。この制御により、ごく短時間の遅延を伴って出力電圧が急激に低下する。この低下の程度は、例えば3.2Vまで低下することがあり、マイクロコンピュータ13の誤動作を招き得る状態となる。
【0023】
しかしながら、本実施形態では、フォトカプラ6に並列にバイパスを形成する異常電圧吸収用コンデンサ11が接続されているので、主として高周波成分で構成されるノイズは、当該コンデンサ11に導かれ、フォトカプラ6の入力回路への影響は大幅に低減される。従って、図3の実線で示すようにごく僅かの電圧上昇がフォトカプラ6に入力されるのみであり、これに対する電圧制御の応答効果も、ごく僅かの電圧降下にとどまる。この場合の電圧上昇・電圧降下の幅は小さく、許容範囲に十分に収まるものである。
【0024】
以上のように、上記スイッチング電源装置では、スイッチング素子4がターンオンしたときのスイッチング損失を低減するために、スイッチングトランス1の1次巻線1pと共振用コンデンサ3とによって発生するLC共振を利用する。また、その場合には、LC共振の振幅を大きくしてターンオン直前の電圧VCEを、より小さくすることが好ましい。しかし、そのためにインダクタンスを増大させた場合、2次側のサージ電圧が大きくなる。そこで、サージ電圧を吸収する異常電圧吸収用コンデンサ11を設け、異常電圧がそのままフォトカプラ6への入力とならないようにした。これにより、異常電圧に対する無用な電圧制御を抑制することができる。その結果として、当該スイッチング電源装置では、スイッチング損失の低減を図ることと、ノイズ対策により出力電圧の変動を抑制することとを、簡単に両立させ得るスイッチング電源装置を提供することができる。
【0025】
なお、上記実施形態では出力電圧のフィードバックにフォトカプラ6を使用したが、フォトカプラ6の入力回路の代わりに電圧検出器を置いて、その検出出力によりスイッチングIC5を動作させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0026】
1 スイッチングトランス
1p 1次側巻線
3 共振用コンデンサ
4 スイッチング素子
6 フォトカプラ
7 電圧制御回路
11 異常電圧吸収用コンデンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調機の制御用電圧を生成するスイッチング電源装置であって、
スイッチングトランス(1)と、
前記スイッチングトランス(1)の1次側巻線(1p)への通電をオン/オフするスイッチング素子(4)と、
前記スイッチング素子(4)と並列に接続され、前記1次側巻線(1p)のインダクタンスとLC共振を生じる共振用コンデンサ(3)と、
前記スイッチングトランス(1)の2次側電圧を整流及び平滑した出力電圧に基づいて前記スイッチング素子(4)のオン/オフ期間を制御する電圧制御回路(7)と、
前記出力電圧に含まれ得る過渡的な異常電圧を吸収することにより、当該異常電圧がそのまま前記電圧制御回路(7)への入力となることを防止する異常電圧吸収用コンデンサ(11)と
を備えたことを特徴とするスイッチング電源装置。
【請求項2】
前記電圧制御回路(7)は前記出力電圧により動作するフォトカプラ(6)を含み、前記異常電圧吸収用コンデンサ(11)は当該フォトカプラ(6)の入力回路に並列に接続されている請求項1記載のスイッチング電源装置。
【請求項3】
前記インダクタンスを相対的に増大させることによってLC共振の振幅を大きくした請求項1又は2に記載のスイッチング電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−229282(P2011−229282A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−96889(P2010−96889)
【出願日】平成22年4月20日(2010.4.20)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】