説明

スイッチング電源装置

【課題】精度よく電力の最大出力のばらつきを低減することのできる自励式のRCC方式のスイッチング電源装置を提供することを目的とする。
【解決手段】
発振周期測定回路22aは、スイッチング素子の発振周期Tを測定する。2次側導通時間測定回路22bは、2次巻線に電流が流れる時間T2ONを測定する。過電流保護値調整回路22cは、発振周期Tと2次側導通時間T2ONを用いて過電流保護検出電圧値VLIMITを定める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチング素子のスイッチング動作を制御することにより、出力電圧を制御するスイッチング電源装置に関し、特に自励方式のスイッチング電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自励発振によってスイッチング動作を行う自励方式のスイッチング電源装置は、内部に発振器などを持たないため、他励式のスイッチング電源装置と比較して回路構成を簡単にできるという特長がある。
しかしその一方で、入力電圧によって発振周波数が変化するため、入力電圧が高くなるほど電力の最大出力が大きくなってしまう。電力の最大出力に応じて、部品の部品定格の決定や保護回路の追加等が必要になるため、電源の大型化・コストアップ等に繋がるという問題がある。
【0003】
かかる自励方式のスイッチング電源装置における最大出力電力の入力電圧依存を解消するため、特許文献1に示されるスイッチング電源装置が考案されている。以下では、この特許文献1に示されるスイッチング電源装置について説明する。
図9は、特許文献1に示されるスイッチング電源装置200の回路構成を示すブロック図である。本図に示されるように、スイッチング電源装置200は、半導体装置199、入力端子3aと3bを備える入力部201、出力端子252aと252bとその間に接続される負荷253を備える出力部252、1次巻線203aと2次巻線203bと補助巻線203cを備えるスイッチングトランス203、起動抵抗202、スイッチング素子204、共振用容量205、スイッチング素子電流検出のためのセンス抵抗206、ダイオード207aと容量207bを備える補助巻線整流平滑回路207、スイッチングトランス203の補助巻線203cの負電圧を電流に変換するための抵抗208、2次側出力電圧の状態を検出する出力電圧検出回路209、ダイオード251aと容量251bを備える2次側整流平滑回路251を含んで構成される。
【0004】
半導体装置199は、スイッチング素子204のスイッチング動作を制御する。具体的には、スイッチング素子204がオフしフライバック期間が終了した後、スイッチングトランス203の補助巻線203cに発生するTR端子電圧VTRと基準電圧とをボトムオン検出回路210により比較する。TR端子電圧VTRが基準電圧よりも下回った場合ボトム状態と判断し、ハイレベルの信号(Hの信号)をRSフリップフロップ回路23のセット端子Sに対して出力することでスイッチング素子305をオンする。
【0005】
また、半導体装置199は比較器217において、スイッチング素子電流検出回路216で検出されたスイッチング素子電流信号VISを、2次側整流平滑回路251の出力部の電圧を示すフィードバック電圧VFBまたは過電流保護検出電圧VLIMITと比較する。VISがVFBまたはVLIMITに到達した場合、ハイレベルの信号をRSフリップフロップ回路211のリセット端子Rに出力し、スイッチング素子204をオフさせる。
【0006】
次に、半導体装置199の過電流保護値調整回路219について説明する。過電流保護値調整回路219は、スイッチング素子204がオン時にスイッチ219aをオンするように制御する。スイッチ219aには、スイッチング素子204のオンの期間にのみスイッチングトランス203の補助巻線203cに発生するパルス状の負電圧(フォワード電圧)を抵抗208により変換した電流ITRが流れる。
【0007】
カレントミラー回路219fは、電流ITRに比例した電流Ibを生成する。
演算回路219cは、電流Ibの2乗の関数となるようなVLIMIT補正電流Iaを演算し出力する。
スイッチ219dは、スイッチング素子204がオフ時にオンするように制御され、スイッチング素子204がオフする度に容量219eをチャージする。これにより、過電流保護検出電圧VLIMITは最大値VLIMITmaxとなる。
【0008】
スイッチ219bは、スイッチング素子204がオン時にオンするように制御され、スイッチング素子204がオフした瞬間から演算回路219cにより出力された電流Iaによって一定の割合で、容量219eをディスチャージして、過電流保護検出電圧VLIMITを低下させていく。
このように、特許文献1に示されるスイッチング電源装置は、スイッチングトランス203の補助巻線203cに発生するパルス状の負電圧(フォワード電圧)を抵抗208により変換した電流ITRに基づき過電流保護検出電圧VLIMITを定め、スイッチング素子204がオンした瞬間から一定の割合で過電流保護検出電圧VLIMITを低下させることで、高入力時には1次側から2次側への電力供給を抑え、直流入力電圧Vinに対する最大出力依存性を低減している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−5567号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記の特許文献1に開示される技術では、スイッチングトランスの補助巻線に発生する負電圧を抵抗により変換した電流値を、直流入力電圧を示す値として用い、過電流保護検出電圧の補正を行っている。このため、スイッチングトランスの巻線の巻き方あるいは結合度のばらつきや補助巻線に発生する負電圧から電流値を決定するための抵抗値のばらつき等の搭載部品のばらつきにより、直流入力電圧の検出精度が悪くなるという問題がある。
【0011】
本発明は上記事情に鑑みなされたものであり、精度よく電力の最大出力のばらつきを低減することのできる自励方式のスイッチング電源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明にかかるスイッチング電源装置は、入力電圧が印加される入力端子と、負荷と接続される出力端子と、前記入力端子に接続される1次巻線と前記出力端子に接続される2次巻線とを有するスイッチングトランスと、前記1次巻線と前記入力端子の間に直列に接続されるスイッチング素子と、前記スイッチング素子のスイッチング動作を制御する制御回路と、前記スイッチング素子の発振周期Tを測定する発振周期測定回路と、前記スイッチング素子に流れる電流値IDPを検出する1次側導通電流検出回路と、前記2次巻線に電流が流れる1周期あたりの時間T2ONを測定する2次側導通時間測定回路とを備え、前記制御回路は、前記発振周期T、前記1次側導通電流値IDP、前記2次側導通時間T2ONのいずれか1つのパラメータに対する許容値を、他の2つのパラメータを用いて定め、定めた許容値を用いて、前記スイッチング素子のスイッチング動作を制御する自励方式のスイッチング電源装置であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
電圧や電流の値そのものは部品のばらつきに左右されるが、電圧や電流の立上がりや立下りのタイミングは部品のばらつきに左右されにくい。スイッチング素子の発振周期T、2次側導通時間T2ONは電圧や電流の立上がりや立下りのタイミングを使って検出できるので、部品のばらつきに左右されにくい。また1次側導通電流値IDPは、スイッチングトランスの巻線の巻き方あるいは結合度のばらつき等に左右されないスイッチング素子に流れる電流を測定することで検出できる。
【0014】
本発明にかかるスイッチング電源装置は、スイッチング素子の発振周期T、1次側導通電流値I、2次側導通時間T2ONのいずれか1つのパラメータに対する許容値を、他の2つの測定値を用いて定め、スイッチング素子のスイッチング動作を制御するので、搭載部品のばらつきによる精度の悪化を避けることができ、精度よく電力の最大出力のばらつきを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施の形態1にかかるスイッチング電源装置1の回路構成を示すブロック図である。
【図2】出力電力一定化回路部22の内部回路構成を示すブロック図である。
【図3】2次側導通時間T2ONと、2次側導通時間測定回路22bの出力信号V2の関係を表す図である。
【図4】2次側導通時間測定回路22bの出力電圧V2と、過電流保護検出電圧VLIMITとの関係を表す図である。
【図5】入力電圧に対する最大出力の関係を示す図である。
【図6】2次側導通時間測定回路22bに配置されるスイッチの数の違い(n=0、3、6)による、入力電圧に対する最大出力電力POmaxの関係を示す図である。
【図7】スイッチング電源装置1の各内部回路における出力信号の波形を示す図である。
【図8】過電流保護検出(最大出力)時の波形を示す図である。
【図9】従来のスイッチング電源装置の回路構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1にかかるスイッチング電源装置1の回路構成を示すブロック図である。本図に示されるように、スイッチング電源装置1は、半導体装置2、入力部3、出力部4、スイッチングトランス6、補助巻線整流平滑回路7、スイッチング素子8、2次側導通時間検出部9、2次側整流平滑回路10、起動抵抗11、センス抵抗12、共振用容量13、出力電圧検出回路18を含んで構成される。
【0017】
半導体装置2は、外部入力端子として、起動用入力端子(VIN端子)、補助電源電圧入力端子(VCC端子)、2次側導通時間検出端子(TR端子)、フィードバック制御用端子(FB端子)、ゲート出力端子(OUT端子)、スイッチング素子電流センス端子(IS端子)および制御回路のグラウンド端子(GND端子)の7端子を備え、各端子の入力値に基づき、スイッチング素子8のスイッチング動作を制御する機能を有する。半導体装置2の具体的な構成については後述する。
【0018】
入力部3は、入力端子3aおよび3bを備える。入力端子3a、3b間には直流の入力電圧Vinが印加される。
出力部4は、出力端子4a、4b、および負荷5を備える。出力端子4a、4b間には出力電圧Voutが出力され、負荷5に電力を供給する。
スイッチングトランス6は、1次巻線6a、2次巻線6b、および補助巻線6cを備える。本実施の形態において、スイッチングトランス6はフライバック方式(RCC方式)のトランスであり、1次巻線6aと2次巻線6bの極性は逆になっている。すなわち、スイッチング素子8のオン時に1次巻線6aにエネルギーを蓄え、スイッチング素子のオフ時に1次巻線6aから2次巻線6bにエネルギーを伝達する。また、補助巻線6cは2次巻線6bと同極性となっている。
【0019】
補助巻線整流平滑回路7は、補助巻線整流ダイオード7aおよび補助巻線平滑容量7bを備える。補助巻線整流平滑回路7は、スイッチングトランス6の補助巻線6cに接続され、スイッチング素子8のスイッチング動作によって補助巻線6cに発生する交流電圧(補助側交流電圧VB)を整流し且つ平滑化して、半導体装置2へ電力を供給する。すなわち、補助巻線整流平滑回路7は半導体装置2の補助電源部として用いられる。
【0020】
2次側導通時間検出部9は、2次側オン時間検出抵抗9aおよび9bを備える。2次側導通時間検出部9は、スイッチングトランス6の補助巻線6cに接続され、補助巻線6cに現れる交流電圧に比例した電圧変化VTRを、半導体装置2のTR端子に入力する。
整流平滑回路10は、2次巻線整流ダイオード10aおよび2次巻線平滑容量10bを備える。整流平滑回路10は、スイッチングトランス6の2次巻線6bに接続され、スイッチング素子8のスイッチング動作によって2次巻線6bに発生する交流電圧(2次側交流電圧)を整流し且つ平滑化して、出力電圧Vout(第2の直流電圧)を生成し、出力部4へ出力電力を出力する。すなわち、整流平滑回路10は、スイッチング電源装置1の出力電圧生成部として用いられる。
【0021】
起動抵抗11は、一端を入力部3のプラス側、すなわち入力端子3aに接続され、他端を半導体装置2のVIN端子に接続される。これにより、起動時において半導体装置2への電流制限抵抗として働く。
スイッチング素子8は、高圧印加(DRAIN)端子をスイッチングトランス6の1次巻線6aに接続され、ゲート端子を半導体装置2のOUT端子に接続され、出力(SOURCE)端子をスイッチング素子8に流れる電流値を検出するためのセンス抵抗12と半導体装置2のIS端子に接続される。
【0022】
スイッチング素子8のスイッチング動作を制御する信号は、半導体装置2のOUT端子から出力される。また、スイッチング素子8を流れる電流は、センス抵抗12を介して半導体装置2のIS端子で検出される。
共振用容量13は、スイッチング素子8の高圧印加(DRAIN)端子と出力(SOURCE)端子間に接続され、RCC電源動作に必要な共振エネルギーを生成する。
【0023】
出力電圧検出回路18は、2次側整流平滑回路10の出力部の電圧値を検出し、そのフィードバック信号VFBを出力する。フィードバック信号VFBは、FB端子を介して半導体装置2に検出される。
続いて、半導体装置2の内部構成について説明する。図1に示されるように、半導体装置2は、レギュレータ14、内部回路用電源15、スイッチング素子電流検出回路19、比較器20、ボトムオン検出回路21、出力電圧一定化回路部22、RSフリップフロップ回路23、ゲートドライバ24、起動・停止回路35、フィードバック信号回路37、NAND回路39を含んで構成される。
【0024】
半導体装置2のうち、スイッチング素子電流検出回路19、発振周期測定回路22a、2次側導通時間測定回路22bは、それぞれスイッチング素子8に流れる電流IDP、スイッチング素子8の発振周期T、スイッチングトランス6の2次巻線6bに電流が流れる時間(2次側導通時間)T2ONを測定する。
半導体装置2のうち、スイッチング素子電流検出回路19、発振周期測定回路22a、2次側導通時間測定回路22b以外のレギュレータ14、内部回路用電源15、比較器20、ボトムオン検出回路21、過電流保護値調整回路22c、RSフリップフロップ回路23、ゲートドライバ24、起動・停止回路35、フィードバック信号回路37、NAND回路39からなる制御部は、スイッチング素子8のスイッチング動作を制御する。以下各構成部について説明する。
【0025】
レギュレータ14は、VIN端子またはVCC端子の何れか一方の端子から半導体装置2の内部回路用電源15へ電流を供給し、電圧を一定値VDDに安定化する。電圧安定化は例えば、スイッチング素子8の発振開始前において、VIN端子から内部回路用電源15へ電流を供給するとともに、VCC端子を介して補助巻線整流平滑回路7の補助巻線平滑容量7bへも電流を供給し、補助電源電圧VCCおよび内部回路用電源15のVDD電圧を上昇させることにより実現される。
【0026】
起動・停止回路35は、VCC端子電圧の大きさによって、スイッチング素子8の発振および停止を制御する。具体的には、起動・停止回路35は、VCC電圧が起動電圧に達すると、NAND回路39への出力信号をローレベルの信号(以下、L信号と呼ぶ)からハイレベルの信号(以下、H信号と呼ぶ)に切り替え、スイッチング素子8のスイッチング動作を開始させる。
【0027】
フィードバック信号回路37は、出力電圧検出回路18から出力され半導体装置2のFB端子に入力されるフィードバック信号VFBに応じて、スイッチング素子8に流れる電流レベルを決定し、出力電圧Voutを一定に安定させる。
スイッチング素子電流検出回路19は、スイッチング素子8に流れる電流とセンス抵抗12の電圧値を図示しないローパスフィルタを介して、比較器20へスイッチング素子電流信号VISを出力する。
【0028】
ボトムオン検出回路21は、2次側導通時間検出部9に接続され、補助巻線6cに現れる交流電圧に比例した電圧VTRのボトム状態において、ボトムオン信号(H信号)を出力する。
出力電力一定化回路部22は、発振周期測定回路22a、2次側導通時間測定回路22b、および過電流保護値調整回路22cを備える。発振周期測定回路22aは、ボトムオン検出回路21に接続され、ボトムオン検出回路21の信号によりスイッチング素子8の発振周期Tを計測する。2次側導通時間測定回路22bは、NAND回路39の出力およびボトムオン検出回路21の出力が入力されるように接続され、ボトムオン検出回路21とNAND回路39の出力信号から、スイッチング素子8のオンオフタイミングを検出し、スイッチングトランス6の2次巻線6bに電流が流れる時間(2次側導通時間)T2ONを測定する。過電流保護値調整回路22cは、2次側導通時間測定回路22bの出力が入力されるように接続され、2次側導通時間測定回路22bの出力信号から、比較器20に出力する過電流保護検出電圧VLIMITを決定する。出力電力一定化回路部22の詳細な内部回路構成については後述する。
【0029】
比較器20は、フィードバック信号VFBまたは過電流保護検出電圧VLIMITを基準側としてスイッチング素子電流信号VISを検出側として比較を行い、その比較結果に応じた信号をRSフリップフロップ回路23に出力する。具体的には、VISがVFBまたはVLIMITに到達した場合、H信号をRSフリップフロップ回路23のリセット端子Rに出力する。
【0030】
なお、本実施の形態では、フィードバック信号回路37の出力信号VFBは、電源の負荷が重くなるにつれて、すなわち負荷4の抵抗値が小さくなるにつれて、リニアに上昇する。また、フィードバック信号回路37の出力信号VFBが過電流保護検出電圧VLIMIT以上となった場合、比較器20の基準電圧はVLIMITとなる。そのため、スイッチング素子8に流れる最大電流はVLIMITで決定される。
【0031】
RSフリップフロップ回路23は、ボトムオン検出回路21からスイッチング素子8のオンタイミングでセット端子Sにセットパルス(H信号)を、比較器20からスイッチング素子8のオフタイミングでリセット端子Rにセットパルス(H信号)をそれぞれ受け付け、出力端子QからNAND回路39へ信号を出力し、NAND回路39を介してゲートドライバ24でのオンオフを制御する。ゲートドライバ24の出力は、半導体装置2のOUT端子を介して、スイッチング素子8のゲートへと伝達されるように接続される。
【0032】
以上が実施の形態1にかかるスイッチング電源装置1の構成についての説明である。次に、出力電力一定化回路22の内部回路の詳細を説明する。
まず、スイッチング電源装置の出力電圧POを一定にするために満たすべき条件について議論する。
出力電圧POは、出力電流IOと出力電圧VOにより、
【0033】
【数1】

【0034】
と表される。
また、出力電流IOは、2次側電流ピーク値I2Pと2次側オンデューティーD2ONを用いて、
【0035】
【数2】

【0036】
と表される。
2次側電流ピーク値I2Pと2次側オンデューティーD2ONはそれぞれ、スイッチングトランス6の一次巻線6aの巻数np、2次巻線6bの巻数ns、1次側スイッチング素子電流ピーク値IDP、発振周期T、および2次側導通時間T2ONを用いて、
【0037】
【数3】

【0038】
【数4】

【0039】
と表される。
ここで、上記の数式(2)に数式(3)、数式(4)を代入すると、出力電流IOは、
【0040】
【数5】

【0041】
と表される。
これを数式(1)に代入すると、出力電圧POは、
【0042】
【数6】

【0043】
と表される。
スイッチングトランス6の1次巻線6aの巻数npと2次巻線の巻数nsは、スイッチングトランスの仕様で定まる。また出力電圧VOは一定である。従って、スイッチング電源装置の出力電圧POを一定にするためには、
【0044】
【数7】

【0045】
の関係式を満たすように、スイッチング電源装置を動作させればよい。
さらに、出力電力POが最大値POmaxとなるのは、1次側スイッチング素子電流ピーク値IDPが最大となる場合、すなわち1次側電流の過電流保護検出時であることから、最大出力電力POmaxはセンス抵抗12の抵抗値Rs、過電流保護検出時のIS端末電圧VLIMITを用いて、
【0046】
【数8】

【0047】
と表される。
センス抵抗12の抵抗値Rsは定数であるため、最大出力電力POmaxを一定にするためには、
【0048】
【数9】

【0049】
の関係式を満たすように、スイッチング電源装置を動作させればよい。
本実施の形態のスイッチング電源装置は、発振周期Tと2次側導通時間T2ONを測定し、発振周期Tと2次側導通時間T2ONの測定値に基づき、上記数式(9)の関係式を満たす過電流保護検出電圧VLIMITを設定することにより、最大出力電力のばらつきを低減している。
【0050】
次に、出力電力一定化回路22の内部回路の具体的構成についての説明に移る。図2は出力電力一定化回路部22の内部回路構成を示すブロック図である。出力電力一定化回路部22は、発振周期測定回路22a、2次側導通時間測定回路22b、および過電流保護値調整回路22cからなる。以下、各回路について説明する。
発振周期測定回路22aは、ボトムオン検出回路21の出力(TR_ON)が接続され、スイッチング素子8の発振周期Tを測定する。補助巻線6cに現れる交流電圧に比例した電圧VTRのボトム状態の間隔は、スイッチング素子8の発振周期Tを示しており、ボトムオン検出回路21の出力(TR_ON)からスイッチング素子8の発振周期Tを測定することができる。具体的には、ボトムオン検出回路21からボトムオン信号を受け付けた瞬間に、スイッチ76をオフし、スイッチ25をオンすることにより、容量26の電荷を瞬間的に引き抜く。ボトムオン信号はパルス状の短いH信号であるため、その後すぐにスイッチ76がオン、スイッチ25がオフし、定電流源27から容量26に一定の割合(電流I1)でチャージが成される。すなわち容量26(容量値をC26とする)の電圧V1は、
【0051】
【数10】

【0052】
と表される。このように電圧V1は、発振周期Tが長くなるにつれリニアに上昇し、かかる電圧V1を2次側導通時間測定回路22bに出力する。以上が発振周期測定回路22aについての説明である。続いて、2次側導通時間測定回路22bについて説明する。
2次側導通時間測定回路22bは、ボトムオン検出回路21とNAND回路39の出力信号から、スイッチング素子8のオンオフタイミングを検出し、スイッチングトランス6の2次巻線6bに電流が流れる時間(2次側導通時間)T2ONを測定する。本実施の形態にかかるスイッチング電源装置は、フライバック方式(RCC方式)のスイッチング電源装置であるため、スイッチング素子のオフとなる時間を検出することで、スイッチングトランス6の2次巻線6bに電流が流れる時間(2次側導通時間)T2ONを測定することができる。
【0053】
具体的には、ボトムオン検出回路21の出力(TR_ON)が、2次側導通時間測定回路22bに内蔵されたスイッチ29aに接続されており、ボトムオン検出回路21からボトムオン信号を受けた瞬間に、スイッチ32aをオフし、スイッチ29aをオンすることで容量30の電荷を瞬間的に引き抜く。ボトムオン信号はパルス状の短いH信号であるため、その後すぐにスイッチ29aはオフする。
【0054】
またNAND回路39の出力が、2次側導通時間測定回路22bに内蔵されたインバータ回路31aに接続されている。インバータ回路31aは、スイッチング素子8がオン状態ではH信号、オフ状態ではL信号を出力する。インバータ回路31aの出力信号はスイッチ32aに入力される。
スイッチ32aは、インバータ回路31aからL信号が入力された場合にオンするように構成されている。従ってスイッチ32aはスイッチング素子8がオフ状態でオンすることになる。
【0055】
上記スイッチ29aとスイッチ32aの制御によりスイッチング素子8がオフしてから次にスイッチング素子8がオンするまでの間、定電流源33から容量30aに一定の割合(電流I2)でチャージが成される。すなわち容量30a(容量値をC30とする)の電圧Vaは、
【0056】
【数11】

【0057】
と表される。このように、電圧Vaは、2次側導通時間T2ONが長くなるにつれリニアに上昇する。
また、容量30aのプラス側は、スイッチ切替え部60に内蔵されたスイッチ60aの一端に接続される。スイッチ60aの他端は過電流保護値調整回路22cに接続される。図2には、上記のスイッチ29a、容量30a、インバータ31a、スイッチ32aの他に、スイッチ29b、容量30b、インバータ31b、スイッチ32b、スイッチ29n、容量30n、インバータ31n、スイッチ32nが図示されているが、スイッチ29a、容量30a、インバータ31a、スイッチ32aと同様の接続、構成、役割を持ち、容量30aと容量30b、容量30nの容量値は同じ(C30)である。なお、図2には上記構成が3個配置されているが、任意の数だけ配置して構わない。以下の説明は、簡単のため3個の構成での説明を実施するが、任意の数での構成が可能である。
【0058】
スイッチ32bとスイッチ32nに接続される定電流源43、53は、それぞれ2×I2、n×I2(n≧3)の電流で容量30b、30nをチャージする。すなわち、容量30b、30nの電圧Vb、Vnはそれぞれ、
【0059】
【数12】

【0060】
【数13】

【0061】
と表される。
2次側導通時間測定回路22bには、定電流源が1×I2、2×I2、n×I2の定電流源が配置されており、容量30a、容量30b、容量30nが同じ容量値のために、それぞれの容量には定電流源に応じてI2の倍数の電圧が表れる。
2次側導通時間測定回路22bに内蔵されたスイッチ切替え部60には、スイッチ60a、60b、60nなどで構成され、前述の発振周期測定回路22aから出力されるV1(発振周期Tに比例)が大きいほど、スイッチ60a、スイッチ60b、スイッチ60nの順番で、小さな定電流源に接続されたスイッチを一つ選択し、オンさせる。図2には記載されていないが、これらスイッチに関しては、複数のコンパレータを用いて、容量26の電圧V1に応じて、スイッチをオンオフさせる。
【0062】
すなわち、スイッチ切替え部60は、2次側導通時間T2ONの大きさと比例して大きくなる2次側導通時間測定回路22bの出力電圧V2の傾きを、発振周期Tの大きさに反比例させている。
図3は、2次側導通時間T2ONと、2次側導通時間測定回路22bの出力信号V2の関係を表す図である。本図に示されるように、2次側導通時間測定回路22bは、発振周期Tが2倍・3倍・・・n倍と大きくなるにつれて、2次側導通時間T2ONと過電流保護値調整回路22cへ出力される電圧V2の比例式の傾きが1/2倍・1/3倍・・・1/n倍と小さくなるように、電圧V2を出力する。以上が2次側導通時間測定回路22bについての説明である。続いて、過電流保護値調整回路22cについて説明する。
【0063】
過電流保護値調整回路22cは、2次側導通時間測定回路22bの出力が入力されるように接続され、2次側導通時間測定回路22bの出力信号から、比較器20に出力する過電流保護検出電圧VLIMITを決定する。また、過電流保護検出電圧VLIMITは、1周期前の発振周期Tと2次側導通時間T2ONの情報からパルスバイパルスで決定され、スイッチング素子8がオフするごとにリセットされる。
【0064】
過電流保護調整回路22cは反比例回路34を備える。反比例回路34は、2次側導通時間測定回路22bの出力電圧V2に基づき、過電流保護検出電圧VLIMITを出力する。具体的には、
【0065】
【数14】

【0066】
で示されるように、2次側導通時間測定回路22bの出力電圧V2に反比例する値を、過電流保護検出電圧VLIMITとして出力する。
なお、上記の数式(14)の出力を実現するための反比例回路は公知の技術であるが、比較的回路構成が複雑になる。そこで単純に、
【0067】
【数15】

【0068】
で示される関係式を満たすように、電圧V2から過電流保護検出電圧VLIMITを出力する回路構成としてもよい。入力されるV2が大きくなるに従い、VLIMITを単純に小さくするだけでよいため、回路構成が非常に簡素化できる。ただし、数式(14)の補正に比べ、補正精度がよくない。
図4は、2次側導通時間測定回路22bの出力電圧V2と、過電流保護検出電圧VLIMITとの関係を表す図である。過電流保護調整回路22cの反比例回路34が、数式(14)のように、2次側導通時間測定回路22bの出力電圧V2に反比例する値を過電流保護検出電圧VLIMITとして出力する回路である場合、電圧V2と過電流保護検出電圧VLIMITとの関係は、図4の(a)のようになる。一方回路構成を簡素化し、過電流保護調整回路22cの反比例回路34が、数式(15)の出力を実現する回路である場合、2次側導通時間測定回路22bの出力電圧V2と、過電流保護検出電圧VLIMITとの関係は、図4の(b)のようになる。
【0069】
また図5は、入力電圧に対する最大出力の関係を示す図である。図4(a)で示されるように、2次側導通時間測定回路22bの出力電圧V2に反比例する値を過電流保護検出電圧VLIMITとして出力した場合、図5の(a)で示される入力電圧と最大出力の関係となる。数式(9)を満たすようにVLIMITが定められており、入力電圧に関わらず最大出力が一定となる。
【0070】
図4(b)で示されるように、過電流保護検出電圧VLIMITを数式(15)の出力で実現した場合、図5の(b)で示される入力電圧と最大出力の関係となる。この場合、入力電圧が最低入力と最高入力の中間の値で、最大出力が大きくなる。また図5の(c)には、補正を行わなかった場合の入力電圧と最大出力の関係の関係を示す。過電流保護検出電圧VLIMITを数式(15)の出力で実現した場合においても、補正なしの場合に比べ、入力電圧の最高入力時の出力が抑えられるため、出力電力POの最大値は低減されている。なお、図5に示す入力電圧と最大出力の関係は、入力電圧の最低入力と最高入力で最大出力電力POが同じになるように補正したものである。以上が過電流保護値調整回路22cについての説明である。次に、上記のように出力電力一定化回路22を構成することによる効果について説明する。
【0071】
既に説明したように、入力電圧に対する最大出力電力POmaxを一定にするためには、数式(9)を満たす必要がある。すなわち過電流保護検出電圧VLIMITと発振周期Tが比例の関係で、VLIMITとV2(∝T2ON)が反比例の関係となるように制御する必要がある。これに対して、本実施の形態にかかるスイッチング電源装置では、2次側導通時間T2ONの大きさと比例して大きくなる2次側導通時間測定回路22bの出力電圧V2の傾きを、発振周期Tの大きさに反比例させている。これにより、例えば発振周期Tが大きい場合は、2次側導通時間T2ONが小さく補正(実際には電圧V2が小さくなっている)される。その後電圧V2と反比例するように過電流保護検出電圧VLIMITを決定する。
【0072】
すなわち、最初に発振周期Tと2次側オン時間T2ONを反比例の関係となるように2次側オン時間T2ONを補正し、その後補正された2次側オン時間T2ONと過電流保護検出電圧値VLIMITが反比例の関係となるように制御することで、数式(9)を満たし、最大出力電力POmaxのばらつきを低減している。
なお最大出力電力POmaxのばらつきを低減するためには、数式(9)の関係式を満たすようにスイッチング電源装置を動作させればよいので、スイッチング素子に流れる電流値IDPと、スイッチング素子の発振周期Tの測定値に基づき、上記数式(9)の関係式を満たす2次側導通時間T2ONの許容値を設定することにより、最大出力電力のばらつきを低減してもよい。この場合、2次側導通時間T2ONの許容値と2次側導通時間T2ONの測定値を比較し、2次側導通時間T2ONの測定値が2次側導通時間T2ONの許容値に到達した場合にスイッチング素子のスイッチング動作を制御することにより、最大出力電力のばらつきを低減する。
【0073】
図6は、2次側導通時間測定回路22bに配置されるスイッチの数の違い(n=0、3、6)による、入力電圧に対する最大出力電力POmaxの関係を示す図である。なお、本図は過電流保護検出電圧値VLIMITと2次側導通時間T2ONが反比例の関係を保ちながら制御される場合を仮定し、入力電圧が最低〜最高までの範囲でスイッチがn回切替る場合を想定している。
【0074】
本図に示されるように、入力電圧が高くなり発振周期Tが短くなるに従って、断続的にスイッチの切替えが行われるため、スイッチが切替えられるたびに過電流保護検出電圧値VLIMITが補正され、最大出力電力POmaxが抑えられる。スイッチ数nが大きければ、最大出力電力POをより理想的に抑えることができる。
特許文献1に開示される技術では、半導体装置の内部にIa=n×Ibの複雑な計算を行う演算回路が必要であった。また、スイッチング素子がオンした場合のみ過電流保護値調整回路が動作するように制御する必要があった。これに対し、本実施の形態にかかるスイッチング電源装置は、複雑な乗算、除算回路等の演算回路を用いず、比較的簡素な回路構成により入力電圧に対する最大出力電力の増大を回避することができる。
【0075】
また電圧や電流の値そのものは部品のばらつきに左右されるが、電圧や電流の立上がりや立下りのタイミングは部品のばらつきに左右されにくい。スイッチング素子の発振周期T、2次側導通時間T2ONは電圧や電流の立上がりや立下りのタイミングを使って検出できるので、部品のばらつきに左右されにくい。さらに、1次側導通電流値IDPはスイッチング素子に流れる電流を直接測定することで検出できるため、部品のばらつきに左右されにくい。
【0076】
本実施の形態にかかるスイッチング電源装置は、スイッチング素子の発振周期T、2次側導通時間T2ONを直接測定し、その測定値に基づき過電流保護検出電圧値VLIMITを定め、過電流保護検出電圧値VLIMITを用いてスイッチング素子のスイッチング動作を制御するので、搭載部品のばらつきによる精度の悪化を避けることができ、精度よく電力の最大出力のばらつきを低減することができる。
【0077】
次に、本実施の形態にかかるスイッチング電源装置1の動作を説明する。図7は、スイッチング電源装置1の各内部回路における出力信号の波形を示す図である。以下では図7(a)に示される、入力端子3の両端に直流入力電圧Vinが印加された場合を考える。
入力端子3の両端に電圧Vinが印加され電圧が上昇していくと、抵抗11、半導体装置2のVin端子、レギュレータ14を介して、半導体装置2のVCC端子から整流平滑回路7を構成する容量7bへ電流がチャージされる。この時、半導体装置内部の内部回路用電源15も基準電圧VDDまで上昇する。その後、VCC端子電圧が上昇し起動電圧に達すると、起動・停止回路35がH信号を出力するようになり、図7(b)に示されるように、スイッチング素子8の発振が開始される。
【0078】
スイッチング素子8の発振が開始されると、スイッチング素子8のスイッチング動作によって1次巻線6aに発生する交流電圧(1次側交流電圧)が印加され、スイッチング素子8がオンの期間は、1次巻線6aにエネルギーが蓄えられ、スイッチング素子8がオフの期間は、2次巻線6bへとエネルギーが伝達されるいわゆるフライバック電源動作となる。
【0079】
スイッチングトランス6の1次巻線6aと2次巻線6bと補助巻線6cには、極性に従い、図7(b)の電圧波形と相似形の電圧が現れ、その電圧値はそれぞれの巻数比に比例する。
上記2次巻線6bは、2次巻線6bに発生する交流電圧(2次側交流電圧)を整流し且つ平滑化した、出力電圧Vout(第2の直流電圧)を発生させ、出力端子4を介して、負荷5へ安定電圧を供給する。
【0080】
出力電圧検出回路18は上記出力電圧を安定化するために、2次側整流平滑回路10の出力部の電圧値を検出し、そのフィードバック信号を1次側半導体装置2のFB端子を介して、フィードバック信号回路37へ入力する。
動作の一例として、出力電圧が上昇すると出力電圧検出回路18からフィードバック信号回路37の出力VFBが小さくなるように制御することで、スイッチング素子8に流れる電流値を小さくし2次側への出力電力供給を減らし、出力電圧を低下させるように動作する。
【0081】
フィードバック信号回路37から出力される電圧値は、比較器20の基準電圧として発振ごとに出力の状態を電圧値で伝達している。
補助巻線6cは、2次巻線6cに発生する図7(c)に示すような交流電圧(補助側交流電圧)を整流し且つ平滑化し、半導体装置2のVCC端子を介して電力を供給している。
【0082】
また、補助巻線6cに現れる交流電圧を、2次側導通時間検出部検出9の抵抗9aと9bで抵抗分割し、半導体装置2のTR端子を介して、ボトムオン検出回路に入力する。
この時のTR端子電圧波形は、図7(d)のようになり、スイッチング素子がオン時には、半導体装置2内部でマイナス電圧を、約−1V程度にクランプしている。
TR端子内部での制御としては、スイッチング素子8がオフし、フライバック期間が終了した後に図7(d)で示されるTR端子電圧VTRと基準電圧とを、ボトムオン検出回路21により比較する。VTRのボトム状態を判定した場合、ボトムオン検出回路21は、図7(e)に示すようなボトムオン信号(H)を、RSフリップフロップ回路23のセット端子Sに対して出力することでスイッチング素子8をオンさせる。
【0083】
スイッチング素子電流検出回路19は、スイッチング素子8に流れる電流(図7(h))とセンス抵抗12で育成された電圧値を、内蔵するローパスフィルタでスイッチング時に発生するノイズを除去して、比較器20に対し、図7(i)に示すようなスイッチング素子電流信号VISを出力する。
ゲートドライバ24は、図7(f)に示されるような信号を出力する。このゲート信号においてH信号に切替るタイミングは、図7(e)に示すボトム検出回路出力信号からのH信号が、RSフリップフロップ回路23、NAND回路39を介して入力されたタイミングである。
【0084】
また、L信号に切替るタイミングは、比較器20がスイッチング素子電流信号VISと、フィードバック電圧VFBまたは過電流保護検出電圧VLIMITを比較し、VISがVFBまたはVLIMITに到達したタイミングである。
NAND回路39は、図7(g)に示されるような図7(f)で表される信号を反転した信号を出力する。
【0085】
次に、出力電力一定化回路部22の動作を説明する。
出力電力一定化回路部22の発振周期測定回路22aには、上記のようにボトムオン検出回路21のH信号が入力された場合に、スイッチ25がオンし、スイッチ72がオフすることで容量26が放電し、容量26の電圧V1がリセットされる。その後、スイッチ25がオフし、スイッチ72がオンして、容量26は定電流源27より一定電流I1で充電されるため、容量26の電圧値V1としては、図7(j)のような波形となる。
【0086】
出力電力一定化回路部22の2次側導通時間測定回路22bには、上記のようにボトムオン検出回路21のH信号が入力された場合に、スイッチ29a(29b、29n)がオンし、ボトムオン検出回路21のH信号によりNAND回路39がH信号を出力するようになるとインバータ回路31a(31b、31n)がL信号に反転出力し、スイッチ32a(32b、32n)がオフすることで容量30a(30b、30n)が放電し、容量30a(30b、30n)の電圧Va(Vb、Vn)がリセットされる。ボトムオン検出回路21のH信号は短い間のパルス状の信号であるため、スイッチ29a(29b、29n)はオフするが、上記のボトムオン検出回路21のH信号は容量30a(30b、30n)が放電されるまでH信号をキープする。
【0087】
その後、NAND信号39がL信号を出力するようになると、インバータ回路31a(31b、31n)がH信号に反転出力し、スイッチ32a(32b、32n)をオンすることで容量30a(30b、30n)が定電流源33(43、53)により一定電流I1(2×I2、n×I2)で充電されるため、容量30a(30b、30n)の電圧値V1としては、スイッチング素子8がオフしてから次のオンまでの間リニアに増加することになる。例えば、スイッチ29aのみがオンしている場合の2次側導通時間測定回路の出力信号は、図7(k)のようになる。
【0088】
また、出力電力一定化回路部22の過電流保護値調整回路22cの出力信号である過電流保護電圧VLIMITに関しては、発振毎に発振周期Tと2次側導通時間T2ONを測定しスイッチング素子8がオンするタイミングで決定され、スイッチング素子8がオフするたびに更新される。本出力は、図7(l)のようになる。
続いて、本実施の形態にかかるスイッチング電源装置1の過電流保護時の動作について説明する。図8は、直流入力電圧が図8(a)のように変化した場合の、過電流保護検出(最大出力)時の波形を模式的に描いたものである。
【0089】
図8(a)に示すように、入力電圧がステップ状に大きくなる場合、図8(b)に示すとおり、スイッチング素子電圧は、次第に大きくなる。
補助巻線電圧には、図8(a)で示されるスイッチング素子電圧と相似形の図8(c)のような電圧波形が現れる。
図8(d)、(e)に示すように、半導体装置2のTR端子がボトム状態を判定したタイミングでスイッチング素子8がオンし、比較器20に入力される半導体装置2のIS端子の電圧VISがVLIMITに到達した場合にオフする。その場合のゲートドライバ24の出力信号は、図8(f)のようになる。また、NAND回路39の出力は、図8(g)に示されるような図8(f)で表される信号を反転した信号となる。
【0090】
スイッチング素子8に流れる電流は、図8(h)で示すように、直流入力電圧に比例して電流の傾きが大きくなる。スイッチング素子電流検出回路19の出力は、図8(i)で示すように、図8(h)で示されるスイッチング素子8に流れる電流と相似形の波形となる。
発振周期測定回路22aの出力信号V1は、図8(j)に示すように、直流入力電圧の低入力側で発振周期Tが長くなり、高入力側では発振周期Tが短くなるため、図中左側の低入力側で値が大きくなる。
【0091】
一方、2次側導通時間測定回路出力信号V2は、図8(k)に示すように、発振周期Tが長い低入力側では、スイッチ切替え部60により、低入力側から高入力側に以降するにつれてスイッチ60a(定電流源でのチャージ小)からスイッチ60n(定電流源でのチャージ大)へスイッチが切替るために、低入力側ほどV2の値は小さくなる。
出力電力一定化回路部22の過電流保護値調整回路22cの出力信号である過電流保護電圧VLIMITは、発振毎に発振周期Tと2次側導通時間T2ONを測定しスイッチング素子8がオンするタイミングで決定され、スイッチング素子8がオフするたびに更新される。過電流保護値調整回路22cは、2次側導通時間測定回路22bの出力電圧V2に反比例する値を、過電流保護検出電圧VLIMITとして出力するため、過電流保護電圧VLIMITは、図8(l)に示すように、低入力側では大きくなり、高入力側では小さくなる。
【0092】
以上のように本実施の形態によれば、発振周期Tと2次側オン時間T2ONを測定し、発振周期Tと2次側オン時間T2ONを用いて過電流保護検出電圧値VLIMITを定め、過電流保護検出電圧値VLIMITを用いてスイッチング素子のスイッチング動作を制御することで、複雑な演算回路を設けることなく簡単な回路構成で、精度よく電力の最大出力のばらつきを低減することができる。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明にかかるスイッチング電源装置によれば、自励型フライバック方式のスイッチング電源装置において、精度よく電力の最大出力のばらつきを低減することができ有益である。
【符号の説明】
【0094】
1 スイッチング電源装置
2 半導体装置
3 入力部
3a、3b 入力端子
4 出力部
4a、4b 出力端子
5 負荷
6 スイッチングトランス
6a 1次巻線
6b 2次巻線
6c 補助巻線
7 補助巻線整流平滑回路
7a 補助巻線整流ダイオード
7b 補助巻線平滑容量
8 スイッチング素子
9 2次側導通時間検出部
9a、9b 2次側導通時間検出抵抗
10 2次側整流平滑回路
10a 2次巻線整流ダイオード
10b 2次巻線平滑容量
11 起動抵抗
12 センス抵抗
13 共振用容量
14 レギュレータ
15 内部回路用電源
18 出力電圧検出回路
19 スイッチング素子電流検出回路
20 比較器
21 ボトムオン検出回路
22 出力電力一定化回路部
22a 発振周期測定回路
22b 2次側導通時間測定回路
22c 過電流保護値調整回路
23 RSフリップフロップ回路
24 ゲートドライバ
25スイッチ
26 容量
27 定電流源
29a、29b、29n スイッチ
30a、30b、30n 容量
31a、31b、31n インバータ回路
32a、32b、32n スイッチ
33 定電流源
34 反比例回路
35 起動・停止回路
37 フィードバック信号回路
39 NAND回路
43 定電流源
53 定電流源
60 スイッチ切替え部
60a、60b、60n スイッチ
76 スイッチ
199 半導体装置
200 スイッチング電源装置
201 入力部
201a、201b 入力端子
202 起動抵抗
203 スイッチングトランス
203a 1次巻線
203b 2次巻線
203c 補助巻線
204 スイッチング素子
205 共振容量
206 センス抵抗
207 補助巻線整流平滑回路
207a 補助巻線整流ダイオード
207b 補助巻線平滑容量
208 ボトム検出抵抗
209 出力電圧検出回路
251 2次側整流平滑回路
251a 2次側整流ダイオード
251b 2次側平滑容量
252 出力部
252a、252b 出力端子
253 負荷
210 ボトムオン検出回路
211 RSフリップフロップ回路
216 スイッチング素子電流検出回路
217 比較器
218 フィードバック信号回路
219 過電流保護値調整回路
219a スイッチ
219b スイッチ
219c 演算回路
219d スイッチ
219e 容量
219f カレントミラー回路
220 ゲートドライバ
214 レギュレータ
215 内部回路用電源
235 起動・停止回路
239 NAND回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力電圧が印加される入力端子と、
負荷と接続される出力端子と、
前記入力端子に接続される1次巻線と前記出力端子に接続される2次巻線とを有するスイッチングトランスと、
前記1次巻線と前記入力端子の間に直列に接続されるスイッチング素子と、
前記スイッチング素子のスイッチング動作を制御する制御回路と、
前記スイッチング素子の発振周期Tを測定する発振周期測定回路と、
前記スイッチング素子に流れる電流値IDPを検出する1次側導通電流検出回路と、
前記2次巻線に電流が流れる1周期あたりの時間T2ONを測定する2次側導通時間測定回路とを備え、
前記制御回路は、
前記発振周期T、前記1次側導通電流値IDP、前記2次側導通時間T2ONのいずれか1つのパラメータに対する許容値を、他の2つのパラメータを用いて定め、
定めた許容値を用いて、前記スイッチング素子のスイッチング動作を制御することを特徴とする自励方式のスイッチング電源装置。
【請求項2】
前記制御回路は、
前記発振周期T、前記1次側導通電流値IDP、前記2次側導通時間T2ONのいずれか1つのパラメータに対する許容値を、式IDP×T2ON/Tで定まる値が一定となるように定めることを特徴とする請求項1に記載のスイッチング電源装置。
【請求項3】
前記制御回路は、
前記1次側導通電流値IDPの許容値を、前記発振周期T、前記2次側導通時間T2ONを用いて定め、
前記1次側導通電流IDPの許容値と前記1次側導通電流IDPの値を比較し、前記1次側導通電流IDPが前記1次側導通電流IDPの許容値に到達した場合、前記スイッチング素子をターンオフさせることを特徴とする請求項2に記載のスイッチング電源装置。
【請求項4】
前記制御回路は、
前記2次側導通時間測定回路により測定された前記2次側導通時間T2ONを前記発振周期Tに対して反比例の関係で補正した値を出力する反比例回路を有し、
前記反比例回路の出力値を用いて、前記1次側導通電流IDPの許容値を定めることを特徴とする請求項3に記載のスイッチング電源装置。
【請求項5】
前記制御回路は、
前記反比例回路の出力値を反比例の関係で補正した値を、前記1次側導通電流値IDPの許容値として出力する回路を有することを特徴とする請求項4に記載のスイッチング電源装置。
【請求項6】
前記制御回路は、
前記1次側導通電流値IDPの許容値を、前記発振周期T、前記2次側導通時間T2ONを用いて、式IDP=−d×T2ON/T+e(d、eは定数)により定めることを特徴とする請求項1に記載のスイッチング電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−38992(P2013−38992A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−175049(P2011−175049)
【出願日】平成23年8月10日(2011.8.10)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】