説明

スイッチ装置

【課題】低荷重操作で接点の導通を行うスイッチ装置において、外部からの振動が加わった場合や高温の状況で使用する場合であっても誤作動を起こすことのないスイッチ装置を提供する。
【解決手段】熱電変換モジュール5は熱電変換部7を直列接続して構成されている。熱電変換部7は、P型半導体素子8とN型半導体素子9とから構成されている。使用者が指でスイッチ装置1に対してタッチ操作をすると、使用者の体温により熱電変換素子の基準端部10の温度が上昇するので、ゼーベック効果により下面の出力端部12に電圧が発生して、熱電変換モジュール5から電圧が出力される。これにより、スイッチ装置1からタッチ操作された位置を示す信号がカーナビゲーションに出力されるので、カーナビゲーションは、タッチ操作された位置に応じて動作するようになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低荷重操作で導通状態となるスイッチ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のスイッチ装置において、低荷重の押圧操作で接点間の導通ができる低荷重スイッチ装置、例えばメンブレンスイッチに対する市場の必要性が高まっている。
従来のメンブレンスイッチは、シート状の可動電極と固定電極との間にスペーサーを挟んで所定間隙を設け、使用者のシート状の可動電極に対する押圧操作により低荷重で接点間の導通を行うことができるものであった(特許文献1参照)。
【特許文献1】特表2005−528740号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、このようなメンブレンスイッチは、低荷重で接点間の導通ができるようにシートに形成した可動電極と固定電極との間に所定間隙を設けるようにしているため、メンブレンスイッチに対して外部から大きな振動が加わってシート状の可動電極及び固定電極が振動した場合は、可動接点が固定接点に接触することがあり、このような場合は接点同士が導通してしまい、誤作動が発生する虞があった。
【0004】
また、このようなメンブレンスイッチを高温の状況で使用する場合に、可動電極と固定電極とが形成されたシートが熱によって膨張して撓んでしまうことがあり、このような場合も、接点同士が接触して誤作動が生じる虞があった。
一方、このような問題の発生の虞がない静電容量式のスイッチ装置では、特に電子機器が多い車内での使用の場合には、ノイズの影響で電界強度が変化して誤作動を起こす虞があった。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、低荷重操作で接点の導通を行う構成において、外部からの振動が加わった場合や高温となる状況で使用する場合であっても誤作動を起こすことのないスイッチ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明のスイッチ装置は、温度差に応じて基準端部に対して出力端部の電位が異なる一対の熱電変換素子の前記基準端部を接続用電極で接続することにより熱電変換部を構成し、この熱電変換部を複数直列接続することにより構成された熱電変換モジュールと、この熱電変換モジュールから出力される電圧が所定レベル以上となったときは、当該熱電変換モジュールがタッチ操作されたことを示す信号を出力する出力回路を備え、前記熱電変換モジュールは、前記熱電変換素子の前記基準端部がタッチ操作可能に構成されているものである(請求項1)。
【0007】
前記熱電変換素子は、半導体素子であるのが望ましい(請求項2)。
前記熱電変換モジュールはプリント基板に複数設けられ、前記出力回路は、タッチ操作されたことを示す信号を出力するように設けられ、前記プリント基板をシート部材で被覆することによりメンブレンスイッチとして構成してもよい(請求項3)。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の手段によれば、使用者が熱電変換モジュールにタッチ操作すると、熱電変換素子の基準端部の温度が上昇するので、熱電変換素子の基準端部と出力端部との間に温度差を生じる。これにより、熱電変換部を構成する一対の熱電変換素子の出力端部に電位差が発生する。この電位差は極めて小さいものの、熱電変換モジュールは熱電変換部を直列接続して構成されているので、熱電変換モジュールからの電圧を検出可能な大きさまで増大させることができる。従って、出力回路は、熱電変換モジュールがタッチ操作されたことを示す信号を出力することができるので、外部機器は、スイッチ装置に対するタッチ操作位置に応じて動作することができる。この場合、スイッチ装置に対するタッチ操作を温度変化で検出する構成であるので、外部からの振動や電極の熱膨張による原因で、接点間の導通が行われて、スイッチ装置が誤作動を起こすことを防止できる。
【0009】
請求項2の手段によれば、熱電変換素子は半導体素子であるので、小形の熱電変換モジュールを製作することが可能となる。また、熱電変換効果の大きな半導体素子を用いることによりタッチ操作により大きな電圧を発生させることができるので、使用者によるタッチ操作を高精度で検出することができる。
請求項3の発明によれば、メンブレンスイッチとして構成することができるので、タッチ位置検出用のスイッチ装置を製作するのに適している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の一実施例につき図面を参照して説明する。
図3には、本発明を自動車のカーナビゲーションの操作に用いられるスイッチ装置として使用した実施例を示している。このスイッチ装置1は、運転者が車両を運転しながら操作可能な位置に設置されるもので、スイッチ装置1に対する操作位置がカーナビゲーション2の表示器3にカーソル位置として表示されるようになっている。
【0011】
図3に示すように、スイッチ装置1は、ケース内にプリント基板4(図1参照)を収納して構成されている。プリント基板4の表面には複数の熱電変換モジュール5がマトリックス状に実装されており、それらの熱電変換モジュール5を樹脂フィルム6(シート部材に相当)で被膜することによりメンブレンスイッチとして構成されている。使用者は、スイッチ装置1の表面を軽くなぞり、決定したい箇所に来たときに、指をスイッチ装置1から離すことで決定操作が可能となる。
【0012】
図1は熱電変換モジュール5の縦断面図を示し、図2は熱電変換モジュール5の斜視図を示している。これらの図1及び図2において、熱電変換モジュール5は、熱電変換部7を直線状に直列接続して構成されている。
熱電変換部7は、直方体形状のP型半導体素子(熱電変換素子に相当)8とN型半導体素子(熱電変換素子に相当)9とを連結して構成されている。つまり、対をなすP型半導体素子8とN型半導体素子9の図示上端となる基準端部10同士を上部接続用電極11で接続して構成されている。上部接続用電極11は、薄い扁平矩形状であって、熱伝導性のよい銅部材から形成されている。P型半導体素子8とN型半導体素子9の図示下端となる出力端部12同士を下部接続用電極13で接続して構成されている。
【0013】
これらのP型半導体素子8及びN型半導体素子9は、基準端部10と出力端部12との間の温度差に応じてゼーベック効果により両端部間に電圧を生じる。この場合、基準端部10の温度が出力端部12よりも高い場合に、P型半導体素子8では出力端部12の電圧が基準端部10よりも高くなり、N型半導体素子9では出力端部12の電圧が基準端部10よりも低くなる。従って、一つの熱電変換部7に着目した場合、基準端部10の温度が出力端部12よりも高いという条件では、P型半導体素子8の出力端部12の電圧がN型半導体素子9の出力端部12の電圧よりも高くなる。
【0014】
このように温度差に応じて電圧発生特性を有する複数の熱電変換部7が下部接続用電極13によって一直線上に直列接続されている。これは、1個の熱電変換素子からの出力電圧は数μVと小さいことから、複数の熱電変換素子を直列接続することにより出力電圧の増大を図って検出可能とするためである。また、熱電変換モジュール5における端部に位置するN型半導体素子9の下部接続用電極13は0Vラインに接続されており、反対側の端部に位置する下部接続用電極13からは0Vを基準とした電圧が出力されることになる。
尚、本実施例の説明で使用する上下方向とは、使用者がスイッチ装置1を使用する際に指を接触させてタッチ操作をする面を上、その反対方向の面を下として考えるものである。
【0015】
図1に示すように、熱電変換モジュール5の上部表面は樹脂フィルム6で被覆されている。
熱電変換モジュール5の両端に位置する熱電変換部7の下部接続用電極13は側方に延出しており、その延出部がワイヤボンディグ14によりプリント基板4の所定の導電パターンに接続されており、その導電パターンを通じて出力回路15と接続されている。
【0016】
尚、ワイヤボンディグ14は、使用者による樹脂フィルム6に対するタッチ操作時に損傷しないように図示しない保護手段により機械的に保護されている。
図4は、スイッチ装置1の電気的構成を概略的に示すブロック図を示す。この図4において、熱電変換モジュール5の出力は出力回路15に入力されている。この出力回路15は、各熱電変換モジュール5からの入力電圧が所定レベル以上かを検出しており、所定レベル以上となった場合は、その熱電変換モジュール5の位置を示す信号をカーナビゲーション2に出力する。この場合、複数の熱電変換モジュール5からの入力電圧が同時に所定レベル以上となったときは、それらの位置を示す信号を出力するようになっている。
【0017】
カーナビゲーション2は、表示器3にその時点で操作可能な動作に対応したボタンを表示すると共に、スイッチ装置1からの信号に基づいて表示器3に表示しているカーソルがボタンに位置したときは当該ボタンを選択表示(例えば反転表示、点滅表示)するようになっている。また、このようなボタンの表示状態でスイッチ装置1に対するタッチ操作(低荷重操作)が解除されたことを検出したときは、選択しているボタンが最終的に選択されたと判断して当該ボタンに対応した所定動作を実行するようになっている。
【0018】
次に、上記構成の作用について説明する。カーナビゲーション2を動作させると、表示器3にはその時点で操作可能な動作に対応したボタンが表示される。
車両の運転者は、スイッチ装置1の表面をなぞる感覚でスイッチ装置1の表面に対して指によるタッチ操作を行う。すると、指でタッチ操作が行われた部位に位置する熱電変換モジュール5の上部接続用電極11が指から伝導される体温の熱により短時間で温度上昇するので、上部接続用電極11(基準端部10)と下部接続用電極13(出力電極)との間に温度差が生じる。このように上部接続用電極11と下部接続用電極13との間に温度差が生じると、ゼーベック効果によって熱電変換モジュール5から電圧が発生するようになる。
【0019】
出力回路15は、熱電変換モジュール5からの電圧が所定レベル以上となったときは、その熱電変換モジュール5の位置を示す信号をカーナビゲーション2に出力する。この場合、使用者によるタッチ操作に応じて複数の熱電変換モジュール5からの電圧が同時に所定レベル以上となったときは、それらの熱電変換モジュール5の位置を示す信号をカーナビゲーション2に出力する。
【0020】
カーナビゲーション2は、スイッチ装置1から入力した信号が1個の位置を示していたときは、その位置に表示器3に表示しているカーソルを移動する。また、複数の位置を示していたときは、それらの中心位置にカーソルを移動する。従って、運転者がスイッチ装置1に対する操作位置を移動したときは、それに伴った表示器3に表示されているカーソル位置が移動することになる。このとき、表示器3に表示しているボタンにカーソルが位置したときは、そのボタンを選択表示することにより当該ボタンが選択されていることを示す。
【0021】
運転者は、スイッチ装置1に対するタッチ操作により表示器3に表示されている所望のボタンが選択表示されたときは、スイッチ装置1に対するタッチ操作を解除する。これにより、スイッチ装置1から指を離した位置で、その位置の熱電変換モジュール5が最後にオフするので、カーナビゲーション2は、最後にオフした熱電変換モジュール5の位置で決定操作が行われたと判断する。この場合、熱電変換モジュール5がオンする場合と同様に、複数のスイッチ素子が同時にオフしたときは、その中心位置で決定操作が行われたと判断する。
【0022】
カーナビゲーション2は、上述のようにボタンが選択表示した状態で決定操作が行われたときは、その時点で選択表示されているボタンに応じた動作を実行する。
ところで、本実施例のスイッチ装置1は車両に搭載されていることから、車両の走行状態では、スイッチ装置1に対して外部から大きな振動が加わる。従来のメンブレンスイッチでは、振動によって接点同士が接触してしまう虞があった。
【0023】
また、夏などの気温が上昇する季節であって、特に停車中に車内の温度が高温になり、スイッチ装置1も高温となることがある。従来のメンブレンスイッチでは、可動電極と固定電極とを挟んだシートが熱によって膨張して、接点同士が接触してしまうことがあり、誤作動を発生する虞があった。
一方、このような問題の発生の虞がない静電容量式のスイッチ装置では、特に電子機器が多い車内での使用の場合には、ノイズの影響で電界強度が変化して誤作動を起こす虞があった。
【0024】
しかしながら、本実施例によれば、熱電変換モジュール5に対するタッチ操作により生じる電圧に基づいてタッチ操作されたことを検出するようにしたので、メンブレンスイッチのように可動接点や固定接点のような機構的なものを備えておらず、使用者の指から伝導する体温の検知する熱電変換モジュール5という電気的手段を利用してスイッチ装置1を構成することができる。従って、外部からの振動或いは熱の影響を受けることがないと共に、周囲に設けられた電子機器のノイズの影響を受けることがないスイッチ装置1を実現することができる。
【0025】
本発明は、上記しかつ図面に記載した実施例にのみ限定されるものではなく、次のような変形または拡張が可能である。
半導体素子を、ゼーベック効果を呈する金属、例えば銅部材或いはニッケル部材で形成してもよい。
【0026】
熱電変換部7を構成する一対の熱電変換素子としては、形状や大きさが異なるものでもよい。
熱電変換モジュール5は、ワイヤボンディグ14でプリント基板4の導電パターンと接続するようにしたが、要はプリント基板4の導電パターンと接続されていればよく、例えばバンプによってプリント基板4の導電パターンと接続するようにしてもよい。
【0027】
熱電変換モジュール5としては、複数の半導体素子を直線上に直列接続されるとしたが、直列接続されていれば、蛇行状でも、渦巻状でもよい。
熱電変換モジュール5からの電圧を増幅回路により増幅するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施例を示す熱電変換モジュールの縦断面図
【図2】熱電変換モジュールの斜視図
【図3】スイッチ装置の斜視図
【図4】スイッチ装置の電気的構成を概略的に示すブロック図
【符号の説明】
【0029】
図面中、1はスイッチ装置、4はプリント基板、5は熱電変換モジュール、6は樹脂フィルム(シート部材)、8はP型半導体素子(熱電変換素子)、9はN型半導体素子(熱電変換素子)、10は基準端部、12は出力端部、15は出力回路を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度差に応じて基準端部に対して出力端部の電位が異なる一対の熱電変換素子の前記基準端部を接続用電極で接続することにより熱電変換部を構成し、この熱電変換部を複数直列接続することにより構成された熱電変換モジュールと、
この熱電変換モジュールから出力される電圧が所定レベル以上となったときは、当該熱電変換モジュールがタッチ操作されたことを示す信号を出力する出力回路とを備え、
前記熱電変換モジュールは、前記熱電変換素子の前記基準端部がタッチ操作可能に構成されていることを特徴とするスイッチ装置。
【請求項2】
前記熱電変換素子は、半導体素子であることを特徴とする請求項1記載のスイッチ装置。
【請求項3】
前記熱電変換モジュールはプリント基板に複数設けられ、
前記出力回路は、タッチ操作されたことを示す信号を出力するように設けられ、
前記プリント基板をシート部材で被覆することによりメンブレンスイッチとして構成されたことを特徴とする請求項1または2記載のスイッチ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−10358(P2008−10358A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−181491(P2006−181491)
【出願日】平成18年6月30日(2006.6.30)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】