説明

スイッチ装置

【課題】無負荷状態における板ばね部材の与圧や操作部材への与圧が過大にならずに所要の弾性復帰力を確保できるセルフリターン方式のスイッチ装置を提供する。
【解決手段】ケース10内に揺動可能に配置されて固定接点11bと接離可能な可動接点板15と、可動接点板15上に昇降動作が許容された状態で配置され軸部17aを中心に回動可能な駆動体17と、軸部17aを下方へ向けて常時付勢する板ばね部材19と、ケース10の上部開口10eを覆うカバー部材20とを備えたスイッチ装置であって、板ばね部材19の折返し片19dの先端側に第1弾性変形部19eと第2弾性変形部19fが二股の突出片として形成されており、第1弾性変形部19eは第2弾性変形部19fよりも上方へ突出している。このスイッチ装置は、操作つまみ21を組み付ける前や操作つまみ21が操作されていない非操作時には、第1弾性変形部19eが比較的弱いばね圧を生起し、操作時には両弾性変形部19e,19fが協働して強いばね圧を生起する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載用パワーウィンドウ装置の駆動スイッチなどとして好適なセルフリターン方式のスイッチ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、操作部材を傾動操作すると駆動体が軸部を中心に回転して可動接点板を駆動するように構成されたスイッチ装置が、車載用パワーウィンドウ装置の駆動スイッチなどとして使用されている。この種のスイッチ装置において、駆動体には、操作部材から操作力が付与される被押圧部と、可動接点板上に搭載される摺動作動部とが、軸部と一体的に設けられている。駆動体の軸部は、上部開口を有する有底のケースの側壁に設けた凹部に回動可能かつ昇降可能に支持されており、駆動体の被押圧部はケースの外方へ突出している。可動接点板はケースの内底部に揺動可能に配置されており、この可動接点板と接離可能な固定接点がケースの内底部に固設されている。ケースの上部開口はカバー部材で覆われており、このカバー部材と駆動体の軸部との間に介装された板ばね部材が、該軸部を下方へ常時付勢している。これによって非操作状態では摺動作動部を介して可動接点板を固定接点に弾接させてる。(例えば、特許文献1参照)。なお、ケースの上部開口を板ばね部材で覆うことによってカバー部材を省略した構成のものも知られている。
【0003】
このように概略構成されたスイッチ装置では、ユーザが操作部材を傾動操作すると駆動体の被押圧部が操作部材に押し込まれるため、駆動体が軸部を中心に回転して摺動作動部が可動接点板の傾斜面に沿って斜め上方へ摺動し、それに伴って軸部が板ばね部材の付勢力に抗して若干押し上げられていく。そして、摺動作動部が可動接点板の揺動支点上を通過した時点で、可動接点板が回転駆動されて所定の固定接点に当接するため、スイッチオン信号が出力されるようになっている。また、かかるスイッチオン状態で操作部材に対する操作力が除去されると、板ばね部材の弾性復帰力が駆動体の軸部に作用するため、摺動作動部が可動接点板の傾斜面に沿って逆向きに移動し、摺動作動部が可動接点板の揺動支点上を通過した時点で、可動接点板が逆向きに回転駆動されスイッチオフ状態に戻ると共に、操作部材が駆動体の被押圧部に駆動されて非操作位置へ自動復帰するようになっている。
【0004】
なお、この種のスイッチ装置は、操作部材を組み付けていない無負荷状態でも板ばね部材が駆動体の軸部に弾接させてある。また、操作部材は駆動体の被押圧部を僅かに押し込んで与圧が加わった状態で組み付けられるため、非操作時に操作部材がガタつくことはない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−14457号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、前述したセルフリターン方式のスイッチ装置では、操作時の作動力は主に軸部の上方移動に伴って生じる板ばね部材の弾性力によって与えられる。したがって、大きな操作時の作動力を必要とする場合には、所要の弾性力が得られるばね常数の大きな板ばね部材を使用することになる。しかし、ばね常数の大きな板ばね部材を使用すると、非操作時に駆動体の軸部に加わる与圧が強くなり過ぎる可能性が高まるため、高温環境下に長時間放置された場合などに、板ばねによる与圧が駆動体と可動接点を介して固定接点に作用し、固定接点を保持する合成樹脂製のケースの底壁等が塑性変形する虞があった。また、このような虞は、ケース全体に熱が加わり、特にケースの底面に大きな熱が加わる半田付け工程においても懸念される。さらに、ばね常数の大きな板ばね部材を使用すると、操作部材に加わる与圧が大きくなり過ぎるという問題もある。
【0007】
なお、前述した従来のスイッチ装置においては、非操作状態で可動接点が固定接点に確実に接するようにするために、駆動体の軸部の両端部分と、この部分を回転可能および上下動可能にガイドする凹部の底面との間に若干の隙間を確保し、板ばね部材の弾性力が駆動体と可動接点を介して固定接点に加わるようにしている。そのため、板ばね部材の弾性力が固定接点に作用して、ケース底面が塑性変形する虞があるが、例えば駆動体の軸部の両端部分を凹部の底面に接触させ、板ばね部材の弾性力が駆動体を介して凹部の底面に作用するようにした場合には、凹部が形成されたケースの側壁が塑性変形する虞がある。
【0008】
そのため従来は、ばね定数の大きな板ばね部材を使用しつつ、この板ばね部材の駆動体に対する与圧や操作部材への与圧が過大にならないように各構成部材の寸法精度や組立精度を高めなければならず、これが低コスト化を阻害する要因となっていた。また、近年は環境への配慮から鉛フリー半田への移行が進んでいるが、この種のスイッチ装置の組立段階に溶融温度の高い鉛フリー半田が用いられた場合、板ばね部材の与圧によってケースが熱変形する危険性は一層高まる。
【0009】
本発明は、このような従来技術の実情に鑑みてなされたもので、その目的は、無負荷状態における板ばね部材の与圧や操作部材への与圧が過大にならずに所要の作動力を付与できるセルフリターン方式のスイッチ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明のスイッチ装置は、上部開口を有する有底のケースと、傾斜面を有し前記ケースの内底部に揺動可能に配置された可動接点板と、前記ケースの内底部に固設されて前記可動接点板と接離可能な固定接点と、前記可動接点板上に昇降動作が許容された状態で配置され軸部を中心に回動可能な駆動体と、前記ケースに保持されて前記軸部に常時弾接する板ばね部材とを備え、前記駆動体が、前記ケースの外方へ突出して操作部材に押圧駆動される被押圧部と、前記可動接点板の前記傾斜面上で摺動する摺動作動部とを有すると共に、前記板ばね部材が第1弾性変形部と第2弾性変形部とを有し、前記操作部材の非操作時には前記第1弾性変形部がばね圧を生起し、前記操作部材が前記被押圧部を介して前記駆動体を回転させる操作時には、前記摺動作動部が前記傾斜面上を摺動するのに伴って、少なくとも前記第2弾性変形部がばね圧を生起するように構成した。
【0011】
このように構成されたスイッチ装置は、操作部材を組み付けていない無負荷状態や操作部材が操作されていない非操作時には、第1弾性変形部の生起する比較的弱いばね圧を駆動体やケース等に作用させることができるため、無負荷状態における板ばね部材の与圧や操作部材への与圧が過大にならないように設定することが容易となる。また、操作部材が操作されて駆動体の軸部が上動した時には、ばね定数の大きな第2弾性変形部のみを押し撓めたり、第1弾性変形部と第2弾性変形部の両方を共に押し撓めることによって、強いばね圧を生じさせることができるため、操作時に所要の作動力を付与することが容易となる。それゆえ、スイッチ装置の低コスト化を阻害することなく、板ばね部材のばね圧が作用するケース等の塑性変形や熱変形を防止することができる。
【0012】
上記の構成において、上部開口を覆うようにケースに固定されたカバー部材をさらに備え、このカバー部材と駆動体の軸部との間に板ばね部材が介装されていると共に、この板ばね部材が、弾性連結部と、この弾性連結部の長手方向両端から相対向する向きに斜めに延出する折返し片とを有しており、この折返し片に第1弾性変形部と第2弾性変形部が形成されていると、カバー部材と駆動体の軸部の一方に折返し片を弾接させて他方に弾性連結部を弾接させることができるため、駆動体の昇降動作に応じた撓み量を板ばね部材に生じさせることが容易となって動作が安定させやすい。
【0013】
この場合において、板ばね部材の折返し片をカバー部材に弾接させて弾性連結部を駆動体の軸部に弾接させれば、接触領域の広いカバー部材に第1弾性変形部や第2弾性変形部を確実に弾接させることができるため好ましい。また、板ばね部材の折返し片の先端側に第1弾性変形部と第2弾性変形部が二股の突出片として形成されており、このうち第1弾性変形部が第2弾性変形部よりも上方へ突出してカバー部材に常時弾接していると、操作部材の非操作時には第1弾性変形部だけを押し撓めて、操作部材が操作されて駆動体の軸部が上動した時には第1弾性変形部と第2弾性変形部を共に押し撓めるという構成が容易に実現できるため、無負荷状態における板ばね部材の与圧や操作部材への与圧を抑制しつつ所要の弾性復帰力を生起させることが容易となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明のスイッチ装置は、駆動体の軸部に常時弾接する板ばね部材が、少なくとも非操作時に押し撓められる第1弾性変形部と、操作時に押し撓められる第2弾性変形部とを有しており、駆動体やケース等に対して、無負荷状態や非操作時には第1弾性変形部の生起する比較的弱いばね圧を作用させ、操作時には少なくとも第2弾性変形部の生起する強いばね圧を作用させることができるため、無負荷状態における板ばね部材による駆動体に加える与圧や操作部材への与圧が過大にならないように設定することが容易であると共に、操作時に所要の作動力を付与することが容易である。それゆえ、このスイッチ装置は、低コスト化を阻害することなく、板ばね部材のばね圧が作用するケース等の塑性変形や熱変形を防止することができて、高温環境下などにおける信頼性が向上し、溶融温度の高い鉛フリー半田も支障なく使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態例に係るスイッチ装置の分解斜視図である。
【図2】操作部材を組み付ける前の該スイッチ装置の斜視図である。
【図3】図2に示すスイッチ装置の断面図である。
【図4】操作部材を組み付けた該スイッチ装置の動作説明図である。
【図5】該スイッチ装置に備えられるケースの平面図である。
【図6】図1に示す板ばね部材の変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態例に係るスイッチ装置について、図1〜図5を参照しつつ説明する。これらの図に示すスイッチ装置は、車載用パワーウィンドウ装置の駆動スイッチとして使用されるものであり、2つのスイッチ機構部をユニット化してなる双極・双投型のセルフリターン方式のスイッチ装置である。
【0017】
このスイッチ装置は、底壁10a上に側壁10b,10cや仕切り壁10dを立設して一対の接点収納空間S1,S2を形成しているケース10と、インサート成形加工によってケース10の底壁10a上に配設された一対の固定接点群11a〜11cおよび12a〜12cと、固定接点群11a〜11cから延設されてケース10の下方へ突出する3本の端子13と、固定接点群12a〜12cから延設されてケース10の下方へ突出する3本の端子14と、各接点収納空間S1,S2内で底壁10a上に揺動可能に配置された一対の可動接点板15,16と、昇降動作が許容された状態で各可動接点板15,16上に配置されて軸部17a,18aを中心に回動可能な一対の駆動体17,18と、駆動体17,18の各軸部17a,18aを下方(底壁10a)へ向けて常時付勢する板ばね部材19と、ケース10に取着されてその上部開口10eを蓋閉している金属板製のカバー部材20と、支軸21aを中心に揺動可能に支持された操作つまみ(操作部材)21とによって概略構成されている。
【0018】
図4に示すように、操作つまみ21には一対の押圧突起部21b,21cが下向きに突設されており、これら押圧突起部21b,21cの下端はそれぞれ駆動体17,18の被押圧部17b,18bと弾接している。また、このスイッチ装置を実装している回路基板1上には、ケース10の近傍に一対のプッシュスイッチ2,3が実装されており、各プッシュスイッチ2,3の昇降可能な被駆動部2a,3aがそれぞれ駆動体17,18の被押圧部17b,18bの下方に配置させてある。
【0019】
ケース10には、互いに平行な長辺側の2つの側壁10cおよび4つの仕切り壁10dと、側壁10cに対し直角な短辺側の2つの側壁10bとが、それぞれ底壁10aから立設されている。図1と図5に示すように、2つの側壁10cと2つの仕切り壁10dの各上端部(上部開口10e側の端部)には、各駆動体17,18の軸線方向両端部が昇降可能に挿入される切欠き状の凹部10f,10gが形成されている。すなわち、図5において、図示左側の凹部10f,10g内に駆動体17の軸線方向両端部が挿入され、図示右側の凹部10f,10g内に駆動体18の軸線方向両端部が挿入される。また、短辺側の2つの側壁10bには、それぞれの中央部に上端が開放されている切欠き状のスリット10hが形成されている。これらスリット10hには駆動体17,18の腕部17c,18cが昇降可能に挿入される。さらに、側壁10cと仕切り壁10dの対向面にはそれぞれ突部10iが形成されている。これら突部10iの上部形状は、組立時に可動接点板15,16が円滑に位置決めできるように円弧状になっている。
【0020】
固定接点群11a〜11cはケース10の接点収納空間S1の内底部に一列に並べて固設されており、揺動支点として可動接点板15に常時接触する第1の固定接点11aと、可動接点板15に接離する第2および第3の固定接点11b,11cとからなる。同様に、固定接点群12a〜12cはケース10の接点収納空間S2の内底部に一列に並べて固設されており、揺動支点として可動接点板16に常時接触する第1の固定接点12aと、可動接点板16に接離する第2および第3の固定接点12b,12cとからなる。なお、固定接点群11a〜11cと固定接点群12a〜12cは平面視点対称の配置になっている。また、各固定接点11a〜11cから導出された3本の端子13と、各固定接点12a〜12cから導出された3本の端子14は、全て外部回路に接続されている。
【0021】
可動接点板15は、操作つまみ21を取り付ける前の状態(図3参照)で駆動体17を支える初期受け部15aと、この初期受け部15aの一方側に傾斜面を連続させている側面視逆V字形の立上り部15bと、初期受け部15aの他側へ延出している平坦部15cと、立上り部15bから初期受け部15a側と逆側へ延出している接点部15dとを有する導電性金属板である。接点部15dは第2の固定接点11bと接離可能であり、平坦部15cは第3の固定接点11cと接離可能である。さらに、可動接点板15の両側部には初期受け部15aを挟んで4つの突起15eが形成されており、これら突起15eをケース10の突部10iに係合させることによって、揺動時に可動接点板15が長手方向へ位置ずれしないように規制している。
【0022】
可動接点板16は可動接点板15と同形状の導電性金属板であり、初期受け部16aの両側に立上り部16bと平坦部16cを有し、長手方向一端側に延設された接点部16dが第2の固定接点12bと接離可能で、長手方向他端側の平坦部16cが第3の固定接点12cと接離可能である。この可動接点板16にも初期受け部16aを挟んで4つの突起16eが形成されており、これら突起16eをケース10の突部10iに係合させることによって、揺動時に可動接点板16が長手方向へ位置ずれしないように規制している。なお、可動接点板15と可動接点板16はケース10内に平面視点対称に配置されている。
【0023】
駆動体17は、軸部17aから下方へ延びて可動接点板15上に摺動可能に配置される摺動作動部17dと、軸部17aに隣接して側方へ延び一方のスリット10h内に挿入される腕部17cと、この腕部17cの先端に形成されて側壁10bの外方に配置される被押圧部17bとを有し、軸部17a上には所定間隔を存して対向する一対のガイド壁17eが突設されている。同様に、駆動体18は、軸部18aから下方へ延びて可動接点板16上に摺動可能に配置される摺動作動部18dと、軸部18aに隣接して側方へ延び他方のスリット10h内に挿入される腕部18cと、この腕部18cの先端に形成されて側壁10bの外方に配置される被押圧部18bとを有し、軸部18a上には所定間隔を存して対向する一対のガイド壁18eが突設されている。これら駆動体17,18はケース10内に平面視点対称に組み込まれて、互いの腕部17c,18cが一直線状に配置される。すなわち、駆動体17,18をケース10に組み付ける際には、ケース10内で接点収納空間S1,S2の間に存する幅狭空間に腕部17c,18cを配置させて、該幅狭空間を介して対向する一対のスリット10hの外方へそれぞれ被押圧部17b,18bを配置させる。その際、対をなす一方の凹部10f,10g内に駆動体17の軸線方向両端部を挿入し、対をなす他方の凹部10f,10g内に駆動体18の軸線方向両端部を挿入すれば、駆動体17,18はそれぞれ可動接点板15,16上の所定位置に容易に組み込むことができる。
【0024】
板ばね部材19は1枚板の弾性金属板を図1に示すような形状にプレス加工して形成されたものであり、側面視台形状にフォーミングされた一対の折曲ばね片19a,19bが橋絡部19g,19hによって橋絡されている。折曲ばね片19aと折曲ばね片19bは同一形状であり、いずれも、弾性連結部19cと、この弾性連結部19cの長手方向両端から対向する向きに斜めに延出する一対の折返し片19dとを有している。そして、各折返し片19dの先端側に、やや幅狭であってそのためにばね常数が小さい第1弾性変形部19eと、第1弾性変形部19eに比べてやや幅広であってばね常数が大きい第2弾性変形部19fとが二股の突出片として形成されており、このうち第1弾性変形部19eは第2弾性変形部19fよりも上方へ突出してカバー部材20に常時弾接している。第1弾性変形部19eは、可撓性に富みばね常数が小さいので、変位に対する圧力変化は少なく、よって単独で強いばね圧を生起することはない。その後、さらに第1弾性変形部19eが押し撓められて二股の第1および第2弾性変形部19e,19fの高さが同等になった後、これら第1および第2弾性変形部19e,19fが一緒に押し撓められると、両者19e,19fが協働し、変位に対する圧力変化が大きくなって強いばね圧を生起するようになっている。
【0025】
この板ばね部材19は、ケース10の上部開口10eに配置されて、駆動体17,18の軸部17a,18aとカバー部材20との間に介装されている。すなわち、折曲ばね片19a,19bの各弾性連結部19cがそれぞれ軸部17a,18aに常時弾接していると共に、折曲ばね片19a,19bの各折返し片19dの上端部がカバー部材20の底面に常時弾接している。ただし、操作つまみ21を組み付けていない無負荷状態(図3参照)や操作つまみ21が操作されていない非操作時には、各折返し片19dの第1弾性変形部19eだけがカバー部材20に弾接しており、第2弾性変形部19fはカバー部材20から離隔しているため、第1弾性変形部19eの弱いばね圧だけが駆動体17,18やカバー部材20に作用している。そして、操作つまみ21が被押圧部17b(または18b)を押し込んで駆動体17(または18)を軸部17a(または18a)を中心に回転させる時には、軸部17a(または18a)が上方の弾性連結部19cを強く押し込んで、その上方の第1弾性変形部19eが大きく撓むため、この第1弾性変形部19eだけでなく隣接する第2弾性変形部19fもカバー部材20に弾接して、強いばね圧が生起されるようになっている。
【0026】
なお、この板ばね部材19をケース10内へ組み込んで、折曲ばね片19a,19bの各弾性連結部19cをそれぞれ軸部17a,18a上へ配置させる際には、各弾性連結部19cをそれぞれガイド壁17e,17e間とガイド壁18e,18e間に挿入することにより幅方向の位置決めが行える。また、板ばね部材19の長手寸法をケース10の相対向する側壁10b,10bの間隔と略同等に設定しておくことにより、各弾性連結部19cの長手方向の位置決めが行えるようになっている。したがって、この板ばね部材19はケース10内の所定位置に簡単かつ確実に組み込むことができる。
【0027】
カバー部材20には下端部の四隅に取付片20aが形成されており、これら取付片20aを折り曲げてケース10の四隅に係止させることによって、カバー部材20は上部開口10eを覆った状態でケース10に固定されている。こうしてカバー部材20をケース10に取り付けると、予めケース10内に組み込まれていた板ばね部材19は、折曲ばね片19a,19bの各第1弾性変形部19eがカバー部材20に押し撓められて図3の状態となるため、その弱いばね圧がカバー部材20や駆動体17,18の軸部17a,18a等に作用する。つまり、操作つまみ21を組み付けていない無負荷状態でもケース10内の板ばね部材19には与圧が付与されているのでガタは発生せず、ケース10内に収納されている駆動体17,18や可動接点板15,16にもガタは発生しない。また、折曲ばね片19a,19bの各弾性連結部19cがそれぞれ軸部17a,18aに弾接するため、軸部17aを中心に駆動体17を回転させると、摺動作動部17dが可動接点板15上を摺動して該可動接点板15を回転させることができ、同様に軸部18aを中心に駆動体18を回転させると、摺動作動部18dが可動接点板16上を摺動して該可動接点板16を回転させることができる。このようにケース10の上部開口10eがカバー部材20によって蓋閉されることから、このスイッチ装置は、ケース10内に塵埃等の異物が侵入せず、よって異物の侵入に起因する導通不良や短絡事故を未然に防止することができる。
【0028】
なお、このスイッチ装置を組み立てる場合、ケース10の底壁10a上に各スイッチ機構部の可動接点板15,16と駆動体17,18を組み込み、さらに板ばね部材19とカバー部材20を組み込んでいけるので、組立性は良好である。また、かかる組立作業時に、可動接点板15,16はケース10の突部10iによって位置決めでき、駆動体17,18はケース10の凹部10f,10gやスリット10hによって位置決めでき、板ばね部材19はケース10の側壁10bや駆動体17,18のガイド壁17e,18eによって位置決めできるので、自動組立を行ってもこれら各部品に位置ずれや脱落が発生しにくくなっている。
【0029】
また、このスイッチ装置を車載用パワーウィンドウ装置に組み付けるときには、カバー部材20の上方に操作つまみ21が取り付けられる。その際、操作つまみ21は非操作位置において、一対の押圧突起部21b,21cがそれぞれ駆動体17,18の被押圧部17b,18bに弾接する与圧状態に設定される。こうすることによって、非操作時に懸念される操作つまみ21のガタつきが防止されている。なお、図4には与圧状態における被押圧部18bの位置が鎖線で示してある。かかる与圧状態において、駆動体17,18の摺動作動部17d,18dはそれぞれ可動接点板15,16の立上り部15b,16bの下端近傍の傾斜面と当接しているが、操作つまみ21を取り外すと、図3に示すように、摺動作動部17d,18dはそれぞれ可動接点板15,16の初期受け部15a,16aと当接し、被押圧部17b,18bの高さ位置は若干上昇する。
【0030】
次に、このように構成されたスイッチ装置の動作について説明する。操作つまみ21に操作力が加えられていない非操作時には、駆動体17の摺動作動部17dが可動接点板15の立上り部15bの下端部に弾接しているので、第1および第3の固定接点11a,11cが可動接点板15を介して導通され、第1および第2の固定接点11a,11b間はスイッチオフ状態に保たれている。また、駆動体18の摺動作動部18dは可動接点板16の立上り部16bの下端部に弾接しているので、第1および第3の固定接点12a,12cが可動接点板16を介して導通され、第1および第2の固定接点12a,12b間はスイッチオフ状態に保たれている。
【0031】
この状態で操作つまみ21に対し、ユーザが例えば図4に矢印で示すような操作力を加えると、押圧突起部21bが駆動体17の被押圧部17bを押し込んでいくのに伴い、腕部17cが図示反時計回りに回転して、摺動作動部17dが可動接点板15の立上り部15b上を斜め上方へ摺動していき、軸部17aが折曲ばね片19aの弾性連結部19cに抗して押し上げられていく。そのため、この弾性連結部19cの上方で折曲ばね片19aの第1および第2弾性変形部19e,19fが共に押し撓められるようになり、軸部17aの上動に伴いばね圧は急増する。そして、摺動作動部17dが、可動接点板15の揺動支点である第1の固定接点11a上を通過した時点で、可動接点板15が回転駆動されて図4の状態となる。その結果、平坦部15cが第3の固定接点11cから離れて接点部15dが第2の固定接点11bに当接するので、可動接点板15を介して第1および第2の固定接点11a,11bが導通されたことによるスイッチオンの切替信号(ウィンドウの開動作を行わせる信号)が端子13から出力される。
【0032】
また、図4の状態で操作つまみ21に対する操作力が除去された場合には、折曲ばね片19aの第1および第2弾性変形部19e,19fや弾性連結部19cのばね圧による弾性復帰力(付勢力)が駆動体17の軸部17aに作用し、摺動作動部17dが立上り部15bの傾斜面に沿って斜め下方へ移動するので、摺動作動部17dが第1の固定接点11a上を通過した時点で、可動接点板15が逆向きに回転駆動されると共に、被押圧部17bによって押圧突起部21bが押し上げられていく。その結果、可動接点板15の接点部15dが第2の固定接点11bから離れて平坦部15cが第3の固定接点11cに当接するので、第1および第2の固定接点11a,11bの導通が遮断されたことによるスイッチオフの切替信号が端子13から出力され、操作つまみ21は非操作位置へ自動復帰する。
【0033】
次に、図4の状態で操作つまみ21をもう一段押し込んだ場合の動作について説明する。このとき、摺動作動部17dが可動接点板15の立上り部15b上をさらに斜め上方へ摺動していくので、軸部17aに作用する折曲ばね片19aの付勢力は一層増大するが、押圧突起部21bによって下方へ大きく押し込まれた被押圧部17bが被駆動部2aを押し込むためプッシュスイッチ2が作動され、ウィンドウを全開させる駆動信号が出力される。また、この状態で操作つまみ21に対する操作力が除去されると、折曲ばね片19aの弾性復帰力により摺動作動部17dが立上り部15bの傾斜面に沿って斜め下方へ移動するので、図4の状態を経て操作つまみ21は非操作位置へ自動復帰する。
【0034】
なお、操作つまみ21が非操作位置にあるときに、ユーザが押圧突起部21bを押し込んで操作つまみ21を図4の時計回りに回転させた場合の動作は、基本的に上記の動作と同様なので簡単に説明する。すなわち、この場合は、駆動体18の被押圧部18bが押圧突起部21cに押し込まれて腕部18cが回転し、摺動作動部18dが可動接点板16の立上り部16b上を斜め上方へ摺動するので、軸部18aが折曲ばね片19bの弾性連結部19cに抗して押し上げられていき、摺動作動部18dが第1の固定接点12a上を通過した時点で、可動接点板16が回転駆動される。したがって、第1および第2の固定接点12a,12bが導通されたことによるスイッチオンの切替信号(ウィンドウの閉動作を行わせる信号)が端子14から出力される。そして、この状態で操作つまみ21をもう一段押し込むと、押圧突起部21cが被押圧部18bを介して被駆動部3aを押し込むためプッシュスイッチ3が作動され、ウィンドウを全閉させる駆動信号が出力される。また、操作力を除去すると、折曲ばね片19bの弾性復帰力により摺動作動部18dが立上り部16bの傾斜面に沿って斜め下方へ移動するので、可動接点板16が逆向きに回転駆動されると共に、被押圧部18bによって押圧突起部21cが押し上げられていき、操作つまみ21は非操作位置へ自動復帰する。
【0035】
このように操作つまみ21に押し込まれた被押圧部17b,18bによってプッシュスイッチ2,3が作動できるようにしてあると、プッシュスイッチ用の駆動部材を別途付設する必要がなくなる。そのため、マニュアル操作に加えて全開全閉操作が行える多機能なスイッチ装置の小型化や構造の簡素化が図りやすくなる。
【0036】
以上説明したように、本実施形態例に係るスイッチ装置では、操作つまみ21を組み付けていない無負荷状態や操作つまみ21が操作されていない非操作時には、第1弾性変形部19eの生起する比較的弱いばね圧を駆動体17,18やカバー部材20、ケース10等に作用させることができるため、無負荷状態における板ばね部材19の駆動体17,18に対する与圧や操作つまみ21への与圧が過大にならないように設定することが容易である。また、操作つまみ21が操作されて駆動体17(または18)の軸部17a(または18a)が上動した時には、第1および第2弾性変形部19e,19fを共に押し撓めることによって強いばね圧を生じさせることができるため、操作時に所要の弾性復帰力を確保することが容易である。したがって、このスイッチ装置は、低コスト化を阻害することなく、板ばね部材19のばね圧が作用するケース10等の塑性変形や熱変形を防止することができて、高温環境下などにおける信頼性が向上し、溶融温度の高い鉛フリー半田も支障なく使用できる。
【0037】
また、本実施形態例のように、板ばね部材19の折返し片19dをカバー部材20に弾接させて弾性連結部19cを駆動体17の軸部17aや駆動体18の軸部18aに弾接させてあれば、接触領域の広いカバー部材20に第1弾性変形部19eや第2弾性変形部19fを確実に弾接させることができる。ただし、折返し片19dや駆動体17,18等の形状を適宜変更すれば、板ばね部材19を上下逆向きにケース10内へ組み込む構成にすることも可能である。
【0038】
なお、上記の実施形態例では、板ばね部材19の折返し片19dの先端側に第1弾性変形部19eと第2弾性変形部19fが二股の突出片として形成されているが、折返し片19dを図6に示すような形状に形成してもよい。すなわち、図6に示す板ばね部材19では、折返し片19dの先端部に幅狭な第1弾性変形部19eを形成すると共に、この第1弾性変形部19eの基端側に幅広な第2弾性変形部19fを連続形成しており、第1弾性変形部19eのばね定数は小さくて撓みやすいが、第2弾性変形部19fのばね定数は大きくて撓みにくくなっている。そして、操作つまみを組み付けていない無負荷状態や操作つまみが操作されていない非操作時には、第1弾性変形部19eがカバー部材の底面と弾接するが、操作つまみが操作されて第1弾性変形部19eが大きく撓みカバー部材との弾接位置が基端側へある程度ずれると、第2弾性変形部19fがカバー部材の底面と弾接するように設定してある。したがって、駆動体やカバー部材やケース等に対して、無負荷状態や非操作時には第1弾性変形部19eの生起する比較的弱いばね圧を作用させることができ、操作時には第2弾性変形部19fの生起する強いばね圧を作用させて所要の弾性復帰力が確保できるようになっている。
【0039】
また、上記の実施形態例では、ケース10の側方へ突出させた駆動体17,18の被押圧部17b,18bを操作つまみ21が下向きに押圧駆動する場合について説明したが、被押圧部17b,18bをケース10の上方へ突出させておき、操作つまみ21の中央部に垂設した押圧突起部を両被押圧部17b,18b間に軽く圧入させて、該押圧突起部が該被押圧部17b,18bを横向きに押圧駆動するという構成にすることも可能である。
【0040】
また、上記の実施形態例では、ケース10の上部開口10eを覆うカバー部材20の底面に板ばね部材19を弾接させているが、ケース10に係止させた適宜形状の板ばね部材で上部開口10eを覆うことによりカバー部材を省略した構成にすることも可能である。ただし、カバー部材を備えた構成にしたほうが、駆動体17,18の昇降動作に応じた撓み量を板ばね部材に生じさせることが容易となって動作が安定させやすく、かつケース10内への異物の侵入を防止する効果が高まるため好ましい。
【0041】
さらに、上記の実施形態例では、2つのスイッチ機構部を具備して車載用パワーウィンドウ装置の駆動スイッチとして使用されるスイッチ装置について説明したが、本発明は車載用パワーウィンドウ装置以外のスイッチ装置にも適用可能であり、スイッチ機構部が1つだけであってもよい。
【符号の説明】
【0042】
2,3 プッシュスイッチ
10 ケース
10a 底壁
10b,10c 側壁
10e 上部開口
11a〜11c,12a〜12c 固定接点
15,16 可動接点板
15b,16b 立上り部
15d,16d 接点部
17,18 駆動体
17a,18a 軸部
17b,18b 被押圧部
17d,18d 摺動作動部
17e,18e ガイド壁
19 板ばね部材
19a,19b 折曲ばね片
19c 弾性連結部
19d 折返し片
19e 第1弾性変形部
19f 第2弾性変形部
20 カバー部材
21 操作つまみ(操作部材)
21b,21c 押圧突起部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部開口を有する有底のケースと、傾斜面を有し前記ケースの内底部に揺動可能に配置された可動接点板と、前記ケースの内底部に固設されて前記可動接点板と接離可能な固定接点と、前記可動接点板上に昇降動作が許容された状態で配置され軸部を中心に回動可能な駆動体と、前記ケースに保持されて前記軸部に常時弾接する板ばね部材とを備え、
前記駆動体が、前記ケースの外方へ突出して操作部材に押圧駆動される被押圧部と、前記可動接点板の前記傾斜面上で摺動する摺動作動部とを有すると共に、前記板ばね部材が第1弾性変形部と第2弾性変形部とを有し、
前記操作部材の非操作時には前記第1弾性変形部がばね圧を生起し、前記操作部材が前記被押圧部を介して前記駆動体を回転させる操作時には、前記摺動作動部が前記傾斜面上を摺動するのに伴って、少なくとも前記第2弾性変形部がばね圧を生起するようにしたことを特徴とするスイッチ装置。
【請求項2】
請求項1の記載において、前記上部開口を覆うように前記ケースに固定されたカバー部材を備え、このカバー部材と前記駆動体の前記軸部との間に前記板ばね部材が介装されていると共に、この板ばね部材が、弾性連結部と、この弾性連結部の長手方向両端から相対向する向きに斜めに延出する折返し片とを有しており、この折返し片に前記第1弾性変形部と前記第2弾性変形部が形成されていることを特徴とするスイッチ装置。
【請求項3】
請求項2の記載において、前記折返し片を前記カバー部材に弾接させて前記弾性連結部を前記駆動体の前記軸部に弾接させたことを特徴とするスイッチ装置。
【請求項4】
請求項3の記載において、前記折返し片の先端側に前記第1弾性変形部と前記第2弾性変形部が二股の突出片として形成されており、このうち前記第1弾性変形部が前記第2弾性変形部よりも上方へ突出して前記カバー部材に常時弾接していることを特徴とするスイッチ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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