説明

スイッチ

【課題】主に自動車のストップランプの消点灯制御等に用いられるスイッチに関し、簡易な構成で、確実な電気的接離が可能なものを提供することを目的とする。
【解決手段】略箱型のケース1の内側壁に植設された固定接点12と、作動体3に保持され端部の接点部14Bが固定接点12に弾接した可動接点14の表面に、粒径が小さく均一な銀粒子から形成され、硬度が大きく表面粗さの小さな光沢銀めっき層を設けることによって、固定接点12と可動接点14の滑らかな弾接摺動が行われるため、長期間スイッチの操作が繰返された場合でも、めっき層の磨耗が少なく、確実で安定した電気的接離が可能なスイッチを得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に自動車のブレーキペダル操作時の、ストップランプの消点灯制御等に用いられる車両用のスイッチに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ブレーキペダルを踏み込んだ際にはストップランプを点灯させ、離した際には消灯させる、ブレーキペダルの操作に伴うストップランプの制御用として、主に押圧操作型のスイッチが多く使用されている。
【0003】
このような従来のスイッチについて、図5及び図6を用いて説明する。
【0004】
図6は従来のスイッチの断面図であり、同図において、1は上面開口で略箱型の絶縁樹脂製のケース、2は略コの字状または略L字状で銅合金等の固定接点で、複数の固定接点2がケース1の左右内側壁に対向して植設されると共に、ケース1底面からは固定接点2の端子部2Aが突出している。
【0005】
なお、この固定接点2の表面には硬度3HV前後の銅の下地層が形成されると共に、この上面に粒径数μm前後の銀粒子が含まれた、硬度50〜100HV前後で表面粗さRaが1μm以上の、無光沢の銀めっき層が形成されている。
【0006】
そして、3はケース1内に上下動可能に収納された絶縁樹脂製の作動体、4は略コの字状で銅合金等の可動接点で、可動接点4の中間部が作動体3下端に保持されると共に、左右に延出したアーム部4Aがやや撓んだ状態で、この先端に形成された接点部4Bが固定接点2に弾接して、左右の固定接点2が可動接点4を介して電気的に接続されている。
【0007】
なお、この可動接点4の表面にも固定接点2と同様に、硬度3HV前後の銅の下地層が形成されると共に、この上面に粒径数μm前後の銀粒子が含まれた、硬度50〜100HV前後で表面粗さRaが1μm以上の、無光沢の銀めっき層が形成されている。
【0008】
また、5はコイル状のばね、6はケース1上面の開口部を覆うカバーで、ばね5が作動体3下面とケース1の底面との間にやや撓んだ状態で装着されて、作動体3を上方に付勢すると共に、この作動体3先端がカバー6中央の中空筒部6Aから上方へ突出して、スイッチ10が構成されている。
【0009】
そして、このように構成されたスイッチ10が、図5の側面図に示すように、一般に自動車のブレーキペダル21の手前に、アーム21Aによって作動体3の先端が押圧された状態で装着されると共に、ケース1底面から突出した固定接点2の端子部2Aが、コネクタ22によって車両のストップランプや電子回路(図示せず)に接続される。
【0010】
つまり、ブレーキペダル21が踏み込まれていない状態では、作動体3がばね5を撓めながら下方へ押圧操作されると共に、可動接点4の接点部4Bが固定接点2側面から離れ、左右の固定接点2が電気的に切断された状態となっているため、ストップランプは消灯している。
【0011】
そして、ブレーキペダルが踏み込まれると、アーム21Aが作動体3先端から離れ押圧力が除かれるため、図6に示したように、ばね5の弾性復帰力によって作動体3が上方へ移動すると共に、可動接点4の接点部4Bが固定接点2側面に弾接して接触し、左右の固定接点2が可動接点4を介して電気的に接続された状態となり、ストップランプが点灯するように構成されている。
【0012】
なお、このようなスイッチ10の、可動接点4の接点部4Bの固定接点2への弾接力、いわゆる接点圧力は通常0.1〜1N前後に設定されており、また、ストップランプに発光ダイオード等が使用されている場合には、固定接点2と可動接点4の間に通電される電圧電流は、DC12〜14Vで30〜100mA前後となっている。
【0013】
したがって、接点部4Bが固定接点2に接離する際にアークは殆んど発生しないため、このアークによる可動接点4と固定接点2の磨耗は殆んど生じないが、接点部4Bが接点圧力0.1〜1N前後と、比較的大きな力で固定接点2へ弾接しているため、上記のような押圧操作を繰返すと、接点部4Bとこれが弾接した固定接点2に機械的磨耗が生じる。
【0014】
そして、このように押圧操作が繰返され、接点部4Bや固定接点2に磨耗粉が生じると、微小ではあるが接離の際にアークが発生すると共に、通電により弾接した接点部4Bと固定接点2の温度が上昇し、磨耗が促進される。
【0015】
つまり、例えば10万回以上の操作が繰返された場合には、可動接点4や固定接点2表面の銀めっき層が磨耗して、下面の銅の下地層や素地が露出し、この下地層や素地によって可動接点4と固定接点2の接触が行われるため、電気的接続が不安定なものとなる場合がある。
【0016】
このため、グリスやオイル等の潤滑剤を、可動接点4や固定接点2に塗布する等の対策が講じられてはいるが、押圧操作が繰返され、これらの潤滑剤内に磨耗粉が混入すると、接離の際にアークが発生し磨耗が加速してしまうため、耐磨耗性を高め、長期間に亘って安定した電気的接続を維持するには限界のあるものであった。
【0017】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【特許文献1】特開2001−84867号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
しかしながら、上記従来のスイッチにおいては、長期間スイッチの操作が繰返された場合、可動接点4や固定接点2表面の銀めっき層が磨耗して、下面の銅の下地層や素地が露出し、電気的接続が不安定なものとなる場合があるという課題があった。
【0019】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、簡易な構成で、確実な電気的接離が可能な車両用スイッチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記目的を達成するために本発明は、以下の構成を有するものである。
【0021】
本発明の請求項1に記載の発明は、略箱型のケースの内側壁に植設された固定接点と、作動体に保持され端部が固定接点に弾接した可動接点の表面に、光沢銀めっき層を形成してスイッチを構成したものであり、粒径が小さく均一な銀粒子から形成され、硬度が大きく表面粗さの小さな光沢銀めっき層が、固定接点と可動接点の表面に形成され、これらの滑らかな弾接摺動が行われるため、長期間スイッチの操作が繰返された場合でも、光沢銀めっき層の磨耗が少なく、確実で安定した電気的接離が可能なスイッチを得ることができるという作用を有する。
【0022】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の発明において、光沢銀めっき層の下面に硬質下地層を形成したものであり、硬質下地層によって耐磨耗性をさらに高め、より長期間に亘って安定した電気的接続を行うことができるという作用を有する。
【発明の効果】
【0023】
以上のように、本発明によれば、簡易な構成で、確実な電気的接離が可能なスイッチを実現することができるという有利な効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について、図1〜図5を用いて説明する。
【0025】
なお、背景技術の項で説明した構成と同一構成の部分には同一符号を付して、詳細な説明を簡略化する。
【0026】
(実施の形態)
図1は本発明の一実施の形態によるスイッチの断面図、図2は同分解斜視図であり、同図において、1は上面開口で略箱型のポリブチレンテレフタレートやABS等の絶縁樹脂製のケース、12は略コの字状または略L字状で燐青銅や黄銅等の銅合金の固定接点で、複数の固定接点12がケース1の左右内側壁に対向して植設されると共に、ケース1底面からは固定接点12の端子部12Aが突出している。
【0027】
そして、この固定接点12の表面には0.5μm以下、好ましくは0.2μm以下の均一な粒径の、硬度300〜600HVのニッケルや、硬度220HV前後のパラジウム、硬度800HV前後のルテニウムやロジウム、硬度280HV前後の白金、硬度100〜300HVの金、あるいはコバルトや鉄、銅、イリジウムの少なくとも一つの粒子から形成された、硬度100〜1000HVで表面粗さRaが0.2μm以下の硬質下地層が設けられている。
【0028】
さらに、この硬質下地層の上面には粒径0.5μm以下、好ましくは粒径0.2μm以下の均一な銀粒子から形成された、硬度100〜160HVで表面粗さRaが0.2μm以下の光沢銀めっき層が、厚さ1〜20μm、好ましくは3〜10μmの厚さで設けられている。
【0029】
また、3はケース1内に上下動可能に収納された絶縁樹脂製の作動体、14は略コの字状で燐青銅やベリリウム銅等の銅合金等の可動接点で、可動接点14の中間部が作動体3下端に保持されると共に、左右に延出したアーム部14Aがやや撓んだ状態で、この先端に形成された接点部14Bが固定接点12に弾接して、左右の固定接点12が可動接点14を介して電気的に接続されている。
【0030】
そして、この可動接点14の表面にも固定接点12と同様に、硬質下地層とこの上面の光沢銀めっき層が形成されている。
【0031】
さらに、5はコイル状に巻回された鋼や銅合金線製のばね、6はケース1上面の開口部を覆う金属または絶縁樹脂製のカバーで、ばね5が作動体3下面とケース1の底面との間にやや撓んだ状態で装着されて、作動体3を上方に付勢すると共に、この作動体3先端がカバー6中央の中空筒部6Aから上方へ突出して、スイッチ20が構成されている。
【0032】
そして、このように構成されたスイッチ20が、図5の側面図に示すように、一般に自動車のブレーキペダル21の手前に、アーム21Aによって作動体3の先端が押圧された状態で装着されると共に、ケース1底面から突出した固定接点12の端子部12Aが、コネクタ22やリード線等によって車両のストップランプや電子回路(図示せず)に接続される。
【0033】
つまり、ブレーキペダルが踏み込まれていない状態では、図3の断面図に示すように、作動体3がばね5を撓めながら下方へ押圧操作されると共に、可動接点14の接点部14Bが固定接点12側面から離れ、左右の固定接点12が電気的に切断された状態となっているため、ストップランプは消灯している。
【0034】
そして、ブレーキペダル21が踏み込まれると、アーム21Aが作動体3先端から離れ押圧力が除かれるため、図1に示したように、ばね5の弾性復帰力によって作動体3が上方へ移動すると共に、可動接点14の接点部14Bが固定接点12側面に弾接して接触し、左右の固定接点12が可動接点14を介して電気的に接続された状態となり、ストップランプが点灯するように構成されている。
【0035】
なお、この時、図4(a)の部分側面図に示すように、可動接点14の接点部14Bが固定接点12側面から離れた状態から、作動体3がばね5の弾性復帰力によって上方へ移動すると、先ず図4(b)に示すように、固定接点12下端に可動接点14のアーム部14A下端が弾接して接触する。
【0036】
そして、この後、作動体3の上方への移動に伴って、図4(c)に示すように、アーム部14Aではなく接点部14Bが固定接点12側面に接触し、この接点部14Bが固定接点12側面を弾接摺動して、図1の状態に復帰する。
【0037】
また、作動体3が下方へ押圧操作され、可動接点14が固定接点12から離れる際にも、同様に、先ず接点部14Bが固定接点12下端から離れた後、固定接点12下端に弾接したアーム部14A下端も離れて、左右の固定接点12が電気的に切断された状態となる。
【0038】
つまり、作動体3が下方へ押圧された状態では、可動接点14が固定接点12から離れて間に空隙が形成されると共に、可動接点14が固定接点12に接離した直後は、アーム部14A下端が固定接点12下端に、作動体3が上方へ復帰した状態では、接点部14Bが固定接点12側面に弾接するというように、作動体3の移動に伴って、可動接点14と固定接点12が異なる箇所で接触するように構成されている。
【0039】
すなわち、可動接点14と固定接点12の開離時には、これらの間に空隙が形成され、この空隙によって接点間の絶縁を確実に確保することができると共に、可動接点14と固定接点12の接離時には、これらの接触箇所が変わり、周囲の塵埃や湿気等が多少スイッチ内へ侵入した場合でも、確実で安定した電気的接離が行えるようになっている。
【0040】
なお、上記のようにスイッチ20が操作された際、ストップランプに発光ダイオード等が使用されている場合には、固定接点12と可動接点14の間に通電される電圧電流は、DC12〜14Vで30〜100mA前後となっており、接点部14Bと固定接点12の接離時のアークは殆んど発生しないため、このアークによる可動接点14と固定接点12の磨耗は殆んど生じないが、接点部14Bの固定接点12への弾接力、いわゆる接点圧力は通常0.1〜1N前後と比較的大きな力に設定されている。
【0041】
したがって、上記のような押圧操作を長期間繰返した場合、通常は固定接点12と可動接点14の弾接箇所に機械的磨耗が生じるが、本発明においては、固定接点12と可動接点14の表面に、粒径が小さく均一な銀粒子から形成され、硬度が大きく表面粗さの小さな光沢銀めっき層が形成されているため、操作を30万回繰返した場合でも、めっき層の磨耗が低減され、下面の硬質下地層や、固定接点12や可動接点14の素地が露出しないように構成されている。
【0042】
つまり、固定接点12と可動接点14の表面に、粒径が0.5μm以下と小さく均一な銀粒子から形成され、硬度が100〜160HVと大きく、表面粗さRaが0.2μm以下と小さな光沢銀めっき層を形成することによって、長期間スイッチの操作を繰返した場合でも、めっき層の耐磨耗性を高め、長期間に亘って安定した電気的接離を維持できるようになっている。
【0043】
また、光沢銀めっき層によって固定接点12と可動接点14の滑らかな弾接摺動が行われ、押圧操作が長期間繰返された場合でも、磨耗粉が生じづらいため、この磨耗粉によるアークも殆んど発生しないようになっている。
【0044】
さらに、この光沢銀めっき層の下面には、ニッケルやパラジウム、ルテニウム、ロジウム、白金、金、コバルト、鉄、銅、イリジウムの少なくとも一つの、粒径が小さく均一な粒子から形成された、硬度100〜1000HVで、表面粗さRaが0.2μm以下の硬質下地層が形成されているため、繰返し操作時の耐磨耗性をさらに高め、より長期間に亘って安定した電気的接続を行うことが可能なようになっている。
【0045】
なお、以上のような光沢銀めっき層は、上述したように粒径0.5μm以下、好ましくは粒径0.2μm以下の均一な銀粒子から形成するほか、アンチモンや燐、ホウ素、炭素、窒素、ニッケル、シリコン、セレン等の光沢剤や硬質剤を添加することや、あるいは電気めっきの際に、電流密度を大きくしたり、間歇的に電流を遮断したりすることによって、比較的容易に形成することができる。
【0046】
このように本実施の形態によれば、略箱型のケース1の内側壁に植設された固定接点12と、作動体3に保持され端部の接点部14Bが固定接点12に弾接した可動接点14の表面に、粒径が小さく均一な銀粒子から形成され、硬度が大きく表面粗さの小さな光沢銀めっき層を設けることによって、固定接点12と可動接点14の滑らかな弾接摺動が行われるため、長期間スイッチの操作が繰返された場合でも、めっき層の磨耗が少なく、確実で安定した電気的接離が可能なスイッチを得ることができるものである。
【0047】
また、この光沢銀めっき層の下面に硬質下地層を形成することによって、耐磨耗性をさらに高め、より長期間に亘って安定した電気的接続を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明によるスイッチは、簡易な構成で、確実な電気的接離が可能なものを得ることができ、主に自動車のストップランプの消点灯制御用として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の一実施の形態によるスイッチの断面図
【図2】同分解斜視図
【図3】同操作時の断面図
【図4】同操作時の部分側面図
【図5】ブレーキペダルの側面図
【図6】従来のスイッチの断面図
【符号の説明】
【0050】
1 ケース
3 作動体
5 ばね
6 カバー
6A 中空筒部
12 固定接点
12A 端子部
14 可動接点
14A アーム部
14B 接点部
20 スイッチ
21 ブレーキペダル
21A アーム
22 コネクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
略箱型のケースと、このケースの内側壁に植設された固定接点と、上記ケース内に上下動可能に収納された作動体と、この作動体に保持され端部が上記固定接点に弾接した可動接点からなり、上記固定接点及び可動接点表面に光沢銀めっき層を形成したスイッチ。
【請求項2】
光沢銀めっき層の下面に硬質下地層を形成した請求項1記載のスイッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−311162(P2008−311162A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−159793(P2007−159793)
【出願日】平成19年6月18日(2007.6.18)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】