説明

スイッチ

【課題】基板実装用スイッチの半田付強度を上げると同時にスイッチ内部へのフラックスの浸入を防止する。
【解決手段】ハウジング側面から突出する端子30に貫通孔32を設け、ハウジング側面との間に隙間90を形成する切り欠き部52に本体部11を組み入れ、端子30の半田接続面を基板50の半田実装面51に半田付けすることにより、フラックスが貫通孔32と隙間90に連続して形成された空間を通り基板端面に流出する。これによりフラックスがスイッチ内部に侵入することが無くなり接触動作が安定する。また貫通孔32の内面に半田フィレットが形成されることにより半田接続強度も向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種電子機器の基板(例えばプリント配線基板)に実装されるスイッチ(例えば押釦スイッチ)に係り、特に基板の切欠き部に実装される押釦スイッチに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の押釦スイッチ100は、図11、図12に示すように、接点部を収納し基板170に取付けられるハウジング110と、ハウジング110の一側面111から突出し基板170の板面と平行方向に操作可能な押釦120とを備え、ハウジング110は接点部に連続する端子130を側面111から導出させ、端子130は基板170に対する半田付け面131を有し、端子130は押釦120の操作方向に前後一対づつハウジング110の側面111から導出されている。
【特許文献1】特開2006−210195号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前述の従来例では、端子130に貫通孔や切欠きなどの開口部が形成されていないので、押釦スイッチの基板170への半田接続における半田接続面積を大きくすることが難しく、半田付け強度を大きくすることができないという問題点があった。また、端子130に開口部が形成されていないので、押釦スイッチ100の基板170への半田接続時に半田が溶融すると、フラックスが端子130を伝わり、ハウジング110とハウジング110の外側に固定された金属製カバー160の間から毛細管現象で押釦スイッチ100内へ侵入し易いという問題点があった。
【0004】
そしてこれは、電気機器の小型化に伴い、押釦スイッチを基板に実装する際、基板高さを抑制するために基板に切欠き部を形成し、この切欠き部に押釦スイッチを組み入れ実装する方法を利用した場合においても発生する問題であった。
【0005】
本発明は、上述の問題点に鑑みてなされたもので、基板面からの高さを抑制するために基板に切欠き部を形成し、この切欠き部にスイッチを実装する方法において、基板への半田接続強度を大きくすることができるとともに、スイッチ内部へのフラックスの浸入を抑制することのできる基板実装用スイッチを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、基板に形成された切り欠き部に、本体部を組み入れ実装するスイッチであり、前記本体部の側面からは内面にメッキが施された貫通孔部を有する端子が突出し、実装の際には前記端子が前記基板に載置され、前記本体部の側面と前記切り欠き部との間には隙間が形成され、前記貫通孔部の一部が前記隙間と連続した空間を有することを特徴とする。
【0007】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記本体は開口部を有する絶縁体からなるハウジングと、前記開口部内に移動可能に収容されている操作部材と、前記開口部内に設置され前記操作部材によって動作する可動接触片と、前記開口部を覆うカバーとからなり、前記開口部の底面には前記可動接触片が接離される固定接点が間隔を隔てて複数備えられ、前記固定接点は前記端子部と連続していることを特徴とする。
【0008】
請求項3記載の発明は、請求項2の発明において、前記ハウジングまたは前記カバーは、前記端子とほぼ同方向に突出する突出部を形成していることを特徴とする。
【0009】
請求項4記載の発明は、請求項2の発明において、前記ハウジングまたは前記カバーは、前記端子とほぼ同方向にほぼ等しい突出量を有して突出する複数の突出部を形成し、前記本体部を前記切り欠き部に組み入れた際に、前記隙間が前記突出部によりほぼ等しく規制されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の発明は、実装高さを小さくするため基板に形成された切欠きに本体を組み入れ実装するスイッチにおいて、端子に形成した貫通孔の一部がスイッチ本体と基板との間に設けた隙間と連続した空間を有しているので、スイッチを半田接合にて基板に実装する際、端子の貫通孔部に溜まったフラックスが基板の端面に流れ出すため、フラックスが端子を伝わり本体内部に侵入することを防ぐことができる。また、貫通孔部の内面にはメッキが施されているため、内面全体に半田フィレットが形成され実装強度を大きくすることができる。
【0011】
請求項2記載の発明は、可動接触片を動作させる作動力が加わるスイッチの実装に対して安定した実装強度および安定した動作を可能とすることができる。
【0012】
請求項3記載の発明は、スイッチを構成するハウジングまたはカバーに端子と同方向に突出する突出部を形成したため、スイッチを基板に実装する際、治具あるいは画像認識等の特別な方法を用いなくともスイッチの本体部と基板との間に一定の隙間を設けることができ、これによって安定した実装強度と安定した動作を可能にすることができる。
【0013】
請求項4記載の発明は、スイッチを構成するハウジングまたはカバーに突出量を等しく有する突出部を形成することにより、安定した実装強度と実装時にフラックスが確実に基板端面に流れ出て安定した動作が可能となり、さらにそれぞれの隙間は等しく規制され、これによってスイッチのセンタリングが容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に本発明の実施形態について説明する。図1は本発明を実施した押釦スイッチの正面図、図2は図1のA−A線断面図、図3は正面側斜視図であり、本発明を実施した押釦スイッチ10は、接点部34を含むハウジング20に、導電性の接触板40、操作部材60を組み入れ、その上からカバー70を被せて組み立てられる構造となっており、各個品は以下の通りのものである。
【0015】
ハウジング20は絶縁材料からなり、上面側に開口部22を有し、内面である底面部23には開口側に互いに離間した接点部34を露出する端子30がハウジング20に一体成形されたものである。
【0016】
接触板40は厚みが0.01〜0.05mm程度の導電性の薄板状金属からなり、凸状に湾曲した皿状の形状を有し、中央部がハウジング20から露出した一方の接点部34から離間され、外周部がハウジング20の他方の接点部34に載置される状態でハウジング20に組み入れられる。
【0017】
操作部材60は先端部61に半球状の押圧部62を備えた押圧片63と組み込み時にハウジング20の外部に位置される操作方向に対して垂直な平面64を有する操作部65からなり、押圧部62と押釦スイッチ10に組み入れられた接触板40の中央とを結ぶ仮の線が操作方向と一致するようにハウジングに組み込まれるものである。
【0018】
そして、この操作部材60を組み込んだ上から、薄板金属からなり天面部71のほぼ中央を切り欠いて斜め下方へ突出する誘導舌部72が形成され、ハウジング20に組み合わせた際、ハウジング20から突出する端子30と同じ方向に左右から等しい突出量をもって折り曲げられた折曲部74が形成され、ハウジング外形と略同形の天面部71の端部から下方へ折り曲げ延出した複数の係止部73を有するカバー70をハウジング20に形成した係止凸部24へ係止することによって、ハウジングの開口部22を塞ぎ押釦スイッチ10の組み立てを完了させることができる。
【0019】
このように組み立てられた押釦スイッチ10は、図2に示すように操作部65の前記平面64に対して略垂直な方向の力を加えることにより、操作部材60の押圧部62がカバー70に形成された誘導舌部72により下方へ移動し、接触板40の中央凸部がハウジング20に露出した一方の接点部に接触することで接触板40を介して2つの接点部34が電気的に導通され、スイッチがON状態となる。
【0020】
次に本押釦スイッチ10を基板50に実装する際に半田接合される端子30の構造について説明する。端子30は導電性の薄板金属からなり、一端部には前述したようにハウジング内に一体成形され、ハウジング20の開口部側に露出する接点部34が形成されたものであり、他端には押釦スイッチ10が実装される基板50に半田付けされる半田接続部31が形成されている。この半田接続部31は長板状の形状を有し、両側が半円からなる長穴状の貫通穴32が板厚方向に開口されており、半田接続部31の長手方向の端部には半円状の切り欠き部が設けられ、貫通穴32および半円状の切り欠き部の板厚方向の内面36には半田接合が確実に行なわれ、内面36と基板に形成された実装パターン51との間で半田フィレットが形成される様にAgメッキ等の各種メッキが施されている。
【0021】
そして、このような押釦スイッチ10は各種電気機器の小型化、薄型化に伴い図5に示すように略長方形状の基板切り欠き部52を有する回路が形成された基板50に押釦スイッチ10の本体部11を組み入れて実装し、これによって基板50に押釦スイッチ10を実装した際の実装高さを小さくすることが可能な実装方法がとられている。
【0022】
押釦スイッチ10の端子30が突出する方向において基板切り欠き部52は、本体部11よりも大きく切り欠かれており、これによって本体部11が基板切り欠き部52に組み入れられた際には、図6、図7に示すように押釦スイッチ10の端子30が突出する方向において、本体部11と基板切り欠き部52との間に隙間90を有することとなる。この隙間は押釦スイッチ10を実装する際、画像認識等の技術によって、本体部11の左右方向の隙間を等しくすることも可能であるが、ここでは本体部11のカバー70に突出量の等しい折曲部74が形成されているため、これによって左右の隙間90が左右ほぼ等しく規制されることとなる。
【0023】
これによって端子30に開口されている貫通孔32は大部分が基板50の上に位置することになるが、図7において端子突出方向に対となって形成された左右の端子部30の貫通孔32の本体部11に最も近い端面37と端面37との距離Aが切り欠き部52の端子突出方向の長さBよりも小さく形成されているため、貫通孔32の一部は基板50の上ではなく、隙間90の上に位置し、隙間90と連続する空間を有するように位置される。
【0024】
そして、押釦スイッチ10の基板50への実装における半田接合は、基板に形成された半田接続部31と相似形で大きく形成された実装パターン51にペ−スト状の半田を印刷または塗布し、その上に実装機等により押釦スイッチ10の半田接続部31が実装パターン51に合うように押釦スイッチ10を基板50に載置し、この基板50に実装された押釦スイッチ10を300℃前後のリフロー槽に通すことにより半田を溶融させ基板の実装パターン51と半田接続部31とを半田接続し、押釦スイッチ10と基板50とが電気的に接続状態となる。
【0025】
この際、半田が溶融し、これによって半田接続部31の板厚方向の壁面と基板の実装パターン51で形成される角部に半田フィレットが形成される。よって本押釦スイッチ10の半田接続部31においては、長板状の外周に形成される半田フィレットだけでなく、前述の半田接合部31に開口された長穴状の貫通孔32の内面36である壁面にも半田フィレットが形成される。これにより貫通孔32が形成されていない通常の半田接続部に比較して本押釦スイッチ10は貫通孔32によって形成される半田フィレットの分だけ基板50との半田接合力が増し、従来の押釦スイッチ100に比較して押釦スイッチ10の実装パターン51からの耐剥離強度を増すことができる。さらに、貫通孔32の内面36にはメッキ処理が施されているため貫通孔32にフィレットが形成されると同時にフラックスが流れ込む、ここで通常であればフラックスは貫通孔32と基板で形成される穴部に溜まるのみであり、フラックスの量が多い場合には、貫通孔32と基板により形成される穴部から溢れて端子30を伝わり、本体部11に侵入する。しかしながら、本発明においては貫通孔32の一部が隙間90と連続する空間91を有するため、一時的に貫通孔32と基板により形成される穴に溜まったフラックスが隙間90と連続する空間91を通り基板50の切り欠き端面53に流れ出るた
め、端子30を伝わり本体部へ流れこもうとするフラックスの量が極端に減り、押釦スイッチ内へのフラックスの侵入を抑制することができる。
【0026】
このように本スイッチは実装基板との間にカバーから突出した折曲部72により規制される隙間90を設け、貫通孔の一部と隙間との間で連続した空間91を有することとなる貫通孔32をスイッチ端子部に形成したことにより、実装時の半田接合にて発生するフラックスを貫通孔32の一部と隙間90との間に形成した空間91を通り、基板の切り欠き部52の端面53に沿って流出させることにより、端子部30を伝わりスイッチ本体11の内部へのフラックスの侵入を対策したものであり、これによってスイッチにおける接触不良等を防ぎ安定した動作を可能にし、また、貫通孔32の内面36に形成される半田フィレットにより実装強度を改善したものである。
【0027】
本実施例においては、隙間90を規制するためにカバー70に折曲部74を形成したが、本発明を実施する形態はこれに限るものではなく、図8、図9に示すようにカバー70の係止部73を端子30の突出方向に延出させ、これによって規制することも可能であり、また本体部11のハウジング20から端子30の突出方向に凸部を形成することにより隙間90を規制することによっても本発明の実施は可能である。さらに、端子30に形成する貫通孔32においても、両端が半円状の貫通孔である他に、長方形の貫通孔でも本発明の実施は可能であり、貫通孔の一部と隙間90との間に連続した空間を有することができれば、いかなる形状であってもよい。しいては、端子突出方向に切り欠きを設ける形状であっても本発明の実施は可能である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係る押釦スイッチの正面図
【図2】図1A−A箇所における断面図
【図3】本発明に係る押釦スイッチの正面側斜視図
【図4】本発明に係る押釦スイッチの背面側斜視図
【図5】本発明に係る押釦スイッチの基板実装時の背面側斜視図
【図6】図5の押釦スイッチの動作方向(ア方向)からの矢視図
【図7】図5の押釦スイッチの底面方向(イ方向)からの矢視図
【図8】図5の押釦スイッチにおいてカバーの係止部を延出させた実施例
【図9】カバーの係止部を延出させた押釦スイッチの別の基板実装例
【図10】図5B−B箇所における半田接合時の断面図
【図11】従来の押釦スイッチの正面側斜視図
【図12】従来の押釦スイッチの基板実装時の背面側斜視図
【符号の説明】
【0029】
10 押釦スイッチ 11 本体部 20 ハウジング 21 ハウジング側面 22 開口部 23 底面部 24 係止凸部 25 ハウジング底面 30 端子 31 端子の半田接続部 32 貫通孔 33 切り欠き部 34 接点部 35 半田接続面 36 内面 37 端面 40 接触板 50 基板 51 基板の半田実装面(実装パターン) 52 基板切り欠き部 53 基板切り欠き端面 60 操作部材 61 先端部 62 押圧部 63 押圧片 64 垂直な平面 65 操作部 70 カバー 71 天面部 72 誘導舌部 73 係止部 74 折曲部 80 半田フィレット 90 隙間 91 連続した空間 100 従来の押釦スイッチ 101 接点部 110 ハウジング 111 ハウジング側面 112 ハウジング底面 120 押釦 130 端子 131 半田付け面 132 半田接続部 133 出力部 160 金属製カバー 170 基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に形成された切り欠き部に、本体部を組み入れ実装するスイッチであり、前記本体部の側面からは内面にメッキが施された貫通孔部を有する端子が突出し、実装の際には前記端子が前記基板に載置され、前記本体部の側面と前記切り欠き部との間には隙間が形成され、前記貫通孔部の一部が前記隙間と連続した空間を有することを特徴とするスイッチ。
【請求項2】
前記本体は開口部を有する絶縁体からなるハウジングと、前記開口部内に移動可能に収容されている操作部材と、前記開口部内に設置され前記操作部材によって動作する可動接触片と、前記開口部を覆うカバーとからなり、前記開口部の底面には前記可動接触片が接離される固定接点が間隔を隔てて複数備えられ、前記固定接点は前記端子部と連続していることを特徴とする請求項1に記載のスイッチ。
【請求項3】
前記ハウジングまたは前記カバーは、前記端子とほぼ同方向に突出する突出部を形成していることを特徴とする請求項2に記載のスイッチ。
【請求項4】
前記ハウジングまたは前記カバーは、前記端子とほぼ同方向にほぼ等しい突出量を有して突出する複数の突出部を形成し、前記本体部を前記切り欠き部に組み入れた際に、前記隙間が前記突出部によりほぼ等しく規制されることを特徴とする請求項2に記載のスイッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−40428(P2010−40428A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−204393(P2008−204393)
【出願日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【出願人】(000102500)SMK株式会社 (528)
【Fターム(参考)】