説明

スイッチ

【課題】各種電子機器において、主に記録媒体の有無やメカニズムの動作検出等に用いられるスイッチに関し、可動接点と固定接点との接触が安定し、確実な電気的接離が可能なものを提供することを目的とする。
【解決手段】共通固定接点2の端子部2Aの根元近傍の中間部2Bを所定範囲覆う覆い部11Bを、ケース11内底面にケース11と一体に設けることによって、端子部2Aを介してケース11内に浸入したフラックスが、中間部2Bから延伸した接点部2C表面まで滲み出て付着することがなく、可動接点と固定接点との接触が安定し、確実な電気的接離が可能なスイッチを実現することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種電子機器において、主に記録媒体の有無やメカニズムの動作検出等に用いられるスイッチに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ビデオやパソコン等の各種電子機器の小型化や高機能化が進むなか、これらのテープやディスク等の記録媒体の有無、或いはツマミや扉等のメカニズムの動作検出等に用いられる検出用スイッチにおいても、小型薄型で電気的接離の確実なものが求められている。
【0003】
このような従来のスイッチについて、図6〜図8を用いて説明する。
【0004】
図6は従来のスイッチの断面図、図7は同分解斜視図であり、同図において、1は絶縁樹脂製で上面開放の略箱形のケース、2は導電金属薄板製の共通固定接点、3は同じく個別固定接点で、共通固定接点2及び個別固定接点3がケース1の内底面に植設固定されると共に、下方に折曲した端子部2Aがケース1の右端近傍から外方へ、同様に端子部3Aが左端近傍から外方へ各々延出している。
【0005】
なお、共通固定接点2は端子部2Aの根元から折曲して、ケース1内底面に略全幅で個別固定接点3側へ所定長さ延びた略矩形の中間部2Bと、この中間部2Bから個別固定接点3側へ狭幅で延伸した接点部2Cにより形成され、個別固定接点3は、端子部3Aと、この根元から折曲したケース1内底面に細幅の桟部3Bが後側に延びて、さらに右側へ接点部2Cと略並行に延伸した接点部3Cの略L字状に形成されている。
【0006】
また、4は絶縁樹脂製の操作体で、左端の支点部4Aを支点としてケース1内に揺動可能に収納されると共に、右端にはケース1上面から上方へ突出する操作部4Bが形成されている。
【0007】
さらに、5は弾性金属薄板製の可動接点で、左端のU字状部がケース1内側面の保持穴内に保持されると共に、右端には二股にアーム部5Aが各々延出し、アーム部5Aの先端に略円弧状の接触部5Bが各々設けられている。
【0008】
そして、アーム部5Aがやや撓んだ状態で、図6(a)に示すように、一方の接触部5Bが共通固定接点2の接点部2C上に弾接し、図6(b)に示すように、他方の接触部5Bがケース1内底面の絶縁樹脂上に弾接している。
【0009】
また、操作体4の操作部4B下面が可動接点5のアーム部5A上方に当接してスイッチが構成されている。
【0010】
そして、このように構成されたスイッチは、上下面に複数の配線パターンが形成された配線基板(図示せず)上に載置され、ケース1から延出した端子部2A、3Aが、所定の配線パターンにハンダ付けされて、機器の電子回路(図示せず)に電気的に接続される。
【0011】
以上の構成において、操作部4Bが下方へ押圧操作されると、操作体4が支点部4Aを支点として下方へ揺動し、可動接点5のアーム部5Aがさらに撓んで、アーム部5A左端の一方の接触部5Bが接点部2Cの左側へ弾接摺動すると共に、他方の接触部5Bがケース1内底面から左方の接点部3C上に弾接摺動して、可動接点5を介して共通固定接点2と個別固定接点3が電気的に接続される。
【0012】
なお、このようなスイッチを配線基板にハンダ付けする際には、端子部2A、3Aが延出した面である前面を配線基板に載置し、端子部2A、3Aを配線パターンの所定のランド上に配置して、リフローハンダ付け等によって表面実装されるが、この時、端子部2Aや3Aからフラックスがその表面とケース1の絶縁樹脂との僅かな隙間を介してケース1内底面に侵入する場合がある。
【0013】
すなわち、図6(a)の矢印(破線)Aに示すように、例えば、共通固定接点2の端子部2Aに付着したフラックスは、上方のケース1と端子部2A根元との隙間からケース1内に侵入し、端子部2A根元近傍の比較的広い面積の中間部2B下面に浸透、拡散して、図8の要部斜視図に示すように、中間部2B周囲や左方へ延伸した接点部2Cの周囲からフラックス6が表面に滲み出る可能性があった。
【0014】
これによって、スイッチを操作した時、フラックス6が滲み出た接点部2C上面に可動接点5の一方の接触部5Bが弾接すると、これらの接触は高絶縁性のフラックス6を介したものとなるため、接触抵抗が高く不安定になる可能性があるものであった。
【0015】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2007−052963号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかしながら、上記従来のスイッチにおいては、スイッチを配線基板にハンダ付けする際に、端子部2Aを介してケース1内に浸入したフラックス6が可動接点5の接触部5Bが弾接する共通固定接点2の接点部2C上面まで滲み出て、接触部5Bと接点部2Cとの接触抵抗が高く不安定になる可能性があるという課題があった。
【0018】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、可動接点と固定接点の接触が安定し、確実な電気的接離が可能なスイッチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記目的を達成するために本発明は、端子部の根元近傍の固定接点を所定範囲覆う覆い部をケース内底面にケースと一体に設けたものであり、例えば、共通固定接点の端子部の根元近傍で、ケース内底面の可動接点が弾接または当接しない共通固定接点の中間部を、所定範囲覆う覆い部をケースと一体に設けることによって、端子部を介してケース内に浸入したフラックスは、共通固定接点の中間部下面とケースの隙間や中間部上面と覆い部との隙間に滞留して、これ以上、延伸した接点部表面まで滲出することがなく、可動接点と固定接点との接触が安定し、確実な電気的接離が可能なスイッチを得ることができるという作用を有する。
【発明の効果】
【0020】
以上のように本発明によれば、可動接点と固定接点との接触が安定し、確実な電気的接離が可能なスイッチを実現できるという有利な効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施の形態によるスイッチの断面図
【図2】同断面図
【図3】同分解斜視図
【図4】同操作時の断面図
【図5】同要部斜視図
【図6】従来のスイッチの断面図
【図7】同分解斜視図
【図8】同要部斜視図
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について、図1〜図5を用いて説明する。
【0023】
なお、背景技術の項で説明した構成と同一構成の部分には同一符号を付して、詳細な説明を簡略化する。
【0024】
(実施の形態)
図1、図2は本発明の一実施の形態によるスイッチの断面図、図3は同分解斜視図であり、同図において、11は上面開放の略箱形でポリフェニレンサルファイド(以降、PPSと記載する)等の絶縁樹脂製のケース、2は導電金属薄板製の共通固定接点、3は同じく個別固定接点で、共通固定接点2及び個別固定接点3がケース11の内底面に植設固定されると共に、下方に折曲した共通固定接点2の端子部2Aがケース11前面の右端近傍から外方へ、個別固定接点3の端子部3Aがケース11前面の左端近傍から外方へ各々延出している。
【0025】
そして、共通固定接点2は、端子部2Aとこの根元から折曲したケース11内底面に前後方向の全幅で個別固定接点3側へ所定長さ延びた略矩形の中間部2Bと、この中間部2Bから個別固定接点3側へ狭幅で延伸した接点部2Cにより形成されている。
【0026】
また、中間部2Bにはケース11内の前後方向の内幅で右端から左方へ中間部2Bの所定範囲を絶縁樹脂で覆う覆い部11Bがケース11と一体に設けられている。
【0027】
さらに、覆い部11Bの左右の範囲と高さは、後述する可動接点の操作体による可動範囲外で、可動接点に触れないように配設されている。
【0028】
そして、個別固定接点3は、端子部3Aと、この根元から折曲したケース11内底面に、細幅の桟部3Bが後側に延びて、さらに右側へ接点部2Cと略並行に延伸した接点部3Cの略L字状に形成されている。
【0029】
また、4はPPS等の絶縁樹脂製の操作体で、左端の支点部4Aを支点としてケース11内に揺動可能に収納されると共に、右端にはケース11上面から上方へ突出する操作部4Bが形成されている。
【0030】
さらに、5は弾性金属薄板製の可動接点で、左端のU字状の係止部5Cがケース11内側面の保持穴11A内に保持されると共に、右端には二股にアーム部5Aが各々延出した略コ字状に形成され、アーム部5Aの先端に略円弧状の接触部5Bが各々設けられている。
【0031】
そして、アーム部5Aがやや撓んだ状態で、図1に示すように、一方の接触部5Bが共通固定接点2の接点部2C上に弾接し、図2に示すように、他方の接触部5Bが中間部2Bと接点部3Cとの間のケース11内底面の絶縁樹脂上に弾接している。
【0032】
また、操作体4の操作部4B下面が可動接点5のアーム部5A上方に当接してスイッチが構成されている。
【0033】
そして、このように構成されたスイッチは、上下面に複数の配線パターンが形成された配線基板(図示せず)上に載置され、ケース11から延出した端子部2A、3Aが、所定の配線パターンにハンダ付けされて、機器の電子回路(図示せず)に電気的に接続される。
【0034】
以上の構成において、テープやディスク等の記録媒体の挿抜、或いはツマミや扉等のメカニズムの動作によって、ケース11上方へ突出した操作部4Bが下方へ押圧操作されると、図4の断面図に示すように、操作体4が支点部4Aを支点として下方へ揺動する。
【0035】
そして、操作体4の揺動に伴って、可動接点5のアーム部5Aがさらに撓むと共に、図4(a)に示すように、アーム部5A左端の一方の接触部5Bが接点部2Cの左側へ弾接摺動すると共に、図4(b)に示すように、他方の接触部5Bがケース11内底面から左方の接点部3C上に弾接摺動して、可動接点5を介して共通固定接点2と個別固定接点3が電気的に接続される。
【0036】
なお、このようなスイッチを配線基板にハンダ付けする際には、端子部2A、3Aが延出した面である前面を配線基板上に載置し、端子部2A、3Aを配線パターンの所定のランド上に配置して、リフローハンダ付け等によって表面実装されるが、この時、端子部2Aや3Aからフラックスがその表面とケース11の絶縁樹脂との僅かな隙間を介してケース11内底面に侵入する場合がある。
【0037】
そして、図1の矢印(破線)Aに示すように、共通固定接点2の端子部2Aに付着したフラックスは、端子部2A根元とケース11の隙間からケース11内に侵入し、図5の要部斜視図に示すように、端子部2A根元近傍の比較的広い面積の中間部2B下面に浸透及び拡散すると共に、さらに中間部2B上面とこれに対向した覆い部11Bの下面との間に浸透、拡散する。
【0038】
したがって、端子部2Aからケース11内に侵入したフラックス6は、中間部2Bの下面の範囲や上面と覆い部11Bとの範囲に亘りケース11との隙間内に滞留して、これ以上、中間部2Bから延伸した接点部2Cには移動しないため、接点部2Cからフラックス6が滲み出てその上面に付着し難くなっている。
【0039】
つまり、端子部2Aからはある程度定量のフラックス6が侵入したとしても、ケース11の覆い部11Bによって覆われた中間部2Bで、その下面と上面の覆い部11Bの範囲でフラックス6が留まり、接点部2Cには到達しないため、接点部2C上面にはフラックス6が付着せず、可動接点5の接触部5Bと共通固定接点2との接触は安定したものとなる。
【0040】
なお、端子部3Aからもケース11内にフラックス6は侵入する場合があるが、端子部3A根元からは略L字状で細幅の桟部3Bを介して接点部3Cに繋がっているため、フラックス6は桟部3Bから接点部3Cには移動し難い。
【0041】
このように本実施の形態によれば、共通固定接点2の端子部2Aの根元近傍の中間部2Bを所定範囲覆う覆い部11Bを、ケース11内底面にケース11と一体に設けることによって、端子部2Aを介してケース11内に浸入したフラックス6が、中間部2B下面とケース11の隙間や中間部2B上面と覆い部11Bとの隙間に滞留して、これ以上、中間部2Bから延伸した接点部2C表面まで滲み出て付着することがなく、可動接点5と共通固定接点2との接触が安定し、確実な電気的接離が可能なスイッチを実現することができる。
【0042】
以上の説明では、操作体4が支点部4Aを中心に揺動する揺動操作型のスイッチを例に説明したが、操作体の上下方向への移動に伴って可動接点が固定接点と接離する構成や、操作体が左右方向へのスライド移動に伴って可動接点が固定接点と接離する構成の移動操作型のスイッチにおいても本発明の実施は可能である。
【0043】
また、以上の説明では、常時、可動接点5の一方の接触部5Bが弾接摺動する共通固定接点2と、操作体4の操作に伴って、他方の接触部5Bが個別固定接点3と接離して電気的接離が行われる構成として説明したが、2つ以上の複数の個別固定接点で、操作体の操作に伴って、可動接点の複数の接触部が対応する個別固定接点と各々接離して、可動接点を介して個別固定接点同士が電気的に接続される構成においても、本発明の実施は可能である。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明によるスイッチは、可動接点と固定接点との接触が安定し、確実な電気的接離が可能なものを得ることができ、主に各種電子機器に使用される検出用スイッチとして有用である。
【符号の説明】
【0045】
2 共通固定接点
2A、3A 端子部
2B 中間部
2C、3C 接点部
3 個別固定接点
3B 桟部
4 操作体
4A 支点部
4B 操作部
5 可動接点
5A アーム部
5B 接触部
5C 係止部
6 フラックス
11 ケース
11A 保持穴
11B 覆い部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
略箱形のケースと、前記ケースの内底面に植設され、端子部が前記ケースから外方へ延出した複数の固定接点と、前記ケースに揺動または移動可能に保持された操作体と、先端に複数の接触部を備え前記操作体の操作に伴って前記接触部が前記固定接点に弾接する可動接点からなり、前記端子部の根元近傍の固定接点を所定範囲覆う覆い部を前記ケース内底面に一体に設けたスイッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−89363(P2012−89363A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−235336(P2010−235336)
【出願日】平成22年10月20日(2010.10.20)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】