説明

スキャナ内蔵携帯通信端末

【課題】 携帯通信端末にスキャナ機能を備えることで、任意の撮像対象について二次元画像を容易かつ確実に取得できる。
【解決手段】 折り畳み式筐体を備える携帯通信端末1であって、画像センサを直線的に配列することにより、撮像対象の一次元の画像データを取得するラインセンサモジュール41と、ラインセンサモジュール41により取得した複数の一次元画像データを合成することによって、撮像対象の二次元の画像データを取得する二次元データ生成手段と、ラインセンサモジュール41の画像データの一次元走査方向と直行する方向の移動距離を検出するスキャン長センサ42とを備え、ラインセンサモジュール41及びスキャン長センサ42を、折り畳み式筐体の折り畳み側外面に配設した構成としてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話機やPHS端末等の携帯通信端末に関し、より詳しくは、密着型のスキャナを搭載することにより、一次元画像データのみならず、任意の二次元画像データを取得できるスキャナ内蔵携帯通信端末に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、職場や外出先等で文書や図面等に記載された情報を取得したい場合には、通常は、その者が頭で記憶するか、メモにとるか、あるいは、その者が所持するカメラによって文書や図面等を写真撮影するといった方法がとられる。
このうち、人間が記憶したりメモをとるという方法では、記憶やメモ書きできる量や正確性の面で一定の限界があり、文書等の内容や記載量によっては記憶やメモ書き等すること自体が不可能な場合も少なくない。
【0003】
この点、カメラにより所望の対象物を撮影する場合には、以上のような問題は生じず、どのような撮像対象物でも正確な画像として撮影・記録することができる。
特に、昨今は、携帯電話機にデジタルカメラが搭載されることが一般的となっており、外出先等での急な情報収集であっても、携帯電話機のデジタルカメラによって、任意の撮像対象物を撮影し、その画像データを保存したり、他の携帯電話機やコンピュータ等に送信することができる。
【0004】
ところが、カメラ撮影により得られる画像データは、撮影時におけるカメラと被写体との距離や、カメラレンズの結像倍率が一定でないため、撮影した画像情報から実際の被写体の正確な長さ情報を取得することができなかった。
このため、例えば、被写体として地図を撮影した場合、地図とともに定規や予め長さが判明しているものを一緒に撮影しない限り、その画像情報からは地図の正しい縦横の長さを知ることはできなかった。
【0005】
ここで、特許文献1には、カメラではなく、ラインセンサを備えた携帯電話端末が開示されており、携帯電話端末の筐体底部に備えられたラインセンサによってURL等の文字列を読み取り、それを文字認識処理によって文字列を抽出・認識する技術が提案されている。
このように、携帯電話端末にラインセンサを搭載することによって、対象物を、カメラ画像としてではなく、スキャン画像として取り込んで認識して文字列に変換することが可能となり、これによって、カメラ画像に基づくよりも容易に文字列情報を抽出・変換することができた。
【0006】
【特許文献1】特開2003−199163号公報(第1−2頁、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に提案されている携帯電話端末は、ラインセンサによって撮像・操作される対象物がURL等の文字列であって、それ以外の対象物を二次元的に認識・抽出することは困難であった。
すなわち、特許文献1で提案されているラインセンサ付きの携帯電話端末では、直線上に配列・記載された文字列(URL)の読み取りのみを対象として、ラインセンサが携帯電話端末の筐体端部(底部)に配置されていたため、単なる文字列を1行だけ読み取るのには支障はなかったが、二次元的な広がりを持つ撮像対象物、例えば、書類や原稿、地図、写真などを読み取るには、操作がきわめて行い難いという問題があった。
一般に、撮像対象物の走査を手動により正確に行うには、走査画像を確認しながら走査処理を行う必要がある。ここで、通常、携帯電話端末では、液晶表示装置等からなるディスプレイが備えられているので、ラインセンサで読み取った走査画像はディスプレイに表示することができる。
【0008】
ところが、特許文献1の携帯電話端末のように、筐体の底部にラインセンサが備えられる構成では、筐体を撮像面に対してほぼ垂直に起立させた状態で走査を行う必要があり、この場合、ディスプレイも撮像面に対してほぼ垂直に起立した状態となる。このため、端末を操作する操作者はディスプレイを目視・確認しつつ走査処理を行うことはきわめて困難であった。
近年は、携帯電話端末のディスプレイは、大型で高精細な液晶表示装置等が搭載されており、特に複数の筐体が展開・収納可能に結合された折り畳み式や回転式(レボルバー式)、ユニバーサルジョイント式等の可動式筐体を備える携帯電話端末では、大画面のディスプレイが備えられているが、読み取り動作と同時にディスプレイを目視できない特許文献1の携帯端末構成では、このような大画面ディスプレイの特性を活かすことができず、せいぜい1行分の文字列の走査ができるだけで、二次元的な広がりを持つ撮像対象をディスプレイで確認しながら走査・撮像することはできなかった。
【0009】
本発明は、以上のような従来の技術が有する問題を解決するために提案されたものであり、撮像対象の一次元画像データを取得可能なラインセンサと、撮像対象のスキャン長情報を取得するセンサ手段を備えることにより、任意の対象物の二次元画像データを取得することができるとともに、スキャン処理中にディスプレイを視認可能な位置にラインセンサを配設することで、操作者はディスプレイに表示されるラインセンサの走査画像を確認しつつ端末を操作して容易かつ正確に走査処理・読み取り処理を行うことができる、特に大画面で高精細なディスプレイが搭載される折り畳み式、回転式、ユニバーサルジョイント式等の可動式筐体を備える携帯電話端末やPHS端末等に好適なスキャナ内蔵携帯通信端末に関する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明のスキャナ内蔵携帯通信端末は、請求項1に記載するように、外部と無線通信可能な携帯通信端末であって、上側筐体と下側筐体とが展開・収納可能に結合されてなる可動式筐体を備えるとともに、所定の撮像対象の一次元の画像データを取得するラインセンサと、前記ラインセンサの前記画像データの一次元走査方向と直行する方向の移動距離を検出するスキャン長センサと、前記ラインセンサが前記画像データの一次元走査方向と直行する方向に移動されることにより得られる複数の一次元画像データを、前記スキャン長センサで検出される移動距離に基づいて合成して二次元の画像データを生成する二次元データ生成手段と、前記ラインセンサによって取得された一次元画像データ、又は前記二次元データ生成手段によって合成された二次元画像データを表示するディスプレイと、を備え、前記ディスプレイが、前記可動式筐体の収納時外面側に配設されるとともに、前記ラインセンサ及びスキャン長センサが、前記可動式筐体の収納時外面側に配設される構成としてある。
また、本発明のスキャナ内蔵携帯通信端末は、請求項2に記載するように、撮像対象に対向し、当該撮像対象の画像を前記ラインセンサ上に結像させるレンズアレイを備える構成としてある。
【0011】
このような構成からなる本発明のスキャナ内蔵携帯通信端末によれば、対象物の二次元画像データを取得するラインセンサ及びライン長センサを、上側筐体と下側筐体とが展開・収納可能に結合されてなる可動式筐体の収納時外面側、例えば、折り畳み式筐体の折り畳み側外面に配設することにより、折り畳み式の端末筐体を展開し、ディスプレイを上面(撮像対象と同じ面)に向けた状態で、所望の撮像対象面をラインセンサ及びライン長センサによって走査することができ、かつ、その走査画像を、撮像対象面と同じ上面に向いたディスプレイ上に表示することができる。
これによって、操作者は、携帯端末を手動走査して、ディスプレイに表示されるラインセンサの走査画像を確認しながら、撮像対象の走査処理・読み取り処理が行えるようになり、任意の対象物の二次元画像データを容易かつ正確に取得することが可能となり、二次元的な広がりを持つ撮像対象物、例えば、書類や原稿、地図、写真などについても、ディスプレイに表示されるスキャン画像を確認しながら、品質の高い、安定した二次元画像データを取得することができる。
【0012】
ここで、本発明を適用可能な携帯通信端末の可動式筐体としては、折り畳み式筐体の他、回転式(レボルバー式)やユニバーサルジョイント式など、上側筐体と下側筐体とが展開・収納可能に連結される構造のものであればよい。
従って、本発明の可動式筐体の収納時(収納状態)とは、携帯通信端末を使用しない携帯時等であって、上側筐体と下側筐体とを重ね合わせた状態をいい、可動式筐体の展開時(展開状態)とは、携帯通信端末を使用する場合に、上側筐体と下側筐体とを開いて展開させた状態をいう。
【0013】
また、このようにラインセンサで取得された画像データを即座にディスプレイで確認できることによって、据え置き型の専用のスキャナ装置のように、画像を確認するためにパーソナルコンピュータ等に接続して表示させる必要がなく、また、データの整理もその場でできるため、利便性を向上させることが可能である。
また、画像データを表示するためのディスプレイは、携帯通信端末に通常備えられている液晶表示装置等からなるディスプレイをそのまま利用することができるため、既存の携帯電話機等に直ちに適用することができ、汎用性・拡張性に優れたスキャナ内蔵携帯通信端末を低コストで実現することができる。
【0014】
さらに、本発明のスキャナ内蔵携帯通信端末によれば、スキャン長センサによって得られた対象物の長さ情報により、その対象物の実際の長さを示す長さ情報を生成・取得することができる。
本発明のスキャナで得られる画像は、密着画像であり、画像の画素当たりの長さは、ラインセンサの画素当たりの長さで決まる。すなわち、得られた画像の画素単位の長さはラインセンサの画素単位の長さと一致し、従って、スキャン長センサによって得られた長さ情報に基づいて、ラインセンサ何画素分の画像であるかがわかれば、その対処物の実際の長さが求められる。これによって、被写体のほぼ正確な実際の長さ情報を得ることができ、メジャーや比較対象物等を用いることなく、任意の対象物の長さを計測することが可能となる。
【0015】
そして、本発明のスキャナが実装される携帯通信端末は、小型で可搬性に優れる携帯電話機端末やPHS端末等で構成されるので、使用者は常に携帯でき、いつでも使用可能であり、場所や時間等の制約を受けることなく、容易かつ即座に所望の撮像対象の画像データを取得・生成することができる。
従って、対象となる原稿等の撮像対象の表面上で本発明に係る携帯通信端末を一定方向に滑らせるだけで、任意の対象物を撮像して必要な二次元画像データを簡単に取得することができる。
【0016】
また、本発明のスキャナ内蔵携帯通信端末は、請求項3に記載するように、前記下側筐体の収納時内面側にダイヤルキーその他の操作キーが配設されるとともに、前記上側筐体の収納時内面側にディスプレイが配設され、前記ラインセンサが、前記下側筐体の収納時外面側に配設される構成としてある。
また、本発明のスキャナ内蔵携帯通信端末は、請求項4に記載するように、前記ラインセンサの走査面を照らす照明手段を備える構成としてある。
特に、請求項5に記載するように、前記照明手段が、前記下側筐体に配設される、前記操作キーを照明するキー照明と、当該キー照明の照明光を前記ラインセンサの走査面に導く導光部とからなる構成とすることが好ましい。
【0017】
このような構成からなる本発明のスキャナ内蔵携帯通信端末によれば、携帯電話機端末のダイヤルキー等の操作キーのバックライト等のキー照明が備えられる場合に、このキー照明の照明光を本発明のラインセンサの走査面を照らす照明手段(スキャナ用光源)として利用することができる。
これによって、スキャナ機能のためだけに専用の光源を用意する必要がなく、筐体の重量や大きさを抑えることができるとともに、開発・生産にかかるコストを抑えることも可能となる。
【0018】
さらに、本発明のスキャナ内蔵携帯通信端末は、請求項6に記載するように、前記二次元データ生成手段によって生成された二次元画像データを、通信回線を通じて送信する通信手段を備えた構成としてある。
【0019】
このような構成からなる本発明のスキャナ内蔵携帯通信端末によれば、取得した画像データを容易に他の装置等に送信することができる。
具体的には、既存の携帯通信端末に備わっているメール通信機能を利用して他の携帯電話機やパーソナルコンピュータ等に画像データを送信できるとともに、専用ポートや赤外線ポート等、その他のインターフェースを介した通信によっても画像データを他の装置に送信することができる。
従って、本発明のスキャナ内蔵携帯通信端末で取得された任意の対象物の二次元画像データは、直ちに他の装置等に送信することができ、送信先の装置で印刷や加工、保存等の処理が行えるようになり、利便性に優れた画像データ活用が可能となる。
【発明の効果】
【0020】
本発明のスキャナ内蔵携帯通信端末によれば、携帯電話機端末やPHS端末等の携帯通信端末にスキャナ機能を搭載しているため、時、場所、内容を選ばず、手軽に画像データを取得することができる。
そして、本発明では、ラインセンサを、携帯通信端末の折り畳み式や回転式、ユニバーサルジョイント式の筐体の収納時外面に配設することで、ディスプレイの表示面を対象物の撮像面と同じ方向に向けることができ、操作者は、ディスプレイに表示されるラインセンサの走査画像を確認しつつ端末を操作して容易かつ正確に走査処理・読み取り処理を行えるようになる。
これにより、特に大画面で高精細なディスプレイが搭載される可動式(折り畳み式、回転式、ユニバーサルジョイント式等)の筐体を備える携帯電話端末やPHS端末等に好適なスキャナ内蔵携帯通信端末を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明のスキャナ内蔵携帯通信端末の好ましい実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るスキャナ内蔵携帯通信端末1の斜視図であり、図2は、その側面図である。
これらの図に示すとおり、本実施形態のスキャナ内蔵携帯通信端末1は、上側筐体1Aと下側筐体1Bとがヒンジを介して接続された折り畳み可能な構造となっており、筐体の収納時、すなわち上側筐体1Aと下側筐体1Bとを折り畳んだ状態で、上側筐体1Aの折り畳み内面に正面(主)ディスプレイ71、その外面に背面(副)ディスプレイ72を有し、下側筐体の折り畳み内面にテンキーその他の操作キー21、その外面にラインセンサモジュール41とスキャン長センサ42を設置する構成となっている。
【0022】
ラインセンサモジュール41は、例えば、電荷結合素子(CCD)やフォトダイオード等の光センサが一次元ライン上に配列されたラインセンサ411を有しており(図3参照)、文書や図面などの原稿等の撮像対象を一次元的に読み取る(主走査)読み取り手段である。
そして、携帯通信端末1をこの一次元走査方向と直行する方向に移動させることで、連続した複数の一次元画像データが取得され(副走査)、これら複数の画像データを合成することによって原稿の二次元的画像データが取得できるようになっている(二次元データ生成手段)。
【0023】
正面ディスプレイ71及び背面ディスプレイ72は、例えば、液晶ディスプレイ(LCD)や有機ELディスプレイ等、画像を表示できるものであればどの様なものでも良く、ラインセンサモジュール41によって取り込まれた画像は、折り畳み開時には正面ディスプレイ71に、折り畳み閉時には背面ディスプレイ72に表示されるようになっている。
なお、携帯通信端末1の形状は、本実施形態のように折り畳み形状に限らず、ストレート型のものであってもよい。その場合には、ラインセンサモジュール41は正面ディスプレイ71と反対面に配置させ、画像の取り込み時に、取り込んでいる画像をディスプレイ71に表示できるようにすることが好ましい。
すなわち、正面ディスプレイ71とラインセンサモジュール41とは、端末筐体の異なる面側に配置させることにより、ディスプレイ表示面と対象物の撮像面(走査面)とを同一方向に向けることができ、実際に取り込んでいる画像をディスプレイ上でリアルタイムに確認しながらスキャン操作を行うことができるようになる。
【0024】
スキャン長センサ42は、上述した副走査方向、すなわち、スキャン操作時に携帯電話端末1を移動させる方向における移動距離(スキャン長)を検出するものである。
スキャン長センサ42は、図1又は図2に示すように、原稿に接触するようスキャナ面側にローラを取り付け、当該ローラ又はローラと連動するギア等に回転量センサ(エンコーダ)を組み込み、ローラの外周と回転角度からスキャン長を算出するようになっている。
また、スキャン長センサ42は、光学式マウスの原理(一定時間間隔で画像を取り込み、取り込み前後の画像の同一部分を比較することによって移動量を検出する原理)を利用し、LED等の光源から光を発射して原稿の画像を取り込み、その画像の変化から相対的な移動量を検出しスキャン長を算出するようにしてもよい。
【0025】
このようなスキャン長センサ42と、後述する等倍のレンズアレイ412を搭載することにより、原稿と取り込んだ画像との関係が1対1の縮尺となるため、取り込んだ画像データから実際の長さを算出することが可能となる。
すなわち、ラインセンサモジュール41で得られる画像は、密着画像であり、画像の画素当たりの長さは、ラインセンサ411の画素当たりの長さで決まる。すなわち、得られた画像の画素単位の長さはラインセンサ411の画素単位の長さと一致し、従って、スキャン長センサ42によって得られた長さ情報に基づいて、ラインセンサ何画素分の画像であるかがわかれば、その対処物の実際の長さが求められる。
これによって、被写体のほぼ正確な実際の長さ情報を得ることができ、メジャーや比較対象物等を用いることなく、任意の対象物の長さを計測することが可能となる。
【0026】
そして、ラインセンサ411による一次元画像データの取り込みは、スキャン長センサ42の出力にもとづき、所定の長さ毎に連続的に行うようにしている。
ラインセンサ411による画像データの取り込みタイミングを等間隔にすることにより、ラインセンサ411の長手方向と垂直方向の長さデータを失わないようにするとともに、二次元データ生成手段により再現する原稿の画像の品質を向上し、安定させることができる。
なお、ラインセンサ411による画像データの取り込み開始は、所定のキー入力にもとづきスキャンを開始させるほか、キー入力にもとづきスキャン開始準備を行った上でスキャン長センサ42の出力に応じて自動的にスキャンを開始するようにしてもよい。
【0027】
次に、図3を参照して、ラインセンサモジュール41が備えられる下側筐体1B内のより具体的な構成について説明する。
図3は、本実施形態のスキャナ内蔵携帯通信端末1下側筐体1B内部を示す要部断面側面図である。
同図に示すとおり、本実施形態のスキャナ内蔵携帯通信端末1における下側筐体1Bには、折り畳み内面には操作キー21が備えられるとともに、操作キー21の底面側には、操作キー21を照明するためのキー照明30が備えられている。このキー照明30は、暗い場所や夜間での使用のためのものであり、携帯通信端末において一般的に用いられているものである。
【0028】
そして、本実施形態においては、スキャン対象となる原稿を照明するためキー照明30との間に導光部31を設け、キー照明30をスキャン用の照明として利用できるようにしている。これにより、専用の照明が不要となるため、装置のコストを低減することができるようになる。
導光部31は、下側筐体1Bに備えられる操作キー21を照明するバックライト光源等からなるキー照明30(図3参照)を利用して、キー照明30の照明光をラインセンサモジュール41の走査面に導く導光手段となっている。
【0029】
このような導光部31を備えることで、携帯通信端末1のダイヤルキー等の操作キー21のバックライト等のキー照明30が備えられる場合に、このキー照明30の照明光を本実施形態に係るラインセンサ411の走査面を照らすスキャナ用光源として利用することができる。
ここで、導光部31は、例えば透明な樹脂でできており、光の入射面、出斜面を除いて、導光している光が外に漏れないように反射コーティング(アルミコーティング等)されていることが望ましく、導光部31の出射部には拡散板311を取り付け、照明ムラを低減させるようにすることが望ましい。
【0030】
ラインセンサモジュール41は、ラインセンサ411とレンズアレイ412を搭載するモジュールであり、原稿等の撮像対象からの拡散光をラインセンサ411上に結像するように配置されている。
ここで、上述した導光部31やラインセンサ411は、導光部31からの照明光が直接ラインセンサ411に入らないようにするとともに、撮像対象からの正反射光もセンサに入らないように配置し、被写体からの拡散光を効率的に吸収するようにしてある。照明光や正反射光がセンサに入射すると、より輝度の低い読み取り対象面の画像情報は埋もれてしまい、正確な画像情報が得られなくなるからである。
【0031】
レンズアレイ412は、取り込んだ画像をラインセンサ411上に結像させる結像手段であり、例えば、その結像倍率は1対1、つまり、読み取り対象面からレンズアレイ412まで距離とレンズアレイ412からラインセンサ411までの距離を同じくするようにして配置する。
このような構成とすることにより、係る構成部分の小型化が可能となり、携帯通信端末に適したラインセンサモジュール41を実現することができる。
【0032】
なお、レンズアレイ412を有しない場合は、コストを低減することができるが、スキャン対象面の像をセンサ面に投影するわけではないため、スキャン対象面の輝度や色情報が隣接する位置の情報と混じり、画像の分解能が劣化する可能性がある。また、この分解能を劣化させないために、スキャン対象面とセンサアレイを密着させる方法も考えられるが、スキャン対象面を照明することができなくなるため、相当な隙間を空ける必要がある。
【0033】
なお、ラインセンサ411の走査面を照らす光源としては、上述したようなキー照明30を利用する他、例えば、図6に示すように、スキャン専用の光源を搭載する構成としてもよい。
具体的には、図6に示すように、LEDアレイ30A等の専用光源は、ラインセンサの走査面を線状に照明できるように、ライン状に設置する。
LEDアレイ30Aの設置に関しては、導光部の場合と同様、照明ムラを低減するために拡散板311を設け、また、照明光が直接ラインセンサに入らないように考慮するとともに、撮像対象の原稿等からの正反射光を吸収しないように配置する。
【0034】
LEDの数や配置間隔は、拡散板311との関係上、LEDアレイ30Aの長手方向の照明ムラが目立たない程度、又は、所定以下のムラに抑えられる数や間隔であればよい。
このような専用光源を設ける場合には、LED等の構成が必要になるが、導光部31が省略できるとともに、キー照明30を備えない端末にも本発明に係るスキャン装置を適用できるというメリットがある。
【0035】
次に、以上のような構成からなる本実施形態のスキャナ内蔵携帯通信端末の制御系について、図4を参照しつつ説明する。
図4は、本実施形態のスキャナ内蔵携帯通信端末の制御系の構成を示すブロック図である。
同図に示すように、携帯通信端末1の制御部10は、端末筐体内に備えられるマイクロプロセッサ等で構成され、バス90を介して各構成部(20〜80)を一元的に制御する制御手段である。
【0036】
この制御部10によって、以下の各部が制御され、所定の機能・動作を行うようになっている。
操作キー21は、テンキーやファンクションキーなどの操作ボタンのことであり、ダイヤル操作やメール入力操作のみならず、スキャンの開始又は終了を所定のキー押下により制御することが可能である。
キー入力部20は、操作キー21からの入力情報を受け付ける入力回路である。
キー照明30は、本来、夜間等に操作キー21を照明するためのものであるが、特に、本実施形態においては、導光部31を通してラインセンサモジュール41(スキャン面)を照明する役割も担っている。
【0037】
ラインセンサモジュール41は、主に、ラインセンサ411、レンズアレイ412により構成されるモジュールである。
このうち、レンズアレイ412は対象となる原稿を等倍の縮尺でラインセンサ411上に結像させる役割をもつ。
また、ラインセンサ411は、レンズアレイ412を介して得た原稿の画像を入力し、所定の電気信号(画像データ)に変換し、出力する役割をもっている。
【0038】
ROM50は、制御部10が制御を行うためのプログラムを格納する読み出し専用の記憶媒体であり、特に本実施形態においては、スキャンの開始から終了迄に至る画像取り込みに関して必要な制御プログラムや、取り込んだ画像データの表示・保存・送信等に係るプログラム等を格納する。
RAM60は、制御部10がプログラムを円滑に実施する上で必要とされるデータを一時的に格納させておく記憶媒体であり、読み出しと書き込みの両方が可能である。
本実施形態の場合、例えば、スキャン中の画像データを一旦RAM60に記憶した後に、スキャン終了後に表示部に表示させたるなど、短時間におけるワークエリアとして用いることが一般的である。なお、画像データを長時間保存する場合は図示しない他の記憶媒体(ハードディスクその他の記憶メディア)に格納することも可能である。
【0039】
表示部70は、制御部10からの命令にもとづき、LCD等からなる主(正面)ディスプレイ71又は副(背面)ディスプレイ72に必要な情報を表示させるものである。具体的には、電話・メール等の操作に必要な一般的表示機能だけでなく、例えば、スキャン中の画像をリアルタイムに表示させる機能やスキャンした画像を拡大・縮小させる機能等を持たせることも可能である。
通信部80は、主に電話機能とメール機能を備えており、図示しないアンテナにより、近くの基地局を介して他の通信端末との通信を可能とするものである。
【0040】
本実施形態においては、上述したメール機能を利用して、スキャンした画像データを無線により他の装置・端末等に送信したり、USBその他のインターフェースを介して優先により送信してもよい。
また、スキャンした画像データは、取り込むたびに、すなわち、各ライン毎にディスプレイに表示しつつそのまま他の装置・端末等に送信してもよいが、スキャン終了までメモリに蓄積し、スキャン終了後にまとめて送信するようにしてもよい。画像データをまとめて送信する場合には、いったんGIF、JPEG等の圧縮ファイル形式に変換してから送信するようにしてもよい。
さらに、画像データとともに、画素当たりの長さ、スケール等のデータ(長さ情報)を同時に相手先に送信してもよい。
【0041】
次に、以上のような本実施形態のスキャナ内蔵携帯通信端末における画像取り込み方法の手順について、図5を参照しつつ説明する。
図5は、本発明の一実施形態に係るスキャナ内蔵携帯通信端末における画像取り込み手順を示したフローチャートである。
同図に示すように、所定の操作(例えば、操作キーの押下)により、スキャンが開始されると、まず、スキャン面に接している原稿等の撮像対象に対して照明が行われる(S1)。本実施形態では、上述したように、導光部31を介してキー照明30の光源が照明として利用される。
また、スキャン長センサ42の起動を行い、スキャン長測定の準備を行う(S2)。
【0042】
次に、携帯通信端末1をラインセンサ411の配列方向と直行する方向に移動させ、対象となる原稿等の画像を取り込む(S3)。
具体的には、利用者は、携帯通信端末1を原稿上で手動で滑らせることによって連続した複数の一次元画像データを取得し、これらを合成して二次元の画像データにする。このとき、画像取り込みのタイミングは、スキャン長センサ42から得られるスキャン長に対応させ、一定間隔ごとに行う。
これにより、手動による影響(副走査速度の不均一による画質のズレ等)を極力抑え、一定の品質を確保できるようになっている。
なお、スキャンの間隔を小さくするほど、一原稿当たりの主走査の回数が多くなるため、高品質の画像データを取得できる。
【0043】
S3により取り込まれた画像は逐次ディスプレイに表示させる(S4)。これにより、取り込み画像をリアルタイムに確認しながらスキャン操作を行うことができる。
以上の動作を、対象となる原稿のすべての画像データを取得するまで、スキャンを続け(S3、S4、S5)、すべての画像データを取得すると(S5のNO)、利用者は、そのデータの処理(保存・送信)について必要な選択を行うことができる。
具体的には、取得した画像データを保存するのか否か(S6、S7)、他の装置等に転送するのか否か(S8、S9)を、利用者の判断により選択、実行することができる。
【0044】
以上説明したように、本実施形態のスキャナ内蔵携帯通信端末1によれば、所定の画像センサを直線上に配列し、これを画像センサの配列方向と垂直方向に移動させながら連続的に一次元画像データを取り込み、これを合成することによって対象物全体の画像データを読み取り、再現することができる。
このため、原稿等の撮像対象に対し携帯通信端末1を手動で滑らせるだけで、必要な二次元画像情報を容易に取得し、当該画像情報を加工・送信・出力等の任意の方法で利用することができる。特に、携帯通信端末1が備える通信手段を介して他の装置に画像データを送信することで、利用範囲が格段に広がることになる。
【0045】
そして、本実施形態では、対象物の二次元画像データを取得するラインセンサ411及びライン長センサ42を、携帯通信端末1の折り畳み式筐体の折り畳み側外面に配設することにより、折り畳み式の端末筐体を展開し、主ディスプレイ71を上面、すなわち対象物の撮像面と同一方向に向けた状態で、所望の撮像対象面をラインセンサ411及びライン長センサ42によって走査することができ、かつ、その走査画像を上面に向いた主ディスプレイ71上に表示することができる。
これによって、操作者は、携帯通信端末1を手動走査して、主ディスプレイ71に表示されるラインセンサ411の走査画像を確認しながら、撮像対象の走査処理・読み取り処理が行えるようになり、任意の対象物の二次元画像データを容易かつ正確に取得することが可能となる。
従って、二次元的な広がりを持つ撮像対象物、例えば、書類や原稿、地図、写真などについても、ディスプレイに表示されるスキャン画像を確認しながらスキャン処理を行うことができ、品質の高い、安定した二次元画像データを取得することができる。
【0046】
また、このようにラインセンサで取得された画像データを即座にディスプレイで確認できることによって、据え置き型の専用のスキャナ装置のように、画像を確認するためにパーソナルコンピュータ等に接続して表示させる必要がなく、また、データの整理もその場でできるため、利便性を向上させることが可能である。
しかも、画像データを表示するためのディスプレイは、携帯通信端末に通常備えられている液晶表示装置等からなるディスプレイをそのまま利用することができるため、既存の携帯電話機等に直ちに適用することができ、汎用性・拡張性に優れたスキャナ内蔵携帯通信端末を低コストで実現することができる。
【0047】
以上、本発明のスキャナ内蔵携帯通信端末について、好ましい実施形態を示して説明したが、本発明にかかるスキャナ内蔵携帯通信端末は、上述した実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更実施が可能であることは言うまでもない。
例えば、上述した実施形態では、本発明を適用可能な携帯通信端末の可動式筐体として、折り畳み式筐体を例にとって説明したが、本発明に係る携帯通信端末を構成する可動式筐体としては、折り畳み式の他、回転式(レボルバー式)やユニバーサルジョイント式(主ディスプレイを回転させて外面・内面の両側に向けることができる筐体)など、上側筐体と下側筐体とが展開・収納可能に連結される構造のものであればよい。
また、上述した実施形態では、本発明が適用される通信端末として携帯電話機やPHS端末を例にとって説明したが、本発明は、スキャナ機能を備える情報通信端末であればどのようなものにも適用することが可能であり、通信方式や端末構成等によって制約を受けるものではない。
従って、携帯電話機やPHSに限らず、例えばPDAや携帯型PC,次世代携帯端末等、どのような通信端末に対しても本発明を適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、携帯電話機端末やPHS端末等の小型の携帯通信端末に好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の一実施形態に係るスキャナ内蔵携帯通信端末の斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るスキャナ内蔵携帯通信端末の側面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るスキャナ内蔵携帯通信端末の内部側面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係るスキャナ内蔵携帯通信端末のブロック図である。
【図5】本発明の一実施形態に係るスキャナ内蔵携帯通信端末の画像取り込み手順を示すフローチャートである。
【図6】本発明の一実施形態に係るスキャナ内蔵携帯通信端末において、スキャナ専用照明を搭載した場合の内部側面図である。
【符号の説明】
【0050】
1 スキャナ内蔵携帯通信端末
21 操作キー
30 キー照明
31 導光部
41 ラインセンサモジュール
411 ラインセンサ
412 レンズアレイ
42 スキャン長センサ
71 主(正面)ディスプレイ
72 副(背面)ディスプレイ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部と無線通信可能な携帯通信端末であって、
上側筐体と下側筐体とが展開・収納可能に結合されてなる可動式筐体を備えるとともに、
所定の撮像対象の一次元の画像データを取得するラインセンサと、
前記ラインセンサの前記画像データの一次元走査方向と直行する方向の移動距離を検出するスキャン長センサと、
前記ラインセンサが前記画像データの一次元走査方向と直行する方向に移動されることにより得られる複数の一次元画像データを、前記スキャン長センサで検出される移動距離に基づいて合成して二次元の画像データを生成する二次元データ生成手段と、
前記ラインセンサによって取得された一次元画像データ、又は前記二次元データ生成手段によって合成された二次元画像データを表示するディスプレイと、を備え、
前記ディスプレイが、前記可動式筐体の収納時内面側に配設されるとともに、
前記ラインセンサ及びスキャン長センサが、前記可動式筐体の収納時外面側に配設されることを特徴とするスキャナ内蔵携帯通信端末。
【請求項2】
撮像対象に対向し、当該撮像対象の画像を前記ラインセンサ上に結像させるレンズアレイを備える請求項1記載のスキャナ内蔵携帯通信端末。
【請求項3】
前記下側筐体の収納時内面側にダイヤルキーその他の操作キーが配設されるとともに、前記上側筐体の収納時内面側に前記ディスプレイが配設され、
前記ラインセンサが、前記下側筐体の収納時外面側に配設される請求項1又は2記載のスキャナ内蔵携帯通信端末。
【請求項4】
前記ラインセンサの走査面を照らす照明手段を備える請求項3記載のスキャナ内蔵携帯通信端末。
【請求項5】
前記照明手段が、
前記下側筐体に配設される、前記操作キーを照明するキー照明と、当該キー照明の照明光を前記ラインセンサの走査面に導く導光部とからなる請求項4記載のスキャナ内蔵携帯通信端末。
【請求項6】
前記二次元データ生成手段によって生成された二次元画像データを、通信回線を通じて外部に送信する通信手段を備える請求項1乃至5のいずれか一項記載のスキャナ内蔵携帯通信端末。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−34919(P2008−34919A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−202932(P2006−202932)
【出願日】平成18年7月26日(2006.7.26)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】