説明

スキージ研磨装置用電着砥石

【課題】電着砥石の研磨面に研磨カスが付着し難いスキージ研磨装置用電着砥石を提供する。
【解決手段】スクリーン印刷機のスキージを研磨するスキージ研磨装置に用いられ、軸線2回りに回転駆動される砥石軸に装着される円盤状の台金部3と、台金部3の外周面6に電着された砥粒を含む砥粒層10と、を有するスキージ研磨装置用電着砥石1である。台金部3の外周面6には、軸線2に対して傾斜し、砥粒を有しない複数の傾斜溝8が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクリーン印刷機のスキージを研磨するスキージ研磨装置に用いられる電着砥石に関する。
【背景技術】
【0002】
スクリーン印刷機においては、精密な印刷処理を確保するためには、スキージ下端縁が印刷テーブル上面に対して平行になっていなければならない。そして、印刷処理の継続に伴いスキージが摩耗するため、スキージ研磨装置を用いて適宜スキージを研磨し、スキージ下端縁の印刷テーブル上面に対する平行性を確保している。このスキージ研磨装置において、スキージを研磨するには、ダイヤモンド砥粒等を台金に電着した電着砥石が用いられるのが一般的である。
【0003】
この電着砥石を用いたスキージ研磨装置として、例えば、特許文献1に記載されたスキージ研磨装置が知られている。このスキージ研磨装置では、ダイヤモンド砥粒を台金に電着した電着砥石によりスキージが研磨される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−114239号公報(図1、段落番号0023〜25)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1記載のスキージ研磨装置の電着砥石によりスキージを研磨すると、電着砥石の研磨面に研磨カスが付着するのを避けることができない。そして、この付着した研磨カスによりスキージの研磨効率が下がるのみならず、研磨精度が低下してスキージ下端縁の印刷テーブル上面に対する十分な平行性の確保ができなくなる虞がある。
【0006】
本発明はかかる従来の問題点に鑑みてなされたものであり、電着砥石の研磨面に研磨カスが付着し難いスキージ研磨装置用電着砥石を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、請求項1に係るスキージ研磨装置用電着砥石の特徴は、スクリーン印刷機のスキージを研磨するスキージ研磨装置に用いられるスキージ研磨装置用電着砥石において、軸線回りに回転駆動される砥石軸に装着される円盤状の台金部と、該台金部の外周面に電着された砥粒を含む砥粒層と、を有するスキージ研磨装置用電着砥石であって、該台金部の該外周面には、該軸線に対して傾斜し、該砥粒を有しない複数の傾斜溝が形成されていることである。
【0008】
請求項2に係るスキージ研磨装置用電着砥石の特徴は、請求項1において、前記傾斜溝は、前記軸線に対して5度以上、30度以下の傾斜角で傾斜していることである。
【0009】
請求項3に係るスキージ研磨装置用電着砥石の特徴は、請求項1又は2において、隣り合う前記傾斜溝は、前記軸線に対して互いに反対方向に傾斜していることである。
【0010】
請求項4に係るスキージ研磨装置用電着砥石の特徴は、請求項1乃至3のうちのいずれか1項に記載のスキージ研磨装置用電着砥石において、前記台金部の直径は8.0cm以上、12.0cm以下であり、前記傾斜溝の幅は2.5mm以上、3.5mm以下であり、該傾斜溝の深さは1.5mm以上、2.5mm以下であることである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係るスキージ研磨装置用電着砥石においては、砥粒を有しない複数の傾斜溝が台金部の外周面に形成されているため、電着砥石の研磨面により研磨された研磨カスが傾斜溝に入り易い。そして、傾斜溝が軸線に対して傾斜していることから、電着砥石の回動に伴って、この研磨カスは傾斜溝から電着砥石の外に排出され易くなる。したがって、このスキージ研磨装置用電着砥石よれは、電着砥石の研磨面に研磨カスが付着し難い。これにより、スキージの研磨効率が上がるのみならず、研磨精度が向上してスキージ下端縁の印刷テーブル上面に対する十分な平行性が確保できる。なお、砥粒層に電着される砥粒としては、ダイヤモンド又は立方晶窒化硼素等が用いられる。
【0012】
請求項2に係るスキージ研磨装置用電着砥石においては、傾斜溝が軸線に対して5度以上、30度以下の傾斜角で傾斜しているため、効率よく研磨カスを電着砥石の外に排出することができる。
【0013】
請求項3に係るスキージ研磨装置用電着砥石においては、隣り合う傾斜溝が軸線に対して互いに反対方向に傾斜しているため、台金部の外周面全体についてバランスよく研磨カスを電着砥石の外に排出することができる。
【0014】
請求項4に係るスキージ研磨装置用電着砥石においては、発明者の鋭意研究により、スキージを効率よく研磨することができる台金部の直径8.0cm以上、12.0cm以下の電着砥石の場合、傾斜溝の幅2.5mm以上、3.5mm以下、傾斜溝の深さ1.5mm以上、2.5mm以下であれば、効率よく研磨カスを電着砥石の外に排出することができることが判明した。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施形態のスキージ研磨装置用電着砥石を用いたスキージ研磨装置の正面概要図。
【図2】実施形態のスキージ研磨装置用電着砥石の全体図。
【図3】実施形態のスキージ研磨装置用電着砥石の外周面の図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係るスキージ研磨装置用電着砥石を具体化した実施形態を図面に基づいて以下に説明する。図1は、この電着砥石を用いたスキージ研磨装置の正面概要図である。
【0017】
図1に示すように、このスキージ研磨装置は、ベース90と、スキージ92を取付けて固定させる取付け台91と、スキージ92の長手方向に垂直な軸線2回りに回動しつつ、スキージ92の長手方向に移動する電着砥石1とを備えている。
【0018】
取付け台91は、図面左右方向を長手方向として、ベース90に固着されている。ウレタンゴム製のスキージ92は、この取付け台91に図面前後より挟持されて、取付けられ固定される。また、電着砥石1は、軸線2回りに回転駆動される砥石軸95に装着される。そして、電着砥石1は、Xスライダ93及びZスライダ94により所望の位置に移動可能にされている。Xスライダ93は、ベース90に配設された駆動源(図示なし)により紙面左右方向Aに移動可能にされている。また、Zスライダ94は、Xスライダ93に配設された駆動源(図示なし)により紙面上下方向Bに移動可能にされている。さらに、電着砥石1は、Zスライダ94に配設された駆動源(図示なし)により砥石軸95の回動方向Cに回動可能にされている。これにより、Zスライダ94を駆動して電着砥石1を所定の高さにし、電着砥石1を回動しつつXスライダ93を駆動して電着砥石1を左右方向Aに移動させれば、スキージ92を研磨することができる。
【0019】
なお、Xスライダ93を検出する左右2個の限界スイッチ(図示なし)により、電着砥石1を左右方向Aに移動させる範囲が決定される。本実施形態においては、この限界スイッチとしてリミットスイッチが用いられているが、この他、近接スイッチ、フォトセンサ等を用いてもよい。スキージ研磨装置の制御装置(図示なし)には、スキージ研磨プログラムがロードされており、スキージ研磨装置の前面に配置された操作パネル(図示なし)上のスキージ研磨スイッチを押すと、スキージ研磨プログラムに従ってスキージが研磨される。
【0020】
図2及び図3に示すように、電着砥石1は、砥石軸95に装着される円盤状の台金部3と、台金部3の外周面6に電着された砥粒を含む砥粒層10とを有している。本実施形態においては、この砥粒としてダイヤモンドを用いているが、このほか立方晶窒化硼素等を用いてもよい。
【0021】
台金部3はアルミニウムからなる円盤状(φ99mm)をなし、軸線2に垂直であるとともに互いに平行な側面4、5と、側面4、5の外周に形成された外周面6とを有している。また、台金部3の中心部には、砥石軸95が嵌合される軸孔7が側面4、5を貫通して開けられている。軸孔7に砥石軸95が嵌合されることにより、電着砥石1が砥石軸95に装着される。なお、スキージ92を効率よく研磨できる電着砥石1の台金部3の直径は、8.0cm以上、12.0cm以下である。
【0022】
台金部3の外周面6には、側面4から側面5まで、複数の傾斜溝8が凹設されている。傾斜溝8には、ダイヤモンドからなる砥粒は含まれない。このような砥粒が含まれない傾斜溝8は、側面4、5及び傾斜溝8に絶縁テープを貼付、又は絶縁塗料を塗布した後、台金部3の外周面6にダイヤモンドからなる砥粒を電着させる既知の方法を用いることにより形成される。また、本実施形態においては、傾斜溝8の幅は3.0mmであり、深さは2.0mmであるが、幅2.5mm以上、3.5mm以下、傾斜溝の深さ1.5mm以上、2.5mm以下であることが望ましい。
【0023】
図3に示すように、傾斜溝8は、軸線2に対して傾斜角θだけ傾斜しており、側面4から側面5まで連続して直線状に凹設されている。本実施形態においては、この傾斜角θは15度であるが、5度以上30度以下が望ましい。また、隣り合う傾斜溝8は、軸線2に対して反対方向に傾斜して凹設されている。
【0024】
実施形態に係るスキージ研磨装置用電着砥石においては、砥粒を有しない複数の傾斜溝8が砥粒層10に形成されているため、電着砥石1の研磨面により研磨された研磨カスが傾斜溝8に入り易い。そして、傾斜溝8が軸線2に対して傾斜していることから、電着砥石1の回動に伴って、この研磨カスは傾斜溝8から電着砥石1の外に排出され易くなる。したがって、このスキージ研磨装置用電着砥石よれは、電着砥石1の研磨面に研磨カスが付着し難い。これにより、スキージ92の研磨効率が上がるのみならず、研磨精度が向上してスキージ92の下端縁の印刷テーブル上面に対する十分な平行性が確保できる。なお、砥粒層10に電着される砥粒としては、ダイヤモンド又は立方晶窒化硼素等が用いられる。
【0025】
また、このスキージ研磨装置用電着砥石においては、傾斜溝8が軸線2に対して傾斜角θ(15度)で傾斜しているため、効率よく研磨カスを電着砥石1の外に排出することができる。
【0026】
さらに、このスキージ研磨装置用電着砥石においては、隣り合う傾斜溝8が軸線2に対して互いに反対方向に傾斜しているため、台金部3の外周面6全体についてバランスよく研磨カスを電着砥石1の外に排出することができる。
【0027】
また、このスキージ研磨装置用電着砥石においては、台金部3の直径が99mmであり、傾斜溝8の幅が3.0mmであり、傾斜溝8の深さが2.0mmであるため、効率よく研磨カスを電着砥石の外に排出することができる。
【0028】
以上、本発明のスキージ研磨装置用電着砥石を実施形態に即して説明したが、本発明はこれらに制限されるものではなく、本発明の技術的思想に反しない限り、適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0029】
1…スキージ研磨装置用電着砥石(電着砥石)、2…軸線、3…台金部、4、5…側面、6…外周面、7…軸孔、8…傾斜溝、10…砥粒層、90…ベース、91…取付け台、92…スキージ、93…Xスライダ、94…Zスライダ、95…砥石軸、θ…傾斜角


【特許請求の範囲】
【請求項1】
スクリーン印刷機のスキージを研磨するスキージ研磨装置に用いられるスキージ研磨装置用電着砥石において、 軸線回りに回転駆動される砥石軸に装着される円盤状の台金部と、該台金部の外周面に電着された砥粒を含む砥粒層と、を有するスキージ研磨装置用電着砥石であって、 該台金部の該外周面には、該軸線に対して傾斜し、該砥粒を有しない複数の傾斜溝が形成されていることを特徴とするスキージ研磨装置用電着砥石。
【請求項2】
請求項1において、 前記傾斜溝は、前記軸線に対して5度以上、30度以下の傾斜角で傾斜していることを特徴とするスキージ研磨装置用電着砥石。
【請求項3】
請求項1又は2において、 隣り合う前記傾斜溝は、前記軸線に対して互いに反対方向に傾斜していることを特徴とするスキージ研磨装置用電着砥石。
【請求項4】
請求項1乃至3のうちのいずれか1項に記載のスキージ研磨装置用電着砥石において、
前記台金部の直径は8.0cm以上、12.0cm以下であり、前記傾斜溝の幅は2.5mm以上、3.5mm以下であり、該傾斜溝の深さは1.5mm以上、2.5mm以下であることを特徴とするスキージ研磨装置用電着砥石。







【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2013−31902(P2013−31902A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−169032(P2011−169032)
【出願日】平成23年8月2日(2011.8.2)
【出願人】(000219783)東海精機株式会社 (18)
【出願人】(000219772)東海商事株式会社 (21)
【Fターム(参考)】