説明

スクリュ圧縮機

【課題】スクリュロータやモータの発熱を抑え、スクリュロータの熱変形によるスクリュロータ同士、スクリュロータとケーシングの接触を防止し、モータの減磁現象を防止する。
【解決手段】互いに噛合する雌雄一対のスクリュロータ2のロータ軸と該スクリュロータを駆動するモータ7のロータ軸を一体にしてなるスクリュ圧縮機1において、ロータ軸10の軸端に軸中心上に穴24a,24b,25a,25bを穿設し、該穴24a,24b,25a,25bにヒートパイプ26を挿入し、該ヒートパイプ26の凝縮部をロータ軸10の軸端に位置させて、ヒートパイプ26の凝縮部を油で冷却する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクリュ圧縮機、特にオイルフリースクリュ圧縮機のスクリュロータの冷却構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1〜4に示すような、互いに噛合する雌雄一対のスクリュロータのうちの一方のスクリュロータのロータ軸(通常は雄ロータ軸)と、該ロータ軸を駆動するモータ軸とを一体に形成したスクリュ圧縮機が公知である。このスクリュ圧縮機では、ロータ軸とモータ軸が一体であるため、モータロータの発熱で発生した熱がモータ軸及びロータ軸を介してスクリュロータに伝わり、スクリュロータが発熱する。また圧縮仕事によるスクリュロータ自身の発熱も生じる。これにより、スクリュロータが熱変形し、雌雄一対のスクリュロータ同士、スクリュロータとケーシングが接触し、最も深刻な場合には圧縮機が故障する。また、圧縮スクリュロータの発熱により、圧縮すべき空気が加熱され、性能が低下する。さらに、モータロータの発熱により永久磁石の磁力が弱くなる(減磁)現象が生じる。
【0003】
そこで、特許文献2では、モータケーシングの外周を包囲する冷却ジャケットを設けてモータを液冷するものが提案されているが、この冷却ジャケットでは、モータロータの冷却には有効でない。
【0004】
また、スクリュロータ軸とモータ軸が直結していないスクリュ圧縮機では、スクリュロータ軸を中空にし、その中空部分に油を供給してスクリュロータを冷却することも実施されている。しかし、この方法は、スクリュロータ軸とモータ軸が直結した高速スクリュ圧縮機では、軸が長くて中空軸とする加工が困難であるため、採用することができない。また、スクリュロータ軸とモータ軸が一体になった軸は、熱が逃げにくいという問題があった。
【特許文献1】特開2002−122084号公報
【特許文献2】特開2004−343857号公報
【特許文献3】特開2002−235685号公報
【特許文献4】特許第3668616号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、スクリュロータやモータの発熱を抑え、スクリュロータの熱変形によるスクリュロータ同士、スクリュロータとケーシングの接触を防止することができるとともに、モータの減磁現象を防止することができるスクリュ圧縮機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明は、互いに噛合する雌雄一対のスクリュロータのロータ軸と前記スクリュロータを駆動するモータのロータ軸を一体にしてなるスクリュ圧縮機において、前記ロータ軸の軸端に軸中心上に穴を穿設し、該穴にヒートパイプを挿入し、該ヒートパイプの凝縮部を前記ロータ軸の軸端に位置させて、前記ヒートパイプの凝縮部を油で冷却するようにした。
【0007】
このスクリュ圧縮機では、スクリュロータやモータで発生した熱は、ロータ軸を介してヒートパイプの蒸発部に入熱され、ヒートパイプ内に封入された作動液体を蒸発させる。蒸発した作動液体はロータ軸の軸端に位置するヒートパイプに凝縮部に移動し、ここで凝縮部の周囲の油に放熱し、凝縮する。凝縮した作動液体は蒸発部に環流し、この動作を繰り返す。このように、スクリュロータやモータで発生した熱は、ヒートパイプを介してロータの軸端に移動し、油を介して放熱される。
【0008】
前記ヒートパイプの蒸発部を前記スクリュロータ内に位置させると、スクリュロータで発生する熱をヒートパイプに入熱することができる。
【0009】
前記ヒートパイプの蒸発部を前記モータロータ内に位置させると、モータロータで発生する熱をヒートパイプに入熱することができる。
【0010】
前記ヒートパイプの凝縮部を前記ロータ軸の軸受に近接させ、該軸受に供給する冷却油で冷却することが好ましい。このようにすると、ヒートパイプの凝縮部の冷却に軸受け用の冷却油を利用することができ、別個のヒートパイプ凝縮部冷却用の油を供給する必要がなく、構造が簡単となる。
【0011】
前記ヒートパイプの凝縮部側端部にフランジを設け、該フランジをスクリュロータの軸端に固定することが好ましい。このようにすると、ヒートパイプの作動流体から受ける熱がフランジを介して油に効率よく放熱される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、スクリュロータやモータで発生した熱がヒートパイプを介してロータの軸端に移動し、油を介して放熱されるので、スクリュロータやモータの発熱を抑えることができ、スクリュロータの熱変形によるスクリュロータ同士、スクリュロータとケーシングの接触を防止することができるとともに、モータの減磁現象を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に従って説明する。
【0014】
図1は本発明の第1実施形態にかかるスクリュ圧縮機1を示す。このスクリュ圧縮機1はオイルフリー圧縮機で、互いに噛合する1対の雄ロータ2aと雌ロータ2bからなるスクリュロータ2がロータケーシング3に収容されている。ロータケーシング3の一端はカバー4で閉塞され、ロータケーシング3の他端には、ロータ(回転子)5とステータ(固定子)6からなるモータ7を収容するモータケーシング8が取り付けられている。モータケーシング8の端部もカバー9で閉塞されている。スクリュロータ2の雄ロータ2aとモータ7のロータ5は、一体に形成されたロータ軸10を有し、軸を共有している。ロータ軸10のスクリュロータ側端部は、ロータ側ころがり軸受11によりロータケーシング3に支持され、ロータ軸10のスクリュロータ2とモータ7の中間部は中間ころがり軸受け12によりロータケーシング3に支持され、さらにロータ軸10のモータ側端部はモータ側ころがり軸受け13によりモータケーシング8に支持されている。雌ロータ2bのロータ軸14の両端はころがり軸受け15,16によりロータケーシング3に支持されている。雄ロータ2aの軸端と雌ロータ2bの軸端にはそれぞれタイミングギヤ17,18が固着され、該タイミングギヤ17,18は互いに噛合している。ロータケーシング3には、図示しないガスの吸込口と吐出口が形成されている。また、ロータケーシング3とモータケーシング8には、各ころがり軸受11,12,13、15,16を冷却する油を供給する油供給口21,22,23が形成されている。
【0015】
雄ロータ2aのロータ軸10の両端には、軸中心上に穴24a,24bが形成され、雌ロータ2bのロータ軸14の両端にも軸中心上に穴25a,25bが形成されている。雄ロータ2aの反モータ側の穴24aは、雄ロータ2aの吐出部近辺まで延び、モータ側の穴24bは、モータ7のロータ5を突き抜けた近辺にまで延びている。雌ロータ2bの反モータ側の穴25aは、雌ロータ2bの吐出部近辺まで延び、モータ側の穴25bは、雌ロータ2aの近傍まで延びている。各ロータ軸10,14の穴24a,24b,25a,25bには、それぞれヒートパイプ26が挿入されている。ヒートパイプ26は、例えば管体の内壁にワイヤやメッシュからなるウィックを設けて内部に作動液体を封入したものを使用することができる。各ヒートパイプ26は、一端の凝縮部26bがロータ軸10,14の軸端に位置している。ヒートパイプ26の端部にはフランジ27が取り付けられ、該フランジ27はロータ軸10,14の軸端に固定することで、ヒートパイプ26は、ロータ軸10,14に一体に回転するように取り付けられている。
【0016】
なお、ヒートパイプ26は、フランジ27による取り付けに限るものではなく、接着やねじによって取り付けたり、穴24a,24b,25a,25bをカバーで閉じてヒートパイプ26が脱落しないようにする等、種々の方法で取り付けることができる。
【0017】
以上の構成からなるスクリュ圧縮機1では、モータ7の駆動によりロータ軸10を介して雄ロータ2aが回転し、さらにタイミングギヤ17,18を介して雌ロータ2bが回転する。雌雄のロータ2a,2bの回転により、図示しない吸込口から雌雄ロータ2a,2bの閉込空間に吸い込まれたガスが圧縮され、図示しない吐出口から吐出される。
【0018】
雌雄のロータ2a,2bの圧縮仕事により特に吐出部(スクリュロータ2のモータ7から遠い側の部分)で生じる熱は、図2に示すように、ヒートパイプ26の蒸発部26aに入熱され、ヒートパイプ26内に封入された作動液体を蒸発させる。蒸発した作動液体はロータ軸10の軸端に位置するヒートパイプ26の凝縮部26bに移動し、ここで凝縮部26bの周囲の軸受け冷却用の油に放熱し、凝縮する。凝縮した作動液体は蒸発部26aに戻り、この動作を繰り返す。同様に、モータ7のロータ5で発生する熱は、ヒートパイプ26の蒸発部26aに入熱され、ヒートパイプ26内に封入された作動液体を蒸発させる。蒸発した作動液体はロータ軸10の軸端に位置するヒートパイプ26の凝縮部26bに移動し、ここで凝縮部26bの周囲の軸受け冷却用の油に放熱し、凝縮する。凝縮した作動液体は蒸発部26aに戻り、この動作を繰り返す。雌ロータ2bのロータ軸14のモータ側の穴25bに設けたヒートパイプ26は、軸受16で発生する熱を放熱することができる。
【0019】
このように、スクリュロータ2で発生した熱、及びモータ7で発生した熱は、ヒートパイプ26を介してロータ軸10の軸端に移動し、油を介して放熱されるので、スクリュロータ2の発熱を抑えることができ、モータ7のロータ5発熱がスクリュロータ2に伝わるのを有効に防止することができる。
【0020】
これにより、オイルフリー圧縮機において圧縮行程に冷却剤を使用することなくスクリュロータ2の冷却をすることができる。そして、スクリュロータ2の変形による雌雄ロータ2a,2bの接触を防止することができ、スクリュロータ同士、スクリュロータとケーシングの接触を防止することができる。また、モータ7のロータ5の発熱を抑えることができ、減磁現象を防止することができる。また、圧縮ガス自体の温度上昇も抑えることができ、圧縮機としての性能低下を防止することができる。
【0021】
図3は、本発明の第2実施形態にかかるスクリュ圧縮機1’を示す。このスクリュ圧縮機1’は、雄ロータ2aのロータ軸10に前記第1実施形態と同様にヒートパイプ26を設け、雌ロータ2bのロータ軸14’は長さが短いので、ヒートパイプ26を設けないかわりに、貫通穴28を有する中空軸とし、カバー4からチューブ29を介して内部に雌ロータ2bの冷却用油を流通させるようにしたものであり、その他の構造は第1実施例と同様であるため、同一符号を附して説明を省略する。
【0022】
この第2実施形態においても、モータ7のロータ5で発生した熱、及び雄ロータ2aで発生した熱は、ヒートパイプ26を介してロータ軸10の軸端に移動し、油を介して放熱される。また、雌ロータ2bで発生した熱は、ロータ軸14’の貫通穴28内の油を介して直接放熱される。このため、第2実施形態においても、第1実施形態と同様の作用効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1実施形態にかかるスクリュ圧縮機の断面図。
【図2】スクリュロータからの熱の移動を示す図。
【図3】本発明の第2実施形態にかかるスクリュ圧縮機の断面図。
【符号の説明】
【0024】
1,1’ スクリュ圧縮機
2 スクリュロータ
2a 雄ロータ
2b 雌ロータ
5 ロータ
7 モータ
10,14 ロータ軸
24a,24b 穴
25a,25b 穴
26 ヒートパイプ
27 フランジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに噛合する雌雄一対のスクリュロータのロータ軸と前記スクリュロータを駆動するモータのロータ軸を一体にしてなるスクリュ圧縮機において、前記ロータ軸の軸端に軸中心上に穴を穿設し、該穴にヒートパイプを挿入し、該ヒートパイプの凝縮部を前記ロータ軸の軸端に位置させて、前記ヒートパイプの凝縮部を油で冷却することを特徴とするスクリュ圧縮機。
【請求項2】
前記ヒートパイプの蒸発部を前記スクリュロータ内に位置させたことを特徴とする請求項1に記載のスクリュ圧縮機。
【請求項3】
前記ヒートパイプの蒸発部を前記モータロータ内に位置させたことを特徴とする請求項1に記載のスクリュ圧縮機。
【請求項4】
前記ヒートパイプの凝縮部を前記ロータ軸の軸受に近接させ、該軸受に供給する冷却油で冷却することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のスクリュ圧縮機。
【請求項5】
前記ヒートパイプの凝縮部側端部にフランジを設け、該フランジをスクリュロータの軸端に固定したことを特徴とする請求項1から4のいずれかの記載のスクリュ圧縮機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−192046(P2007−192046A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−8685(P2006−8685)
【出願日】平成18年1月17日(2006.1.17)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】