スクリーン印刷機およびそれを用いる印刷方法
【課題】
スクリーン印刷機の密閉スキージにおいて、無駄な範囲のペースト供給、およびローリング印刷による、ペースト溶剤成分の揮発や特性劣化による、印刷品質、およびペースト廃棄問題を同時に解決する。
【解決手段】
ペースト1をスキージ4で移動しつつローリングしながら、スクリーン版2の開口孔2aを介し、プリント基板3に印刷するスキージユニット10において、相対向したスキージ4を一対配置し、そのスキージ4の内側に、スキージ4と密着直交でスライド可能な、一対の相対向した仕切板21と、さらにスキージ4と並行方向に、支軸11とレール12を設け、前記仕切板21を移動することができる構成とする。
スクリーン印刷機の密閉スキージにおいて、無駄な範囲のペースト供給、およびローリング印刷による、ペースト溶剤成分の揮発や特性劣化による、印刷品質、およびペースト廃棄問題を同時に解決する。
【解決手段】
ペースト1をスキージ4で移動しつつローリングしながら、スクリーン版2の開口孔2aを介し、プリント基板3に印刷するスキージユニット10において、相対向したスキージ4を一対配置し、そのスキージ4の内側に、スキージ4と密着直交でスライド可能な、一対の相対向した仕切板21と、さらにスキージ4と並行方向に、支軸11とレール12を設け、前記仕切板21を移動することができる構成とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は印刷工程で使用する、印刷材料(例えばはんだペーストや導電ペースト)を被印刷物(例えばプリント基板)に印刷する、スクリーン印刷機およびそれを用いる印刷方法に関するものである。
【0002】
実装基板の製造工程で使用するスクリーン印刷機は、印刷対象部位に応じて開口されたスクリーン版(マスクともいう)をプリント基板(基板ともいう)上に密着し、クリームはんだ(ペーストともいう)をスキージングすることで、ローリング(回転運動)をしながらスキージの押し込み力により、マスクの開口孔にペーストを充填し、基板ランド上にペーストを印刷する装置である。
【0003】
ペーストは金属粉末やロジン、および活性剤や溶剤など、種々成分の混合物からなり非常に不安定な材料で、温度・湿度条件や作業環境管理の他に、低温保存や使用時の常温戻しと攪拌で、粘度やチキソ性など特性を初期化することが必要、さらにペースト印刷条件として大気における特性劣化対策も重要である。
【0004】
しかし、一般的に製造は1日2交代の16時間または、3交代24時間の稼動で、ペーストはマスク上に載せられると大気中に長時間さらされ、繰り返しのスキージングすなわち、ペーストのローリングで溶剤の揮発や酸化による特性劣化は避けられない。このためペーストが大気中の温度や湿度に影響し、粘度変化や活性力低下となり、ペースト印刷時にカスレやにじみなど印刷不良、およびリフロー加熱時のブリッチや溶融不良によるはんだボール発生が、電子部品電極と基板ランド間ではんだ接続不良の品質問題となっている。
【0005】
この解決手段、およびが環境問題の鉛レスはんだ対応として、スクリーン印刷機に密閉型スキージ(スキージユニットともいう)を備えたものが提案され、例えば、特許文献1では密閉スキージに回転機構を設けた構造の印刷ヘッド、特許文献2では密閉スキージの回転機構と、さらにペースト分離機能を設けた構成の印刷機、特許文献3ではペースト供給部一体の密閉スキージ搭載印刷機、特許文献4はスキージとペースト供給部一体の、加圧式密閉スキージヘット搭載印刷機について記載され、また非特許文献1には各種密閉型スキージ構造の特徴、およびペースト粘度変化の比較など業界動向を含めた内容が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−80671公報
【特許文献2】特開2004−335810公報
【特許文献3】特開2002−234133公報
【特許文献4】特開2006−175692公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】「<最新>スクリーン印刷利用技術」、2009年5月出版、第3節スキージの構造・種類・特性及びメカニズム第260頁から第263頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、上記従来の密閉型スキージにおいては、特許文献1はスキージとマスク間のノッキング防止で、進行方向前スキージをマスクよりわずかに浮かす回転機構を設けた構造で密閉度不足があり、特許文献2はさらにスキージ回転機構とペースト分離機能を設けた構成により、密閉度不足と構造の複雑さで装置コストアップとなっている。特許文献3はペースト自動供給装置一体などの構造上、一方向の印刷となりタクトタイムが長い生産性問題、および清掃やメンテナンスの作業性問題がある。特許文献4は圧入型の密閉スキージのため、ペーストのフラックス分離問題と、ペーストの包装形態が専用のため攪拌や混練出来ない問題がある。さらに特許文献1から特許文献4の共通問題では、ペーストローリング幅が固定のため、密閉空間が広く基板外側の、印刷不必要部分まで無駄なペーストの供給、および時間経過による溶剤揮発などによるペースト劣化となり、文献のような構成では、ペースト劣化防止対策に不足がある。
【0009】
尚、開放型スキージでガイド付き採用の印刷機もあるが、密閉スキージでないため溶剤揮発によるペースト劣化問題が大きく、同時にペーストローリング幅が固定で調整できないため、ローリング幅方向において、基板外側すなわち印刷不必要範囲のマスク上まで、無駄なペーストの供給、およびローリング印刷する構成のため、供給後の不要箇所残留ペーストは充填印刷に供されず、マスク上で繰り返しローリングされながら長時間の経過による、ペースト加速劣化の問題がある。
【0010】
以下に不要なペースト供給、および印刷について説明する。マスク上に供給されたペーストは、スキージングによりローリングされながら、印刷部分のペーストはマスク開口孔に充填印刷で消費されるが、非印刷部分すなわち不要箇所のペーストは、印刷消費されないままマスク上に残留し繰り返しのローリングで、徐々に溶剤の揮発による粘度変化で特性劣化が進行し、結果印刷条件の悪化で品質およびペースト廃棄問題となる。
【0011】
次に、図11を用いて従来の密閉スキージ61の構造における、ペーストの詳細な流動メカニズムを説明する。図11(A)の平面説明図で示すとおり、ペースト1は密閉スキージ61の長さ方向全体へ供給され、マスク2の上をローリング印刷されるが、印刷されない基板3両外側の矢印M範囲のペースト1は、ローリングのみを繰り返すことになる。また図11(B―1)内の断面図で示すように、密閉スキージ61内の長さ方向全体にペースト1が供給され、且つ密閉大気空間Kは広く、図11(B−2)に示すペースト1の印刷消費後、基板3外側の劣化ペーストHoは、長時間にわたり大気空間Kにさらされ、その後矢印Hのように基板側へ巻き込まれながら印刷されることになる。
【0012】
また、近年電子機器製品の小型化による高密度基板対応の、はんだ粉末の超微細化で、ペーストの酸化劣化がしやすい条件や、すでに周知の環境対応の鉛レスペースト導入取組みが、ペースト酸化劣化の加速原因となり、印刷品質の悪化や多量(約2から3割)のペースト廃棄など、業界では大きな問題となっているが、これらの解決手段である上記文献の密閉型スキージ搭載印刷機では上述のような課題があった。
【0013】
そのため、本発明はこのような従来スクリーン印刷機の密閉型スキージ構成が、有していた不具合を除去することであり、印刷中を含めてペーストを常に最小密閉空間に保ち、且つ、必要部分のみのローデング印刷する装置と方法で、略基板サイズ範囲を印刷する調整機構を設けた、シンプルな構造で、メンテナンスや清掃の作業性が良く、さらにマスク上供給ペーストの印刷消費サイクルタイムを大幅に改善し、ペースト寿命を延ばすと共に、ペースト廃棄問題の大幅改善を可能としたスクリーン印刷機およびそれを用いる印刷方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、本発明のスクリーン印刷機のスキージユニットは、進行方向の前後に一対のスキージと、そのスキージの間に直交する向きに一対の仕切板と、スキージ上部並行に上ホルダーとを設け、スキージと仕切板と上ホルダーおよび、前記スクリーン版で囲まれる、密閉部を形成できる構造としたことを第1の特徴とし、前記スキージユニットにおいて、スキージの先端部がL字形状の構造としたことを第2の特徴とする。
【0015】
さらに本発明の印刷方法は、進行方向の前後に一対のスキージと、そのスキージの間に直交する向きに一対の仕切板と、スキージの上部並行に溝型の上ホルダーとを設け、スキージと仕切板と上ホルダー、および前記スクリーン版で囲まれる密閉部が必要最小になるように、前記仕切板を調整し印刷作業を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
以上の説明で明らかなように、本発明にあっては以下の効果が得られる。
(1)一対のスキージで回転機構、およびペースト分離機構が無く、両方向の印刷ができ
るシンプルな構造により、メンテナンスや清掃の作業性が良く、タクトタイムが短く設備含めた生産性の向上が図れる。
(2)仕切板の作用による印刷幅、および位置調整機構により、無駄なペーストの供給防止と、最適なペーストローリング幅で、効率の良いペースト充填印刷(ペースト消費)ができる。
(3)移動可能な仕切板とスキージなどより構成のスキージユニットにより、必要最小限の密閉空間形成ができ、溶剤の揮発防止の効果が飛躍的に改善でき、ペースト有効使用率と印刷品質の向上が図れる。
【0017】
以上のように、本発明のスクリーン印刷機およびそれを用いる印刷方法により、ペースト粘度変化や活性力低下などが起因する、印刷品質およびペースト廃棄問題が大幅改善できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の1実施例の説明に用いる印刷ヘッドの断面概略図。
【図2】本発明のスクリーン印刷機の構成と動作を説明の概略図。
【図3】実施例1の印刷ヘッドの斜視概略図。
【図4】実施例1の印刷ヘッドの側面略図(A)および底面略図(B)。
【図5】実施例1の上ホルダーの斜視略図。
【図6】実施例1のガイド部の斜視図(A)および仕切板の斜視略図(B)。
【図7】本発明の印刷ヘッド組立およびスクリーン印刷機への組み込み工程図。
【図8】実施例2のスキージユニットの断面概略図(A)およびL型スキージのペーストローデング状態拡大図(B)。
【図9】実施例2のスキージユニットの側面説明図(A)、および底面略図(B)。
【図10】本発明の印刷時ペースト状態の平面説明図(A)、およびスキージユニット内ペースト状態の断面説明図(B)。
【図11】従来密閉型スキージの印刷時ペースト状態の平面説明図(A)、および密閉型スキージ内ペースト状態の断面説明図(B)。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施例を図1〜図11を用いて詳細に説明する。尚、以下に述べる実施形態は、本発明の好適な具体例であるから、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限りこれらの形態に限られるものではない。
【実施例1】
【0020】
本発明の1実施形態によるスクリーン印刷機100、およびそれを用いる印刷方法を図に基づいて説明する。図2においてスクリーン印刷機100はペースト1をプリント基板3に、スキージ4aまたは,スキージ4bでペースト1をスキージング、すなわちローリングしながら、マスク2の開口孔2aに充填印刷する装置で、印刷ヘッド50はペースト1の供給装置30とスキージユニット10から構成され、そのスキージユニット10は上ホルダー15と、スキージ4a・4bと仕切板21、およびマスク2で囲また密閉部5を形成し、図6に示すガイド部20は、外側へのペースト1広がりを防止する仕切板21と、その仕切板21の移動手段である支軸11、およびレール12を設けた構造である。
【0021】
尚、スクリーン版2は基板3のランドにペースト1を選択的に印刷する際に、マスクとして使用されるもので、基板3の種類に応じて、様々な開口孔2aを有したマスク2を使用することができる。またペースト1は反応性が高い活性剤、およびロジンや溶剤などの混合物のため、溶剤の揮発よる粘度変化含め酸化しやすい物性で、さらに温度により粘度変化を生じる性質があり、印刷機を含めた作業環境(温度・湿度・粉塵など)の管理も重要で、ペースト1の特性・性能は印刷品質に大きく影響する。
【0022】
次に図1を用いて本発明の印刷ヘッド50の概要を説明する。印刷ヘッド50は矢印方向へのスキージング印刷状態を示し、マスク2上のペースト1をスキージング、すなわちローリングかきとりで、ペースト1の充填印刷をする機構のスキージユニッ10と、その上部に、スキージユニッ10とマスク2で形成する密閉部5へ、ペースト1を補充する供給装置30を設けた構成である。
【0023】
また、スキージユニット10は図3に示すように、板状のスキージ4aとスキージ4bが、上ホルダー15にハの字に向い合い固定され、さらに印刷位置と幅を調整する仕切板21と、その仕切板21の保持移動部を有するガイド部20、および上ホルダー15と、中継フレーム40に供給容器30の装着固定部31Kで構成されている。
【0024】
その詳細は台形状の仕切板21が、図4(B)のようにスキージ4へ直交する向きで、互いに向かい合って設けられ、さらにペースト仕切板21の移動手段として、支軸11とレール12がスキージ4の内側平行に設けられ、図3の上ホルダー15下部に示すような、スキージユニット10の構造で、長さは例えば図10(A)のマスク(スクリーン版)2の大きさに近い長さである。
【0025】
ガイド部20はスキージユニット10内に配設され、図6で示すように支軸孔22と、上部にスライド金具23を有した仕切板4と、さらに支軸11とレール12が保持板13に両端を固着された移動手段からなり、その移動手段に仕切板21が組み込まれた構造で、仕切板21は手で自在に支軸と直交移動が可能な、ペースト1の印刷位置と幅の調整機構である。
【0026】
ここでガイド部20と上ホルダー15の着脱機構について説明する。前記、保持板13は上部に、上ホルダー15に仮止めされたGねじ14の頭を、図5に示す上ホルダー15のスリット孔18と18sに勘合し、長手方向にシフトしGねじ14を締付け固定できる構造の、上ホルダー15とガイド部20の着脱は非常に簡単な機構で、スキージユニット10の清掃、およびメンテナンスの煩雑さも無く作業性が良く、また分解はGねじ14Gを緩め上述の逆手順の作業で容易にできる。
【0027】
次に図4と図7にてスキージユニット10の組立と、印刷ヘッド50組み込み作業の手順を詳細に説明する。先ず第1工程で上ホルダー15にスキージ4をSねじ16で仮固定し、第2工程で上ホルダー15にガイド部20をGねじ14で仮固定、第3工程で仕切板21を基板3に対応するよう印刷幅と位置を調整後、第4工程でガイド部20仮固定の上ホルダー15を、スキージ4を下向きで平台の上に載置し、第5工程で上ホルダー15を押さえスキージ4先端と、仕切板21の下端面を平台に密着させ、第6工程で上ホルダー15を押さえながら、スキージ4の固定ねじS16を最終締付け固定、第7工程でスキージユニット10に、中継フレーム40をバランスねじ43でバネ44を介して仮固定し、第8工程でスキージユニット10に、ペースト供給容器アッセンブリ31を取り付け後、最終の第9工程で印刷ヘッド50を印刷機100と連結、印圧バランス調整と条件出し、およびねじ43を最終締付け組立終了後、供給装置50の圧力手段36のロット29Rとピストン35を連結する。組み立てや組み込み調整などの作業は、以上の手順に準じて行われるが、印刷終了後の分解は逆手順で簡単な作業となる。
【0028】
尚、上ホルダー15と中継フレーム40の取り付けは、図4、図5で示すようにバランスねじ43で、上ホルダー15のF孔19とバネ44を介し、中継フレーム40に取り付け固定されるが、バランスねじ43はスキージ4および仕切板21と、マスク2間に密着、圧力バランを微調整する重要な機構のため、図示しないダブルナットで固定される。
【0029】
スキージ4は図3で示すように板状の硬質樹脂のデルリン材で、好ましくは板厚5〜10mmで、上ホルダー15とのスキージ固定孔(図示なし)を上下対称に設け、スキージ4の磨耗時に裏表逆、および上下逆の4エッチ(角)を繰返し使用できる構造で、さらに研磨での使用も可能な形状で、スキージ寿命を長くできるが、下方2箇所の未使用孔をねじ、またはテープで塞ぐことが好ましい。
【0030】
また、デルリン材はウレタンゴムやシリコンゴムと異なり、金属のような硬質樹脂で滑りやすい材質のため、図1に示すように右方向スキージング時でも、進行方向前の右スキージ4bはマスク2との間に隙間無し密着でも、マスク2との摩擦によるノッキングを起こすことは無く、なめらかに密着移動できる。またメタルスキージのようなマスク2の傷や、ウレタンゴムやシリコンゴム材の欠点である、印刷時のペースト1えぐり問題も発生しない。
【0031】
尚、仕切板4もデルリン材が好しく、板厚5〜10mmでマスク2接触面を内くり抜き形状にすることで、マスク2接触面との摩擦力が軽減できる。さらにマスク間の摩擦軽減策としてSUS材使用で、且つマスク2面への傷対策として、2〜5mm幅で曲げ角度略90度(例えば90.5〜92度)、および向かい合せ曲げ方向のツバを設け、且つ仕切板21の進行前後の突起部に、微小のR(例えば0.4〜1R)R付き構造でも同様の効果がある。
【0032】
図2は本発明のスクリーン印刷機100の構成を示す概略図である。以下、印刷方法とペースト1の印刷仕組みを説明する。先ずスキージユニット10を前述の手順で準備し、供給容器下方のマスク2の面上にペースト1を補給後、印刷ヘッド50を下降し、マスク2面上にスキージ4直交方向に、移動手段で密着水平移動することにより、スキージユニット10密閉部5のペースト1を、スキージ4aでローリングしながらマスク2開口孔2aに充填し、その後のマスク2の版離れにより、基板3上にペースト1の転写印刷ができる。
【0033】
図1を用いてスキージユニット10の動作、および機能を説明する。先ずマスク2面上に印刷ヘッド50を下降し、マスク2の上面にスキージ4a・4bと、仕切板21の下端部を密着させると、スキージユニット10の下部は、マスク2面で塞がれ密閉部5が形成され、その次にスキージ4をマスク2に押しつつ水平移動することで、ペースト1がマスク2の開口孔2aに順次充填される。この時ペースト1がスキージ4の長さ方向外側に拡がろうとするが、仕切板21が基板幅外側、すなわち不要エリアへのペース1流動広がりを防止し、同時に無駄なペースト1の供給を防ぎ、同時に印刷エリア以外の劣化ペースト1の巻き込み問題も防止する。その結果、印刷が必要な最小幅でのローリング印刷、および密閉部5内のペースト1は外気から遮断でき、溶剤の揮発が大幅に抑制され粘度変化や特性劣化、および塵埃が付着することもなくペーストの活性力が保たれる。
【0034】
次に具体的な印刷前の調整条件出し、および準備とテスト印刷について説明する。印刷機100はスキージ4の印刷開始点、および印刷終了点を、図2に示すセンサー57aと、57bの位置調整で、またスキージユニット10は、図6(A)に示すガイド部20の仕切板21を、基板3幅と印刷の位置調整を行い、ペースト1のローリング印刷位置と、幅および長さ、すなわち印刷範囲の条件設定が終了する。
【0035】
量産スタート前のテスト印刷は、先ずペースト1を冷蔵庫より取り出し、常温戻しおよび攪拌後、供給容器32下のマスク2面上へ、適正量(ローリング高さ約10〜20mm)のペースト1をヘラで補給し、前述の手順で自動供給用ペースト、および供給容器アッセンブリ31を準備装着し、ピストン35と圧力手段29を連結する。次に印刷ヘッド50を下降し、マスク2面との密着状態を確認しながら、スキージ4圧力バランスの微調整後、図3に示すバランスねじ43を固定する。その後2〜3枚テスト印刷を行い、印刷条件出しと印刷品質の確認後、量産印刷をスタートする。尚、作業開始前のマスク2面上への適正量ペースト1補給は、自動供給装置30によるマニュアル操作でも良いが、時間効率の点で手作業が好ましい。
【0036】
印刷機条件はペースト1の特性などにより異なるが、スキージスピード10〜30mm/秒、およびスキージ圧力(印圧ともいう)0.3〜0.5kgf/cm2が好ましく、スキージング中のペースト1のローリング径は、10mm〜30mmが望ましい条件であるが、スキージ角度は印刷材料や用途により異なり、マスク面水平位置より約45〜65度(好ましくは50〜60)で、ユニットホルダー15と仕切板21をスキージ条件など目的別に分けるのが好ましい。
【0037】
次に図2を用いてスクリーン印刷機100の量産時の動作を説明する。テスト印刷含めた準備が終了し、量産の印刷をスタートすると基板3がスクリーン印刷機100に搬入され、制御部42とシリンダー51の作用にて、基台52が上昇しマスク2裏面へ基板3が密着、またスキージ4と仕切板21のスキージ4面の下端部も、マスク2面に密着状態となり、モータ54とh送りねじ55とhナット56からなる水平移動機構により、スキージユニット10のスキージ4と仕切板21が、マスク2面に接しながら右方向へ移動し、最適な印圧と適正な仕切板21位置で、ペースト1は基板3サイズの範囲を、スキージ4aによりペースト1を適正ローリングしながら、マスク2の開口孔2aに充填し、その次に基板3が基台51とともに下降する時の、基板3とマスク2の版ばなれ作用で、ペースト1が転写され右方向の印刷が終了する。尚、図1、図2は右方向への印刷状態を示す図である。
【0038】
その後、右方向の印刷が終了し基板3が搬出されると、次の基板3が再び搬入され上昇しマスク2裏面に密着、今度はヘッド50が左方向に移動、右スキージ4bにてペースト1は左方向のローリングにより、同様にマスク2の開口孔2aを介して、ペースト1は基板3のランドに印刷される。尚、印刷ヘッド50の水平方向移動は、印刷開始点と印刷終了点のセンサー位置の制御により最短移動をする。
【0039】
ここで図10および図11にて、本発明と従来密閉型スキージの、印刷時のペースト状態について説明する。先ず本発明図10(A)が示すように、マスク2上でのペースト1のローリング範囲は仕切板21内となり、また図10(B―1)に示すようにペースト1の供給範囲は、仕切板21の外側には供給されず、略基板3サイズ幅でローリング連続印刷されペースト1の消費後は、矢印の(B―2)に示すように狭い空間Kが保たれ、溶剤の揮発が抑制されたペース1が効率良く消費され、次のペースト1補給で再び矢印の(B―1)に戻り、量産ではその動作を繰返しの印刷作業となるが、作業終了時の劣化がすくない残ペースト1は容器に回収し後日再使用が可能である。
【0040】
一方、従来の密閉型スキージは、図11(A)平面図に示すように印刷時ペースト状態は、基板3外側Mの被印刷範囲までローリングされる。また図11(B―1)密閉スキージ内の断面説明図に示すように、仕切板21がないため密閉スキージ61内の長手方向全幅にペースト1が供給され、且つ、ペースト1の上部の大気空間Kは広く溶剤は揮発しやすく、その条件の連続印刷でペースト1が消費される。結果は次の矢印(B―2)に示すように時間経過で、連続印刷消費後の基板3外側ペーストHoは、長時間ローリング中大気空間Kにさらされ、徐々にではあるが溶剤の揮発劣化ペーストHoが基板3側へ巻き込まれ、次のペースト補給で矢印の(B―1)に戻り、量産印刷はその動作の繰返しになる。しかし印刷消費の途中から劣化ペーストHoは、図11(B―2)に示す点線矢印Hのように、基板3サイズ内印刷エリアのペースト1に巻き込まれることになり、特に鉛レスの高密度基板では印刷品質不良や、作業終了時の残ペーストHo廃棄が大きな問題となる。
【0041】
供給装置30は、図1示すように底部に吐出孔33を有したペースト容器32の上開口部に、ピストン35が勘合され、その容器32は補強カバー36に納められた供給容器アッセンブリ31と、図3に示すように中継フレーム40には、内径が容器カバー36径より数mm(約2〜3mm)大きい孔が設けられた固定部31Kと、図2に示すような圧力手段29および、脱着可能なアダプター付き加圧ピストン35で構成されている。尚、圧力手段29の駆動は公知の空圧や油シリンダー、およびモータなどのアクチュエーターでピストン35の上下ができ、また容器アッセンブリ31は前記中継フレーム40に装着しNねじ31Nで固定、および圧力手段29とロッド29Rの連結を行う。
【0042】
供給装置30の基本動作は、圧力手段29の駆動力によりピストン35を押圧し、容器32内ペースト1が加圧され、容器32底部の吐出孔33から、上ホルダー15のペースト通過孔34を介し、スキージユニット10密閉部5へ供給する。尚、ペーストの自動供給は、スキージユニット10内の残量センサー37からの検知信号と制御部42の作用により、必要量のペースト1を供給する構成であるが、供給タイミングはペースト1の残量をレーザーセンサー37で感知し管理制御する方法以外に、基板3の印刷枚数を設定での管理制御する自動供給方法でも良い。
【0043】
ペースト1の特性は印刷品質に大きく影響するので重要な管理と注意が必要で、その理由はペースト1が酸化しやすい微粉末と、反応性が高い活性剤、およびロジンや溶剤などの混合物で科学的に不安定、且つ物理的にも繊細な性質で、メーカより納品されたペースト1は劣化防止の為に、約5±5℃の低温保管が必要で冷蔵庫にて保存管理される。また温度により粘度が大きく左右するので温度管理も重要である。
【0044】
ペースト1の粘度は溶剤の揮発問題以外に温度変化にも影響し、その要因により印刷品質に大きな問題となる。その理想的な対応策はクリーンルームの空調での制御方法であるが、膨大な経費がかかるので、好ましくは供給装置に温度調整機能を設ける。例えば供給容器のカバーに電子冷却素子(ペルチェ素子ともいう)を用いた、冷却機構(図示しない)の温度制御部を設け、電流のオンオフ制御の構成が好適である。また、容器1をカバー36と併用の、供給装置30専用の容器とするのがランニングコストの点で好ましく、ペースト1は使用前の常温戻し攪拌後、メーカ納品の容器より前記専用容器に、ヘラで移し替えて使用する方法がさらに好ましい。
【実施例2】
【0045】
実施例1はデルリン材のスキージ4使用で、スキージユニット10内部の仕切板21を、手でスライド調整する構成であったが、変化例としてメタルスキージは先端部に小さなL字形状を設け、また仕切板の位置調整は、スキージユニット10の外側より、手動でつまみを回す方法、およびモータで駆動する構成など、他の組み合わせでも同様の効果がある。またペースト粘度の温度変化対策は、実施例1の容器温度調整機能に併せて、さらにスキージユニット10に温度調整機能を設けるほうが望ましい。
【0046】
図8、図9を用いて具体的な実施例2について説明する。Lスキージユニット10Lの
L型スキージ4Lは、先端部が微小なL字形状の向き合う方向の構造と、仕切板の移動はスキージユニットの外側より調整する構成である。図8(A)は実施例2のスキージユニッ10L側面説明図で、図8(B)はL型スキージによるローデング状態を示す部分拡大図で、図9はスキージユニット10Lの側面図(A)と底面略図(B)である。尚、他のペースト供給部など実施例1と共通部分の説明は省略する。
【0047】
先ず、図8にてL型スキージ4Lについて説明する。L型スキージ4Lはスキージ片4Sが、スキージホルダー4hに図示しないねじで固定され、図8(B)に示すようにスキージ片4S先端はL形で数mmの曲がりを設けた構造で、且つマスク2側の端面はR付が好ましい。右側スキージ4Lは左側と逆向き曲がりで、両スキージ共にマスク2に密着しながら移動するが、図8(B)に示すようにスキージ片4Sは先端L字形で、端面R付形状の効果により、スキージユニット10L移動方向前側、例えば矢印Lの方向移動でもスキージ片4Sの、マスク2への食い込みや、ノッキング問題が発生しない。さらに先端をテフロン(登録商標)めっき処理することでさらに滑り効果が出る。尚、スキージホルダー4hの材質はアルミが好適で、温度調整機能を設けた構造では、スキージホルダー4hからスキージへの熱伝導効率の点でもさらに好ましい。
【0048】
また海外など空調環境が悪い地域や会社向けとして、容器底部に前記のペルチェ素子の温度調整機能を設け、さらに容器外周を断熱構造の併用構成にするのが好ましく、またスキージユニット10も温度調整機能を設けるとさらに好ましく、例えば上ホルダー15にペルチェ素子の温度調整機能を有し、材質は外側を熱伝導率が高くて軽量なアルミ材に、内側さらに熱伝導率が高い銅板の二重構造で、ペルチェ素子の吸熱側をユニット内の銅板側に、素子の放熱側を外のアルミ材の向きで内部へ埋め込む構造が好適で、上ホルダー15内側の冷却、および外側の放熱効率が共に良くなる。
【0049】
図8(B)を用いてスキージ片4Sの作用と特徴を説明する。スキージが矢印Rの右方向へ移動時のR部は、ペースト1のローリング作用をし、L部はローリングにより開口孔2aへ充填されたペースト1の掻き取り作用を行う。また逆のスキージ進行前側スキージ片4S、すなわち(B)図にて点線矢印L方向に移動時のL部は、滑らかなすべり作用をする。したがってスキージ片4S先端L部の作用はスキージの進行方向により異なる。またL部の掻き取り作用により、印圧を小さくできる特徴がある。
【0050】
スキージ片4Sの材質はSUSやリン青銅で、スキージ片4Sの先端はR付きが好ましく、滑らかな往復スキージングができる。またスキージ厚さ約0.2〜2mmが好ましく、0.5〜1mmにするとさらに好ましい。スキージ片4S先端の曲り部は、例えば先端長さ1〜3mmの、0.5〜1R付きで、進行方向の前部スキージのマスク2すべりが良く、ノッキング防止効果が向上する。
【0051】
次にスキージユニット10Lについて説明する。実施例1の仕切版21の支軸孔22の代わりにGナット25が固着され、L型スキージ4L面と接する仕切板21Lの端部は、特に高密度対応微粉末ペースト1の流出防止として、好ましくは弾性材24(例えばゴムやゲル材)のアダプターを設けた構造で、スキージ4Lと仕切板21Lの密着性を上げる構造が良く、またデルリン材の仕切板21LのGナッ25は、タップ孔の代用でも効果は同じである。
【0052】
ガイド部20と上ホルダー15の固定は、図8(A)で示すように保持板13上面と上ホルダー15間にバネ14を設けた機構の、仕切板21Lに下向きテンションを加えた構成で、マスク2間の密着性をアップとなりペースト1流出防止の効果が上がる。さらにスキージ2面と接するL形仕切板21Lの端面に弾性材を設け、対スキージ面間ペースト1流出防止の構造として好適で、また上ホルダー15と仕切板Lの隙間に、弾性材(例えばゲルシートやビニール)で塞ぐ構成(図示しない)が好ましい。
【0053】
図9(B)に示すように、仕切板21Lの移動手段は左右独立していて、送りねじ26の回転により仕切板21Lは、おのおの自在に移動できる構造で、送りねじ26は保持板13の外側でつまみ27が固着されている。また、仕切板21Lはつまみで手動による送りねじ26の回転力により、仕切板21LのGナット25を介し移動でき、ペースト1のローリング位置と幅の調整できる。尚、実施例1と異なる作業内容は、仕切板21Lをつまみ27の調整方法であるが、つまみ手動の代わりにモータ駆動する構造でも良い。
【0054】
また別の仕切板21の配設・調整変化例として、例えば左の仕切板は固定で、右側は図9(B)と応用に調整可能な構造や、基板などの被印刷物サイズが種類が少ない大型印刷機では、仕切板を上ホルダー数箇所の位置で着脱機構を、両側数箇所に設け調整する構造や、さらに前記のような片側のみ仕切板が着脱で、反対の仕切板は固定の構造、さらに両方の仕切板を被印刷物に適した幅で固定の構成でも同様の効果がある。
【0055】
以上、従来スクリーン印刷装置の密閉スキージ問題解手段として、印刷中を含めペーストを常に必要最小限の密閉状態に保ち、且つペースト1を必要部分のみ、すなわち略基板3サイズの範囲をローリング印刷する構成で、ペースト1の印刷消費タイムを大幅に短縮、およびペースト1寿命を延ばすことで、従来技術よりさらにペースト廃棄量を少なく改善できる。尚、本発明は上記実施形態に限定するものではなく、他の種々形態が実施可能である。
【産業上の利用可能性】
【0056】
はんだペースト以外の導電ペーストや接着材、および高粘度インクなど異なる印刷材料を、プリント基板以外の電子部品およびPDP、液晶パネルや太陽光パネルなど製造する産業の、大型スクリーン印刷機にも利用できる。尚、本発明実施例のペースト供給部は1箇所であるが、大型のスクリーン印刷機では必要に応じ、2箇所以上複数の供給部、すなわち供給装置の装着構成でも良い。尚、印刷材料は使用時に供給装置専用容器へ移して自動供給する方法もある。
【符号の説明】
【0057】
1 ペースト
2 マスク
2a 開口孔
3 基板
4 スキージ(4a、4b)
4S スキージ片
4L L型スキージ
5 密閉部
10 スキージユニット
10L Lスキージユニット
11 支軸
12 レール
15 上ホルダー
20 ガイド部
21 仕切板(21a、21b)
22 支軸孔
30 供給装置
40 中継フレーム
42 制御部
50 印刷ヘッド
100 スクリーン印刷
【技術分野】
【0001】
本発明は印刷工程で使用する、印刷材料(例えばはんだペーストや導電ペースト)を被印刷物(例えばプリント基板)に印刷する、スクリーン印刷機およびそれを用いる印刷方法に関するものである。
【0002】
実装基板の製造工程で使用するスクリーン印刷機は、印刷対象部位に応じて開口されたスクリーン版(マスクともいう)をプリント基板(基板ともいう)上に密着し、クリームはんだ(ペーストともいう)をスキージングすることで、ローリング(回転運動)をしながらスキージの押し込み力により、マスクの開口孔にペーストを充填し、基板ランド上にペーストを印刷する装置である。
【0003】
ペーストは金属粉末やロジン、および活性剤や溶剤など、種々成分の混合物からなり非常に不安定な材料で、温度・湿度条件や作業環境管理の他に、低温保存や使用時の常温戻しと攪拌で、粘度やチキソ性など特性を初期化することが必要、さらにペースト印刷条件として大気における特性劣化対策も重要である。
【0004】
しかし、一般的に製造は1日2交代の16時間または、3交代24時間の稼動で、ペーストはマスク上に載せられると大気中に長時間さらされ、繰り返しのスキージングすなわち、ペーストのローリングで溶剤の揮発や酸化による特性劣化は避けられない。このためペーストが大気中の温度や湿度に影響し、粘度変化や活性力低下となり、ペースト印刷時にカスレやにじみなど印刷不良、およびリフロー加熱時のブリッチや溶融不良によるはんだボール発生が、電子部品電極と基板ランド間ではんだ接続不良の品質問題となっている。
【0005】
この解決手段、およびが環境問題の鉛レスはんだ対応として、スクリーン印刷機に密閉型スキージ(スキージユニットともいう)を備えたものが提案され、例えば、特許文献1では密閉スキージに回転機構を設けた構造の印刷ヘッド、特許文献2では密閉スキージの回転機構と、さらにペースト分離機能を設けた構成の印刷機、特許文献3ではペースト供給部一体の密閉スキージ搭載印刷機、特許文献4はスキージとペースト供給部一体の、加圧式密閉スキージヘット搭載印刷機について記載され、また非特許文献1には各種密閉型スキージ構造の特徴、およびペースト粘度変化の比較など業界動向を含めた内容が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−80671公報
【特許文献2】特開2004−335810公報
【特許文献3】特開2002−234133公報
【特許文献4】特開2006−175692公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】「<最新>スクリーン印刷利用技術」、2009年5月出版、第3節スキージの構造・種類・特性及びメカニズム第260頁から第263頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、上記従来の密閉型スキージにおいては、特許文献1はスキージとマスク間のノッキング防止で、進行方向前スキージをマスクよりわずかに浮かす回転機構を設けた構造で密閉度不足があり、特許文献2はさらにスキージ回転機構とペースト分離機能を設けた構成により、密閉度不足と構造の複雑さで装置コストアップとなっている。特許文献3はペースト自動供給装置一体などの構造上、一方向の印刷となりタクトタイムが長い生産性問題、および清掃やメンテナンスの作業性問題がある。特許文献4は圧入型の密閉スキージのため、ペーストのフラックス分離問題と、ペーストの包装形態が専用のため攪拌や混練出来ない問題がある。さらに特許文献1から特許文献4の共通問題では、ペーストローリング幅が固定のため、密閉空間が広く基板外側の、印刷不必要部分まで無駄なペーストの供給、および時間経過による溶剤揮発などによるペースト劣化となり、文献のような構成では、ペースト劣化防止対策に不足がある。
【0009】
尚、開放型スキージでガイド付き採用の印刷機もあるが、密閉スキージでないため溶剤揮発によるペースト劣化問題が大きく、同時にペーストローリング幅が固定で調整できないため、ローリング幅方向において、基板外側すなわち印刷不必要範囲のマスク上まで、無駄なペーストの供給、およびローリング印刷する構成のため、供給後の不要箇所残留ペーストは充填印刷に供されず、マスク上で繰り返しローリングされながら長時間の経過による、ペースト加速劣化の問題がある。
【0010】
以下に不要なペースト供給、および印刷について説明する。マスク上に供給されたペーストは、スキージングによりローリングされながら、印刷部分のペーストはマスク開口孔に充填印刷で消費されるが、非印刷部分すなわち不要箇所のペーストは、印刷消費されないままマスク上に残留し繰り返しのローリングで、徐々に溶剤の揮発による粘度変化で特性劣化が進行し、結果印刷条件の悪化で品質およびペースト廃棄問題となる。
【0011】
次に、図11を用いて従来の密閉スキージ61の構造における、ペーストの詳細な流動メカニズムを説明する。図11(A)の平面説明図で示すとおり、ペースト1は密閉スキージ61の長さ方向全体へ供給され、マスク2の上をローリング印刷されるが、印刷されない基板3両外側の矢印M範囲のペースト1は、ローリングのみを繰り返すことになる。また図11(B―1)内の断面図で示すように、密閉スキージ61内の長さ方向全体にペースト1が供給され、且つ密閉大気空間Kは広く、図11(B−2)に示すペースト1の印刷消費後、基板3外側の劣化ペーストHoは、長時間にわたり大気空間Kにさらされ、その後矢印Hのように基板側へ巻き込まれながら印刷されることになる。
【0012】
また、近年電子機器製品の小型化による高密度基板対応の、はんだ粉末の超微細化で、ペーストの酸化劣化がしやすい条件や、すでに周知の環境対応の鉛レスペースト導入取組みが、ペースト酸化劣化の加速原因となり、印刷品質の悪化や多量(約2から3割)のペースト廃棄など、業界では大きな問題となっているが、これらの解決手段である上記文献の密閉型スキージ搭載印刷機では上述のような課題があった。
【0013】
そのため、本発明はこのような従来スクリーン印刷機の密閉型スキージ構成が、有していた不具合を除去することであり、印刷中を含めてペーストを常に最小密閉空間に保ち、且つ、必要部分のみのローデング印刷する装置と方法で、略基板サイズ範囲を印刷する調整機構を設けた、シンプルな構造で、メンテナンスや清掃の作業性が良く、さらにマスク上供給ペーストの印刷消費サイクルタイムを大幅に改善し、ペースト寿命を延ばすと共に、ペースト廃棄問題の大幅改善を可能としたスクリーン印刷機およびそれを用いる印刷方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、本発明のスクリーン印刷機のスキージユニットは、進行方向の前後に一対のスキージと、そのスキージの間に直交する向きに一対の仕切板と、スキージ上部並行に上ホルダーとを設け、スキージと仕切板と上ホルダーおよび、前記スクリーン版で囲まれる、密閉部を形成できる構造としたことを第1の特徴とし、前記スキージユニットにおいて、スキージの先端部がL字形状の構造としたことを第2の特徴とする。
【0015】
さらに本発明の印刷方法は、進行方向の前後に一対のスキージと、そのスキージの間に直交する向きに一対の仕切板と、スキージの上部並行に溝型の上ホルダーとを設け、スキージと仕切板と上ホルダー、および前記スクリーン版で囲まれる密閉部が必要最小になるように、前記仕切板を調整し印刷作業を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
以上の説明で明らかなように、本発明にあっては以下の効果が得られる。
(1)一対のスキージで回転機構、およびペースト分離機構が無く、両方向の印刷ができ
るシンプルな構造により、メンテナンスや清掃の作業性が良く、タクトタイムが短く設備含めた生産性の向上が図れる。
(2)仕切板の作用による印刷幅、および位置調整機構により、無駄なペーストの供給防止と、最適なペーストローリング幅で、効率の良いペースト充填印刷(ペースト消費)ができる。
(3)移動可能な仕切板とスキージなどより構成のスキージユニットにより、必要最小限の密閉空間形成ができ、溶剤の揮発防止の効果が飛躍的に改善でき、ペースト有効使用率と印刷品質の向上が図れる。
【0017】
以上のように、本発明のスクリーン印刷機およびそれを用いる印刷方法により、ペースト粘度変化や活性力低下などが起因する、印刷品質およびペースト廃棄問題が大幅改善できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の1実施例の説明に用いる印刷ヘッドの断面概略図。
【図2】本発明のスクリーン印刷機の構成と動作を説明の概略図。
【図3】実施例1の印刷ヘッドの斜視概略図。
【図4】実施例1の印刷ヘッドの側面略図(A)および底面略図(B)。
【図5】実施例1の上ホルダーの斜視略図。
【図6】実施例1のガイド部の斜視図(A)および仕切板の斜視略図(B)。
【図7】本発明の印刷ヘッド組立およびスクリーン印刷機への組み込み工程図。
【図8】実施例2のスキージユニットの断面概略図(A)およびL型スキージのペーストローデング状態拡大図(B)。
【図9】実施例2のスキージユニットの側面説明図(A)、および底面略図(B)。
【図10】本発明の印刷時ペースト状態の平面説明図(A)、およびスキージユニット内ペースト状態の断面説明図(B)。
【図11】従来密閉型スキージの印刷時ペースト状態の平面説明図(A)、および密閉型スキージ内ペースト状態の断面説明図(B)。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施例を図1〜図11を用いて詳細に説明する。尚、以下に述べる実施形態は、本発明の好適な具体例であるから、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限りこれらの形態に限られるものではない。
【実施例1】
【0020】
本発明の1実施形態によるスクリーン印刷機100、およびそれを用いる印刷方法を図に基づいて説明する。図2においてスクリーン印刷機100はペースト1をプリント基板3に、スキージ4aまたは,スキージ4bでペースト1をスキージング、すなわちローリングしながら、マスク2の開口孔2aに充填印刷する装置で、印刷ヘッド50はペースト1の供給装置30とスキージユニット10から構成され、そのスキージユニット10は上ホルダー15と、スキージ4a・4bと仕切板21、およびマスク2で囲また密閉部5を形成し、図6に示すガイド部20は、外側へのペースト1広がりを防止する仕切板21と、その仕切板21の移動手段である支軸11、およびレール12を設けた構造である。
【0021】
尚、スクリーン版2は基板3のランドにペースト1を選択的に印刷する際に、マスクとして使用されるもので、基板3の種類に応じて、様々な開口孔2aを有したマスク2を使用することができる。またペースト1は反応性が高い活性剤、およびロジンや溶剤などの混合物のため、溶剤の揮発よる粘度変化含め酸化しやすい物性で、さらに温度により粘度変化を生じる性質があり、印刷機を含めた作業環境(温度・湿度・粉塵など)の管理も重要で、ペースト1の特性・性能は印刷品質に大きく影響する。
【0022】
次に図1を用いて本発明の印刷ヘッド50の概要を説明する。印刷ヘッド50は矢印方向へのスキージング印刷状態を示し、マスク2上のペースト1をスキージング、すなわちローリングかきとりで、ペースト1の充填印刷をする機構のスキージユニッ10と、その上部に、スキージユニッ10とマスク2で形成する密閉部5へ、ペースト1を補充する供給装置30を設けた構成である。
【0023】
また、スキージユニット10は図3に示すように、板状のスキージ4aとスキージ4bが、上ホルダー15にハの字に向い合い固定され、さらに印刷位置と幅を調整する仕切板21と、その仕切板21の保持移動部を有するガイド部20、および上ホルダー15と、中継フレーム40に供給容器30の装着固定部31Kで構成されている。
【0024】
その詳細は台形状の仕切板21が、図4(B)のようにスキージ4へ直交する向きで、互いに向かい合って設けられ、さらにペースト仕切板21の移動手段として、支軸11とレール12がスキージ4の内側平行に設けられ、図3の上ホルダー15下部に示すような、スキージユニット10の構造で、長さは例えば図10(A)のマスク(スクリーン版)2の大きさに近い長さである。
【0025】
ガイド部20はスキージユニット10内に配設され、図6で示すように支軸孔22と、上部にスライド金具23を有した仕切板4と、さらに支軸11とレール12が保持板13に両端を固着された移動手段からなり、その移動手段に仕切板21が組み込まれた構造で、仕切板21は手で自在に支軸と直交移動が可能な、ペースト1の印刷位置と幅の調整機構である。
【0026】
ここでガイド部20と上ホルダー15の着脱機構について説明する。前記、保持板13は上部に、上ホルダー15に仮止めされたGねじ14の頭を、図5に示す上ホルダー15のスリット孔18と18sに勘合し、長手方向にシフトしGねじ14を締付け固定できる構造の、上ホルダー15とガイド部20の着脱は非常に簡単な機構で、スキージユニット10の清掃、およびメンテナンスの煩雑さも無く作業性が良く、また分解はGねじ14Gを緩め上述の逆手順の作業で容易にできる。
【0027】
次に図4と図7にてスキージユニット10の組立と、印刷ヘッド50組み込み作業の手順を詳細に説明する。先ず第1工程で上ホルダー15にスキージ4をSねじ16で仮固定し、第2工程で上ホルダー15にガイド部20をGねじ14で仮固定、第3工程で仕切板21を基板3に対応するよう印刷幅と位置を調整後、第4工程でガイド部20仮固定の上ホルダー15を、スキージ4を下向きで平台の上に載置し、第5工程で上ホルダー15を押さえスキージ4先端と、仕切板21の下端面を平台に密着させ、第6工程で上ホルダー15を押さえながら、スキージ4の固定ねじS16を最終締付け固定、第7工程でスキージユニット10に、中継フレーム40をバランスねじ43でバネ44を介して仮固定し、第8工程でスキージユニット10に、ペースト供給容器アッセンブリ31を取り付け後、最終の第9工程で印刷ヘッド50を印刷機100と連結、印圧バランス調整と条件出し、およびねじ43を最終締付け組立終了後、供給装置50の圧力手段36のロット29Rとピストン35を連結する。組み立てや組み込み調整などの作業は、以上の手順に準じて行われるが、印刷終了後の分解は逆手順で簡単な作業となる。
【0028】
尚、上ホルダー15と中継フレーム40の取り付けは、図4、図5で示すようにバランスねじ43で、上ホルダー15のF孔19とバネ44を介し、中継フレーム40に取り付け固定されるが、バランスねじ43はスキージ4および仕切板21と、マスク2間に密着、圧力バランを微調整する重要な機構のため、図示しないダブルナットで固定される。
【0029】
スキージ4は図3で示すように板状の硬質樹脂のデルリン材で、好ましくは板厚5〜10mmで、上ホルダー15とのスキージ固定孔(図示なし)を上下対称に設け、スキージ4の磨耗時に裏表逆、および上下逆の4エッチ(角)を繰返し使用できる構造で、さらに研磨での使用も可能な形状で、スキージ寿命を長くできるが、下方2箇所の未使用孔をねじ、またはテープで塞ぐことが好ましい。
【0030】
また、デルリン材はウレタンゴムやシリコンゴムと異なり、金属のような硬質樹脂で滑りやすい材質のため、図1に示すように右方向スキージング時でも、進行方向前の右スキージ4bはマスク2との間に隙間無し密着でも、マスク2との摩擦によるノッキングを起こすことは無く、なめらかに密着移動できる。またメタルスキージのようなマスク2の傷や、ウレタンゴムやシリコンゴム材の欠点である、印刷時のペースト1えぐり問題も発生しない。
【0031】
尚、仕切板4もデルリン材が好しく、板厚5〜10mmでマスク2接触面を内くり抜き形状にすることで、マスク2接触面との摩擦力が軽減できる。さらにマスク間の摩擦軽減策としてSUS材使用で、且つマスク2面への傷対策として、2〜5mm幅で曲げ角度略90度(例えば90.5〜92度)、および向かい合せ曲げ方向のツバを設け、且つ仕切板21の進行前後の突起部に、微小のR(例えば0.4〜1R)R付き構造でも同様の効果がある。
【0032】
図2は本発明のスクリーン印刷機100の構成を示す概略図である。以下、印刷方法とペースト1の印刷仕組みを説明する。先ずスキージユニット10を前述の手順で準備し、供給容器下方のマスク2の面上にペースト1を補給後、印刷ヘッド50を下降し、マスク2面上にスキージ4直交方向に、移動手段で密着水平移動することにより、スキージユニット10密閉部5のペースト1を、スキージ4aでローリングしながらマスク2開口孔2aに充填し、その後のマスク2の版離れにより、基板3上にペースト1の転写印刷ができる。
【0033】
図1を用いてスキージユニット10の動作、および機能を説明する。先ずマスク2面上に印刷ヘッド50を下降し、マスク2の上面にスキージ4a・4bと、仕切板21の下端部を密着させると、スキージユニット10の下部は、マスク2面で塞がれ密閉部5が形成され、その次にスキージ4をマスク2に押しつつ水平移動することで、ペースト1がマスク2の開口孔2aに順次充填される。この時ペースト1がスキージ4の長さ方向外側に拡がろうとするが、仕切板21が基板幅外側、すなわち不要エリアへのペース1流動広がりを防止し、同時に無駄なペースト1の供給を防ぎ、同時に印刷エリア以外の劣化ペースト1の巻き込み問題も防止する。その結果、印刷が必要な最小幅でのローリング印刷、および密閉部5内のペースト1は外気から遮断でき、溶剤の揮発が大幅に抑制され粘度変化や特性劣化、および塵埃が付着することもなくペーストの活性力が保たれる。
【0034】
次に具体的な印刷前の調整条件出し、および準備とテスト印刷について説明する。印刷機100はスキージ4の印刷開始点、および印刷終了点を、図2に示すセンサー57aと、57bの位置調整で、またスキージユニット10は、図6(A)に示すガイド部20の仕切板21を、基板3幅と印刷の位置調整を行い、ペースト1のローリング印刷位置と、幅および長さ、すなわち印刷範囲の条件設定が終了する。
【0035】
量産スタート前のテスト印刷は、先ずペースト1を冷蔵庫より取り出し、常温戻しおよび攪拌後、供給容器32下のマスク2面上へ、適正量(ローリング高さ約10〜20mm)のペースト1をヘラで補給し、前述の手順で自動供給用ペースト、および供給容器アッセンブリ31を準備装着し、ピストン35と圧力手段29を連結する。次に印刷ヘッド50を下降し、マスク2面との密着状態を確認しながら、スキージ4圧力バランスの微調整後、図3に示すバランスねじ43を固定する。その後2〜3枚テスト印刷を行い、印刷条件出しと印刷品質の確認後、量産印刷をスタートする。尚、作業開始前のマスク2面上への適正量ペースト1補給は、自動供給装置30によるマニュアル操作でも良いが、時間効率の点で手作業が好ましい。
【0036】
印刷機条件はペースト1の特性などにより異なるが、スキージスピード10〜30mm/秒、およびスキージ圧力(印圧ともいう)0.3〜0.5kgf/cm2が好ましく、スキージング中のペースト1のローリング径は、10mm〜30mmが望ましい条件であるが、スキージ角度は印刷材料や用途により異なり、マスク面水平位置より約45〜65度(好ましくは50〜60)で、ユニットホルダー15と仕切板21をスキージ条件など目的別に分けるのが好ましい。
【0037】
次に図2を用いてスクリーン印刷機100の量産時の動作を説明する。テスト印刷含めた準備が終了し、量産の印刷をスタートすると基板3がスクリーン印刷機100に搬入され、制御部42とシリンダー51の作用にて、基台52が上昇しマスク2裏面へ基板3が密着、またスキージ4と仕切板21のスキージ4面の下端部も、マスク2面に密着状態となり、モータ54とh送りねじ55とhナット56からなる水平移動機構により、スキージユニット10のスキージ4と仕切板21が、マスク2面に接しながら右方向へ移動し、最適な印圧と適正な仕切板21位置で、ペースト1は基板3サイズの範囲を、スキージ4aによりペースト1を適正ローリングしながら、マスク2の開口孔2aに充填し、その次に基板3が基台51とともに下降する時の、基板3とマスク2の版ばなれ作用で、ペースト1が転写され右方向の印刷が終了する。尚、図1、図2は右方向への印刷状態を示す図である。
【0038】
その後、右方向の印刷が終了し基板3が搬出されると、次の基板3が再び搬入され上昇しマスク2裏面に密着、今度はヘッド50が左方向に移動、右スキージ4bにてペースト1は左方向のローリングにより、同様にマスク2の開口孔2aを介して、ペースト1は基板3のランドに印刷される。尚、印刷ヘッド50の水平方向移動は、印刷開始点と印刷終了点のセンサー位置の制御により最短移動をする。
【0039】
ここで図10および図11にて、本発明と従来密閉型スキージの、印刷時のペースト状態について説明する。先ず本発明図10(A)が示すように、マスク2上でのペースト1のローリング範囲は仕切板21内となり、また図10(B―1)に示すようにペースト1の供給範囲は、仕切板21の外側には供給されず、略基板3サイズ幅でローリング連続印刷されペースト1の消費後は、矢印の(B―2)に示すように狭い空間Kが保たれ、溶剤の揮発が抑制されたペース1が効率良く消費され、次のペースト1補給で再び矢印の(B―1)に戻り、量産ではその動作を繰返しの印刷作業となるが、作業終了時の劣化がすくない残ペースト1は容器に回収し後日再使用が可能である。
【0040】
一方、従来の密閉型スキージは、図11(A)平面図に示すように印刷時ペースト状態は、基板3外側Mの被印刷範囲までローリングされる。また図11(B―1)密閉スキージ内の断面説明図に示すように、仕切板21がないため密閉スキージ61内の長手方向全幅にペースト1が供給され、且つ、ペースト1の上部の大気空間Kは広く溶剤は揮発しやすく、その条件の連続印刷でペースト1が消費される。結果は次の矢印(B―2)に示すように時間経過で、連続印刷消費後の基板3外側ペーストHoは、長時間ローリング中大気空間Kにさらされ、徐々にではあるが溶剤の揮発劣化ペーストHoが基板3側へ巻き込まれ、次のペースト補給で矢印の(B―1)に戻り、量産印刷はその動作の繰返しになる。しかし印刷消費の途中から劣化ペーストHoは、図11(B―2)に示す点線矢印Hのように、基板3サイズ内印刷エリアのペースト1に巻き込まれることになり、特に鉛レスの高密度基板では印刷品質不良や、作業終了時の残ペーストHo廃棄が大きな問題となる。
【0041】
供給装置30は、図1示すように底部に吐出孔33を有したペースト容器32の上開口部に、ピストン35が勘合され、その容器32は補強カバー36に納められた供給容器アッセンブリ31と、図3に示すように中継フレーム40には、内径が容器カバー36径より数mm(約2〜3mm)大きい孔が設けられた固定部31Kと、図2に示すような圧力手段29および、脱着可能なアダプター付き加圧ピストン35で構成されている。尚、圧力手段29の駆動は公知の空圧や油シリンダー、およびモータなどのアクチュエーターでピストン35の上下ができ、また容器アッセンブリ31は前記中継フレーム40に装着しNねじ31Nで固定、および圧力手段29とロッド29Rの連結を行う。
【0042】
供給装置30の基本動作は、圧力手段29の駆動力によりピストン35を押圧し、容器32内ペースト1が加圧され、容器32底部の吐出孔33から、上ホルダー15のペースト通過孔34を介し、スキージユニット10密閉部5へ供給する。尚、ペーストの自動供給は、スキージユニット10内の残量センサー37からの検知信号と制御部42の作用により、必要量のペースト1を供給する構成であるが、供給タイミングはペースト1の残量をレーザーセンサー37で感知し管理制御する方法以外に、基板3の印刷枚数を設定での管理制御する自動供給方法でも良い。
【0043】
ペースト1の特性は印刷品質に大きく影響するので重要な管理と注意が必要で、その理由はペースト1が酸化しやすい微粉末と、反応性が高い活性剤、およびロジンや溶剤などの混合物で科学的に不安定、且つ物理的にも繊細な性質で、メーカより納品されたペースト1は劣化防止の為に、約5±5℃の低温保管が必要で冷蔵庫にて保存管理される。また温度により粘度が大きく左右するので温度管理も重要である。
【0044】
ペースト1の粘度は溶剤の揮発問題以外に温度変化にも影響し、その要因により印刷品質に大きな問題となる。その理想的な対応策はクリーンルームの空調での制御方法であるが、膨大な経費がかかるので、好ましくは供給装置に温度調整機能を設ける。例えば供給容器のカバーに電子冷却素子(ペルチェ素子ともいう)を用いた、冷却機構(図示しない)の温度制御部を設け、電流のオンオフ制御の構成が好適である。また、容器1をカバー36と併用の、供給装置30専用の容器とするのがランニングコストの点で好ましく、ペースト1は使用前の常温戻し攪拌後、メーカ納品の容器より前記専用容器に、ヘラで移し替えて使用する方法がさらに好ましい。
【実施例2】
【0045】
実施例1はデルリン材のスキージ4使用で、スキージユニット10内部の仕切板21を、手でスライド調整する構成であったが、変化例としてメタルスキージは先端部に小さなL字形状を設け、また仕切板の位置調整は、スキージユニット10の外側より、手動でつまみを回す方法、およびモータで駆動する構成など、他の組み合わせでも同様の効果がある。またペースト粘度の温度変化対策は、実施例1の容器温度調整機能に併せて、さらにスキージユニット10に温度調整機能を設けるほうが望ましい。
【0046】
図8、図9を用いて具体的な実施例2について説明する。Lスキージユニット10Lの
L型スキージ4Lは、先端部が微小なL字形状の向き合う方向の構造と、仕切板の移動はスキージユニットの外側より調整する構成である。図8(A)は実施例2のスキージユニッ10L側面説明図で、図8(B)はL型スキージによるローデング状態を示す部分拡大図で、図9はスキージユニット10Lの側面図(A)と底面略図(B)である。尚、他のペースト供給部など実施例1と共通部分の説明は省略する。
【0047】
先ず、図8にてL型スキージ4Lについて説明する。L型スキージ4Lはスキージ片4Sが、スキージホルダー4hに図示しないねじで固定され、図8(B)に示すようにスキージ片4S先端はL形で数mmの曲がりを設けた構造で、且つマスク2側の端面はR付が好ましい。右側スキージ4Lは左側と逆向き曲がりで、両スキージ共にマスク2に密着しながら移動するが、図8(B)に示すようにスキージ片4Sは先端L字形で、端面R付形状の効果により、スキージユニット10L移動方向前側、例えば矢印Lの方向移動でもスキージ片4Sの、マスク2への食い込みや、ノッキング問題が発生しない。さらに先端をテフロン(登録商標)めっき処理することでさらに滑り効果が出る。尚、スキージホルダー4hの材質はアルミが好適で、温度調整機能を設けた構造では、スキージホルダー4hからスキージへの熱伝導効率の点でもさらに好ましい。
【0048】
また海外など空調環境が悪い地域や会社向けとして、容器底部に前記のペルチェ素子の温度調整機能を設け、さらに容器外周を断熱構造の併用構成にするのが好ましく、またスキージユニット10も温度調整機能を設けるとさらに好ましく、例えば上ホルダー15にペルチェ素子の温度調整機能を有し、材質は外側を熱伝導率が高くて軽量なアルミ材に、内側さらに熱伝導率が高い銅板の二重構造で、ペルチェ素子の吸熱側をユニット内の銅板側に、素子の放熱側を外のアルミ材の向きで内部へ埋め込む構造が好適で、上ホルダー15内側の冷却、および外側の放熱効率が共に良くなる。
【0049】
図8(B)を用いてスキージ片4Sの作用と特徴を説明する。スキージが矢印Rの右方向へ移動時のR部は、ペースト1のローリング作用をし、L部はローリングにより開口孔2aへ充填されたペースト1の掻き取り作用を行う。また逆のスキージ進行前側スキージ片4S、すなわち(B)図にて点線矢印L方向に移動時のL部は、滑らかなすべり作用をする。したがってスキージ片4S先端L部の作用はスキージの進行方向により異なる。またL部の掻き取り作用により、印圧を小さくできる特徴がある。
【0050】
スキージ片4Sの材質はSUSやリン青銅で、スキージ片4Sの先端はR付きが好ましく、滑らかな往復スキージングができる。またスキージ厚さ約0.2〜2mmが好ましく、0.5〜1mmにするとさらに好ましい。スキージ片4S先端の曲り部は、例えば先端長さ1〜3mmの、0.5〜1R付きで、進行方向の前部スキージのマスク2すべりが良く、ノッキング防止効果が向上する。
【0051】
次にスキージユニット10Lについて説明する。実施例1の仕切版21の支軸孔22の代わりにGナット25が固着され、L型スキージ4L面と接する仕切板21Lの端部は、特に高密度対応微粉末ペースト1の流出防止として、好ましくは弾性材24(例えばゴムやゲル材)のアダプターを設けた構造で、スキージ4Lと仕切板21Lの密着性を上げる構造が良く、またデルリン材の仕切板21LのGナッ25は、タップ孔の代用でも効果は同じである。
【0052】
ガイド部20と上ホルダー15の固定は、図8(A)で示すように保持板13上面と上ホルダー15間にバネ14を設けた機構の、仕切板21Lに下向きテンションを加えた構成で、マスク2間の密着性をアップとなりペースト1流出防止の効果が上がる。さらにスキージ2面と接するL形仕切板21Lの端面に弾性材を設け、対スキージ面間ペースト1流出防止の構造として好適で、また上ホルダー15と仕切板Lの隙間に、弾性材(例えばゲルシートやビニール)で塞ぐ構成(図示しない)が好ましい。
【0053】
図9(B)に示すように、仕切板21Lの移動手段は左右独立していて、送りねじ26の回転により仕切板21Lは、おのおの自在に移動できる構造で、送りねじ26は保持板13の外側でつまみ27が固着されている。また、仕切板21Lはつまみで手動による送りねじ26の回転力により、仕切板21LのGナット25を介し移動でき、ペースト1のローリング位置と幅の調整できる。尚、実施例1と異なる作業内容は、仕切板21Lをつまみ27の調整方法であるが、つまみ手動の代わりにモータ駆動する構造でも良い。
【0054】
また別の仕切板21の配設・調整変化例として、例えば左の仕切板は固定で、右側は図9(B)と応用に調整可能な構造や、基板などの被印刷物サイズが種類が少ない大型印刷機では、仕切板を上ホルダー数箇所の位置で着脱機構を、両側数箇所に設け調整する構造や、さらに前記のような片側のみ仕切板が着脱で、反対の仕切板は固定の構造、さらに両方の仕切板を被印刷物に適した幅で固定の構成でも同様の効果がある。
【0055】
以上、従来スクリーン印刷装置の密閉スキージ問題解手段として、印刷中を含めペーストを常に必要最小限の密閉状態に保ち、且つペースト1を必要部分のみ、すなわち略基板3サイズの範囲をローリング印刷する構成で、ペースト1の印刷消費タイムを大幅に短縮、およびペースト1寿命を延ばすことで、従来技術よりさらにペースト廃棄量を少なく改善できる。尚、本発明は上記実施形態に限定するものではなく、他の種々形態が実施可能である。
【産業上の利用可能性】
【0056】
はんだペースト以外の導電ペーストや接着材、および高粘度インクなど異なる印刷材料を、プリント基板以外の電子部品およびPDP、液晶パネルや太陽光パネルなど製造する産業の、大型スクリーン印刷機にも利用できる。尚、本発明実施例のペースト供給部は1箇所であるが、大型のスクリーン印刷機では必要に応じ、2箇所以上複数の供給部、すなわち供給装置の装着構成でも良い。尚、印刷材料は使用時に供給装置専用容器へ移して自動供給する方法もある。
【符号の説明】
【0057】
1 ペースト
2 マスク
2a 開口孔
3 基板
4 スキージ(4a、4b)
4S スキージ片
4L L型スキージ
5 密閉部
10 スキージユニット
10L Lスキージユニット
11 支軸
12 レール
15 上ホルダー
20 ガイド部
21 仕切板(21a、21b)
22 支軸孔
30 供給装置
40 中継フレーム
42 制御部
50 印刷ヘッド
100 スクリーン印刷
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スキージでスクリーン版の開口孔を介して、被印刷物に印刷材料を転写する、密閉型のスキージユニットと、ペーストの自動供給装置と、これらの機能を制御する制御機能を備えたスクリーン印刷機において、
前記スキージユニットを、進行方向の前後に一対のスキージと、該スキージの間に該スキージと直交する向きに一対の仕切板と、スキージ上部並行に上ホルダーとを設け、該スキージ、該仕切板、該上ホルダー、および前記スクリーン版で囲まれる密閉部を、形成できる構造としたことを特徴とするスクリーン印刷機。
【請求項2】
スキージの先端部がL字形状の構造としたこと特徴とする、請求項1記載のスクリーン印刷機。
【請求項3】
スクリーン印刷機のスクリーン版の開口孔を介して、被印刷物に印刷材料を転写する、スキージを備えたスキージユニット用いる印刷方法であって、
進行方向の前後に一対のスキージと、該スキージの間に該スキージと直交する向きに一対の仕切板と、スキージ上部並行に溝型の上ホルダーとを設け、該スキージ、該仕切板、該上ホルダー、および前記スクリーン版で囲まれる密閉部が必要最小になるように、前記仕切板を調整し印刷を行うことを特徴とする印刷方法。
【請求項1】
スキージでスクリーン版の開口孔を介して、被印刷物に印刷材料を転写する、密閉型のスキージユニットと、ペーストの自動供給装置と、これらの機能を制御する制御機能を備えたスクリーン印刷機において、
前記スキージユニットを、進行方向の前後に一対のスキージと、該スキージの間に該スキージと直交する向きに一対の仕切板と、スキージ上部並行に上ホルダーとを設け、該スキージ、該仕切板、該上ホルダー、および前記スクリーン版で囲まれる密閉部を、形成できる構造としたことを特徴とするスクリーン印刷機。
【請求項2】
スキージの先端部がL字形状の構造としたこと特徴とする、請求項1記載のスクリーン印刷機。
【請求項3】
スクリーン印刷機のスクリーン版の開口孔を介して、被印刷物に印刷材料を転写する、スキージを備えたスキージユニット用いる印刷方法であって、
進行方向の前後に一対のスキージと、該スキージの間に該スキージと直交する向きに一対の仕切板と、スキージ上部並行に溝型の上ホルダーとを設け、該スキージ、該仕切板、該上ホルダー、および前記スクリーン版で囲まれる密閉部が必要最小になるように、前記仕切板を調整し印刷を行うことを特徴とする印刷方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−110781(P2011−110781A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−268356(P2009−268356)
【出願日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【出願人】(304001660)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【出願人】(304001660)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]