説明

スクリーン印刷装置およびスクリーン印刷方法

【課題】パターン孔内のペーストの乾燥に起因する印刷不良を防止することができるスクリーン印刷装置およびスクリーン印刷方法を提供すること。
【解決手段】印刷実行工程にて密閉型スキージ機構13をスキージング方向へ移動させてパターン孔12aへペーストPを充填する往路動作および復路動作において、進行方向の後方に位置するペースト膜形成機構29A,29Bの成膜部材29bをメッシュマスク12の上面に対して接近させた状態で進行方向へ移動させて、メッシュマスク12の上面に密閉型スキージ機構13の外部に供給されたペーストPを成膜部材29bによって延展して所定厚みのペースト膜P*を形成する。これにより、パターン孔12aをペースト膜P*で覆うことができ、パターン孔12a内のペーストPの乾燥に起因する印刷不良を防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部品接合用や回路形成用などに用いられるペーストを基板に印刷するスクリーン印刷装置およびスクリーン印刷方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
部品接合用や回路形成用などに用いられるペーストを基板に供給する方法として、スクリーン印刷が知られている。この方法では、スクリーンマスクに設けられたパターン孔を介してペーストが基板の電極面に印刷され、スクリーンマスクの下面に基板を当接させた状態でスクリーンマスクの上面でスキージユニットを摺動させるスクリーン印刷機構を備えたスクリーン印刷装置が用いられる(例えば特許文献1)。
【0003】
この特許文献に示す例では、スキージユニットとして、ペーストを貯留するカートリッジが内部に装着され、カートリッジ内のペーストを加圧してパターン孔内に加圧力により充填する構成の密閉型スキージ機構を用いた例を示している。この密閉型スキージ機構は、通常の開放型スキージのようにスキージの移動によってペーストをパターン孔内に押し込む単純なスキージング動作と比較して、充填性に優れるという特徴を備えている。このため、印刷に用いられるスクリーンマスクが金属製のメッシュ素材を樹脂で封止した形式のメッシュマスクなどであって、通常のスキージでは良好な充填性が得られにくいような用途に適している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−272584号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら上述のメッシュマスクを対象としたスクリーン印刷においては、メッシュマスクの特性に起因して以下のような不都合が生じている。すなわち密閉型スキージ機構を用いたスクリーン印刷装置では、スキージング動作においてメッシュマスクの上面のペーストは後側の摺接部材によって掻き取られ、スキージングが終了した後にはメッシュマスクのパターン孔内に充填されたペーストは完全に露呈される。このため、メッシュ内のペーストは大気露呈により急速に乾燥し、目詰まり状態となりやすい。このような状態でスクリーン印刷作業を継続実行すると、パターン孔からペーストを離脱させる版離れや次回印刷時のペーストの充填性が阻害され、印刷不良を生じる結果となる。このように、メッシュマスクを対象とした従来のスクリーン印刷においては、パターン孔内のペーストの乾燥に起因する印刷不良を防止することが困難であるという問題があった。
【0006】
そこで本発明は、パターン孔内のペーストの乾燥に起因する印刷不良を防止することができるスクリーン印刷装置およびスクリーン印刷方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のスクリーン印刷装置は、パターン孔が形成されたメッシュマスクの上面にスキージユニットを当接させてスキージング方向に往復して摺動させる往復スキージング動作を行うことにより前記パターン孔を介して基板にペーストを印刷するスクリーン印刷装置であって、前記基板を下受けして保持する基板下受部と、前記スキージユニットを昇降させるとともに前記スキージング方向に往復移動させるスキージ移動機構と、前記スキージユニットの前記スキージング方向における往路側および復路側にスキージユニットに関して対称配置され、それぞれが前記スキージユニットと同期して往復移動可能であって且つメッシュマスクに対して昇降する成膜部材を有する2つのペースト膜形成機構とを備え、前記スキージユニットは、前記ペーストを貯留する本体部の下面側から下窄まり状態で相対向した1対の摺接部材を対向方向をスキージング方向に合わせて下方に延出させて構成され、前記本体部に貯留された前記ペーストを加圧しながら前記メッシュマスクの上面に前記摺接部材を当接させてスキージング方向に往復して摺動することにより、前記ペーストを前記摺接部材の間に設けられた印刷開口を介して前記前記パターン孔内に充填する密閉型スキージ機構であり、前記スキージユニットをスキージング方向へそれぞれ往復移動させる往路動作および復路動作において、前記進行方向の後方に位置する前記ペースト膜形成機構の成膜部材をメッシュマスクの上面に対して接近させた状態で前記進行方向へ移動させることにより、メッシュマスクの上面に前記密閉型スキージ機構の外部に供給されたペーストを前記成膜部材によって延展して所定厚みのペースト膜を形成する。
【0008】
本発明のスクリーン印刷方法は、パターン孔が形成されたメッシュマスクの上面にスキージユニットを当接させてスキージング方向に往復して摺動させる往復スキージング動作を行うことにより前記パターン孔を介して基板にペーストを印刷するスクリーン印刷方法であって、前記スキージユニットは、前記ペーストを貯留する本体部の下面側から下窄まり状態で相対向した1対の摺接部材を対向方向をスキージング方向に合わせて下方に延出させて構成され、前記本体部に貯留された前記ペーストを加圧しながら前記メッシュマスクの上面に前記摺接部材を当接させてスキージング方向に摺動することにより、前記ペーストを前記摺接部材の間に設けられた印刷開口を介して前記前記パターン孔内に充填する密閉型スキージ機構であり、さらに前記スキージユニットの前記スキージング方向における往路側および復路側にスキージユニットに関して対称配置され、それぞれが前記スキージユニットと同期して往復移動可能であって且つメッシュマスクに対して昇降する成膜部材を有する2つのペースト膜形成機構とを備え、基板下受部に下受け保持された前記基板を前記メッシュマスクに対して位置決めする基板位置決め工程と、前記メッシュマスクの上面において前記密閉型スキージ機構の外部にペーストを供給するペースト供給工程と、前記スキージユニットを前記メッシュマスクの上面で往復動させる印刷実行工程とを含み、前記印刷実行工程にて前記スキージユニットをスキージング方向へそれぞれ往復移動させる往路動作および復路動作において、前記進行方向の後方に位置する前記ペースト膜形成機構の成膜部材をメッシュマスクの上面に対して接近させた状態で前記進行方向へ移動させることにより、メッシュマスクの上面に前記密閉型スキージ機構の外部に供給されたペーストを前記成膜部材によって延展して所定厚みのペースト膜を形成する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、印刷実行工程にてスキージユニットをスキージング方向へ往復移動させてパターン孔へペーストを充填する往路動作および復路動作において、進行方向の後方に位置するペースト膜形成機構の成膜部材をメッシュマスクの上面に対して接近させた状態で進行方向へ移動させて、メッシュマスクの上面に密閉型スキージ機構の外部に供給されたペーストを成膜部材によって延展して所定厚みのペースト膜を形成することにより、パターン孔をペースト膜で覆うことができ、パターン孔内のペーストの乾燥に起因する印刷不良を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施の形態のスクリーン印刷装置の側面図
【図2】本発明の一実施の形態のスクリーン印刷装置の正面図
【図3】本発明の一実施の形態のスクリーン印刷装置の部分側断面図
【図4】本発明の一実施の形態のスクリーン印刷装置によるスキージング動作の動作説明図
【図5】本発明の一実施の形態のスクリーン印刷装置によるスキージング動作の動作説明図
【図6】本発明の一実施の形態のスクリーン印刷装置によるスキージング動作におけるペースト充填の説明図
【図7】本発明の一実施の形態のスクリーン印刷装置によるスキージング動作におけるペースト膜形成の説明図
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。まず図1を参照してスクリーン印刷装置1の構造を説明する。このスクリーン印刷装置1は、パターン孔が形成されたメッシュマスクの上面にスキージユニットを当接させてスキージング方向に摺動させるスキージング動作を行うことにより、パターン孔を介して基板に半田接合用や回路形成用のペーストを印刷する機能を有するものである。
【0012】
図1、図2において、スクリーン印刷装置1の基板位置決め部2の上方には、スクリーン印刷部10が配設されている。基板位置決め部2は、Y軸テーブル3およびX軸テーブル4よりなる移動テーブル上にθ軸テーブル5を段積みし、その上に第1Z軸テーブル6A、第2Z軸テーブル6Bを配設し、さらに第2Z軸テーブル6B上に基板下受部7を配設して構成されている。第1Z軸テーブル6Aはθ軸テーブル5の上面に固定されており、第1Z軸テーブル6Aを駆動することにより固定ベース6aに対して昇降ベース6bが昇降する。
【0013】
また第2Z軸テーブル6Bを駆動することにより、昇降ベース6bに対して下受けベース7aとともに基板下受部7が昇降する。基板下受部7は基板搬送機構(図示省略)によって上流側装置からX方向に搬入された印刷対象の基板8を下受けして保持する。昇降ベース6bには、1対のクランプ部材9がブラケット6cを介して保持されている。クランプ部材9は開閉駆動機構(図示省略)によってY方向に開閉し、閉状態において基板下受部7に下受けされた基板8を両側から挟み込んでクランプ固定する。
【0014】
基板位置決め部2の上方に配設されたスクリーン印刷部10は、スクリーンマスクとして金属の細線を織り合わせたメッシュ部12bを有するメッシュマスク12をホルダ11に装着して構成されており、メッシュマスク12には印刷対象の基板8の印刷部位に対応したパターン孔12a(図3参照)が開孔されている。スクリーン印刷部10の上方には、メッシュマスク12上でスキージング動作を行うスキージユニットおよび2つのペースト膜形成機構29A,29Bが、スキージ移動機構20によって一体的に移動自在に配設されている。ここではスキージユニットとして密閉型スキージ機構13が用いられている。
【0015】
密閉型スキージ機構13は、結合部材15によって保持された印刷部14を備えており、印刷部14の内部に貯留されたペーストPをシリンダ16によって加圧してパターン孔12a(図3)に充填する構成となっている。ペースト膜形成機構29A,29Bは、メッシュマスク12の上面に覆うペーストPの塗膜を形成する機能を有しており、密閉型スキージ機構13のスキージング方向における往路側および復路側(ここではY方向右側およびY方向左側)に密閉型スキージ機構13に関して対称配置され、それぞれ密閉型スキージ機構13と同期して往復移動可能であって且つメッシュマスク12に対して昇降する成膜部材29bを有する構成となっている。メッシュマスク12の上面にペーストPを供給し、成膜部材29bをメッシュマスク12の上面に対して所定の隙間を保った状態でペースト膜形成機構29A,29Bを水平移動させることにより、メッシュマスク12の上面には所定厚みのペースト膜P*が形成される(図6参照)。
【0016】
次に図3を参照して、スキージ移動機構20、密閉型スキージ機構13およびペースト膜形成機構29A,29Bの構成を説明する。スキージ移動機構20は、移動プレート22をY方向に移動させるY軸移動機構21および移動プレート22の上面に設けられたスキージ昇降機構23A,23Bおよびペースト膜形成機構29A,29Bを個別に昇降させる膜形成昇降機構24A,24Bを備えている。スキージ昇降機構23A,23B、膜形成昇降機構24A,24Bはそれぞれ昇降アクチュエータを備えている。スキージ昇降機構23A,23Bおよび膜形成昇降機構24A,24Bからは、それぞれ下方に昇降軸23a、昇降軸24aが延出しており、昇降軸23a、昇降軸24aはガイド軸23b、ガイド軸24bによってガイドされて昇降する。二つの昇降軸23aの下端部には、昇降ブロック23cおよび結合部材15を介して密閉型スキージ機構13が結合されており、それぞれの昇降軸24aの下端部には、ホルダ29aに保持されたスキージ形状の成膜部材29bが結合されている。
【0017】
スキージ昇降機構23A,23Bを駆動することにより、密閉型スキージ機構13はメッシュマスク12に対して昇降する。したがって、スキージ昇降機構23A,23BおよびY軸移動機構21は、密閉型スキージ機構13を昇降させるとともにスキージング方向に移動させるスキージ移動機構となっている。また膜形成昇降機構24A,24Bを駆動することにより、それぞれの成膜部材29bはメッシュマスク12に対して昇降する。
【0018】
ペースト膜形成機構29A,29Bの機能を説明する。メッシュマスク12の上面にペーストPを供給した状態で、成膜部材29bをメッシュマスク12の上面に対して所定の成膜隙間を保つ位置まで接近させ、ペースト膜形成機構29A,29Bをそれぞれ往路方向、復路方向へ移動させることにより、メッシュマスク12の上面にはペーストPが成膜部材29bによって延展された所定厚みのペースト膜P*(図7参照)が形成される。このペースト膜P*は、スキージング動作においてペーストPが充填されたパターン孔12aの上面側を覆うことによってパターン孔12a内のペーストPの乾燥の進行を防止する作用を有している。これにより、パターン孔12a内におけるペーストPによる目詰まりを防止することができる。
【0019】
ここで、本実施の形態において用いられるメッシュマスク12について説明する。図3の拡大図に示すように、メッシュマスク12は金属の細線を織り合わせたメッシュ部12bにおいて、パターン孔12a以外の範囲を封止樹脂12cによって封止して構成されている。このようなメッシュマスクは、回路形成用印刷など印刷パターンが連続した線状のパターン孔によって構成されて通常の金属板を用いたメタルマスクではスクリーンマスクを形成することができないような用途に用いられる。
【0020】
メッシュマスクを用いたスクリーン印刷においては、パターン孔12a内にもメッシュ部12bが存在することから、パターン孔12a内にペーストPを完全に押し込むことが難しいという充填性の問題がある。またメタルマスクと比較して面内方向の伸縮性が大きくかつ曲げ剛性が小さいという強度特性を有していることから、密閉型スキージ機構13をスキージング方向に移動させるスキージング動作においてメッシュマスク12全体を基板8の上面に密着させずに、密閉型スキージ機構13によって押し付けられる部位のみを基板8に当接させるオフコンタクト印刷に適している。
【0021】
Y軸移動機構21の構成を説明する。移動プレート22の下面にはナット部材26が結合されており、ナット部材26に螺合した送りねじ27は、モータ28によって回転駆動される。モータ28を駆動することにより、移動プレート22は水平移動し、したがってスキージ昇降機構23A,23Bに結合された密閉型スキージ機構13、膜形成昇降機構24A,24Bに結合されたペースト膜形成機構29A、29Bもそれぞれ水平移動する。密閉型スキージ機構13を下降させた状態で、モータ28を駆動することにより、密閉型スキージ機構13はメッシュマスク12上で水平移動する。すなわち、モータ28、送りねじ27およびナット部材26は、密閉型スキージ機構13をメッシュマスク12上で水平移動させるY軸移動機構21を構成する。
【0022】
密閉型スキージ機構13の下部には、メッシュマスク12の表面に当接してペーストPをパターン孔12aに充填する印刷部14が設けられている。印刷部14を構成する本体部30は、メッシュマスク12の幅方向に細長形状のブロック状部材であり、本体部30の長さ寸法は印刷対象の基板8の幅寸法をカバーするように設定される。本体部30には、ペーストPが貯溜されたカートリッジ31が着脱自在に装着される凹部30aが形成されている。
【0023】
カートリッジ31には予め所定量のペーストPが貯溜されており、印刷時に本体部30に装着される。カートリッジ31の上面の開口には、内部のペーストPを加圧する加圧板32が嵌入している。加圧板32は上方に配置されたシリンダ16のロッド16aと結合されており、シリンダ16を駆動することにより、加圧板32はカートリッジ31内で上下動する。シリンダ16を所定の圧力で駆動することにより、カートリッジ31内のペーストPを加圧板32によって所定の圧力で押し下げる。
【0024】
カートリッジ31の底面はペーストPの押出し板31aとなっており、押出し板31aには多数の開口31bが設けられている。押出し板31aの下方には、本体部30の底部に装着された絞り板33が配置されており、絞り板33にはカートリッジ31の押出し板31aと同様に多数の開口33aが設けられている。ペーストPを貯留する本体部30の下面側からは、内側斜め方向に下窄まり状態で相対向した1対の摺接部材34A、34Bが、対向方向をスキージング方向に合わせて下方に延出して設けられている。2枚の摺接部材34A、34Bと本体部30の下面とによって囲まれた空間はペーストPを収容する印刷空間35を構成し、2枚の摺接部材34A、34Bの間は、加圧されたペーストPをメッシュマスク12のパターン孔12aに充填して印刷する印刷開口35aを形成する。
【0025】
シリンダ16で下方に押圧することにより、カートリッジ31内のペーストPは加圧され、押出し板31aの開口31bおよび絞り板33の開口33aを通過して絞られながら下方に押し出される。このようにペーストPが絞られることにより、ペーストPの粘度が低下しスクリーン印刷に適した性状に改質される。そして押し出されたペーストPは、相対向した1対の摺接部材34A、34Bと本体部30の下面とによって囲まれた印刷空間35に到達する。
【0026】
摺接部材34A、34Bは可撓性を有する板状部材であって、印刷空間35のスキージング方向の前後壁を形成し、密閉型スキージ機構13を下降させた状態では、摺接部材34A、34Bの下端部がメッシュマスク12の上面に当接する。印刷動作時には、本体部30内のカートリッジ31に貯留されたペーストPを加圧しながらメッシュマスク12の上面に摺接部材34A、34Bを当接させてスキージング方向に摺動することにより、ペーストPを摺接部材34A、34Bの間に形成された印刷開口35aを介してパターン孔12a内に充填する。
【0027】
そして密閉型スキージ機構13を移動させることにより、各パターン孔12a内に順次ペーストPが充填される。全てのパターン孔12a内にペーストPが充填されたならば、第1Z軸テーブル6Aを駆動して基板下受部7によって保持された基板8を下降させる。これにより、基板8へのペーストPのスクリーン印刷が完了する。このスクリーン印刷において、スクリーンマスクとして充填性に難があるメッシュマスク12を用いる場合にあっても、ペーストPを加圧してパターン孔12a内に押し込むことにより、良好な充填性を確保することができる。
【0028】
このスクリーン印刷装置は上記のように構成されており、次にこのスクリーン印刷装置によって実行されるスクリーン印刷方法について、図4,図5,図6、図7を参照して説明する。ここでは図において左側から右側に向かう方向がスキージング方向の往路方向として規定されている。すなわち左右1対のクランプ部材9をそれぞれクランプ部材9A、9Bと記載して区別し、クランプ部材9Aからクランプ部材9Bに向かう方向が往路方向となる。
【0029】
まず印刷対象の基板8を基板位置決め部2に搬入して、第2Z軸テーブル6Bを駆動して基板下受部7によって下受けして保持し、クランプ部材9A、クランプ部材9Bによって両側からクランプする。次いで基板下受部7に下受け保持された基板8を、メッシュマスク12に対して位置決めする(基板位置決め工程)。すなわち第1Z軸テーブル6Aを上昇させて、図4(a)に示すように、メッシュマスク12の下面から所定のギャップGだけ隔てた高さ位置に基板8を保持するとともに、基板位置決め部2によってメッシュマスク12に対して基板8の水平方向の位置を合わせる。
【0030】
次にメッシュマスク12の上面において、密閉型スキージ機構13の外部にペーストPを供給する(ペースト供給工程)。すなわち、図4(b)に示すように、スキージングの起点であるクランプ部材9A側において、密閉型スキージ機構13の前方および後方にペーストPを供給する。そしてこの後、密閉型スキージ機構13をメッシュマスク12の上面で往復移動させる往路動作および復路動作によってペーストPをパターン孔12aに充填して基板8に印刷する(印刷実行工程)。まず往路動作の開始に際しては、スキージ昇降機構23A、23Bを駆動して、図4(c)に示すように、密閉型スキージ機構13を下降させ(矢印a)、摺接部材34A、摺接部材34B(図3)をメッシュマスク12の上面に押し付けてメッシュマスク12の下面をスキージング起点であるクランプ部材9Aに当接させる。
【0031】
そしてこれとともに、往路動作においてペーストPの充填が行われた直後のパターン孔12aを覆うペースト膜P*を形成するための成膜動作の準備を行う。すなわち、膜形成昇降機構24A(図3)を駆動して、図4(d)に示すように、ペースト膜形成機構29Aの成膜部材29bをメッシュマスク12の上面に対して接近させる(矢印d)。このとき、メッシュマスク12上に供給されたペーストPは、密閉型スキージ機構13の前方および後方に位置している
【0032】
そしてこの状態で、Y軸移動機構21を駆動して密閉型スキージ機構13を往路方向(矢印b方向)に移動させて、摺接部材34A、摺接部材34Bをメッシュマスク12の上面で摺動させる。このとき、シリンダ16によって加圧板32を押し下げ(矢印c)、密閉型スキージ機構13内のペーストPを加圧することにより、ペーストPがメッシュマスク12のパターン孔12a内に充填される。このペーストPの充填と並行して、ペースト膜形成機構29Aが密閉型スキージ機構13と同期して移動することにより、往路動作においてペーストPの充填が行われたパターン孔12aを覆うペースト膜P*を形成するための成膜動作が行われる。
【0033】
この往路動作におけるペーストPの充填動作について、図6を参照して説明する。図6(a)は摺接部材34A、摺接部材34Bをメッシュマスク12に摺接させた印刷部14が往路方向に進行する過程におけるパターン孔12aへのペーストPの充填状態を示している。このスキージング工程においては、印刷部14の摺接部材34A、摺接部材34Bの間の印刷開口35aを介してのパターン孔12aへのペーストPの充填に先立って、1対の摺接部材34A、摺接部材34Bのうち往路動作における進行方向の前方側に位置する摺接部材34Bがスキージング方向へ移動することにより、密閉型スキージ機構13の外部に供給されたペーストPをパターン孔12a内に充填する。
【0034】
すなわち、図6(b)に示すように、密閉型スキージ機構13の移動に伴って摺接部材34Bは密閉型スキージ機構13の外部に供給されたペーストPをメッシュマスク12の上面に沿って進行方向(矢印h方向)に掻き寄せる。そしてこの摺接部材34Bの移動によりペーストPにはローリング方向(矢印i方向)の流動が生じ、この結果メッシュマスク12上のペーストPはパターン孔12a内に押し込まれる。このとき、パターン孔12a内にはメッシュ部12bが存在してペーストPの流動を阻害するため、この時点ではパターン孔12a内にペーストPが完全に充填された状態には至らない。
【0035】
次いで、密閉型スキージ機構13がさらにスキージング方向に移動することにより、摺接部材34Aと摺接部材34Bとの間の印刷開口35aの下方にパターン孔12aが位置する。この状態では、印刷空間35内のペーストPが加圧板32によって加圧された圧力(矢印j)によってパターン孔12a内に押し込まれる。これにより、摺接部材34Bによるスキージングでは充填不足の状態であったパターン孔12a内にさらにペーストPが押し込まれ、パターン孔12a内にメッシュ部12bが存在するメッシュマスク12を対象とする場合にあっても、良好な充填状態を実現することが可能となっている。
【0036】
次に上述のスキージング動作における成膜動作について、図7を参照して説明する。図7(a)において、メッシュマスク12上にはペーストPが供給されており、ペースト膜形成機構29Aの成膜部材29bはメッシュマスク12から離隔した位置にある。成膜動作に移ると、まず図7(b)に示すように、成膜部材29bが下降し(矢印k)、成膜部材29bの下端部とメッシュマスク12の上面との間に規定のペースト膜厚みtに相当する成膜隙間が保たれる位置に成膜部材29bの高さを保持する。そしてこの状態で、ペースト膜形成機構29Aを往路方向(矢印l方向)へ移動させる。これにより、メッシュマスク12上のペーストPは成膜部材29bによって延展され、図7(c)に示すように、メッシュマスク12の上面には所定厚みtのペースト膜P*が形成される。このペースト膜P*はメッシュマスク12のパターン孔12aの上面を覆うことから、パターン孔12a内のペーストPが直接大気に曝露されて乾燥固化することに起因するパターン孔12aの目詰まりを有効に防止することができる。
【0037】
図5(a)は、この往路動作によって全てのパターン孔12aを対象とした密閉型スキージ機構13によるペーストPの充填およびこれら充填後のパターン孔12aを覆うペースト膜P*の形成が完了した状態を示しており、この状態では密閉型スキージ機構13はクランプ部材9B上に位置している。そして密閉型スキージ機構13のスキージング方向の前方および後方には、スキージング動作に先立って供給されたペーストPが残留した状態で存在している。
【0038】
この後、密閉型スキージ機構13をクランプ部材9Bからクランプ部材9Aへ向かって移動させる復路動作が実行される。この復路動作では、新たな基板8を対象として、密閉型スキージ機構13をメッシュマスク12の上面で摺動させてパターン孔12aにペーストPを充填する充填動作と並行して、ペーストPの充填が行われたパターン孔12aを覆うペースト膜P*を形成するための成膜動作が実行される。ここではまず図5(b)に示すように、ペースト膜形成機構29Aを上昇させる(矢印e)とともに、ペースト膜形成機構29Bを下降させて、成膜部材29bをメッシュマスク12の上面に対して接近させる(矢印f)。
【0039】
そしてこの状態で、図5(c)に示すように、密閉型スキージ機構13をペースト膜形成機構29Bとともに一体的に復路方向、すなわちクランプ部材9Bからクランプ部材9Aに向かう方向(矢印g)へ移動させる。この復路動作においても、往路動作と同様に、印刷開口35aを介しての加圧によるペーストPの充填に先立って、進行方向の前方側に位置する摺接部材34Aがスキージング方向へ移動することにより、メッシュマスク12上に残留するペーストPおよび往路動作によって形成されたペースト膜P*を掻き取ったペーストPを、パターン孔内12aに充填する。これとともに、ペースト膜形成機構29Bが復路方向へ移動することにより、メッシュマスク12上のペーストPは成膜部材29bによって延展され、メッシュマスク12の上面には所定厚みtのペースト膜P*が形成される。図5(d)は、この復路動作によって全てのパターン孔12aを対象とした密閉型スキージ機構13によるペーストPの充填およびこれら充填後のパターン孔12aを覆うペースト膜P*の形成が完了した状態を示しており、この状態では密閉型スキージ機構13はクランプ部材9A上に位置している。そしてこれ以降、同様の動作が基板8の搬入・搬出動作と併せて反復実行される。
【0040】
上記説明したように、本実施の形態に示すスクリーン印刷においては、密閉型スキージ機構13をスキージング方向へそれぞれ往復移動させる往路動作および復路動作において、ペースト膜形成機構29A,29Bのいずれかのうち、密閉型スキージ機構13の進行方向の後方に位置するペースト膜形成機構の成膜部材29bをメッシュマスク12の上面に対して接近させた状態で進行方向へ移動させることにより、メッシュマスク12の上面に密閉型スキージ機構13の外部に供給されたペーストPを成膜部材29bによって延展して所定厚みのペースト膜P*を形成するようにしている。これにより、パターン孔12aへのペーストPの充填の直後にメッシュマスク12の上面をペースト膜P*で覆うことができ、パターン孔12a内のペーストPの乾燥に起因する印刷不良を防止することができる。
【0041】
さらに本実施の形態に示すスクリーン印刷においては、印刷実行工程にて密閉型スキージ機構13をスキージング方向へそれぞれ往復移動させる往路動作および復路動作に際し、内部で加圧されたペーストを1対の摺接部材34A、摺接部材34Bの間の印刷開口35aから充填する構成の密閉型スキージ機構13によるスキージング動作において、印刷開口35aを介してのパターン孔12aへのペーストPの充填に先立って、1対の摺接部材34A、摺接部材34Bのうちスキージング方向の前方側に位置する摺接部材34Bがスキージング方向へ移動することにより、メッシュマスク12の上面において密閉型スキージ機構13の外部に供給されたペーストPをパターン孔12a内に充填するようにしている。
【0042】
これにより、印刷開口35aを介してのペーストPの充填と相俟ってさらに充填性を向上させることができ、印刷難度が高いメッシュマスク12を対象として、良好な充填性を確保することができる。なお本実施の形態においては、メッシュマスク12を対象としてオフコンタクト印刷によって印刷を行う例を示したが、メッシュマスク12の全面を基板8に当接させてスキージングを行うオンコンタクト印刷を行う場合にあっても本発明を適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明のスクリーン印刷装置およびスクリーン印刷方法は、パターン孔内のペーストの乾燥に起因する印刷不良を防止することができるという効果を有し、印刷難度が高いメッシュマスクを用いた半田印刷において有用である。
【符号の説明】
【0044】
1 スクリーン印刷装置
2 基板位置決め部
7 基板下受部
8 基板
10 スクリーン印刷部
12 メッシュマスク
12a パターン孔
12b メッシュ部
13 密閉型スキージ機構
14 印刷部
20 スキージ移動機構
21 Y軸移動機構
29A,29B ペースト膜形成機構
29b 成膜部材
30 本体部
34A,34B 摺接部材
35 印刷空間
35a 印刷開口
P ペースト
P* ペースト膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パターン孔が形成されたメッシュマスクの上面にスキージユニットを当接させてスキージング方向に往復して摺動させる往復スキージング動作を行うことにより前記パターン孔を介して基板にペーストを印刷するスクリーン印刷装置であって、
前記基板を下受けして保持する基板下受部と、前記スキージユニットを昇降させるとともに前記スキージング方向に往復移動させるスキージ移動機構と、
前記スキージユニットの前記スキージング方向における往路側および復路側にスキージユニットに関して対称配置され、それぞれが前記スキージユニットと同期して往復移動可能であって且つメッシュマスクに対して昇降する成膜部材を有する2つのペースト膜形成機構とを備え、
前記スキージユニットは、前記ペーストを貯留する本体部の下面側から下窄まり状態で相対向した1対の摺接部材を対向方向をスキージング方向に合わせて下方に延出させて構成され、前記本体部に貯留された前記ペーストを加圧しながら前記メッシュマスクの上面に前記摺接部材を当接させてスキージング方向に往復して摺動することにより、前記ペーストを前記摺接部材の間に設けられた印刷開口を介して前記前記パターン孔内に充填する密閉型スキージ機構であり、
前記スキージユニットをスキージング方向へそれぞれ往復移動させる往路動作および復路動作において、前記進行方向の後方に位置する前記ペースト膜形成機構の成膜部材をメッシュマスクの上面に対して接近させた状態で前記進行方向へ移動させることにより、メッシュマスクの上面に前記密閉型スキージ機構の外部に供給されたペーストを前記成膜部材によって延展して所定厚みのペースト膜を形成することを特徴とするスクリーン印刷装置。
【請求項2】
前記往路動作および復路動作において、前記印刷開口を介しての前記パターン孔へのペーストの充填に先立って、前記1対の摺接部材のうち往路または復路における進行方向の前方に位置する摺接部材がスキージング方向へ移動することにより、前記メッシュマスクの上面において前記密閉型スキージ機構の外部に供給されたペーストを前記パターン孔内に充填することを特徴とする請求項1記載のスクリーン印刷装置。
【請求項3】
パターン孔が形成されたメッシュマスクの上面にスキージユニットを当接させてスキージング方向に往復して摺動させる往復スキージング動作を行うことにより前記パターン孔を介して基板にペーストを印刷するスクリーン印刷方法であって、
前記スキージユニットは、前記ペーストを貯留する本体部の下面側から下窄まり状態で相対向した1対の摺接部材を対向方向をスキージング方向に合わせて下方に延出させて構成され、前記本体部に貯留された前記ペーストを加圧しながら前記メッシュマスクの上面に前記摺接部材を当接させてスキージング方向に摺動することにより、前記ペーストを前記摺接部材の間に設けられた印刷開口を介して前記前記パターン孔内に充填する密閉型スキージ機構であり、
さらに前記スキージユニットの前記スキージング方向における往路側および復路側にスキージユニットに関して対称配置され、それぞれが前記スキージユニットと同期して往復移動可能であって且つメッシュマスクに対して昇降する成膜部材を有する2つのペースト膜形成機構とを備え、
基板下受部に下受け保持された前記基板を前記メッシュマスクに対して位置決めする基板位置決め工程と、
前記メッシュマスクの上面において前記密閉型スキージ機構の外部にペーストを供給するペースト供給工程と、
前記スキージユニットを前記メッシュマスクの上面で往復動させる印刷実行工程とを含み、
前記印刷実行工程にて前記スキージユニットをスキージング方向へそれぞれ往復移動させる往路動作および復路動作において、前記進行方向の後方に位置する前記ペースト膜形成機構の成膜部材をメッシュマスクの上面に対して接近させた状態で前記進行方向へ移動させることにより、メッシュマスクの上面に前記密閉型スキージ機構の外部に供給されたペーストを前記成膜部材によって延展して所定厚みのペースト膜を形成することを特徴とするスクリーン印刷方法。
【請求項4】
前記往路動作および復路動作において、前記印刷開口を介しての前記パターン孔へのペーストの充填に先立って、前記1対の摺接部材のうち往路または復路における進行方向の前方に位置する摺接部材がスキージング方向へ移動することにより、前記メッシュマスクの上面において前記密閉型スキージ機構の外部に供給されたペーストを前記パターン孔内に充填することを特徴とする請求項3に記載のスクリーン印刷方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−187741(P2012−187741A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−51207(P2011−51207)
【出願日】平成23年3月9日(2011.3.9)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】