スクリーン形成装置、スクリーン形成方法及び画像処理装置
【課題】 線数/角度の設計自由度を向上することができ、色モアレの発生を低減することのできるスクリーン形成装置、スクリーン形成方法及び画像処理装置を提供する。
【解決手段】 パルス幅と基準位置データとを制御するPWM技術を用いて1画素に多階調の画像を再現する画像処理装置のスクリーン形成方法において、第1の解像度で画像データを入力し、第1の解像度を前記基準位置データを用いて第2の解像度に高解像度化し、前記基準位置データに基づく2つの基準ベクトルを用いて前記画像データに対して第2の解像度でスクリーンを形成するスクリーン形成方法である。
【解決手段】 パルス幅と基準位置データとを制御するPWM技術を用いて1画素に多階調の画像を再現する画像処理装置のスクリーン形成方法において、第1の解像度で画像データを入力し、第1の解像度を前記基準位置データを用いて第2の解像度に高解像度化し、前記基準位置データに基づく2つの基準ベクトルを用いて前記画像データに対して第2の解像度でスクリーンを形成するスクリーン形成方法である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PWM技術を使用して多階調の画像を再現する電子写真等の画像を出力する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真装置では、FM変調型のディザマトリクスを使用すると、単独の1画素(例えば600dpiの1画素)を印刷機の解像度相当(2400dpiの印刷機で600dpiの1ドットを再現すること。)並みに安定した状態で形成することが難しく、高画質な画像を得ることできない。そこで電子写真等の画像の出力装置では、AM変調型のディザマトリクスを使用し、複数画素をまとめた単位で面積的に階調を再現することにより、安定した画像を得る。AM変調型のディザとしては形状的には網点タイプや、万線タイプ、チェーンタイプ等の様々な手法が存在するが、本質的には複数ドットを任意の方向に固めて階調を再現するという点では同じである。
【0003】
画像を視覚的に満足させる程度に擬似階調数を上げるためには、閾値マトリクスのハーフトーンドット(網)の基本サイズを大きく取ればよい。しかし、反面ハーフトーンドットの基本サイズを大きくするほど解像度が低下する。 電子写真は、数千dpiの印刷機並みの高い解像度を持っておらず、現在600dpi程度の低い解像度を有するものが主流である。低い解像度で任意の角度、線数(100〜200線程度)に対してハーフトーンドットを作成して階調再現を満足させるためには、幾何的な制約が大きい。デジタル演算における幾何的な位置誤差を無視して無理にスクリーンを作成すると種々の問題が生ずる。例えば、作成した閾値マトリクスを用いてハーフトーン化処理を行うと、2次元平面上の位置における多くのハーフトーン中心の幾何的誤差が発生する。最終印字面上に形成された画像には、幾何的誤差によって、視覚に目立ち粒状感を増す任意の階調でテクスチャが多発する。
【0004】
よりハーフトーンドットの形成精度を高くし、視覚を満足させるための手法として、特許文献1、及び特許文献2に開示された仮想的ハーフトーンドット技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第5155599号明細書
【特許文献2】特開2003−234900号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし600dpi程度の解像度の電子写真等の画像処理装置では、この仮想的ハーフトーンドット自体の2次元空間上のデジタル的な制約による位相ズレが無視できない。ハーフトーンドット中心の微妙な周期性のズレが視覚に感知され、ザラツキあるいは粒状感となって認識されてしまう。
【0007】
最近の電子写真では、200線前後のスクリーンを使用しても、粒状性を悪化させることなく階調を再現できる。しかし600dpi程度の解像度において200線付近のスクリーンの生成は、2値であれ、多値であれ、自由度が少ない。4色の色重ねにおいては、スクリーン仕様(線数、角度)の選択の余地がほとんど無い。4色の色重ねにおいては、線数と角度の組合せがかなり離散的となり、色によっては色モアレが発生し易くなる。
【0008】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであって、線数/角度の設計自由度を向上することができ、色モアレの発生を低減することのできるスクリーン形成装置、スクリーン形成方法及び画像処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための本発明は、パルス幅と基準位置データとを制御するPWM技術を用いて1画素に多階調の画像を再現する画像処理装置のスクリーン形成方法において、第1の解像度で画像データを入力し、第1の解像度を前記基準位置データを用いて第2の解像度に高解像度化し、前記基準位置データに基づく2つの基準ベクトルを用いて前記画像データに対して第2の解像度でスクリーンを形成するスクリーン形成方法である。
【0010】
また本発明は、パルス幅と基準位置データとを制御するPWM技術を用いて1画素に多階調の画像を再現するスクリーン形成装置において、第1の解像度で画像データを入力する入力部と、第1の解像度を前記基準位置データを用いて第2の解像度に高解像度化する解像度変換部と、前記基準位置データに基づく2つの基準ベクトルを用いて前記画像データに対して第2の解像度でスクリーンを形成するスクリーン形成部とを備えたスクリーン形成装置である。
【0011】
また本発明は、パルス幅と基準位置データとを制御するPWM技術を用いて1画素に多階調の画像を再現する画像形成装置に出力データを供給する画像処理装置において、第1の解像度で画像データを入力する入力部と、第1の解像度を前記基準位置データを用いて第2の解像度に高解像度化する解像度変換部と、前記画像データを、前記基準位置データに基づく2つの基準ベクトルを用いて前記第2の解像度にスクリーニングした前記出力データを生成するスクリーン形成部とを備えた画像処理装置である。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、線数/角度の設計自由度を向上することができ、色モアレの発生を低減することのできるスクリーン形成装置、スクリーン形成方法及び画像処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】画像処理装置に係るMFPを用いたシステム構成を示す図。
【図2】MFP内のプリンタコントローラの一構成例を示すブロック図。
【図3】1画素に対するPWM制御の制御動作を示す図。
【図4A】基準位置信号を用いた画像の形成パターン例を示す図。
【図4B】基準位置信号を用いた画像の形成パターン例を示す図。
【図5A】面積変調による画素成長順序を指定する基本閾値マトリクス作成を説明する図。
【図5B】面積変調による画素成長順序を指定する基本閾値マトリクス作成を説明する図。
【図6A】従来の解像度でのスクリーンを生成する場合の2つの基準ベクトルを示す図である。
【図6B】仮想の解像度でのスクリーンを生成する場合の2つの基準ベクトルを示す図である。
【図7】2つの基準ベクトルを示す図。
【図8】1画素に対して3分割したサブピクセルを用いて形成したハーフトーンセルを示す図。
【図9】一般的な網点理論を説明する図。
【図10】2種類の基準位置信号を用いた例を示す図。
【図11】2倍の解像度化した基準ベクトルを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、電子写真プリンタを用いたデジタル複合機(MFP:Multi Function Peripheral)としての実施の形態について述べる。エンジン解像度は、600dpiとして説明する。
【0015】
図1は、画像処理装置に係るMFP12を用いたシステム構成を示す図である。
図1に示すシステムでは、ネットワーク10に接続したコンピュータ端末(PC)11はMFP12内部の一部機能であるプリンタ120に対して、画像データの構造を示すPDL(Page Description Language)データあるいはラスタのデータを転送する。すなわち、PC11はプリンタ120とのインターフェース特性に合わせて、プリンタドライバ21からプリンタコントローラ121にPDLデータあるいはラスタのデータを転送する。
【0016】
プリンタ120では、プリンタコントローラ121が、プリンタエンジン122を駆動制御する。プリンタコントローラ121は、PC11から送られたPDLデータをビットマップに展開して各画像処理を実行した後、画像データをデータ記憶部に格納する。プリンタエンジン122は、プリンタコントローラ121からのビットマップの画像データを駆動信号に変換し、用紙の搬送やレーザの駆動制御等を行って印字動作を行う。
【0017】
プリンタコントローラ121は、各オブジェクトの属性を解析してそれぞれに最適な画像処理を施し、合成して出力することができる。
【0018】
PC11とプリンタ120は必ずしもネットワークを介して接続する必要はなく、USBを使用して接続しても良く、1対1の関係で接続しても良い。プリンタコントローラ121とプリンタエンジン122とのインターフェースは、プリンタのアーキテクチャに依存する。
【0019】
図2は、MFP12内のプリンタコントローラ121の一構成例を示すブロック図である。プリンタコントローラ121は、イメージ属性分析部22、ラスタ演算部23、色変換部24、データ符号化部25、データ記憶部26、データ復号化部27、CD/TF部28、トナーリミット部29、ハーフトーン化部30を備える。
【0020】
PC11のアプリケーションプログラム20での印刷命令によってプリンタドライバ21から転送されたPDLデータは、ネットワークを介してプリンタコントローラ121に転送される。プリンタコントローラ121では、イメージ属性分析部22が、受け取ったPDLデータから画像の属性を分析し、種類を分類する。基本的に画像データは大きく分けて、テキスト、グラフィック、イメージビットマップのいずれかの属性となる。分類されたデータの属性はタグとしてそれぞれのタイプの属性を割り当てられ後段の処理に渡される。例えば上記3種類の属性を持つ場合には2bitのタグデータが必要となる。
【0021】
ラスタ演算部23はPDLデータをビットマップデータに変換する。例えば、モノクロプリントの場合は、PDLデータは、単色8bitのビットマップデータに変換される。カラープリントの場合は、PDLデータは、各色8bitのビットマップデータに変換される。各ビットマップデータには位置に対応するタグデータも割り当てられている。
【0022】
色変換部24は、変換された各色8bitのモニタなどで標準的なRGB色信号を、プリンタでの色再現色のCMY色、あるいはCMYK色に変換する。R,G,Bはレッド、グリーン、ブルーの各色を示し、C,M,Y,Kはシアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの各色を示している。図2の実施例では、色変換部24は、タグデータを基に、それぞれの画像の属性に応じて色変換の処理を切り替える。出力装置がモノクロプリンタであれば、色変換部24は不要である。
【0023】
色変換された画像は次に、データ符号化部25に送られ、データの圧縮が行われる。圧縮方式は、多値の画像データを圧縮する方式であってよい。圧縮方式は非可逆であってよい。圧縮された画像データは次に、メモリやHDD等のデータ記憶部26に一時記憶される。圧縮によりデータ記憶部26に記憶するデータの容量を抑えることができ、システム全体のパフォーマンスを上げることができる。またデータ記憶部26に一旦蓄えることで、電子ソートなどの機能を有効に利用できる。
【0024】
データ復号化部27は、データ記憶部26からデータを読み出し、符号化されたデータを復号化する。
【0025】
CD/TF部28は、ビットマップ変換された画像に対し、プリンタエンジン122の特性に合わせた画像濃度のキャリブレーションや好みの階調特性を得るためのγ変換を行う。CD/TF28部は、各オブジェクトごとの画像の特性とタグデータとに応じてγ変換処理を行う。
【0026】
トナーリミット部29では、エンジンでのCMYKトータル量が、印字可能な最大のトナー付着量以下の範囲に収まるように画像データを変換する。トナーリミット部29は、オブジェクトごとの画像の特性とタグデータとに応じてトナーリミット量を変更する。
【0027】
ハーフトーン化部30は、例えば閾値マトリクスを用いたハーフトーン化処理により、1画素のデータをプリンタ120の印字能力に合わせたbit数の階調数の画像データに変換する。ハーフトーン化部30は、オブジェクトごとの画像の特性とタグデータとに応じてハーフトーン化する。
【0028】
プリンタエンジン122は、画像データを、レーザを駆動するためのPWM(Pulse Wide Modulation)信号に変換し、画像を形成する。
【0029】
図3は、1画素に対するPWM制御の制御動作を示す図である。多値のPWM制御においては、入力された画像データを基に、パルス幅のみでなく、基準位置制御信号を同時に生成する。中間階調の画素を印字するときは、階調値幅とスタート位置(左基準、右基準、中央基準)を制御する。一般に位置制御信号としては、左基準信号、右基準信号があれば画像を形成することは可能であり、より高精度で位置を制御したい場合に中央基準信号も使用する。
【0030】
図4A、図4Bは、基準位置信号を用いた画像の形成パターン例を示す図である。図4Aは万線タイプのスクリーンパターン、図4Bは網点タイプのスクリーンパターンである。図4A,図4Bでは、印字のスタート位置と印字の方向を矢印で示している。
【0031】
基準位置信号は、画素形成の安定化を図るために使用される。例えば、図4Aでは、画素毎に基準位置を設定することで同じ幅の安定した万線を形成する。即ち、基準位置信号は、輪郭部のジャギを減らしスムーズな万線を形成するために使用される。図4Bでは、基準位置信号は、画素割れが発生しないように、網の形成を安定化するために使用される。即ち、基準位置信号の位置情報は、スクリーンパターンを生成する際の計算段階で確定する値である。基準位置信号の設定と画像信号データにおける解像度の向上とは、直接には関係しない。
【0032】
図5A,図5Bは、網点タイプのハーフトーンを例として、面積変調による画素成長順序を指定する基本閾値マトリクス作成を説明する図である。図5Aは基本となるハーフトーン単位を示す図である。基本となるハーフトーン単位は、正方形状の16個のセルと各辺に設けられた4個のセルの合計20個のセルを有する。1つのセルが1つの画素に対応する。2値の場合は、各セルの中には任意の1つの閾値が割り振られ、多値の場合は[多値数―1]個の閾値が割り振られる。基本となるハーフトーン単位では、例えば、階調数が増加するにつれて、図5Aの黒塗りで示す中心位置をスタート点として、その周囲に黒塗り部が広がる。画素の黒塗り部の増え方(成長順序)が、基本閾値マトリクスによって指定される。
【0033】
図5Bは、デジタル的にハーフトーン処理できるように展開した矩形の閾値マトリクスを示す図である。矩形の閾値マトリクスは、基本となるハーフトーン単位をタイル状に形成している。閾値マトリクスの最小サイズは、デジタル的な繰り返しアドレス演算処理によるハーフトーン処理が可能となるサイズとする。従って、最小サイズは繰り返し演算の最小周期を与える。また閾値マトリクスの最小サイズは、ハーフトーン単位形状から幾何的に自ずと決定される。
【0034】
図5Bでは、閾値マトリクスは、複数の基本となる各ハーフトーン中心(図中の黒塗りの部分)において、ハーフトーン単位内の最小の値を持っている。各ハーフトーン中心は、最も近い別のハーフトーン中心との間隔がともに等しい。また閾値マトリクスは、有理正接の角度でアドレス可能な格子要素を備えている。従って、図5Bの各セル(ドット)は、仮想ハーフトーンドットではなく、デジタル演算上で完全に位置を規定することのできるハーフトーン単位群である。ハーフトーン処理自体は、閾値マトリクスによる閾値処理の他、予めテーブル化されたデータを用いたLUT処理等様々な構成で実現できる。
【0035】
従来のスクリーンの形成方法では、600×600dpiの解像度に分割した1画素を基本とし、タイリング処理も基本となる1画素を単位として実行していた。本実施の形態では、PWM制御の基準位置信号を仮想的な解像度情報として使用する。基準位置信号が左、中央、右の3つの場合、600dpiの1画素が3つの解像度情報を備えることとなるため、1800dpi相当の解像度を得られて、均一で揃ったハーフトーンセルを2次元平面上に形成できる。
【0036】
図6A,図6Bは、仮想解像度向上によるベクトル拡張例を示す図である。図6Aは、従来の解像度でスクリーンを生成する場合の2つの基準ベクトルを示している。ハーフトーンセルの1つのセルを起点とする2つの基準ベクトルが選択される。2つの基準ベクトルを合成して基本となるハーフトーンセルが決定される。基本となるハーフトーンセルをタイリングすることにより、デジタル処理可能な矩形のスクリーンテーブルが生成される。
【0037】
図6Bは、仮想の高解像度でのスクリーンを生成する場合の2つの基準ベクトルを示している。基準位置信号を仮想的な解像度情報として用いることで、従来の1つのハーフトーンセルが仮想的に3つに分割される。従って、ハーフトーンセル内のいずれか1つを起点とする2つの基準ベクトルを選択することができる。PWMの分割方向に見かけ上高解像度化(図では1800dpi化)した、解像度情報の2つのベクトルを基にスクリーンを構成することにより、実解像度では実現不可能なベクトルを設定でき、より形成自由度の高い線数、角度のハーフトーンドットの形成を可能としている。
【0038】
数式を用いて具体的に説明する。図7に示すような2つの基準ベクトルをu(a,−b)、v(c,d)とする。2つのベクトルで形成されるスクリーンの線数(lpi)は、例えばuを基準とすると(1)式で表現することが出来る。
【数1】
【0039】
また、スクリーンの角度(θ)は、(2)式で表現することが出来る。
【数2】
【0040】
正規直交系のスクリーンの場合は、u(a,−b)、v(b,a)となり2つのベクトルは長さが等しく、直交した(内積0の)ベクトルとなる。
【0041】
式(1)、(2)において、主走査方向の解像度Xdpiが従来の3倍の解像度を持つことから、要求される範囲の線数、角度のu,vベクトルの組合せ数が増加する。従って、より形成自由度の高い線数、角度のハーフトーンドットの形成が可能となる。
【0042】
図8は、600dpiの1画素に対して3分割したサブピクセルを用いて形成したハーフトーンセルを示す図である。図中2重丸で示した点が2つの基準ベクトルで形成されるサブピクセルを表している。図中黒い点は、他のハーフトーンセルに属するサブピクセルを表している。
【0043】
図8において、大きな丸で囲んだセルには異なるハーフトーンセルに属するサブピクセルが混在している。仮想的に1画素を3つのサブピクセルに分割しているが、1つのセルが異なるハーフトーンセルに割り当てられることにより、画素割れを生ずる恐れがある。本実施の形態では、画素成長の優先順位が高いサブピクセルの基準位置信号を優先して画素に割り当てることで、画素割れの弊害を抑制する。
【0044】
カラーについて述べる。面積変調(AMスクリーン)で階調を再現する方式では、メカ的な版ズレなどが生じた場合、色モアレが発生してしまうため、色版毎に異なるスクリーン角度に設定する必要がある。一般的な網点理論では、単色ではパターンが目立たないイエローは除外して、図9に示すようにシアン、マゼンタ、ブラックの各スクリーンの線数を同一とし、角度は30°(例えば15°、45°、75°)づつ差をつけることにより、理論上色モアレの発生を抑えることができる。
【0045】
600dpi程度の解像度で理論に従った無理タンジェントのスクリーンを形成することは難しい。電子写真等では実際にはイエローの色モアレも、他の色と混色したら目立つ事もある。
【0046】
本実施の形態では、仮想的に解像度を向上させるスクリーンの生成方法と、通常解像度でのスクリーンの生成方法を、色毎に選択することによって、各色間のスクリーンの線数差、角度差を有効に調整する。
【0047】
例えば図10に示すように基準位置信号を左、右の2種類を用いて、仮想的な解像度を2倍しても良い。図11に示すような基準ベクトルを使用してスクリーンを生成してもよい。
【0048】
また、スクリーン角度は従来の解像度では実現できなかった角度とすることができる。例えば、少なくとも1色のスクリーン角αを式(3)で表される値とすることができる。
【0049】
tanα=k × j /(n+k × i) −式(3)
但し tanα≠(j/i)
ここで、i=(主走査側の)任意の整数、j=(副走査側の)任意の整数、k=基準位置信号の種類数、n=0〜(k-1)の整数である。
【0050】
なお、本実施の形態では、基準位置信号が2種類と、3種類の場合について説明したが、基準位置信号がK種類(Kは2以上の整数)であっても良い。また、本実施の形態では、画像を主走査方向と副走査方向のそれぞれの方向に複数の画素を並べて構成しているが、本発明が対象とする画像はこの構成の画像に限られない。
【0051】
本実施の形態によれば、基準位置信号をスクリーン生成における仮想的な解像度情報として利用することにより、細かな線数/角度のスクリーンを生成する。仮想的に数倍の異なる種類のベクトルを指定できるため、線数/角度の生成自由度が大幅に向上する。各色のスクリーン設定角度を直交に近付けることができるため、色重ねによる色モアレをコントロールし易くなる。
【0052】
本実施の形態のハーフトーンスクリーン生成は、図2に示すハーフトーン化部30の処理によって実現することができる。例えば、ハーフトーン化部30において、閾値マトリクスによる閾値処理の他、予めテーブル化されたデータを用いたLUT(Look Up Table)処理等様々な構成で実現できる。
【0053】
尚、本発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。
また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、線数/角度の設計自由度を向上することができ、色モアレの発生を低減することのできるスクリーン形成装置、及び画像処理装置を製造する産業で利用することができる。
【符号の説明】
【0055】
10…ネットワーク、11…PC、12…MFP、20…アプリケーションプログラム、21…プリンタドライバ、22…イメージ属性分析部、23…ラスタ演算部、24…色変換部、25…データ符号化部、26…データ記憶部、27…データ復号化部、28…TF部、30…ハーフトーン化部、120…プリンタ、121…プリンタコントローラ、122…プリンタエンジン。
【技術分野】
【0001】
本発明は、PWM技術を使用して多階調の画像を再現する電子写真等の画像を出力する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真装置では、FM変調型のディザマトリクスを使用すると、単独の1画素(例えば600dpiの1画素)を印刷機の解像度相当(2400dpiの印刷機で600dpiの1ドットを再現すること。)並みに安定した状態で形成することが難しく、高画質な画像を得ることできない。そこで電子写真等の画像の出力装置では、AM変調型のディザマトリクスを使用し、複数画素をまとめた単位で面積的に階調を再現することにより、安定した画像を得る。AM変調型のディザとしては形状的には網点タイプや、万線タイプ、チェーンタイプ等の様々な手法が存在するが、本質的には複数ドットを任意の方向に固めて階調を再現するという点では同じである。
【0003】
画像を視覚的に満足させる程度に擬似階調数を上げるためには、閾値マトリクスのハーフトーンドット(網)の基本サイズを大きく取ればよい。しかし、反面ハーフトーンドットの基本サイズを大きくするほど解像度が低下する。 電子写真は、数千dpiの印刷機並みの高い解像度を持っておらず、現在600dpi程度の低い解像度を有するものが主流である。低い解像度で任意の角度、線数(100〜200線程度)に対してハーフトーンドットを作成して階調再現を満足させるためには、幾何的な制約が大きい。デジタル演算における幾何的な位置誤差を無視して無理にスクリーンを作成すると種々の問題が生ずる。例えば、作成した閾値マトリクスを用いてハーフトーン化処理を行うと、2次元平面上の位置における多くのハーフトーン中心の幾何的誤差が発生する。最終印字面上に形成された画像には、幾何的誤差によって、視覚に目立ち粒状感を増す任意の階調でテクスチャが多発する。
【0004】
よりハーフトーンドットの形成精度を高くし、視覚を満足させるための手法として、特許文献1、及び特許文献2に開示された仮想的ハーフトーンドット技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第5155599号明細書
【特許文献2】特開2003−234900号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし600dpi程度の解像度の電子写真等の画像処理装置では、この仮想的ハーフトーンドット自体の2次元空間上のデジタル的な制約による位相ズレが無視できない。ハーフトーンドット中心の微妙な周期性のズレが視覚に感知され、ザラツキあるいは粒状感となって認識されてしまう。
【0007】
最近の電子写真では、200線前後のスクリーンを使用しても、粒状性を悪化させることなく階調を再現できる。しかし600dpi程度の解像度において200線付近のスクリーンの生成は、2値であれ、多値であれ、自由度が少ない。4色の色重ねにおいては、スクリーン仕様(線数、角度)の選択の余地がほとんど無い。4色の色重ねにおいては、線数と角度の組合せがかなり離散的となり、色によっては色モアレが発生し易くなる。
【0008】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであって、線数/角度の設計自由度を向上することができ、色モアレの発生を低減することのできるスクリーン形成装置、スクリーン形成方法及び画像処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための本発明は、パルス幅と基準位置データとを制御するPWM技術を用いて1画素に多階調の画像を再現する画像処理装置のスクリーン形成方法において、第1の解像度で画像データを入力し、第1の解像度を前記基準位置データを用いて第2の解像度に高解像度化し、前記基準位置データに基づく2つの基準ベクトルを用いて前記画像データに対して第2の解像度でスクリーンを形成するスクリーン形成方法である。
【0010】
また本発明は、パルス幅と基準位置データとを制御するPWM技術を用いて1画素に多階調の画像を再現するスクリーン形成装置において、第1の解像度で画像データを入力する入力部と、第1の解像度を前記基準位置データを用いて第2の解像度に高解像度化する解像度変換部と、前記基準位置データに基づく2つの基準ベクトルを用いて前記画像データに対して第2の解像度でスクリーンを形成するスクリーン形成部とを備えたスクリーン形成装置である。
【0011】
また本発明は、パルス幅と基準位置データとを制御するPWM技術を用いて1画素に多階調の画像を再現する画像形成装置に出力データを供給する画像処理装置において、第1の解像度で画像データを入力する入力部と、第1の解像度を前記基準位置データを用いて第2の解像度に高解像度化する解像度変換部と、前記画像データを、前記基準位置データに基づく2つの基準ベクトルを用いて前記第2の解像度にスクリーニングした前記出力データを生成するスクリーン形成部とを備えた画像処理装置である。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、線数/角度の設計自由度を向上することができ、色モアレの発生を低減することのできるスクリーン形成装置、スクリーン形成方法及び画像処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】画像処理装置に係るMFPを用いたシステム構成を示す図。
【図2】MFP内のプリンタコントローラの一構成例を示すブロック図。
【図3】1画素に対するPWM制御の制御動作を示す図。
【図4A】基準位置信号を用いた画像の形成パターン例を示す図。
【図4B】基準位置信号を用いた画像の形成パターン例を示す図。
【図5A】面積変調による画素成長順序を指定する基本閾値マトリクス作成を説明する図。
【図5B】面積変調による画素成長順序を指定する基本閾値マトリクス作成を説明する図。
【図6A】従来の解像度でのスクリーンを生成する場合の2つの基準ベクトルを示す図である。
【図6B】仮想の解像度でのスクリーンを生成する場合の2つの基準ベクトルを示す図である。
【図7】2つの基準ベクトルを示す図。
【図8】1画素に対して3分割したサブピクセルを用いて形成したハーフトーンセルを示す図。
【図9】一般的な網点理論を説明する図。
【図10】2種類の基準位置信号を用いた例を示す図。
【図11】2倍の解像度化した基準ベクトルを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、電子写真プリンタを用いたデジタル複合機(MFP:Multi Function Peripheral)としての実施の形態について述べる。エンジン解像度は、600dpiとして説明する。
【0015】
図1は、画像処理装置に係るMFP12を用いたシステム構成を示す図である。
図1に示すシステムでは、ネットワーク10に接続したコンピュータ端末(PC)11はMFP12内部の一部機能であるプリンタ120に対して、画像データの構造を示すPDL(Page Description Language)データあるいはラスタのデータを転送する。すなわち、PC11はプリンタ120とのインターフェース特性に合わせて、プリンタドライバ21からプリンタコントローラ121にPDLデータあるいはラスタのデータを転送する。
【0016】
プリンタ120では、プリンタコントローラ121が、プリンタエンジン122を駆動制御する。プリンタコントローラ121は、PC11から送られたPDLデータをビットマップに展開して各画像処理を実行した後、画像データをデータ記憶部に格納する。プリンタエンジン122は、プリンタコントローラ121からのビットマップの画像データを駆動信号に変換し、用紙の搬送やレーザの駆動制御等を行って印字動作を行う。
【0017】
プリンタコントローラ121は、各オブジェクトの属性を解析してそれぞれに最適な画像処理を施し、合成して出力することができる。
【0018】
PC11とプリンタ120は必ずしもネットワークを介して接続する必要はなく、USBを使用して接続しても良く、1対1の関係で接続しても良い。プリンタコントローラ121とプリンタエンジン122とのインターフェースは、プリンタのアーキテクチャに依存する。
【0019】
図2は、MFP12内のプリンタコントローラ121の一構成例を示すブロック図である。プリンタコントローラ121は、イメージ属性分析部22、ラスタ演算部23、色変換部24、データ符号化部25、データ記憶部26、データ復号化部27、CD/TF部28、トナーリミット部29、ハーフトーン化部30を備える。
【0020】
PC11のアプリケーションプログラム20での印刷命令によってプリンタドライバ21から転送されたPDLデータは、ネットワークを介してプリンタコントローラ121に転送される。プリンタコントローラ121では、イメージ属性分析部22が、受け取ったPDLデータから画像の属性を分析し、種類を分類する。基本的に画像データは大きく分けて、テキスト、グラフィック、イメージビットマップのいずれかの属性となる。分類されたデータの属性はタグとしてそれぞれのタイプの属性を割り当てられ後段の処理に渡される。例えば上記3種類の属性を持つ場合には2bitのタグデータが必要となる。
【0021】
ラスタ演算部23はPDLデータをビットマップデータに変換する。例えば、モノクロプリントの場合は、PDLデータは、単色8bitのビットマップデータに変換される。カラープリントの場合は、PDLデータは、各色8bitのビットマップデータに変換される。各ビットマップデータには位置に対応するタグデータも割り当てられている。
【0022】
色変換部24は、変換された各色8bitのモニタなどで標準的なRGB色信号を、プリンタでの色再現色のCMY色、あるいはCMYK色に変換する。R,G,Bはレッド、グリーン、ブルーの各色を示し、C,M,Y,Kはシアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの各色を示している。図2の実施例では、色変換部24は、タグデータを基に、それぞれの画像の属性に応じて色変換の処理を切り替える。出力装置がモノクロプリンタであれば、色変換部24は不要である。
【0023】
色変換された画像は次に、データ符号化部25に送られ、データの圧縮が行われる。圧縮方式は、多値の画像データを圧縮する方式であってよい。圧縮方式は非可逆であってよい。圧縮された画像データは次に、メモリやHDD等のデータ記憶部26に一時記憶される。圧縮によりデータ記憶部26に記憶するデータの容量を抑えることができ、システム全体のパフォーマンスを上げることができる。またデータ記憶部26に一旦蓄えることで、電子ソートなどの機能を有効に利用できる。
【0024】
データ復号化部27は、データ記憶部26からデータを読み出し、符号化されたデータを復号化する。
【0025】
CD/TF部28は、ビットマップ変換された画像に対し、プリンタエンジン122の特性に合わせた画像濃度のキャリブレーションや好みの階調特性を得るためのγ変換を行う。CD/TF28部は、各オブジェクトごとの画像の特性とタグデータとに応じてγ変換処理を行う。
【0026】
トナーリミット部29では、エンジンでのCMYKトータル量が、印字可能な最大のトナー付着量以下の範囲に収まるように画像データを変換する。トナーリミット部29は、オブジェクトごとの画像の特性とタグデータとに応じてトナーリミット量を変更する。
【0027】
ハーフトーン化部30は、例えば閾値マトリクスを用いたハーフトーン化処理により、1画素のデータをプリンタ120の印字能力に合わせたbit数の階調数の画像データに変換する。ハーフトーン化部30は、オブジェクトごとの画像の特性とタグデータとに応じてハーフトーン化する。
【0028】
プリンタエンジン122は、画像データを、レーザを駆動するためのPWM(Pulse Wide Modulation)信号に変換し、画像を形成する。
【0029】
図3は、1画素に対するPWM制御の制御動作を示す図である。多値のPWM制御においては、入力された画像データを基に、パルス幅のみでなく、基準位置制御信号を同時に生成する。中間階調の画素を印字するときは、階調値幅とスタート位置(左基準、右基準、中央基準)を制御する。一般に位置制御信号としては、左基準信号、右基準信号があれば画像を形成することは可能であり、より高精度で位置を制御したい場合に中央基準信号も使用する。
【0030】
図4A、図4Bは、基準位置信号を用いた画像の形成パターン例を示す図である。図4Aは万線タイプのスクリーンパターン、図4Bは網点タイプのスクリーンパターンである。図4A,図4Bでは、印字のスタート位置と印字の方向を矢印で示している。
【0031】
基準位置信号は、画素形成の安定化を図るために使用される。例えば、図4Aでは、画素毎に基準位置を設定することで同じ幅の安定した万線を形成する。即ち、基準位置信号は、輪郭部のジャギを減らしスムーズな万線を形成するために使用される。図4Bでは、基準位置信号は、画素割れが発生しないように、網の形成を安定化するために使用される。即ち、基準位置信号の位置情報は、スクリーンパターンを生成する際の計算段階で確定する値である。基準位置信号の設定と画像信号データにおける解像度の向上とは、直接には関係しない。
【0032】
図5A,図5Bは、網点タイプのハーフトーンを例として、面積変調による画素成長順序を指定する基本閾値マトリクス作成を説明する図である。図5Aは基本となるハーフトーン単位を示す図である。基本となるハーフトーン単位は、正方形状の16個のセルと各辺に設けられた4個のセルの合計20個のセルを有する。1つのセルが1つの画素に対応する。2値の場合は、各セルの中には任意の1つの閾値が割り振られ、多値の場合は[多値数―1]個の閾値が割り振られる。基本となるハーフトーン単位では、例えば、階調数が増加するにつれて、図5Aの黒塗りで示す中心位置をスタート点として、その周囲に黒塗り部が広がる。画素の黒塗り部の増え方(成長順序)が、基本閾値マトリクスによって指定される。
【0033】
図5Bは、デジタル的にハーフトーン処理できるように展開した矩形の閾値マトリクスを示す図である。矩形の閾値マトリクスは、基本となるハーフトーン単位をタイル状に形成している。閾値マトリクスの最小サイズは、デジタル的な繰り返しアドレス演算処理によるハーフトーン処理が可能となるサイズとする。従って、最小サイズは繰り返し演算の最小周期を与える。また閾値マトリクスの最小サイズは、ハーフトーン単位形状から幾何的に自ずと決定される。
【0034】
図5Bでは、閾値マトリクスは、複数の基本となる各ハーフトーン中心(図中の黒塗りの部分)において、ハーフトーン単位内の最小の値を持っている。各ハーフトーン中心は、最も近い別のハーフトーン中心との間隔がともに等しい。また閾値マトリクスは、有理正接の角度でアドレス可能な格子要素を備えている。従って、図5Bの各セル(ドット)は、仮想ハーフトーンドットではなく、デジタル演算上で完全に位置を規定することのできるハーフトーン単位群である。ハーフトーン処理自体は、閾値マトリクスによる閾値処理の他、予めテーブル化されたデータを用いたLUT処理等様々な構成で実現できる。
【0035】
従来のスクリーンの形成方法では、600×600dpiの解像度に分割した1画素を基本とし、タイリング処理も基本となる1画素を単位として実行していた。本実施の形態では、PWM制御の基準位置信号を仮想的な解像度情報として使用する。基準位置信号が左、中央、右の3つの場合、600dpiの1画素が3つの解像度情報を備えることとなるため、1800dpi相当の解像度を得られて、均一で揃ったハーフトーンセルを2次元平面上に形成できる。
【0036】
図6A,図6Bは、仮想解像度向上によるベクトル拡張例を示す図である。図6Aは、従来の解像度でスクリーンを生成する場合の2つの基準ベクトルを示している。ハーフトーンセルの1つのセルを起点とする2つの基準ベクトルが選択される。2つの基準ベクトルを合成して基本となるハーフトーンセルが決定される。基本となるハーフトーンセルをタイリングすることにより、デジタル処理可能な矩形のスクリーンテーブルが生成される。
【0037】
図6Bは、仮想の高解像度でのスクリーンを生成する場合の2つの基準ベクトルを示している。基準位置信号を仮想的な解像度情報として用いることで、従来の1つのハーフトーンセルが仮想的に3つに分割される。従って、ハーフトーンセル内のいずれか1つを起点とする2つの基準ベクトルを選択することができる。PWMの分割方向に見かけ上高解像度化(図では1800dpi化)した、解像度情報の2つのベクトルを基にスクリーンを構成することにより、実解像度では実現不可能なベクトルを設定でき、より形成自由度の高い線数、角度のハーフトーンドットの形成を可能としている。
【0038】
数式を用いて具体的に説明する。図7に示すような2つの基準ベクトルをu(a,−b)、v(c,d)とする。2つのベクトルで形成されるスクリーンの線数(lpi)は、例えばuを基準とすると(1)式で表現することが出来る。
【数1】
【0039】
また、スクリーンの角度(θ)は、(2)式で表現することが出来る。
【数2】
【0040】
正規直交系のスクリーンの場合は、u(a,−b)、v(b,a)となり2つのベクトルは長さが等しく、直交した(内積0の)ベクトルとなる。
【0041】
式(1)、(2)において、主走査方向の解像度Xdpiが従来の3倍の解像度を持つことから、要求される範囲の線数、角度のu,vベクトルの組合せ数が増加する。従って、より形成自由度の高い線数、角度のハーフトーンドットの形成が可能となる。
【0042】
図8は、600dpiの1画素に対して3分割したサブピクセルを用いて形成したハーフトーンセルを示す図である。図中2重丸で示した点が2つの基準ベクトルで形成されるサブピクセルを表している。図中黒い点は、他のハーフトーンセルに属するサブピクセルを表している。
【0043】
図8において、大きな丸で囲んだセルには異なるハーフトーンセルに属するサブピクセルが混在している。仮想的に1画素を3つのサブピクセルに分割しているが、1つのセルが異なるハーフトーンセルに割り当てられることにより、画素割れを生ずる恐れがある。本実施の形態では、画素成長の優先順位が高いサブピクセルの基準位置信号を優先して画素に割り当てることで、画素割れの弊害を抑制する。
【0044】
カラーについて述べる。面積変調(AMスクリーン)で階調を再現する方式では、メカ的な版ズレなどが生じた場合、色モアレが発生してしまうため、色版毎に異なるスクリーン角度に設定する必要がある。一般的な網点理論では、単色ではパターンが目立たないイエローは除外して、図9に示すようにシアン、マゼンタ、ブラックの各スクリーンの線数を同一とし、角度は30°(例えば15°、45°、75°)づつ差をつけることにより、理論上色モアレの発生を抑えることができる。
【0045】
600dpi程度の解像度で理論に従った無理タンジェントのスクリーンを形成することは難しい。電子写真等では実際にはイエローの色モアレも、他の色と混色したら目立つ事もある。
【0046】
本実施の形態では、仮想的に解像度を向上させるスクリーンの生成方法と、通常解像度でのスクリーンの生成方法を、色毎に選択することによって、各色間のスクリーンの線数差、角度差を有効に調整する。
【0047】
例えば図10に示すように基準位置信号を左、右の2種類を用いて、仮想的な解像度を2倍しても良い。図11に示すような基準ベクトルを使用してスクリーンを生成してもよい。
【0048】
また、スクリーン角度は従来の解像度では実現できなかった角度とすることができる。例えば、少なくとも1色のスクリーン角αを式(3)で表される値とすることができる。
【0049】
tanα=k × j /(n+k × i) −式(3)
但し tanα≠(j/i)
ここで、i=(主走査側の)任意の整数、j=(副走査側の)任意の整数、k=基準位置信号の種類数、n=0〜(k-1)の整数である。
【0050】
なお、本実施の形態では、基準位置信号が2種類と、3種類の場合について説明したが、基準位置信号がK種類(Kは2以上の整数)であっても良い。また、本実施の形態では、画像を主走査方向と副走査方向のそれぞれの方向に複数の画素を並べて構成しているが、本発明が対象とする画像はこの構成の画像に限られない。
【0051】
本実施の形態によれば、基準位置信号をスクリーン生成における仮想的な解像度情報として利用することにより、細かな線数/角度のスクリーンを生成する。仮想的に数倍の異なる種類のベクトルを指定できるため、線数/角度の生成自由度が大幅に向上する。各色のスクリーン設定角度を直交に近付けることができるため、色重ねによる色モアレをコントロールし易くなる。
【0052】
本実施の形態のハーフトーンスクリーン生成は、図2に示すハーフトーン化部30の処理によって実現することができる。例えば、ハーフトーン化部30において、閾値マトリクスによる閾値処理の他、予めテーブル化されたデータを用いたLUT(Look Up Table)処理等様々な構成で実現できる。
【0053】
尚、本発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。
また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、線数/角度の設計自由度を向上することができ、色モアレの発生を低減することのできるスクリーン形成装置、及び画像処理装置を製造する産業で利用することができる。
【符号の説明】
【0055】
10…ネットワーク、11…PC、12…MFP、20…アプリケーションプログラム、21…プリンタドライバ、22…イメージ属性分析部、23…ラスタ演算部、24…色変換部、25…データ符号化部、26…データ記憶部、27…データ復号化部、28…TF部、30…ハーフトーン化部、120…プリンタ、121…プリンタコントローラ、122…プリンタエンジン。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルス幅と基準位置データとを制御するPWM技術を用いて1画素に多階調の画像を再現する画像処理装置のスクリーン形成方法において、
第1の解像度で画像データを入力し、
第1の解像度を前記基準位置データを用いて第2の解像度に高解像度化し、
前記基準位置データに基づく2つの基準ベクトルを用いて前記画像データに対して第2の解像度でスクリーンを形成することを特徴とするスクリーン生成方法。
【請求項2】
前記第2の解像度で形成されたスクリーンには、前記第1の解像度で形成されたスクリーンに含まれない線数、角度のハーフトーンドットが形成されていることを特徴とする請求項1に記載のスクリーン形成方法。
【請求項3】
前記基準位置データとして左、中央、右の3種類を用いて、前記第2の解像度を前記第1の解像度の3倍とすることを特徴とする請求項1に記載のスクリーン形成方法。
【請求項4】
前記基準位置データとして左、右の2種類を用いて、前記第2の解像度を前記第1の解像度の2倍とすることを特徴とする請求項1に記載のスクリーン形成方法。
【請求項5】
カラーのスクリーンを形成する場合、
前記第2の解像度で形成したスクリーンと前記第1の解像度で形成したスクリーンとを、カラー毎に択一的に選択して組合わせて、各カラー間のスクリーンの角度差を調整することを特徴とする請求項1に記載のスクリーン形成方法。
【請求項6】
第2の解像度でスクリーンを形成する際、1画素内のサブピクセルが異なるハーフトーンセルに割り当てられるときは、画素成長の優先順位が高いサブピクセルのポジション信号を優先してその画素に割り当てることを特徴とする請求項1に記載のスクリーン形成方法。
【請求項7】
前記画像は、主走査方向と副走査方向とのそれぞれに複数の画素を並べた画像であることを特徴とする請求項1に記載のスクリーン形成方法。
【請求項8】
前記基準位置データとしてK(Kは2以上の整数)種類を用いて、前記第2の解像度を前記第1の解像度のK倍とすることを特徴とする請求項7に記載のスクリーン形成方法。
【請求項9】
少なくとも1色のスクリーン角αは下記式で表されることを特徴とする請求項8に記載のスクリーン形成方法。
tanα=k × j /(n+k × i)
但し tanα≠(j/i)
ここで、i=主走査側の任意の整数、j=副走査側の任意の整数、k=基準位置信号の種類数、n=0〜(k-1)の整数である。
【請求項10】
パルス幅と基準位置データとを制御するPWM技術を用いて1画素に多階調の画像を再現するスクリーン形成装置において、
第1の解像度で画像データを入力する入力部と、
第1の解像度を前記基準位置データを用いて第2の解像度に高解像度化する解像度変換部と、
前記基準位置データに基づく2つの基準ベクトルを用いて前記画像データに対して第2の解像度でスクリーンを形成するスクリーン形成部と
を備えたことを特徴とするスクリーン形成装置。
【請求項11】
パルス幅と基準位置データとを制御するPWM技術を用いて1画素に多階調の画像を再現する画像形成装置に出力データを供給する画像処理装置において、
第1の解像度で画像データを入力する入力部と、
第1の解像度を前記基準位置データを用いて第2の解像度に高解像度化する解像度変換部と、
前記画像データを、前記基準位置データに基づく2つの基準ベクトルを用いて前記第2の解像度にスクリーニングした前記出力データを生成するスクリーン形成部と
を備えたことを特徴とする画像処理装置。
【請求項1】
パルス幅と基準位置データとを制御するPWM技術を用いて1画素に多階調の画像を再現する画像処理装置のスクリーン形成方法において、
第1の解像度で画像データを入力し、
第1の解像度を前記基準位置データを用いて第2の解像度に高解像度化し、
前記基準位置データに基づく2つの基準ベクトルを用いて前記画像データに対して第2の解像度でスクリーンを形成することを特徴とするスクリーン生成方法。
【請求項2】
前記第2の解像度で形成されたスクリーンには、前記第1の解像度で形成されたスクリーンに含まれない線数、角度のハーフトーンドットが形成されていることを特徴とする請求項1に記載のスクリーン形成方法。
【請求項3】
前記基準位置データとして左、中央、右の3種類を用いて、前記第2の解像度を前記第1の解像度の3倍とすることを特徴とする請求項1に記載のスクリーン形成方法。
【請求項4】
前記基準位置データとして左、右の2種類を用いて、前記第2の解像度を前記第1の解像度の2倍とすることを特徴とする請求項1に記載のスクリーン形成方法。
【請求項5】
カラーのスクリーンを形成する場合、
前記第2の解像度で形成したスクリーンと前記第1の解像度で形成したスクリーンとを、カラー毎に択一的に選択して組合わせて、各カラー間のスクリーンの角度差を調整することを特徴とする請求項1に記載のスクリーン形成方法。
【請求項6】
第2の解像度でスクリーンを形成する際、1画素内のサブピクセルが異なるハーフトーンセルに割り当てられるときは、画素成長の優先順位が高いサブピクセルのポジション信号を優先してその画素に割り当てることを特徴とする請求項1に記載のスクリーン形成方法。
【請求項7】
前記画像は、主走査方向と副走査方向とのそれぞれに複数の画素を並べた画像であることを特徴とする請求項1に記載のスクリーン形成方法。
【請求項8】
前記基準位置データとしてK(Kは2以上の整数)種類を用いて、前記第2の解像度を前記第1の解像度のK倍とすることを特徴とする請求項7に記載のスクリーン形成方法。
【請求項9】
少なくとも1色のスクリーン角αは下記式で表されることを特徴とする請求項8に記載のスクリーン形成方法。
tanα=k × j /(n+k × i)
但し tanα≠(j/i)
ここで、i=主走査側の任意の整数、j=副走査側の任意の整数、k=基準位置信号の種類数、n=0〜(k-1)の整数である。
【請求項10】
パルス幅と基準位置データとを制御するPWM技術を用いて1画素に多階調の画像を再現するスクリーン形成装置において、
第1の解像度で画像データを入力する入力部と、
第1の解像度を前記基準位置データを用いて第2の解像度に高解像度化する解像度変換部と、
前記基準位置データに基づく2つの基準ベクトルを用いて前記画像データに対して第2の解像度でスクリーンを形成するスクリーン形成部と
を備えたことを特徴とするスクリーン形成装置。
【請求項11】
パルス幅と基準位置データとを制御するPWM技術を用いて1画素に多階調の画像を再現する画像形成装置に出力データを供給する画像処理装置において、
第1の解像度で画像データを入力する入力部と、
第1の解像度を前記基準位置データを用いて第2の解像度に高解像度化する解像度変換部と、
前記画像データを、前記基準位置データに基づく2つの基準ベクトルを用いて前記第2の解像度にスクリーニングした前記出力データを生成するスクリーン形成部と
を備えたことを特徴とする画像処理装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−189011(P2009−189011A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−26493(P2009−26493)
【出願日】平成21年2月6日(2009.2.6)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年2月6日(2009.2.6)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】
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