説明

スクロール圧縮機

【課題】自転阻止部材に対して適量の潤滑油を供給すること。
【解決手段】旋回スクロール52の公転旋回を摺動可能に支持するスラスト部533の面の円環状に沿って円環状に形成された中間溝535と、スラスト部533の面における中間溝535の環状の外側にて一端536aが中間溝535に突き当たり他端536bがキー溝534a上に至り延伸された外溝536とを備える。このため、中間溝535によりスラスト部533に潤滑油Lを一端貯留させ、その後に外溝536によりキー溝534aに潤滑油Lを供給するため、自転阻止部材57に対して適量の潤滑油Lを供給することが可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクロール圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
スクロール圧縮機は、対向する各端板の内面に設けられた渦巻状のラップを互いに噛み合わせてなる固定スクロールおよび旋回スクロールと、旋回スクロールを駆動する回転軸と、回転軸の回転による旋回スクロールの自転を阻止しつつ公転旋回させる自転阻止部材と、公転旋回される旋回スクロールおよび自転阻止部材を支持するフレームとを備えている。
【0003】
フレームは、回転軸を挿通支持する軸受穴と、軸受穴の外周にて円環状に突設された凸部の端面で旋回スクロールを摺動自在に支持するスラスト部と、凸部の外周にて円環状に形成された自転阻止部材を収容する収容凹部とを有している。また、自転阻止部材は、旋回スクロールの端板の外面に形成されたキー溝に挿通するキーと、フレームの収容凹部の底に形成されたキー溝に挿通するキーとを有している。また、回転軸は、フレームの凸部の内側に潤滑油を導く給油孔を有している。すなわち、フレームの凸部の内側に導かれた潤滑油は、凸部の端面に至ってスラスト部と旋回スクロールとの間に供給され、かつ凸部の端面から凸部の外周に至って収容凹部内の自転阻止部材に供給される。
【0004】
従来、例えば、特許文献1に記載のスクロール圧縮機(スクロール流体機械)は、上述したスラスト部(凸部の端面)において、その内周縁と外周縁との間に円環状の給油溝を設けるとともに、この給油溝から外周縁に臨む流出溝と、給油溝から内周縁に臨む流入溝とを設けている。これら流出溝および流入溝は、スラスト部に適量の潤滑油を供給することを助勢している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−240175号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述した特許文献1に記載のスクロール圧縮機では、例えば、低速運転時に、フレームの凸部の内側に導かれた潤滑油の量が減少することで、収容凹部の底部に形成されたキー溝に潤滑油が十分に行き渡らないおそれがある。この場合、キー溝に対する摺動抵抗により自転阻止部材のキーが摩耗することが想定される。自転阻止部材のキーが摩耗した場合、旋回スクロールの芯がずれ、各ラップ間での圧縮漏れや、各ラップの側面同士の接触などにより圧縮性能が低下するおそれがある。
【0007】
本発明は上述した課題を解決するものであり、自転阻止部材に対して適量の潤滑油を供給することのできるスクロール圧縮機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の目的を達成するために、本発明のスクロール圧縮機は、固定側端板の内面に渦巻状の固定側ラップが設けられた固定スクロールと、可動側端板の内面に前記固定スクロールの固定側ラップと噛み合わされる渦巻状の可動側ラップが設けられた旋回スクロールと、前記旋回スクロールの自転を阻止しつつ前記旋回スクロールを公転旋回させる自転阻止部材と、潤滑油が供給される油受部の外周で円環状に突設された端面が前記旋回スクロールの可動側端板の外面に対面して当該旋回スクロールを摺動可能に支持するスラスト部を有し、かつ前記スラスト部の外周にて前記自転阻止部材のキーを挿入するキー溝を有したフレームと、を備えたスクロール圧縮機において、前記スラスト部の面の円環状に沿って円環状に形成された中間溝と、前記スラスト部の面における前記中間溝の環状の外側にて一端が前記中間溝に突き当たり他端が前記キー溝上に至り延伸された外溝と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
このスクロール圧縮機によれば、中間溝によりスラスト部に潤滑油を貯留させ、その後に外溝によりキー溝に潤滑油を供給するため、自転阻止部材に対して適量の潤滑油を供給することができる。
【0010】
また、本発明のスクロール圧縮機では、前記スラスト部の面における前記中間溝の環状の内側にて一端が前記中間溝に突き当たり他端が前記スラスト部の内周縁に至り延伸され、かつ一端が前記外溝の一端に対して前記中間溝の周方向にずれて配置された内溝を備えたことを特徴とする。
【0011】
このスクロール圧縮機によれば、内溝により中間溝への潤滑油の供給を助勢するため、外溝によりキー溝に供給される潤滑油を中間溝に補充することができる。しかも、内溝は、外溝に対して直接連通することなく、中間溝を介してのみ連通するように構成されていることから、潤滑油が中間溝を介して外溝に供給されるため、キー溝への過剰な潤滑油の供給を防止することができる。
【0012】
また、本発明のスクロール圧縮機では、前記内溝は、前記旋回スクロールの旋回方向に一端を向けて前記中間溝の径方向に対して傾いて形成されていることを特徴とする。
【0013】
このスクロール圧縮機によれば、旋回スクロールの旋回に伴って潤滑油の流速を増して中間溝に流入させるので、潤滑油の供給量を増すことができ、特に低速運転時に効果がある。
【0014】
また、本発明のスクロール圧縮機では、前記内溝は、前記旋回スクロールの旋回方向とは逆方向に一端を向けて前記中間溝の径方向に対して傾いて形成されていることを特徴とする。
【0015】
このスクロール圧縮機によれば、旋回スクロールの旋回に伴って潤滑油の流速を減速し、潤滑油が中間溝に過剰に流入する事態を防止することができ、特に高速運転時に効果がある。
【0016】
また、本発明のスクロール圧縮機では、前記外溝は、前記旋回スクロールの旋回により前記自転阻止部材のキーが前記キー溝に接触する位置に他端を向けて形成されていることを特徴とする。
【0017】
このスクロール圧縮機によれば、自転阻止部材のキーがキー溝に接触する部分に積極的に潤滑油を供給することで、キーの摩耗を効果的に防止することができる。
【0018】
また、本発明のスクロール圧縮機では、前記外溝の通路面積は、前記内溝の通路面積よりも大きく形成されていることを特徴とする。
【0019】
このスクロール圧縮機によれば、旋回スクロールの外側である外溝側は、旋回スクロールの内側である内溝側よりも圧力が低く潤滑油が膨張するので、潤滑油の流通を円滑に行うことができ、自転阻止部材に対して適量の潤滑油を供給する効果が顕著に得られる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、自転阻止部材に対して適量の潤滑油を供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、本発明の実施の形態に係るスクロール圧縮機の概略断面図である。
【図2】図2は、図1に示すスクロール圧縮機におけるフレームの平面図である。
【図3】図3は、図2におけるA−A断面図である。
【図4】図4は、内溝の他の例を示すフレームの平面図である。
【図5】図5は、内溝の他の例を示すフレームの平面図である。
【図6】図6は、外溝の他の例を示すフレームの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明に係る実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施の形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0023】
図1は、本実施の形態に係るスクロール圧縮機の概略断面図である。この図1に示すスクロール圧縮機1は、空気調和機などに適用される多段圧縮機であり、本実施の形態の主となるスクロール圧縮機構部を高段側に備え、低段側にロータリ圧縮機構部を備えている。なお、本実施の形態の主となるスクロール圧縮機構部を備えるスクロール圧縮機としては、単段のスクロール圧縮機構部を備えるもの、または高段側と低段側とにスクロール圧縮機構部を備えるものであってもよい。
【0024】
図1に示すように、スクロール圧縮機1は、筐体2と、駆動部3と、ロータリ圧縮機構部4と、スクロール圧縮機構部5とを含み構成されている。
【0025】
筐体2は、上下が密閉された略円筒形状をなし、その内部に駆動部3、ロータリ圧縮機構部4、スクロール圧縮機構部5が収容されている。筐体2は、その円筒を垂直に立てて配置されており、その頂部に吐出管21が設けられている。また、筐体2の底部は、潤滑油Lが溜められる油溜22として構成されている。
【0026】
駆動部3は、スロットモータであり、固定子31、回転子32、および回転軸33を含み構成されている。固定子31は、筐体2の上下方向のほぼ中央において、内壁面に固定されている。回転子32は、固定子31に対して回転可能に設けられている。回転軸33は、回転子32に取り付けられ、自身の軸心を上下方向に延在する態様で設けられている。また、回転軸33は、その下端部が低段側のロータリ圧縮機構部4に接続され、上端部が高段側のスクロール圧縮機構部5に接続されている。この駆動部3は、図示しない配線を介して筐体2の外部から電源が供給されることで、回転軸33が回転する。
【0027】
回転軸33は、その下端が筐体2の油溜22に至って設けられている。回転軸33の内部には、給油孔331が設けられている。給油孔331は、回転軸33の軸心に沿って設けられていると共に、ロータリ圧縮機構部4およびスクロール圧縮機構部5に通じる枝孔(図示せず)を含む。また、回転軸33の下端は、油溜22に配置された給油ポンプ6に接続されている。給油ポンプ6は、回転軸33の給油孔331に潤滑油Lを送り込む。そして、給油孔331に送り込まれた潤滑油Lは、枝孔からロータリ圧縮機構部4およびスクロール圧縮機構部5に供給される。
【0028】
ロータリ圧縮機構部4は、筐体2内にて駆動部3の下方に配置され、圧縮部41を有している。圧縮部41は、ロータ411および圧縮室412からなる。また、ロータリ圧縮機構部4は、圧縮部41の上側に設けられた上部軸受421と、圧縮部41の下側に設けられた下部軸受422とにより回転軸33を回転可能に支持している。また、ロータ411は、回転軸33の圧縮部41に対応する位置に設けられたクランク332に取り付けられている。すなわち、ロータリ圧縮機構部4は、駆動部3に電源が供給されて回転軸33が回転することで、クランク332によりロータ411が圧縮室412内を偏心回転し、吸入管43を介して圧縮室412内に低圧の流体(冷媒ガス)を吸入し、この流体を圧縮室412内で中間圧まで圧縮する。圧縮された流体は、上部軸受421の位置に形成された吐出チャンバ44から筐体2内に吐出される。
【0029】
スクロール圧縮機構部5は、筐体2内にて駆動部3の上方に配置され、固定スクロール51と旋回スクロール52とを有している。
【0030】
固定スクロール51は、筐体2に固定のフレーム53に固定された固定側端板511の内面(図1における下面)に、渦巻状の固定側ラップ512が形成されている。固定側端板511は、その中央部に吐出孔513が形成されている。この吐出孔513は、固定側端板511の外面(図1における上面)に設けられた吐出リード弁54により開閉される。また、固定側端板511の外面には、油分離室55を形成する密閉カバー56が設けられている。密閉カバー56には、油分離室55に通じるように吐出管21が取り付けられている。
【0031】
旋回スクロール52は、固定側端板511の内面に対面する可動側端板521の内面(図1における上面)に、渦巻状の可動側ラップ522が形成されている。そして、旋回スクロール52の可動側ラップ522と、固定スクロール51の固定側ラップ512とが互いに位相をずらして噛み合わされることで、各端板511,521および各ラップ512,522で区画された圧縮室50が形成されている。また、旋回スクロール52は、可動側端板521の外面(図1における下面)に、回転軸33の上端に設けられたクランクピン333を挿通するガイドブッシュ523が形成されている。また、旋回スクロール52は、フレーム53との間に配置された円環状の自転阻止部材57により自転を阻止されつつ公転旋回される。自転阻止部材57は、旋回スクロール52の自転を阻止しつつ公転旋回させるため、旋回スクロール52における可動側端板521の外面に形成されたキー溝521aに挿入されるキー57aと、フレーム53における収容凹部534の底部に形成されたキー溝534aに挿入されるキー57bとを有している(図2および図3参照)。
【0032】
このスクロール圧縮機構部5は、低段側のロータリ圧縮機構部4により圧縮されて筐体2内に吐出された中間圧の流体を、圧縮室50内に吸入し、この流体を旋回スクロール52の公転旋回駆動による圧縮動作により高圧状態に圧縮した後、吐出リード弁54を介して油分離室55に吐出する。この高圧の流体は、油分離室55内で流体中の潤滑油Lが分離された後、吐出管21を介して筐体2の外部、すなわち冷凍サイクル側へと送り出される。
【0033】
以下、スクロール圧縮機1におけるスクロール圧縮機構部5のフレーム53について図を参照して説明する。図2は、スクロール圧縮機におけるフレームの平面図であり、図3は、図2におけるA−A断面図である。
【0034】
フレーム53は、旋回スクロール52の下方に配置され、旋回スクロール52の可動側端板521の外面(図1における下面)側に対面している。フレーム53は、その中央部に、回転軸33を回転可能に挿通支持する軸受穴531が設けられている。また、フレーム53は、軸受穴531の旋回スクロール52側に向く開口の外周に、円環状の凸部532が突設されている。この凸部532は、突設された端面が旋回スクロール52の可動側端板521の外面に対面して当該旋回スクロール52を摺動可能に支持するスラスト部533として構成されている。凸部532の内側の領域には、旋回スクロール52に形成されたガイドブッシュ523が収容される。この凸部532の内側の領域は、回転軸33の給油孔331を介して送り込まれる潤滑油Lを受ける油受部530として構成されている。
【0035】
また、フレーム53は、凸部532の外周に、円環状に形成された自転阻止部材57を収容する円環状の収容凹部534が形成されている。この収容凹部534は、その底部に、自転阻止部材57のキー57bを挿入するキー溝534aが形成されている。自転阻止部材57のキー57bは、自転阻止部材57の円周の径方向で対向して設けられている。キー溝534aは、キー57bの配置に対応し、収容凹部534の円周の径方向で対向して設けられている。
【0036】
また、フレーム53は、凸部532の突設端面がなすスラスト部533に、中間溝535、外溝536および内溝537を備えている。中間溝535は、スラスト部533の面の円環状に沿って円環状に形成されている。外溝536は、スラスト部533の面における中間溝535の環状の外側において、一端536aが中間溝535に突き当たり他端536bがキー溝534a上に至り延伸されている。内溝537は、スラスト部533の面における中間溝535の環状の内側において、一端537aが中間溝535に突き当たり他端537bがスラスト部533の内周縁に至り延伸され、かつ一端537aが外溝536の一端536aに対して中間溝535の周方向にずれて配置されている。すなわち、内溝537は、外溝536に対して直接連通することなく、中間溝535を介してのみ連通するように構成されている。
【0037】
上述したフレーム53においては、回転軸33の給油孔331から油受部530に送られた潤滑油Lは、旋回スクロール52の公転旋回駆動による圧縮動作時に、回転軸33の回転により回転するガイドブッシュ523が凸部532の内壁面に行き渡り、内溝537に進入する。そして、内溝537に進入した潤滑油Lは、中間溝535に行き渡る。中間溝535の潤滑油Lは、旋回スクロール52の公転旋回に際してスラスト部533との摺動を円滑にする。さらに、中間溝535の潤滑油Lは、外溝536に進入して凸部532の内壁面を伝ってキー溝534aおよび収容凹部534に至り自転阻止部材57の摺動を円滑にする。
【0038】
このように、本実施の形態のスクロール圧縮機1は、スラスト部533の面の円環状に沿って円環状に形成された中間溝535と、スラスト部533の面における中間溝535の環状の外側にて一端536aが中間溝535に突き当たり他端536bがキー溝534a上に至り延伸された外溝536とを備えている。
【0039】
このスクロール圧縮機1によれば、中間溝535によりスラスト部533に潤滑油Lを貯留させ、その後に外溝536によりキー溝534aに潤滑油Lを供給するため、自転阻止部材57に対して適量の潤滑油Lを供給することが可能になる。このため、例えば、低速運転時に、凸部532の内側の油受部530に導かれた潤滑油Lの量が減少しても、中間溝535および外溝536により、収容凹部534の底部に形成されたキー溝534aに潤滑油Lを十分に行き渡らせる。この結果、キー溝534aに対する摺動抵抗による自転阻止部材57のキー57aの摩耗を防止し、旋回スクロール52の芯ずれによる圧縮性能の低下を阻止できる。なお、低速運転とは、大きな冷凍能力を必要としない低回転数での運転である。つまり、定格回転数(例えば60rpm)未満での運転である。
【0040】
また、本実施の形態のスクロール圧縮機1は、スラスト部533の面における中間溝535の環状の内側にて一端537aが中間溝535に突き当たり他端537bがスラスト部533の内周縁に至り延伸され、かつ一端537aが外溝536の一端536aに対して中間溝535の周方向にずれて配置された内溝537を備えている。
【0041】
このスクロール圧縮機1によれば、内溝537により中間溝535への潤滑油Lの供給を助勢するため、外溝536によりキー溝534aに供給される潤滑油Lを、中間溝535に補充することが可能になる。しかも、内溝537は、一端537aが外溝536の一端536aに対して中間溝535の周方向にずれて配置され、外溝536に対して直接連通することなく、中間溝535を介してのみ連通するように構成されていることから、潤滑油Lが中間溝535を介して外溝536に供給されるため、キー溝534aへの過剰な潤滑油Lの供給を防止することが可能になる。
【0042】
なお、内溝537は、中間溝535の周方向に等間隔で配置されていることが好ましい。これにより、中間溝535に潤滑油Lを均等に供給することが可能になる。さらに、内溝537は、中間溝535の周方向に等間隔で配置され、かつ外溝536に対して対称内地に配置されていることが好ましい。これにより、中間溝535に潤滑油Lを均等に供給すると共に、外溝536に対しても潤滑油Lを均等に供給することが可能になる。
【0043】
図4は、内溝の他の例を示すフレームの平面図である。図4に示すように、内溝537は、旋回スクロール52の旋回方向Sに一端537aを向けて中間溝535の径方向に対して傾いて形成されていてもよい。このように構成することで、旋回スクロール52の旋回に伴って潤滑油Lの流速を増して中間溝535に流入させるので、潤滑油Lの供給量を増すことが可能になり、特に低速運転時に効果がある。
【0044】
図5は、内溝の他の例を示すフレームの平面図である。図5に示すように、内溝537は、旋回スクロール52の旋回方向Sとは逆方向に一端537aを向けて中間溝535の径方向に対して傾いて形成されていてもよい。このように構成することで、旋回スクロール52の旋回に伴って潤滑油Lの流速を減速し、潤滑油Lが中間溝535に過剰に流入する事態を防止することが可能になり、特に高速運転時に効果がある。
【0045】
図6は、外溝の他の例を示すフレームの平面図である。図6に示すように、外溝536は、旋回スクロール52の旋回により自転阻止部材57のキー57bがキー溝534aに接触する位置に他端536bを向けて形成されていることが好ましい。この構成によれば、自転阻止部材57のキー57bがキー溝534aに接触する部分に積極的に潤滑油Lを供給することで、キー57bの摩耗をより効果的に防止することが可能になる。
【0046】
また、外溝536の通路面積は、内溝537の通路面積よりも大きく形成されていることが好ましい。この構成によれば、旋回スクロール52の外側である外溝536側は、旋回スクロール52の内側である内溝537側よりも圧力が低く潤滑油Lが膨張するので、潤滑油Lの流通を円滑に行うことができ、自転阻止部材57に対して適量の潤滑油Lを供給する効果が顕著に得られる。
【0047】
なお、外溝536は、キー溝534aに対応して設けられていることから、少なくともキー溝534aと同じ数分設けられていることが好ましく、1つのキー溝534aに対して複数設けられていてもよい。1つのキー溝534aに対して複数設けられている場合、自転阻止部材57に対する潤滑油Lの供給量をより増すことが可能になる。
【0048】
また、内溝537は、図2、図4〜図6において2つ設けているが、少なくとも1つ設けられていればよい。内溝537の数が多いほど、中間溝535および外溝536への潤滑油Lの供給量を増すことが可能になり、特に低速運転時に効果がある。一方、内溝537の数が少ないほど、中間溝535および外溝536への潤滑油Lの供給量を抑えることが可能になり、特に高速運転時に効果がある。
【0049】
なお、上述したスクロール圧縮機1により圧縮される流体(冷媒ガス)としては、環境への影響を考慮してCOを用いることが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0050】
以上のように、本発明に係るスクロール圧縮機は、自転阻止部材に対して適量の潤滑油を供給することに適している。
【符号の説明】
【0051】
1 スクロール圧縮機
2 筐体
3 駆動部
33 回転軸
331 給油孔
333 クランクピン
5 スクロール圧縮機構部
50 圧縮室
51 固定スクロール
511 固定側端板
512 固定側ラップ
513 吐出孔
52 旋回スクロール
521 可動側端板
521a キー溝
522 可動側ラップ
523 ガイドブッシュ
53 フレーム
530 油受部
531 軸受穴
532 凸部
533 スラスト部
534 収容凹部
534a キー溝
535 中間溝
536 外溝
536a 一端
536b 他端
537 内溝
537a 一端
537b 他端
54 吐出リード弁
55 油分離室
56 密閉カバー
57 自転阻止部材
57a,57b キー
6 給油ポンプ
L 潤滑油
S 旋回方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定側端板の内面に渦巻状の固定側ラップが設けられた固定スクロールと、
可動側端板の内面に前記固定スクロールの固定側ラップと噛み合わされる渦巻状の可動側ラップが設けられた旋回スクロールと、
前記旋回スクロールの自転を阻止しつつ前記旋回スクロールを公転旋回させる自転阻止部材と、
潤滑油が供給される油受部の外周で円環状に突設された端面が前記旋回スクロールの可動側端板の外面に対面して当該旋回スクロールを摺動可能に支持するスラスト部を有し、かつ前記スラスト部の外周にて前記自転阻止部材のキーを挿入するキー溝を有したフレームと、
を備えたスクロール圧縮機において、
前記スラスト部の面の円環状に沿って円環状に形成された中間溝と、
前記スラスト部の面における前記中間溝の環状の外側にて一端が前記中間溝に突き当たり他端が前記キー溝上に至り延伸された外溝と、
を備えたことを特徴とするスクロール圧縮機。
【請求項2】
前記スラスト部の面における前記中間溝の環状の内側にて一端が前記中間溝に突き当たり他端が前記スラスト部の内周縁に至り延伸され、かつ一端が前記外溝の一端に対して前記中間溝の周方向にずれて配置された内溝を備えたことを特徴とする請求項1に記載のスクロール圧縮機。
【請求項3】
前記内溝は、前記旋回スクロールの旋回方向に一端を向けて前記中間溝の径方向に対して傾いて形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のスクロール圧縮機。
【請求項4】
前記内溝は、前記旋回スクロールの旋回方向とは逆方向に一端を向けて前記中間溝の径方向に対して傾いて形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のスクロール圧縮機。
【請求項5】
前記外溝は、前記旋回スクロールの旋回により前記自転阻止部材のキーが前記キー溝に接触する位置に他端を向けて形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載のスクロール圧縮機。
【請求項6】
前記外溝の通路面積は、前記内溝の通路面積よりも大きく形成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載のスクロール圧縮機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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