説明

スクロール流体機械

【課題】 旋回スクロールの偏心旋回の精度を高くし、また自転防止装置が損傷しにくくする。
【解決手段】 回転軸7に偏心して回転可能に旋回軸10を支持し、ケーシング1に支持板17を取り付け、支持板17にスラスト方向の力を受ける軸受19を介して回転可能に回転板20を支持し、旋回軸10に旋回板22を取り付け、旋回板22に連結軸23を固定し、連結軸23をスラスト方向の力を受ける軸受21を介して回転板20に対して回転可能に回転板20に支持し、ケーシング1に固定スクロール26を取り付け、旋回軸10に旋回スクロール27を取り付け、回転板20の中心と連結軸23の中心との距離を回転軸7の中心と旋回軸10の中心との距離と等しくする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は空気圧縮機、真空ポンプ、冷媒ガス圧縮機、酸素吸入機用圧縮機等として用いられるスクロール流体機械に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、モータの回転軸に旋回軸を偏心して回転可能に支持し、旋回軸に旋回スクロールを取り付け、旋回軸とケーシングとの間にオルダム継手を有する自転防止装置を設けたスクロール流体機械が記載されている。
【0003】
【特許文献1】特開昭63−138180号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、このようなスクロール流体機械においては、自転防止装置の剛性が低いから、旋回スクロールの偏心旋回の精度が低く、また自転防止装置に過大な力が作用し、自転防止装置が損傷することがある。
【0005】
本発明は上述の課題を解決するためになされたもので、旋回スクロールの偏心旋回の精度が高く、また自転防止装置が損傷しにくいスクロール流体機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するため、本発明においては、ケーシングに固定されたステータと、上記ケーシングに回転可能に支持された回転軸と、上記回転軸に固定されたロータと、上記回転軸に偏心して回転可能に支持された旋回軸と、上記ケーシングに取り付けられた支持板と、上記支持板に回転可能に支持された回転板と、上記旋回軸に取り付けられた旋回板と、上記旋回板に固定されかつ上記回転板に対して回転可能に上記回転板に支持された連結軸と、上記ケーシングに取り付けられた固定スクロールと、上記旋回軸に取り付けられた旋回スクロールとを設け、上記回転板の中心と上記連結軸の中心との距離を上記回転軸の中心と上記旋回軸の中心との距離と等しくする。
【0007】
この場合、上記回転板をスラスト方向の力を受ける第1の軸受を介して回転可能に上記支持板に支持し、上記連結軸をスラスト方向の力を受ける第2の軸受を介して回転可能に上記回転板に支持してもよい。
【0008】
また、ケーシングに固定されたステータと、上記ケーシングに回転可能に支持された回転軸と、上記回転軸に固定されたロータと、上記回転軸に偏心して回転可能に支持された旋回軸と、上記ケーシングに取り付けられた支持板と、上記旋回軸に取り付けられた旋回板と、上記旋回板に回転可能に支持された回転板と、上記回転板に固定されかつ上記支持板に対して回転可能に上記支持板に支持された連結軸と、上記ケーシングに取り付けられた固定スクロールと、上記旋回軸に取り付けられた旋回スクロールとを設け、上記回転板の中心と上記連結軸の中心との距離を上記回転軸の中心と上記旋回軸の中心との距離と等しくする。
【0009】
この場合、上記回転板をスラスト方向の力を受ける第3の軸受を介して回転可能に上記旋回板に支持し、上記連結軸をスラスト方向の力を受ける第4の軸受を介して回転可能に上記支持板に支持してもよい。
【0010】
これらの場合、2枚の上記支持板の間に上記旋回板を位置させてもよい。
【0011】
また、上記旋回板に回転可能に支持された回転板を有するスクロール流体機械において、LMガイド式自転防止装置を設けてもよい。
【0012】
これらの場合、上記旋回軸に錘板を取り付け、上記旋回軸の中心線と上記錘板の重心とを上記回転軸の中心線の両側に位置させてもよい。
【0013】
この場合、上記錘板の上記回転軸に直角なモーメントベクトル、上記旋回スクロールの上記回転軸に直角なモーメントベクトルおよび上記旋回板の上記回転軸に直角なモーメントベクトルの和を零ベクトルとしてもよい。
【0014】
これらの場合、上記旋回軸をスラスト方向の力を受けない軸受により回転可能に上記回転軸に支持してもよい。
【0015】
これらの場合、弾性体からなる押え部材により上記旋回板の上記旋回軸の軸方向の移動を防止してもよい。
【0016】
これらの場合、上記旋回軸を第1の分離旋回軸と第2の分離旋回軸とに分離し、上記第1の分離旋回軸に凹部を設け、第2の分離旋回軸を凸部を設け、上記凹部と上記凸部とを係合して上記第1の分離旋回軸と上記第2の分離旋回軸とを軸方向にのみ移動可能に連結し、上記第1、第2の分離旋回軸それぞれに上記旋回板を取り付け、上記第1、第2の分離旋回軸それぞれに上記旋回スクロールを取り付けてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係るスクロール流体機械においては、自転防止装置の剛性が高いから、旋回スクロールの偏心旋回の精度が高く、また自転防止装置に過大な力が作用することがないから、自転防止装置が損傷しにくい。
【0018】
また、回転板をスラスト方向の力を受ける第1の軸受を介して回転可能に支持板に支持し、連結軸をスラスト方向の力を受ける第2の軸受を介して回転可能に回転板に支持したときには、旋回スクロールが回転軸の中心線の方向に移動するのを防止することができる。
【0019】
また、回転板をスラスト方向の力を受ける第3の軸受を介して回転可能に旋回板に支持し、連結軸をスラスト方向の力を受ける第4の軸受を介して回転可能に支持板に支持したときには、旋回スクロールが回転軸の中心線の方向に移動するのを防止することができる。
【0020】
また、2枚の支持板の間に旋回板を位置させたときには、自転防止装置の剛性をさらに高くすることができるから、偏心旋回の精度をさらに高くすることができる。
【0021】
また、LMガイド式自転防止装置を設けたときには、確実に旋回軸の自転を防止することができる。
【0022】
また、旋回軸に錘板を取り付け、旋回軸の中心線と錘板の重心とを回転軸の中心線の両側に位置させたときには、旋回板の振動を抑制することができるから、旋回スクロールの振動を抑制することができる。
【0023】
また、錘板の回転軸に直角なモーメントベクトル、旋回スクロールの回転軸に直角なモーメントベクトルおよび旋回板の回転軸に直角なモーメントベクトルの和を零ベクトルとしたときには、旋回板の振動を確実に抑制することができるから、旋回スクロールの振動を確実に抑制することができる。
【0024】
また、回転軸に旋回軸をスラスト方向の力を受けない軸受により回転可能に支持したときには、旋回軸に過大な力が作用するのを防止することができる。
【0025】
また、弾性体からなる押え部材により旋回板の旋回軸の軸方向の移動を防止したときには、旋回板は旋回軸の軸方向に対して傾斜しうるので、旋回軸、旋回板に過大な力が作用するのを防止することができる。
【0026】
また、旋回軸を第1の分離旋回軸と第2の分離旋回軸とに分離し、第1の分離旋回軸に凹部を設け、第2の分離旋回軸を凸部を設け、凹部と凸部とを係合して第1の分離旋回軸と第2の分離旋回軸とを軸方向にのみ移動可能に連結し、第1、第2の分離旋回軸それぞれに旋回板を取り付け、第1、第2の分離旋回軸それぞれに旋回スクロールを取り付けたときには、旋回軸に中心軸方向の過大な力が作用するのを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
図1は本発明に係るスクロール流体機械を示す概略断面図、図2は図1に示したスクロール流体機械の一部を示す拡大断面図、図3は図2のA−A断面図、図4は図2のB−B断面図である。図に示すように、ケーシング1にステータ2が固定され、ケーシング1に軸受支え3、4が固定され、軸受支え3、4に軸受5、6を介して回転軸7が回転可能に支持されている。すなわち、ケーシング1に回転軸7が回転可能に支持されている。また、回転軸7にロータ8が固定され、ステータ2、ロータ8等によりモータ9が構成されている。また、回転軸7にスラスト方向の力を受けない軸受11、12を介して旋回軸10が回転可能に支持され、回転軸7の中心線と旋回軸10の中心線とは偏っている。すなわち、旋回軸10は回転軸7に偏心して回転可能に支持されている。また、旋回軸10に軸受14を介して錘板13が回転可能に取り付けられ、錘板13に係合穴15が設けられ、回転軸7の一方端面にピン16が取り付けられ、ピン16は係合穴15に挿入され、係合穴15の内面とピン16との間にはわずかな隙間が設けられており、錘板13は回転軸7に対して回転軸7の中心線と旋回軸10の中心線とを結ぶ線の方向に移動可能であって、ピン16と係合穴15とで回転軸7と錘板13とを連結する連結手段が構成されている。そして、図4における回転軸7の中心線と旋回軸10の中心線とを結ぶ線上に錘板13の重心が位置しており、旋回軸10の中心線と錘板13の重心とは回転軸7の中心線の両側に位置している。そして、回転軸7の中心線から錘板13の重心までの距離と錘板13の重量との積を大きさとしかつ回転軸7の中心線から錘板13の重心までの方向を方向とするベクトルを錘板13の回転軸7に直角なモーメントベクトル、回転軸7の中心線から旋回スクロール27(説明後述)の重心までの距離と旋回スクロール27の重量との積を大きさとしかつ回転軸7の中心線から旋回スクロール27の重心までの方向を方向とするベクトルを旋回スクロール27の回転軸7に直角なモーメントベクトル、回転軸7の中心線から旋回板22(説明後述)の重心までの距離と旋回板22の重量との積を大きさとしかつ回転軸7の中心線から旋回板22の重心までの方向を方向とするベクトルを旋回板22の回転軸7に直角なモーメントベクトルとすると、錘板13の回転軸7に直角なモーメントベクトル、旋回スクロール27の回転軸7に直角なモーメントベクトルおよび旋回板22の回転軸7に直角なモーメントベクトルの和は零ベクトルである。また、ケーシング1に2枚の支持板17が取り付けられ、支持板17に穴18が設けられ、支持板17の穴18を旋回軸10が貫通しており、支持板17にスラスト方向の力を受ける第1の軸受19を介して3枚の回転板20が回転可能に支持されている。また、旋回軸10に旋回板22が取り付けられ、旋回板22は2枚の支持板17の間に位置しており、旋回軸10の旋回板22取付部には平面部24が設けられ、弾性体からなる押え部材25の雌ネジが旋回軸10に設けられた雄ネジ部に螺合しており、押え部材25は旋回板22の図2紙面下方への移動を防止している。また、旋回板22の両面にそれぞれ3本の連結軸23が固定され、連結軸23はスラスト方向の力を受ける第2の軸受21を介して回転板20に対して回転可能に回転板20に支持されている。そして、回転板20の中心と連結軸23の中心との距離は回転軸7の中心と旋回軸10の中心との距離と等しく、支持板17、回転板20、旋回板22、連結軸23等により旋回軸10、旋回板22の偏心旋回を許容しかつ旋回軸10、旋回板22の自転を防止する自転防止装置が構成されている。また、ケーシング1に固定スクロール26が固定され、固定スクロール26には渦巻状のラップが設けられている。また、旋回軸10に旋回スクロール27が取り付けられ、押え部材25により旋回板22は旋回スクロール27の下部に押し付けられている。すなわち、弾性体からなる押え部材25により旋回板22の旋回軸10の軸方向の移動を防止している。また、旋回スクロール27には固定スクロール26のラップと同一形状のラップが設けられ、旋回スクロール27のラップと固定スクロール26のラップとが重なり合っており、複数の圧縮室28が形成され、固定スクロール26に吸入管29が接続され、固定スクロール26に吐出管30が接続され、吸入管29、吐出管30は圧縮室28に連通しており、固定スクロール26、旋回スクロール27等により流体機械本体が構成されている。
【0028】
図1〜図4に示したスクロール流体機械においては、モータ9のステータ2の巻線に通電すると、ロータ8、回転軸7が回転し、旋回軸10、旋回板22は回転軸7の中心線を中心として偏心旋回するが、自転防止装置が設けられているから、旋回軸10、旋回板22は自転しない。このため、旋回スクロール27がケーシング1、固定スクロール26に対して回転せずに偏心旋回するから、旋回スクロール27と固定スクロール26との間に形成された圧縮室28が徐々に縮小する。したがって、空気等の被圧縮ガスは吸入管29から吸引され、圧縮室28で圧縮されて吐出管30から吐出される。
【0029】
このようなスクロール流体機械においては、自転防止装置として支持板17、回転板20、旋回板22、連結軸23を有するものを用いているから、自転防止装置の剛性が高いので、旋回スクロール27の偏心旋回の精度が高く、また自転防止装置に過大な力が作用することがなく、自転防止装置が損傷しにくい。また、2枚の支持板17の間に旋回板22を位置させているから、自転防止装置の剛性をさらに高くすることができるので、偏心旋回の精度をさらに高くすることができる。また、回転板20をスラスト方向の力を受ける軸受19を介して回転可能に支持板17に支持するとともに、連結軸23をスラスト方向の力を受ける軸受21を介して回転板20に支持しているから、旋回スクロール27が回転軸7の中心線の方向に移動するのを防止することができる。また、旋回軸10をスラスト方向の力を受けない軸受11、12を介して回転軸7に回転可能に支持しているから、旋回軸10に過大な力が作用するのを防止することができる。また、弾性体からなる押え部材25により旋回板22の旋回軸10の軸方向の移動を防止しているから、旋回板22は旋回軸10の軸方向に対して傾斜しうるので、旋回軸10、旋回板22に過大な力が作用するのを防止することができる。また、旋回軸10の中心線と錘板13の重心とは回転軸7の中心線の両側に位置しているから、バランスをとることができるので、旋回軸10、旋回スクロール27の振動を抑制することができる。このため、回転軸7の回転数を大きくすることができるから、旋回スクロール27を高速で駆動することができる。また、錘板13の回転軸7に直角なモーメントベクトル、旋回スクロール27の回転軸7に直角なモーメントベクトルおよび旋回板22の回転軸7に直角なモーメントベクトルの和を零としているから、すなわち旋回スクロール27の回転軸7に直角なモーメントベクトルおよび旋回板22の回転軸7に直角なモーメントベクトルの和を和ベクトルとしたとき、錘板13の回転軸7に直角なモーメントベクトルの大きさを和ベクトルの大きさと等しくしかつ錘板13の回転軸7に直角なモーメントベクトルの方向を和ベクトルの方向と反対方向としているから、旋回板22の振動を確実に抑制することができるので、旋回スクロール27の振動を確実に抑制することができる。
【0030】
図5は本発明に係る他のスクロール流体機械を示す概略断面図である。図に示すように、旋回軸10が第1の分離旋回軸10aと第2の分離旋回軸10bとに分離され、分離旋回軸10aに凹部31が設けられ、分離旋回軸10bに凸部32が設けられ、凹部31と凸部32とが係合しており、分離旋回軸10aと分離旋回軸10bとは回転方向には相対的移動は不能であり、軸方向には相対的に移動可能である。すなわち、分離旋回軸10aと分離旋回軸10bとは軸方向にのみ移動可能に連結されている。また、分離旋回軸10aに錘板13aが取り付けられ、分離旋回軸10bに錘板13bが取り付けられ、錘板13a、13b部の構成は図1等に示したスクロール流体機械の錘板13部の構成と同様である。また、分離旋回軸10aに旋回板22aが取り付けられ、旋回板22aの両面にそれぞれ3本の連結軸23aが固定され、連結軸23aは軸受21を介して回転板20に対して回転可能に回転板20に支持されている。そして、支持板17、回転板20、旋回板22a、連結軸23a等により分離旋回軸10a、旋回板22aの偏心旋回を許容しかつ分離旋回軸10a、旋回板22aの自転を防止する第1の自転防止装置が構成されている。また、分離旋回軸10bに旋回板22bが取り付けられ、旋回板22bの両面にそれぞれ3本の連結軸23bが固定され、連結軸23bは軸受21を介して回転板20に対して回転可能に回転板20に支持されている。そして、支持板17、回転板20、旋回板22b、連結軸23b等により分離旋回軸10b、旋回板22bの偏心旋回を許容しかつ分離旋回軸10b、旋回板22bの自転を防止する第2の自転防止装置が構成されている。また、ケーシング1に固定スクロール26aが固定され、分離旋回軸10aに旋回スクロール27aが取り付けられ、旋回スクロール27aのラップと固定スクロール26aのラップとが重なり合っており、複数の圧縮室28aが形成され、固定スクロール26aに吸入管29aが接続され、固定スクロール26aに吐出管30aが接続され、吸入管29a、吐出管30aは圧縮室28aに連通しており、固定スクロール26a、旋回スクロール27a等により第1の流体機械本体が構成されている。また、ケーシング1に固定スクロール26bが固定され、分離旋回軸10bに旋回スクロール27bが取り付けられ、旋回スクロール27bのラップと固定スクロール26bのラップとが重なり合っており、複数の圧縮室28bが形成され、固定スクロール26bに吸入管29bが接続され、固定スクロール26bに吐出管30bが接続され、吸入管29b、吐出管30bは圧縮室28bに連通しており、固定スクロール26b、旋回スクロール27b等により第2の流体機械本体が構成されている。
【0031】
図5に示したスクロール流体機械においては、モータ9のステータ2の巻線に通電すると、ロータ8、回転軸7が回転し、旋回軸10、旋回板22a、22bは回転軸7の中心線を中心として偏心旋回するが、第1、第2の自転防止装置が設けられているから、旋回軸10、旋回板22a、22bは自転しない。このため、旋回スクロール27a、27bがケーシング1、固定スクロール26a、26bに対して回転せずに偏心旋回するから、旋回スクロール27a、27bと固定スクロール26a、26bとの間に形成された圧縮室28a、28bが徐々に縮小する。したがって、空気等の被圧縮ガスは吸入管29a、29bから吸引され、圧縮室28a、28bで圧縮されて吐出管30a、30bから吐出される。
【0032】
このようなスクロール流体機械においては、分離旋回軸10aと分離旋回軸10bとは軸方向にのみ移動可能に連結されているから、旋回軸10に中心軸方向の過大な力が作用するのを防止することができる。また、第1の自転防止装置および第1の流体機械本体とをセットとし、第2の自転防止装置および第2の流体機械本体とをセットとして、旋回軸10に取り付ければ、容易にスクロール流体機械を製造することができる。
【0033】
図6は本発明に係る他のスクロール流体機械の一部を示す断面図、図7は図6のC−C断面図、図8は図6のD−D断面図である。図に示すように、ケーシング1に2枚の支持板41が取り付けられ、支持板41に穴42が設けられ、穴42を旋回軸10が貫通している。また、旋回軸10に旋回板44が取り付けられ、旋回板44は2枚の支持板41の間に位置しており、旋回板44にスラスト方向の力を受ける第3の軸受45を介して3枚の回転板46が回転可能に支持され、回転板46の両面に連結軸47が固定され、連結軸47はスラスト方向の力を受ける第4の軸受43を介して支持板41に対して回転可能に支持板41に支持されている。そして、回転板46の中心と連結軸47の中心との距離は回転軸7の中心と旋回軸10の中心との距離と等しく、支持板41、旋回板44、回転板46、連結軸47等により旋回軸10、旋回板44の偏心旋回を許容しかつ旋回軸10、旋回板44の自転を防止する自転防止装置が構成されている。
【0034】
図6〜図8に示したスクロール流体機械においては、モータ9のステータ2の巻線に通電すると、ロータ8、回転軸7が回転し、旋回軸10、旋回板44は回転軸7の中心線を中心として偏心旋回するが、自転防止装置が設けられているから、旋回軸10、旋回板44は自転しない。このため、旋回スクロール27がケーシング1、固定スクロール26に対して回転せずに偏心旋回するから、旋回スクロール27と固定スクロール26との間に形成された圧縮室28が徐々に縮小する。したがって、空気等の被圧縮ガスは吸入管29から吸引され、圧縮室28で圧縮されて吐出管30から吐出される。
【0035】
このようなスクロール流体機械においては、自転防止装置として支持板41、旋回板44、回転板46、連結軸47を有するものを用いているから、自転防止装置の剛性が高いので、旋回スクロール27の偏心旋回の精度が高く、また自転防止装置に過大な力が作用することがなく、自転防止装置が損傷しにくい。また、2枚の支持板41の間に旋回板44を位置させているから、自転防止装置の剛性をさらに高くすることができるので、偏心旋回の精度をさらに高くすることができる。また、回転板46をスラスト方向の力を受ける軸受45を介して回転可能に旋回板44に支持するとともに、連結軸47をスラスト方向の力を受ける軸受43を介して支持板41に支持しているから、旋回スクロール27が回転軸7の中心線の方向に移動するのを防止することができる。
【0036】
図9は本発明に係る他のスクロール流体機械の一部を示す断面図、図10は図9のE−E断面図、図11は図9のF−F断面図である。図に示すように、ケーシング1に取付板61が取り付けられ、取付板61に穴62が設けられ、穴62を旋回スクロール27の下部が貫通している。また、取付板61に第1のLMブロック63が取り付けられている。また、旋回軸10に旋回板64が取り付けられ、旋回板64は取付板61の図9紙面下方に位置しており、弾性体からなる押え部材25により旋回板64の旋回軸10の軸方向の移動が防止されている。また、旋回板64には第2のLMブロック67が取り付けられ、第1のLMブロック63の中心線と第2のLMブロック67の中心線とは直角である。また、取付板61と旋回板64との間に移動リング68が設けられ、移動リング68に第1、第2のLMレール69、70が固定され、LMレール69の中心線とLMレール70の中心線とは直角である。また、LMブロック63によりLMレール69がボールを介して相対的に摺動可能に支持されており、LMブロック67によりLMレール70がボールを介して相対的に摺動可能に支持されている。そして、取付板61、旋回板64、LMブロック63、67、移動リング68、LMレール69、70により旋回軸10、旋回板64の偏心旋回を許容しかつ旋回軸10、旋回板64の自転を防止するLMガイド式自転防止装置が構成されている。また、ケーシング1に支持板73が取り付けられ、支持板73に穴74が設けられ、穴74を旋回軸10が貫通している。また、旋回板64にスラスト方向の力を受ける第3の軸受72を介して3枚の回転板71が回転可能に支持され、回転板71の片面に連結軸75が固定され、連結軸75はスラスト方向の力を受ける第4の軸受76を介して支持板73に対して回転可能に支持板73に支持されている。そして、回転板71の中心と連結軸75の中心との距離は回転軸7の中心と旋回軸10の中心との距離と等しく、支持板73、旋回板64、回転板71、連結軸75等により旋回軸10、旋回板64の偏心旋回を許容しかつ旋回軸10、旋回板64の自転を防止する自転防止装置が構成されている。
【0037】
図9〜図11に示したスクロール流体機械においては、モータ9のステータ2の巻線に通電すると、ロータ8、回転軸7が回転し、旋回軸10、旋回板64は回転軸7の中心線を中心として偏心旋回するが、LMガイド式自転防止装置、回転板71を有する自転防止装置が設けられているから、旋回軸10、旋回板64は自転しない。このため、旋回スクロール27がケーシング1、固定スクロール26に対して回転せずに偏心旋回するから、旋回スクロール27と固定スクロール26との間に形成された圧縮室28が徐々に縮小する。したがって、空気等の被圧縮ガスは吸入管29から吸引され、圧縮室28で圧縮されて吐出管30から吐出される。
【0038】
このようなスクロール流体機械においては、LMガイド式自転防止装置を有するから、確実に旋回軸10の自転を防止することができるので、確実に旋回スクロール27の回転を防止することができる。
【0039】
なお、上述実施の形態においては、2枚の支持板17、41を設けたが、1枚の支持板を設けてもよい。また、図5に示したスクロール流体機械において、第1、第2の自転防止装置として、図6〜図8に示したスクロール流体機械の自転防止装置、図9〜図11に示したスクロール流体機械の自転防止装置を用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明に係るスクロール流体機械を示す概略断面図である。
【図2】図1に示されたスクロール流体機械の一部を示す拡大断面図である。
【図3】図2のA−A断面図である。
【図4】図2のB−B断面図である。
【図5】本発明に係る他のスクロール流体機械を示す断面図である。
【図6】本発明に係る他のスクロール流体機械の一部を示す断面図である。
【図7】図6のC−C断面図である。
【図8】図6のD−D断面図である。
【図9】本発明に係る他のスクロール流体機械の一部を示す断面図である。
【図10】図9のE−E断面図である。
【図11】図6のF−F断面図である。
【符号の説明】
【0041】
1…ケーシング
2…ステータ
7…回転軸
8…ロータ
10…旋回軸
10a…分離旋回軸
10b…分離旋回軸
11、12…軸受
13…錘板
17…支持板
19…第1の軸受
20…回転板
21…第2の軸受
22…旋回板
22a…旋回板
22b…旋回板
23…連結軸
23a…連結軸
23b…連結軸
25…押え部材
26…固定スクロール
26a…固定スクロール
26b…固定スクロール
27…旋回スクロール
27a…旋回スクロール
27b…旋回スクロール
31…凹部
32…凸部
41…支持板
43…第4の軸受
44…旋回板
45…第3の軸受
46…回転板
47…連結軸
61…取付板
63…第1のLMブロック
64…旋回板
67…第2のLMブロック
68…移動リング
69…第1のLMレール
70…第2のLMレール
71…回転板
72…第3の軸受
73…支持板
75…連結軸
76…第4の軸受

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシングに固定されたステータと、上記ケーシングに回転可能に支持された回転軸と、上記回転軸に固定されたロータと、上記回転軸に偏心して回転可能に支持された旋回軸と、上記ケーシングに取り付けられた支持板と、上記支持板に回転可能に支持された回転板と、上記旋回軸に取り付けられた旋回板と、上記旋回板に固定されかつ上記回転板に対して回転可能に上記回転板に支持された連結軸と、上記ケーシングに取り付けられた固定スクロールと、上記旋回軸に取り付けられた旋回スクロールとを具備し、上記回転板の中心と上記連結軸の中心との距離を上記回転軸の中心と上記旋回軸の中心との距離と等しくしたことを特徴とするスクロール流体機械。
【請求項2】
上記回転板をスラスト方向の力を受ける第1の軸受を介して回転可能に上記支持板に支持し、上記連結軸をスラスト方向の力を受ける第2の軸受を介して回転可能に上記回転板に支持したことを特徴とする請求項1に記載のスクロール流体機械。
【請求項3】
ケーシングに固定されたステータと、上記ケーシングに回転可能に支持された回転軸と、上記回転軸に固定されたロータと、上記回転軸に偏心して回転可能に支持された旋回軸と、上記ケーシングに取り付けられた支持板と、上記旋回軸に取り付けられた旋回板と、上記旋回板に回転可能に支持された回転板と、上記回転板に固定されかつ上記支持板に対して回転可能に上記支持板に支持された連結軸と、上記ケーシングに取り付けられた固定スクロールと、上記旋回軸に取り付けられた旋回スクロールとを具備し、上記回転板の中心と上記連結軸の中心との距離を上記回転軸の中心と上記旋回軸の中心との距離と等しくしたことを特徴とするスクロール流体機械。
【請求項4】
上記回転板をスラスト方向の力を受ける第3の軸受を介して回転可能に上記旋回板に支持し、上記連結軸をスラスト方向の力を受ける第4の軸受を介して回転可能に上記支持板に支持したことを特徴とする請求項3に記載のスクロール流体機械。
【請求項5】
2枚の上記支持板の間に上記旋回板を位置させたことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のスクロール流体機械。
【請求項6】
LMガイド式自転防止装置を有することを特徴とする請求項3または4に記載のスクロール流体機械。
【請求項7】
上記旋回軸に錘板を取り付け、上記旋回軸の中心線と上記錘板の重心とを上記回転軸の中心線の両側に位置させたことを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載のスクロール流体機械。
【請求項8】
上記錘板の上記回転軸に直角なモーメントベクトル、上記旋回スクロールの上記回転軸に直角なモーメントベクトルおよび上記旋回板の上記回転軸に直角なモーメントベクトルの和が零ベクトルであることを特徴とする請求項7に記載のスクロール流体機械。
【請求項9】
上記旋回軸をスラスト方向の力を受けない軸受により回転可能に上記回転軸に支持したことを特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記載のスクロール流体機械。
【請求項10】
弾性体からなる押え部材により上記旋回板の上記旋回軸の軸方向の移動を防止したことを特徴とする請求項1ないし9のいずれかに記載のスクロール流体機械。
【請求項11】
上記旋回軸を第1の分離旋回軸と第2の分離旋回軸とに分離し、上記第1の分離旋回軸に凹部を設け、第2の分離旋回軸を凸部を設け、上記凹部と上記凸部とを係合して上記第1の分離旋回軸と上記第2の分離旋回軸とを軸方向にのみ移動可能に連結し、上記第1、第2の分離旋回軸それぞれに上記旋回板を取り付け、上記第1、第2の分離旋回軸それぞれに上記旋回スクロールを取り付けたことを特徴とする請求項1ないし10のいずれかに記載のスクロール流体機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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