説明

スズ合金形成用メッキ液及びこれを利用するスズ合金皮膜の形成方法

【課題】本発明は、スズ合金形成用メッキ液及びこれを利用するスズ合金皮膜の形成方法に関する。
【解決手段】本発明に係るスズ合金形成用メッキ液は、インジウム又は亜鉛を含む一つ以上の金属塩と、スズ塩と、当該金属塩の金属イオン及び当該スズ塩のスズイオンに電子を伝達して被メッキ物上にスズ合金皮膜を形成する水素化ホウ素化合物からなる群から選択される一つ以上の還元剤とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スズ合金形成用メッキ液及びこれを利用するスズ合金皮膜の形成方法に関する。より詳細には、緻密且つ均一なスズ合金皮膜を形成できるスズ合金形成用メッキ液及びこれを利用するスズ合金皮膜の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
配線基板上にICチップ等を実装するために用いられたソルダーボールは、配線の高密度化及び基板の薄膜化の傾向と共にコスト節減のため、精密なメッキに代替されている。
【0003】
しかしながら、配線基板にスズ皮膜を形成する上で、電解メッキ法を利用する場合、電流の密度が不均一となるに従い、スズ皮膜の厚さが不均一となることがある。これにより、基板の配線とICチップとのマッチングが容易でなく、製品全体の信頼性が低下することがある。さらに、電解メッキの際には、電圧印加のための装備がメッキ槽に加えられるため、装備の大型化、工程の複雑化及び高価な装備利用によるコスト増加をもたらす。
【0004】
これにより、電解メッキではなく無電解メッキでスズ皮膜を形成する方法が試みられている。無電解メッキの場合、メッキ性能が高いことから、スズ皮膜が緻密且つ均一になって、製品全体の品質を向上させることができる。
【0005】
無電解メッキ法としては、メッキしようとする配線基板の金属原子が金属イオンに変わってメッキ液内に溶出され、金属原子から電子を伝達されたメッキ液内のスズイオンが配線基板の表面に電着(メッキ)される原理を利用する無電解置換メッキ方法がある。
【0006】
しかしながら、無電解置換メッキ方法を利用すると、一定の厚さ以上を有するスズ皮膜の形成は可能であるが、配線基板とスズ皮膜との間に空隙が形成されることがある。また、配線基板の金属原子がメッキ液内に溶出されることで、配線基板の腐食(erosion)、金属間の拡散(intermetalic diffusion)又はアンダーカット(under cut)等の現象が発生し、これによって高い信頼性を要する配線基板の製作が困難である。
【0007】
このような問題点のため、無電解置換メッキ方法ではなく無電解還元メッキ方法でスズをメッキしようとする試みがあった。しかしながら、スズの自己触媒活性が低く、所望の水準でスズをメッキできる還元剤が未だ開発されていないため、適切な還元剤の開発が重要な問題として浮き上がっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−209425号公報
【特許文献2】特開1999−021673号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、上記の問題点を解決するために、緻密且つ均一なスズ皮膜を形成できるスズ合金形成用メッキ液及びこれを利用するスズ合金皮膜の形成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明の一実施形態によると、インジウム又は亜鉛を含む一つ以上の金属塩と、スズ塩と、当該金属塩の金属イオン及び当該スズ塩のスズイオンに電子を伝達して被メッキ物上にスズ合金皮膜を形成する水素化ホウ素化合物からなる群から選択される一つ以上の還元剤とを含むスズ合金形成用メッキ液が提供される。
【0011】
上記スズ塩は、二つ以上のカルボキシル基を有するリガンドを含むことができる。
【0012】
上記スズ塩は、下記式1で表示されるオキサラート(Oxalate)を含むことができる。
【0013】
【化1】

【0014】
上記スズ塩の含量は、5〜20g/Lであっても良い。
【0015】
上記インジウム又は亜鉛を含む一つ以上の金属塩の含量は、1〜10g/Lであっても良い。
【0016】
上記水素化ホウ素化合物は、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム又は水素化ホウ素リチウムであっても良い。
【0017】
上記還元剤の含量は、1〜10g/Lであっても良い。
【0018】
上記スズ合金形成用メッキ液のpHは、10〜11であっても良い。
【0019】
上記スズ合金形成用メッキ液は、錯化剤、促進剤及び酸化防止剤からなる群から選択される一つ以上の添加剤を含むことができる。
【0020】
上記スズ合金形成用メッキ液は、上記金属イオン及びスズイオンと配位結合可能な共有電子対を有するアミノ化合物及びカルボニル化合物からなる群から選択される一つ以上の第1の錯化剤と、当該第1の錯化剤よりもスズイオンとの結合エネルギーの低いアミノ化合物及びカルボニル化合物からなる群から選択される一つ以上の第2の錯化剤とを含むことができる。
【0021】
上記第1の錯化剤の含量は50〜150g/L、上記第2の錯化剤の含量は1〜20g/Lであっても良い。
【0022】
本発明の他の実施形態によると、インジウム又は亜鉛を含む一つ以上の金属塩と、スズ塩と、当該金属塩の金属イオン及び当該スズ塩のスズイオンに電子を伝達して被メッキ物上にスズ合金皮膜を形成する水素化ホウ素化合物からなる群から選択される一つ以上の還元剤とを含むスズ合金形成用メッキ液を製造する段階、及び当該スズ合金形成用メッキ液に被メッキ物を浸漬してスズ合金皮膜を形成する段階を含むスズ合金皮膜の形成方法が提供される。
【0023】
上記スズ塩は、下記式1で表示されるオキサラートを含むことができる。
【0024】
【化2】

【0025】
上記スズ合金形成用メッキ液のpHは、10〜11であっても良い。
【0026】
上記被メッキ物は、印刷回路基板であり、当該印刷回路基板の回路パターン上にスズ合金皮膜を形成することで、スタッドバンプボンディング用パッドを形成することができる。
【0027】
上記回路パターン上にニッケル層を形成した後、上記スズ合金皮膜を形成することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明の一実施形態に係るスズ合金形成用メッキ液は、安定性とメッキ速度に優れ、メッキ速度調節のための温度調節が可能であるという特性を有する。
【0029】
さらに、本発明によると、還元剤の酸化によってスズ、インジウム又は亜鉛の析出に必要な電子の供給を受けるため、被メッキ物を構成する金属が溶解されず被メッキ物の腐食等の損失が発生することなく、緻密且つ均一なスズ皮膜を形成することができる。これにより、薄膜化される金属パターン等の損失なしに、実装基板を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の一実施形態により印刷回路基板にスズ合金皮膜を形成する方法を概略的に示す工程別断面図である。
【図2】本発明の一実施形態により印刷回路基板にスズ合金皮膜を形成する方法を概略的に示す工程別断面図である。
【図3】本発明の一実施形態により印刷回路基板にスズ合金皮膜を形成する方法を概略的に示す工程別断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態を詳述する。しかしながら、本発明の実施形態は、多様な他の形態に変形されることができ、本発明の範囲が後述する実施形態に限定されるものではない。また、本発明の実施形態は、当業界における通常の知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【0032】
本発明の一実施形態に係るスズ合金形成用メッキ液は、インジウム又は亜鉛を含む一つ以上の金属塩と、スズ塩と、当該金属塩の金属イオン及び当該スズ塩のスズイオンに電子を伝達して被メッキ物上にスズ合金皮膜を形成する水素化ホウ素化合物からなる群から選択される一つ以上の還元剤とを含むことができる。
【0033】
本発明の一実施形態に係るスズ合金形成用メッキ液は、メッキ液中に還元剤を含み、当該還元剤の酸化によってスズ合金の析出に必要な電子の供給を受けるようになる。即ち、還元剤から発生される電子は、インジウムイオン、亜鉛イオン及びスズイオンに伝達され、還元されたインジウムイオン、亜鉛イオン及びスズイオンは、被メッキ物上に電着されてスズ合金皮膜を形成する。これは、従来の無電解置換反応と異なり、スズイオン等が、被メッキ物を構成する金属の溶解によって生成される電子を利用するものではないため、被メッキ物の腐食等の損失なしにスズ合金皮膜を形成することができる。したがって、薄膜化される金属配線等の損失なしに電子部品実装基板を製造することができる。
【0034】
本発明の一実施形態に係るスズ合金形成用メッキ液は、インジウム又は亜鉛を含む一つ以上の金属塩とスズ塩とを含んで最終的にスズ合金皮膜を形成する。
【0035】
本実施形態において、上記スズ塩としては、スズイオンと、二つ以上のカルボキシル基を有するリガンド(complex agent)とが結合されたものを用いることができる。メッキ液内にカルボキシル基を有するリガンドは、スズイオンと配位結合してキレート化合物を生成することで、錯化剤として作用することができる。
【0036】
上記二つ以上のカルボキシル基を有するリガンドとしては、例えば、下記式1で表示されるオキサラート(Oxalate)を用いることができるが、これに制限されるものではない。
【0037】
【化3】

【0038】
上記オキサラートは、二つのカルボキシル基が隣接して位置したものであって、スズイオンとの結合エネルギー(bonding energy)が高い。
【0039】
一般的に用いられるハロゲン元素(Cl、F等)が結合されたスズ塩や硫酸スズ塩等は、ハロゲンイオン又は硫酸イオンが被メッキ物の腐食を誘発させるため、メッキ速度を増加させるのが困難である。
【0040】
しかしながら、ティンオキサラート(Tin oxalate)は、被メッキ物の腐食を誘発させない上、被メッキ物の表面に吸着して腐食を誘発する物質の反応を抑制する役割をすることができる。本発明の一実施形態によると、ティンオキサラートを用いてスズ合金皮膜を形成することで、被メッキ物の腐食を防止し、メッキ速度を向上させることができる。
【0041】
なお、スズイオンが、被メッキ物上ではなく溶液内で還元剤と反応すると、スラッジを発生させるようになる。しかしながら、オキサラートのように、スズイオンとの結合エネルギーの高い化合物が錯化剤として作用する場合、スラッジの発生可能性を低くすることができるため、メッキ液の安定性を確保し、メッキ速度増加のための温度調節を容易にすることができる。
【0042】
また、上記スズ塩を用いることによって、還元剤である水素化ホウ素化合物を少量、含むことができる。
【0043】
上記スズ塩の含量は、5〜20g/Lであっても良いが、これに制限されるものではない。上記スズ塩の含量が、5g/L未満であると、メッキ速度が低下し、20g/Lを超過すると、溶液が不安定になってスラッジが発生したり被メッキ領域を外れてスズ皮膜が形成されたりする恐れがある。
【0044】
本発明の一実施形態に係るスズ合金形成用メッキ液は、スズ合金皮膜を形成するために、インジウム又は亜鉛を含む一つ以上の金属塩を含む。
【0045】
上記金属塩としては、特に制限されず、インジウムアセテート及びジンクアセテート(Zinc acetate)を用いることができる。
【0046】
上記金属塩とスズ塩を用いて、In−Sn又はZn−Snの2成分系スズ合金皮膜を形成したり、In−Zn−Snの3成分系スズ合金皮膜を形成したりすることができる。
【0047】
上記2成分系スズ合金又は上記3成分系スズ合金は、純スズに比べて融点が低いため、半田付け性を向上させることができる。上記2成分系スズ合金又は上記3成分系スズ合金は、In及び/又はZnが特定モル比を有する場合、純スズに比べて低い融点を有することになるため、当該特定モル比を有するように金属塩の含量を調節することができる。
【0048】
より詳細には、In−Snの2成分系スズ合金は、Inが0.1〜99%のモル分率を有するように形成され、Zn−Snの2成分系スズ合金は、Znが0.1〜20%のモル分率を有するように形成されることができる。
【0049】
上記インジウム又は亜鉛を含む一つ以上の金属塩の含量は、所望の合金比に応じて1〜30g/Lであっても良いが、これに制限されるものではない。
【0050】
本発明の一実施形態に係るスズ合金形成用メッキ液は、水素化ホウ素化合物からなる群から選択される一つ以上の還元剤を含むことができる。
【0051】
無電解スズ合金形成用メッキ液に含まれる還元剤は、酸化によって電子を生成し、生成された電子を利用してインジウムイオン、亜鉛イオン及びスズイオンを還元させることができるものを用いなければならない。
【0052】
スズは、水素過電圧が高く自己触媒活性が低いため、被メッキ物上に安定的な自己触媒析出が困難である。しかしながら、水素化ホウ素化合物を還元剤として用いると、スズイオンに電子を伝達することができ、当該スズイオンが還元されることで被メッキ物上にスズ合金が安定的に析出されることができる。
【0053】
上記水素化ホウ素化合物は、強い還元剤であって、スズの自己触媒活性を可能にする。
【0054】
上記水素化ホウ素化合物としては、これらに制限されず、例えば、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム又は水素化ホウ素リチウム等があり、これらを1種以上混合して用いることができる。
【0055】
上記還元剤の含量は、1〜10g/Lであっても良いが、これに制限されるものではない。
【0056】
上記還元剤の含量が、1g/L未満であると、スズイオンの析出が困難であったりスズイオンの析出に長時間を要する恐れがあり、10g/Lを超過すると、メッキ液が不安定になる恐れがある。
【0057】
本発明の一実施形態に係るスズ合金形成用メッキ液は、pHが10〜11であることが好ましい。無電解スズ合金形成用メッキ液が酸性条件を有すると、水素化ホウ素化合物の酸化反応によって発生された電子が溶液内の水素イオンと反応して水素気体を発生させることで、スズイオン、インジウムイオン及び亜鉛イオンの電着反応を阻害することがある。したがって、水素化ホウ素化合物からスズイオン、インジウムイオン及び亜鉛イオンに安定的に電子を伝達するためには、無電解スズ合金形成用メッキ液は、pHが10〜11であることが好ましい。
【0058】
本発明の一実施形態に係るスズ合金形成用メッキ液は、錯化剤、促進剤及び酸化防止剤等のその他の添加剤をさらに含むことができる。
【0059】
上記錯化剤は、メッキ進行中にメッキ液内で金属イオンが還元されて沈殿されることを防止する役割と、溶液内で還元剤と反応して発生するスラッジ生成反応を抑制する役割とを行う。
【0060】
本発明の一実施形態に係るスズ合金形成用メッキ液は、金属イオン及びスズイオンと配位結合可能な共有電子対を有するアミノ化合物又はカルボニル化合物からなる群から選択される一つ以上を第1の錯化剤として含むことができる。当該第1の錯化剤としては、スズイオンとの結合エネルギーが高くて溶液安定性を与えることができるものとして、例えば、エチレンジアミン四酢酸(Ethylene Diamine Tetraacetic Acid、EDTA)、(ビス(ホスホノメチル)アミノ)メチルホスホン酸((bis(phosphonomethyl)amino)methyl phosphonic acid)、トランス−1,2−ジアミノシクロヘキサン−N,N,N’,N’−四酢酸(trans−1,2−diaminocyclohexane−N,N,N’,N’−tetraacetic acid)、(S,S)−エチレンジアミン−N,N’−ジコハク酸((S,S)−ethylenediamine−N,N’−disuccinic acid)又はクエン酸ナトリウム(sodium citrate)を用いることができるが、これらに制限されるものではない。
【0061】
上記第1の錯化剤の含量は、例えば、50〜150g/Lであっても良いが、これに制限されるものではない。上記第1の錯化剤の含量が、50g/L未満であると、溶液内で還元剤と反応してスラッジが発生し、150g/Lを超過すると、メッキ速度が低下する恐れがある。
【0062】
本発明の一実施形態に係るスズ合金形成用メッキ液は、第1の錯化剤よりスズイオンとの結合エネルギーの低いアミノ化合物及びカルボニル化合物からなる群から選択される一つ以上を第2の錯化剤として含むことができる。
【0063】
上記第2の錯化剤は、例えば、二つのカルボキシル基が隣接する構造を有するオキサラート等を用いることができるが、これに制限されるものではない。上記オキサラートは、スズイオンと配位結合してキレート化合物を生成し、これにより、スズイオンが被メッキ物上ではなく溶液内で還元剤と反応する可能性を低くすることができる。
【0064】
したがって、メッキ液内でのスラッジの発生可能性を低くすることで、メッキ速度増加のための温度調節を容易にすることができる。
【0065】
上記第2の錯化剤の含量は、例えば、1〜20g/Lであっても良いが、これに制限されるものではない。上記第2の錯化剤を含まなくても、スズ塩内にカルボキシル基を有するリガンドを含んでいるため、メッキ速度を増加させることができるが、第2の錯化剤を含む場合、用いようとする温度に応じてメッキ速度を調節することができる。
【0066】
上記第2の錯化剤の含量が20g/Lを超過すると、メッキ液が不安定になる恐れがある。
【0067】
上記促進剤は、還元剤の自然分解を防止できるものであって、促進剤を含むことによって、メッキ速度を増加させることができる。
【0068】
上記還元剤は、メッキ液内において、安定性に優れているべきであり、分解され易かったり他の添加剤と反応したりすべきではない。上記促進剤を含むことによって、還元剤の安定性を確保し、スズイオンの電子伝達能力を向上させることができる。
【0069】
上記促進剤は、水素化ホウ素化合物の自然分解を防止できるものであれば、特に制限されず、当業界で用いられるものを用いることができる。例えば、酢酸ナトリウム(Sodium acetate)を用いることができるが、これに制限されるものではない。
【0070】
上記促進剤の含量は、例えば、1mg/L〜20g/Lであっても良いが、これに制限されるものではない。上記促進剤の含量が、1mg/L未満であると、還元剤が自然分解されてメッキ速度が低下し、20g/Lを超過すると、溶液が不安定になる恐れがある。
【0071】
さらに、上記酸化防止剤を含むことによって、2価のスズイオンが4価のスズイオンに酸化されることを防止して、メッキ速度を増加させることができる。上記酸化防止剤としては、当業界で用いられるものであれば、特に制限されず、例えば、リン化合物又はヒドラジン誘導体(Hydrazine derivative)等を用いることができる。例えば、次リン酸ナトリウム(Sodium hypophosphate)を用いることができる。
【0072】
上記酸化防止剤の含量は、例えば、1mg/L〜20g/Lであっても良いが、これに制限されるものではない。上記酸化防止剤の含量が、1mg/L未満であると、メッキ速度が低下し、20g/Lを超過すると、酸化防止剤が被メッキ物の表面に位置することで還元剤として用いられる水酸化ホウ素化合物と被メッキ物との酸化反応を妨害する恐れがある。
【0073】
本発明の他の実施形態によると、スズ合金形成用メッキ液を利用するスズ合金皮膜の形成方法を提供する。
【0074】
本発明の他の実施形態に係るスズ合金皮膜の形成方法は、上述したスズ合金形成用メッキ液を利用することであって、具体的な成分及び作用は、上述した通りである。
【0075】
本発明の他の実施形態に係るスズ合金皮膜の形成方法は、本発明の一実施形態に係るスズ合金形成用メッキ液を製造し、当該スズ合金形成用メッキ液に被メッキ物を浸漬して行われることができる。
【0076】
上記浸漬段階は、25〜80℃で30〜60分間行われることができる。
【0077】
上記被メッキ物は、銅又はその他の金属製品であっても良いが、これらに制限されるものではない。さらに、銅等の金属で配線を形成した配線基板を被メッキ物として用いることができる。
【0078】
上述したように、本発明の一実施形態に係るスズ合金形成用メッキ液は、安定性とメッキ速度に優れ、メッキ速度調節のための温度調節が可能であるという特性を有する。
【0079】
さらに、本発明によると、還元剤の酸化によってスズ、インジウム又は亜鉛の析出に必要な電子の供給を受けるため、被メッキ物を構成する金属が溶解されず被メッキ物の腐食等の損失が発生することなく、緻密且つ均一なスズ皮膜を形成することができる。これにより、薄膜化される金属パターン等の損失なしに、実装基板を製造することができる。
【0080】
本発明の一実施形態に係るスズ合金皮膜の形成方法を利用して、印刷回路基板にスタッドバンプボンディング用ボンディングパッドを形成することができる。
【0081】
図1から図3は、本発明の一実施形態により印刷回路基板にスズ合金皮膜を形成する方法を概略的に示す工程別断面図である。
【0082】
まず、図1に示されるように、半導体チップ等を実装するための印刷回路基板を用意する。
【0083】
上記印刷回路基板は、絶縁層110上に回路パターン120が形成されている。そして、上記回路パターン120上におけるボンディングパッドが形成される領域を除外した箇所に、ソルダーレジスト層130を形成する。
【0084】
上記回路パターン120は、印刷回路基板の分野において回路層として用いられる通常の伝導性金属で形成され、例えば、銅を用いることができる。
【0085】
次に、上記ソルダーレジスト層130間のボンディングパッドが形成される領域に、ニッケル層140を形成する。ニッケル層140は、電解メッキ、無電解還元メッキ又は置換メッキ等によって形成することができる。上記ニッケル層140は、0.8μm以上の厚みに形成することができる。
【0086】
次いで、図2に示されるように、上記ニッケル層140上にスズ合金皮膜150を形成する。
【0087】
上記スズ合金皮膜は、上述したように、本発明の一実施形態に係るスズ合金皮膜用メッキ液に印刷回路基板を浸漬することで形成されることができる。上記スズ合金皮膜は、In−Sn、Zn−Sn又はIn−Zn−Snであっても良い。
【0088】
次いで、図3に示されるように、半導体チップ210に形成されたスタッドバンプ220を、上記スズ合金皮膜150上に実装する。
【0089】
本実施形態においては、回路パターン120とスズ合金皮膜150との間にニッケル層140を形成することで、銅とスズ合金皮膜との間に形成されるIMC(Inter Metalic Compound)の生成及びウイスカーの発生を抑制することができる。
【0090】
これによって、印刷回路基板と半導体チップ間の接合不良及び信頼性低下を防止することができる。
【0091】
以下、実施例を参照して、本発明をより詳細に説明する。
【0092】
下記表1に示されるような組成を含む無電解スズ合金形成用メッキ液を製造し、銅層に対して無電解スズ合金メッキを行った。
【0093】
【表1】

【0094】
実施例1及び実施例2によるスズ合金皮膜の表面をSEM(FEI社製のNova Namo SEM 200)を利用して観察し、定性及び定量分析(EDAX社製のGenesis 2000 EDS)を通じてスズ合金表面であることを確認した。
【0095】
また、置換メッキではなく還元によるスズ合金メッキであることを検証するために、メッキ後の溶液中のCu濃度を分析し、分析結果、Cu濃度が1mg/L以下と殆ど無いことを確認し、置換メッキではなく還元メッキであることを証明、確認した。
【0096】
本発明は、上述した実施形態及び添付の図面によって限定されることなく、添付の特許請求の範囲によって限定される。したがって、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者によって多様な形態の置換、変形及び変更が可能であり、これもまた本発明の範囲内に属すると言えるはずである。
【符号の説明】
【0097】
110 絶縁層
120 回路パターン
130 ソルダーレジスト層
140 ニッケル層
150 スズ合金皮膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インジウム又は亜鉛を含む一つ以上の金属塩と、
スズ塩と、
当該金属塩の金属イオン及び当該スズ塩のスズイオンに電子を伝達して被メッキ物上にスズ合金皮膜を形成する水素化ホウ素化合物からなる群から選択される一つ以上の還元剤と、
を含む、スズ合金形成用メッキ液。
【請求項2】
前記スズ塩は、二つ以上のカルボキシル基を有するリガンドを含む、請求項1に記載のスズ合金形成用メッキ液。
【請求項3】
前記スズ塩は、下記式1で表示されるオキサラートを含む、請求項1に記載のスズ合金形成用メッキ液。
【化1】

【請求項4】
前記スズ塩の含量は、5〜20g/Lである、請求項1に記載のスズ合金形成用メッキ液。
【請求項5】
前記インジウム又は亜鉛を含む一つ以上の金属塩の含量は、1〜10g/Lである、請求項1に記載のスズ合金形成用メッキ液。
【請求項6】
前記水素化ホウ素化合物は、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム又は水素化ホウ素リチウムである、請求項1に記載のスズ合金形成用メッキ液。
【請求項7】
前記還元剤の含量は、1〜10g/Lである、請求項1に記載のスズ合金形成用メッキ液。
【請求項8】
前記スズ合金形成用メッキ液のpHは、10〜11である、請求項1に記載のスズ合金形成用メッキ液。
【請求項9】
前記スズ合金形成用メッキ液は、錯化剤、促進剤及び酸化防止剤からなる群から選択される一つ以上の添加剤を含む、請求項1に記載のスズ合金形成用メッキ液。
【請求項10】
前記金属イオン及びスズイオンと配位結合可能な共有電子対を有するアミノ化合物及びカルボニル化合物からなる群から選択される一つ以上の第1の錯化剤と、
当該第1の錯化剤よりスズイオンとの結合エネルギーの低いアミノ化合物及びカルボニル化合物からなる群から選択される一つ以上の第2の錯化剤と、
を含む、請求項1に記載のスズ合金形成用メッキ液。
【請求項11】
前記第1の錯化剤の含量は50〜150g/L、前記第2の錯化剤の含量は1〜20g/Lである、請求項10に記載のスズ合金形成用メッキ液。
【請求項12】
インジウム又は亜鉛を含む一つ以上の金属塩と、スズ塩と、当該金属塩の金属イオン及び当該スズ塩のスズイオンに電子を伝達して被メッキ物上にスズ合金皮膜を形成する水素化ホウ素化合物からなる群から選択される一つ以上の還元剤とを含むスズ合金形成用メッキ液を製造する段階、
及び前記スズ合金形成用メッキ液に被メッキ物を浸漬してスズ合金皮膜を形成する段階、
を含む、スズ合金皮膜の形成方法。
【請求項13】
前記スズ塩は、下記式1で表示されるオキサラートを含むティンオキサラートである、請求項12に記載のスズ合金皮膜の形成方法。
【化2】

【請求項14】
前記スズ合金形成用メッキ液のpHは、10〜11である、請求項12に記載のスズ合金皮膜の形成方法。
【請求項15】
前記被メッキ物は、印刷回路基板であり、当該印刷回路基板の回路パターン上にスズ合金皮膜を形成することで、スタッドバンプボンディング用パッドを形成する、請求項12に記載のスズ合金皮膜の形成方法。
【請求項16】
前記回路パターン上にニッケル層を形成した後、前記スズ合金皮膜を形成する、請求項15に記載のスズ合金皮膜の形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−41630(P2012−41630A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−284730(P2010−284730)
【出願日】平成22年12月21日(2010.12.21)
【出願人】(594023722)サムソン エレクトロ−メカニックス カンパニーリミテッド. (1,585)
【Fターム(参考)】