説明

スタイラス摩耗検出方法および表面性状測定機

【課題】スタイラスの摩耗や欠損に対して、スタイラスの交換時期を適正に知らせることができるスタイラス摩耗検出方法および表面性状測定機を提供する。
【解決手段】表面に周期的に変化する凹凸が形成された標準片の表面に沿ってスタイラスをトレースしながら、そのトレース方向に対して交差する方向のスタイラスの変位を検出し、この変位から標準片の測定曲線を取得する測定曲線取得工程と、測定曲線に対して周波数解析を行う周波数解析工程と、この周波数解析工程で得られた周波数解析結果からスタイラスの摩耗量を演算する摩耗量演算工程と、この摩耗量演算工程で演算された摩耗量を表示する摩耗量表示工程と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スタイラス摩耗検出方法および表面性状測定機に関する。詳しくは、表面性状測定機において、スタイラスの摩耗状態を検出するスタイラス摩耗検出方法および表面性状測定機に関する。
【背景技術】
【0002】
被測定物の表面粗さや表面形状などの表面性状を測定する表面性状測定機が知られている(例えば、特許文献1など)。
これは、スタイラスを被測定物の表面に接触させ、この状態においてスタイラスを被測定物の表面に沿ってトレースさせると、被測定物の表面性状に応じて、スタイラスがトレース方向に対して直交する方向へ変位するから、このスタイラスの変位量から被測定物の表面性状を測定することができる。
【0003】
ところで、表面性状測定機では、スタイラスが被測定物の表面に接触した状態でスタイラスが被測定物の表面に沿ってトレースするため、スタイラスの先端が摩耗しやすい。通常、スタイラスの先端は、半径が2〜4μm程度の半球状であるため、目視によってスタイラスの摩耗や欠けなどの状態を確認することは難しい。
スタイラスの先端が摩耗したままで測定を行うと、表面性状、とりわけ、表面粗さを正確に測定することができないため、スタイラスの摩耗状態を検出し、摩耗が一定以上に達した時点でスタイラスの交換を促すことが望まれる。
【0004】
そこで、本出願人は、先に、スタイラスのトレース方向の移動距離を検出し、この検出されたスタイラスの移動距離を累積記憶し、この累積移動距離と予め設定されたしきい値とを比較し、累積移動距離がしきい値を超えたときにスタイラスの交換を促すようにした「表面性状測定機」を提案した(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実公平4−24408号公報
【特許文献2】特願2010−31116号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、スタイラスの累積移動距離を基準に管理するにしても、スタイラスの摩耗状態は、被測定物の硬度によっても異なるため、摩耗状態を正確に判定できない。とくに、スタイラスの累積移動距離がしきい値に達する前に、スタイラスの先端に欠けなどの欠損が生じた場合には、その欠損を検出することは困難である。
【0007】
本発明の目的は、スタイラスの摩耗や欠損に対して、スタイラスの交換を適正に知らせることができるスタイラス摩耗検出方法および表面性状測定機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のスタイラス摩耗検出方法は、スタイラスを被測定物の表面に接触させ、この状態において前記スタイラスを被測定物の表面に沿ってトレースしながら、そのトレース方向に対して交差する方向の前記スタイラスの変位を検出し、このスタイラスの変位量から被測定物の表面性状を測定する表面性状測定機において、前記スタイラスの摩耗を検出するスタイラス摩耗検出方法であって、表面に周期的に変化する凹凸が形成された標準片の表面に沿って前記スタイラスをトレースしながら、そのトレース方向に対して交差する方向の前記スタイラスの変位を検出し、この変位から前記標準片の測定曲線を取得する測定曲線取得工程と、前記測定曲線に対して周波数解析を行う周波数解析工程と、この周波数解析工程で得られた周波数解析結果から前記スタイラスの摩耗量を演算する摩耗量演算工程と、この摩耗量演算工程で演算された摩耗量を表示する摩耗量表示工程と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、表面に周期的に変化する凹凸が形成された標準片の表面に沿ってスタイラスをトレースしながら、その標準片の測定曲線を取得したのち、この測定曲線に対して周波数解析を行い、その周波数解析結果からスタイラスの摩耗量を演算する。
スタイラスが摩耗していない状態において、スタイラスが標準片の表面をトレースしたときのトレース波形(測定曲線)は、標準片の凹凸波形に略一致した波形が得られる。しかし、スタイラスが摩耗した状態において、スタイラスが標準片の表面をトレースしたときのトレース波形(測定曲線)は、標準片の凹凸波形の形状から歪んだ状態となる。従って、この測定曲線を周波数解析すると、その周波数解析結果に、スタイラスの摩耗や欠損による影響が現れるため、周波数解析結果からスタイラスの摩耗や欠損の状態を検出することができる。そして、これによって検出された摩耗量が表示されるから、スタイラスの交換時期を適正に知らせることができる。
【0010】
本発明のスタイラス摩耗検出方法において、前記測定曲線取得工程では、表面に正弦波状の凹凸が形成された正弦波標準片を用い、前記スタイラスを前記正弦波標準片の表面に沿ってトレースしながら、正弦波標準片の測定曲線を取得し、前記摩耗量演算工程では、前記周波数解析結果に対して、前記正弦波標準片の凹凸周期より短い周期のみが残るように、フィルタ処理を行い、このフィルタ処理で得られた結果の波高値を積算したのち、前記正弦波標準片の凹凸周期の波高値に対する前記積算値の比率を求める処理を行い、前記摩耗量表示工程では、前記摩耗量演算工程で求められた比率を表示する、ことが好ましい。
【0011】
この構成によれば、測定曲線取得工程では、正弦波標準片を用いて、その正弦波標準片の測定曲線を取得する。
また、摩耗量演算工程では、正弦波標準片の測定曲線の周波数解析結果に対して、正弦波標準片の凹凸周期より短い周期のみが残るように、フィルタ処理を行うようにしたので、正弦波標準片の凹凸周期より短い周期として現れるスタイラスの摩耗による歪成分を際立たせることができる。そして、このフィルタ処理で得られた結果の波高値を積算したのち、正弦波標準片の凹凸周期の波高値に対する積算値の比率を求め、これを表示するようにしたので、スタイラスの摩耗量を高精度に検出することができる。
【0012】
本発明のスタイラス摩耗検出方法において、表面に三角波状の凹凸が形成された三角波標準片の表面に沿って、未使用のスタイラスをトレースしながら、そのトレース方向に対して交差する方向の前記スタイラスの変位を検出し、この変位から前記三角波標準片の測定曲線を取得し、この測定曲線に対して周波数解析を行った結果を初期値周波数解析結果として記憶する初期値周波数解析結果記憶工程を備え、前記測定曲線取得工程では、前記三角波標準片を用い、使用後のスタイラスを前記三角波標準片の表面に沿ってトレースしながら、三角波標準片の測定曲線を取得し、前記周波数解析工程では、前記測定曲線に対して周波数解析を行って摩耗検出用周波数解析結果を求め、前記摩耗量演算工程では、前記初期値周波数解析結果および摩耗検出用周波数解析結果から、対応する一定周期毎の波高値をそれぞれ求めるとともに、この対応する一定周期毎の波高値の差分を積算したのち、前記三角波標準片の凹凸周期の波高値に対する前記差分の積算値の比率を求める処理を行い、前記摩耗量表示工程では、前記摩耗量演算工程で求められた比率を表示する、ことが好ましい。
【0013】
この構成によれば、表面に三角波状の凹凸が形成された三角波標準片の表面に沿って、未使用のスタイラスをトレースしながら、そのトレース方向に対して交差する方向のスタイラスの変位を検出し、この変位から三角波標準片の測定曲線を取得し、この測定曲線に対して周波数解析を行った結果を初期値周波数解析結果として記憶しておく。
スタイラスの使用後において、スタイラスの摩耗量を検出するには、使用後のスタイラスを三角波標準片の表面に沿ってトレースしながら、三角波標準片の測定曲線を取得し、この三角波標準片の測定曲線に対して周波数解析を行って摩耗検出用周波数解析結果を求める。
摩耗量演算工程では、初期値周波数解析結果および摩耗検出用周波数解析結果に対して、対応する一定周期毎の波高値をそれぞれ求めるとともに、この対応する一定周期毎の波高値の差分を積算したのち、三角波標準片の凹凸周期の波高値に対する差分の積算値の比率を求め、これを表示するようにしたので、スタイラスの摩耗量を高精度に検出することができる。
【0014】
本発明の表面性状測定機は、スタイラスを被測定物の表面に接触させ、この状態において前記スタイラスを被測定物の表面に沿ってトレースしながら、そのトレース方向に対して交差する方向の前記スタイラスの変位を検出し、このスタイラスの変位量から被測定物の表面性状を測定する表面性状測定機において、表面に周期的に変化する凹凸が形成された標準片の表面に沿って前記スタイラスをトレースしながら、そのトレース方向に対して交差する方向の前記スタイラスの変位を検出し、この変位から前記標準片の測定曲線を取得する制御装置と、前記測定曲線に対して周波数解析を行う周波数解析装置と、この周波数解析装置で得られた周波数解析結果から前記スタイラスの摩耗量を演算する摩耗量演算処理装置と、この摩耗量演算処理装置で演算された摩耗量を表示する摩耗量表示装置と、を備えたことを特徴とする。
この構成によれば、スタイラスの摩耗検出方法と同様に、スタイラスの交換時期を適正に知らせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施形態に係る表面性状測定機を示す図。
【図2】同上実施形態において、摩耗有無のスタイラスで正弦波標準片をトレースしたときの測定曲線を示す図。
【図3】同上実施形態において、摩耗有無のスタイラスで周期が大きい正弦波標準片をトレースしたときの測定曲線を示す図。
【図4】同上実施形態において、正弦波標準片を用いた摩耗検出方法(例1)を示すフローチャート。
【図5】図3の測定曲線のFFT解析結果を示す図。
【図6】同上実施形態において、三角波標準片を用いた摩耗検出方法(例2)を示すフローチャート。
【図7】同上実施形態において、摩耗有無のスタイラスで三角波標準片をトレースしたときの測定曲線を示す図。
【図8】図7の測定曲線のFFT解析結果を示す図。
【図9】同上実施形態において、スタイラスの欠損状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の一実施形態に係る表面性状測定機を図面に基づいて説明する。
<表面性状測定機の説明>
表面性状測定機は、表面性状測定機本体1と、制御装置20と、周波数解析装置30と、摩耗量演算処理装置としての処理装置40と、摩耗量表示装置としての表示装置50とを備える。
【0017】
表面性状測定機本体1は、ベース2と、このベース2の上に設けられ被測定物Wや校正用の標準片を載置するためのテーブル3と、ベース2の上に立設されたコラム4と、このコラム4に沿って上下方向(Z軸方向)へ昇降可能に設けられたZスライダ5と、このZスライダ5に駆動機構6を介して左右方向(X軸方向)へ移動可能に設けられたXスライダ7と、このXスライダ7に設けられた検出器10とを備える。検出器10は、Xスライダ7に中間部分を揺動可能に支持されたアーム11と、このアーム11の先端に取り付けられたスタイラス12と、アーム11の基端に設けられスタイラス12の上下方向(Z軸方向)の変位を検出する検出部13とを備える。
【0018】
制御装置20は、Zスライダ5を昇降させる駆動機構(図示省略)および検出器10を駆動させる駆動機構6を制御しながら、スタイラス12を被測定物Wの表面に接触させ、この状態において、駆動機構6を駆動させて、スタイラス12を被測定物Wの表面X軸方向に沿ってトレースしながら、そのトレース方向に対して直交する方向(Z軸方向)のスタイラス12の変位を検出部13から取り込み、このスタイラス12のZ軸方向変位量とスタイラス12のX軸方向変位量から被測定物Wの表面性状(粗さや形状)を測定する。
【0019】
周波数解析装置30は、制御装置20によって取得されたスタイラス12のZ軸方向変位量とスタイラス12のX軸方向変位量との測定曲線に対して周波数解析、つまり、FFT(高速フーリエ変換)解析を行う。
処理装置40は、周波数解析装置30で得られた周波数解析結果からスタイラス12の摩耗量を演算する。具体的な演算方法については、後述する。
表示装置50は、処理装置40で演算された結果、つまり、スタイラス12の摩耗量を、数値、バーグラフ、色などを使って表示する。
【0020】
<スタイラスの摩耗検出方法>
まず、表面に周期的に変化する凹凸が形成された標準片を用いて、その標準片の測定曲線を取得する(測定曲線取得工程)。
標準片としては、表面に正弦波状の凹凸が形成された正弦波標準片を用いる。この正弦波標準片をテーブル3の上に載置したのち、スタイラス12を正弦波標準片の表面に接触させ、この状態において、駆動機構6を駆動させる。スタイラス12が正弦波標準片の表面に沿って移動していくと、正弦波標準片の表面形状によってスタイラス12が上下動される。すると、スタイラス12の上下動(Z軸方向変位量)が検出部13によって検出され、この上下動に伴う検出部13からの検出信号とスタイラス12のトレース方向の移動距離(X軸方向変位量)とが制御装置20に入力され、制御装置20において、正弦波標準片の測定曲線が求められる。
【0021】
図2は、先端(半径数ミクロンの半球形)が摩耗していない状態のスタイラス12で正弦波標準片の表面をトレースしたときの測定曲線(実線)と、先端が摩耗した状態のスタイラス12で正弦波標準片の表面をトレースしたときの測定曲線(破線)を示している。
先端が摩耗した状態のスタイラス12で正弦波標準片の表面をトレースした場合、本来の正弦波波形に対して歪んだ状態になることがわかる。特に、図2では、正弦波の周期が比較的短いため、歪んだ影響が顕著に現れる。
【0022】
ところが、通常使用されている校正用の標準片は、周期が100μmと長い。このような周期が長い正弦波標準片の場合、先端半径数ミクロンのスタイラス12が摩耗しても、通常の測定曲線から摩耗状態を判定するのは困難である。
例えば、先端半径2μmのスタイラス12が摩耗し、先端アールが全く無くなった状態で、周期が100μmの正弦波標準片を測定すると、測定曲線は図3のようになる。図2に比べ、スタイラス12の先端半径に対して正弦波標準片の周期が長いため、測定曲線からスタイラス12の摩耗状態を判定するのが困難になることが分かる。
【0023】
(正弦波標準片を用いた摩耗検出方法)
そこで、本実施形態においては、図4に示す処理を行って、スタイラス12の摩耗量を検出する。
(ST1)周波数解析装置30において、制御装置20によって得られた測定曲線(正弦波標準片の測定曲線)を取り込み、この測定曲線に対して、周波数解析、つまり、FFT(高速フーリエ変換)解析を行う(周波数解析工程)。
例えば、図3に示す測定曲線に対してFFT解析を行うと、図5に示す結果が得られる。図5において、スタイラス12の先端が摩耗していない場合(実線)、正弦波標準片の周期部分にのみ波高値が現れるが、スタイラス12の先端が摩耗すると(破線)、正弦波標準片の周期より短い部分に波高値が現れていることが分かる。つまり、摩耗したスタイラス12が正弦波標準片をトレースしたときの測定曲線は正弦波に対して歪みを生じるため、この歪みの影響によって正弦波標準片の周期より短い部分に波高値が現れる。
また、図5において、スタイラス12の摩耗によって発生する歪み成分のパワー成分は、正弦波標準片の正弦波周期のパワー成分に比べて、非常に小さいことが分かる。
【0024】
そこで、次に、周波数解析工程で得られたFFT解析結果からスタイラス12の摩耗成分の影響を際立たせる処理を行って、スタイラス12の摩耗量を演算する(摩耗量演算工程)。
(ST2)FFT解析結果から、正弦波標準片の周期を求める。つまり、図5において、波高値のピーク値に相当する周期から正弦波標準片の周期を求める。
(ST3)FFT解析結果に対して、正弦波標準片の正弦波周期より短い周期のみが残るように、フィルタ処理を行う。具体的には、FFT解析結果に対して、ST2で求めた正弦波標準片の周期をカットオフ値とする急峻な特性を有するハイパスフィルタをかける、あるいは、正弦波標準片の周期を頂点として減数させる急峻なバンドパスフィルタを通すことにより、正弦波標準片の正弦波周期より短い周期のみを残す。
(ST4)このフィルタ処理で得られた結果の波高値を積算、つまり、波高値の積算値を求める。
(ST5)正弦波標準片の正弦波周期の波高値に対する積算値の比率を演算する。
【0025】
(ST6)最後に、上述した処理によって得られた比率を、摩耗量の目安として表示装置50に表示する(摩耗量表示工程)。具体的には、得られた比率を、数値やバーグラフ、色などを使って表示する。
【0026】
(三角波標準片を用いた摩耗検出方法)
前述した摩耗検出方法の場合、使用する標準片が三角波状の凹凸が形成された三角波標準片を用いる場合、有効な演算ができない。
そこで、この例では、未使用(新しい)のスタイラス12を用いて、三角波標準片を測定し、これよって得られた測定曲線に対してFFT解析を行い、これを初期値として記憶しておき、その後に行われる摩耗検出のための測定曲線のFFT解析結果と比較してスタイラス12の摩耗量を算出するようにしている。
具体的には、図6(A)(B)に示す処理を行って、スタイラス12の摩耗量を検出する。
【0027】
(ST11〜13)三角波標準片の表面に沿って、未使用(新しい)のスタイラス12をトレースして、三角波標準片の測定曲線を取得し、この測定曲線に対してFFT解析を行った結果を初期値周波数解析結果として記憶装置などに記憶しておく(初期値周波数解析結果記憶工程)。
【0028】
(ST21)周波数解析装置30において、制御装置20によって得られた測定曲線(三角波標準片の測定曲線)を取り込み、この測定曲線に対して、FFT解析を行う(周波数解析工程)。
例えば、図7に示す測定曲線に対してFFT解析を行うと、図8に示す結果が得られる。図8において、スタイラス12の先端が摩耗していない場合(実線)とスタイラス12の先端が摩耗している場合(破線)との差の成分が広い周期成分に分散して現れていることが分かる。
【0029】
(ST22)FFT解析結果から、三角波標準片の周期を求める。つまり、図8において、波高値のピーク値に相当する周期から三角波標準片の周期を求める。
(ST23)初期値として記憶したFFT解析結果(初期値周波数解析結果)、および、ST21で得られたFFT解析結果(摩耗検出用周波数解析結果)に対して、一定ピッチ(一定周期)毎の波高値をそれぞれ求める。
(ST24)初期値FFT解析結果の一定ピッチ(周期)毎の波高値と、摩耗検出用FFT解析結果の一定ピッチ(周期)毎の波高値との差分を積算する。
(ST25)三角波標準片の三角波周期の波高値に対する前記積算値の比率を演算する。
【0030】
(ST26)最後に、上述した処理によって得られた比率を、摩耗量の目安として表示装置50に表示する(摩耗量表示工程)。具体的には、得られた比率を、数値やバーグラフ、色などを使って表示する。
【0031】
本実施形態によれば、標準片(正弦波標準片や三角波標準片)の測定曲線を求めたのち、この測定曲線に対してFFT解析を行い、そのFFT解析結果からスタイラス12の摩耗量を演算するようにしたので、スタイラス12の摩耗量を正確に検出できるほかに、図9に示すような、スタイラス12の欠損12Aも検出できる。つまり、スタイラス12の欠損12Aの部分が標準片に接触しながらトレースすると、測定曲線に歪みが生じるため、スタイラス12の欠損12Aも検出できる。
また、スタイラスの摩耗検出については、標準片(正弦波標準片、三角波標準片)を用いた検出器10のゲイン校正時に同時に行うことができるから、スタイラスの摩耗検出を効率的に行うことができる。
【0032】
<変形例>
本発明は、前述の実施形態に限定されるものでなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良などは本発明に含まれる。
前記実施形態では、標準片として、正弦波標準片と、三角波標準片とを用いた例について説明したが、これらに限られない。要は、周期的に凹凸が繰り返される形状を備えた標準片であれば、他の形状でもよい。
【0033】
前記実施形態では、図1に示す構造の表面性状測定機に適用した例について説明したが、表面性状測定機としては、これに限られない。例えば、手で持って測定を行うハンディタイプの表面性状測定機であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、スタイラスが被測定物に接触しながら測定を行う粗さ測定機や形状測定機などの表面性状測定機に利用できる。
【符号の説明】
【0035】
1…表面性状測定機本体、
12…スタイラス、
20…制御装置、
30…周波数解析装置、
40…処理装置(摩耗量演算処理装置)、
50…表示装置(摩耗量表示装置)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スタイラスを被測定物の表面に接触させ、この状態において前記スタイラスを被測定物の表面に沿ってトレースしながら、そのトレース方向に対して交差する方向の前記スタイラスの変位を検出し、このスタイラスの変位量から被測定物の表面性状を測定する表面性状測定機において、前記スタイラスの摩耗を検出するスタイラス摩耗検出方法であって、
表面に周期的に変化する凹凸が形成された標準片の表面に沿って前記スタイラスをトレースしながら、そのトレース方向に対して交差する方向の前記スタイラスの変位を検出し、この変位から前記標準片の測定曲線を取得する測定曲線取得工程と、
前記測定曲線に対して周波数解析を行う周波数解析工程と、
この周波数解析工程で得られた周波数解析結果から前記スタイラスの摩耗量を演算する摩耗量演算工程と、
この摩耗量演算工程で演算された摩耗量を表示する摩耗量表示工程と、を備えたことを特徴とするスタイラス摩耗検出方法。
【請求項2】
請求項1に記載のスタイラス摩耗検出方法において、
前記測定曲線取得工程では、表面に正弦波状の凹凸が形成された正弦波標準片を用い、前記スタイラスを前記正弦波標準片の表面に沿ってトレースしながら、正弦波標準片の測定曲線を取得し、
前記摩耗量演算工程では、前記周波数解析結果に対して、前記正弦波標準片の凹凸周期より短い周期のみが残るように、フィルタ処理を行い、このフィルタ処理で得られた結果の波高値を積算したのち、前記正弦波標準片の凹凸周期の波高値に対する前記積算値の比率を求める処理を行い、
前記摩耗量表示工程では、前記摩耗量演算工程で求められた比率を表示する、
ことを特徴とするスタイラス摩耗検出方法。
【請求項3】
請求項1に記載のスタイラス摩耗検出方法において、
表面に三角波状の凹凸が形成された三角波標準片の表面に沿って、未使用のスタイラスをトレースしながら、そのトレース方向に対して交差する方向の前記スタイラスの変位を検出し、この変位から前記三角波標準片の測定曲線を取得し、この測定曲線に対して周波数解析を行った結果を初期値周波数解析結果として記憶する初期値周波数解析結果記憶工程を備え、
前記測定曲線取得工程では、前記三角波標準片を用い、使用後のスタイラスを前記三角波標準片の表面に沿ってトレースしながら、三角波標準片の測定曲線を取得し、
前記周波数解析工程では、前記測定曲線に対して周波数解析を行って摩耗検出用周波数解析結果を求め、
前記摩耗量演算工程では、前記初期値周波数解析結果および摩耗検出用周波数解析結果から、対応する一定周期毎の波高値をそれぞれ求めるとともに、この対応する一定周期毎の波高値の差分を積算したのち、前記三角波標準片の凹凸周期の波高値に対する前記差分の積算値の比率を求める処理を行い、
前記摩耗量表示工程では、前記摩耗量演算工程で求められた比率を表示する、
ことを特徴とするスタイラス摩耗検出方法。
【請求項4】
スタイラスを被測定物の表面に接触させ、この状態において前記スタイラスを被測定物の表面に沿ってトレースしながら、そのトレース方向に対して交差する方向の前記スタイラスの変位を検出し、このスタイラスの変位量から被測定物の表面性状を測定する表面性状測定機において、
表面に周期的に変化する凹凸が形成された標準片の表面に沿って前記スタイラスをトレースしながら、そのトレース方向に対して交差する方向の前記スタイラスの変位を検出し、この変位から前記標準片の測定曲線を取得する制御装置と、
前記測定曲線に対して周波数解析を行う周波数解析装置と、
この周波数解析装置で得られた周波数解析結果から前記スタイラスの摩耗量を演算する摩耗量演算処理装置と、
この摩耗量演算処理装置で演算された摩耗量を表示する摩耗量表示装置と、を備えたことを特徴とする表面性状測定機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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