説明

スタイリング化粧料

【課題】毛髪を固めることなくセットし、しっかりとした毛束感と手直しのし易さというワックスの持つ基本性能を発揮させつつ、軟毛や細い毛髪に対してもしっかりとセットでき、軽い仕上がりで、作ったスタイルを長時間持続できるようなスタイリング化粧料を提供する。
【解決手段】本発明のスタイリング化粧料は、(A)ウレタン系増粘剤:0.1〜2.0質量%、(B)アクリル系増粘剤、および(C)ロウ類を夫々含有し、前記(A)ウレタン系増粘剤と(B)アクリル系増粘剤の質量比[(A):(B)]が1:0.05〜1:1である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軟毛や細い毛髪に対して、軽い仕上がりで、髪全体にボリューム感を付与でき、再整髪性およびセット力が高くヘアスタイルを容易にアレンジでき、そのアレンジしたスタイルを長時間持続させる効果に優れたスタイリング化粧料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
毛髪をセットするためのスタイリング化粧料としては、ワックスに代表されるようなロウ類を配合したものが知られている。このようなスタイリング化粧料は、毛髪を固めることなく、しっかりとした毛束感と手直しのし易さが良好であるという基本性能を発揮するものである。このタイプのスタイリング化粧料は、主にロウ類の種類や配合量によってセット力を調整しているが、仕上がりが重く、べたつく傾向が強いという問題がある。そのため、軟毛や細い毛髪へワックスを使用すると、髪の立ち上がりが弱かったり、作ったヘアスタイルが時間経過と共に崩れてくることがある。
【0003】
こうしたことから、ヘアスタイルの持続力(キープ力)を高めるために、セット力の高いジェル状のスタイリング化粧料にワックスをミックスして使用したり、ワックスでセットした後にスプレーで固めたり、水分が少ないドライ(マット)系のワックスを使用する等の工夫がなされている(例えば、非特許文献1〜3)。
【0004】
また、これらの問題を解決するために、無機粉体を用い、且つ水分をほとんど使用せず、毛髪への接着性によるセット力とキープ力を出すスタイリング化粧料や、ロウ類と特定の油剤に高重合ポリエチレングリコールと低重合ポリエチレングリコールを併用させることで、仕上がり時の質感を軽くし、セット力とキープ力を出すスタイリング化粧料の提案がされている(例えば、特許文献1〜4)。しかしながら、これまで提案されているものは、いずれも軟毛や細い毛髪には満足できる仕上がりが達成されず、ワックス特有のしっとり感によって、時間経過と共にスタイルが崩れるという欠点がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】キラリ!特別編集 モテる髪型オーダーBOOK955 P123〜130 (株)マガジン・マガジン 2009年9月25日発行
【非特許文献2】FINEBOYS+PlusHAIR おしゃれヘアカタログ2010summer P81〜82 (株)日之出出版 2010年5月15日発行
【非特許文献3】キラリ!6月号 P44〜46 (株)マガジン・マガジン 2010年6月1日発行
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4136967号公報
【特許文献2】特開2008−303178号公報
【特許文献3】特許第4440456号公報
【特許文献4】特開2006−096670号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、これまでのスタイリング化粧料が持つ問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、毛髪を固めることなくセットし、しっかりとした毛束感と手直しのし易さというワックスの持つ基本性能を発揮させつつ、軟毛や細い毛髪に対してもしっかりとセットでき、軽い仕上がりで、作ったスタイルを長時間持続できるようなスタイリング化粧料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成することができた本発明のスタイリング化粧料とは、(A)ウレタン系増粘剤:0.1〜2.0質量%(スタイリング化粧料全体に対する割合)、(B)アクリル系増粘剤、および(C)ロウ類を夫々含有し、前記(A)ウレタン系増粘剤と(B)アクリル系増粘剤の質量比[(A):(B)]が1:0.05〜1:1である点に要旨を有するものである。
【0009】
本発明のスタイリング化粧料において、前記(A)ウレタン系増粘剤は、(ポリエチレングリコール/デシルアルコール/メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート))共重合体および/または(ポリエチレングリコール/ステアリルアルコール/メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート))共重合体であることが好ましい。
【0010】
前記(B)アクリル系増粘剤としては、(アクリレーツ/メタクリル酸ベヘネス−25)共重合体および/または(アクリル酸アルキル/メタクリル酸ステアレス−20)共重合体が好ましいものとして挙げられる。また、前記(C)ロウ類としては、ミツロウ、キャンデリラロウおよびマイクロクリスタリンワックスよりなる群から選ばれる1種以上が好ましいものとして挙げられる。
【0011】
本発明のスタイリング化粧料には、必要によって、更に所定量の(D)アクリル樹脂アルカノールアミンを含有させることも有効であり、こうした(D)アクリル樹脂アルカノールアミンとしては、(アクリル酸アルキル/ジアセトンアクリルアミド)共重合体の2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール塩が好ましいものとして挙げられる。
【0012】
本発明のスタイリング化粧料には、必要によって、更に(a)(E)シリコーンパウダー、(b)ワレモコウエキスおよび/またはγ−オリザノール、(c)シア脂、等を含有させることも有効であり、含有させる成分に応じてスタイリング化粧料の特性が更に改善される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、所定量の(A)ウレタン系増粘剤、(B)アクリル系増粘剤および(C)ロウ類を夫々含有すると共に、(A)ウレタン系増粘剤と(B)アクリル系増粘剤の質量比[(A):(B)]を所定の範囲に設定することによって、軟毛や細い毛髪に対してもしっかりとセットでき、軽い仕上がりで、作ったスタイルを長時間持続できるスタイリング化粧料が実現できた。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明者らは、上記の課題を解決するために、様々な角度から検討を加えた。その結果、(A)ウレタン系増粘剤を0.1〜2.0質量%(スタイリング化粧料全体に対する割合)、(B)アクリル系増粘剤、必要に応じて(C)ロウ類、および(D)アクリル樹脂アルカノールアミンを含有し、(A)ウレタン系増粘剤と(B)アクリル系増粘剤の質量比が(A):(B)=1:0.05〜1:1であるようなスタイリング化粧料とすれば、軟毛や細い毛髪に対しても、作ったスタイルを長時間持続できることを見出し、本発明を完成した。
【0015】
本発明で用いる(A)ウレタン系増粘剤は高分子の増粘剤である。この(A)ウレタン系増粘剤は、粘性の調整ができ、安定性に優れたスタイリング化粧料が作れ、且つスタイリング化粧料の使用感を向上させるという作用効果を発揮する。その含有量は、スタイリング化粧料全体に対して0.1〜2.0質量%とする必要がある。好ましくは0.2〜1.0質量%程度である。(A)ウレタン系増粘剤の含有量が0.1質量%より少なくなると、スタイリング化粧料の粘性が低下するばかりか、安定性が悪くなり、配合しているロウ類などの質感(重さやゴワつき)が認められるようになる。また2.0質量%より多くなると、スタイリング化粧料の粘性が増加し、毛髪への塗布性が低下する。また、増粘剤特有の重さが感じられるものとなる。
【0016】
上記(A)ウレタン系増粘剤としては、(ポリエチレングリコール/デシルアルコール/メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート))共重合体および/または(ポリエチレングリコール/ステアリルアルコール/メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート))共重合体が好ましいものとして挙げられる。
【0017】
このうち、(ポリエチレングリコール/デシルアルコール/メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート))共重合体は、末端をデシルアルコールで結合したポリエチレングリコール(PEG)とメチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)(SMDI)の共重合体であり、ポリエチレングリコールの付加モル数が150を示す、(ポリエチレングリコール−150/デシルアルコール/メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート))共重合体である。具体的なものとして、「アキュリン44」(商品名:ローム・アンド・ハース株式会社製)が挙げられる。
【0018】
また、(ポリエチレングリコール/ステアリルアルコール/メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート))共重合体は、末端をステアリルアルコールで結合したポリエチレングリコール(PEG)とメチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)(SMDI)の共重合体であり、ポリエチレングリコールの付加モル数が150を示す、(ポリエチレングリコール−150/ステアリルアルコール/メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート))共重合体である。具体的なものとして、「アキュリン46」(商品名:ローム・アンド・ハース株式会社製)が挙げられる。
【0019】
本発明で用いる(B)アクリル系増粘剤は、スタイリング化粧料の粘性を調整するだけでなく、ロウ類特有の重さやゴワつき感を軽減し、更には手や毛髪からの洗い流しにも関与する。この(B)アクリル系増粘剤としては、(アクリレーツ/メタクリル酸ベヘネス−25)共重合体および/または(アクリル酸アルキル/メタクリル酸ステアレス−20)共重合体が好ましいものとして挙げられる。
【0020】
このうち、(アクリレーツ/メタクリル酸ベヘネス−25)共重合体は、メタクリル酸およびポリオキシエチレン(25モル)ベヘニルエーテルのエステルと、アクリル酸、メタクリル酸またはそれらの単純エステルの中から選ばれた1種以上のモノマーとからなる共重合体であり、具体的なものとして、「アキュリン28」(商品名:ローム・アンド・ハース株式会社製)が挙げられる。
【0021】
また、(アクリル酸アルキル/メタクリル酸ステアレス−20)共重合体は、メタクリル酸およびポリオキシエチレン(20モル)ステアリルエーテルのエステルと、アクリル酸、メタクリル酸またはこれらの単純エステルとからなるモノマー1種以上との共重合体であり、具体的なものとして、「アキュリン22」(商品名:ローム・アンド・ハース株式会社製)が挙げられる。
【0022】
(B)アクリル系増粘剤の含有量は、特に限定されないが、スタイリング化粧料全体に対して0.05〜1.0質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜0.8質量%程度である。(B)アクリル系増粘剤の含有量が0.05質量%より少なくなると、スタイリング化粧料の粘性が低下するばかりか、安定性が悪くなり、配合しているロウ類などの質感(重さやゴワつき)が認められるようになる。また、1.0質量%よりも多くなると、スタイリング化粧料の粘性が増加し、毛髪への塗布性が低下する。
【0023】
上記(A)ウレタン系増粘剤と、(B)アクリル系増粘剤の質量比は、(A):(B)=1:0.05〜1:1とする必要がある。好ましくは(A):(B)=1:0.1〜1:0.5程度である。(B)アクリル系増粘剤が(A):(B)=1:0.05より少なくなると、スタイリング化粧料の粘性が柔らかくなり過ぎ、毛髪に塗布しにくくなる。(B)アクリル系増粘剤が(A):(B)=1:1より多くなると、スタイリング化粧料の粘性が硬くなり、のびが悪くなる。
【0024】
本発明で用いる(C)ロウ類は、常温では固形状で、毛髪に付着することで毛髪に接着性を持たせ、髪を固定する油のことである。このロウ類としては、ミツロウ、キャンデリラロウ、マイクロクリスタリンワックス、コメヌカロウ、パラフィンワックスおよびカルナウバロウ等が挙げられ、それらの群から選ばれる1種以上を配合できる。特に、ミツロウ、キャンデリラロウおよびマイクロクリスタリンワックスよりなる群から選ばれる1種以上を用いることが好ましい。
【0025】
上記(C)ロウ類の含有量は、特に限定されないが、スタイリング化粧料全体に対して1.0〜50.0質量%であることが好ましく、より好ましくは4.0〜30.0質量%程度である。(C)ロウ類の含有量が1.0質量%より少なくなると、十分なセット力が得られない。(C)ロウ類の含有量が50.0質量%より多くなると、ロウ類の質感によって仕上がりが重くなったり、ゴワついたりする。また、仕上がりが重くなった分、作ったヘアスタイルは持続できなくなる。
【0026】
本発明のスタイリング化粧料には、(D)アクリル樹脂アルカノールアミンを含有することも有用である。この(D)アクリル樹脂アルカノールアミンは、毛髪のセット力を高め、持続力を向上させるために有用である。
【0027】
上記(D)アクリル樹脂アルカノールアミンとしては、アクリル酸アルキル/ジアセトンアクリルアミド)共重合体の2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール塩(AMP)が好ましく、具体的なものとして、「プラスサイズL−9909B」、「プラスサイズL−9540B」、および「プラスサイズL−75CB」(いずれも商品名:互応化学工業株式会社製)等が挙げられる。その含有量は特に限定されないが、スタイリング化粧料全体に対して0.05〜3.0質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜1.0質量%程度である。(D)アクリル樹脂アルカノールアミンの含有量が0.05質量%より少なくなると、持続力が弱くなり、軟毛や細い毛髪に対してスタイルが保持できない。(D)アクリル樹脂アルカノールアミンの含有量が3.0質量%より多くなると、樹脂特有のバリバリとした質感が感じられ、ワックスの特徴である再整髪性が低下する。
【0028】
本発明のスタイリング化粧料には、自然なツヤ感を付与し、仕上がりの軽さ、さらさらとした質感を付与させるために(E)シリコーンパウダーを含有することも有効である。
【0029】
本発明で用いることのある(E)シリコーンパウダーとしては、架橋型メチルポリシロキサンが好ましく、具体的なものとして、「BY 29−129」、「PF−2001 PIF Emulsion」(いずれも商品名:東レ・ダウコーニング株式会社製)等が挙げられる。
【0030】
(E)シリコーンパウダーの含有量は特に限定されないが、スタイリング化粧料全体に対して0.05〜3.0質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜1.5質量%程度である。(E)シリコーンパウダーの含有量が0.05質量%より少くなると、仕上がり時の軽さが感じられにくい。(E)シリコーンパウダーの含有量が3.0質量%より多くなると、さらさらとした質感が強く感じられ、セット力やキープ力が低下する恐れがある。
【0031】
本発明のスタイリング化粧料においては、紫外線による毛髪のダメージ抑制やカラーの変色・退色を抑制するために、抗酸化剤としてワレモコウエキスやγ―オリザノールを含有することもできる。ワレモコウエキスやγ−オリザノールの含有量は、スタイリング化粧料全体に対して0.000005〜1.0質量%が好ましい。ワレモコウエキスやγ−オリザノールの含有量が、0.000005質量%より少なくなると、紫外線による毛髪のダメージの抑制やカラーの変色・退色を抑制することができない。ワレモコウエキスやγ−オリザノールの含有量が、1.0質量%よりも多くなると、スタイリング化粧料の粘性や安定性が低下する恐れがある。
【0032】
本発明のスタイリング化粧料においては、紫外線による毛髪のダメージの抑制やカラーの変色・退色を抑制するために、紫外線防御剤としてシア脂を含有することができる。シア脂の含有量は、スタイリング化粧料全体に対して0.0005〜1.0質量%が好ましい。シア脂の含有量が0.0005質量%より少なくなると、紫外線による毛髪のダメージの抑制やカラーの変色・退色を抑制することができない。シア脂の含有量が1.0質量%より多くなると、スタイリング化粧料の仕上がりが重くなり、作ったヘアスタイルが時間経過と共に崩れる恐れがある。
【0033】
本発明のスタイリング化粧料には、上記した成分以外にも、スタイリング化粧料に通常添加されるような成分(添加剤)を含有することができる。こうした添加剤としては、タンパク質類、加水分解タンパク質類、アミノ酸類、紫外線吸収剤(ワレモコウエキス、γ―オリザノール、シア脂を除く)、保湿剤、油脂類、ラノリン類、高級アルコール類、フッ素系化合物類、シリコーン類、カチオン化ポリマー類、界面活性剤(ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤)、セット剤(アクリル樹脂アルカノールアミンを除く)、消臭剤、防腐剤、キレート剤、pH調整剤、溶剤、抗炎症剤、香料、色素などを挙げることができ、これらを適宜配合することができる。
【0034】
本発明のスタイリング化粧料は、クリーム剤型であることが好ましいが、クリーム剤型以外の液状、乳液、ゲル、スプレー、フォーム剤型などでも利用することができる。
【実施例】
【0035】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0036】
[実施例1]
(試験用毛束の作製)
化学的処理(例えば、パーマ処理、ヘアカラー処理、ブリーチ処理など)を全く受けていない毛髪を用いて、長さ20cm、重さ15gの試験用毛束を作製し、完全に乾燥させた後に以下の評価に用いた。尚、毛束に用いた毛髪については、「毛髪直径計測システム」[カトーテック(株)製]により毛髪の直径を計測し、80μm以下の毛髪を用いた(試験用毛髪については、以下同じ)。
【0037】
(毛髪のベタつき感の評価方法)
専門パネラー10名により、試験用毛束(長さ:20cm、重さ:15g)に、各処方例で調製したスタイリング化粧料を1.0g塗布し、毛髪に均一にのばした。その後、20℃、湿度60%で24時間以上調湿し、毛髪の軽さ(ベタつきのなさ)を下記の3段階評価(評価点)で官能評価し、評価点の平均値を求め、以下の基準で判定した。
3点:非常に軽い(全くベタつかない)
2点:軽い(ほとんどベタつかない)
1点:重い(ベタつく)
【0038】
[ベタつき感の評価基準]
◎:2.5点以上
○:2点以上、2.5点未満
△:1.5点以上、2点未満
×:1点以上、1.5点未満
【0039】
(毛髪の再整髪性の評価方法)
専門パネラー10名により、試験用毛束(長さ:20cm、重さ:15g)に、各処方例で調製したスタイリング化粧料を1.0g塗布し、毛髪に均一にのばした。その後、20℃、湿度60%で24時間以上調湿し、再び毛髪をくしで通し、毛髪の再整髪性を下記の3段階評価(評価点)で官能評価し、評価点の平均値を求め、以下の基準で判定した。
3点:くしを通した後でも非常にスタイルが作りやすい
2点:くしを通した後でもスタイルが作りやすい
1点:くしを通した後のスタイルが作りにくい
【0040】
[再整髪性の評価基準]
◎:2.5点以上
○:2点以上、2.5点未満
△:1.5点以上、2点未満
×:1点以上、1.5点未満
【0041】
これらの結果を、スタイリング化粧料の処方例(処方例1〜5)と共に、下記表1に示す。
【0042】
【表1】

【0043】
この結果から次のように考察できる。(A)ウレタン系増粘剤を用いた場合(処方例1、2)は、軽い仕上がりで、十分な再整髪性を得ることができることが分かる。しかしながら、(A)ウレタン系増粘剤以外の増粘剤を用いた場合(処方例3〜5)では、十分な再整髪性を得ることができない。即ち、軽い仕上がりで、十分な再整髪性を得るためには、(A)ウレタン系増粘剤が必要であることが分かる。
【0044】
[実施例2]
下記表2〜6に示す各種スタイリング化粧料(処方例6〜35)を用いて実施例1と同様に評価(ベタつき感、再整髪性)すると共に、下記の方法によって毛髪のセット力[この方法による評価をセット力(1)]と呼ぶ]を評価した。
【0045】
(毛髪のセット力の評価方法:セット力(1))
専門パネラー10名により、試験用ウィッグ(毛髪の長さ:20cm)に、各処方例で調製したスタイリング化粧料を全体に適量(2.0g)塗布し、毛髪に均一にのばした。その後毛髪を根元から立ち上げ、セット力を下記の3段階評価(評価点)で官能評価し、評価点の平均値を求め、以下の基準で判定した。
3点:非常に立ち上げやすい
2点:立ち上げしやすい
1点:立ち上げにくい
【0046】
[セット力(1)の評価基準]
◎:2.5点以上
○:2点以上、2.5点未満
△:1.5点以上、2点未満
×:1点以上、1.5点未満
【0047】
これらの結果を、スタイリング化粧料の処方例(処方例6〜35)と共に、下記表2〜6に示す。尚、表2、3、5には、比較のために前記表1に示した処方例1の結果も同時に示した。
【0048】
【表2】

【0049】
【表3】

【0050】
【表4】

【0051】
【表5】

【0052】
【表6】

【0053】
表2の結果から次のように考察できる。(A)ウレタン系増粘剤の含有量が0.1質量%未満では(処方例6)、スタイリング化粧料の安定性が低下し、ロウ類の重さやゴワつきが感じられ、軽さ、再整髪性およびセット力が低下することが分かる。また(A)ウレタン系増粘剤の含有量が2.0質量%より多くなると(処方例9)、増粘剤特有の重さが感じられ、軽さ、再整髪性およびセット力が低下することが分かる。
【0054】
表3の結果から次のように考察できる。(B)アクリル系増粘剤の含有量が0.05〜1.0質量%では(処方例1、11〜13)、より軽い仕上がりになることが分かる。
【0055】
表4の結果から次のように考察できる。(A)ウレタン系増粘剤1に対して(B)アクリル系増粘剤が0.05(質量比)より少なくなると(処方例15)、スタイリング化粧料の粘性が柔らかくなり、毛髪に必要以上に塗布してしまい、重い仕上がりになり再整髪性およびセット力が低下することが分かる。また(A)ウレタン系増粘剤1に対して(B)アクリル系増粘剤が1.0(質量比)より多くなると(処方例18)、スタイリング化粧料の粘性が硬くなり、毛髪に均一に塗布しにくく、部分的に重くなってしまい再整髪性も低下することが分かる。
【0056】
表5の結果から次のように考察できる。(C)ロウ類がミツロウ、キャンデリラロウおよびマイクロクリスタリンワックスである場合(処方例19〜21、24〜26)では、セット力がより高まることが分かる。また表6の結果からでは、(C)ロウ類が1.0〜50質量%では(処方例30〜33)、セット力がより高まることが分かる。
【0057】
[実施例3]
下記表7〜9に示す各種スタイリング化粧料(処方例36〜48)を用いて実施例2と同様に評価[ベタつき感、再整髪性、セット力(1)]すると共に、下記の方法によって毛髪のスタイルの保持性[この方法による評価をスタイルの保持性(1)]と呼ぶ]を評価した。
【0058】
(スタイルの保持性の評価方法:スタイルの保持性(1))
専門パネラー10名により、試験用ウィッグ(毛髪の長さ:20cm)に、各処方例で調製したスタイリング化粧料を全体に適量(2.0g)塗布し、毛髪に均一にのばした。その後毛髪を根元から立ち上げてセットし、20℃、湿度60%で1時間放置を行ない、立ち上げた毛髪の状態を確認した。下記の3段階評価(評価点)で目視評価し、評価点の平均値を求め、以下の基準で判定した。
3点:立ち上げた毛髪が、ほとんど崩れていない
2点:立ち上げた毛髪が、少し崩れている
1点:立ち上げた毛髪が、ほとんど崩れている
【0059】
[スタイルの保持性(1)評価基準]
◎:2.5点以上
○:2点以上、2.5点未満
△:1.5点以上、2点未満
×:1点以上、1.5点未満
【0060】
これらの結果を、スタイリング化粧料の処方例(処方例36〜48)と共に、下記表7〜9に示す。
【0061】
【表7】

【0062】
【表8】

【0063】
【表9】

【0064】
表7の結果から次のように考察できる。(D)アクリル樹脂アルカノールアミンである(アクリル酸アルキル/ジアセトンアクリルアミド)共重合体の2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール塩以外の樹脂を用いた場合(処方例37〜39)には、樹脂特有のバリバリとした質感が感じられ、スタイルの保持性が低下することが分かる。
【0065】
表8の結果から次のように考察できる。(D)(アクリル酸アルキル/ジアセトンアクリルアミド)共重合体の2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール塩の含有量が0.05質量%未満になると(処方例40)、十分なスタイルの保持性が得られないことが分かる。(D)(アクリル酸アルキル/ジアセトンアクリルアミド)共重合体の2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール塩の含有量が3.0質量%を超えると(処方例44)、樹脂特有のバリバリとした質感が感じられると共にスタイルの保持性が低下することが分かる。
【0066】
表9の結果からでは、(E)架橋型メチルポリシロキサンでない場合(処方例46〜48)には、スタイルの保持性が低下することが分かる。
【0067】
[実施例4]
下記表10に示す各種スタイリング化粧料(処方例49〜53)を用いて実施例3と同様に評価[ベタつき感、再整髪性、セット力(1)、スタイルの保持性(1)]すると共に、下記の各方法によって毛髪のセット力[この方法による評価をセット力(2)]と呼ぶ]およびスタイルの保持性[この方法による評価をスタイルの保持性(2)]と呼ぶ]を評価した。
【0068】
(セット力試験用毛束の作製)
化学的処理(例えば、パーマ処理、ヘアカラー処理、ブリーチ処理など)を全く受けていない毛髪を用いて、長さ20cm、重さ1.0gの試験用毛束を作製し、完全に乾燥させた後に以下の評価に用いた。
【0069】
(毛髪のセット力の評価方法:セット力(2))
試験用毛束1.0gにスタイリング化粧料0.1gを塗布し、ロッド(直径2.5cm)に巻きつけ固定し、60℃で30分間乾燥させ、カールを形成した。その後、20℃、湿度60%で1時間以上放置し冷却し、ロッドから毛髪を外した。カールを形成した毛髪の自然長を比較することにより、セット力を評価した。このとき、カール形成直後の長さ(自然長:吊るした状態での長さ)がロッド径(2.5cm)に近い長さであれば、セット力が高いと評価できるものである。そして、以下の評価基準で判定した。
【0070】
[セット力(2)の評価基準]
◎:ロッド径(2.5cm)+2.5cm未満
○:ロッド径(2.5cm)+2.5cm以上、3.5cm未満
△:ロッド径(2.5cm)+3.5cm以上、4.5cm未満
×:ロッド径(2.5cm)+4.5cm以上
【0071】
(スタイル保持性試験用毛束の作製)
化学的処理(例えば、パーマ処理、ヘアカラー処理、ブリーチ処理など)を全く受けていない毛髪を用いて、長さ20cm、重さ1.0gの試験用毛束を作製し、完全に乾燥させた後に以下の評価に用いた。
【0072】
[毛髪のスタイル保持性の評価方法:スタイルの保持性(2)]
試験用毛束1.0gにスタイリング化粧料0.1gを塗布し、ロッド(直径2.5cm)に巻きつけ固定し、60℃で30分間乾燥させ、カールを形成した。その後、20℃、湿度60%で1時間以上放置し冷却し、ロッドから毛髪を外した。カールを形成した毛髪を20℃で1時間放置した後(相対湿度:60%)、その自然長を比較することにより、スタイルの保持性を評価した。このとき、カール形成直後の長さ(自然長:吊るした状態での長さ)を100%とし、1時間放置後の自然長が長くなるにつれて、スタイルの保持性が低くなると評価できるものである。そして、以下の評価基準で判定した。
【0073】
[スタイルの保持性(2)の評価基準]
◎:100%以上、150%未満
○:150%以上、200%未満
△:200%以上、250%未満
×:250%以上
【0074】
これらの結果を、スタイリング化粧料の処方例(処方例49〜53)と共に、下記表10に示す。
【0075】
【表10】

【0076】
この結果から次のように考察できる。(E)架橋型メチルポリシロキサンの含有量が0.05〜3.0質量%では(処方例50〜52)、仕上がりが軽く、再整髪性、セット力およびスタイルの保持性がより高まることが分かる。
【0077】
[実施例5]
下記表11に示すスタイリング化粧料(処方例54、55)を用いて実施例3と同様に評価[ベタつき感、再整髪性、セット力(1)、スタイルの保持性(1)]すると共に、下記の方法によってカラー退色防止能を評価した。
【0078】
(カラー退色防止能試験用毛束の作製)
化学的処理(例えば、パーマ処理、ヘアカラー処理、ブリーチ処理など)を全く受けていない白髪に、キャラデコ A/v−7(クリーム状酸化染毛剤:中野製薬株式会社製)とキャラデコ オキサイド 06(過酸化水素系酸化剤:中野製薬株式会社製)を1:1(質量比)となるように混合した酸化染毛剤を質量比1:1の割合で塗布し、30℃、30分間の条件で処理した後、10質量%のSDS溶液(ドデシル硫酸ナトリウム溶液)によって洗浄し、完全に乾燥させ試験用毛束を調製し、以下の評価に用いた。
【0079】
(カラーの退色防止能の評価方法)
試験用毛束1.0gに各処方例で調製したスタイリング化粧料を0.2g塗布し、毛髪に均一にのばした。その後、東光電気株式会社製の「デルマレイ−200」を用いてUV−A(紫外線のA波)を500分間照射(3日分のUV−Aの照射量)し、その際のカラーの退色防止能を専門パネラー10名により、下記の3段階評価(評価点)で目視評価し、評価点の平均値を求め、以下の基準で判定した。
3点:ほとんど退色・変色していない
2点:わずかに退色・変色している
1点:退色・変色している
【0080】
[カラーの退色防止能の評価基準]
◎:2.5点以上
○:2点以上、2.5点未満
△:1.5点以上、2点未満
×:1点以上、1.5点未満
【0081】
この結果を、スタイリング化粧料の処方例(処方例54、55)と共に、下記表11に示す。
【0082】
【表11】

【0083】
この結果から明らかなように、ワレモコウエキス、γ−オリザノールおよびシア脂を含有することで、カラーの退色を防止できることが分かる(処方例55)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ウレタン系増粘剤:0.1〜2.0質量%、(B)アクリル系増粘剤、および(C)ロウ類を夫々含有し、前記(A)ウレタン系増粘剤と(B)アクリル系増粘剤の質量比[(A):(B)]が1:0.05〜1:1であることを特徴とするスタイリング化粧料。
【請求項2】
前記(A)ウレタン系増粘剤は、(ポリエチレングリコール/デシルアルコール/メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート))共重合体および/または(ポリエチレングリコール/ステアリルアルコール/メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート))共重合体である請求項1に記載のスタイリング化粧料。
【請求項3】
前記(B)アクリル系増粘剤は、(アクリレーツ/メタクリル酸ベヘネス−25)共重合体および/または(アクリル酸アルキル/メタクリル酸ステアレス−20)共重合体である請求項1または2に記載のスタイリング化粧料。
【請求項4】
前記(C)ロウ類は、ミツロウ、キャンデリラロウおよびマイクロクリスタリンワックスよりなる群から選ばれる1種以上である請求項1〜3のいずれかに記載のスタイリング化粧料。
【請求項5】
(D)アクリル樹脂アルカノールアミンを0.05〜3.0質量%含有するものである請求項1〜4のいずれかに記載のスタイリング化粧料。
【請求項6】
前記(D)アクリル樹脂アルカノールアミンは、(アクリル酸アルキル/ジアセトンアクリルアミド)共重合体の2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール塩である請求項5に記載のスタイリング化粧料。
【請求項7】
(E)シリコーンパウダーを含有するものである請求項1〜6のいずれかに記載のスタイリング化粧料。
【請求項8】
ワレモコウエキスおよび/またはγ−オリザノールを含有するものである請求項1〜7のいずれかに記載のスタイリング化粧料。
【請求項9】
シア脂を含有するものである請求項1〜8のいずれかに記載のスタイリング化粧料。


【公開番号】特開2012−87097(P2012−87097A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−235612(P2010−235612)
【出願日】平成22年10月20日(2010.10.20)
【出願人】(000213482)中野製薬株式会社 (57)
【Fターム(参考)】