説明

スタータ制御装置及び該スタータ制御装置を有するガスタービン発電装置

【課題】ガスタービンの起動用スタータとして使用される直流モータのモータ電流を制御するスタータ制御装置に設けられたバッテリ電圧保持用コンデンサの寿命を延ばすと共に保守メンテナンス時における安全性及び作業効率の向上を図る。
【解決手段】ガスタービンの起動用スタータとして使用され、バッテリを電源とする直流モータの制御装置であって、前記ガスタービンの起動が完了した後、内部に設けられたバッテリ電圧保持用のコンデンサに蓄積された電荷を放電する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スタータ制御装置及び該スタータ制御装置を有するガスタービン発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、ガスタービン発電装置とは、発電機とガスタービンとを軸結合し、ガスタービンの駆動によって発電機を回転させることで電力を生成するものである。このようなガスタービン発電装置には、ガスタービンを起動するために発電機をスタータとして使用するタイプと、起動専用のスタータ(直流モータ)及びバッテリを別途備え、バッテリからスタータに電力を供給してスタータを駆動することによりガスタービンを起動するタイプとが存在する。
なお、ガスタービン発電装置の起動に関する技術に関しては、下記特許文献1〜4を参照されたい。
【特許文献1】特開2002−30943号公報
【特許文献2】特開2003−41906号公報
【特許文献3】特許第3924141号公報
【特許文献4】特許第3894623号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記のような起動専用のスタータ及びバッテリを別途備えるガスタービン発電装置の中には、スタータに流れるモータ電流を制御するスタータコントローラをバッテリとスタータとの間に備えるタイプのものがある。また、このようなスタータコントローラの内部にはバッテリ電圧保持用のコンデンサを設けることが一般的である。
【0004】
ガスタービンの起動完了後、スタータはバッテリと電気的に切断されると共にガスタービンとも機械的に切離される。この時、上記スタータコントローラに設けられたコンデンサには電圧が残るため、コンデンサの寿命が短くなったり、保守メンテナンス時における安全性(感電の危険性がある)や作業効率が悪化する(コンデンサを放電させるための作業が別途必要となる)という問題があった。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、ガスタービンの起動用スタータとして使用される直流モータのモータ電流を制御するスタータ制御装置に設けられたバッテリ電圧保持用コンデンサの寿命を延ばすと共に保守メンテナンス時における安全性及び作業効率の向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明では、スタータ制御装置に係る第1の解決手段として、ガスタービンの起動用スタータとして使用され、バッテリを電源とする直流モータの制御装置であって、前記ガスタービンの起動が完了した後、内部に設けられたバッテリ電圧保持用のコンデンサに蓄積された電荷を放電することを特徴とする。
【0007】
また、スタータ制御装置に係る第2の解決手段として、上記第1の解決手段において、前記バッテリから前記直流モータに流れるモータ電流と所定の電流目標値とが一致するように前記モータ電流をPWM(Pulse Width Modulation)制御することを特徴とする。
【0008】
また、スタータ制御装置に係る第3の解決手段として、上記第2の解決手段において、前記モータ電流を検出する電流センサと、半導体スイッチング素子のオン/オフ動作によって前記モータ電流のデューティ比を変化させる直流変換回路と、前記モータ電流と前記電流目標値とが一致するように前記半導体スイッチング素子のオン/オフ制御用のPWM信号を生成し、当該PWM信号を前記半導体スイッチング素子に出力する信号処理回路と、を具備することを特徴とする。
【0009】
また、スタータ制御装置に係る第4の解決手段として、上記第3の解決手段において、
前記直流変換回路は、一端が起動用スイッチを介して前記バッテリの正極端子と接続され、他端が前記バッテリの負極端子と接続された前記バッテリ電圧保持用のコンデンサと、カソード端子が前記コンデンサの一端及び前記直流モータの正極端子と接続され、アノード端子が前記直流モータの負極端子と接続されたダイオードと、Nチャネル型のMOS−FET(Positive Metal Oxide Semiconductor−Field Effective Transistor)であり、ドレイン端子が前記ダイオードのアノード端子と接続され、ソース端子が前記コンデンサの他端と接続され、ゲート端子が前記信号処理回路の出力端子と接続された前記半導体スイッチング素子と、を有することを特徴とする。
【0010】
また、スタータ制御装置に係る第5の解決手段として、上記第3〜第4のいずれかの解
決手段において、前記信号処理回路は、上位制御装置からコンデンサ放電指令信号が入力された場合、前記半導体スイッチング素子をオン状態に維持するためのオン信号を出力するか、または所定間隔のPWM信号を出力することを特徴とする。
【0011】
また、スタータ制御装置に係る第6の解決手段として、上記第3〜第5のいずれかの解
決手段において、前記信号処理回路は、前記直流モータの動作開始時において、前記モータ電流が前記電流目標値に到達するまでの立ち上がり時間を規定するソフトスタート設定値を基に、前記直流モータの動作開始時から前記立ち上がり時間経過後に前記モータ電流が前記電流目標値に到達するように前記PWM信号を生成することを特徴とする。
【0012】
また、スタータ制御装置に係る第7の解決手段として、上記第3〜第6のいずれかの解
決手段において、前記信号処理回路は、上位制御装置から前記ガスタービンの回転数が燃焼開始回転数に到達したことを報知する信号が入力された場合、前記PWM信号の出力を停止し、前記半導体スイッチング素子をオン状態に維持するためのオン信号を出力することを特徴とする。
【0013】
さらに、本発明では、ガスタービン発電装置に係る第1の解決手段として、ガスタービンと、前記ガスタービンと軸結合された発電機と、バッテリと、前記ガスタービンの起動用スタータとして使用され、前記バッテリを電源とする直流モータと、前記ガスタービンと前記直流モータとの軸結合/非結合を切り替えるためのクラッチ装置と、上述のいずれかの解決手段を有するスタータ制御装置と、前記バッテリと前記直流モータ及び前記スタータ制御装置との電気的接続/非接続を切り替えるための起動用スイッチと、前記ガスタービンの運転状態を制御すると共に、前記クラッチ装置、前記起動用スイッチ及び前記スタータ制御装置を制御する上位制御装置と、を具備することを特徴とする。
【0014】
また、本発明では、ガスタービン発電装置に係る第2の解決手段として、ガスタービンと、前記ガスタービンと軸結合された発電機と、バッテリと、前記ガスタービンと軸結合されていると共に前記ガスタービンの起動用スタータとして使用され、前記バッテリを電源とする直流モータと、上述のいずれかの解決手段を有するスタータ制御装置と、前記バッテリと前記直流モータ及び前記スタータ制御装置との電気的接続/非接続を切り替えるための起動用スイッチと、前記ガスタービンの運転状態を制御すると共に、前記起動用スイッチ及び前記スタータ制御装置を制御する上位制御装置と、を具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、前記ガスタービンの起動が完了した後、内部に設けられたバッテリ電圧保持用のコンデンサに蓄積された電荷を放電するため、バッテリ電圧保持用コンデンサの寿命を延ばすと共に保守メンテナンス時における安全性及び作業効率の向上を図ることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係るガスタービン発電装置の構成概略図である。この図1に示すように、本実施形態に係るガスタービン発電装置は、ガスタービン10、発電機20、ギア30、クラッチ装置40、スタータ50、回転数計測器60、上位制御装置70、バッテリ80、起動用スイッチ90及びスタータコントローラ(スタータ制御装置)100から構成されている。
【0017】
ガスタービン10は、圧縮機11、燃焼器12、燃料制御弁13及びタービン14を備えている。圧縮機11は、タービン14と同軸結合されており、タービン14と同期回転することにより圧縮空気を生成して燃焼器12に供給する。燃焼器12は、圧縮機11から供給される圧縮空気と燃料制御弁13を介して供給される燃料とを混合燃焼させ、当該混合燃焼によって発生する高温高圧の燃焼ガスをタービン14に供給する。燃料制御弁13は、上位制御装置70から入力される燃料流量制御信号によって弁の開度が制御される電磁弁であり、上記燃料流量制御信号によって指示される流量の燃料を燃焼器12に供給する。
【0018】
タービン14は、ギア30を介して発電機20と軸結合されており、燃焼器12から供給される燃焼ガスにより回転することで発電機20及び圧縮機11を回転させる。発電機20は、ギア30を介して軸結合されたタービン14が回転することにより電力を発生する。ギア30は、タービン14と発電機20とを軸結合させると共に、タービン14とクラッチ装置40とを軸結合させる役割を担うギアである。クラッチ装置40は、図示しないクラッチ板により、タービン14とスタータ50(具体的にはアーマチュア51)との軸結合/非結合を切り替えるためのものであり、この切り替えは上位制御装置70の制御により行われる。
【0019】
スタータ50は、ガスタービン10の起動用スタータとして使用され、バッテリ80を電源とする直流モータであり、アーマチュア51及び界磁コイル52を備えている。アーマチュア51は、クラッチ装置40と軸結合されていると共に、一端はスタータ50の正極端子50aと接続され、他端は界磁コイル52の一端と接続されており、界磁コイル52による電磁誘導によって回転する。界磁コイル52は、アーマチュア51の励磁用コイルであり、一端はアーマチュア51の他端と接続され、他端はスタータ50の負極端子50bと接続されている。また、スタータ50の正極端子50aはスタータコントローラ100の第2端子100bと接続され、負極端子50bはスタータコントローラ100の第3端子100cと接続されている。このスタータ50の正極端子50aと負極端子50bとの間に流れる電流(モータ電流)は、後述するスタータコントローラ100によって制御されている。
【0020】
回転数計測器60は、タービン14の回転数を計測し、回転数計測値を上位制御装置70に出力する。上位制御装置70は、回転数計測器60から入力される回転数計測値を基にガスタービン10の運転状態を制御する(具体的には燃料制御弁13の制御によって燃焼器12に供給する燃料の流量を制御する)と共に、ガスタービン10の起動時にはクラッチ装置40、起動用スイッチ90及びスタータコントローラ100を制御する。
【0021】
バッテリ80は、スタータ50の電源として使用されるものであり、正極端子は起動用スイッチ90の一方の端子と接続され、負極端子はスタータコントローラ100の第1端子100aと接続されている。起動用スイッチ90は、上位制御装置70の制御の下、2端子間の接続/非接続(つまりバッテリ80とスタータ50との電気的接続/非接続)を切り替えるスイッチであり、その一方の端子はバッテリ80の正極端子と接続され、他方の端子はスタータコントローラ100の第2端子100b及びスタータ50の正極端子50aと接続されている。
【0022】
スタータコントローラ100は、スタータ50に流れるモータ電流と所定の電流目標値とが一致するように上記モータ電流をPWM(Pulse Width Modulation)制御するものであり、直流変換回路110、電流センサ120、電流目標値設定盤130及び信号処理回路140を備えている。
【0023】
直流変換回路110は、コンデンサ111、還流ダイオード112及び半導体スイッチング素子113から構成されている。コンデンサ111は、バッテリ80の電圧保持用のコンデンサであり、その一端は還流ダイオード112のカソード端子及び電流センサ120を介して第2端子100b(つまりスタータ50の正極端子50a)と接続されており、他端は第1端子100a(つまりバッテリ80の負極端子)及び半導体スイッチング素子113のソース端子と接続されている。
【0024】
還流ダイオード112は、半導体スイッチング素子113がオフ状態の時にスタータ50にモータ電流を流すためのダイオードであり、カソード端子はコンデンサ111の一端及び電流センサ120を介して第2端子100b(つまりスタータ50の正極端子50a)と接続されており、アノード端子は第3端子100c(つまりスタータ50の負極端子50b)及び半導体スイッチング素子113のドレイン端子と接続されている。半導体スイッチング素子113は、Nチャネル型のMOS−FET(Positive Metal Oxide Semiconductor−Field Effective Transistor)であり、ドレイン端子は還流ダイオード112のアノード端子及び第3端子100cと接続され、ソース端子はコンデンサ111の他端及び第1端子100aと接続され、ゲート端子は信号処理回路140(具体的にはPWM信号生成部143)の出力端子と接続されている。
【0025】
電流センサ120は、スタータ50に流れるモータ電流を検出し、モータ電流検出値Ifbを信号処理回路140(具体的には差分器141)に出力する。電流目標値設定盤130は、図示しないテンキー等の数値入力キーや表示パネルなどを備えており、数値入力キーの操作によって設定された電流目標値Irf0を信号処理回路140(具体的には差分器141)に出力する。
【0026】
信号処理回路140は、差分器141、PI演算部142及びPWM信号生成部143から構成されている。差分器141は、電流センサ120から入力されるモータ電流検出値Ifbと、電流目標値設定盤130から入力される電流目標値Irf0との差分、つまり偏差量をPI演算部142に出力する。PI演算部142は、差分器141から入力されるモータ電流検出値Ifbと電流目標値Irf0との偏差量を基にPI(比例−積分)演算を行い、当該偏差量が零になるように、つまりモータ電流と電流目標値とが一致するように操作量を算出してPWM信号生成部143に出力する。
【0027】
PWM信号生成部143は、PI演算部142から入力される操作量を基に、モータ電流と電流目標値とが一致するように半導体スイッチング素子113のオン/オフ制御用のPWM信号を生成し、当該PWM信号を半導体スイッチング素子113のゲート端子に出力する。また、このPWM信号生成部143は、第4端子100dを介して、上位制御装置70からガスタービン10の回転数が燃焼開始回転数に到達したことを報知する信号が入力された場合、PWM信号の出力を停止し、半導体スイッチング素子113をオン状態に維持するためのオン信号を出力する。さらに、このPWM信号生成部143は、第4端子100dを介して、上位制御装置70からコンデンサ放電指令信号が入力された場合、半導体スイッチング素子113をオン状態に維持するためのオン信号を出力する。
【0028】
続いて、上記のように構成された本実施形態に係るガスタービン発電装置の動作、特にガスタービン10の起動時の動作について図2を参照して説明し、起動完了後の動作について図3を参照して説明する。図2は、ガスタービン10(つまりスタータ50)の回転数と、スタータ50に流れるモータ電流と、半導体スイッチング素子113のスイッチング状態と、起動用スイッチ90及びクラッチ装置40のコンタクト状態との時間的対応関係を示すタイミングチャートである。
【0029】
図2において、時刻T1がガスタービン10の起動開始時刻であると想定すると、上位制御装置70は、時刻T1に起動用スイッチ90及びクラッチ装置40のコンタクト状態をオンに切り替える。つまり、起動用スイッチ90はオン状態となってバッテリ80とスタータ50及びスタータコントローラ100が電気的に接続されると共に、クラッチ装置40によってスタータ50(アーマチュア51)とタービン14とが軸結合される。
【0030】
また、上位制御装置70は、時刻T1において、PWM信号生成部143にPWM信号の生成を指示するための信号を出力する。これにより、PWM信号生成部143は、PI演算部142から入力される操作量に応じたPWM信号を生成して半導体スイッチング素子113のゲート端子に出力する。このようなPWM信号に応じて半導体スイッチング素子113のオン/オフ動作が行われることによりモータ電流のデューティ比が制御され、スタータ50には常に電流目標値Ifbと一致するモータ電流が流れることになる。上記のような電流目標値Ifbと一致するモータ電流に応じて発生するモータトルクによってスタータ50(ガスタービン10)は回転を開始し、時間の経過と共に回転数は上昇していく。
【0031】
そして、上位制御装置70は、回転数計測器60から入力される回転数計測値を基に、時刻T2にガスタービン10(スタータ50)の回転数が燃焼開始回転数に到達したことを検知すると、燃料制御弁13に燃料流量制御信号を出力して所定流量の燃料を燃焼器12に供給し、圧縮空気と燃料との混合燃焼を開始する。これにより、タービン14には燃焼ガスが供給され、ガスタービン10は自立運転を開始する。また、上位制御装置70は、ガスタービン10の回転数が燃焼開始回転数に到達したことを検知すると、PWM信号生成部143にガスタービン10の回転数が燃焼開始回転数に到達したことを報知する信号を出力する。これにより、PWM信号生成部143は、PWM信号の出力を停止し、半導体スイッチング素子113をオン状態に維持するためのオン信号を出力する。
【0032】
このように、時刻T2以降は、半導体スイッチング素子113はオン状態に維持されるため、スタータ50はバッテリ80により定電圧駆動されることになる。ここで、ガスタービン10は自立運転を開始しているため、ガスタービン10の回転数の方がスタータ50の回転数より高くなってくるとスタータ50にて回生現象が発生し、モータ電流は時間の経過と共に(ガスタービン10の回転数の方が高くなるに従って)次第に減少していくことになる。
【0033】
そして、上位制御装置70は、回転数計測器60から入力される回転数計測値を基に、時刻T3にガスタービン10の回転数が切離し回転数に到達したことを検知すると、起動用スイッチ90及びクラッチ装置40のコンタクト状態をオフに切り替える。つまり、バッテリ80とスタータ50との電気的接続を切断してスタータ50の駆動を停止すると共に、スタータ50とガスタービン10との軸結合を切離し、ガスタービン10の単独運転を開始する。上位制御装置70は、時刻T3以降、回転数計測器60から入力される回転数計測値を基に燃焼器12に供給する燃料流量を制御し、ガスタービン10の回転数を所定の運転回転数まで上昇させる。
【0034】
上記のように、ガスタービン10の起動完了後、スタータ50はバッテリ80と電気的に切断されると共にガスタービン10とも機械的に切離される。この時、コンデンサ111には電圧が残るため、コンデンサ111の寿命が短くなったり、保守メンテナンス時における安全性や作業効率に問題が生じることになる。
【0035】
そこで、ガスタービン10の起動完了後、スタータ50をバッテリ80と電気的に切断し、ガスタービン10と機械的に切離した状態において、上位制御装置70からPWM信号生成部143にコンデンサ放電指令信号を出力し、PWM信号生成部143から半導体スイッチング素子113をオン状態に維持するためのオン信号を出力させる。図3は、コンデンサ放電指令信号が出力された場合のコンデンサ111の電圧と半導体スイッチング素子113のスイッチング状態との時間的対応関係を示したものである。図3(a)に示すように、半導体スイッチング素子113をオン状態に維持することにより、コンデンサ111に蓄積された電荷はスタータ50に放電されて消費され、コンデンサ111の電圧を零にすることができる。つまり、コンデンサ111の寿命を延ばし、保守メンテナンス時における安全性や作業効率の向上を図ることができる。なお、図3(b)に示すように、上位制御装置70からコンデンサ放電指令信号が出力された場合、PWM信号生成部143から所定間隔のPWM信号を出力しても良い。
【0036】
また、本発明は上記実施形態に限定されることなく、以下のような変形例が考えられる。
(1)上記実施形態では、電流目標値Irf0とモータ電流検出値Ifbとの偏差量を基に操作量をPI演算していたが、これによると図2からわかるように、モータ電流は急激に立ち上がることになり、スタータ50に機械的なショックが発生する可能性がある。図4に、上記のようなスタータ50に発生する機械的ショックを低減することが可能なスタータコントローラ100の変形例を示す。なお、図4では図1と区別するためにスタータコントローラ100の符号を100’としている。また、図4において図1と同様の構成要素には同一符号を付し、説明を省略する。
【0037】
図4に示すように、本変形例におけるスタータコントローラ100’は、ソフトスタート設定盤131と電流指令値生成部132とを新たに備えている。ソフトスタート設定盤131は、図示しないテンキー等の数値入力キーや表示パネルなどを備えており、数値入力キーの操作によって設定されたソフトスタート設定値Tsfを電流指令値生成部132に出力する。ここで、ソフトスタート設定値Tsfとは、モータ電流が電流目標値Irf0に到達するまでの立ち上がり時間を規定する値を指す。電流指令値生成部132は、電流目標値設定盤130から入力される電流目標値Irf0と、ソフトスタート設定盤131から入力されるソフトスタート設定値Tsfとを基に、図5に示すように、ランプ状に増大すると共にソフトスタート設定値Tsfの経過後に電流目標値Irf0に到達するような電流指令値Irefを生成して差分器141に出力する。
【0038】
つまり、本変形例では、差分器141は電流検出値Ifbと電流指令値Irefとの偏差量を出力し、PI演算部142はその偏差量を基にPI(比例−積分)演算を行い、当該偏差量が零になるように、つまりモータ電流と電流指令値Irefとが一致するように操作量を算出してPWM信号生成部143に出力する。従って、本変形例では、スタータ50の動作開始時からソフトスタート設定値で規定される立ち上がり時間(Tsf)経過後にモータ電流が電流目標値Irf0に到達するようにPWM信号が生成され、モータ電流は図5に示す電流指令値Irefと同様にランプ状に増大することになり、スタータ50の機械的なショックを防止することができる。
【0039】
(2)上記実施形態では、半導体スイッチング素子113として、MOS−FETを使用したが、例えば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)やGTO(Gate Turn Off thyristor)等、他の電力用半導体スイッチング素子を使用しても良い。また、直流変換回路110としては、降圧チョッパ回路、昇圧チョッパ回路、昇降圧チョッパ回路、フォワードコンバータ、プッシュプルコンバータ、フライバックコンバータ、MOS−FET同期整流回路など、半導体スイッチング素子のオン/オフ動作によりモータ電流のデューティ比を変化させることで電流制御を行うことが可能な回路であれば使用することができる。
【0040】
(3)上記実施形態では、スタータ50とガスタービン10とがクラッチ装置40を介して軸結合される場合を例示して説明したが、クラッチ装置40を設けずにスタータ50とガスタービン10とを直接軸結合するような構成を採用しても良い。この場合、ガスタービン10の起動完了後、スタータ50をバッテリ80と電気的に切断した状態において、上位制御装置70からPWM信号生成部143にコンデンサ放電指令信号を出力することになる。また、ガスタービン10の単独運転開始後は、スタータ50はフリーラン状態となる。
【0041】
(4)上記実施形態では、スタータコントローラ100(100’)をガスタービン発電装置に使用した場合を想定して説明したが、その他ガスタービンを備える装置または設備においてスタータをガスタービンの起動用に使用する場合であれば、本実施形態に係るスタータコントローラ100(100’)を使用することができる。
【0042】
(5)上記実施形態では、スタータコントローラ100(100’)に、電流目標値設定盤130やソフトスタート設定盤131を設け、手動操作により電流目標値Irf0やソフトスタート設定値Tsfを設定したが、例えば上位制御装置70からこれら電流目標値Irf0やソフトスタート設定値Tsfをスタータコントローラ100(100’)に入力するような構成としても良い。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の一実施形態に係るガスタービン発電装置の構成概略図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るガスタービン発電装置の動作に関する第1説明図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るガスタービン発電装置の動作に関する第2説明図である。
【図4】本発明の一実施形態に係るガスタービン発電装置の変形例である。
【図5】本発明の一実施形態に係るガスタービン発電装置の変形例に関する説明図である。
【符号の説明】
【0044】
10…ガスタービン、11…圧縮機、12…燃焼器、13…燃料制御弁、14…タービン、20…発電機、30…ギア、40…クラッチ装置、50…スタータ、51…アーマチュア、52…界磁コイル、60…回転数計測器、70…上位制御装置、80…バッテリ、90…起動用スイッチ、100、100’…スタータコントローラ、110…直流変換回路、111…コンデンサ、112…還流ダイオード、113…半導体スイッチング素子、120…電流センサ、130…電流目標値設定盤、140…信号処理回路、141…差分器、142…PI演算部、143…PWM信号生成部、131…ソフトスタート設定盤、132…電流指令値生成部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスタービンの起動用スタータとして使用され、バッテリを電源とする直流モータの制御装置であって、
前記ガスタービンの起動が完了した後、内部に設けられたバッテリ電圧保持用のコンデンサに蓄積された電荷を放電することを特徴とするスタータ制御装置。
【請求項2】
前記バッテリから前記直流モータに流れるモータ電流と所定の電流目標値とが一致するように前記モータ電流をPWM(Pulse Width Modulation)制御することを特徴とする請求項1記載のスタータ制御装置。
【請求項3】
前記モータ電流を検出する電流センサと、
半導体スイッチング素子のオン/オフ動作によって前記モータ電流のデューティ比を変化させる直流変換回路と、
前記モータ電流と前記電流目標値とが一致するように前記半導体スイッチング素子のオン/オフ制御用のPWM信号を生成し、当該PWM信号を前記半導体スイッチング素子に出力する信号処理回路と、
を具備することを特徴とする請求項2記載のスタータ制御装置。
【請求項4】
前記直流変換回路は、
一端が起動用スイッチを介して前記バッテリの正極端子と接続され、他端が前記バッテリの負極端子と接続された前記バッテリ電圧保持用のコンデンサと、
カソード端子が前記コンデンサの一端及び前記直流モータの正極端子と接続され、アノード端子が前記直流モータの負極端子と接続されたダイオードと、
Nチャネル型のMOS−FET(Positive Metal Oxide Semiconductor−Field Effective Transistor)であり、ドレイン端子が前記ダイオードのアノード端子と接続され、ソース端子が前記コンデンサの他端と接続され、ゲート端子が前記信号処理回路の出力端子と接続された前記半導体スイッチング素子と、
を有することを特徴とする請求項3記載のスタータ制御装置。
【請求項5】
前記信号処理回路は、上位制御装置からコンデンサ放電指令信号が入力された場合、前記半導体スイッチング素子をオン状態に維持するためのオン信号を出力するか、または所定間隔のPWM信号を出力することを特徴とする請求項3〜4のいずれか一項に記載のスタータ制御装置。
【請求項6】
前記信号処理回路は、前記直流モータの動作開始時において、前記モータ電流が前記電流目標値に到達するまでの立ち上がり時間を規定するソフトスタート設定値を基に、前記直流モータの動作開始時から前記立ち上がり時間経過後に前記モータ電流が前記電流目標値に到達するように前記PWM信号を生成することを特徴とする請求項3〜5のいずれか一項に記載のスタータ制御装置。
【請求項7】
前記信号処理回路は、上位制御装置から前記ガスタービンの回転数が燃焼開始回転数に到達したことを報知する信号が入力された場合、前記PWM信号の出力を停止し、前記半導体スイッチング素子をオン状態に維持するためのオン信号を出力することを特徴とする請求項3〜6のいずれか一項に記載のスタータ制御装置。
【請求項8】
ガスタービンと、
前記ガスタービンと軸結合された発電機と、
バッテリと、
前記ガスタービンの起動用スタータとして使用され、前記バッテリを電源とする直流モータと、
前記ガスタービンと前記直流モータとの軸結合/非結合を切り替えるためのクラッチ装置と、
請求項1〜7のいずれか一項に記載のスタータ制御装置と、
前記バッテリと前記直流モータ及び前記スタータ制御装置との電気的接続/非接続を切り替えるための起動用スイッチと、
前記ガスタービンの運転状態を制御すると共に、前記クラッチ装置、前記起動用スイッチ及び前記スタータ制御装置を制御する上位制御装置と、
を具備することを特徴とするガスタービン発電装置。
【請求項9】
ガスタービンと、
前記ガスタービンと軸結合された発電機と、
バッテリと、
前記ガスタービンと軸結合されていると共に前記ガスタービンの起動用スタータとして使用され、前記バッテリを電源とする直流モータと、
請求項1〜7のいずれか一項に記載のスタータ制御装置と、
前記バッテリと前記直流モータ及び前記スタータ制御装置との電気的接続/非接続を切り替えるための起動用スイッチと、
前記ガスタービンの運転状態を制御すると共に、前記起動用スイッチ及び前記スタータ制御装置を制御する上位制御装置と、
を具備することを特徴とするガスタービン発電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−150362(P2009−150362A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−331001(P2007−331001)
【出願日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】