説明

スチレンブロックコポリマーおよびプロピレン−αオレフィンコポリマーのブレンド

本発明は、少なくとも70重量%のプロピレン由来単位および10〜25重量%のエチレンまたはC4−C10αオレフィン由来の単位を有するプロピレン−αオレフィンコポリマー、(該プロピレン−αオレフィンコポリマーは37ジュ−ル/グラム未満の融解熱および0.1〜100グラム/10分のメルトフローレートを提示する);ならびにスチレンブロックコポリマーを含む組成物を含み、プロピレン−αオレフィンコポリマー対スチレンブロックコポリマーの重量比は3:7〜7:3である。組成物は20MPa未満の引張弾性率、少なくとも5MPaの引張強さ、そして低い相対直後残留歪とともに少なくとも900%の破断点伸びを示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロピレン−αオレフィンコポリマーおよびスチレンブロックコポリマーの組成物に関する。より詳細には、本発明は、低結晶化度プロピレン−αオレフィンコポリマーおよびスチレンブロックコポリマーを含有するエラストマー組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
スチレンブロックコポリマー、例えばSEBS(ポリスチレン−飽和ポリブタジエン−ポリスチレン)、SBS(ポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレン)、SEPS(ポリスチレン−飽和ポリイソプレン−ポリスチレン)、SIS(ポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレン)、およびSEPSEPは当分野で公知である。それらは優れた物理的特性、例えば弾性および柔軟性を示す。しかし、それらは多くの場合、典型的なポリオレフィン加工装置で流動促進剤およびその他の加工助剤の必要なしに容易に加工されることはできない。
【0003】
プロピレン−αオレフィンコポリマーは、典型的なポリオレフィン加工装置を用いて容易に加工可能である。しかし、プロピレン−αオレフィンコポリマーは、一般にスチレンブロックコポリマーほど柔軟でも弾性でもない。
【0004】
優れた物理的特性、例えば弾性および柔軟性を提示すると同時に、典型的なポリオレフィン加工装置を用いて容易に加工可能な熱可塑性のエラストマー組成物を有することが望ましいと思われる。
【0005】
発明の目的
本発明の一目的は、プロピレン−αオレフィンコポリマー(好ましくは、プロピレン系エラストマー)を含有し、スチレンブロックコポリマーも含有する組成物を提供することである。組成物は、柔軟であり(一般に、22.25ミリメートルのゲージ長および111.25ミリメートル/分の伸張速度(500%/分の歪速度)でASTM D1708の形態(geometry)を用いて測定して2%割線引張係数が20MPa未満、好ましくは15MPa未満、さらにより好ましくは10MP未満)、高い引張強さを有し(一般に、ASTM D1708の形態および上記の歪速度を用いて測定して少なくとも5MPa、好ましくは少なくとも10MPa)、高伸張性であり(ASTM D1708の形態および上記の歪速度に相当する22.25ミリメートルの初期ゲージ長を用いて測定した、典型的な破断点伸びが少なくとも900%)、さらに2サイクルの500%ヒステリシス試験において比較的低い直後残留歪(immediate set)を有するべきである。さらに、組成物は典型的なポリオレフィン加工装置で容易に加工可能であるべきである。流動促進剤またはその他の加工助剤は任意選択である。好ましくは、組成物のメルトフローレートは1〜100g/10分、より好ましくは5〜75g/10分、さらにより好ましくは10〜60g/10分、さらに最も好ましくは12〜50g/10分であるべきである(ASTM 1238、2.16kg、230℃)。
【発明の開示】
【0006】
第一の実施形態では、本発明は、
(a)実質的にアイソタクチックなプロピレン配列、ならびにプロピレンに由来する少なくとも70重量%単位、およびC2またはC4−C10αオレフィンに由来する10〜25重量%単位を有し、DSC分析により0ジュール/グラム〜37ジュール/グラムの融解熱、および0.1〜50g/10分のメルトフローレートを示すプロピレン−αオレフィンコポリマー;および
(b)スチレンブロックコポリマー
を含み、プロピレン−αオレフィンコポリマー対スチレンブロックコポリマーの重量比が3:7〜7:3であり、以下、
(1)500%/分の歪速度にて、ASTM D1708の試料形態を用いて測定される、20MPa未満、好ましくは18MPa未満、より好ましくは10MPa未満、一部の好ましい態様では7MPa未満、さらに最も好ましくは6MPa未満の2%割線引張係数;
(2)500%/分の歪速度にて、少なくとも900%、好ましくは少なくとも950%、より好ましくは少なくとも1000%の破断点伸び;
(3)少なくとも5MPa、好ましくは少なくとも7MPa、より好ましくは少なくとも10MPa、さらに、一部の特定の好ましい態様では、少なくとも15MPaの引張強さ(ASTM D1708の試料形態および500%/分の歪速度を用いて測定される);および
(4)400%歪を最初に適用した後の、2X未満の相対直後残留歪(Xは、400%歪2サイクル試験を適用した後の成分(B)単独で示される直後残留歪である)
を示す、組成物である。
【0007】
第2の実施形態では、本発明は、本質的に、
(a)実質的にアイソタクチックなプロピレン配列、ならびにプロピレンに由来する少なくとも70重量%単位、およびC2またはC4−C10αオレフィンに由来する10〜25重量%単位を有し、DSC分析により2ジュール/グラム〜30ジュール/グラムの融解熱、および0.2〜40グラム/10分のメルトフローレートを示す、少なくとも1つのプロピレン−αオレフィンコポリマー;および
(b)少なくとも1つのスチレンブロックコポリマー
からなる組成物であって、プロピレン−αオレフィンコポリマー対スチレンブロックコポリマーの重量比が3:7〜7:3であり、以下、
(1)ASTM−D1708の試料形態を用いて測定される、500%/分の歪速度にて18MPa未満、より好ましくは10MPa未満、さらに一部の好ましい態様では7MPa未満、最も好ましくは6MPa未満の2%割線引張係数;
(2)500%/分の歪速度にて、少なくとも950%、より好ましくは少なくとも1000%の破断点伸び;
(3)少なくとも10MPa、さらに、一部の特定の好ましい態様では、少なくとも15MPaの引張強さ(ASTM−D1708の試料形態および500%/分の歪速度を用いて測定される);および
(4)400%歪を最初に適用した後の、2X未満の相対直後残留歪(Xは、400%歪2サイクルを最初に適用した後の成分(B)単独で示される直後残留歪である)
を示す、組成物である。
【0008】
第3の実施形態では、本発明は、
(a)実質的にアイソタクチックなプロピレン配列、ならびにプロピレンに由来する少なくとも70重量%単位、およびC2またはC4−C10αオレフィンに由来する10〜25重量%単位を有し、DSC分析により1ジュール/グラム〜37ジュール/グラムの融解熱、および0.1〜40g/10分のメルトフローレートを示す、プロピレン−αオレフィンコポリマー;および
(b)スチレンブロックコポリマー
を含み、プロピレン−αオレフィンコポリマー対スチレンブロックコポリマーの重量比が3:7〜7:3であり、以下、
(1)ASTM−D1708の試料形態を用いて(500%/分の歪速度にて)測定される、20MPa未満、好ましくは18MPa未満、より好ましくは10MPa未満、一部の好ましい態様では7MPa未満の2%割線引張係数;
(2)500%/分の歪速度にて、少なくとも900%、好ましくは少なくとも950%、より好ましくは少なくとも1000%の破断点伸び;
(3)少なくとも5MPa、好ましくは少なくとも7MPa、より好ましくは少なくとも10MPa、さらに、一部の特定の好ましい態様では、少なくとも15MPaの引張強さ(ASTM−D1708の形態および500%/分の歪速度を用いて測定される);および
(4)2サイクルの500%ヒステリシス試験の後、120%歪未満、好ましくは100%歪未満、より好ましくは89%歪未満、さらに最も好ましくは60%未満の相対直後残留歪を示す、組成物である。
【0009】
第4の実施形態では、本発明は第1〜第3の実施形態のいずれか一つの組成物が組み込まれている製品である。好ましい製品には、おむつのタブ、サイドパネル(少なくとも1つの不織布、およびフィルムまたはテープまたはフィラメントなどの1つの弾性成分を含む、弾性積層品)、医療用ドレープ、成人用失禁用品、トレーニングパンツ、家事用品、食品保存用ラップ、工具の柄などに用いられるものなどの軟らかいグリップのオーバーモールディングが含まれる。
【0010】
本発明の組成物は、スチレンブロックコポリマーと従来のポリオレフィンの従来のブレンドと比較して、驚くべきバランスの弾性、引張強さ、直後残留歪、破断点伸び、および耐溶剤性を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
スチレンブロックコポリマー
本発明に適したスチレンブロックコポリマーの例は、EP0712892B1号、WO204041538A1号、US6,582,829B1号;US2004/0087235A1号;US2004/0122408A1号;US2004/0122409A1号;およびUS4,789,699号;US5,093,422号;US5,332,613号に記載され、それらはスチレンブロックコポリマーに関する教示について、参照により本明細書に組み込まれる。
【0012】
一般に、本発明に適したスチレンブロックコポリマーは、20%未満の残留エチレン性不飽和を含む飽和共役ジエンのブロック、好ましくは飽和ポリブタジエンブロックで分離されている、少なくとも2つのモノアルケニルアレーンブロック、好ましくは、2つのポリスチレンブロックを有する。好ましいスチレンブロックコポリマーは線状構造を有するが、分枝状または放射状ポリマーまたは官能化されたブロックコポリマーは有用な化合物になる。
【0013】
一般に、ポリスチレン−飽和ポリブタジエン−ポリスチレン(S−EB−S)(Sはスチレンであり、Eはエチレンであり、Bはブチレンである)およびポリスチレン−飽和ポリイソプレン−ポリスチレン(S−EP−S)(Pはプロピレンである)ブロックコポリマーは、5,000〜35,000の数平均分子量を有するポリスチレン末端ブロック、および20,000〜170,000の数平均分子量を有する飽和ポリブタジエンまたは飽和ポリイソプレン中間ブロックを含む。飽和ポリブタジエンブロックは、35%〜55%の1,2−立体配置を有することが好ましく、飽和ポリイソプレンブロックは、85%よりも多くの1,4−立体配置を有することが好ましい。
【0014】
スチレンブロックコポリマーの総数平均分子量は、コポリマーが線状構造を有する場合、30,000〜250,000であることが好ましい。このようなブロックコポリマーの平均ポリスチレン含量は、一般に10重量%〜35重量%である。
【0015】
本発明の特に好ましい態様で有用なS−EB−Sブロックコポリマーは、Kraton Polymers(Houston,TX)から入手可能であり、数平均分子量は50,000グラム/モルであり、ポリスチレン末端ブロックのそれぞれは数平均分子量が7,200グラム/モルであり、ポリスチレン含量が30重量%である。
【0016】
スチレンブロックコポリマーは、当業者に公知の方法により調製されてよい。例えば、スチレンブロックコポリマーは、フリーラジカルのカチオンおよびアニオン開始剤または重合触媒を用いて製造することができる。このようなポリマーは、バルク、溶液またはエマルジョン法を用いて調製することができる。いずれの場合も、少なくともエチレン性不飽和を含むスチレンブロックコポリマーは一般に、クラム、粉末、ペレットなどの固体として回収される。
【0017】
一般に、溶液アニオン法を用いる場合、共役ジオレフィンポリマーおよび共役ジオレフィンとアルケニル芳香族炭化水素のコポリマーは、−150℃〜300℃の範囲の温度の、好ましくは0℃〜100℃の範囲の温度の適した溶媒中、同時または逐次重合する予定のモノマーもしくは複数のモノマーを有機アルカリ金属化合物と接触させることにより調製される。特に効果的なアニオン重合開始剤は、一般式:RLin(式中、Rは1〜20個の炭素原子を有する脂肪族、脂環式、芳香族、またはアルキル置換芳香族炭化水素ラジカルであり;nは、1〜4の整数である)を有する有機リチウム化合物である。
【0018】
トリブロック、テトラブロック、および高次の反復構造を得るための逐次法に加えて、少なくともアニオン開始剤を用いて、ジエンブロックに反応性(「ライブ」)鎖末端を有するスチレン−ポリジエンのジブロックを調製することができ、それはカップリング剤を介して反応して、例えば、(S−I)xYまたは(S−B)xY構造(式中、xは2〜30の整数であり、Yはカップリング剤であり、Iはイソプレンであり、Bはブタジエンであり、65パーセントを超えるS−IまたはS−Bジブロックはカップリング剤と化学的に結合している)を生成することができる。Yは通常、調製されるポリマーと比較して分子量が小さく、ハロゲン化有機化合物;ハロゲン化アルキルシラン;アルコキシシラン;様々なエステル、例えばアルキルおよびアリールベンゾエート、二官能性脂肪族エステル、例えばジアルキルアジペートなど;多官能性物質、例えばジビニルベンゼン(DVB)およびDVBの低分子量ポリマーを含む、当分野で公知の多数の材料のいずれかであってよい。選択されたカップリング剤に応じて、最終ポリマーは完全にまたは部分的にカップリングした線状トリブロックポリマー(x=2)、すなわちSIYISであるか;または分枝状、放射状または星状の立体配置であり得る。カップリング剤は低分子量であるため、最終ポリマーの特性に実質的に影響を及ぼすことはない。DVBオリゴマーは一般に、ジエンアーム数が7〜20またはさらにそれよりも多い星状ポリマーを作成するために使用される。
【0019】
カップリングしたポリマーにおいてジブロック単位が全て同一である必要はない。実際、多様な「リビング」ジブロック単位をカップリング反応中に合わせて種々の非対称構造を得ることができる、すなわち全ジブロック鎖長は異なっていてもよく、スチレンおよびジエンの連続するブロック長も同様である。
【0020】
ブロックコポリマーは耐候性および酸化安定性を改良するために水素化することが好ましい。一般に、ポリマーの水素化または選択的水素化は、先行技術で公知のいくつかの水素化プロセスのいずれかを用いて達成してよい。例えば、水素化は、例えば、スチレンブロックコポリマーの水素化およびそれから得られるポリマーに関するそれらの教示が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第3,494,942号;同第3,634,594号;同第3,670,054号;同第3,700,633号;およびRe.27,145号に教示のものなどの方法を用いて達成され得る。先行技術で公知の、エチレン性不飽和を含有するポリマーを水素化するための、および芳香族およびエチレン性不飽和を含有するポリマーを水素化または選択的に水素化するためのこれらの方法は、適した触媒、特に鉄族金属原子、特にニッケルまたはコバルトを含む触媒または触媒前駆体、および適した還元剤、例えばアルミニウムアルキルの使用を伴う。
【0021】
一般に、水素化は、適した溶媒中で20℃〜100℃の範囲内の温度にて、さらに7atm(105Pa)〜340atm(105Pa)、好ましくは7atm(105Pa)〜70atm(105Pa)の範囲内の水素分圧で達成される。全溶液に基づいて、鉄族金属が10ppm(wt)〜500ppm(wt)の範囲内の触媒濃度が一般に使用され、水素化条件での接触は一般に60〜240分の範囲内の期間継続される。水素化が完了した後、水素化触媒および触媒残渣は、一般に、ポリマーから分離される。
【0022】
プロピレン−αオレフィンコポリマー
プロピレン−αオレフィンコポリマー対スチレンブロックコポリマーの重量比は、3:7〜7:3、好ましくは3:7〜65:35、より好ましくは4:6〜6:4、さらにより好ましくは45:55〜55:45である。プロピレン−αオレフィンコポリマーは、一般に、全ポリマー組成物の30〜70重量%、好ましくは30〜65重量%、より好ましくは40〜60重量%、さらにより好ましくは組成物中のポリマーの総重量の45〜55重量%を構成する。プロピレン−αオレフィンコポリマーの融解熱が22J/グラムよりも大きい場合、プロピレン−αオレフィンコポリマーは、好ましくは、組成物中の熱可塑性ポリマーの50%またはそれ未満、より好ましくは組成物中の熱可塑性ポリマーの40パーセント未満を構成する。
【0023】
本発明のプロピレン−αオレフィンコポリマーは、実質的にアイソタクチックなプロピレン配列を有するとして特徴付けられる。「実質的にアイソタクチックなプロピレン配列」および同様の用語は、配列が、13C NMRで測定された約0.85よりも大きい、好ましくは約0.90よりも大きい、より好ましくは約0.92よりも大きい、そして最も好ましくは約0.93よりも大きいアイソタクチックなトライアッド(mm)を有することを意味する。アイソタクチックなトライアッドは当分野で周知であり、例えば、13C NMRスペクトルで測定されるコポリマー分子鎖中のトライアッド単位に関してアイソタクチックな配列に言及する、米国特許第5,504,172号およびWO00/01745号に記載されている。NMRスペクトルは、下に記載されるように測定される。
【0024】
本発明のプロピレン−αオレフィンコポリマーは、一般に、メルトフローレート(MFR)が少なくとも0.1g/10分、好ましくは少なくとも0.3、さらにより好ましくは少なくとも1.0g/10分である。好ましくは、本発明の組成物は次の方程式
【数1】

(式中、ηSBCは、スチレンブロックコポリマーの粘度であり、ηPBPEは、プロピレン−αオレフィンコポリマーの粘度であり、φSBCはスチレンブロックコポリマーの体積であり、φPBPEは、配合物中のプロピレン−αオレフィンコポリマーの体積である)を満たす。
【0025】
上の粘度比は、以下の方法によって決定される。
直径25ミリメートルの平行なプレートを備えたTA Instruments Ares LS Model(New Castle,Delaware,USA)製の動的機械的分光計を用いて動的レオロジーデータを決定する。10あたり5つの対数的に間隔のあいた点での周波数掃引は、0.1〜100rad/秒でTexptにて、Texptが変換法および処理条件に特異的な温度であるように行う。2〜30パーセント歪まで2パーセントきざみで歪掃引して変換器の規格内のトルクを生じるための最小必要歪を決定することによる、0.1rad/秒およびTexpt(℃)にて歪掃引を行うことにより、歪が線形粘弾性レジームの範囲内であると決定された;100rad/秒およびTexpt℃での別の歪掃引を用いて、J. M. Dealy and K. F. Wissbrun, 「Melt Rheology and Its Role in Plastics Processing」, Van Nostrand, New York (1990)に開示される手順に従って非線形性が起こる前の最大歪が決定された。全ての試験は、窒素パージ中で酸化劣化を最小限にして行われる。同様のレオロジー挙動に関して、粘度比は適用に用いられている剪断速度で得られる。適用の歪速度が機器の測定可能な範囲を超える場合、粘度比は1秒あたり100ラジアン(rad/秒)の剪断速度で得られる。
【0026】
100rad/秒にて、粘土と体積の関係は
【数2】

であり、より好ましい粘土と体積の関係は
【数3】

であり、最も好ましい粘土と体積の関係は
【数4】

であり、ηAは相Aの粘度であり;ηBは相Bの粘度であり;φAは相Aの体積分率であり;φBは相Bの体積分率である。相Aは、スチレンブロックコポリマー(SBC)成分が豊富であることが好ましい。相Bは、プロピレン−αオレフィンコポリマー(PBPE)成分に富むことが好ましい。
【0027】
相の体積比は、それぞれの成分の重量パーセントをそのそれぞれの密度で割り算することにより、配合物から決定してよい。体積比は、試料断面図の領域解析に基づいて既存の配合物について決定することができる。断面図は、一般に、顕微鏡切片作成法を含む様々な方法から得ることができ、それは試料の変形を最小限にするための超低温条件下での顕微鏡切片作成を含んでも含まなくてもよい。一般に、複数の切片がこの方法で得られる。領域解析は、分離相を識別できる顕微鏡技術を用いて得られた画像で行われる。顕微鏡による方法としては、限定されるものではないが、光学顕微鏡法、偏光を用いる光学顕微鏡法、走査電子顕微鏡法、透過型電子顕微鏡法、および原子間力顕微鏡法が挙げられる。これらの顕微鏡法は、分離相間のコントラストを示すためのさらなる試料調製法を必要としてもしなくてもよい。このような試料調製法としては、限定されるものではないが、分染法が挙げられる。例えば、四酸化ルテニウムが透過型電子顕微鏡のための薄片染色に慣用される。一般に、領域解析は、その次にImage Pro(Media Cybernetics Inc,Silver Springs GA)などの画像解析ソフトウェアを切片に用いて行われる。これは一般に、その次に相の体積比に変換することのできる相の面積比の統計上有意な測定値が得られるまで十分な量の切片で繰り返される。
【0028】
本発明のプロピレン−αオレフィンコポリマーは、プロピレンに由来する単位およびα−オレフィンに由来するポリマー単位からなる。プロピレン−αオレフィンコポリマーを製造するために利用される好ましいコモノマーは、C2、およびC4〜C10のα−オレフィン類、好ましくはC2、C4、C6およびC8α−オレフィン類、最も好ましくは、エチレンである。
【0029】
本発明のプロピレン系コポリマーは、プロピレンに由来する少なくとも70重量%単位を含み、示差走査熱測定により測定される0〜37ジュール/グラムの融解熱を示す。本発明のプロピレン系コポリマーは、12〜24モルパーセントのα−オレフィンコモノマーに由来する単位、より好ましくは14〜22モルパーセントのα−オレフィンコモノマーに由来する単位を含む。エチレンがコモノマーである場合、プロピレン系コポリマーは、10〜25重量パーセントのエチレン由来単位、好ましくは10〜19重量パーセントのエチレン由来単位、より好ましくは11〜17重量パーセントのエチレン由来単位、さらにより好ましくは12〜16重量パーセントのエチレン由来単位、最も好ましくは13〜15重量パーセントのエチレン由来単位を含む。融解熱は、好ましくは1〜37J/g、より好ましくは2〜30J/g、一層より好ましくは4〜25J/g、さらに最も好ましくは4〜19J/gである。
【0030】
13C NMR分光分析法は、コモノマーのポリマーへの組み込みを測定するための、当分野で公知の多数の技法の一つである。この技法の例は、エチレン/α−オレフィンコポリマーについてのコモノマー含量の測定について、ランドール(Journal of Macromolecular Science, Reviews in Macromolecular Chemistry and Physics, C29 (2 & 3), 201-317 (1989))に記載されている。オレフィンインターポリマーのコモノマー含量を測定するための基本的手順は、試料中の種々の炭素に相当するピークの強度が、試料中の寄与する原子核の総数に正比例する条件下で、13C NMRスペクトルを得ることを含む。この比例を確保する方法は当分野で公知であり、それには、パルス後の十分な緩和時間の許容、ゲーテッドデカップリング法、緩和剤などの使用が含まれる。ピークまたはピーク群の相対強度は、そのコンピュータにより生成される積分から実際に得られる。スペクトルを得、ピークを積分した後、コモノマーに関連するピークが割り当てられる。この割り当ては、既知のスペクトルまたは文献を参照して、またはモデル化合物の合成および分析により、または同位体標識されたコモノマーを用いることにより行うことができる。コモノマーのモル%は、例えばランドールに記載されるように、コモノマーのモルの数に相当する積分値の、インターポリマー中の全てのモノマーのモルの数に相当する積分に対する比によって決定することができる。
【0031】
データは、100.4の13C共鳴周波数に相当する、Varian UNITY Plus 400MHz NMRスペクトロメーターを用いて収集する。取得パラメータを選択して緩和剤の存在下での定量的13Cデータ取得を確実にする。ゲーテッド1Hデカップリング、データファイルあたり4000のトランジエント、7秒のパルス繰り返し遅延、24,200Hzのスペクトル幅および32Kデータポイントのファイルサイズを用いて、プローブヘッドを130℃に加熱してデータを獲得する。試料は、クロムアセチルアセトナート(緩和剤)中0.025Mであるテトラクロロエタン−d2/オルトジクロロベンゼンの50/50混合物約3mLを、10mmのNMR管中0.4gの試料に添加することにより調製される。この管のヘッドスペースの酸素を純粋な窒素で置換することによりパージする。ヒートガンにより周期的還流を開始して、管およびその内容物を150℃まで加熱することにより、試料を溶かし、均質化する。
【0032】
データ収集に続いて、化学シフトを21.90ppmのmmmmペンタッドと内部照合する。mmトライアッド(22.5〜21.28ppm)、mrトライアッド(21.28〜20.40ppm)、およびrrトライアッド(20.67〜19.4ppm)を表すメチルの積分値から、トライアッドレベル(mm)でのアイソタクチシティを決定する。mmタクチシティの割合を、mmトライアッドの強度を、mm、mr、およびrrトライアッドの合計で割り算することにより決定する。触媒系、例えば非メタロセンで金属中心のヘテロアリール配位子触媒(下に記載)などで作成されたプロピレン−エチレンコポリマーに関しては、PPQおよびPPEから寄与を減算することによりmr領域をエチレンおよびレジオエラーについて補正する。これらのプロピレン−エチレンコポリマーに関しては、PQEおよびEPEから寄与を減算することによりrr領域をエチレンおよびレジオエラーについて補正する。mm、mr、およびrrの領域にピークを生じるその他のモノマーを含むコポリマーに関しては、ひとたびピークが同定されると、標準的なNMR法を用いて干渉ピークを減算することにより、これらの領域の積分値を同様に補正する。これは、例えば、様々なモノマー組み込みレベルの一連のコポリマーを分析することにより、文献記載の割り当てにより、同位体標識により、または当分野で公知のその他の手段により達成することができる。
【0033】
非メタロセンで金属中心のヘテロアリール配位子触媒、例えば2005年11月1日発行のスティーブンズらの米国特許第6,960,635B2号に記載されるものなどを用いて作成されたポリマーに関して、約14.6および約15.7ppmのレジオエラーに対応する13C NMRピークは、プロピレン単位の成長ポリマー鎖への立体選択的な2,1−挿入エラーの結果であると考えられる。一般に、所与のコモノマー含量に関して、レジオエラーのレベルが高いほどポリマーの融点および弾性率の低下がもたらされ、一方、レベルが低いほどポリマーの高い融点および高い弾性率がもたらされる。
【0034】
プロピレン−αオレフィンコポリマーに関して、コモノマー組成および配列分布は当業者に公知の方法を用いて決定することができる。例えば、特性は、ケーニッヒ,J.W(Spectroscopy of Polymers, American Chemical Society, Washington, D.C. 1992)に従って決定することができる。
【0035】
好ましい態様では、プロピレン−エチレンコポリマーに関して、以下の手順を用いてコモノマー組成および配列分布が決定され得る。積分面積を13C NMRスペクトルから決定し、マトリックス計算に入力してそれぞれのトライアッド配列のモル分率を決定する。次に、マトリックスの割り当て値を積分値とともに用いてそれぞれのトライアッドのモル分率を得る。マトリックス計算は、ランドールの方法(Journal of Macromolecular Chemistry and Physics, Reviews in Macromolecular Chemistry and Physics, C29 (2&3), 201-317, 1989)を、上記の特有の2,1レジオエラー(ポリマー中に存在する場合)についてのさらなるピークおよび序列を含めるよう修正した線形最小二乗の実施である。表Aは、割り当てマトリックスで用いた積分領域およびトライアッド記号を示す。それぞれの炭素に付随する数字はそれが共鳴するスペクトルの領域を示す。
【0036】
数学的にはマトリックス法は、ベクトル方程式s=fM(式中、Mは割り当てマトリックスであり、sはスペクトル列ベクトルであり、fはモル分率組成ベクトルである)である。マトリックス法の実行成功には、得られる方程式を決定または過剰決定(変数と同じか、変数より多くの独立した方程式)し、その方程式の解が、所望の構造情報を算出するために必要な分子情報を含むように、M、fおよびsを定義する必要がある。マトリックス法の第一段階は、組成ベクトルfにおける要素の決定である。このベクトルの要素は、調査する系についての構造情報を提供するように選択された分子パラメータでなければならない。コポリマーに関して、妥当なパラメータセットは、任意の奇数n−ad分布である。通常、個々のトライアッドからのピークは妥当に十分に分割され、容易に割り当てられる。従って、トライアッド分布がこの組成ベクトルfに最も多く使用される。P/Eコポリマーのトライアッドは、EEE、EEP、PEE、PEP、PPP、PPE、EPPおよびEPEである。妥当な高分子量(1,000g/mol以上)のポリマー鎖に関して、13C NMR実験によってEEPとPEEをまたはPPEとEPPを区別することができない。すべてのマルコフ型(Markovian)P/Eコポリマーは、互いに等しいPEEおよびEPPのモル分率を有するので、実施のために等式制約をさらに選択した。同じ処理をPPEおよびEPPについても行った。上記の2つの等式制約は、8つのトライアッドを6つの独立した変数に減らす。明確にするために、組成ベクトルfは今までどおり8つ全てのトライアッドにより表される。等式制約は、マトリックスを解く際、その内部制約として実行される。マトリックス法における第二段階は、スペクトルベクトルsを定義することである。通常、このベクトルの要素が、スペクトル中の明確な積分領域となる。所定の系を保証するために、積分値の数は、独立変数の数と同じくらい大きい必要がある。第三段階は、割り当てマトリックスMを決定することである。このマトリックスは、それぞれのトリアッド(行)における中心モノマー単位の炭素の寄与をそれぞれの積分領域(列)の方に向かって見出すことにより構築される。どの炭素が中心の単位に属するかを決定する際、ポリマーの生長反応方向に関して一貫している必要がある。この割り当てマトリックスの有用な特性は、それぞれの列の合計が、その列の寄与因子であるトリアッドの中心単位内の炭素の数と等しくなければならないことである。この等式は容易にチェックすることができ、従って、一部の一般的なデータ入力ミスを防止する。
【0037】
割り当てマトリックスを構築した後、冗長検査を行う必要がある。言い換えれば、線形独立行の数を、積ベクトルにおける独立変数の数よりも大きいかまたは等しくする必要がある。マトリックスが冗長試験に不合格となったときは、第二段階に戻り、積分領域を再分割し、その後冗長検査に合格するまで割り当てマトリックスを再定義する必要がある。
【0038】
一般に、マトリックスM中の列の数にさらなる制約または拘束の数を加えたものが行の数よりも大きい場合、その系は過剰決定される。この差が大きいほど系が多く過剰決定される。系が多く過剰決定されるほど、マトリックス法は多くの低いシグナル対ノイズ(S/N)比データの組込み、または一部の共鳴の部分飽和から生じ得る矛盾したデータを補正または特定することができる。
【0039】
最終段階はマトリックスを解くことである。これはマイクロソフトエクセルでSolver機能を用いることで容易に実行される。Solver機能は、最初に解ベクトル(異なるトライアッド間のモル比)を推測し、次に計算された積ベクトルと入力積ベクトルsの差の合計を最小にするように反復して推測することにより働く。Solver機能はまた、制約または拘束を明確に入力できるようにする。
【表1】



【数5】

【0040】
1,2挿入プロピレン組成は、全ての立体規則性プロピレン中心トライアッド配列のモル分率を合計することにより算出される。2,1挿入プロピレン組成(Q)は、全てのQ中心トライアッド配列のモル分率を合計することにより算出される。プロピレンのモルパーセントは、全てのP中心トライアッドを加算し、モル分率に100を乗じることにより決定される。エチレン組成は、PおよびQのモル百分率の値を100から減算することにより決定される。
【0041】
本発明の特に好ましい態様では、本発明で用いられるプロピレン−αオレフィンコポリマーは、非メタロセンで金属中心のヘテロアリール配位子触媒、例えば、このような触媒に関するその教示に関して参照によりその全文が本明細書に組み込まれる、2005年11月1日発行のスティーブンズらの米国特許第6,960,635B2号に記載されるものを用いて作成されたプロピレン−エチレンコポリマーを含む。このような触媒に関して、用語「ヘテロアリール」には、置換ヘテロアリールが含まれる。最も好ましい非メタロセンで金属中心のヘテロアリール配位子触媒としては、第4族金属錯体が触媒成分として挙げられ、それは次式
【化1】

(式中、
1は、アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、アルカリル、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール、へテロアラルキル、ヘテロアルカリル、シリル、および水素を数に入れずに1〜40個の原子を含有するその不活性置換誘導体、好ましくは、ジ−オルト−アルキル−置換アリール、最も好ましくは、2,6−ジイソプロピルフェニルから選択され;
Tは、モノ−またはジ−アリール−置換メチレンまたはシリレン基あるいはモノ−またはジ−ヘテロアリール−置換メチレンまたはシリレン基から選択される、水素を数に入れずに10〜30個の原子からなる二価の架橋基である。最も好ましくは、このようなアリール置換基またはヘテロアリール置換基の少なくとも1つは、オルト位の1つまたは両方を第2級もしくは第3級アルキル基、第2級もしくは第3級ヘテロアルキル基、シクロアルキル基、またはヘテロシクロアルキル基で置換され、
2は、ルイス塩基官能性を含有するC6-20ヘテロアリール基、特にピリジン−2−イル基または置換ピリジン−2−イル基であり、
Mは、第4族金属、好ましくはハフニウムであり、
X’’’’は、アニオン性、中性またはジアニオン性配位基であり、
x’’’’は、X’’’’基の数を示す0〜5の数字であり、かつ
結合、任意選択の結合および電子供与相互作用はそれぞれ実線、破線および矢印で表される)により説明され得る。
【0042】
さらに、活性触媒にはまた、前記金属錯体を付加重合のための活性触媒に変換することのできる活性化剤、担体または支持体、液体溶媒または希釈剤、スカベンジャーなどの第3の成分、および/または1またはそれ以上の添加剤もしくはアジュバント、例えば加工助剤、金属イオン封鎖剤、および/または連鎖移動剤が含まれてよい。
【0043】
このような非メタロセンで金属中心のヘテロアリール配位子触媒で作成されたプロピレン−αオレフィンコポリマーは特有のレジオエラーを示す。レジオエラーは、約14.6および約15.7ppmに相当する13C NMRピークにより特定される。この特に好ましい態様では、これらのピークはほぼ等しい強度であり、それらは一般に約0.02〜約7モルパーセントのコポリマー鎖へのプロピレン挿入を示す。
【0044】
いくつかの13C NMRスペクトルを比較することにより、本発明の特に好ましい態様で用いられるプロピレン−エチレンコポリマーの特有のレジオエラーがさらに詳しく説明される。図1および2は、実施例で用いられているプロピレン−エチレンコポリマーに類似するプロピレン−エチレンコポリマーのスペクトルである。それぞれのポリマーのスペクトルは、これらのプロピレン−エチレンコポリマーの高度なアイソタクチシティ(13C NMRで測定された0.94よりも大きなアイソタクチックなトライアッド(mm))および特有のレジオエラーを報告する。図3の13C NMRスペクトルは、メタロセン触媒を用いて調製されたプロピレン−エチレンコポリマーのものである。このスペクトルは、本発明で使用される最も好ましいプロピレン−エチレンコポリマーのレジオエラー(15ppm前後)特性を報告しない。
【0045】
好ましくは、プロピレン−αオレフィンコポリマーの分子量分布(MWD)(重量平均分子量を数平均分子量で割ったものと定義される(Mw/Mn))は、3.5またはそれ未満、好ましくは3.0またはそれ未満である。
【0046】
プロピレン−αオレフィンコポリマーの分子量および分子量分布は、4本の直線状混合床カラム(Polymer Laboratories(粒径20ミクロン))を備えたPolymer Laboratories PL−GPC−220高温クロマトグラフィーユニットでゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いて決定される。オーブン温度は160℃であり、オートサンプラー高温域は160℃、中温域は145℃である。溶媒は、200ppm 2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールを含有する1,2,4−トリクロロベンゼンである。流速は、1.0ミリリットル/分であり、注入サイズは100マイクロリットルである。200ppm 2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールを含有する、窒素パージした1,2,4−トリクロロベンゼンに試料を穏やかに攪拌しながら160℃にて2.5時間溶かすことにより試料の約0.2重量%溶液を注入用に調製する。
【0047】
分子量決定は、10の狭い分子量分布のポリスチレン標準品(Polymer Laboratories製、580〜7,500,000g/モルの範囲のEasiCal PS1)をそれらの溶出体積と併せて用いることにより、推定される。同等のプロピレン−αオレフィンコポリマー分子量は、Mark−Houwink式
{N}=KMa
〔Kpp=1.90E−04、app=0.725およびKps=1.26E−04、aps=0.702〕
において、ポリプロピレン(Th.G. Scholte, N.L.J. Meijerink, H.M. Schoffeleers, and A.M.G. Brands, J. Appl. Polym. Sci., 29, 3763-3782 (1984) に記載)およびポリスチレン(E. P. Otocka, R. J. Roe, N. Y. Hellman, P. M. Muglia, Macromolecules, 4, 507 (1971) に記載)について、適切なMark−Houwink係数を用いることにより決定される。
【0048】
示差走査熱測定
示差走査熱測定(DSC)は、半結晶性ポリマーの融解および結晶化度を調べるために用いることのできる一般的な技法である。DSC測定の一般原則および半結晶性ポリマーを研究するためのDSCの適用は、標準的なテキストに記載されている(例えば、E. A. Turi, ed., Thermal Characterization of Polymeric Materials, Academic Press, 1981)。示差走査熱測定(DSC)分析は、TA Instruments,Inc製のQ1000型DSCを用いて測定される。DSCの較正は以下の通り行われる。最初に、アルミニウム製DSCパンに試料を入れずにDSCを−90℃から290℃まで運転してベースラインを得る。次に、7ミリグラムの新鮮なインジウム試料を、試料を180℃まで加熱し、試料を10℃/分の冷却速度で140℃まで冷却し、それに続いて試料を140℃にて1分間恒温的に保持し、それに続いて試料を10℃/分の加熱速度で140℃から180℃まで加熱することにより分析する。インジウム試料の融解熱および融解の開始を測定し、融解の開始について0.5℃〜156.6℃の範囲内、さらに融解熱について0.5J/g〜28.71J/gの範囲内であるかチェックする。次に、DSCパン中の新鮮な試料の小滴を冷却速度10℃/分にて25℃から−30℃まで冷却することにより脱イオン水を分析する。試料を−30℃にて2分間恒温的に保持し、加熱速度10℃/分で30℃まで加熱する。融解の開始を測定し、0.5℃〜0℃の範囲内であるかチェックする。
【0049】
プロピレン−αオレフィンコポリマー試料は、190℃の温度で薄膜にプレスされる。約5〜8mgの試料を検量し、DSCパンに入れる。ふたをパンに圧着して閉じた雰囲気を確保する。試料パンをDSCセルに入れ、次に約100℃/分という高速で溶融温度よりも約30℃上回る温度まで加熱する。試料をこの温度で約3分間保持する。次に、試料を10℃/分の速度で−40℃まで冷却し、その温度で3分間恒温的に保持する。結果的に、試料は10℃/分の速度で完全に融解するまで加熱される。得られるエンタルピー曲線を、ピーク溶融温度(存在する場合)、結晶開始およびピーク結晶化温度、融解熱および結晶化熱、コポリマーの融解が終わる温度(Tme)、ならびに、米国特許第6,960,635B2号に記載される対応するサーモグラム得られるその他の関心対象の数量について分析する。融解熱を名目上の重量%結晶化度に変換するために用いられる因数は、165J/g=100重量%結晶化度である。この変換因数を用いて、プロピレン−αオレフィンコポリマーの総結晶化度(単位:重量%結晶化度)を、融解熱を165J/gで除し、100%を乗じた値として計算する。
【0050】
広い結晶化度分布
本発明の特に好ましい態様では、プロピレン−αオレフィンコポリマーは広い結晶化度分布を示す。発明者らは、広い結晶化度分布を有するプロピレン−αオレフィンコポリマー(好ましくは、プロピレン−エチレンコポリマー)を使用することが、メタロセン触媒および/またはチーグラー・ナッタ触媒で作成されたコポリマーを組み込む組成物と比較して、低い粘着性/ブロッキング特性を有する組成物をもたらすものと考える。好ましくは、非メタロセンで金属中心のヘテロアリール配位子触媒(既に記載される通り)は、広い結晶化度分布を示すコポリマーを製造するそれらの能力のために、プロピレン−αオレフィンコポリマーを製造するために利用される。特に好ましいものは、このような非メタロセンで金属中心のヘテロアリール配位子触媒で製造されたプロピレン−エチレンコポリマーである。このような非メタロセンで金属中心のヘテロアリール配位子触媒で製造された広い結晶化度分布のプロピレン−エチレンコポリマーは、同等割合のエチレン由来単位を有する狭い結晶化度分布のプロピレン−エチレンコポリマーよりも速く結晶化するものと考えられる。
【0051】
理論に制限されるものではないが、広い結晶化度分布は、動的機械的熱分析などの方法により測定可能な最大使用温度の上昇、より具体的には、より高い温度まで持続する貯蔵弾性率と解釈され得る。より速い結晶化は、限定されるものではないが、より低い粘着性、冷却時のより速い硬化(固化)、より高速なラインを含む、様々な利点と解釈され得る。より速い結晶化は、平均的な技術をもつ当業者に公知の多数の方法を用いて測定してよい。これらの方法としては、限定されるものではないが、示差走査熱測定(DSC)、顕微鏡、X線回折、比重、および機械的特性が挙げられる。上記の利点の恩恵を受けることのできる特定のプロセスとしては、限定されるものではないが、フィルム押出、インフレーション、射出成形、紡糸、異形およびシート押出、テープ押出、および電線用途が挙げられる。
【0052】
約20ジュール/グラムよりも大きい融解熱を有するプロピレン−エチレンコポリマーについて、結晶化度分布は、下に記載されるTREF/ATREF分析から決定されることが好ましい。
【0053】
結晶化可能な配列長さ分布の決定は、昇温溶出分別(TREF)により実験規模で達成することができる。個々の画分の相対質量はより連続的な分布を推定するための根拠として用いてよい。L.ワイルドら、Journal of Polymer Science: Polymer. Physics Ed., 20, 441 (1982) は、試料サイズを縮小し、質量検出器を加えて、分布の連続表示を溶出温度の関数として生成した。この縮小版である分析的昇温溶出分別(ATREF)は、実際の画分の単離には関係しないが、画分の重量分布の正確な決定に関係する。
【0054】
TREFは本来、エチレンと高次α−オレフィンのコポリマーに適用されるが、プロピレンとエチレン(または高次α−オレフィン)のアイソタクチックなコポリマーの分析に用いてもよい。プロピレンのコポリマーの分析には、純粋なアイソタクチックなポリプロピレンの溶解および結晶化のために高い温度を必要とするが、関心対象の大部分のコポリマー生成物は、エチレンのコポリマーに観察されるものと同様の温度で溶出する。次の表は、プロピレンのコポリマーの分析に用いた条件の概要である。指摘されるものを除いてTREFのための条件は、ワイルドら、前記、およびハズリット、Journal of Applied Polymer Science: Appl. Polym. Symp.,45, 25(1990) のものに一致する。
【表2】

【0055】
TREFから得たデータは、溶出温度の関数として、標準化された重量分率のプロットとして表される。分離機構は、結晶化可能成分(エチレン)のモル含量が溶出温度を決定する主要因であるエチレンのコポリマーのものに類似している。プロピレンのコポリマーの場合、主に溶出温度を決定するものは、アイソタクチックなプロピレン単位のモル含量である。
【0056】
プロピレン−αオレフィンコポリマーの結晶化度分布を説明するために用いられることのできる統計因子の1つは歪度であり、それは、特定のポリマーのTREF曲線の非対称を反映する統計値である。方程式1は、この非対称の一つの指標として、歪度指数、Sixを数学的に表す。
方程式1
【数6】

【0057】
値、Tmaxは、TREF曲線の50℃と90℃の間で溶出する最大重量分率の温度と定義される。Tiおよびwiは、それぞれ、TREF分布における任意のi番目の画分の溶出温度および重量分率である。30℃を超えて90℃未満で溶出する曲線の全面積に関して分布を標準化した(wiの合計は100%に等しい)。従って、この指数は、コモノマー(エチレン)を含有する結晶化したポリマーの形状のみを反映し、結晶化していないポリマー(30℃またはそれ未満でなお溶液状態のポリマー)は、方程式1に示した算出から省いた。本発明の特に好ましい態様では、用いられるプロピレン−αオレフィンコポリマーは、(−1.2)よりも大きい、好ましくは−1.0よりも大きい、より好ましくは−0.8よりも大きい、さらに一層より好ましくは−0.7よりも大きい、そして場合によっては−0.60よりも大きいプロピレン−αオレフィンコポリマーの歪度指数で示される、広い結晶化度分布を有する。そのような歪度指数は、広い結晶化度分布を有するプロピレン−αオレフィンコポリマーを示す。
【0058】
歪度指数に加えて、TREF曲線の幅のもう一つの尺度、従ってコポリマーの結晶化度分布の幅の尺度は、最終溶出四分位値(final eluting quartile)(TM4)のメディアン溶出温度である。メディアン溶出温度は、最後にまたは最高の温度で溶出するTREF分布の25%重量分率の溶出温度の中央値である(歪度指数について上に考察されるように、30℃またはそれ未満でなお溶液状態のポリマーは計算から除外する)。上側温度四分位値域(The Upper Temperature Quartile Range)(TM4−TMax)は、最終溶出四分位値のメディアン溶出温度とピーク温度TMaxとの差を定義する。本発明の特に好ましい態様では、プロピレン−αオレフィンコポリマーは、4.0℃よりも大きい、好ましくは少なくとも4.5℃、より好ましくは少なくとも5℃、さらにより好ましくは少なくとも6℃、最も好ましくは少なくとも7℃、そして場合によっては少なくとも8℃さらに一層少なくとも9℃の上側温度四分位値域に一部分示される広い結晶化度分布を有する。一般に、高い値の上側温度四分位値域は、コポリマーのより広い結晶化度分布に相当する。本発明で用いられるプロピレン−αオレフィンコポリマーは、好ましくは、上記の上側温度四分位値域を満たす広い結晶化度分布を示す。
【0059】
さらに、この特に好ましい態様では、用いられるプロピレン−αオレフィンコポリマーは、プロピレン−エチレンコポリマーを含み、TREFで調べると異例であり予期せぬ結果を示す。この分布は、大きな溶出温度範囲に及ぶ傾向があるが、それと同時に顕著な、狭いピークももたらす。さらに、エチレン組み込みの広い範囲にわたって、ピーク温度、TMaxは、ほぼ60℃〜65℃である。従来のプロピレン系コポリマーにおいて、同様のレベルのエチレン組み込みに関して、このピークはより高い溶出温度に移動し、エチレン組み込みは低い。
【0060】
従来のメタロセン触媒に関して、プロピレンのモル分率、Xpの、ピーク最大値のTREF溶出温度、TMax、に対する近似的関係は、次の方程式
Loge(Xp)=−289/(273+TMax)+0.74
により与えられる。
【0061】
この特に好ましい態様で用いられるプロピレン−αオレフィンコポリマーに関して、プロピレンのモル分率の自然対数、LnPは、この方程式
LnP>−289/(273+TMax)+0.75
に示されるように、従来のメタロセンのものよりも大きい。
【0062】
20ジュール/グラム未満の融解熱を示すプロピレン−αオレフィンコポリマーに関して、広い結晶化度分布は、好ましくは、DSCを用いる高結晶性画分(HCF)の測定によるか、またはGPC−FTIRを用いる相対組成ドリフト(relative composition drift)(RCD)の測定により示される。これらの分析は次のように行われる。
高結晶性画分、HCFは、128℃を超えるプロピレン−αオレフィンコポリマーのDSC融解曲線の部分面積として定義される。部分面積は、最初に融解熱を得、次に128℃で垂直な線を引き、(融解熱に使用したものと同じベースラインに対して)128℃を超える部分面積を得ることにより得られる。本発明の特に好ましい態様で用いられるプロピレン−エチレンコポリマーの融解熱は20ジュール/グラム未満であり、HCF画分は約0.1J/gよりも大きく、エチレン含量は約10重量%よりも大きい、より好ましくはHCFは0.2J/gよりも大きく、さらに最も好ましくはHCFは約0.5J/gよりも大きく、また、エチレン含量は約10重量%よりも大きい。
【0063】
図4は、実施例のP/E−4に類似するが、ただしメルトフローレートが12グラム/10分であり、エチレン由来単位の含量が15重量%であり、融解熱が約9.6J/gであり、MWDが2.46である、プロピレン−エチレンコポリマー(P−E1)、および、約13.7重量パーセントのエチレン由来単位を有し、メルトフローレートがおよそ150g/10分であるメタロセン触媒プロピレン−エチレンコポリマーに関する、DSCによる、広い結晶化度分布と狭い結晶化度分布の比較を示す。この図はまた、融解熱を表す面積と比較した高結晶性画分(HCF)の部分面積も示す。
【0064】
上記のDSC法の代替法または補助法として、低結晶化度コポリマーについての結晶化度分布の相対広さは、GPC−FTIR手法[例えば、R.P. Markovich, L.G. Hazlitt, L. Smith, ACS Symposium Series: Chromatography of Polymers, v. 521, pp. 270-276, 199 ;R.P. Markovich, L.G. Hazlitt, L. Smith, Polymeric Materials Science and Engineering, 65, 98-100, 1991;P. J. DesLauriers, D. C. Rohlfing, E. T. Hsieh, 「Quantifying Short Chain Branching in Ethylene 1-olefin Copolymers using Size Exclusion Chromatography and Fourier Transform Infrared Spectroscopy (SEC-FTIR)」, Polymer, 43 (2002), 159-170など]を用いて確立することができる。これらの方法は、本来エチレン系コポリマーに対して意図されたものであるが、プロピレンに基づく系に容易に適用され、ポリマー分子量の関数としてコポリマー組成を得ることができる。以下のGPC−FTIR法に記載されるように測定した場合、(エチレン組み込みに関して)広い組成分布を示すプロピレン−エチレンコポリマーもまた、上記のDSC法において高いHCF値で示されるように、広い結晶化度分布を示すことが見出される。このため、本発明の目的において、組成分布および結晶化度分布は、全体的な結晶化度の低いコポリマー(すなわち、20ジュール/グラム未満の融解熱)のHCF値の大きさにより示される結晶化度分布の相対幅が、GPC−FTIRにより測定されるRCD(下に説明される)の大きさにより示されるより広い組成分布に相当するという点で、一致するとみなされるべきである。
【0065】
GPC−FTIR分析のための様々な規格およびパラメータを表CおよびDに示す。溶解したコポリマー画分が適切に設計されたフロースルーセル[品番0820−2000、Polymer Laboratories Inc.,Amherst,MA.]を経てGPCカラムから溶出する間に(分子量を減らすため)、逐次スペクトルをGPC−FTIRシステムから得る。それぞれのFTIRスペクトル内の2750cm-1〜3050cm-1の吸光度領域は、図5に示されるように積分されてスペクトル数または溶出量の関数として記録され、GPCクロマトグラムにおけるそれぞれのスペクトル数または溶出量での質量(または濃度)の非常に良好な近似として用いられる。この積分された面積は、スペクトルの全吸光度と呼ばれ、その他の全てのスペクトルに関するその他の総面積積分全ての合計で除算することによりさらに規格化される。この規格化した総面積は、従って所与のスペクトルで(特定の溶出量で)表される全ポリマーの重量分率に等しい。それ故に、溶出したポリマーの重量分率は、それぞれのスペクトルの規格化した総面積から導かれた図7〜8のそれぞれにおいてガウス型の曲線である。プロピレン/エチレン組成は、それぞれの一連の逐次スペクトルにおいて(またはそれぞれ連続する溶出量で)、較正曲線を用いる図5に示される2940cm-1よりも大きい値で生じるスペクトルにおける、吸光度の部分面積を用いて予測される(例えば図6中のように)。較正は、その組成が本明細書に見出される方法を用いてNMRにより既に決定されているいくつかのコポリマーに対する平均溶出スペクトルを積分することにより準備される。従って、組成(エチレンの重量分率)をそれぞれのスペクトルについて決定し、スペクトル数または溶出量の関数としてプロットすることができる。これらの分布は図7〜8に表される。
【0066】
最後に、任意の特定のGPC−FTIR組成分布の幅(および上記の定義より、相対結晶化度分布)は、合計した場合溶出ポリマーの95%(重量による)となる最大の全吸光度(すなわち最高ポリマー濃度)をもつスペクトルのみを用いて最大および最小の(画分の)エチレン含量を比較し、最小の全吸光度をもつ(または図7および8に示されるように、GPC曲線中の「両ウイング」)スペクトルを無視することにより予測することができる。これは、低いシグナル対ノイズから生じる問題を避けるために必要である。最大値および最小値は、それぞれ、組成が計算されるスペクトルの95%(重量による)の間で3つの最高および最低の計算したエチレン値の中央値として選択される。エチレン組成の最大値と最小値の差を、計算されたポリマー全体のエチレン組成の平均で割ったものは、相対組成ドリフトまたはRCDとして定義され、百分率で表される。最大エチレン含量を有する溶出種(eluting species)が最小エチレン含量を有する種よりも高い分子量で(すなわち初期溶出量で)現れる場合、RCD値は正であり、そうでなければ負であって、本発明の特に好ましい態様で用いられるプロピレン−エチレンコポリマーは、約15%より大きい、より好ましくは30%より大きい、さらに最も好ましくは45%より大きい、RCDにより定義される広い結晶化度分布を提示する。さらに、最も好ましい態様において、これらのプロピレン−エチレンコポリマーにより示されるRCDの値は正である。この特に好ましい態様において、これらのプロピレン−αオレフィンコポリマーは、双方ともに広い結晶化度分布を示し、また、平均して、より少ない量のエチレンを組み込むポリマー鎖と比較して、より高いエチレン組み込みおよびより高い分子量を有するポリマー鎖を有する。
【0067】
分子量は、それぞれのポリマーについて、報告された重量平均分子量、Mw、および報告された数平均分子量、Mnから計算される。これらは本文書の別の場所に記載される分析から得られる。それぞれの逐次スペクトル数(または溶出量)は、次の連立方程式を解くことにより分子量に変換することができる。
【数7】

【0068】
これらの方程式において、Sは、N+1(0≦S≦N)の逐次FTIRスペクトルのそれぞれに対するスペクトル数であり(溶出量に類似している)、Msはスペクトル数Sにおける分子量であり、wsは、スペクトルSの規格化した合計面積であり、かつ、mおよびbは、それぞれのスペクトルSの分子量を計算するために必要な係数である。これらの方程式は、ツール、例えばSOLVER*[Microsoft Corp.,Redmond,WA]などを用いて、例えば、aおよびbに対する次の関数を最小化することにより簡単に解くことができる。
【数8】

【表3】

【0069】
表D
フロースルーセル[Polymer Laboratories Inc.,Amherst,MA.]およびGPC[Waters Corp.,Milford,MA.]パラメータの概要
上部に液体接続部(liquid connections)を備えたPolymer Labs FTIRインターフェース(品番0820−2000)
セルウインドウ:フッ化カルシウム(デッドボリューム:70μL、パス長:1ミリメートル)
GPC装置:Waters150C高温GPC
カラム:4×300×7.5ミリメートルPolymer Labs10ミクロン混合B
溶媒:ペルクロロエチレン(Sigma−AldrichHPLC等級)
流速:1mL/分
濃度:2.5mg/mL
注入量:250μL
温度:110℃
【0070】
図5は、プロピレン−エチレンコポリマーの赤外線スペクトル例を示す。このスペクトルはGPC−FTIRシステムから得たものであり、炭素−水素の伸長(stretching)領域を示す。2940cm-1よりも大きい周波数での吸光度は、2750cm-1〜3050cm-1の吸光度合計の画分として計算され、プロピレンの重量分率を計算するために用いられる。
【0071】
図6は、総面積、および図5のものなどの赤外線スペクトルにおいて2940cm-1よりも大きい周波数の吸光度からの部分面積を用いて、プロピレン重量分率を計算するために用いられる較正を示す。
【0072】
図7は、図4のプロピレン−エチレンコポリマー(P−E1)のGPC−FTIRによる組成物分布を示す。示される主要データは、それぞれのスペクトル(溶出量)での規格化した吸光度の合計、それぞれのスペクトル(溶出量)に対するエチレン重量分率、および組成分布のための相対組成物ドリフト(「RCD」)である。組成は、低いシグナル対ノイズに起因する誤りを避けるため、ポリマーの最大濃度を表すスペクトルの95%(重量による)についてのみ計算される。
【0073】
図8は、13.7重量%のエチレン由来単位(既に記載されるNMR法により計算)を有するメタロセンプロピレンエチレンコポリマーのGPC−FTIRによる組成分布を示す。示される主要データは、それぞれのスペクトル(溶出量)での規格化した吸光度の合計、それぞれのスペクトル(溶出量)に対するエチレン重量分率、および組成分布のための相対組成物ドリフト(「RCD」)である。組成は、低いシグナル対ノイズに起因する誤りを避けるため、ポリマーの最大濃度を表すスペクトルの95%(重量による)についてのみ計算される。
【0074】
本発明に有用なプロピレン−αオレフィンコポリマーのメルトフローレート(「MFR」)は、少なくとも0.1g/10分、一般に少なくとも0.2g/10分、好ましくは少なくとも1.0g/10分、より好ましくは少なくとも1.5g/10分、最も好ましくは少なくとも3g/10分のメルトフローレートを有する。本発明に有用なプロピレン−αオレフィンコポリマーのMFRは、一般に最大100g/10分、好ましくは75g/10分未満、より好ましくは60g/10分未満、さらにより好ましくは50g/10分未満、最も好ましくは40g/10分未満、さらに一層より好ましくは30g/10分未満のメルトフローレートを有する。プロピレン−αオレフィンコポリマーのメルトフローレート(MFR)測定は、ASTM D−1238、条件230℃/重量2.16キログラム(kg)に従って測定された。メルトフローレートはポリマーの分子量に反比例している。従って、分子量が大きいほど、メルトフローレートは小さいが、その関係は直線状ではない。
【0075】
さらなる成分
当業者に公知の様々な粘着付与樹脂が本発明において使用できる。このような粘着付与樹脂は、好ましくは、本発明の組成物を組み込む製品を別の製品または製品の成分に付着させることが望ましい場合に利用される。例えば、本発明の組成物が積層製品の一成分として用いられ、そのような成分が1つあるいはそれ以上の層に付着することが望ましい場合(例えば、本発明の組成物が感圧接着剤層として用いられてエラストマーシートまたはフィルムを別のウェブまたは材料の層に接着させる用途において)。
【0076】
本発明の組成物に組み込むことのできる粘着付与樹脂の例としては、水素化炭化水素樹脂、例えばREGALREZ炭化水素樹脂(Hercules Incorporatedから入手可能な純粋なモノマー炭化水素供給原料の重合および水素化により製造された、完全に水素化したα−メチルスチレン型の低分子量炭化水素樹脂)、およびARKON Pシリーズ粘着付与剤(AKエラストマー、東京、日本より入手可能な水素化炭化水素樹脂);ならびにテルペン炭化水素樹脂が挙げられる。伸展油も本発明の組成物の配合物に添加してよい。例示的な伸展油は、商品名Drakeol 34 でPennzoil Company Pennreco Divisionから入手可能な白色鉱油である。Drakeol 34の比重は15℃で0.864〜0.878、引火点は238℃、および粘度は38℃で370〜420SUSである。適した植物油および動物油またはそれらの誘導体も伸展油として用いてよい。
【0077】
用語「本質的に〜からなる」は、指定された要素、材料、または段階に加えて;本発明の基本的特徴および新規な特徴に実質的に影響を及ぼさない要素、材料、または段階も所望により存在することを示す。例えば、プロピレン系ポリマーに当業者に公知のレベルで慣用される添加剤を、所望により本発明の範囲内で加えてよい。本発明の目的において「本質的に〜からなる」には、プロピレン−αオレフィンコポリマー、スチレンブロックコポリマーを含む組成物が含まれ、本発明の物理的特性に悪影響を及ぼさない上記の粘着付与樹脂およびその他の付加的成分も含まれ得る。例示的な付加的成分としては、限定されないが、色素、抗酸化剤、安定剤、界面活性剤、ワックス、流動促進剤、溶媒、オイル、微粒子、および組成物の加工性および取扱を向上させるために添加される物質が挙げられる。
【0078】
成分のブレンディング
組成物は、(a)成分のドライブレンディング;(b)押出機に取り付けられたブレンダーシステム(容積または重量による)を介する成分の直接供給;(c)配合された生成物を生成する配合押出機中の成分を配合すること;および/または(d)当業者に公知の任意の他のブレンディング技法により作成してよい。組成物は、下流の二次加工装置での輸送および操作を簡単にするためにペレットに成形されることが好ましい。
【0079】
最終用途および二次加工製品
組成物は、利点を持つ製品を作るために多数の二次加工工程において有益に使用することができる。これらの製品および工程の一部の例は、(1)フィルム類、キャストフィルムならびに空気および水で急冷したインフレートフィルムの双方:適したキャストフィルムおよび空気で急冷したインフレートフィルム工程は、例えば、The Encyclopedia of Chemical Technology. Kirk-Othmer, Third Edition, John Wiley & Sons, New York, 1981, Vol. 16, pp. 416-417 and Vol. 18, pp. 191-192に記載されている。適した共押出技法および要件は当業者に公知である;(2)射出成形用途、例えば、Injection Molding Handbook, T. A. Osswald, T. Turng, P. Gramann, Hanser Gardner Publications, ISBN # 1569903182, 2001に記載のものなど;(3)熱成形用途、例えば、Technology of Thermoforming, J.L. Throne Hanser Gardner Publications, ISBN # 1569901988, 1996に記載のものなど;(4)メルトブロー繊維および不織布用途、例えば、The Nonwovens Handbook, Association of Nonwovens Fabrics Industry, Cary NC and Principles of Nonwovens, INDA, Cary NC. に記載のものなど;ならびに(5)スパンボンド繊維および不織布、例えば Nonwoven Fabrics: Raw Materials, Manufacture, Applications, Characteristics, Testing Processes W. Albrecht, H. Fuchs, W. Kittelmann, ISBN# 3527304061, Wiley-VCH, 2003に記載のものなど。
【実施例】
【0080】
本発明に関して、破断点伸び、2%割線引張係数、および引張強さ(破断点応力)は全て下に記載される手順ならびに初期ゲージ長22.25ミリメートルおよび伸張速度111.25ミリメートル/分(歪速度500%/分)のASTM D1708の試料形態を用いて測定される。
【0081】
次の樹脂が実施例に用いられる。
P/E−1は、下に記載される重合手順に類似する重合法において触媒Aを用いて作成されたプロピレン−エチレンプラストマーである。P/E−1の重量平均分子量は153.9kg/mol、数平均分子量は69.9kg/mol、分子量分布は2.2、メルトフローレートは26.4g/10分、タクチシティは少なくとも90%トライアッド、エチレン含量は8.9重量パーセント、密度は0.8746グラム/立方センチメートル(g/cc)、融解熱は47.1ジュール/グラムであり、ASTM D790に従う80.3MPaの曲げ弾性率を示し、ASTM D1708形態を用いて測定した82.9MPaの引張弾性率(2%割線係数)、ASTM D1708形態を用いて測定した22.8MPaの引張強さ、875%の破断点伸びを示し、かつ上記の手順に従って測定された広い結晶化度分布を有する。
【0082】
P/E−2は、下に記載される重合手順に類似する重合法において触媒Aを用いて作成されたプロピレン−エチレンエラストマーである。P/E−2の重量平均分子量は152.5kg/mol、数平均分子量は69.8kg/mol、分子量分布は2.2、メルトフローレートは23.8g/10分、タクチシティは少なくとも90%トライアッド、エチレン含量は11.3重量パーセント、密度は0.8668g/cc、融解熱は28.5ジュール/グラムであり、ASTM D790に従う38.1MPaの曲げ弾性率を示し、ASTM D1708形態を用いて測定した37.8の引張弾性率(2%割線係数)、ASTM D1708形態を用いて測定した18.8MPaの引張強さ、960%の破断点伸びを示し、かつ上記の手順に従って測定された広い結晶化度分布を有する。
【0083】
P/E−3は、下に記載される重合手順に類似する重合法において触媒Aを用いて作成されたプロピレン−エチレンエラストマーである。P/E−3の重量平均分子量は290kg/mol、数平均分子量は118.4kg/mol、分子量分布は2.5、メルトフローレートは1.8g/10分、タクチシティは少なくとも90%トライアッド、エチレン含量は12.3重量パーセント、密度は0.8652g/cc、融解熱は22ジュール/グラムであり、ASTM D790に従う28.0MPaの曲げ弾性率を示し、ASTM D1708形態を用いて測定した27.2の引張弾性率(2%割線係数)、ASTM D1708形態を用いて測定した17.1MPaの引張強さ、990%の破断点伸びを示し、かつ上記の手順に従って測定された広い結晶化度分布を有する。
【0084】
P/E−4は、下に記載される重合手順に類似する重合法において触媒Aを用いて作成されたプロピレン−エチレンエラストマーである。P/E−4の重量平均分子量は274.9kg/mol、数平均分子量は113.8kg/mol、分子量分布は2.42、メルトフローレートは1.8g/10分、タクチシティは少なくとも90%トライアッド、エチレン含量は15.2重量パーセント、密度は0.8588g/cc、融解熱は0ジュール/グラムであり、ASTM D790に従う11.4MPaの曲げ弾性率を示し、ASTM D1708形態を用いて測定した7.3MPaの引張弾性率(2%割線係数)、ASTM D1708形態を用いて測定した12MPaの引張強さ、1130%の破断点伸びを提示し、かつ上記の手順に従って測定された広い結晶化度分布を有する。
【0085】
RCPPは、The Dow Chemical CompanyからDS6D81の等級名で入手可能なチーグラー・ナッタ触媒で作成された、メルトフローレート5.0グラム/10分のランダムプロピレン−エチレンランダムコポリマーポリプロピレンであり、550MPaの1%割線曲げ弾性率(ASTM D790による)、5.7重量%のエチレン由来単位および0.9の密度を有する。
【0086】
G−1657は、Kraton Polymers(Houston,Texas,United States)から入手可能な線状SEBSスチレンブロックコポリマーであり、密度が0.9g/mLであり、12〜14重量%のポリスチレン単位を含み、1200〜1800センチポイズ(cps)の溶液粘度を示し、ジブロック含量は30%であり、スチレン対ゴムの比は重量で13/87である。
【0087】
触媒A
触媒Aの合成
ハフニウム、[N−[2,6−ビス(1−メチルエチル)フェニル]−α−[2−(1−メチルエチル)フェニル]−6−(1−ナフタレニル−κ−C2)−2−ピリジンメタンアミナト(pyridinemethanaminato)(2−)−κN1,κN2]ジメチル−
【化2】

a)2−ホルミル−6−ブロモピリジン。この化合物は文献記載の手順に従って合成される。Tetrahedron Lett., (2001) 42, 4841。
【0088】
b)6−ブロモ−2−(2,6−ジイソプロピルフェニル)イミノピリジン)。乾燥した、500mLの三つ首丸底フラスコに、孔径0.3nmのモレキュラーシーブス(6g)および80mgのp−TsOHを含有する、2−ホルミル−6−ブロモピリジン(72.1g、383mmol)および2,6−ジイソプロピルアニリン(72.5g、383mmol)の500mLの無水トルエン中溶液を満たした。反応装置は、コンデンサ、オーバーヘッドメカニカルスターラーおよび熱電対さやを備えている。混合物をN2下で12時間70℃まで加熱する。濾過および減圧下での揮発性物質の除去の後、褐色のオイルが単離された。収量は109g、81.9パーセントであった。
GC/MS 346(M+)、331、289、189、173、159、147、131、116、103、91、78。
【0089】
c)6−(1−ナフチル)−2−[(2,6−ジイソプロピルフェニル)イミノ]ピリジン。ナフチルボロン酸(54.5g、316mmol)およびNa2CO3(83.9g、792mmol)を、200mLの脱気した1:1 H2O/EtOHに溶かす。この溶液を、6−ブロモ−2−(2,6−ジイソプロピルフェニル)−イミノピリジン(109g、316mmol)のトルエン溶液(500mL)に添加する。乾燥した箱の内部で、1g(0.86mmol)のテトラキス(トリフェニル−ホスフィン)パラジウム(0)を50mLの脱気したトルエンに溶かす。この溶液を乾燥した箱から取り出し、N2パージした反応装置に満たす。この二相溶液を激しく攪拌し、70℃まで4〜12時間加熱する。室温まで冷却した後、有機相を分離し、水層をトルエンで洗浄し(3×75mL)、合した有機抽出物をH2Oで洗浄し(3×200mL)、MgSO4で乾燥させる。減圧下で揮発性物質を除去した後、得られる淡黄色のオイルをメタノールからの再結晶により精製して黄色の固体を得る。収量109g、87.2パーセント;融点142〜144℃。
1H NMR(CDCl3)δ1.3(d,12H)、3.14(m,2H)、7.26(m,3H)、7.5−7.6(m,5H)、7.75−7.8(m,3H)、8.02(m 1H)、8.48(m,2H)。
13C NMR(CDCl3)δ23.96、28.5、119.93、123.50、124.93、125.88、125.94、126.49、127.04、127.24、128.18、128.94、129.7、131.58、134.5、137.56、137.63、138.34、148.93、154.83、159.66、163.86。
GC/MS 396(M+)、380、351、337、220、207、189、147。
【0090】
d)2−イソプロピルフェニルリチウム。不活性雰囲気のグローブボックスの内部で、n−ブチルリチウム(ヘキサン中2.5Mを52.5mmol、21mL)を、添加漏斗で35〜45分にわたり2−イソプロピルブロモベンゼン(9.8g、49.2mmol)のエーテル溶液(50mL)に添加する。添加が完了した後、混合物を周囲温度にて4時間攪拌する。次に、エーテル溶媒を真空下で一晩除去する。翌日ヘキサンを残りの白色固体に添加し、混合物を濾過し、さらなるヘキサンで洗浄し、その後真空乾燥する。2−イソプロピルフェニルリチウム(4.98g、39.52mmol)を明るい白色粉末として回収する。生成物の2回目の回収(0.22g)を、後に、最初のヘキサンの濾液の2回目の濾過から得る。
1H NMR(d8−THF)δ1.17(d,J=6.8Hz,6H)、2.91(sept、J=6.8,1H)、6.62−6.69(多重線,2H)、6.77(d,J=7.3Hz,1H)、7.69(多重線,1H)。
13C NMR(d8−THF)δ25.99、41.41、120.19、122.73、122.94、142.86、160.73、189.97。
【0091】
e)2−ピリジンメタンアミン、N−[2,6−ビス(1−メチルエチル)フェニル]−α−[2−(1−メチルエチル)フェニル]−6−(1−ナフタンレニル(naphthanlenyl))。段階c)のイミン、6−(1−ナフチル)−2−[(2,6−ジイソプロピルフェニル)イミノ]ピリジン(2.20g、5.6mmol)を、窒素雰囲気下で60〜70mLのドライエーテル中のスラリーとして磁気攪拌機で攪拌する。2−イソプロピルフェニルリチウムのエーテル溶液(25mLドライエーテル中1.21g、9.67mmol)をシリンジを用いて4〜5分間にわたりゆっくり添加する。添加が完了した後、少量のサンプルを取り出し、1N NH4Clで失活させ、有機層を高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)で分析して出発物質が完全に消費されたことをチェックする。1N NH4Cl(10mL)を注意深く、ゆっくり添加することにより反応の残りを失活させる。混合物を追加のエーテルで希釈し、有機層をブラインで2回洗浄し、乾燥させ(N2SO4)、濾過し、減圧下で溶媒をストリップする。濃厚な赤色のオイルとして得られる粗生成物(2.92g;理論的収量=2.87g)を、さらなる精製を行わずに用いる。
1H NMR(CDCl3)δ0.96(d,J=6.6Hz,3H)、1.006(d,J=6.8Hz,3H)、1.012(d,J=6.8Hz,6H)、1.064(d,J=6.8Hz,6H)、3.21−3.34(多重線,3H)、4.87(br s,NH)、5.72(s,1H)、6.98(d,J=7.6Hz,1H)7.00−7.20(多重線,7H)、7.23−7.29(多重線,4H)、7.51(d,J=7.1Hz 1H)、7.60−7.65(多重線,2H)、7.75(多重線,1H)、8.18(多重線,1H)。
13C NMR(CDCl3)δ23.80、24.21、24.24、24.36、28.10、28.81、67.08、120.20、122.92、123.96、124.42、125.35、125.81、126.01、126.28、126.52、126.58、126.65、127.80、128.52、128.62、129.25,131.82、134.52、136.81、138.82、140.94、143.37、143.41、146.66、159.05、162.97。
【0092】
f)ハフニウム、[N−[2,6−ビス(1−メチルエチル)フェニル]−α−[2−(1−メチルエチル)フェニル]−6−(1−ナフタレニル−κ−C2)−2−ピリジンメタンアミナト(pyridinemethanaminato)(2−)−κN1,κN2]ジメチル−
ガラスジャーに、30mLトルエンに溶かした段階e)の配位子8.89mmolを充填する。この溶液に、8.98mmolのn−BuLi(ヘキサン中2.5M溶液)をシリンジで添加する。この溶液を1時間攪拌し、次いで8.89mmolの固体HfCl4を添加する。空冷還流冷却器でジャーをキャップし、混合物を還流で1時間加熱する。冷却後、31.1mmolのMeMgBr(3.5当量、ジエチルエーテル中3.0M溶液)をシリンジで添加し、得られる混合物を周囲温度にて一晩攪拌する。溶媒(トルエン、ヘキサンおよびジエチルエーテル)をドライボックスに取り付けられた真空システムを用いて反応混合物から除去する。トルエン(30mL)を残渣に添加し、混合物を濾過し、残渣(マグネシウム塩)をさらなるトルエン(30mL)で洗浄する。合したトルエン溶液から溶媒を真空除去し、ヘキサンを添加し、次いで真空除去する。ヘキサンを再び添加し、得られるスラリーを濾過し、生成物をペンタンで洗浄して目的生成物を黄色の粉末として得る。
1H NMR(C66):δ8.58(d,J=7.8Hz,1H)、8.25(d,J=8.4Hz,1H)、7.82(d,J=7.5Hz,1H)、7.72(d,J=6.9Hz,1H)、7.50(d,J=8.1Hz,1H)、7.36−7.27(多重線、3H)、7.19−6.99(多重線、7H)、6.82(t,J=8.1Hz,1H)、6.57(s,1H)、6.55(d,J=7.8Hz,1H)、3.83(septet、J=6.9Hz,1H)、3.37(septet、J=6.9Hz,1H)、2.89(septet、J=6.9Hz,1H)、1.38(d,J=6.6Hz,3H)、1.37(d,J=6.9Hz,3H)、1.17(d,J=6.9Hz,3H)、1.15(d,J=7.2Hz,3H)、0.96(s,3H)、0.70(s,3H)、0.69(d,J=5.4Hz,3H)、0.39(d,J=6.9Hz,3H)。
【0093】
一般的な連続ループ溶液プロピレン−エチレン共重合手順
プロピレン−エチレンコポリマーは、触媒Aを用いて次の手順に従って作成される。
【0094】
この重合プロセスは発熱性である。重合プロピレン1ポンドあたり約900BTUが放出され、重合エチレン1ポンドあたり約1,500BTUが放出される。主なプロセス設計の考慮点は、反応熱を取り除く方法である。プロピレン−エチレンコポリマーは、低圧の、3”ループ管に加えて2本の熱交換(その合計容積は50.3ガロンである)で構成されている溶液重合ループ反応装置において製造される。溶媒およびモノマー(プロピレン)は液体として反応装置に注入される。コモノマー(エチレン)気体を液体溶媒中に十分に溶かす。反応装置へ注入する前に供給材料を10℃まで冷却する。反応装置は20重量%に等しいポリマー濃度で作動する。溶液の断熱温度上昇は、重合反応からの一部の熱除去の主な原因である。反応装置内部の熱交換器は残存する反応熱を取り除くために用いられ、反応装置温度を105℃に制御することが可能である。
【0095】
用いられる溶媒は、Exxonから購入したIsopar Eと呼ばれる高純度イソ−パラフィン留分である。新鮮なプロピレンを、再循環流(溶媒、プロピレン、エチレン、および水素を含む)と混合するより前に、精製のためにSelexsorb COSの床に通過させる。再循環流を、さらなる精製のために75重量%のMolecular Sieve 13Xおよび25重量%のSelexsorb CDの床に通過させ、その後、高圧(700psig)供給ポンプを用いて内容物を反応装置に送り出す。新鮮なエチレンを、精製のためにSelexsorb COS床に通過させ、その後、流れを750psigに圧縮する。水素(分子量を減少させるためにテロゲンを用いる)を圧縮エチレンと混合し、その後、この2つを液体流に混合/溶解する。全部の流れを適当な供給温度(10℃)まで冷却する。反応装置は525psigおよび105℃に等しい制御温度で作動する。反応装置中のプロピレン転化は触媒の注入速度を制御することにより維持される。反応温度は熱交換器のシェル側面全体の温度を85℃に制御することにより維持される。反応装置中の滞留時間は短く、10分である。反応装置1回通過あたりのプロピレン転化は60重量%である。
【0096】
反応装置を出る際に、水および添加剤をポリマー溶液に注入する。水は触媒を水和し、重合反応を終了させる。添加剤は、抗酸化剤、500ppmのIrganox(商標)1010および1000ppmのIrgafos(商標)168からなり、ポリマーとともに留まって、その後のエンドユーザーの設備で二次加工の前に保存される間ポリマー分解を防ぐための安定剤として働く。反応装置を出た後の溶液は、二段階脱揮に備えて反応装置温度から230℃まで過熱している。溶媒および未反応モノマーは脱揮工程で除去される。ポリマー溶融体は、ポンプで水中ペレット切断のための金型に送り出される。
【0097】
脱揮装置の上部を出てゆく溶媒およびモノマー蒸気は、コアレッサーに送られる。コアレッサーは、脱揮の間に蒸気中に同伴したポリマーを除去する。コアレッサーを出る清潔な蒸気流れは、一連の熱交換器によって部分的に凝縮される。2相混合物は分離ドラムに入る。凝縮された溶媒およびモノマーは精製され(これが上述の再循環流である)、反応プロセスに再使用される。主にプロピレンおよびエチレンを含む、分離ドラムを出る蒸気は、ブロックフレア(block flare)に送られ、燃やされる。上に説明したプロセスに従って作成されるプロピレン−エチレンコポリマーは、本発明のプロピレンαオレフィンコポリマーに利用することができる。
【0098】
プロピレン−エチレンコポリマー(P/E−1からP/E−4)とSEBSのブレンドを、Haake Rheocord 9000 Torque Rheometerで一緒にドライブレンディングした。ブレンディングの間の温度は210℃であった。ブレンディングの間、1000ppmのIrganox1010および1000ppmのIrgafos168からなる抗酸化剤パッケージ(antioxidant package)を添加した。成分のブレンディングを、Rheometerでのトルク測定値が一定の状態に達するまで約5〜10分間継続した。次に、混合物を混合ボウルから取り出し、210℃および圧力100〜300p.s.i.にて1〜2ミリメートルの厚さのプラックに圧縮成形した。次に、プラックを速やかに取り出し、25℃に設定された別の型に入れて約3〜5分間約100〜300psiの圧力にて速やかに冷却した。成形されたプラックを、周囲条件(23℃、相対湿度50%)で少なくとも2日間老化させた。ブレンドの処方を表1に要約する。
【0099】
老化したプラックは、次のように機械的検査の準備をした。
応力−歪検査:機械的測定用の試験片をASTM D1708(微小引張形態)に従って準備し、試料の初期ゲ−ジ長は22.25ミリメートルであり、初期幅は4.8ミリメートルであった。引張検査を、Instron(モデル5564)を用いて、空気圧グリップで試験片をつかみ、試料が壊れるまで500%/分(111.25ミリメートル/分)の歪速度で引っ張ることにより張力で行った。破断点伸び(パーセント)を、22.25ミリメートルの初期グリップ分離で除し、100%を乗じた、クロスヘッドの変位の変化ととらえた。引張弾性率(2%割線)は、0%から2%伸びに相当する応力まで伸ばされた線の傾斜とみなした。応力は、力を試料形態の最も狭い部分の断面積(最初の試料厚さを乗じた4.8ミリメートル幅)で除算することにより算出される。引張強さは、実験の開始時点の最も狭い部分のゲ−ジ長(4.8ミリメートル)の断面積に規格化された破断時の力として測定した。引張特性を表1に要約する。
【表4】

【0100】
表Iから分かるように、比較ブレンドCS1−1〜CS2−3は必要な伸びを得ることができない。また、表Iから分かるように、P/E−2、3および4から作られたブレンドは、SEBSがブレンド組成の50重量%未満を構成する場合、5.7重量%のエチレン由来単位を有するランダムプロピレンエチレンコポリマーで作られた比較ブレンドよりも引張弾性率がはるかに低い。好ましくは、組成物が示す引張弾性率(2%割線)は20MPa未満、好ましくは17MPa未満、より好ましくは15MP未満、さらにより好ましくは13MPa未満、最も好ましくは10MPa未満、そして一部の実施形態では8MPa未満である。
【0101】
上記のような厚さ1〜2ミリメートルのプラックを試験して弾性性能を測定した。弾性性能検査は次のように行った。
2サイクルのヒステリシス測定を用いて弾性性能を測定する。微小引張試験片を500%/分の歪速度にて所定の歪(100、200、300、400、または500%)まで伸張し、0%歪まで戻し、次に正の負荷が測定されるまで伸張する。2回目の伸張(0.05MPa)の間の負荷の始まりに相当する歪を直後残留歪とする。100%歪の2サイクル試験のためには、1回目の伸張および収縮に関して30%歪の応力を測定する。1回目の収縮の間の収縮応力の1回目の収縮の間の30%歪の伸張応力に対する比に100を乗算したものをRと定義する(方程式2参照)。
【数9】

Rはヒステリシスの測定値である。Rが1に等しいという制限において、30%歪での収縮力は、30%歪での伸張力に等しい。Rの値が0であるということは、30%歪での収縮力がないことを示す。Rは、好ましくは、少なくとも20%、より好ましくは少なくとも25%、さらにより好ましくは少なくとも40%、そして最も好ましくは少なくとも50%である。
【0102】
様々な歪での直後残留歪の値を含む、弾性性能検査の結果を、下の表IIに示す。
【表5】

【0103】
表Iから分かるように、比較ブレンドCS1−1〜CS2−3は必要な破断点伸びを得ることができない(すなわち900%よりも大きな破断点伸びを得ることができない)。さらに、例CS2−1、CS2−2、およびCS2−3は全て、500%の2サイクルヒステリシス試験後に120%よりも大きな直後残留歪値を示す。このような挙動はこれらの組成物を本スチレンブロックコポリマー配合物の弾性性能を要求する高い歪適用における使用に不利なものにする。
【0104】
表IIから分かるように、高いエチレン含量を有するプロピレン−エチレンコポリマーを組み込んでいるブレンドは、70:30〜30:70の成分A:Bの様々なブレンド比で優れて機能する。少なくとも22J/gの融解熱を有する低いエチレン含量のプロピレン−エチレンコポリマー(P/E−2およびP/E−3)を組み込んでいるブレンドは、ブレンドの50重量%未満のレベルで使用した場合に、弾性がより高い(すなわち、低い値の直後残留歪を示す)。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】プロピレン−エチレンコポリマー(触媒Aに類似の活性化非メタロセンで金属中心のヘテロアリール配位子触媒で作成)の13C NMRスペクトルを示す。これは実施例に記載されるプロピレン−エチレンコポリマーに類似する。
【図2】図1のプロピレン−エチレンコポリマーと同じものの13C NMRスペクトルを示す。しかし、スペクトルは、約14.6および15.7ppmのレジオエラーピークをより明確に示すために、図1に対してY軸のスケールが拡大されている。
【図3】メタロセン触媒を用いて調製されたプロピレン−エチレンコポリマーの13C NMRスペクトルを示す。この図はメタロセン触媒で作成されたプロピレン−エチレンコポリマーに関して15ppm前後の位置のレジオエラーピークが存在しないことを実証する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)実質的にアイソタクチックなプロピレン配列、ならびにプロピレンに由来する少なくとも70重量%単位およびC2またはC4〜C10αオレフィンに由来する10〜25重量wt%単位を有し、DSC分析により0ジュール/グラム〜37ジュール/グラムの融解熱、および0.1〜100グラム/10分のメルトフローレートを示す、プロピレン−αオレフィンコポリマー;および
(b)スチレンブロックコポリマー
を含む組成物であって、前記プロピレン−αオレフィンコポリマー対スチレンブロックコポリマーの重量比が3:7〜7:3であり、以下、
(1)500%/分の歪速度にてASTM D1708の形態(geometry)を用いて測定される、20MPa未満の2%割線引張係数;
(2)少なくとも900%の破断点伸び;
(3)ASTM−D1708の試料形態および500%/分の歪速度を用いて測定される、少なくとも5MPaの引張強さ;
(4)400%歪を最初に適用した後の、2X未満の相対直後残留歪、ここで、Xは、400%歪を最初に適用した後の成分(B)単独で示される残留歪である、
を示す、組成物。
【請求項2】
前記(a)対(b)の比が少なくとも4:6である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記(a)対(b)の比が6:4未満である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記(a)対(b)の比が45/65〜65/45である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物が7MPa未満の2%割線引張係数を示す、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物が6MPa未満の2%割線引張係数を示す、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記組成物が少なくとも950%の破断点伸びを示す、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物が少なくとも1000%の破断点伸びを示す、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記組成物が少なくとも10MPaの引張強さを示す、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記組成物が少なくとも15MPaの引張強さを示す、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記プロピレン−αオレフィンコポリマーが、11〜17重量%のエチレン由来単位を有するプロピレン−エチレンコポリマーを含む、請求項1〜7のいずれかに記載の組成物。
【請求項12】
前記プロピレン−αオレフィンコポリマーが、12〜16重量%のエチレン由来単位を有するプロピレン−エチレンコポリマーを含む、請求項1〜7のいずれかに記載の組成物。
【請求項13】
前記プロピレン−αオレフィンコポリマーが、13〜15重量%のエチレン由来単位を有するプロピレン−エチレンコポリマーを含む、請求項1〜7のいずれかに記載の組成物。
【請求項14】
前記プロピレン−αオレフィンが2〜37ジュール/グラムの融解熱を示す、請求項1〜7のいずれかに記載の組成物。
【請求項15】
前記プロピレン−αオレフィンが4〜25ジュール/グラムの融解熱を示す、請求項1〜7のいずれかに記載の組成物。
【請求項16】
前記プロピレン−αオレフィンが4〜19ジュール/グラムの融解熱を示す、請求項1〜7のいずれかに記載の組成物。
【請求項17】
前記プロピレン−αオレフィンコポリマーが、広い結晶化度分布を示す、請求項1〜16のいずれかに記載の組成物。
【請求項18】
前記プロピレン−αオレフィンコポリマーが、非メタロセンで金属中心のヘテロアリール配位子触媒を用いて製造される、請求項1〜16のいずれかに記載の組成物。
【請求項19】
前記プロピレン−αオレフィンコポリマーが、非メタロセンで金属中心のヘテロアリール配位子触媒を用いて製造される、請求項17に記載の組成物。
【請求項20】
本質的に、
(a)実質的にアイソタクチックなプロピレン配列、ならびにプロピレンに由来する少なくとも70重量%単位およびC2またはC4〜C10αオレフィンに由来する10〜25重量%単位を有し、DSC分析により2ジュール/グラム〜30ジュール/グラムの融解熱、および0.2〜50グラム/10分のメルトフローレートを示す、プロピレン−αオレフィンコポリマー;および
(b)スチレンブロックコポリマー
からなる組成物であって、前記プロピレン−αオレフィンコポリマー対スチレンブロックコポリマーの重量比が3:7〜7:3であり、以下、
(1)500%/分の歪速度にてASTM D1708の形態(geometry)を用いて測定される、10MPa未満の2%割線引張係数;
(2)少なくとも950%の破断点伸び;
(3)ASTM−D1708の試料形態および少なくとも10MPaの500%/分の歪速度を用いて測定される、少なくとも5MPaの引張強さ;
(4)400%歪を最初に適用した後の、2X未満の相対直後残留歪、ここで、Xは、400%歪を最初に適用した後の成分(B)単独で示される残留歪である、
を示す、組成物。
【請求項21】
前記プロピレン−αオレフィンコポリマーが広い結晶化度分布を示す、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
前記プロピレン−αオレフィンコポリマーが、非メタロセンで金属中心のヘテロアリール配位子触媒を用いて製造される、請求項20〜21のいずれかに記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2009−521581(P2009−521581A)
【公表日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−547647(P2008−547647)
【出願日】平成18年12月22日(2006.12.22)
【国際出願番号】PCT/US2006/049175
【国際公開番号】WO2007/094866
【国際公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ インコーポレイティド (1,383)
【Fターム(参考)】