説明

ステアリングサポートメンバーの構造

【課題】ステアリングサポートメンバーの剛性等を向上させるとともに、ステアリング振動等を低減させる。
【解決手段】ステアリングサポートメンバー1は、平行に並んで配置される2本のサポートメンバーによって構成され、第1のサポートメンバー9は車体幅方向の全体に配置され、第2のサポートメンバー10は運転席側の対応箇所に配置され、第1及び第2のサポートメンバー9,10にはステアリングブラケット11が結合して配置され、第2のサポートメンバー10の車体側端部は、第1のサポートメンバー9と共に端部結合ブラケット8を介して車体に取付けられ、第2のサポートメンバー10の車体反対側端部は、中間部結合ブラケット12を介して第1のサポートメンバー9に取付けられ、中間部結合ブラケット12は、第1のブレース13を介してフロアパネル5に結合され、第2のブレース14を介してカウルパネル2に結合されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のインストルメントパネルの内部に車体幅方向にわたって架け渡され、ステアリングコラム等を支持するステアリングサポートメンバーの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車のインストルメントパネルの内部には、ステアリングコラム等を支持する剛性部材のステアリングサポートメンバーが車体幅方向にわたって架け渡されている。このステアリングサポートメンバーは、車体幅方向の両端が車体の左右ダッシュサイドパネル(ピラー)に取付けられており、運転席側には、ステアリングブラケットを介してステアリングコラムが支持されているとともに、インストルメントパネルが搭載され、かつインストルメントパネルに付属するメーター類やオーディオ等の重量のある部品が懸架されている。
【0003】
ところで、このようなステアリングサポートメンバーの周辺部分の剛性が低いと、車体懸架(サスペンション)からの振動や、特にアイドリング時のエンジンからの振動がステアリングに伝達され、その振動が運転者に伝わったり、あるいは車室内騒音の原因になったりするなどして不快感を与えるほか、機器類の振動により「きしみ音」が発生することが懸念されている。また、車体前方からの荷重入力時には、ダッシュパネルの上部及びカウルパネルが車室内に入り込む変形を生じ、これにより、ステアリングサポートメンバーが車体後方に向かって変形することから、ステアリングハンドルの後退が問題となっている。
【0004】
このため、ステアリングサポートメンバーには、サポートメンバー自体の高剛性化を図ったり、車体との結合強度を高めたりすることによって、振動特性を改善するとともに、車体前方からの荷重による変形を低減することが求められている。特に、ステアリングサポートメンバーの車体幅方向中央を振動曲線の腹にした前後(前斜め上から後斜め下)の振動モ−ドや、ステアリングサポートメンバーの両端と中央を振動曲線の節にした前後の振動モードが問題となっている。
【0005】
そこで、従来の自動車の中には、特許文献1に開示されているように、ステアリングサポートメンバーと車体前方のカウルパネルやダッシュパネル、またはステアリングサポートメンバーと車体下方のダッシュパネルの下部もしくはフロアパネルをブレースで結合することにより、ステアリングサポートメンバーの振動や変形を低減させているものがある。
また、特許文献2に開示されているように、運転席側のステアリングサポートメンバーの剛性を向上させるため、ステアリングサポートメンバーを2本のパイプで構成し、車体前方側のパイプの径を車体後方側のパイプの径よりも大きく形成しているものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開平5−80969号公報
【特許文献2】特開第4485992号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、最近の車室内騒音低減の要求やステアリング振動低減の要求は厳しく、単一の周波数の振動数のみを低減させるのではなく、幅広い周波数域の振動数に対して、低減効果を発揮させる必要がある。このため、振動ピークを持ちにくく、各車種に合わせた振動特性を調整することができるステアリングサポートメンバー及びメンバー周辺の構造が求められている。
ところが、特許文献1に開示された従来のステアリングサポートメンバーの構造にあっては、ブレースによるカウルパネル、ダッシュパネル、フロアパネルへの荷重伝達が十分に行えないため、上述した厳しい車室内騒音低減の要求やステアリング振動低減の要求に対処することができなかった。また、特許文献2に開示された従来のステアリングサポートメンバーの構造にあっては、ステアリング振動性能へ寄与する重要度が大きい車体後方側のパイプの径が小さい上、車体後方側のパイプを車体幅方向に沿って架け渡しているため、余分な重量増が発生するとともに、振動を抑える性能が低下してしまうという問題を有している。
【0008】
本発明はこのような実状に鑑みてなされたものであって、その目的は、運転席側前方のステアリングサポートメンバーの剛性及び取付強度を向上させ、車室内騒音やステアリング振動を低減させるとともに、車体前方からの荷重入力時におけるステアリングサポートメンバーの変形を低減させ、中間部結合ブラケットの位置や第1及び第2のブレースの剛性を選択することによって車両特有の振動特性に対して小さな設計変更で改善対応することが可能なステアリングサポートメンバーの構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記従来技術の有する課題を解決するために、本発明は、車体幅方向にわたって架け渡され、車体幅方向両端で端部結合ブラケットを介して左右の車体に取付けられるステアリングサポートメンバーの構造において、前記ステアリングサポートメンバーは、平行に並んで配置される2本のサポートメンバーによって構成され、第1のサポートメンバーは車体幅方向の全体に配置され、第2のサポートメンバーは運転席側の対応箇所に配置され、かつ前記第1及び第2のサポートメンバーにはステアリングブラケットが結合して配置され、前記第2のサポートメンバーの車体側端部は、前記第1のサポートメンバーと共に前記端部結合ブラケットを介して車体に取付けられ、前記第2のサポートメンバーの車体反対側端部は、中間部結合ブラケットを介して前記第1のサポートメンバーに取付けられ、前記中間部結合ブラケットは、車体上下方向へ延びる第1のブレースを介してフロアパネルもしくはダッシュパネルの下部に結合されているとともに、車体前後方向へ延びる第2のブレースを介してカウルパネルもしくはダッシュパネルの上部に結合されている。
【0010】
また、本発明において、前記第2のサポートメンバーの車体幅方向中央には、車体前後方向へ延び、一端が前記第1のサポートメンバーのみに結合し、もしくは前記第1及び第2のサポートメンバーの両方に結合し、他端がカウルパネルもしくはダッシュパネルの上部に結合する第3のブレースが配置され、前記第3のブレースは、前記ステアリングブラケットの一部と車体幅方向で重複して配置されている。
【0011】
さらに、本発明において、前記端部結合ブラケットは、前後の部分で車体幅方向に段差が形成され、車体前方側の部分が車体幅方向の外側に位置しており、車体幅方向の両側に配置される前記端部結合ブラケットのうち、一方の端部結合ブラケットでは、前記第1のサポートメンバーが前記段差の車体前方側部分に結合されているとともに、前記第2のサポートメンバーが前記段差の車体後方側部分に結合され、他方の端部結合ブラケットでは、前記第1のサポートメンバーが前記段差の車体前方側部分に結合されている。
【0012】
そして、本発明において、前記第1及び第2のサポートメンバーのうち、前記第1のサポートメンバーが車体前方側に配置され、前記第2のサポートメンバーが車体後方側に配置され、前記第2のサポートメンバーの径が前記第1のサポートメンバーの径よりも大きく設定されている。
【発明の効果】
【0013】
上述の如く、本発明に係るステアリングサポートメンバーの構造は、車体幅方向にわたって架け渡され、車体幅方向両端で端部結合ブラケットを介して左右の車体に取付けられるものであって、前記ステアリングサポートメンバーは、平行に並んで配置される2本のサポートメンバーによって構成され、第1のサポートメンバーは車体幅方向の全体に配置され、第2のサポートメンバーは運転席側の対応箇所に配置され、かつ前記第1及び第2のサポートメンバーにはステアリングブラケットが結合して配置され、前記第2のサポートメンバーの車体側端部は、前記第1のサポートメンバーと共に前記端部結合ブラケットを介して車体に取付けられ、前記第2のサポートメンバーの車体反対側端部は、中間部結合ブラケットを介して前記第1のサポートメンバーに取付けられ、前記中間部結合ブラケットは、車体上下方向へ延びる第1のブレースを介してフロアパネルもしくはダッシュパネルの下部に結合されているとともに、車体前後方向へ延びる第2のブレースを介してカウルパネルもしくはダッシュパネルの上部に結合されている。
すなわち、本発明の構造では、ステアリングサポートメンバーを構成する2本のサポートメンバーの両端が端部結合ブラケット及び中間部結合ブラケットによって固定され、かつステアリングサポートメンバーが1本のサポートメンバーとなり剛性が下がる境界位置の中間部結合ブラケットが第1及び第2のブレースによって車体前方及び車体下方の車体側パネルと結合しているので、2本のサポートメンバーの両端を車体側に確実に取付けることができるとともに、2本のサポートメンバーをしっかりと固定でき、ステアリングサポートメンバー全体の剛性を向上させることができる。しかも、車体後方側の第2のサポートメンバーは、運転席側のみに配置されているので、従来の構造では設計が困難となっているオーディオや温調パネルのレイアウトの自由度を増大させることができる。
【0014】
さらに、本発明の構造によれば、運転席側前方のステアリングサポートメンバーの剛性が向上し、周辺部品との取付強度が向上するため、車室内騒音やステアリング振動を低減させ、ステアリング操作性及び車室内の居住性の向上を図ることができる。しかも、本発明の構造によれば、車体前方からの荷重入力時におけるステアリングサポートメンバーの変形を低減させ、中間部結合ブラケットの位置や第1及び第2のブレースの剛性を選択することによって車両特有の振動特性に対して小さな設計変更で改善することが可能となり、周辺部品のレイアウトへの影響がほとんど無く、様々なタイプの自動車に適応することができる。
【0015】
また、本発明の構造において、前記第2のサポートメンバーの車体幅方向中央には、車体前後方向へ延び、一端が前記第1のサポートメンバーのみに結合し、もしくは前記第1及び第2のサポートメンバーの両方に結合し、他端がカウルパネルもしくはダッシュパネルの上部に結合する第3のブレースが配置され、前記第3のブレースは、前記ステアリングブラケットの一部と車体幅方向で重複して配置されているので、運転席側前方の2本のサポートメンバーの中央部分を振動の腹にする振動モードの腹部分の剛性がステアリングブラケット及び第3のブレースという2つの部材によって向上することになり、ステアリングサポートメンバーの振動をより一層低減させることができる。
【0016】
さらに、本発明の構造において、前記端部結合ブラケットは、前後の部分で車体幅方向に段差が形成され、車体前方側の部分が車体幅方向の外側に位置しており、車体幅方向の両側に配置される前記端部結合ブラケットのうち、一方の端部結合ブラケットでは、前記第1のサポートメンバーが前記段差の車体前方側部分に結合されているとともに、前記第2のサポートメンバーが前記段差の車体後方側部分に結合され、他方の端部結合ブラケットでは、前記第1のサポートメンバーが前記段差の車体前方側部分に結合されているので、運転席側のステアリングサポートメンバーを構成する2本のサポートメンバーの長さが異なり、かつ端部結合ブラケットの振動特性が平板の単一特性ではなく段差のある複雑な特性となる。したがって、本発明の構造によれば、ステアリングサポートメンバーの振動特性を向上させることができる。
【0017】
また、本発明の構造において、前記第1及び第2のサポートメンバーのうち、前記第1のサポートメンバーが車体前方側に配置され、前記第2のサポートメンバーが車体後方側に配置され、前記第2のサポートメンバーの径が前記第1のサポートメンバーの径よりも大きく設定されているので、車体前方からの荷重入力時におけるステアリングサポートメンバーの変形を低減できるとともに、ステアリングハンドルの振動を抑制することができる。そして、2本のサポートメンバーの振動特性を変えることにより、ステアリングサポートメンバーの振動特性を向上させることができる。
さらに、本発明の構造によれば、車体前方側のサポートメンバーを小径とすることで、周辺部品のレイアウトの自由度を向上させ、車体全幅で一直線上に結ぶことが可能となり、従来構造のステアリングサポートメンバーと同等の剛性を確保することができる。しかも、本発明の構造によれば、ステアリングサポートメンバーが2本のサポートメンバーで構成されているため、それぞれの役割分担を明確にすることが可能となり、車体後方の第2のサポートメンバーを車体前方の第1のサポートメンバーにのみ直結するだけで十分な剛性効果を得ることができ、余分な重量増大及びコスト高を招くことを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態に係る構造のステアリングサポートメンバーが自動車の車室内の車体に取付けられた状態を示す斜視図である。
【図2】図1のステアリングサポートメンバーを示す平面図である。
【図3】本発明の実施形態に係るステアリングサポートメンバーの構造を示す斜視図である。
【図4】図3のステアリングサポートメンバーの構造を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を図示の実施の形態に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明の実施形態に係るステアリングサポートメンバーの構造が適用される自動車の車室内の斜視図、図2は図1の自動車の車室内の平面図、図3は本実施形態のステアリングサポートメンバーの構造の斜視図、図4は図3のステアリングサポートメンバーの構造の平面図である。
【0020】
自動車の車室内の前方側上部には、図1及び図2に示すように、車体幅方向へ延在する剛性部材のステアリングサポートメンバー1が配設されている。このステアリングサポートメンバー1は、各種の艤装品を設置する大型樹脂成形部品のインストルメントパネル(図示せず)の内部に配置されており、当該インストルメントパネルやステアリングコラム(図示せず)などを支持している。
自動車の車室内の前方側上下部の車体は、カウルパネル2及びダッシュパネル3によって構成され、車体幅方向の左右両側部の車体は、ダッシュサイドパネル4a,4bによって構成されており、ダッシュパネル3の下部の車体後方側には、フロアパネル5及びサイドシル6が配設されている。フロアパネル5の車体幅方向の中央部には、車体前後方向へ延在する凸状のフロアトンネル5aが設けられている。
【0021】
本実施形態のステアリングサポートメンバー1は、図1〜図4に示すように、車体幅方向にわたって架け渡されており、車体幅方向両端で左右両側の端部結合ブラケット7,8を介して左右の車体側壁であるダッシュサイドパネル4a,4bに取付けられている。
また、本実施形態のステアリングサポートメンバー1は、車体前後方向で一定の間隔を空けて平行に並んで配置される2本のパイプ材からなる長短の第1及び第2のサポートメンバー9,10によって構成されており、第1のサポートメンバー9は、車体幅方向の全体にわたって配置され、第2のサポートメンバー10は、運転席側の前方位置の対応箇所の領域に配置されている。これら第1及び第2のサポートメンバー9,10のうち、第1のサポートメンバー9が車体前方側に配置され、第2のサポートメンバー10が車体後方側に配置されている。そして、第2のサポートメンバー10の直径は、第1のサポートメンバー9の直径よりも大きく設定されている。
【0022】
第1及び第2のサポートメンバー9,10には、ステアリングブラケット11が結合して配置されている。このステアリングブラケット11は、車体後方側が開口する平面視でコ字形状に形成されており、車体前後方向へ延びる支持片11a,11bが第1及び第2のサポートメンバー9,10を跨いで平行に配置されている。
第2のサポートメンバー10の車体側端部は、第1のサポートメンバー9と共に右側の端部結合ブラケット8を介してダッシュサイドパネル4bに取付けられている。また、第2のサポートメンバー10の車体反対側端部は、中間部結合ブラケット12を介して第1のサポートメンバー9に取付けられている。
【0023】
この中間部結合ブラケット12は、車体上下方向へ延びる第1のブレース13を介してフロアパネル5に結合されているとともに、車体前後方向へ延びる第2のブレース14を介してカウルパネル2に結合されている。このため、第1のブレース13の上端部13aは、中間部結合ブラケット12に一体成形され、第1のブレース13の下端部13bは、フロアトンネル5aの側面に結合されている。また、第2のブレース14の前端部14aは、車体幅方向へ直角に折り曲げられてカウルパネル2に結合され、第2のブレース14の後端部14bは、車体幅方向へ直角に折り曲げられたフランジにて第1のサポートメンバー9の外周面に接合することにより中間部結合ブラケット12に結合されている。なお、本実施形態では、中間部結合ブラケット12と第1のブレース13とが一体成形されているが、両部材は別体であっても良い。
【0024】
さらに、第2のサポートメンバー10の車体幅方向中央には、図1〜図4に示すように、車体前後方向へ延び、一端15aが第1及び第2のサポートメンバー9,10の両方に結合し、他端15bがカウルパネル2に結合する第3のブレース15が配置されている。このため、第3のブレース15の一端15aは、第1及び第2のサポートメンバー9,10の外周面に対応する形状に形成されて結合され、第3のブレース15の他端15bは、車体幅方向へ直角に折り曲げられてカウルパネル2に結合されている。
しかも、第3のブレース15は、ステアリングブラケット11の一部である一方の支持片11bと車体幅方向で重複して配置されている。なお、本実施形態では、第3のブレース15の一端15aが第1及び第2のサポートメンバー9,10の両方に結合しているが、第1のサポートメンバー9のみに結合しても良い。
【0025】
一方、本実施形態の左右両側の端部結合ブラケット7,8は、図3及び図4に示すように、前後の部分で車体幅方向に段差部16,17がそれぞれ形成されており、車体前方側の部分7a,8aが車体後方側の部分7b,8bに対して車体幅方向の外側に位置している。そして、左右両側の端部結合ブラケット7,8のうち、一方の右側端部結合ブラケット8では、第1のサポートメンバー9が段差部17の車体前方側の部分8aに結合されているとともに、第2のサポートメンバー10が段差部17の車体後方側の部分8bに結合されている。また、他方の左側端部結合ブラケット7では、第1のサポートメンバー9が段差部16の車体前方側の部分7aに結合されている。
このため、端部結合ブラケット7,8の前後部分7a,7b,8a,8bには、図3に示すように、第1及び第2のサポートメンバー9,10の端部を挿入させる挿入孔18,19が穿設されており、第1及び第2のサポートメンバー9,10は、挿入孔18,19に挿入された状態で溶接にて固着されている。なお、中間部結合ブラケット12の前後にも、端部結合ブラケット7,8と同様、第1及び第2のサポートメンバー9,10を挿入させる挿入孔18,19が穿設されている。
【0026】
このように本発明の実施形態に係る構造のステアリングサポートメンバー1は、車体前方側で車体幅方向の全体に配置される第1のサポートメンバー9と、車体後方側で運転席側の対応箇所の領域に配置される第2のサポートメンバー10とによって構成され、これら第1及び第2のサポートメンバー9,10には、平面視でコ字形状のステアリングブラケット11の支持片11a,11bが結合され、第2のサポートメンバー10の車体側端部は、第1のサポートメンバー9と共に端部結合ブラケット8を介してダッシュサイドパネル4bに取付けられ、第2のサポートメンバー10の車体反対側端部は、中間部結合ブラケット12を介して第1のサポートメンバー9に取付けられ、さらに、中間部結合ブラケット12は、第1のブレース13を介してフロアパネル5に結合されているとともに、第2のブレース14を介してカウルパネル2に結合されているため、ステアリングサポートメンバー1を構成する第1のサポートメンバー9の両端のみならず、第2のサポートメンバー10の両端もダッシュサイドパネル4b及び第1のサポートメンバー9に確実に取付けることができるとともに、ステアリングサポートメンバー1の全体の剛性向上を図ることができる。これによって、車体前方からの荷重が特に運転席側に加わった場合でも、ステアリングサポートメンバー1を構成する第1及び第2のサポートメンバー9,10の車体後方への変形を低減させることができる。
【0027】
また、本発明の実施形態に係る第2のサポートメンバー10の車体幅方向中央には、一端15aを第1及び第2のサポートメンバー9,10の両方に結合し、他端15bをカウルパネル2に結合するとともに、ステアリングブラケット11の支持片11bと車体幅方向で重複する第3のブレース15が配置されているため、運転席側前方の第1および第2のサポートメンバー9,10の中央部分を振動の腹にする振動モードの腹部分の剛性がステアリングブラケット11及び第3のブレース15によって向上することになり、ステアリングサポートメンバー1の振動を大幅に低減させることができる。
【0028】
さらに、本発明の実施形態に係る左右両側の端部結合ブラケット7,8は、前後の部分で車体幅方向に段差部16,17が形成され、車体前方側の部分7a,8aが車体幅方向の外側に配置され、一方の端部結合ブラケット8では、第1のサポートメンバー9が車体前方側の部分8aに結合されているとともに、第2のサポートメンバー10が車体後方側の部分8bに結合され、他方の端部結合ブラケット7では、第1のサポートメンバー9のみが車体前方側の部分7aに結合されているため、運転席側のステアリングサポートメンバー1を構成する2本のサポートメンバー9,10の長さが異なり、端部結合ブラケット7,8の振動特性が平板の単一特性ではなく段差部16,17を有する複雑な特性となり、ステアリングサポートメンバー1の振動特性を向上させることができる。
【0029】
また、本発明の実施形態に係る第1及び第2のサポートメンバー9,10のうち、第1のサポートメンバー9が車体前方側に、第2のサポートメンバー10が車体後方側に配置され、第2のサポートメンバー10の直径が第1のサポートメンバー9のものよりも大きく設定されているため、ステアリングハンドルの振動を抑制できるとともに、車体前方からの荷重が加わった場合のステアリングサポートメンバー1の変形を低減できる。さらに、車体前方側の第1のサポートメンバー9を小径とすることで、周辺部品のレイアウトの自由度を向上させることができる。
【0030】
以上、本発明の実施の形態につき述べたが、本発明は既述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて各種の変形及び変更が可能である。
【0031】
例えば、既述の実施の形態では、第1のブレース13の下端部13bをフロアパネル5に結合されているが、適応車種などによってダッシュパネル3の下部に結合しても良い。また、第2のブレース14の前端部14a及び第3のブレース15の他端部15bをカウルパネル2に結合させているが、適応車種などによってダッシュパネル3の上部に結合しても良い。
【符号の説明】
【0032】
1 ステアリングサポートメンバー
2 カウルパネル
3 ダッシュパネル
4a,4b ダッシュサイドパネル
5 フロアパネル
7,8 端部結合ブラケット
7a,8a 車体前方側の部分
7b,8b 車体後方側の部分
9 第1のサポートメンバー
10 第2のサポートメンバー
11 ステアリングブラケット
11a,11b 支持片
12 中間部結合ブラケット
13 第1のブレース
13a 上端部
13b 下端部
14 第2のブレース
14a 前端部
14b 後端部
15 第3のブレーム
15a 一端
15b 他端
16,17 段差部
18,19 挿入孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体幅方向にわたって架け渡され、車体幅方向両端で端部結合ブラケットを介して左右の車体に取付けられるステアリングサポートメンバーの構造において、
前記ステアリングサポートメンバーは、平行に並んで配置される2本のサポートメンバーによって構成され、第1のサポートメンバーは車体幅方向の全体に配置され、第2のサポートメンバーは運転席側の対応箇所に配置され、かつ前記第1及び第2のサポートメンバーにはステアリングブラケットが結合して配置され、
前記第2のサポートメンバーの車体側端部は、前記第1のサポートメンバーと共に前記端部結合ブラケットを介して車体に取付けられ、前記第2のサポートメンバーの車体反対側端部は、中間部結合ブラケットを介して前記第1のサポートメンバーに取付けられ、
前記中間部結合ブラケットは、車体上下方向へ延びる第1のブレースを介してフロアパネルもしくはダッシュパネルの下部に結合されているとともに、車体前後方向へ延びる第2のブレースを介してカウルパネルもしくはダッシュパネルの上部に結合されていることを特徴とするステアリングサポートメンバーの構造。
【請求項2】
前記第2のサポートメンバーの車体幅方向中央には、車体前後方向へ延び、一端が前記第1のサポートメンバーのみに結合し、もしくは前記第1及び第2のサポートメンバーの両方に結合し、他端がカウルパネルもしくはダッシュパネルの上部に結合する第3のブレースが配置され、前記第3のブレースは、前記ステアリングブラケットの一部と車体幅方向で重複して配置されていることを特徴とする請求項1に記載のステアリングサポートメンバーの構造。
【請求項3】
前記端部結合ブラケットは、前後の部分で車体幅方向に段差が形成され、車体前方側の部分が車体幅方向の外側に位置しており、車体幅方向の両側に配置される前記端部結合ブラケットのうち、一方の端部結合ブラケットでは、前記第1のサポートメンバーが前記段差の車体前方側部分に結合されているとともに、前記第2のサポートメンバーが前記段差の車体後方側部分に結合され、他方の端部結合ブラケットでは、前記第1のサポートメンバーが前記段差の車体前方側部分に結合されていることを特徴とする請求項1または2に記載のステアリングサポートメンバーの構造。
【請求項4】
前記第1及び第2のサポートメンバーのうち、前記第1のサポートメンバーが車体前方側に配置され、前記第2のサポートメンバーが車体後方側に配置され、前記第2のサポートメンバーの径が前記第1のサポートメンバーの径よりも大きく設定されていることを特徴とする請求項2または3に記載のステアリングサポートメンバーの構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−46002(P2012−46002A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−188256(P2010−188256)
【出願日】平成22年8月25日(2010.8.25)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】