説明

ステアリングホイール

【課題】芯金の強度を確保しつつ、材料コストを削減し、軽量化を図る。
【解決手段】ステアリングホイール101は、ステアリングシャフトと係合するハブ芯金部20と、ハブ芯金部20を中心として略放射状に延びるスポーク芯金部30と、スポーク芯金部30に支持されてハブ芯金部20を取り巻くように環状とされたリム芯金部40と、を備えた芯金10を有し、ハブ芯金部20は、ステアリングシャフトと係合する中心部分を厚肉とする厚肉部26aとするとともにその端部に向う程に徐々に薄肉となる薄肉部26bとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体ステアリングシャフトに保持されて運転者による操舵等の運転操作を行うステアリングホイールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両には、運転者による操舵等の運転操作を行うために、ステアリングシャフトに環状のステアリングホイールが設けられている。このステアリングホイールは、金属製の芯金に、ワイパースイッチやターンシグナルスイッチ等の各種スイッチ類を含む電装操作ユニットや、エアバッグユニットや、カバー等が設けられている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−214734号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術のステアリングホイールに備えられた芯金は、ステアリングシャフトと係合するハブ芯金部が略直方体形状を呈しており、材料コストが高騰するうえ、結果的にステアリング操作が重くなっていた。
【0005】
一方、近年のステアリングホイールにあっては、乗員の拘束を行うために、運転者用のエアバッグ装置が搭載されたものがあるが、このエアバッグ装置を搭載したことにより、ステアリングホイール全体の重量が増す傾向にある。また、エアバッグ展開時の荷重に耐え得る強度を芯金で確保する必要があることから、上述したハブ芯金部は重厚化し、この点でもステアリングホイール全体の重量が増す傾向にあった。
【0006】
本発明の目的は、強度を確保しつつ軽量化を図ることができる芯金を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、第1の発明は、運転者が把持する略円環形状のリムと、前記リムの径方向中央部に配置されるハブと、前記ハブと前記リムとを径方向に連結するスポークと、前記リム、前記ハブ、及び前記スポークの内部に設けられた芯金と、を有するステアリングホイールであって、前記芯金は、前記ハブの内部に設けられ、ステアリングシャフトと係合するハブ芯金部と、前記スポークの内部に設けられるスポーク芯金部と、前記リムの内部に設けられるリム芯金部と、を備えており、前記ハブ芯金部は、前記ステアリングシャフトと係合する中心部分が相対的に厚肉となるとともに、径方向外周側の端部に向って相対的に薄肉となるように形成されていることを特徴とする。
【0008】
第1発明によれば、ハブ芯金部の中心を従来構造と同等の厚肉構造として強度を確保するとともに、当該部分から外周側の端部に向うほど薄肉構造とすることにより、材料を削減したぶん、軽量化を図ることができる。
【0009】
第2発明は、上記第1発明において、前記ハブ芯金部は、その中心の裏面側から突出して前記ステアリングシャフトと係合する略円筒形状のボス部を一体に備え、前記相対的に厚肉の厚肉部と前記相対的に薄肉の薄肉部とが、前記ハブ芯金部の裏面側のハブ面を傾斜させることで形成されていることを特徴とする。
【0010】
これにより、応力をハブ芯金部の裏面側に集中させることができる。
【0011】
第3発明は、上記第2発明において、前記厚肉部から前記薄肉部に至る面を曲面としたことを特徴とする。
【0012】
第3発明の芯金によれば、ハブ芯金部中心の応力集中を緩和することができる。
【0013】
第4発明は、上記第2又は第3発明において、前記ハブ芯金部は、前記ステアリングホイールが車両が直進する基準位置となった状態における左右方向に沿って配置される、略平面状の肉厚均一部を備え、前記肉厚均一部は、ワイパースイッチを備えた電装品操作ユニットからのハーネス引き出し筒が挿通される貫通穴を備えていることを特徴とする。
【0014】
これにより、上記のようにして薄肉部を形成し軽量化を図る一方、ハブ芯金部におけるハーネス引き出し筒が貫通する部分のみ厚肉のまま肉厚均一とすることで、ハーネス引き出し筒が貫通する貫通穴の貫通方向寸法を確保することができる。これにより、ハーネス引き出し筒の貫通構造における安定性を向上するとともに、電装品操作ユニットのステアリングホイールとの一体取り付け性も向上することができる。
【0015】
第5発明は、上記第1乃至第4発明のいずれかにおいて、前記厚肉部の肉厚に対して前記薄肉部の肉厚を55%以上としたことを特徴とする。
【0016】
これにより、薄肉部の強度を充分に確保することができる。
【0017】
第6発明は、上記第5発明において、前記厚肉部の最大厚肉部分の肉厚は14mm以上とされ、前記薄肉部の最小薄肉部分の肉厚は8.5mmから10mmの範囲であることを特徴とする。
【0018】
これにより、厚肉部の強度と薄肉部の強度とをバランス良く確保することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の芯金によれば、ハブ芯金部の中心を厚肉とするとともに端部に向う程に薄肉とすることにより、強度を確保しつつ軽量化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態に係るステアリングホイールの全体構造を表す平面図である。
【図2】芯金の正面図である。
【図3】芯金の背面図である。
【図4】芯金の側面図である。
【図5】上下逆にした芯金の側面図である。
【図6】芯金の背面側からの斜視図である。
【図7】図6の要部拡大図である。
【図8】芯金とスイッチユニットとの関係を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の一実施形態に係るステアリングホイールについて、図面を参照して説明する。図1は、本実施形態に係るステアリングホイールの全体構造を表す平面図である。図1において、ステアリングホイール101は、略円環形状のリム102と、このリムの102略中央に配置されるハブ103と、このハブ103と上記リム102とを径方向に連結する複数(本例では3本)のスポーク104と、を備えている。上記ハブ103の表側にはフロントカバー105が取り付けられている。リム102には、例えば樹脂材料からなるグリップ107が形成されている。
【0022】
ステアリングホイール101は、その内部に芯金10を有している。以下、本実施形態の要部である芯金10の構造について、図2〜図8を用いて説明する。図2は芯金10の正面図であり、図3は芯金10の背面図であり、図4は芯金10の側面図であり、図5は上下逆にした芯金10の側面図であり、図6は芯金10の背面側からの斜視図であり、図7は図6の要部拡大図であり、図8は芯金10とスイッチユニットとの関係を示す斜視図である。
【0023】
図2〜図7に示すように、芯金10は、例えばマグネシウムを含む金属又は合金から一体に形成されており、上記ハブ103の内部に設けられ、図示を略するステアリングシャフトの先端と係合することで保持されるハブ芯金部20と、上記リム102の内部に設けられ、スポーク芯金部30に支持されてハブ芯金部20を取り巻くように環状とされたリム芯金部40と、上記スポーク104の内部に設けられ、ハブ芯金部20とリム芯金部40とを径方向に連結する複数(図では3箇所)のスポーク芯金部30と、を備えている。
【0024】
ハブ芯金部20は、平面視略矩形に形成されており、その中心(スポーク芯金部30を基準とする回転中心)には背面側に突出する略円筒状のボス部22が一体に形成されている。このボス部22には、ステアリングシャフトの先端が挿入される挿入穴22aが貫通されている。また、ハブ芯金部20の背面には、ボス部22を挟むように座部24が形成されている。この座部24は、ステアリングホイール101が、車両が直進する基準位置となった状態における車体左右方向(車幅方向)に向って延在する、平面状の肉厚均一部となっている(図5、図6、図7、図8参照)。この座部24には、固定用穴24aとハーネス貫通穴24bとが形成されている。さらに、ハブ芯金部20の背面は、ステアリングシャフトと係合する中心部分であるボス部22の周辺を厚肉とするとともに径方向外周側の端部に向うほど徐々に薄肉とされたハブ面26が形成されている。さらに、ハブ芯金部20の表面20aは平坦面とされ、エアバッグ装置(図示せず)等の装着が可能となっている。
【0025】
ハブ面26は、図5に示すように、中心付近の厚肉部26aから薄肉部26bに至るまでを傾斜させることで形成されている。この際、ハブ面26は、厚肉部26aから薄肉部26bに至るまでを曲面とするのが望ましい。その際、芯金10をマグネシウムで形成した場合、図5に示すように、厚肉部26aの肉厚T1に対して薄肉部26bの肉厚T2を55%以上とするのが望ましい。具体的には、厚肉部26aの最大厚肉部分の肉厚T1は14mm以上とされ、薄肉部26bの最小薄肉部分の肉厚T2は8.5mmから10mmの範囲とするのが好ましい。この際、厚肉部26aはボス部22との境界部分から薄肉化するのではなく、その境界部分の肉厚を略最大肉厚T1を維持した上で薄肉化することで、ハブ面26の面形状が略椀型とされている。
【0026】
スポーク芯金部30は、ステアリングホイール101として設置した際の車両前進状態で車体左右方向(車幅方向)に延在する左右芯金部32と、車体後方向に向って延在する前後芯金部34とを備えている。
【0027】
リム芯金部40は、スポーク芯金部30の先端に接続され、円形に形成されている。なお、リム芯金部40は、その断面形状が円形・矩形等に形成されている。
【0028】
ところで、ステアリングホイール101に実装した上記エアバッグ装置が作動していないエアバッグ非展開時の場合の試験においては、ステアリングホイールへの荷重が大きく、芯金10の耐久性を向上するために、ハブ芯金部20の周辺のハブ面26の肉厚を厚くする必要があることから、ボス部22の周辺を含むハブ面26の肉厚は一定とするとともに、その厚みは15mm程度に確保していたため、結果として重量が増し、軽量化が困難であった。
【0029】
そこで、本願発明者等は、公知のCAE解析により、荷重が加えられた時の応力分布を解析した結果、最も応力集中が大きいハブ芯金部20の中心であるボス部22の付近のハブ面26の厚み(厚肉部26a)を10mm以上確保すると共に、応力集中が少ないボス部22から離れた端部でのハブ面26の厚み(薄肉部26b)を10mm以下にすることでエアバッグ展開時での芯金10の割れを防止しつつ、軽量化に貢献することができることを知見した。また、厚肉部26aから薄肉部26bに至る厚みの変化にRを付与した曲面とすることで(正面視なだらかな山型)応力緩和効果を確保することができる。
【0030】
なお、上記の構成において、芯金10には、例えば、図8に示すように、ワイパースイッチ12やターンシグナルスイッチ14等の各種スイッチ類を一体に有する電装品操作ユニット16が座部24に装着される。
【0031】
この際、ハブ面26は曲面形状とされているが、座部24は平坦であることから、この座部24に電装品操作ユニット16を安定して装着することができる。なお、この電装品操作ユニット16は、ボルト等を用いて上記固定用穴24aに取り付けられる。また、その取り付けの際、突出した丸棒形状のハーネス引き出し筒16aがハーネス貫通穴24bに挿入されることで、ハーネス引き出し筒16内部の電源ケーブルやハーネス等を、ハブ芯金部20の表面20aに設けた図示しないエアバッグ装置やホーンスイッチ等へ接続することができる。
【0032】
以上説明したように、本実施形態によれば、芯金10において、ハブ芯金部20が、ステアリングシャフトと係合する中心部分を厚肉とする厚肉部26aとしている。これにより、ハブ芯金部10の中心を従来構造と同等の厚肉構造として強度を確保することができる。具体的には、例えば、エアバッグ装置が作動していないエアバッグ非展開時の場合にステアリングホイール101に荷重が加わったとき、その荷重を厚肉のハブ芯金部20によって吸収してハブ芯金部20の耐久性低下を防止することができる。そして、ハブ芯金部20上記中心側部分から外周側の端部に向うほど徐々に薄肉となる薄肉部26bとしたことにより、材料を削減したぶん、軽量化を図ることができる。
【0033】
また、本実施形態では特に、ハブ芯金部20は、その中心の裏面側から突出して前記ステアリングシャフトと係合する略円筒形状のボス部22を一体に備え、厚肉部26aと薄肉部26bとはハブ芯金部22の裏面側のハブ面26を傾斜させて曲面としている。これにより、応力をハブ芯金部20の裏面側に集中させることができるとともに、ハブ芯金部20の中心への応力集中を緩和することができ、ハブ芯金部20の耐久性の低下をより一層効果的に抑制することができる。
【0034】
また、本実施形態では特に、ハブ芯金部20の背面に形成された肉厚均一の座部24が、ハーネス引き出し筒16aが挿通されるハーネス貫通穴24bを備えている。これにより、上記のようにして薄肉部26bを形成し軽量化を図る一方、ハブ芯金部20におけるハーネス引き出し筒16aが貫通する部分のみ厚肉のまま肉厚均一として、ハーネス引き出し筒16aが貫通するハーネス貫通穴24bの貫通方向寸法を確保することができる。これにより、ハーネス引き出し筒16aの貫通構造における安定性を向上するとともに、電装品操作ユニット16のステアリングホイール101との一体取り付け性も向上することができる。
【0035】
なお、上記実施の形態においてが、マグネシウムを材料とした場合を例示したが、マグネシウム合金、アルミニウム又はアルミニウム合金でも良い。この場合、上述した寸法に関しては、その強度差を考慮して適宜設定することができる。
【0036】
また、上記実施の形態において、スポーク芯金部30及びリム芯金部40の構成に関しては、上記実施の形態の形状等に限定されるものではなく、実装されるスイッチ類やエアバッグ等に応じて適宜の形状や大きさとすることができる。
【0037】
また、以上既に述べた以外にも、上記実施形態や各変形例による手法を適宜組み合わせて利用しても良い。
【0038】
その他、一々例示はしないが、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。
【符号の説明】
【0039】
10 芯金
12 ワイパースイッチ
16 電装品操作ユニット
16a ハーネス引き出し筒
20 ハブ芯金部
24 座部(肉厚均一部
24b ハーネス貫通穴
26 ハブ面
26a 厚肉部
26b 薄肉部
30 スポーク芯金部
40 リム芯金部
T1 肉厚(厚肉部)
T2 肉厚(薄肉部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転者が把持する略円環形状のリムと、
前記リムの径方向中央部に配置されるハブと、
前記ハブと前記リムとを径方向に連結するスポークと、
前記リム、前記ハブ、及び前記スポークの内部に設けられた芯金と、
を有するステアリングホイールであって、
前記芯金は、
前記ハブの内部に設けられ、ステアリングシャフトと係合するハブ芯金部と、
前記スポークの内部に設けられるスポーク芯金部と、
前記リムの内部に設けられるリム芯金部と、
を備えており、
前記ハブ芯金部は、
前記ステアリングシャフトと係合する中心部分が相対的に厚肉となるとともに、径方向外周側の端部に向って相対的に薄肉となるように形成されている
ことを特徴とするステアリングホイール。
【請求項2】
請求項1に記載のステアリングホイールにおいて、
前記ハブ芯金部は、
その中心の裏面側から突出して前記ステアリングシャフトと係合する略円筒形状のボス部を一体に備え、
前記相対的に厚肉の厚肉部と前記相対的に薄肉の薄肉部とが、前記ハブ芯金部の裏面側のハブ面を傾斜させることで形成されている
ことを特徴とするステアリングホイール。
【請求項3】
請求項2に記載のステアリングホイールにおいて、
前記厚肉部から前記薄肉部に至る前記ハブ面を曲面とした
ことを特徴とするステアリングホイール。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載のステアリングホイールにおいて、
前記ハブ芯金部は、
前記ステアリングホイールが車両が直進する基準位置となった状態における左右方向に沿って配置される、略平面状の肉厚均一部を備え、
前記肉厚均一部は、
ワイパースイッチを備えた電装品操作ユニットからのハーネス引き出し筒が挿通される貫通穴を備えている
ことを特徴とするステアリングホイール。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載のステアリングホイールにおいて、
前記厚肉部の肉厚に対して前記薄肉部の肉厚を55%以上とした
ことを特徴とするステアリングホイール。
【請求項6】
請求項5に記載のステアリングホイールにおいて、
前記厚肉部の最大厚肉部分の肉厚は14mm以上とされ、前記薄肉部の最小薄肉部分の肉厚は8.5mmから10mmの範囲である
ことを特徴とするステアリングホイール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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