説明

ステアリングメンバに取付けたハーネス保護構造

【課題】 両面接着テープ等を用いずに半永久的にワイヤハーネスの擦剥による欠損を防止すると共に、ステアリングメンバ取付け構成部品のエッジ部における角部除去のための手作業を廃止して、ステアリングメンバ取付け構成部品をステアリングメンバ本体に取付ける作業と関連して自動化を果たし得る。
【解決手段】 ステアリングメンバ本体2にクリップ6等の係着具によりワイヤハーネス10を取付ける場合に、ステアリングサポートブラケット3、3、車体取付けブラケット4、4或いはその他のブラケット5、5等のステアリングメンバ取付け構成部品におけるワイヤハーネス10に対向するエッジ部7を丸形或いは球形等の角無し形状部8に形成して、ワイヤハーネス10の擦剥による欠損防止構造とした。角無し形状部8は、ステアリングメンバ本体2にステアリングメンバ取付け構成部品を取付ける場合のレーザー溶接を用いて形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車両用のステアリングシャフトを支持するステアリングメンバに取付けたワイヤハーネス保護構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の室内前部にはインストルメントパネルが設けられ、その内側には、ステアリングを支持するためのステアリングメンバが車幅方向に延在し、ステアリングメンバの両端が車体両側部に取付けられている。
【0003】
そして、インストルメントパネルの内側には、更に、空調ユニットのメインケースやブロアケース、並びにデフロスタその他の空調吹出し口への送風ダクト等が設置され、また、インストルメントパネル自体にはその空調制御操作部やメータ類その他の各種電装類のスイッチ等が設けられ、果てまたステアリングには音響機器やスピードコントロール装置等の各種電装類のスイッチ等が設けられている。
【0004】
インストルメントパネルやステアリング周りのこれら各種電装類への配線は、それらを束ねたワイヤハーネスとしてステアリングメンバに支持されて取り回されており、配線先へ導かれている。
【0005】
そこで、従来知られているステアリングメンバは、ステアリングメンバ本体にステアリングサポートブラケット、車体取付け用の車体取付けブラケット、その他のブラケット部等のステアリングメンバ取付け構成部品を一体成形或いは別体構成でアーク溶接等の電気溶接により固着して構成しており、これらステアリングメンバ取付け構成部品或いはステアリングメンバ本体自体に、クリップ等の係着具を用いて、前記ワイヤハーネスを装着することにより支持していた(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2001−18841公報。
【0006】
上記のように、ワイヤハーネスを取り回し支持したステアリングメンバにおいて、特に、ステアリングメンバ取付け構成部品は、プレス成形等により成形して製作され、折り曲げられた端部などには、どうしても角部を有するエッジ部が形成されてしまう。
【0007】
このように形成されたエッジ部は、ワイヤハーネスの取り回しによっては、ワイヤハーネスに対向して、車両の走行中の振動等により当該ワイヤハーネスを擦剥することにより欠損させてしまい、ワイヤハーネスの被覆部を欠損させたりするおそれがある。
【0008】
そこで、ステアリングメンバ取付け構成部品におけるワイヤハーネスに対向するエッジ部の角部にワイヤハーネスが直接接触しないように、当該ワイヤハーネスにハーネスプロテクタを倦回する方法をとっているが、このようなハーネスプロテクタは、ワイヤハーネスが複数本に分岐する部分には設けることができない。
【0009】
このような課題を解決するために、エッジ部をU字形等に折り曲げて角部を無くすことが考えられるが、この場合、折曲げ工数がかかることになると共に、材料費も嵩むことになる。
【0010】
また、前記課題を解決するために、ステアリングメンバ取付け構成部品に形成されたエッジ部を鑢等により面取りをして角無し形状部に形成することが考えられるが、鑢かけ等修整作業が成形後の手作業となって、製作手間がかかることになる。
【0011】
そこで、従来、例えば図6に示すその他のブラケット部品aの本体部bから折曲して起立形成されたフランジ部cにおける、ワイヤハーネスdに対向するエッジ部eにウレタン等の樹脂材料で構成した平板状の両面接着テープfを折り曲げて貼付することにより角無し形状にして、ワイヤハーネスdの擦剥による欠損防止構造としていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、ワイヤハーネスdに対向するエッジ部eに両面接着テープfを被覆する方法も、やはり、両面接着テープfを手作業によりエッジ部eに取付けなければならず、製作工数の軽減化を果たし得ず、また、両面接着テープfは永年使用による温度や湿度変化に脆弱化して剥れてしまうことがあり、更には、エッジ部eに両面接着テープfを貼付する前に、貼付力を増す目的で、少なくともエッジ部e付近を脱脂する必要があり、この点から製作コストの軽減化を難しくしている。
【0013】
そこで、本発明は、かかる点に鑑み、両面接着テープ等を用いずに半永久的にワイヤハーネスの擦剥による欠損を防止すると共に、ステアリングメンバ取付け構成部品のエッジ部における角部除去のための手作業を廃止して、ステアリングメンバ取付け構成部品をステアリングメンバ本体に取付ける作業と関連付けて自動化を果たし得るステアリングメンバに取付けたハーネス保護構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の本発明のステアリングメンバに取付けたハーネス保護構造は、車幅方向に延在するステアリングメンバ本体と、該ステアリングメンバ本体に取付けられてステアリングシャフトを支持するステアリングサポートブラケット或いは前記ステアリングメンバ本体の両端部を車体の両側部にそれぞれ取付けるための車体取付けブラケット等のステアリングメンバ取付け構成部品とを有してステアリングメンバを構成し、該ステアリングメンバにクリップ等の係着具によりワイヤハーネスを取付ける場合に、前記ステアリングメンバ取付け構成部品における前記ワイヤハーネスに対向するエッジ部を丸形或いは球形等の角無し形状部に形成して、前記ワイヤハーネスの擦剥による欠損防止構造としたことを特徴とするものである。
【0015】
かかる構成によれば、ステアリングメンバ取付け構成部品におけるワイヤハーネスに対向するエッジ部を直接丸形或いは球形等の角無し形状部に形成したことから、従来のような両面接着テープ等を用いる必要が無く、しかも、ワイヤハーネスの擦剥による欠損防止機能が半永久的に果たし得て、更には、エッジ部を丸形或いは球形等の角無し形状部に形成する作業を、ステアリングメンバ本体にステアリングメンバ取付け構成部品を取付けるための溶接作業を利用して行うことができることになり、自動化を達成しえて作業工数の軽減が期待できる。
【0016】
また、請求項2に記載の発明は、前記前記ステアリングメンバ本体に前記ステアリングメンバ取付け構成部品をレーザー溶接により装着すると共に、前記角無し形状部を同様に前記レーザー溶接により形成したことを特徴とするものである。
【0017】
かかる構成により、角無し形状部をステアリングメンバ取付け構成部品の取付けのためのレーザー溶接作業に関連付けてレーザー光線の焦点距離を調整する程度で形成することができて、ステアリングメンバの組立作業の自動化をすることができ、レーザー溶接作業により角無し形状部を形成する場合、レーザー光線の焦点距離を、ステアリングメンバ取付け構成部品の取付けの場合よりも、遠くに設定することにより、従来実施していた例えばアーク溶接等の電気溶接における電気抵抗が大きいためにエッジ部が溶け込んでしまって、エッジ部に角無し形状部が形成できないということを防止でき、更には、上記レーザー溶接をアルゴンガス等を吹きかけることにより行うと、益々エッジ部にワイヤハーネスの擦剥による欠損防止のための最も適した角無し形状部を形成することができる。
【発明の効果】
【0018】
上記のように構成する本発明は、ステアリングメンバ取付け構成部品におけるワイヤハーネスに対向するエッジ部を直接丸形或いは球形等の角無し形状部に形成したことから、従来のような両面接着テープ等を用いる必要が無く、しかも、ワイヤハーネスの擦剥による欠損防止機能が半永久的に果たし得て、更には、エッジ部を丸形或いは球形等の角無し形状部に形成する作業を、ステアリングメンバ本体にステアリングメンバ取付け構成部品を取付けるための溶接作業に関連付けて行うことができることになり、自動化を達成しえて作業工数の軽減が期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図を用いて、本発明を実施するための最良の形態における実施例について、説明する。
【0020】
先ず、図1において、ステアリングメンバ1にワイヤハーネス10を装着する場合の構成について説明する。
【0021】
ステアリングメンバ1は、車幅方向に延在するステアリングメンバ本体2と、ステアリングメンバ本体2に取付けられてステアリングシャフト(不図示)を支持するステアリングサポートブラケット3、3、ステアリングメンバ本体2の両端部を不図示の車体の両側部にそれぞれ取付けるための車体取付けブラケット4、4或いはその他のブラケット5、5からなるステアリングメンバ取付け構成部品とを有して構成している。
【0022】
ステアリングサポートブラケット3、3、車体取付けブラケット4、4或いはその他のブラケット5、5は、プレス成形品であり、その取付け端部がそれぞれレーザー溶接によってステアリングメンバ本体2の所定箇所に取着されている。
【0023】
また、ワイヤハーネス10は、ステアリングメンバ本体2の所定箇所に設けた取付け子孔に係着具であるクリップ6の脚部を挿着することによってステアリングメンバ本体2に取回し支持されている。
【0024】
このようにワイヤハーネス10をステアリングメンバ本体1に装着して、各種電装類のスイッチ等の配線先に取回した場合、ワイヤハーネス10は、ステアリングサポートブラケット3、3、車体取付けブラケット4、4或いはその他のブラケット5、5のエッジ部7・・・に対向してしまうことになる(図1のA、B及びC円内参照)。
【0025】
そこで、エッジ部7・・・は、ステアリングサポートブラケット3、3、車体取付けブラケット4、4或いはその他のブラケット5、5をレーザー溶接により溶着する際に、このレーザー溶接により、図3に記載のようなその他のブラケット5、5・・・のうち一つ(図1に示すA円内参照)におけるプレス成形時に形成されたバリ7aを取り除くと共に、端部を図4に示すような半径Rを有する円形の角無し形状部8或いは図5に示すような半径Rを有する球状の角無し形状部8に形成しておく。
【0026】
エッジ部7、7・・・にレーザー溶接により角無し形状部8を形成する場合、レーザー光線の焦点距離は、ステアリングサポートブラケット3、3、車体取付けブラケット4、4或いはその他のブラケットメンバ5、5をステアリングメンバ本体2に溶着するよりも遠くに設定しておけば、アーク溶接等の電気溶接の場合にどうしても発生してしまうエッジ部7・・・の溶解を防止して、所定の形状を持った角無し形状部8を形成することができる。
【0027】
更に、角無し形状部8をレーザー溶接により形成するに当って、アルゴンガス等を吹きかけながら行うと、益々エッジ部7、7・・・にワイヤハーネスの擦剥による欠損防止のための最も適した角無し形状部8を形成することができる。
【0028】
なお、9はワイヤハーネス10に倦回されたハーネスプロテクタであり、ワイヤハーネス10におけるハーネスプロテクタ9の一端側は例えば3つに分岐しているので、この分岐部11には、ハーネスプロテクタ9を延在させることはできない。
【0029】
従って、ステアリングサポートブラケット3、3のエッジ部7に形成した角無し形状部8により、ワイヤハーネスの擦剥による欠損防止機能を果たすことになる。
【0030】
かかる構成により、ステアリングサポートブラケット3、3、車体取付けブラケット4、4或いはその他のブラケット5、5等のステアリングメンバ取付け構成部品におけるワイヤハーネス10に対向するエッジ部7を直接丸形或いは球形等の角無し形状部8に形成したことから、従来のような両面接着テープf等を用いる必要が無く、しかも、ワイヤハーネス10の擦剥による欠損防止機能が半永久的に果たし得て、更には、エッジ部7を丸形或いは球形等の角無し形状部8に形成する作業を、ステアリングメンバ本体2にステアリングサポートブラケット3、3、車体取付けブラケット4、4或いはその他のブラケット5、5等のステアリングメンバ取付け構成部品を取付けるための溶接作業を利用して行うことができることになって、作業工数の軽減が期待できる。
【0031】
更には、角無し形状部8の形成は、ステアリングサポートブラケット3、車体取付けブラケット4、4或いはその他のブラケット5、5等のステアリングメンバ取付け構成部品の取付けのためのレーザー溶接作業に関連付けてレーザー光線の焦点距離の調整程度で行うことができることから、ステアリングメンバ1の組立作業の自動化を達成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
以上説明したように、本発明は、ステアリングメンバ取付け構成部品におけるワイヤハーネスに対向するエッジ部を直接丸形或いは球形等の角無し形状部に形成したことから、従来のような両面接着テープ等を用いる必要が無く、しかも、ワイヤハーネスの擦剥による欠損防止機能が半永久的に果たし得て、更には、エッジ部を丸形或いは球形等の角無し形状部に形成する作業を、ステアリングメンバにステアリングメンバ取付け構成部品を取付けるための溶接作業に関連付けて行うことができることになって、自動化を達成し得て作業工数の軽減が期待できるために、自動車等の車両用のステアリングシャフトを支持するステアリングメンバに取付けたワイヤハーネス保護構造等に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明における実施例を採用したステアリングメンバにワイヤハーネスを装着した状態を描画した斜視図である。
【図2】図1におけるA円内を拡大して描画した斜視図である。
【図3】図2に示すその他のブラケットにおけるプレス成形状態そのままのエッジ部のみを描画した縦断面図である。
【図4】同じく、一実施例としての角無し形状部を形成した後のエッジ部のみを描画した縦断面図である。
【図5】同じく、他の実施例としての角無し形状部を形成した後のエッジ部のみを描画した縦断面図である。
【図6】従来の技術におけるよる図1のA円内に相当する部位を拡大して描画した斜視図である。
【符号の説明】
【0034】
1 ステアリングメンバ
2 ステアリングメンバ本体
3 ステアリングサポートブラケット(ステアリングメンバ取付け構成部品)
4 車体取付けブラケット(ステアリングメンバ取付け構成部品)
5 その他のブラケット(ステアリングメンバ取付け構成部品)
7 エッジ部
8 角無し形状部
9 ハーネスプロテクタ
10 ワイヤハーネス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車幅方向に延在するステアリングメンバ本体と、該ステアリングメンバ本体に取付けられてステアリングシャフトを支持するステアリングサポートブラケット或いは前記ステアリングメンバ本体の両端部を車体の両側部にそれぞれ取付けるための車体取付けブラケット等のステアリングメンバ取付け構成部品とを有してステアリングメンバを構成し、該ステアリングメンバにクリップ等の係着具によりワイヤハーネスを取付ける場合に、前記ステアリングメンバ取付け構成部品における前記ワイヤハーネスに対向するエッジ部を丸形或いは球形等の角無し形状部に形成して、前記ワイヤハーネスの擦剥による欠損防止構造としたことを特徴とするステアリングメンバに取付けたハーネス保護構造。
【請求項2】
前記前記ステアリングメンバ本体に前記ステアリングメンバ取付け構成部品をレーザー溶接により装着すると共に、前記角無し形状部を同様に前記レーザー溶接により形成したことを特徴とする請求項1に記載のステアリングメンバに取付けたハーネス保護構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−193125(P2006−193125A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−9578(P2005−9578)
【出願日】平成17年1月17日(2005.1.17)
【出願人】(000178804)ユニプレス株式会社 (83)
【Fターム(参考)】