説明

ステアリング装置用トルク伝達装置

【課題】衝突事故等により、構成部材に回転方向や軸方向の衝撃荷重が加わった場合に、加わった事実を運転者が容易に認識できるステアリング装置を得られる構造を実現する。
【解決手段】ヨーク10とシャフト11とをセレーション係合させる。このセレーション係合部の構造として、前記衝撃荷重が加わる前の状態では回転方向のがたつきを生じないが、加わった後の状態では回転方向のがたつきを生じる様になる構造を採用する。このがたつきが生じる前後で、ステアリングホイールの遊び量が変化する為、前記衝撃荷重が加わった事が分かる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両(自動車)の操舵輪(フォークリフト等の特殊車両を除き、通常は前輪)に舵角を付与する為のステアリング装置を構成して、ステアリングホイールの動きをステアリングギヤユニットに伝達するトルク伝達装置の改良に関する。具体的には、衝突事故等により、前記ステアリング装置の構成部品の損傷に結び付く様な衝撃が加わった場合に、運転操作を可能にしつつ、この様な衝撃が加わった事実を運転者に分かる様にするものである。
【背景技術】
【0002】
ステアリング装置として、例えば図24に示す様な構造が、広く知られている。このステアリング装置は、車体1に支持された円筒状のステアリングコラム2の内径側にステアリングシャフト3を、回転自在に支持している。そして、このステアリングコラム2の後端開口よりも後方に突出した、前記ステアリングシャフト3の後端部分に、ステアリングホイール4を固定している。このステアリングホイール4を回転させると、この回転が、前記ステアリングシャフト3、自在継手5a、中間シャフト6、自在継手5bを介して、ステアリングギヤユニット7の入力軸8に伝達される。この入力軸8が回転すると、このステアリングギヤユニット7の両側に配置された1対のタイロッド9、9が押し引きされて左右1対の操舵輪に、前記ステアリングホイール4の操作量に応じた舵角が付与される。
【0003】
上述の様なステアリング装置には、前記ステアリングホイール4から前記入力軸8までの間に、それぞれが操舵の為のトルクを伝達する部材同士の結合部が、複数箇所存在する。例えば、前記両自在継手5a、5bを構成するヨークの基端部と、これら両自在継手5a、5bにより結合されるシャフトの先端部(前記ステアリングシャフト3の前端部、前記中間シャフト6の両端部、前記入力軸8の基端部)との結合部も、上述した様な結合部に該当する。この様なシャフトと自在継手のヨークとの結合部に関しては、従来から、これらシャフトの先端部とヨークの基端部とを、締り嵌めによる嵌合、セレーション嵌合、溶接、かしめ、これらの併用等(例えば特許文献1、2参照)により、回転方向に関するがたつきを生じない状態で、トルクの伝達を可能に結合する構造が採用されている。又、この様な構造を採用する場合に、一般的には、前記シャフトと前記ヨークとが軸方向に相対変位しない様にする為に、前記溶接や前記かしめの強度を十分に確保するか、或いは、前記シャフトと前記ヨークとが軸方向に相対変位した場合でも、回転方向に関するがたつきを生じる事なくトルクの伝達を可能に結合された状態が維持される様な構造を採用するのが通例である。
【0004】
ところで、上述の様なトルクを伝達する部材同士の結合部には、車両が衝突事故を起こしたり、運転操作の誤りにより操舵輪を縁石に乗り上げたりする事に基づいて、回転方向や軸方向の衝撃荷重が加わる場合がある。そして、この様な衝撃荷重に基づいて、前記結合部の全部又は一部(溶接部、圧入部等)が損傷し、継続的な安全運行に支障をきたす可能性がある。この様な場合に、使用者が当該車両を修理工場に持ち込んで、直ちに検査、修理を受ければ良いが、一部の使用者は、特に異常を感じないで、そのまま車両の使用を継続する可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−291679号公報
【特許文献2】特開2007−40420号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述の様な事情に鑑みて、構成部材に回転方向や軸方向の衝撃荷重が加わった場合に、加わった事実を運転者が容易に認識できるステアリング装置を得られるステアリング装置用トルク伝達装置を実現すべく発明したものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のステアリング装置用トルク伝達装置は、互いに同心に配置されてトルクの伝達方向に関して互いに直列に接続された、第一、第二両トルク伝達部材を備える。そして、ステアリングホイールの動きをステアリングギヤユニットの入力軸に伝達するトルク伝達機構の途中に設けられて、前記ステアリングホイールとこの入力軸との間でのトルク伝達に供される。
特に、本発明のステアリング装置用トルク伝達装置に於いては、前記第一、第二両トルク伝達部材は、回転方向のがたつきを生じる事なくトルクの伝達を可能に結合されており、且つ、軸方向に関し所定量相対変位する事に基づいて、回転方向のがたつきを介在させてトルクの伝達を可能に結合された状態に変化する。
【0008】
本発明を実施する場合には、例えば請求項2に記載した発明の様に、前記第一トルク伝達部材を、結合孔と、この結合孔の内周面に設けられた外径側係合部とを有するものとする。又、前記第二トルク伝達部材を、前記結合孔の内側に挿入した結合杆部と、この結合杆部の外周面に設けられた、前記外径側係合部に対してトルクの伝達を可能に係合させた内径側係合部とを有するものとする。
又、前記第一、第二両トルク伝達部材が、回転方向のがたつきを生じる事なくトルクの伝達を可能に結合された状態を、これら第一、第二両トルク伝達部材同士の軸方向に関する互いの位置関係が、正規の位置関係にある状態で、前記外径側係合部と前記内径側係合部とが回転方向のがたつきを生じる事なくトルクの伝達を可能に係合した状態とする。
又、前記第一、第二両トルク伝達部材が、回転方向のがたつきを介在させてトルクの伝達を可能に結合された状態を、これら第一、第二両トルク伝達部材同士の軸方向に関する互いの位置関係が、前記正規の位置関係から前記作用方向に所定量ずれた位置関係にある状態で、前記外径側係合部と前記内径側係合部とが回転方向のがたつきを介在させてトルクの伝達を可能に係合した状態とする。
更に、前記第一、第二両トルク伝達部材同士の間に、前記結合孔から前記結合杆部が抜け出る事を防止する為の抜け止め構造部を設ける。
【0009】
又、この場合に、より具体的には、トルクの伝達を可能にする前記外径側係合部と前記内径側係合部との係合態様として、例えば、請求項3に記載した発明の様に、セレーション係合を採用したり、請求項4に記載した発明の様に、非円形嵌合を採用したり、請求項5に記載した発明の様に、キー係合を採用したりする。或いは、請求項6に記載した発明の様に、回転方向のがたつきを生じる事なくトルクの伝達を可能にする構造として摩擦係合を採用し、回転方向のがたつきを介在させてトルクの伝達を可能にする構造として、上述の様な、セレーション係合と非円形嵌合とキー係合とのうちの何れかを採用する事もできる。
更に、これらの場合に、より具体的には、例えば請求項7に記載した発明の様に、前記抜け止め構造部を、前記第一、第二両トルク伝達部材の一部分同士が軸方向に機械的に係合する事に基づいて、前記結合孔から前記結合杆部が抜け出る事を防止するものとする。
【0010】
又、上述の様な請求項2〜7に記載した発明を実施する場合の具体的形態としては、例えば請求項8に記載した発明の様に、前記第一トルク伝達部材と前記第二トルク伝達部材とのうちの一方のトルク伝達部材を自在継手のヨークとし、前記結合孔をこのヨークの基端部に形成する。同じく他方のトルク伝達部材をシャフトとし、前記結合杆部をこのシャフトの端部に設ける。
【0011】
又、本発明を実施する場合には、例えば請求項9に記載した発明の様に、前記第一、第二両トルク伝達部材を、回転方向のがたつきを生じる事なくトルクの伝達を可能に結合されている状態で、互いに溶接する事もできる。この溶接部の強度は、任意の大きさに設定する事ができる。即ち、この溶接部の強度は、この溶接部が、比較的小さい衝撃荷重により破損する大きさに設定しても良いし、比較的大きい衝撃荷重により破損する大きさに設定しても良い。
【発明の効果】
【0012】
上述の様に構成する本発明のステアリング装置用トルク伝達装置の場合、車両が衝突事故を起こしたり、運転操作の誤りにより操舵輪を縁石に乗り上げたりする事に基づいて、第一、第二両トルク伝達部材同士の結合部に、正規の結合状態の維持を妨げる大きさの、回転方向や軸方向の衝撃荷重が加わった場合に、加わった事実を運転者が容易に認識できる。
即ち、前記結合部に上述の様な衝撃荷重が加わる事に基づいて、前記第一、第二両トルク伝達部材同士の軸方向に関する位置規制力(例えば、嵌合部の締め代や溶接に基づく位置規制力)が低下若しくは喪失すると、その後、前記結合部に走行時の操舵トルクが繰り返し加わる等によって、前記第一、第二両トルク伝達部材同士が、軸方向に関して所定量相対変位する。これに伴い、これら第一、第二両トルク伝達部材同士の結合状態が、回転方向のがたつきを生じる事なくトルク伝達を可能な状態から、回転方向のがたつきを介在させてトルク伝達を可能な状態に変化する。この結果、このがたつきの分だけ、ステアリングホイールの遊び(操舵輪の舵角変化に結び付かない操作範囲)が増加すると共に、場合によっては、前記がたつきに基づいて生じる振動が前記ステアリングホイールに伝わったり、このがたつきに基づいて生じる異音が車室内に響いたりする様になる。この様な状況の変化は、運転者が容易に感じ取れる為、運転者は、この様な状況の変化に基づいて、上述の様な衝撃荷重が加わった事実を容易に認識できる。この為、運転者に、修理を促す事ができて、損傷した車両の運行を継続する事に伴う危険を回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態の第1例を、衝撃荷重が加わる前の状態で示す断面図。
【図2】図1のa−a断面図。
【図3】図1のb部拡大図。
【図4】図3のc−c断面図(A)及びd−d断面図(B)。
【図5】衝撃荷重が加わった後の状態で示す、図3と同様の図。
【図6】図5のe−e断面図(A)及びf−f断面図(B)。
【図7】本発明の実施の形態の第2例を、衝撃荷重が加わる前の状態で示す断面図。
【図8】図7のg−g断面図(A)及びh−h断面図(B)。
【図9】衝撃荷重が加わった後の状態で示す、図7と同様の図。
【図10】図9のi−i断面図(A)及びj−j断面図(B)。
【図11】図9のk矢視図。
【図12】本発明の実施の形態の第3例を組み立てる前の状態で示す、シャフトの部分側面図(A)、及び、ヨークの部分断面図(B)。
【図13】衝撃荷重が加わる前の状態で示す断面図。
【図14】図13のm−m断面図(A)及びn−n断面図(B)。
【図15】衝撃荷重が加わった後の状態で示す、図13と同様の図。
【図16】図15のo−o断面図(A)及びp−p断面図(B)。
【図17】本発明の実施の形態の第4例を組み立てる前の状態で示す、シャフトの部分側面図(A)、及び、ヨークの部分断面図(B)。
【図18】組み立てた後、衝撃荷重が加わる前の状態で示す断面図。
【図19】図18のq−q断面図(A)及びr−r断面図(B)。
【図20】衝撃荷重が加わった後の状態で示す、図18と同様の図。
【図21】図20のs−s断面図(A)及びt−t断面図(B)。
【図22】本発明の実施の形態の第5例を、衝撃荷重が加わる前の状態で示す部分断面図。
【図23】本発明の実施の形態の第6例を、衝撃荷重が加わる前の状態で示す部分断面図。
【図24】従来から知られているステアリング装置の1例を示す部分切断側面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[実施の形態の第1例]
図1〜6は、請求項1〜3、7〜9に対応する、本発明の実施の形態の第1例を示している。本例は、自在継手を構成するヨーク10とシャフト11(ステアリングシャフト又は中間シャフト)との結合部に、本発明の構造を適用した例である。尚、図1〜4は、前記ヨーク10とシャフト11との間に回転方向や軸方向の相対的な衝撃荷重が作用する前の状態である、正常時の状態を、図5〜6は、この衝撃荷重が作用した後の状態である、異常時の状態を、それぞれ示している。又、前記ヨーク10を含む自在継手の構造及び作用に就いては、従来から周知であるから、図示並びに説明は、省略若しくは簡略にし、以下、本例の特徴部分を中心に説明する。
【0015】
第一トルク伝達部材である、前記ヨーク10の基部の径方向中心部には、結合孔12を軸方向に形成している。この結合孔12の内周面は、外径側係合部である、雌セレーション部13としている。又、この雌セレーション部13は、軸方向先半部(図1、3、5に於ける左半部)を、比較的小径の小径雌セレーション部14とし、軸方向基半部(図1、3、5に於ける右半部)を、比較的大径の大径雌セレーション部15としている。一方、第二トルク伝達部材である、前記シャフト11の先端部には、基端寄り部分に比べて外径が小さくなった、結合杆部16を設けている。この結合杆部16の外周面は、前記雌セレーション部13とセレーション係合可能な、内径側係合部である、雄セレーション部17としている。又、この雄セレーション部17は、軸方向先端部(図1、3、5に於ける左端部)を、比較的小径の小径雄セレーション部18とし、軸方向中間部乃至基端部(図1、3、5に於ける右端部)を、比較的大径の大径雄セレーション部19としている。又、このうちの大径雄セレーション部19は、前記小径雌セレーション部14に対し締り嵌めで、前記大径雌セレーション部15に対し隙間嵌で、それぞれセレーション係合可能である。又、前記小径雄セレーション部18は、前記小径雌セレーション部14に対し隙間嵌でセレーション係合可能である。
【0016】
本例の場合、図1〜4に示した正常時の状態、即ち、前記結合孔12の内側に前記結合杆部16を挿入すると共に、前記ヨーク10と前記シャフト11との軸方向に関する互いの位置関係を、正規の位置関係にした状態で、前記雌セレーション部13と前記雄セレーション部17とを、回転方向のがたつきを生じない状態で、トルクの伝達を可能に係合させている。この為に具体的には、図3及び図4の(A)に詳示する様に、前記小径雌セレーション部14と前記大径雄セレーション部19の先半部とを、締り嵌めでセレーション係合させている。又、この状態で、図3及び図4の(B)に詳示する様に、前記大径雌セレーション部15と前記大径雄セレーション部19の基半部とを、隙間嵌でセレーション係合させている。
【0017】
又、本例の場合には、前記正常時の状態、或いは、少なくとも前記小径雄セレーション部18の先端縁部分を前記結合孔12から突出させた状態で、この先端縁部分に外径側に突出するかしめ部20を、プレスかしめ加工により形成している。そして、前記結合孔12から前記結合杆部16が基端側に抜け出る方向に変位した場合に、前記かしめ部20と前記結合孔12の先端側の開口部の周囲部分に存在する段部21とが、軸方向に機械的に係合する事に基づいて、前記結合杆部16が前記結合孔12から基端側に抜け出る事を防止できる様にしている。本例の場合には、これらかしめ部20と段部21とが、特許請求の範囲に記載した抜け止め構造部に相当する。
【0018】
更に、本例の場合には、前記正常時の状態で、前記ヨーク10の基端面の内周部分と前記シャフト11の外周面の先端寄り部分とに溶接金属22を掛け渡す状態で、これらヨーク10とシャフト11とを溶接している。本例の場合には、据え切り操作{車両が停止した状態で行うステアリングホイール4(図24参照)の操作}時を含めて、平常運転時には、前記小径雌セレーション部14と前記大径雄セレーション部19とのセレーション係合部と、前記溶接金属22とを介して、前記ヨーク10と前記シャフト11との間でのトルク伝達を行う。溶接部である、前記溶接金属22の強度は、据え切り操作に作用するトルク(平常時最大伝達トルク)では破損せず、衝突事故や操舵輪の縁石乗り上げに伴って前記ヨーク10と前記シャフト11との間に作用する、回転方向や軸方向の相対的な衝撃荷重により破損する大きさとしている。
【0019】
上述の様に構成する本例のステアリング装置用トルク伝達装置を搭載した車両が衝突事故を起こしたり、或いは運転操作の誤りにより操舵輪を縁石に乗り上げたりする事で、前記ヨーク10と前記シャフト11との間に、前記溶接金属22の耐衝撃性を超える大きさの、回転方向や軸方向の相対的な衝撃荷重が作用すると、この溶接金属22が破損する。これと共に、前記小径雌セレーション部14と前記大径雄セレーション部19とのセレーション係合部に或る程度の塑性変形が生じて、このセレーション係合部の締め代が低下若しくは喪失する。この状態で車両の走行を続けると、前記ヨーク10と前記シャフト11との結合部に、走行時の操舵トルクが繰り返し加わる等によって、前記セレーション係合部に軸方向の滑りが生じる。これにより、図3→図5の順に示す様に、前記ヨーク10と前記シャフト11との軸方向に関する互いの位置関係が、前記正規の位置関係から、軸方向に関して所定量ずれた位置関係に変化する。この結果、図5及び図6の(A)に詳示する様に、前記小径雌セレーション部14と前記小径雄セレーション部18とが、隙間嵌でセレーション係合すると共に、図5及び図6の(B)に詳示する様に、前記大径雌セレーション部15と前記大径雄セレーション部19の先半部とが、隙間嵌でセレーション係合した状態になる。つまり、この図5〜6に示した異常時の状態では、前記雌セレーション部13と前記雄セレーション部17とが、回転方向のがたつきを生じる状態で、トルクの伝達を可能に係合した状態になる。尚、この状態で、前記結合孔12から前記結合杆部16が基端側に抜け出る事は、前記かしめ部20と前記段部21との軸方向に関する機械的な係合に基づいて防止される。
【0020】
上述の様に、前記雌セレーション部13と前記雄セレーション部17とのセレーション係合部で回転方向のがたつきが生じる状態になると、このがたつきの分だけ、前記ステアリングホイール4の遊びが増加すると共に、場合によっては、前記がたつきに基づいて生じる振動が前記ステアリングホイール4に伝わったり、このがたつきに基づいて生じる異音が車室内に響いたりする様になる。この様な状況の変化は、運転者が容易に感じ取れる為、運転者は、この様な状況の変化に基づいて、前記衝撃荷重が加わった事実を容易に認識できる。この為、運転者に、修理を促す事ができて、損傷した車両の運行を継続する事に伴う危険を回避できる。
【0021】
[実施の形態の第2例]
図7〜11は、請求項1、2、4、7〜9に対応する、本発明の実施の形態の第2例を示している。本例の場合、ヨーク10aの基端部に設けた結合孔12aの断面形状と、シャフト11aの先端部に設けた結合杆部16aの断面形状とを、それぞれ略小判形としている。即ち、外径側係合部である、前記結合孔12aの内周面は、互いに平行な1対の平面部23a(23b)、23a(23b)と、これら両平面部23a(23b)、23a(23b)の端部同士を連結する、それぞれが前記結合孔12aの中心軸を中心とする部分円筒状の凹曲面部24、24とから成る。又、この様な結合孔12aは、軸方向先半部(図7、9に於ける左半部)を、前記両平面部23a、23aの間隔が比較的狭い幅狭孔部25とし、軸方向基半部(図7、9に於ける右半部)を、前記両平面部23b、23bの間隔が比較的広い幅広孔部26としている。一方、内径側係合部である、前記結合杆部16aの外周面は、互いに平行な1対の平面部27a(27b)、27a(27b)と、これら両平面部27a(27b)、27a(27b)の端部同士を連結する、それぞれが前記結合杆部16aの中心軸を中心とする部分円筒状の凸曲面部28、28とから成る。この様な結合杆部16aは、軸方向先端部(図7、9に於ける左端部)を、前記両平面部27a、27aの間隔が比較的狭い幅狭杆部29とし、軸方向中間部乃至基端部(図7、9に於ける右端部)を、前記両平面部27b、27bの間隔が比較的広い幅広杆部30としている。
【0022】
又、本例の場合、前記結合杆部16aの両凸曲面部28、28は、前記結合孔12aの両凹曲面部24、24に対して、隙間嵌で内嵌可能である。又、前記幅広杆部30は、前記幅狭孔部25に対して、互いの両平面部27b、23a同士の間に締め代を持たせた状態で内嵌可能である。又、前記幅広杆部30は、前記幅広孔部26に対して、互いの両平面部27b、23b同士の間に比較的大きい隙間を介在させた状態で内嵌可能である。又、前記幅狭杆部29は、前記幅狭孔部25に対して、互いの両平面部27a、23a同士の間に比較的大きい隙間を介在させた状態で内嵌可能である。
【0023】
本例の場合、図7〜8に示した正常時の状態、即ち、前記結合孔12aの内側に前記結合杆部16aを挿入すると共に、前記ヨーク10aと前記シャフト11aとの軸方向に関する互いの位置関係を、正規の位置関係にした状態で、前記結合孔12aの内周面と前記結合杆部16aの外周面とを、回転方向のがたつきを生じない状態で、トルクの伝達を可能に係合(非円形嵌合)させている。この為に具体的には、図7及び図8の(A)に示す様に、前記幅狭孔部25に前記幅広杆部30を、互いの両平面部23a、27b同士の間に締め代を持たせた状態で内嵌している。又、この状態で、図7及び図8の(B)に示す様に、前記幅広孔部26に前記幅広杆部30を、互いの両平面部23b、27b同士の間に比較的大きい隙間を介在させた状態で内嵌している。
【0024】
又、本例の場合も、前記正常時の状態、或いは、少なくとも前記幅狭杆部29の先端縁部分を前記結合孔12aから突出させた状態で、この幅狭杆部29の両凸曲面部28、28の先端縁部分に、抜け止めの為のかしめ部20a、20aを形成している。更に、前記正常時の状態で、前記ヨーク10aと前記シャフト11aとを溶接(溶接金属22により結合)している。
【0025】
上述の様に構成する本例のステアリング装置用トルク伝達装置の場合も、図7〜8に示した正常時の状態で、車両の衝突事故や操舵輪の縁石乗り上げに伴って、前記ヨーク10aと前記シャフト11aとの間に、前記溶接金属22の耐衝撃性を超える大きさの、回転方向や軸方向の相対的な衝撃荷重が作用すると、この溶接金属22が破損する。これと共に、前記幅狭孔部25と前記幅広杆部30との嵌合部に或る程度の塑性変形が生じて、この嵌合部の締め代が低下若しくは喪失する。この状態で車両の走行を続けると、前記ヨーク10aと前記シャフト11aとの結合部に、走行時の操舵トルクが繰り返し加わる等によって、前記嵌合部に軸方向の滑りが生じる。これにより、図7→図9の順に示す様に、前記ヨーク10aと前記シャフト11aとが、軸方向に関して所定量相対変位する。この結果、図9及び図10の(A)に示す様に、前記幅狭孔部25と前記幅狭杆部29とが、互いの両平面部23a、27a同士の間に比較的大きい隙間を介在させた状態で嵌合した状態になる。これと共に、図9及び図10の(B)に示す様に、前記幅広孔部26と前記幅広杆部30とが、互いの両平面部23b、27b同士の間に比較的大きい隙間を介在させた状態で嵌合した状態になる。この様な異常時の状態では、図10の(A)(B)に鎖線で示す様に、前記各隙間の存在に基づいて、前記結合孔12aの内側で前記結合杆部16aが、若干量、回転可能になる。つまり、この状態では、これら結合孔12aの内周面と結合杆部16aの外周面とが、回転方向のがたつきを生じる状態で、トルクの伝達を可能に係合(非円形嵌合)した状態になる。尚、この状態で、前記結合孔12aから前記結合杆部16aが基端側に抜け出る事は、図11に示す様に、前記かしめ部20a、20aと前記結合孔12aの先端側の開口部の周囲部分に存在する段部21とが、軸方向に機械的に係合する事に基づいて防止される。
この様な本例のステアリング装置用トルク伝達装置の場合も、運転者は、上述の様ながたつきの存在に基づいて、前記衝撃荷重が加わった事実を容易に認識できる。
【0026】
[実施の形態の第3例]
図12〜16は、請求項1、2、5、7〜9に対応する、本発明の実施の形態の第3例を示している。本例の場合には、ヨーク10bの基端部に設けた結合孔12bと、シャフト11bの先端部に設けた結合杆部16bとを、キー係合させる構成を採用している。即ち、本例の場合、外径側係合部である、前記結合孔12bの内周面は、軸方向に関して径寸法が変化しない外径側円筒面部31と、この外径側円筒面部31の周方向一部分から内径側に突出する状態で設けられた、軸方向に長いキー32とから成る。このキー32は、軸方向先半部(図12、13、15に於ける左半部)を、周方向幅が比較的広い幅広キー部33とし、軸方向基半部(図12、13、15に於ける右半部)を、周方向幅が比較的狭い幅狭キー部34としている。一方、内径側係合部である、前記結合杆部16bの外周面は、軸方向に関して径寸法が変化しない内径側円筒面部35と、この内径側円筒面部35の周方向一部分に設けられた、軸方向に長いキー溝36とから成る。このキー溝36は、軸方向先端部(図12、13、15に於ける左半部)を、周方向幅が比較的広い幅広溝部37とし、軸方向中間部乃至基端部(図12、13、15に於ける右端部)を、周方向幅が比較的狭い幅狭溝部38としている。
【0027】
又、本例の場合、前記内径側円筒面部35は、前記外径側円筒面部31に対して、隙間嵌で内嵌可能である。又、前記幅広キー部33は、前記幅狭溝部38に対して周方向の締め代を持たせた状態で、前記幅広溝部37に対して周方向の隙間を介在させた状態で、それぞれキー係合可能である。又、前記幅狭キー部34は、前記幅狭溝部38に対して周方向の隙間を介在させた状態でキー係合可能である。
【0028】
本例の場合、図13〜14に示した正常時の状態、即ち、前記結合孔12bの内側に前記結合杆部16bを挿入すると共に、前記ヨーク10bと前記シャフト11bとの軸方向に関する互いの位置関係を、正規の位置関係にした状態で、前記結合孔12bの内周面と前記結合杆部16bの外周面とを、回転方向のがたつきを生じない状態で、トルクの伝達を可能に係合させている。この為に具体的には、図13及び図14の(A)に示す様に、前記幅狭溝部38の先半部に前記幅広キー部33を、周方向の締め代を持たせた状態で係合させている。又、この状態で、図13及び図14の(B)に示す様に、前記幅狭溝部38に前記幅狭キー部34の基半部を、周方向の隙間を介在させた状態で係合させている。
【0029】
又、本例の場合も、前記正常時の状態、或いは、少なくとも前記結合杆部16bの先端縁部分を前記結合孔12bから突出させた状態で、この結合杆部16bの外周面の先端縁部分のうち、周方向に関して前記キー溝36から外れた部分に、抜け止めの為のかしめ部20bを形成している。更に、前記正常時の状態で、前記ヨーク10bと前記シャフト11bとを溶接(溶接金属22により結合)している。
【0030】
上述の様に構成する本例のステアリング装置用トルク伝達装置の場合も、図13〜14に示した正常時の状態で、車両の衝突事故や操舵輪の縁石乗り上げに伴って、前記ヨーク10bと前記シャフト11bとの間に、前記溶接金属22の耐衝撃性を超える大きさの、回転方向や軸方向の相対的な衝撃荷重が作用すると、この溶接金属22が破損する。これと共に、前記幅狭溝部38の先半部と前記幅広キー部33との係合部に或る程度の塑性変形が生じて、この係合部の締め代が低下若しくは喪失する。この状態で車両の走行を続けると、前記ヨーク10bと前記シャフト11bとの結合部に、走行時の操舵トルクが繰り返し加わる等によって、前記係合部に軸方向の滑りが生じる。これにより、図13→図15の順に示す様に、前記ヨーク10bと前記シャフト11bとが、軸方向に関して所定量相対変位する。この結果、図15及び図16の(A)に示す様に、前記幅広溝部37と前記幅広キー部33とが、周方向の隙間を介在させた状態で係合した状態となる。これと共に、図15及び図16の(B)に示す様に、前記幅狭溝部38の先半部と前記幅狭キー部34とが、周方向の隙間を介在させた状態で係合した状態となる。つまり、この様な異常時の状態では、前記結合孔12bの内周面と前記結合杆部16bの外周面とが、回転方向のがたつきを生じる状態で、トルクの伝達を可能に係合した状態となる。尚、この状態で、前記結合孔12bから前記結合杆部16bが基端側に抜け出る事は、前記かしめ部20と前記結合孔12bの先端側の開口部の周囲部分に存在する段部21とが、軸方向に機械的に係合する事に基づいて防止される。
この様な本例のステアリング装置用トルク伝達装置の場合も、運転者は、上述の様ながたつきの存在に基づいて、前記衝撃荷重が加わった事実を容易に認識できる。
【0031】
[実施の形態の第4例]
図17〜21は、請求項1、2、6〜9に対応する、本発明の実施の形態の第4例を示している。本例の場合も、ヨーク10cの基端部に設けた結合孔12cと、シャフト11cの先端部に設けた結合杆部16cとを、キー係合させる構成を採用している。本例の場合、外径側係合部である、前記結合孔12cの内周面の周方向一部分に軸方向に長いキー32aを、内径側に突出する状態で設けている。このキー32aの周方向幅は、軸方向に関して変化していない。又、前記結合孔12cの内周面のうちで、このキー32aから外れた部分は、段付円筒状である。即ち、この結合孔12cの内周面のうちで、このキー32aから外れた部分は、軸方向先半部(図17、18、20に於ける左半部)を、径寸法が比較的小さい外径側小径円筒部39とし、軸方向中間部乃至基半部(図17、18、20に於ける右半部)を、径寸法が比較的大きい外径側大径円筒部40としている。一方、内径側係合部である、前記結合杆部16cの外周面は、周方向一部分に軸方向に長いキー溝36aを設けている。このキー溝36aの周方向幅も、軸方向に関して変化していない。又、前記結合杆部16cの外周面のうちで、このキー溝36aから外れた部分は、段付円筒状である。即ち、この結合杆部16cの外周面のうちで、このキー溝36aから外れた部分は、軸方向先端部(図17、18、20に於ける左端部)を、比較的径寸法の小さい内径側小径円筒部41とし、軸方向中間部乃至基端部(図17、18、20に於ける右端部)を、比較的径寸法が大きい内径側大径円筒部42としている。
【0032】
又、本例の場合、前記内径側大径円筒部42は、前記外径側小径円筒部39に対して締り嵌めで、前記外径側大径円筒部40に対して隙間嵌で、それぞれ内嵌可能である。又、前記内径側小径円筒部41は、前記外径側小径円筒部39に対して隙間嵌で内嵌可能である。又、前記キー32aは、前記キー溝36aに対して周方向の隙間を介在させた状態でキー係合可能である。
【0033】
本例の場合、図18〜19に示した正常時の状態、即ち、前記結合孔12cの内側に前記結合杆部16cを挿入すると共に、前記ヨーク10cと前記シャフト11cとの軸方向に関する互いの位置関係を、正規の位置関係にした状態で、前記結合孔12cの内周面と前記結合杆部16cの外周面とを、回転方向のがたつきを生じない状態で、トルクの伝達を可能に係合させている。この為に具体的には、図18及び図19の(A)に示す様に、前記キー溝36aに前記キー32aを、周方向の隙間を介在させた状態で係合させると共に、前記外径側小径円筒部39に対して前記内径側大径円筒部42の先半部を、締り嵌めで内嵌している。更には、前記ヨーク10cと前記シャフト11cとを溶接(溶接金属22により結合)している。本例の場合には、据え切り操作時を含めて、平常運転時には、前記外径側小径円筒部39と前記内径側大径円筒部42との嵌合部(摩擦係合部)と前記溶接金属22とを介して(主に、この溶接金属22を介して)、前記ヨーク10cと前記シャフト11cとの間でのトルク伝達を行う。
【0034】
又、本例の場合も、前記正常時の状態、或いは、少なくとも前記結合杆部16cの先端縁部分を前記結合孔12cから突出させた状態で、この結合杆部16cの外周面の先端縁部分のうち、周方向に関して前記キー溝36aから外れた部分に、抜け止めの為のかしめ部20cを形成している。
【0035】
上述の様に構成する本例のステアリング装置用トルク伝達装置の場合も、図18〜19に示した正常時の状態で、車両の衝突事故や操舵輪の縁石乗り上げに伴って、前記ヨーク10cと前記シャフト11cとの間に、前記溶接金属22の耐衝撃性を超える大きさの、回転方向や軸方向の相対的な衝撃荷重が作用すると、この溶接金属22が破損する。これと共に、前記外径側小径円筒部39と前記内径側大径円筒部42の先半部との嵌合部に或る程度の塑性変形が生じて、この嵌合部の締め代が低下若しくは喪失する。この状態で車両の走行を続けると、前記ヨーク10cと前記シャフト11cとの結合部に、走行時の操舵トルクが繰り返し加わる等によって、前記係合部に軸方向の滑りが生じる。これにより、図18→図20の順に示す様に、前記ヨーク10cと前記シャフト11cとが、軸方向に関して所定量相対変位する。この結果、図20及び図21の(A)に示す様に、前記外径側小径円筒部39と前記内径側小径円筒部41とが隙間嵌で嵌合した状態になると共に、図20及び図21の(B)に示す様に、前記外径側大径円筒部40と前記内径側大径円筒部42の先半部とが隙間嵌で嵌合した状態になる。一方、この状態でも、前記キー溝36aと前記キー32aとが、円周方向の隙間を介して係合した状態は維持される。つまり、この異常時の状態では、前記結合孔12cの内周面と前記結合杆部16cの外周面とが、回転方向のがたつきを生じる状態で、トルクの伝達を可能に係合した状態となる。尚、この状態で、前記結合孔12cから前記結合杆部16cが基端側に抜け出る事は、前記かしめ部20cと前記結合孔12cの先端側の開口部の周囲部分に存在する段部21とが、軸方向に機械的に係合する事に基づいて防止される。
この様な本例のステアリング装置用トルク伝達装置の場合も、運転者は、上述の様ながたつきの存在に基づいて、前記衝撃荷重が加わった事実を容易に認識できる。
【0036】
[実施の形態の第5例]
図22は、請求項1〜3、7〜9に対応する、本発明の実施の形態の第5例を示している。本例の場合には、シャフト11dを、円管状としている。これと共に、このシャフト11dの先端部に設けた結合杆部16dの先端縁部分を、ローリングかしめ加工により外径側に曲げ起こす事で、この曲げ起こした部分を、抜け止めの為のかしめ部20dとしている。その他の部分の構造及び作用は、前述の図1〜6に示した実施の形態の第1例の場合と同様である。この為、同等部分には同一符号を付して、重複する図示並びに説明は省略する。
【0037】
[実施の形態の第6例]
図23は、請求項1〜3、7〜9に対応する、本発明の実施の形態の第6例を示している。本例の場合には、ヨーク10dの基端部に設けた結合孔12dの内側に、シャフト11eの先端部に設けた結合杆部16eを挿入するのに先立って、この結合杆部16eの外周面の先端部に、第二大径雄セレーション部43を設けている。この第二大径雄セレーション部43のピッチ円直径は、前記結合杆部16eの外周面の基端部に設けた大径雄セレーション部19のピッチ円直径よりも、少しだけ大きくしている。
【0038】
本例の場合、前記結合孔12dの内側に前記結合杆部16eを挿入する際には、前記シャフト11eに大きな圧入荷重を加える事によって、前記第二大径雄セレーション部43を、小径雌セレーション部14の内側に圧入し、更にこの小径雌セレーション部14の内側を通過させる。そして、図示の様に、前記第二大径雄セレーション部43を大径雌セレーション部15に対して隙間嵌でセレーション係合させると共に、前記大径雄セレーション部19を前記小径雌セレーション部14に対して締り嵌めでセレーション係合させる。
【0039】
本例の場合、この状態で、前記ヨーク10dと前記シャフト11eとの間に、回転方向や軸方向の相対的な衝撃荷重が作用した後、車両の走行を続ける事によって、前記結合孔12dの内側から前記結合杆部16eが基端側に抜け出る方向に変位した場合には、前記第二大径雄セレーション部43の基端縁と前記小径雌セレーション部14の先端縁とが、軸方向に関して機械的に係合する。これにより、それ以上、前記抜け出る方向に変位する事を阻止される。本例の場合には、これら第二大径雄セレーション部43の基端縁と小径雌セレーション部14の先端縁とが、抜け止め構造部に相当する。その他の部分の構造及び作用は、前述の図1〜6に示した実施の形態の第1例の場合と同様である。この為、同等部分には同一符号を付して、重複する図示並びに説明は省略する。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、シャフトと自在継手のヨークとの結合部に限らず、ステアリング装置を構成して、ステアリングホイールに加えられたトルクをステアリングギヤユニットの入力軸に伝達する部分であれば、何れの部分でも実施できる。例えば、ステアリングシャフト或いは中間シャフトを構成するインナシャフトを軸方向に2分割し、これら両分割シャフトの端部同士の結合部に、本発明の構造を適用する事もできる。
又、本発明を実施する場合、第一、第二両トルク伝達部材同士の溶接部の強度は、任意の大きさに設定できるが、この溶接部の強度を大きくする程、衝撃荷重に対する耐久性を確保する事ができ、衝撃荷重を受けた後の安全走行を継続し易くできる。この場合にも、想定を上回る大きさの衝撃荷重が加わる事により、前記溶接部が破損した場合には、本発明による衝撃荷重の検知機能が働く(回転方向のがたつきを介在させて、トルクの伝達を可能な結合状態に移行する)。
又、本発明を実施する場合に、第一、第二両トルク伝達部材同士の溶接を省略する場合には、据え切り操作時を含めて、平常運転時に於ける、第一、第二両トルク伝達部材同士の間でのトルク伝達、並びに、これら第一、第二両トルク伝達部材同士の軸方向に関するずれ止めを、外径側係合部と内径側係合部との係合に基づいて行える様に、各部の形状及び寸法等を適切に規制する。
又、上述した各実施の形態では、第一、第二両トルク伝達部材同士の結合部の、正常状態から異常状態への移行方向を、これら第一、第二両トルク伝達部材同士の結合部の伸長方向とした。但し、本発明を実施する場合には、当該移行方向を、この結合部の収縮方向(反伸長方向)とする事もできる。この場合には、例えば、前記各実施の形態の構造で、外径側係合部及び内径側係合部の構造を軸方向に関して反転させる。更には、当該移行方向を両方向に設定した構造、即ち、前記結合部が伸長方向に移行した場合に異常を知らせる構造と、同じく収縮方向に移行した場合に異常を知らせる構造とを、両方備えた構造を採用する事もできる。
【符号の説明】
【0041】
1 車体
2 ステアリングコラム
3 ステアリングシャフト
4 ステアリングホイール
5a、5b 自在継手
6 中間シャフト
7 ステアリングギヤユニット
8 入力軸
9 タイロッド
10、10a〜10d ヨーク
11、11a〜11e シャフト
12、12a〜12d 結合孔
13 雌セレーション部
14 小径雌セレーション部
15 大径雌セレーション部
16、16a〜16e 結合杆部
17 雄セレーション部
18 小径雄セレーション部
19 大径雄セレーション部
20、20a〜20d かしめ部
21 段部
22 溶接金属
23a、23b 平面部
24 凹曲面部
25 幅狭孔部
26 幅広孔部
27a、27b 平面部
28 凸曲面部
29 幅狭杆部
30 幅広杆部
31 外径側円筒面部
32、32a キー
33 幅広キー部
34 幅狭キー部
35 内径側円筒面部
36、36a キー溝
37 幅広溝部
38 幅狭溝部
39 外径側小径円筒部
40 外径側大径円筒部
41 内径側小径円筒部
42 内径側大径円筒部
43 第二大径雄セレーション部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに同心に配置されてトルクの伝達方向に関して互いに直列に接続された、第一、第二両トルク伝達部材を備え、ステアリングホイールの動きをステアリングギヤユニットの入力軸に伝達するトルク伝達機構の途中に設けられて、前記ステアリングホイールとこの入力軸との間でのトルク伝達に供されるステアリング装置用トルク伝達装置に於いて、前記第一、第二両トルク伝達部材は、回転方向のがたつきを生じる事なくトルクの伝達を可能に結合されており、且つ、軸方向に関し所定量相対変位する事に基づいて、回転方向のがたつきを介在させてトルクの伝達を可能に結合された状態に変化する事を特徴とするステアリング装置用トルク伝達装置。
【請求項2】
前記第一トルク伝達部材は、結合孔と、この結合孔の内周面に設けられた外径側係合部とを有するものであり、
前記第二トルク伝達部材は、前記結合孔の内側に挿入した結合杆部と、この結合杆部の外周面に設けられた、前記外径側係合部に対してトルクの伝達を可能に係合させた内径側係合部とを有するものであり、
前記第一、第二両トルク伝達部材が、回転方向のがたつきを生じる事なくトルクの伝達を可能に結合された状態とは、これら第一、第二両トルク伝達部材同士の軸方向に関する互いの位置関係が、正規の位置関係にある状態で、前記外径側係合部と前記内径側係合部とが回転方向のがたつきを生じる事なくトルクの伝達を可能に係合した状態であり、前記第一、第二両トルク伝達部材が、回転方向のがたつきを介在させてトルクの伝達を可能に結合された状態とは、これら第一、第二両トルク伝達部材同士の軸方向に関する互いの位置関係が、前記正規の位置関係から前記作用方向に所定量ずれた位置関係にある状態で、前記外径側係合部と前記内径側係合部とが回転方向のがたつきを介在させてトルクの伝達を可能に係合した状態であり、
前記第一、第二両トルク伝達部材同士の間に、前記結合孔から前記結合杆部が抜け出る事を防止する為の抜け止め構造部が設けられている、
請求項1に記載したステアリング装置用トルク伝達装置。
【請求項3】
トルクの伝達を可能にする前記外径側係合部と前記内径側係合部との係合態様がセレーション係合である、請求項2に記載したステアリング装置用トルク伝達装置。
【請求項4】
トルクの伝達を可能にする前記外径側係合部と前記内径側係合部との係合態様が非円形嵌合である、請求項2に記載したステアリング装置用トルク伝達装置。
【請求項5】
トルクの伝達を可能にする前記外径側係合部と前記内径側係合部との係合態様がキー係合である、請求項2に記載したステアリング装置用トルク伝達装置。
【請求項6】
回転方向のがたつきを生じる事なくトルクの伝達を可能にする前記外径側係合部と前記内径側係合部との係合態様が摩擦係合であり、同じく回転方向のがたつきを介在させてトルクの伝達を可能にする係合態様が、セレーション係合と非円形嵌合とキー係合とのうちの何れかである、請求項2に記載したステアリング装置用トルク伝達装置。
【請求項7】
前記抜け止め構造部は、前記第一、第二両トルク伝達部材の一部分同士が軸方向に機械的に係合する事に基づいて、前記結合孔から前記結合杆部が抜け出る事を防止するものである、請求項2〜6のうちの何れか1項に記載したステアリング装置用トルク伝達装置。
【請求項8】
前記第一トルク伝達部材と前記第二トルク伝達部材とのうちの一方のトルク伝達部材が自在継手のヨークであって、前記結合孔がこのヨークの基端部に形成されており、同じく他方のトルク伝達部材がシャフトであって、前記結合杆部がこのシャフトの端部に設けられている、請求項2〜7のうちの何れか1項に記載したステアリング装置用トルク伝達装置。
【請求項9】
前記第一、第二両トルク伝達部材が、回転方向のがたつきを生じる事なくトルクの伝達を可能に結合されている状態で互いに溶接されている、請求項1〜8のうちの何れか1項に記載したステアリング装置用トルク伝達装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2013−32795(P2013−32795A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−168173(P2011−168173)
【出願日】平成23年8月1日(2011.8.1)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】