ステアリング装置
【課題】油圧アクチュエータを電動アクチュエータに置き換えることで電動化が図られたステアリング装置を提供する。
【解決手段】ステアリング装置は、転舵軸を中心として旋回自在に設けられた左ナックルアーム、右ナックルアームと、左ナックルアームおよび右ナックルアームのそれぞれに対応させて回転自在に設けられて、回転に応じて左ナックルアームおよび右ナックルアームを旋回させる左上円盤12L、右上円盤12R、左下円盤14L、右下円盤14Rと、円盤同士を繋いで設けられて、円盤同士を同一方向に回転させる上側駆動力伝達ベルト13、下側駆動力伝達ベルト15と、転舵モータSMとを有し、円盤および駆動力伝達ベルトは、転舵角が大きくなるに従って左ナックルアームと右ナックルアームとの間の旋回角度差が大きくなるように旋回させて、旋回外側の走行輪よりも旋回内側の走行輪を大きな転舵角で転舵させる。
【解決手段】ステアリング装置は、転舵軸を中心として旋回自在に設けられた左ナックルアーム、右ナックルアームと、左ナックルアームおよび右ナックルアームのそれぞれに対応させて回転自在に設けられて、回転に応じて左ナックルアームおよび右ナックルアームを旋回させる左上円盤12L、右上円盤12R、左下円盤14L、右下円盤14Rと、円盤同士を繋いで設けられて、円盤同士を同一方向に回転させる上側駆動力伝達ベルト13、下側駆動力伝達ベルト15と、転舵モータSMとを有し、円盤および駆動力伝達ベルトは、転舵角が大きくなるに従って左ナックルアームと右ナックルアームとの間の旋回角度差が大きくなるように旋回させて、旋回外側の走行輪よりも旋回内側の走行輪を大きな転舵角で転舵させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、左右一対の走行輪を前後に有した車輪式の走行車両において、前後いずれかの左右一対の走行輪を転舵させるためのステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記構成の走行車両のうち、工場内における運搬作業や建物の内装工事等に用いられる自走式の走行車両として、従来種々の形態のものが知られている。そのうちの一例として、前後左右に車輪を備えた比較的小型の車体と、この車体上に昇降自在に設けられた昇降装置(例えばシザースリンク機構、伸縮ポストまたはブーム等)と、この昇降装置の先端部に取り付けられた作業台とを備えて構成される高所作業車が存在する。この高所作業車では、作業台に搭乗した作業者が作業台上から車体の走行操作および作業台の昇降操作を行うことで、所望の高所に作業台を移動させて作業を行うことができるようになっている(例えば、特許文献1を参照)。特に上記のような屋内型の高所作業車は、エンジンからの排気ガスや騒音発生が嫌われるため、車体に内蔵されたバッテリを電源として電動式の走行モータを駆動させて駆動輪を回転駆動させることで、走行操作に応じた走行が可能に構成されている。
【0003】
このような屋内型の高所作業車は通常、アッカーマンリンクと称されるリンク機構を用いることで、操舵に応じて転舵輪を転舵させるように構成されている。一般的にアッカーマンリンクは、転舵角が大きくなるに従って転舵輪から大きな反力が作用するのであるが、比較的大きな力を素早く作用させることが可能な油圧シリンダによりアッカーマンリンクを作動させることで、操舵に応じた転舵をスムーズに行わせることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−159770号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで最近において、屋内型の高所作業車のさらなる電動化開発が進んでおり、その一環として電動式のアクチュエータを用いて転舵を行うことが考えられている。例えば上記油圧シリンダに代えて伸縮可能に構成された電動シリンダを用いることで、さらなる電動化を図る方法が考えられるが、一般的に電動シリンダは油圧シリンダと比較して十分な作動速度を確保しにくいため、この方法によるさらなる電動化は困難である。一方、上記油圧シリンダに代えて電動モータを用いてこの電動モータの回転駆動力によりアッカーマンリンクを作動させることで、さらなる電動化を図る方法も考えられるが、この方法の場合には、特に転舵角が大きい領域(転舵輪から大きな反力が作用する領域)において操舵に応じてスムーズに転舵させることが難しい。このように、転舵させるための油圧アクチュエータを電動アクチュエータに置き換えることで、さらなる電動化を図ることが難しいという課題があった。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、転舵させるための油圧アクチュエータを電動アクチュエータに置き換えることで電動化が図られたステアリング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的達成のため、本発明に係るステアリング装置は、左右一対の走行輪(例えば、実施形態における左前輪11a、右前輪11b、左後輪11c、右後輪11d)を前後に有した車輪式の走行車両(例えば、実施形態における高所作業車1)において、前後いずれかの左右一対の走行輪を転舵させるステアリング装置であって、前記左右一対の走行輪を回転自在に支持するとともに、前記走行車両の左右に当該走行輪の転舵軸を中心として旋回自在に設けられた左右一対のナックル部材(例えば、実施形態における左ナックルアーム16L、右ナックルアーム16R)と、前記ナックル部材のそれぞれに対応させて前記走行車両に回転自在に設けられて、回転に応じて前記ナックル部材を旋回させる左右一対の回転体と、長尺状に形成されて前記回転体同士を繋いで設けられて、前記回転体同士を同一方向に回転させるように回転駆動力を伝達する駆動力伝達部材と、前記左右一対の回転体のうちの一方の回転体を回転駆動する転舵アクチュエータ(例えば、実施形態における転舵モータSM)とを有し、前記一方の回転体を前記転舵アクチュエータにより回転駆動して前記駆動力伝達部材を介して他方の回転体を回転駆動させるように構成されており、前記回転体および前記駆動力伝達部材は、前記左右一対の走行輪の転舵角が大きくなるに従って前記ナックル部材間の旋回角度差が大きくなるように前記ナックル部材を旋回させて、前記左右一対の走行輪のうち旋回外側の走行輪よりも旋回内側の走行輪を大きな転舵角で転舵させるように構成されたことを特徴とする。
【0008】
なお、前記左右一対の回転体のそれぞれが、円盤状に形成されて前記ナックル部材を右旋回させるための右旋回用回転体(例えば、実施形態における左上円盤12L、右上円盤12R)と、円盤状に形成されて前記ナックル部材を左旋回させるための左旋回用回転体(例えば、実施形態における左下円盤14L、右下円盤14R)とから構成され、前記左右一対の回転体のうちの少なくともいずれかが、偏芯した状態で一体的に回転駆動されるように構成され、前記駆動力伝達部材が、前記右旋回用回転体同士を繋ぐ右旋回用駆動力伝達部材(例えば、実施形態における上側駆動力伝達ベルト13)と、前記左旋回用回転体同士を繋ぐ左旋回用駆動力伝達部材(例えば、実施形態における下側駆動力伝達ベルト15)とから構成されており、前記転舵アクチュエータにより前記一方の回転体を右旋回に対応する方向に回転駆動させたときには、前記他方の回転体を構成する前記右旋回用回転体から繰り出された前記右旋回用駆動力伝達部材を、張持させた状態で前記一方の回転体を構成する前記右旋回用回転体に巻き取らせることで、前記左右一対の走行輪のうち左側の走行輪よりも右側の走行輪を大きな転舵角で転舵させ、前記転舵アクチュエータにより前記一方の回転体を左旋回に対応する方向に回転駆動させたときには、前記他方の回転体を構成する前記左旋回用回転体から繰り出された前記左旋回用駆動力伝達部材を、張持させた状態で前記一方の回転体を構成する前記左旋回用回転体に巻き取らせることで、前記右側の走行輪よりも前記左側の走行輪を大きな転舵角で転舵させるように構成されたことが好ましい。
【0009】
本発明に係るステアリング装置は、左右一対の走行輪を前後に有した車輪式の走行車両において、前後いずれかの左右一対の走行輪を転舵させるステアリング装置であって、前記左右一対の走行輪を回転自在に支持するとともに、前記走行車両の左右に当該走行輪の転舵軸を中心として旋回自在に設けられた左右一対のナックル部材と、前記ナックル部材のそれぞれに対応させて前記走行車両に回転自在に設けられて、回転に応じて前記ナックル部材を旋回させる左右一対の回転体と、長尺状に形成されて前記回転体同士を繋いで設けられて、前記回転体同士を同一方向に回転させるように回転駆動力を伝達する駆動力伝達部材と、前記左右一対の回転体のうちの一方の回転体を回転駆動する転舵アクチュエータとを有し、前記一方の回転体を前記転舵アクチュエータにより回転駆動して前記駆動力伝達部材を介して他方の回転体を回転駆動させるように構成されており、前記左右一対の回転体のそれぞれが、擬似円盤状に形成されて前記ナックル部材を右旋回させるための右旋回用回転体と、擬似円盤状に形成されて前記ナックル部材を左旋回させるための左旋回用回転体とから構成されるとともに、前記右旋回用回転体と前記左旋回用回転体とが一体的に回転駆動されるように構成され、前記駆動力伝達部材が、前記右旋回用回転体同士を繋ぐ右旋回用駆動力伝達部材と、前記左旋回用回転体同士を繋ぐ左旋回用駆動力伝達部材とから構成されており、前記右旋回用回転体および前記左旋回用回転体は、前記右旋回用回転体間および前記左旋回用回転体間において前記右旋回用駆動力伝達部材および前記左旋回用駆動力伝達部材を張持させた状態で、前記左右一対の走行輪の転舵角が大きくなるに従って前記ナックル部材間の旋回角度差が大きくなるように前記ナックル部材を旋回させて、前記左右一対の走行輪のうち旋回外側の走行輪よりも旋回内側の走行輪を大きな転舵角で転舵させる形状を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るステアリング装置は、回転体および駆動力伝達部材が、転舵角が大きくなるに従ってナックル部材間の旋回角度差が大きくなるように旋回させて、旋回外側の走行輪よりも旋回内側の走行輪を大きな転舵角で転舵させるように構成されている。この構成により、転舵アクチュエータとして例えば電動モータを用いた場合であっても、十分な作動速度を確保しつつ、転舵輪から比較的大きな反力が作用する転舵角が大きい領域においてもスムーズに転舵させることができる。よって、従来構成と同等の転舵を行わせつつ、転舵させるための油圧アクチュエータを電動アクチュエータに置き換えることで、ステアリング装置の電動化を図ることが可能になる。
【0011】
なお、左右一対の回転体のそれぞれが、円盤状に形成されてナックル部材を右旋回させるための右旋回用回転体と、円盤状に形成されてナックル部材を左旋回させるための左旋回用回転体とから構成され、駆動力伝達部材が、右旋回用回転体同士を繋ぐ右旋回用駆動力伝達部材と、左旋回用回転体同士を繋ぐ左旋回用駆動力伝達部材とから構成されたことが好ましい。このように構成した場合、円盤同士を右旋回用駆動力伝達部材および左旋回用駆動力伝達部材を用いて繋ぐという簡易且つ安価な構成でありながら、アッカーマンリンクを油圧アクチュエータで駆動させる従来構成のステアリング装置とほぼ同様に転舵を行わせることが可能になる。
【0012】
本発明に係るステアリング装置は、右旋回用回転体および左旋回用回転体が、右旋回用駆動力伝達部材および左旋回用駆動力伝達部材を張持させた状態で、走行輪の転舵角が大きくなるに従ってナックル部材間の旋回角度差が大きくなるように旋回させて、走行輪のうち旋回外側の走行輪よりも旋回内側の走行輪を大きな転舵角で転舵させる形状を有している。この構成により、転舵アクチュエータとして例えば電動モータを用いた場合であっても、十分な作動速度を確保しつつ、転舵輪から比較的大きな反力が作用する転舵角が大きい領域においてもスムーズに転舵させることができる。このため、従来構成と同等の転舵を行わせつつ、転舵させるための油圧アクチュエータを電動アクチュエータに置き換えることで、ステアリング装置の電動化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係るステアリング装置の一部(回転体ユニット)を示す図であって、(a)は平面図を、(b)は側面図をそれぞれ示す。
【図2】本発明を適用した一例としての高所作業車を示す斜視図である。
【図3】上記ステアリング装置の概要構成を示す平面図である。
【図4】上記ステアリング装置の構成を示す側面図である。
【図5】内輪舵角と外輪舵角との関係を示すグラフである。
【図6】上記高所作業車における転舵輪の動きを示す説明図であり、(a)は旋回中心の説明図、(b)は右旋回時における最大舵角となった状態を示す説明図、(c)は左旋回時における最大舵角となった状態を示す説明図である。
【図7】上記高所作業車の制御系統を示したブロック図である。
【図8】直進時の状態を示す図であって、(a)は前輪の向きを、(b)は一対の上側円盤の回転角度状態を(c)は一対の下側円盤の回転角度状態をそれぞれ示す。
【図9】最大舵角で右旋回するときの図であって、(a)は前輪の向きを、(b)は一対の上側円盤の回転角度状態を(c)は一対の下側円盤の回転角度状態をそれぞれ示す。
【図10】最大舵角で左旋回するときの図であって、(a)は前輪の向きを、(b)は一対の上側円盤の回転角度状態を(c)は一対の下側円盤の回転角度状態をそれぞれ示す。
【図11】別の実施例に係る回転体ユニットの直進時の状態を示す図であって、(a)は前輪の向きを、(b)は一対の上側円盤の回転角度状態を(c)は一対の下側円盤の回転角度状態をそれぞれ示す。
【図12】上記別の実施例に係る回転体ユニットの最大舵角で右旋回するときの図であって、(a)は前輪の向きを、(b)は一対の上側円盤の回転角度状態を(c)は一対の下側円盤の回転角度状態をそれぞれ示す。
【図13】上記別の実施例に係る回転体ユニットの最大舵角で左旋回するときの図であって、(a)は前輪の向きを、(b)は一対の上側円盤の回転角度状態を(c)は一対の下側円盤の回転角度状態をそれぞれ示す。
【図14】別の実施例に係る回転体ユニットの直進時の状態を示す図であって、(a)は一対の上側円盤の回転角度状態を(b)は一対の下側円盤の回転角度状態をそれぞれ示す。
【図15】別の実施例に係る回転体ユニットの直進時の状態を示す図であって、(a)は一対の上側円盤の回転角度状態を(b)は一対の下側円盤の回転角度状態をそれぞれ示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好ましい実施形態について、図面を参照しながら説明する。図2には、本発明に係るステアリング装置を適用した走行車両の一例としての高所作業車1を示している。まず、この高所作業車1の概要構成について説明する。
【0015】
高所作業車1は、図2に示すようにいわゆる垂直昇降式の高所作業車であり、前後左右に走行可能な車体10と、この車体10の上部に設けられたシザースリンク機構20と、このシザースリンク機構20の上端部に取り付けられた作業者搭乗用の作業台30とを備えて構成される。
【0016】
車体10は、略直方体に形成された車体本体部11と、この車体本体部11の前後左右の4隅に設けられた4つのタイヤ車輪11a〜11dとから構成され、このタイヤ車輪11a〜11dによって走行可能となっている。本実施形態では、これら4つのタイヤ車輪11a〜11dのうちで、前側の左右一対の左前輪11aおよび右前輪11bが駆動輪且つ転舵輪となるように構成された高所作業車1を例示している。左前輪11aおよび右前輪11bは、図3に示すように、左前輪11aおよび右前輪11bに対応して設けられたステアリング装置2を介して車体本体部11に取り付けられており、このステアリング装置2を作動させることで転舵されるように構成されている(詳しくは後述)。一方、後側の左右一対の左後輪11cおよび右後輪11dは従動輪となっており、車体本体部11内を左右に延びて配設された車軸9の端部に回転自在に取り付けられている。
【0017】
シザースリンク機構20は、図2に示すように、互いの中央部が枢結ピン20bにより枢結されてX字状に組み合わされた2本のリンク部材20aが、左右に延びる連結棒20dの両端部それぞれに枢結されて左右に対向して設けられるとともに、この左右に対向した4本1組のリンク部材20aが上下に3組配設されて構成される。上下に並ぶリンク部材20aのうち、上側のリンク部材20aの下端部と下側のリンク部材20aの上端部とが枢結ピン20cによって枢結される。上下に並ぶリンク部材20aのうち、最も下側に配設されたリンク部材20aの前側下端部は車体本体部11に枢結され、一方、最も下側に配設されたリンク部材20aの後側下端部は、車体本体部11に前後に延びて設けられたレール(図示せず)の上面を転動するローラ20eに結合されている。
【0018】
また、上下に並ぶリンク部材20aのうち、最も上側に配設されたリンク部材20aの前側上端部は作業台30に枢結され、一方、最も上側に配設されたリンク部材20aの後側上端部は、作業台30に前後に延びて設けられたレール(図示せず)の下面を転動するローラ20fに結合されている。このシザースリンク機構20は、当該機構20と車体本体部11との間に跨設された油圧駆動式の昇降シリンダ21を伸縮作動させることで、作業台30を上下に昇降移動させることができるようになっている。
【0019】
ここで、昇降シリンダ21の作動制御について簡単に説明する。図7に示すように高所作業車1には、電動式の油圧ポンプ用モータPMにより回転駆動されて作動油を吐出する油圧ポンプPが搭載されている。この油圧ポンプPから吐出された作動油が、制御バルブ71によって制御された供給方向および供給量で昇降シリンダ21に供給されることで、昇降シリンダ21の作動が制御されるようになっている。なお、制御バルブ71のスプール(図示せず)は、コントローラ50の昇降制御部53から出力される作動信号に基づいて電磁駆動される。また、油圧ポンプ用モータPMは、バッテリBから電力供給を受けて回転駆動するようになっている。
【0020】
作業台30は、図2に示すように、作業者が搭乗する作業台底部31と、この作業台底部31の周縁部から上方に延びて設けられた作業者の転落を防止するための手摺32と、この手摺32に取り付けられた操作ボックス40とから構成される。操作ボックス40には、車体10の発進停止および前進後退の切り替えを行うための走行操作レバー41と、車体10の舵取り(転舵輪である左前輪11a,右前輪11bの操舵)操作を行うための操舵ダイヤル42と、作業台30の昇降操作を行うための昇降操作レバー43が設けられている。
【0021】
走行操作レバー41は、図7に示すように、非操作時の中立位置から前後へ傾動操作可能に構成されており、中立位置を基準とした傾動方向と傾動量とがポテンショメータ等からなる走行操作検出器41aによって検出されるようになっている。走行操作検出器41aにおいて検出された情報は、コントローラ50のインバータ制御部51に入力される。ここで、走行操作レバー41を中立位置から前方へ傾動させる操作は前進走行指令に相当し、一方、走行操作レバー41を中立位置から後方へ傾動させる操作は後進走行指令に相当し、各々の操作においてその傾動量が大きい程インバータ制御部51において高い目標走行速度が設定される。なお、走行操作レバー41の中立位置への復帰操作は、走行停止指令に相当する。
【0022】
操舵ダイヤル42は、非操作時の中立位置から左右に捻り操作可能に構成されており、中立位置を基準とした捻り方向と捻り量とがポテンショメータ等からなる操舵操作検出器42aによって検出されるようになっている。操舵操作検出器42aにおいて検出された情報は、コントローラ50の操舵制御部52に入力される。ここで、操舵ダイヤル42を右回りに捻る操作は右旋回指令に相当し、一方、操舵ダイヤル42を左回りに捻る操作は左旋回指令に相当し、各々の操作においてその捻り量が大きい程操舵制御部52において大きな目標舵角が設定される。なお、操舵ダイヤル42の中立位置への復帰操作は、舵角を零の状態(図3の状態)にする指令に相当する。
【0023】
昇降操作レバー43は、非操作時の中立位置から前後へ傾動操作可能に構成されており、中立位置を基準とした傾動方向と傾動量とがポテンショメータ等からなる昇降操作検出器43aによって検出されるようになっている。昇降操作検出器43aにおいて検出された情報は、コントローラ50の昇降制御部53に入力される。ここで、昇降操作レバー43を中立位置から前方へ傾動させる操作は作業台30の下降指令に相当し、一方、昇降操作レバー43を中立位置から後方へ傾動させる操作は作業台30の上昇指令に相当し、各々の操作においてその傾動量が大きい程昇降制御部53において高い目標作動速度が設定される。また、昇降操作レバー43の中立位置への復帰操作は、作業台30の昇降停止指令に相当する。
【0024】
このように構成される高所作業車1は、作業台30に搭乗した作業者が走行操作レバー41,操舵ダイヤル42および昇降操作レバー43を操作して、車体10の走行、操舵および作業台30の昇降作動を行わせることで、作業台30を所望の作業位置に移動させることができるようになっている。
【0025】
以上ここまでは、高所作業車1の概略構成について説明した。以下においては、左前輪11aおよび右前輪11bを転舵させるためのステアリング装置2の構成について説明する。
【0026】
ここで、左右一対の左前輪11aおよび右前輪11bを転舵させる際に、左前輪11aおよび右前輪11bを同一舵角となるように転舵させた場合には、図6(a)において左前輪11aの旋回中心位置と右前輪11bの旋回中心位置とが異なるため、左前輪11aまたは右前輪11bがスリップしてスムーズな旋回が困難になる。そこで、ステアリング装置2は、図6(a)に示すように、旋回内輪の舵角が一定の比率で旋回外輪の舵角よりも大きくなるように転舵させることで、左前輪11aおよび右前輪11bを舵角に拘わらず旋回中心位置を一致させて、左前輪11aおよび右前輪11bをスリップさせることなくスムーズに旋回させることが可能となっている。
【0027】
例えば右旋回において舵角が最大になったとき(右前輪11bの舵角が略90度に達したとき)には右後輪11dが旋回中心となり(図6(b)参照)、一方、左旋回において舵角が最大になったとき(左前輪11aの舵角が略90度に達したとき)には左後輪11cが旋回中心となるように構成されている。このように、左前輪11aおよび右前輪11bの旋回中位置心を舵角に拘わらず一致させるために、ステアリング装置2は、例えば図5に示すような舵角関係を保ちながら旋回外輪と旋回内輪とを転舵させるように構成されている。
【0028】
ステアリング装置2は、図4に示すように、転舵モータSM、減速機G、回転体ユニット3、左ナックルアーム16Lおよび右ナックルアーム16Rから構成される。
【0029】
転舵モータSMは、バッテリB(図7参照)から電力供給を受けて回転駆動する電動モータであり、その出力軸が減速機Gに接続されている。減速機Gは、転舵モータSMの回転駆動力を減速して回転体ユニット3(右キングピン17R)に伝達することで、右キングピン17Rを車体本体部11に対して回転駆動させるようになっている。
【0030】
回転体ユニット3は、図1および図3に示すように、右上円盤12R、左上円盤12L、上側駆動力伝達ベルト13、右下円盤14R、左下円盤14Lおよび下側駆動力伝達ベルト15から構成される。右上円盤12Rは、円盤状に形成されて回転中心軸を上下に向けて配置されており、径方向端部には周方向に沿ってベルト溝12bが形成されている(図1(b)参照)。左上円盤12Lは、右上円盤12Rと同形の円盤状に形成されて回転中心軸を上下に向けて配置されており、径方向端部には周方向に沿ってベルト溝12aが形成されている。上側駆動力伝達ベルト13は、右端部13Rが右上円盤12Rに取り付けられるとともに、左端部13Lが左上円盤12Lに取り付けられることで、右上円盤12Rと左上円盤12Lとを繋いでこれらの前側部分に掛け回されている。そして、上側駆動力伝達ベルト13の一部が、右上円盤12Rのベルト溝12bおよび左上円盤12Lのベルト溝12aに嵌って保持されている。
【0031】
右下円盤14Rは、右上円盤12Rと同形の円盤状に形成されて回転中心軸を上下に向けて配置されており、径方向端部には周方向に沿ってベルト溝14bが形成されている。左下円盤14Lは、右上円盤12Rと同形の円盤状に形成されて回転中心軸を上下に向けて配置されており、径方向端部には周方向に沿うようにベルト溝14aが形成されている。下側駆動力伝達ベルト15は、右端部15Rが右下円盤14Rに取り付けられるとともに、左端部15Lが左下円盤14Lに取り付けられることで、右下円盤14Rと左下円盤14Lとを繋いでこれらの後側部分に掛け回されている。そして、下側駆動力伝達ベルト15の一部が、右下円盤14Rのベルト溝14bおよび左下円盤14Lのベルト溝14aに嵌って保持されている。
【0032】
ここで、右上円盤12Rおよび右下円盤14Rは、右上円盤12Rの中心位置C1(図1(a)参照)と右下円盤14Rの中心位置C2とが左右にずれて偏心した状態で上下に重なるように配設され、それぞれ車体本体部11に回転自在に支持されて上下に延びる右キングピン17Rに取り付けられている。具体的には、右上円盤12Rは、右キングピン17Rに対して右側に偏芯量dだけ偏心しており、一方、右下円盤14Rは、右キングピン17Rに対して左側に偏芯量dだけ偏心している。この構成により、転舵モータSMを駆動させて右キングピン17Rを回転駆動させることで、右上円盤12Rおよび右下円盤14Rを、上記偏芯した状態を維持したまま右キングピン17Rを回転中心として、右キングピン17Rと一緒に一体的に回転駆動させることができる。
【0033】
また、左上円盤12Lおよび左下円盤14Lは、左上円盤12Lの中心位置C3と左下円盤14Lの中心位置C4とが左右にずれて偏心した状態で上下に重なるように配設され、それぞれ車体本体部11に回転自在に支持されて上下に延びる左キングピン17Lに取り付けられている。具体的には、左上円盤12Lは、左キングピン17Lに対して左側に偏芯量dだけ偏心しており、一方、左下円盤14Lは、左キングピン17Lに対して右側に偏芯量dだけ偏心している。この構成により、図1(a)に示す状態において、転舵モータSMにより右上円盤12Rおよび右下円盤14Rを時計回りに一体的に回転駆動させた場合には、右上円盤12Rの回転駆動力を上側駆動力伝達ベルト13を介して左上円盤12Lに伝達させて、左上円盤12Lおよび左下円盤14Lを、偏芯した状態を維持したまま左キングピン17Lを回転中心として、左キングピン17Lと一緒に時計回りに一体的に回転駆動させることができる。これとは反対に、転舵モータSMにより右上円盤12Rおよび右下円盤14Rを反時計回りに一体的に回転駆動させた場合には、右下円盤14Rの回転駆動力を下側駆動力伝達ベルト15を介して左下円盤14Lに伝達させて、左上円盤12Lおよび左下円盤14Lを、偏芯した状態を維持したまま左キングピン17Lを回転中心として、左キングピン17Lと一緒に反時計回りに一体的に回転駆動させることができる。
【0034】
左ナックルアーム16Lは、図4に示すように、左下円盤14Lの下側に配設されており、車体本体部11に設けられた軸受け19により、上下に延びる回転軸CLを中心として回転自在に支持されている。この左ナックルアーム16Lは、下端部において左前輪11aを回転自在に片持ち支持するとともに上端部が左キングピン17Lに接続されており、左キングピン17Lの回転角度に応じて左前輪11aの舵角を変化させることができるようになっている。また、左ナックルアーム16Lの下端部内側には、左前輪11aを回転駆動させるための電動式の左走行モータLMが設けられている。この左走行モータLMは、インバータIV(図7参照)を介して供給されるバッテリBからの電力により回転駆動される。
【0035】
右ナックルアーム16Rは、右下円盤14Rの下側に配設されており、車体本体部11に設けられた軸受け19により、上下に延びる回転軸CRを中心として回転自在に支持されている。この右ナックルアーム16Rは、下端部において右前輪11bを回転自在に片持ち支持するとともに上端部が右キングピン17Rに接続されており、右キングピン17Rの回転角度に応じて右前輪11bの舵角を変化させることができるようになっている。また、右ナックルアーム16Rの下端部内側には、右前輪11bを回転駆動させるための電動式の右走行モータRMが設けられている。この右走行モータRMは、インバータIVを介して供給されるバッテリBからの電力により回転駆動される。
【0036】
左ナックルアーム16Lおよび右ナックルアーム16Rの少なくとも一方には、車体本体部11に対する左ナックルアーム16L(左キングピン17L)、または車体本体部11に対する右ナックルアーム16R(右キングピン17R)の回転角度を基に、左前輪11aまたは右前輪11bの舵角を検出するための舵角検出器61が取り付けられている(図7参照)。この舵角検出器61で検出された情報は、コントローラ50の操舵制御部52に入力される。
【0037】
このステアリング装置2においては、転舵モータSMにより右キングピン17Rを回転駆動させることで右キングピン17Rと同一方向に左キングピン17Lを回転駆動させて、右キングピン17Rの回転角度に対応して右ナックルアーム16Rを回転駆動させることができるとともに、左キングピン17Lの回転角度に対応して左ナックルアーム16Lを回転駆動させることができる。その結果、右ナックルアーム16Rに支持された右前輪11bが、右キングピン17Rの回転角度に対応して転舵されるとともに、左ナックルアーム16Lに支持された左前輪11aが、左キングピン17Lの回転角度に対応して転舵される。ここで上述したように、図5に示す舵角関係が保たれるように、各円盤12R,12L,14R,14Lの形状、および各円盤12R,12L,14R,14Lの径と偏芯量dとの寸法比等が考慮された上で回転体ユニット3が構成されているので、旋回内輪の舵角が常に一定の比率で旋回外輪の舵角よりも大きくなるように転舵させることができる。
【0038】
すなわち、ステアリング装置2においては、左前輪11aおよび右前輪11bを転舵させる際、車体10を真っ直ぐ前後に直進させるときの舵角(このときの舵角を零度とする)に対して、左前輪11aおよび右前輪11bの舵角が大きくなるに従って、左ナックルアーム16Lと右ナックルアーム16Rとの間の回転角度差が大きくなるように回転体ユニット3が構成されている。そのため、ステアリング装置2は、このような回転角度差を生じさせた上で、左前輪11aおよび右前輪11bのうち旋回外側の前輪よりも旋回内側の前輪を大きな舵角で転舵させることがきるようになっている。
【0039】
この高所作業車1は、エンジンの代わりにバッテリBを搭載することで排気ガスの発生がなく且つ騒音の発生が抑えられているため、屋内作業に用いた場合に排気ガスや騒音を屋内に充満させることがなく快適な作業環境で作業を行うことができる。例えば屋内において高所作業を行う場合には、まず、走行操作レバー41および操舵ダイヤル42操作を操作することで車体10を前後左右に走行させて、作業場所の下方に高所作業車1を移動させる。このようにして作業場所への移動が完了すると、作業者は、昇降操作レバー43を操作して昇降シリンダ23を伸長作動させることで、シザースリンク機構20を上昇させて作業台30を所望の高所に移動させることができる。なお、この状態で走行操作レバー41および操舵ダイヤル42を操作することで、作業台30を高所に位置させたままで高所作業車1を移動させることができる。
【0040】
以上ここまでは、ステアリング装置2の構成について説明した。以下においては、このステアリング装置2の作動について、図8〜図10を追加参照して説明する。
【0041】
図8には、高所作業車1を真っ直ぐ前進走行させようとして、操舵ダイヤル42を中立位置に位置させた状態で(操舵ダイヤル42に触れないで)、走行操作レバー41が前進側に傾動操作された場合を図示している。この場合、走行操作レバー41への操作情報が走行操作検出器41aからインバータ制御部51に入力されるとともに、操舵ダイヤル42への操作情報が操舵操作検出器42aから操舵制御部52に入力される。そうすると、インバータ制御部51は、走行操作検出器41aからの情報に基づいた作動信号をインバータIVに出力することで、右走行モータRMおよび左走行モータLMを前進側に回転駆動させる制御を行う。一方、操舵制御部52は、操舵操作検出器42aからの情報および舵角検出器61からの情報を基にして、左前輪11aおよび右前輪11bを舵角零の回転位置に位置させる作動信号をバッテリBに出力することで、バッテリBから転舵モータSMへの電力供給制御を行う。そうすることで、左前輪11aおよび右前輪11bは、その回転軸Cを左右に向けた状態に転舵される(図8(a)参照)。
【0042】
このとき、回転体ユニット3の上側部分においては、図8(b)に示すように、上側駆動力伝達ベルト13の左端部13L、左上円盤12Lの中心位置C3、左キングピン17L、右キングピン17R、右上円盤12Rの中心位置C1、および上側駆動力伝達ベルト13の右端部13Rが、左右に一直線上に並んで位置している。一方、回転体ユニット3の下側部分においては、図8(c)に示すように、下側駆動力伝達ベルト15の左端部15L、左キングピン17L、左下円盤14Lの中心位置C4、右下円盤14Rの中心位置C2、右キングピン17R、および下側駆動力伝達ベルト15の右端部15Rが、左右に一直線上に並んで位置している。図8(b)および図8(c)に示す状態において、上側駆動力伝達ベルト13および下側駆動力伝達ベルト15は、弛むことがないように各円盤に張持されている。
【0043】
この状態で、操作ボックス40への操作に応じて前進走行されるとき、右前輪11bを回転軸CRを中心として回転させるような外力が作用する場合がある。例えば右前輪11bを右旋回させる方向の外力(図8(a)および図8(b)に矢印Aで示す外力)が作用する場合、この外力が、右ナックルアーム16R、右上円盤12Rおよび上側駆動力伝達ベルト13を介して左上円盤12Lに伝達される。このとき、左前輪11aは上下に荷重を受けた状態で接地しているので、右前輪11bからの外力に抗して左前輪11aを舵角零の状態に保持できるとともに、この左前輪11aと上側駆動力伝達ベルト13を介して接続された右前輪11bも外力に抗して舵角零の状態に保持できる。これとは反対に、右前輪11bを左旋回させる方向の外力(図8(a)および図8(c)に矢印Bで示す外力)が作用した場合、この外力が、右ナックルアーム16R、右下円盤14Rおよび下側駆動力伝達ベルト15を介して左下円盤14Lに伝達される。しかし、左前輪11aは上下に荷重を受けた状態で接地しているので、右前輪11bからの外力に抗して左前輪11aを舵角零の状態に保持できるとともに、この左前輪11aと下側駆動力伝達ベルト15を介して接続された右前輪11bも外力に抗して舵角零の状態に保持できる。
【0044】
図9には、例えば高所作業車1を真っ直ぐ前進走行させている状態において、右旋回させようとして操舵ダイヤル42が右旋回側に捻り操作(最大舵角で転舵させる捻り操作)された場合を図示している。この場合、走行操作レバー41への操作情報が走行操作検出器41aからインバータ制御部51に入力されるとともに、操舵ダイヤル42への操作情報が操舵操作検出器42aから操舵制御部52に入力される。そうすると、インバータ制御部51は、引き続き走行操作検出器41aからの情報に基づいた作動信号をインバータIVに出力することで、右走行モータRMおよび左走行モータLMを前進側に回転駆動させる制御を行う。一方、操舵制御部52は、操舵ダイヤル42への捻り量に対応した旋回内輪(右前輪11b)の舵角を設定し、舵角検出器61においてその設定舵角が検出されるまで左前輪11aおよび右前輪11bを時計回りに回転させるようにバッテリBに作動信号を出力することで、バッテリBから転舵モータSMへの電力供給制御を行う。
【0045】
上記の転舵モータSMへの電力供給制御により転舵モータSMが駆動されると、これに伴って右キングピン17Rが時計回りに回転駆動される。そうすると、右キングピン17Rに取り付けられた右上円盤12Rおよび右下円盤14Rが、右キングピン17Rと一体的に時計回りに回転駆動される。このとき、図9(b)に示すように、右上円盤12Rの回転駆動力が上側駆動力伝達ベルト13を介して左上円盤12Lに伝達され、左上円盤12Lが右上円盤12Rと同一方向(時計回り)に回転駆動される。そして、上側駆動力伝達ベルト13が、右上円盤12Rおよび左上円盤12Lによって張持された状態のままで、左上円盤12Lから繰り出されるとともに右上円盤12Rに巻き取られることで、図5に示す舵角関係を保ちながら右前輪11b(内輪)を左前輪11a(外輪)よりも大きく転舵させることができる。
【0046】
上記のようにして左上円盤12Lが回転駆動されることで、左キングピン17Lおよび左下円盤14Lが左上円盤12Lと一体となって時計回りに回転駆動される。このとき、図9(c)に示すように、下側駆動力伝達ベルト15が、右下円盤14Rおよび左下円盤14Lによって張持された状態のままで、右下円盤14Rから繰り出されるとともに左下円盤14Lに巻き取られていく。ここで、回転体ユニット3の構造上、上側駆動力伝達ベルト13によって右上円盤12Rおよび左上円盤12Lに与えられる回転角度と、下側駆動力伝達ベルト15によって右下円盤14Rおよび左下円盤14Lに与えられえる回転角度とが若干異なる。そこで本実施形態においては、この回転角度差を吸収可能な弾性を備えた上側駆動力伝達ベルト13および下側駆動力伝達ベルト15を用いることで、スムーズ且つ高精度な転舵が行われるように回転体ユニット3が構成されている。
【0047】
また、本実施形態における回転体ユニット3は、右上円盤12R、左上円盤12Lおよび上側駆動力伝達ベルト13からなる上側部分のみではなく、右下円盤14R、左下円盤14Lおよび下側駆動力伝達ベルト15からなる下側部分も備えた上下一対に構成されている。この構成により、例えば図9に示す状態から舵角を小さくする場合に、転舵モータSMを駆動させて右キングピン17Rを反時計回りに回転駆動させることで、右下円盤14Rの回転駆動力を下側駆動力伝達ベルト15を介して左下円盤14Lに伝達して、左下円盤14Lを右下円盤14Rと同一方向(反時計回り)に回転駆動させることができる。よって、1つの転舵モータSMを用いた構成でありながら、舵角を大きくする方向への転舵のみならず、舵角を小さくする方向への転舵も可能である。そのため、例えば2つの転舵モータを用いて左右のキングピンをそれぞれ独立して回転制御する構成と比較して、制御を簡単にすることができる。また、図9に示す状態においても、図8に示す直進時と同様にして、左前輪11aまたは右前輪11bに外力が作用した場合にこの外力に抗して左前輪11aおよび右前輪11bの舵角を保持することができる。
【0048】
図10には、例えば高所作業車1を真っ直ぐ前進走行させている状態において、左旋回させようとして操舵ダイヤル42が左旋回側に捻り操作(最大舵角で転舵させる捻り操作)された場合を図示している。この場合、走行操作レバー41への操作情報が走行操作検出器41aからインバータ制御部51に入力されるとともに、操舵ダイヤル42への操作情報が操舵操作検出器42aから操舵制御部52に入力される。そうすると、インバータ制御部51は、引き続き走行操作検出器41aからの情報に基づいた作動信号をインバータIVに出力することで、右走行モータRMおよび左走行モータLMを前進側に回転駆動させる制御を行う。一方、操舵制御部52は、操舵ダイヤル42への捻り量に対応した旋回内輪(左前輪11a)の舵角を設定し、舵角検出器61においてその設定舵角が検出されるまで左前輪11aおよび右前輪11bを反時計回りに回転させるようにバッテリBに作動信号を出力することで、バッテリBから転舵モータSMへの電力供給制御を行う。
【0049】
上記の転舵モータSMへの電力供給制御により転舵モータSMが駆動されると、これに伴って右キングピン17Rが反時計回りに回転駆動される。そうすると、右キングピン17Rに取り付けられた右上円盤12Rおよび右下円盤14Rが、右キングピン17Rと一体的に時計回りに回転駆動される。このとき、図10(c)に示すように、右下円盤14Rの回転駆動力が下側駆動力伝達ベルト15を介して左下円盤14Lに伝達され、左下円盤14Lが右下円盤14Rと同一方向(反時計回り)に回転駆動される。そして、下側駆動力伝達ベルト15が、右下円盤14Rおよび左下円盤14Lによって張持された状態のままで、左下円盤14Lから繰り出されるとともに右下円盤14Rに巻き取られることで、図5に示す舵角関係を保ちながら左前輪11a(内輪)を右前輪11b(外輪)よりも大きく転舵させることができる。
【0050】
上記のようにして左下円盤14Lが回転駆動されることで、左キングピン17Lおよび左上円盤12Lが左下円盤14Lと一体となって反時計回りに回転駆動される。このとき、図10(b)に示すように、上側駆動力伝達ベルト13が、右上円盤12Rおよび左上円盤12Lによって張持された状態のままで、右上円盤12Rから繰り出されるとともに左上円盤12Lに巻き取られていく。
【0051】
以上のようにステアリング装置2は、複数の円盤12R,12L,14R,14Lを転舵モータSMにより回転駆動させるという簡易且つ安価な構成でありながら、十分な作動速度を確保しつつ、転舵輪から比較的大きな反力が作用する転舵角が大きい領域においてもスムーズに転舵させることができるように構成されている。このように、このステアリング装置2を用いることで、アッカーマンリンクを油圧アクチュエータ(油圧シリンダ)で駆動させる従来構成とほぼ同様に転舵を行わせることが可能となるので、油圧アクチュエータ(油圧シリンダ)を電動アクチュエータ(電動モータ)に置き換えたステアリング装置のさらなる電動化を実現できる。
【0052】
上述の実施形態では、左キングピン17Lおよび右キングピン17Rに対して、左右一対の上側円盤がそれぞれ左右外側に偏芯するとともに、左右一対の下側円盤がそれぞれ左右内側に偏芯した回転体ユニット3を例示して説明したが、本発明はこの構成に限定されるものではない。例えば図11(b)および(c)に示す回転体ユニット103のように、左上円盤12Lの中心位置C3と左キングピン17Lの中心位置とを一致させ、且つ、左下円盤14Lの中心位置C4と左キングピン17Lの中心位置とを一致させ、これ以外の構成については回転体ユニット3と同様とした構成も可能である。この回転体ユニット103を図11(b)および(c)に示す状態に位置させることで、図11(a)に示すように前輪11a,11bを直進方向に転舵することができる。また、この回転体ユニット103を図12(b)および(c)に示すように時計回りに回転させることで、図12(a)に示すように前輪11a,11bを右旋回方向に転舵することができる。一方、回転体ユニット103を図13(b)および(c)に示すように反時計回りに回転させることで、図13(a)に示すように前輪11a,11bを左旋回方向に転舵することができる。
【0053】
また、回転体ユニット3の別の構成例として、図14に示す回転体ユニット203や図15に示す回転体ユニット303のような構成も可能である。図14に示す回転体ユニット203は、左上円盤12Lの中心位置C3と左キングピン17Lの中心位置とを一致させ、これ以外の構成については回転体ユニット3と同様としたものである。一方、図15に示す回転体ユニット303は、左下円盤14Lの中心位置C4と左キングピン17Lの中心位置とを一致させ、これ以外の構成については回転体ユニット3と同様としたものである。
【0054】
以上においては本発明の好ましい実施形態について説明してきたが、本発明の範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲であれば適宜改良可能である。上述の実施形態では、円盤を偏芯させて上下に重ねたものを左右一対設け、このうちの上側の円盤同士および下側の円盤同士を駆動力伝達ベルトで繋いで構成された回転体ユニット3を例示して説明した。しかし、回転体の形状は円盤に限定されず、図5に示す舵角関係となるような外形形状(駆動力伝達ベルトが掛け回される部分)を有した例えば楕円形状や扇形状の回転体を上下に重ね、この上下に重ねて構成された回転体を左右一対設けた上で駆動力伝達ベルトにより繋ぐ構成も可能である。
【0055】
上述の実施形態においては、上側駆動力伝達ベルト13によって右上円盤12Rおよび左上円盤12Lに与えられる回転角度と、下側駆動力伝達ベルト15によって右下円盤14Rおよび左下円盤14Lに与えられえる回転角度との差を吸収可能な弾性を有した上側駆動力伝達ベルト13および下側駆動力伝達ベルト15を用いた構成例について説明したが、本発明はこの構成例に限定されるものではない。例えば、右キングピン17Rと右上円盤12R(右下円盤14R)との間、または、左キングピン17Lと左上円盤12L(左下円盤14L)との間に、回転角度差を吸収可能なばねを介在させて構成しても良い。
【0056】
上述の実施形態では、円盤に駆動力伝達ベルトを掛け回して構成された回転体ユニット3を例示して説明したが、本発明はこの構成に限定されるものではない。例えば、駆動力伝達ベルトの代わりにワイヤーロープを用いることも可能である。また、円盤の代わりにスプロケットを用いるとともに、ベルトの代わりにローラーチェーンを用いた構成も可能であり、この構成の場合には一方のスプロケットの回転駆動力を確実に他方のスプロケットに伝達することができる。
【0057】
上述の実施形態では、左前輪11aおよび右前輪11bが駆動輪且つ転舵輪として構成された走行車両としての高所作業車1に本発明を適用した例について説明したが、本発明はこの構成に限定して適用されるものではない。例えば、左前輪11aおよび右前輪11bが転舵輪で、左後輪11cおよび右後輪11dが駆動輪として構成された走行車両にも、本発明を同様に適用可能である。
【0058】
上述の実施形態においては、シザースリンク機構20により作業台30を昇降移動させるタイプの高所作業車1に本発明を適用した構成例について説明したが、本発明はこの構成例に限定して適用されるものではない。例えば、垂直ポストにより作業台を移動させるタイプの高所作業車や、ブームにより作業台を移動させるタイプの高所作業車にも、同様に本発明を適用可能である。
【符号の説明】
【0059】
1 高所作業車(走行車両)
2 ステアリング装置
11a 左前輪11a(走行輪)
11b 右前輪11b(走行輪)
11c 左後輪11c(走行輪)
11d 右後輪11d(走行輪)
12L 左上円盤(右旋回用回転体)
12R 右上円盤(右旋回用回転体)
13 上側駆動力伝達ベルト(右旋回用駆動力伝達部材)
14L 左下円盤(左旋回用回転体)
14R 右下円盤(左旋回用回転体)
15 下側駆動力伝達ベルト(左旋回用駆動力伝達部材)
16L 左ナックルアーム(ナックル部材)
16R 右ナックルアーム(ナックル部材)
SM 転舵モータ(転舵アクチュエータ)
【技術分野】
【0001】
本発明は、左右一対の走行輪を前後に有した車輪式の走行車両において、前後いずれかの左右一対の走行輪を転舵させるためのステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記構成の走行車両のうち、工場内における運搬作業や建物の内装工事等に用いられる自走式の走行車両として、従来種々の形態のものが知られている。そのうちの一例として、前後左右に車輪を備えた比較的小型の車体と、この車体上に昇降自在に設けられた昇降装置(例えばシザースリンク機構、伸縮ポストまたはブーム等)と、この昇降装置の先端部に取り付けられた作業台とを備えて構成される高所作業車が存在する。この高所作業車では、作業台に搭乗した作業者が作業台上から車体の走行操作および作業台の昇降操作を行うことで、所望の高所に作業台を移動させて作業を行うことができるようになっている(例えば、特許文献1を参照)。特に上記のような屋内型の高所作業車は、エンジンからの排気ガスや騒音発生が嫌われるため、車体に内蔵されたバッテリを電源として電動式の走行モータを駆動させて駆動輪を回転駆動させることで、走行操作に応じた走行が可能に構成されている。
【0003】
このような屋内型の高所作業車は通常、アッカーマンリンクと称されるリンク機構を用いることで、操舵に応じて転舵輪を転舵させるように構成されている。一般的にアッカーマンリンクは、転舵角が大きくなるに従って転舵輪から大きな反力が作用するのであるが、比較的大きな力を素早く作用させることが可能な油圧シリンダによりアッカーマンリンクを作動させることで、操舵に応じた転舵をスムーズに行わせることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−159770号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで最近において、屋内型の高所作業車のさらなる電動化開発が進んでおり、その一環として電動式のアクチュエータを用いて転舵を行うことが考えられている。例えば上記油圧シリンダに代えて伸縮可能に構成された電動シリンダを用いることで、さらなる電動化を図る方法が考えられるが、一般的に電動シリンダは油圧シリンダと比較して十分な作動速度を確保しにくいため、この方法によるさらなる電動化は困難である。一方、上記油圧シリンダに代えて電動モータを用いてこの電動モータの回転駆動力によりアッカーマンリンクを作動させることで、さらなる電動化を図る方法も考えられるが、この方法の場合には、特に転舵角が大きい領域(転舵輪から大きな反力が作用する領域)において操舵に応じてスムーズに転舵させることが難しい。このように、転舵させるための油圧アクチュエータを電動アクチュエータに置き換えることで、さらなる電動化を図ることが難しいという課題があった。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、転舵させるための油圧アクチュエータを電動アクチュエータに置き換えることで電動化が図られたステアリング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的達成のため、本発明に係るステアリング装置は、左右一対の走行輪(例えば、実施形態における左前輪11a、右前輪11b、左後輪11c、右後輪11d)を前後に有した車輪式の走行車両(例えば、実施形態における高所作業車1)において、前後いずれかの左右一対の走行輪を転舵させるステアリング装置であって、前記左右一対の走行輪を回転自在に支持するとともに、前記走行車両の左右に当該走行輪の転舵軸を中心として旋回自在に設けられた左右一対のナックル部材(例えば、実施形態における左ナックルアーム16L、右ナックルアーム16R)と、前記ナックル部材のそれぞれに対応させて前記走行車両に回転自在に設けられて、回転に応じて前記ナックル部材を旋回させる左右一対の回転体と、長尺状に形成されて前記回転体同士を繋いで設けられて、前記回転体同士を同一方向に回転させるように回転駆動力を伝達する駆動力伝達部材と、前記左右一対の回転体のうちの一方の回転体を回転駆動する転舵アクチュエータ(例えば、実施形態における転舵モータSM)とを有し、前記一方の回転体を前記転舵アクチュエータにより回転駆動して前記駆動力伝達部材を介して他方の回転体を回転駆動させるように構成されており、前記回転体および前記駆動力伝達部材は、前記左右一対の走行輪の転舵角が大きくなるに従って前記ナックル部材間の旋回角度差が大きくなるように前記ナックル部材を旋回させて、前記左右一対の走行輪のうち旋回外側の走行輪よりも旋回内側の走行輪を大きな転舵角で転舵させるように構成されたことを特徴とする。
【0008】
なお、前記左右一対の回転体のそれぞれが、円盤状に形成されて前記ナックル部材を右旋回させるための右旋回用回転体(例えば、実施形態における左上円盤12L、右上円盤12R)と、円盤状に形成されて前記ナックル部材を左旋回させるための左旋回用回転体(例えば、実施形態における左下円盤14L、右下円盤14R)とから構成され、前記左右一対の回転体のうちの少なくともいずれかが、偏芯した状態で一体的に回転駆動されるように構成され、前記駆動力伝達部材が、前記右旋回用回転体同士を繋ぐ右旋回用駆動力伝達部材(例えば、実施形態における上側駆動力伝達ベルト13)と、前記左旋回用回転体同士を繋ぐ左旋回用駆動力伝達部材(例えば、実施形態における下側駆動力伝達ベルト15)とから構成されており、前記転舵アクチュエータにより前記一方の回転体を右旋回に対応する方向に回転駆動させたときには、前記他方の回転体を構成する前記右旋回用回転体から繰り出された前記右旋回用駆動力伝達部材を、張持させた状態で前記一方の回転体を構成する前記右旋回用回転体に巻き取らせることで、前記左右一対の走行輪のうち左側の走行輪よりも右側の走行輪を大きな転舵角で転舵させ、前記転舵アクチュエータにより前記一方の回転体を左旋回に対応する方向に回転駆動させたときには、前記他方の回転体を構成する前記左旋回用回転体から繰り出された前記左旋回用駆動力伝達部材を、張持させた状態で前記一方の回転体を構成する前記左旋回用回転体に巻き取らせることで、前記右側の走行輪よりも前記左側の走行輪を大きな転舵角で転舵させるように構成されたことが好ましい。
【0009】
本発明に係るステアリング装置は、左右一対の走行輪を前後に有した車輪式の走行車両において、前後いずれかの左右一対の走行輪を転舵させるステアリング装置であって、前記左右一対の走行輪を回転自在に支持するとともに、前記走行車両の左右に当該走行輪の転舵軸を中心として旋回自在に設けられた左右一対のナックル部材と、前記ナックル部材のそれぞれに対応させて前記走行車両に回転自在に設けられて、回転に応じて前記ナックル部材を旋回させる左右一対の回転体と、長尺状に形成されて前記回転体同士を繋いで設けられて、前記回転体同士を同一方向に回転させるように回転駆動力を伝達する駆動力伝達部材と、前記左右一対の回転体のうちの一方の回転体を回転駆動する転舵アクチュエータとを有し、前記一方の回転体を前記転舵アクチュエータにより回転駆動して前記駆動力伝達部材を介して他方の回転体を回転駆動させるように構成されており、前記左右一対の回転体のそれぞれが、擬似円盤状に形成されて前記ナックル部材を右旋回させるための右旋回用回転体と、擬似円盤状に形成されて前記ナックル部材を左旋回させるための左旋回用回転体とから構成されるとともに、前記右旋回用回転体と前記左旋回用回転体とが一体的に回転駆動されるように構成され、前記駆動力伝達部材が、前記右旋回用回転体同士を繋ぐ右旋回用駆動力伝達部材と、前記左旋回用回転体同士を繋ぐ左旋回用駆動力伝達部材とから構成されており、前記右旋回用回転体および前記左旋回用回転体は、前記右旋回用回転体間および前記左旋回用回転体間において前記右旋回用駆動力伝達部材および前記左旋回用駆動力伝達部材を張持させた状態で、前記左右一対の走行輪の転舵角が大きくなるに従って前記ナックル部材間の旋回角度差が大きくなるように前記ナックル部材を旋回させて、前記左右一対の走行輪のうち旋回外側の走行輪よりも旋回内側の走行輪を大きな転舵角で転舵させる形状を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るステアリング装置は、回転体および駆動力伝達部材が、転舵角が大きくなるに従ってナックル部材間の旋回角度差が大きくなるように旋回させて、旋回外側の走行輪よりも旋回内側の走行輪を大きな転舵角で転舵させるように構成されている。この構成により、転舵アクチュエータとして例えば電動モータを用いた場合であっても、十分な作動速度を確保しつつ、転舵輪から比較的大きな反力が作用する転舵角が大きい領域においてもスムーズに転舵させることができる。よって、従来構成と同等の転舵を行わせつつ、転舵させるための油圧アクチュエータを電動アクチュエータに置き換えることで、ステアリング装置の電動化を図ることが可能になる。
【0011】
なお、左右一対の回転体のそれぞれが、円盤状に形成されてナックル部材を右旋回させるための右旋回用回転体と、円盤状に形成されてナックル部材を左旋回させるための左旋回用回転体とから構成され、駆動力伝達部材が、右旋回用回転体同士を繋ぐ右旋回用駆動力伝達部材と、左旋回用回転体同士を繋ぐ左旋回用駆動力伝達部材とから構成されたことが好ましい。このように構成した場合、円盤同士を右旋回用駆動力伝達部材および左旋回用駆動力伝達部材を用いて繋ぐという簡易且つ安価な構成でありながら、アッカーマンリンクを油圧アクチュエータで駆動させる従来構成のステアリング装置とほぼ同様に転舵を行わせることが可能になる。
【0012】
本発明に係るステアリング装置は、右旋回用回転体および左旋回用回転体が、右旋回用駆動力伝達部材および左旋回用駆動力伝達部材を張持させた状態で、走行輪の転舵角が大きくなるに従ってナックル部材間の旋回角度差が大きくなるように旋回させて、走行輪のうち旋回外側の走行輪よりも旋回内側の走行輪を大きな転舵角で転舵させる形状を有している。この構成により、転舵アクチュエータとして例えば電動モータを用いた場合であっても、十分な作動速度を確保しつつ、転舵輪から比較的大きな反力が作用する転舵角が大きい領域においてもスムーズに転舵させることができる。このため、従来構成と同等の転舵を行わせつつ、転舵させるための油圧アクチュエータを電動アクチュエータに置き換えることで、ステアリング装置の電動化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係るステアリング装置の一部(回転体ユニット)を示す図であって、(a)は平面図を、(b)は側面図をそれぞれ示す。
【図2】本発明を適用した一例としての高所作業車を示す斜視図である。
【図3】上記ステアリング装置の概要構成を示す平面図である。
【図4】上記ステアリング装置の構成を示す側面図である。
【図5】内輪舵角と外輪舵角との関係を示すグラフである。
【図6】上記高所作業車における転舵輪の動きを示す説明図であり、(a)は旋回中心の説明図、(b)は右旋回時における最大舵角となった状態を示す説明図、(c)は左旋回時における最大舵角となった状態を示す説明図である。
【図7】上記高所作業車の制御系統を示したブロック図である。
【図8】直進時の状態を示す図であって、(a)は前輪の向きを、(b)は一対の上側円盤の回転角度状態を(c)は一対の下側円盤の回転角度状態をそれぞれ示す。
【図9】最大舵角で右旋回するときの図であって、(a)は前輪の向きを、(b)は一対の上側円盤の回転角度状態を(c)は一対の下側円盤の回転角度状態をそれぞれ示す。
【図10】最大舵角で左旋回するときの図であって、(a)は前輪の向きを、(b)は一対の上側円盤の回転角度状態を(c)は一対の下側円盤の回転角度状態をそれぞれ示す。
【図11】別の実施例に係る回転体ユニットの直進時の状態を示す図であって、(a)は前輪の向きを、(b)は一対の上側円盤の回転角度状態を(c)は一対の下側円盤の回転角度状態をそれぞれ示す。
【図12】上記別の実施例に係る回転体ユニットの最大舵角で右旋回するときの図であって、(a)は前輪の向きを、(b)は一対の上側円盤の回転角度状態を(c)は一対の下側円盤の回転角度状態をそれぞれ示す。
【図13】上記別の実施例に係る回転体ユニットの最大舵角で左旋回するときの図であって、(a)は前輪の向きを、(b)は一対の上側円盤の回転角度状態を(c)は一対の下側円盤の回転角度状態をそれぞれ示す。
【図14】別の実施例に係る回転体ユニットの直進時の状態を示す図であって、(a)は一対の上側円盤の回転角度状態を(b)は一対の下側円盤の回転角度状態をそれぞれ示す。
【図15】別の実施例に係る回転体ユニットの直進時の状態を示す図であって、(a)は一対の上側円盤の回転角度状態を(b)は一対の下側円盤の回転角度状態をそれぞれ示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好ましい実施形態について、図面を参照しながら説明する。図2には、本発明に係るステアリング装置を適用した走行車両の一例としての高所作業車1を示している。まず、この高所作業車1の概要構成について説明する。
【0015】
高所作業車1は、図2に示すようにいわゆる垂直昇降式の高所作業車であり、前後左右に走行可能な車体10と、この車体10の上部に設けられたシザースリンク機構20と、このシザースリンク機構20の上端部に取り付けられた作業者搭乗用の作業台30とを備えて構成される。
【0016】
車体10は、略直方体に形成された車体本体部11と、この車体本体部11の前後左右の4隅に設けられた4つのタイヤ車輪11a〜11dとから構成され、このタイヤ車輪11a〜11dによって走行可能となっている。本実施形態では、これら4つのタイヤ車輪11a〜11dのうちで、前側の左右一対の左前輪11aおよび右前輪11bが駆動輪且つ転舵輪となるように構成された高所作業車1を例示している。左前輪11aおよび右前輪11bは、図3に示すように、左前輪11aおよび右前輪11bに対応して設けられたステアリング装置2を介して車体本体部11に取り付けられており、このステアリング装置2を作動させることで転舵されるように構成されている(詳しくは後述)。一方、後側の左右一対の左後輪11cおよび右後輪11dは従動輪となっており、車体本体部11内を左右に延びて配設された車軸9の端部に回転自在に取り付けられている。
【0017】
シザースリンク機構20は、図2に示すように、互いの中央部が枢結ピン20bにより枢結されてX字状に組み合わされた2本のリンク部材20aが、左右に延びる連結棒20dの両端部それぞれに枢結されて左右に対向して設けられるとともに、この左右に対向した4本1組のリンク部材20aが上下に3組配設されて構成される。上下に並ぶリンク部材20aのうち、上側のリンク部材20aの下端部と下側のリンク部材20aの上端部とが枢結ピン20cによって枢結される。上下に並ぶリンク部材20aのうち、最も下側に配設されたリンク部材20aの前側下端部は車体本体部11に枢結され、一方、最も下側に配設されたリンク部材20aの後側下端部は、車体本体部11に前後に延びて設けられたレール(図示せず)の上面を転動するローラ20eに結合されている。
【0018】
また、上下に並ぶリンク部材20aのうち、最も上側に配設されたリンク部材20aの前側上端部は作業台30に枢結され、一方、最も上側に配設されたリンク部材20aの後側上端部は、作業台30に前後に延びて設けられたレール(図示せず)の下面を転動するローラ20fに結合されている。このシザースリンク機構20は、当該機構20と車体本体部11との間に跨設された油圧駆動式の昇降シリンダ21を伸縮作動させることで、作業台30を上下に昇降移動させることができるようになっている。
【0019】
ここで、昇降シリンダ21の作動制御について簡単に説明する。図7に示すように高所作業車1には、電動式の油圧ポンプ用モータPMにより回転駆動されて作動油を吐出する油圧ポンプPが搭載されている。この油圧ポンプPから吐出された作動油が、制御バルブ71によって制御された供給方向および供給量で昇降シリンダ21に供給されることで、昇降シリンダ21の作動が制御されるようになっている。なお、制御バルブ71のスプール(図示せず)は、コントローラ50の昇降制御部53から出力される作動信号に基づいて電磁駆動される。また、油圧ポンプ用モータPMは、バッテリBから電力供給を受けて回転駆動するようになっている。
【0020】
作業台30は、図2に示すように、作業者が搭乗する作業台底部31と、この作業台底部31の周縁部から上方に延びて設けられた作業者の転落を防止するための手摺32と、この手摺32に取り付けられた操作ボックス40とから構成される。操作ボックス40には、車体10の発進停止および前進後退の切り替えを行うための走行操作レバー41と、車体10の舵取り(転舵輪である左前輪11a,右前輪11bの操舵)操作を行うための操舵ダイヤル42と、作業台30の昇降操作を行うための昇降操作レバー43が設けられている。
【0021】
走行操作レバー41は、図7に示すように、非操作時の中立位置から前後へ傾動操作可能に構成されており、中立位置を基準とした傾動方向と傾動量とがポテンショメータ等からなる走行操作検出器41aによって検出されるようになっている。走行操作検出器41aにおいて検出された情報は、コントローラ50のインバータ制御部51に入力される。ここで、走行操作レバー41を中立位置から前方へ傾動させる操作は前進走行指令に相当し、一方、走行操作レバー41を中立位置から後方へ傾動させる操作は後進走行指令に相当し、各々の操作においてその傾動量が大きい程インバータ制御部51において高い目標走行速度が設定される。なお、走行操作レバー41の中立位置への復帰操作は、走行停止指令に相当する。
【0022】
操舵ダイヤル42は、非操作時の中立位置から左右に捻り操作可能に構成されており、中立位置を基準とした捻り方向と捻り量とがポテンショメータ等からなる操舵操作検出器42aによって検出されるようになっている。操舵操作検出器42aにおいて検出された情報は、コントローラ50の操舵制御部52に入力される。ここで、操舵ダイヤル42を右回りに捻る操作は右旋回指令に相当し、一方、操舵ダイヤル42を左回りに捻る操作は左旋回指令に相当し、各々の操作においてその捻り量が大きい程操舵制御部52において大きな目標舵角が設定される。なお、操舵ダイヤル42の中立位置への復帰操作は、舵角を零の状態(図3の状態)にする指令に相当する。
【0023】
昇降操作レバー43は、非操作時の中立位置から前後へ傾動操作可能に構成されており、中立位置を基準とした傾動方向と傾動量とがポテンショメータ等からなる昇降操作検出器43aによって検出されるようになっている。昇降操作検出器43aにおいて検出された情報は、コントローラ50の昇降制御部53に入力される。ここで、昇降操作レバー43を中立位置から前方へ傾動させる操作は作業台30の下降指令に相当し、一方、昇降操作レバー43を中立位置から後方へ傾動させる操作は作業台30の上昇指令に相当し、各々の操作においてその傾動量が大きい程昇降制御部53において高い目標作動速度が設定される。また、昇降操作レバー43の中立位置への復帰操作は、作業台30の昇降停止指令に相当する。
【0024】
このように構成される高所作業車1は、作業台30に搭乗した作業者が走行操作レバー41,操舵ダイヤル42および昇降操作レバー43を操作して、車体10の走行、操舵および作業台30の昇降作動を行わせることで、作業台30を所望の作業位置に移動させることができるようになっている。
【0025】
以上ここまでは、高所作業車1の概略構成について説明した。以下においては、左前輪11aおよび右前輪11bを転舵させるためのステアリング装置2の構成について説明する。
【0026】
ここで、左右一対の左前輪11aおよび右前輪11bを転舵させる際に、左前輪11aおよび右前輪11bを同一舵角となるように転舵させた場合には、図6(a)において左前輪11aの旋回中心位置と右前輪11bの旋回中心位置とが異なるため、左前輪11aまたは右前輪11bがスリップしてスムーズな旋回が困難になる。そこで、ステアリング装置2は、図6(a)に示すように、旋回内輪の舵角が一定の比率で旋回外輪の舵角よりも大きくなるように転舵させることで、左前輪11aおよび右前輪11bを舵角に拘わらず旋回中心位置を一致させて、左前輪11aおよび右前輪11bをスリップさせることなくスムーズに旋回させることが可能となっている。
【0027】
例えば右旋回において舵角が最大になったとき(右前輪11bの舵角が略90度に達したとき)には右後輪11dが旋回中心となり(図6(b)参照)、一方、左旋回において舵角が最大になったとき(左前輪11aの舵角が略90度に達したとき)には左後輪11cが旋回中心となるように構成されている。このように、左前輪11aおよび右前輪11bの旋回中位置心を舵角に拘わらず一致させるために、ステアリング装置2は、例えば図5に示すような舵角関係を保ちながら旋回外輪と旋回内輪とを転舵させるように構成されている。
【0028】
ステアリング装置2は、図4に示すように、転舵モータSM、減速機G、回転体ユニット3、左ナックルアーム16Lおよび右ナックルアーム16Rから構成される。
【0029】
転舵モータSMは、バッテリB(図7参照)から電力供給を受けて回転駆動する電動モータであり、その出力軸が減速機Gに接続されている。減速機Gは、転舵モータSMの回転駆動力を減速して回転体ユニット3(右キングピン17R)に伝達することで、右キングピン17Rを車体本体部11に対して回転駆動させるようになっている。
【0030】
回転体ユニット3は、図1および図3に示すように、右上円盤12R、左上円盤12L、上側駆動力伝達ベルト13、右下円盤14R、左下円盤14Lおよび下側駆動力伝達ベルト15から構成される。右上円盤12Rは、円盤状に形成されて回転中心軸を上下に向けて配置されており、径方向端部には周方向に沿ってベルト溝12bが形成されている(図1(b)参照)。左上円盤12Lは、右上円盤12Rと同形の円盤状に形成されて回転中心軸を上下に向けて配置されており、径方向端部には周方向に沿ってベルト溝12aが形成されている。上側駆動力伝達ベルト13は、右端部13Rが右上円盤12Rに取り付けられるとともに、左端部13Lが左上円盤12Lに取り付けられることで、右上円盤12Rと左上円盤12Lとを繋いでこれらの前側部分に掛け回されている。そして、上側駆動力伝達ベルト13の一部が、右上円盤12Rのベルト溝12bおよび左上円盤12Lのベルト溝12aに嵌って保持されている。
【0031】
右下円盤14Rは、右上円盤12Rと同形の円盤状に形成されて回転中心軸を上下に向けて配置されており、径方向端部には周方向に沿ってベルト溝14bが形成されている。左下円盤14Lは、右上円盤12Rと同形の円盤状に形成されて回転中心軸を上下に向けて配置されており、径方向端部には周方向に沿うようにベルト溝14aが形成されている。下側駆動力伝達ベルト15は、右端部15Rが右下円盤14Rに取り付けられるとともに、左端部15Lが左下円盤14Lに取り付けられることで、右下円盤14Rと左下円盤14Lとを繋いでこれらの後側部分に掛け回されている。そして、下側駆動力伝達ベルト15の一部が、右下円盤14Rのベルト溝14bおよび左下円盤14Lのベルト溝14aに嵌って保持されている。
【0032】
ここで、右上円盤12Rおよび右下円盤14Rは、右上円盤12Rの中心位置C1(図1(a)参照)と右下円盤14Rの中心位置C2とが左右にずれて偏心した状態で上下に重なるように配設され、それぞれ車体本体部11に回転自在に支持されて上下に延びる右キングピン17Rに取り付けられている。具体的には、右上円盤12Rは、右キングピン17Rに対して右側に偏芯量dだけ偏心しており、一方、右下円盤14Rは、右キングピン17Rに対して左側に偏芯量dだけ偏心している。この構成により、転舵モータSMを駆動させて右キングピン17Rを回転駆動させることで、右上円盤12Rおよび右下円盤14Rを、上記偏芯した状態を維持したまま右キングピン17Rを回転中心として、右キングピン17Rと一緒に一体的に回転駆動させることができる。
【0033】
また、左上円盤12Lおよび左下円盤14Lは、左上円盤12Lの中心位置C3と左下円盤14Lの中心位置C4とが左右にずれて偏心した状態で上下に重なるように配設され、それぞれ車体本体部11に回転自在に支持されて上下に延びる左キングピン17Lに取り付けられている。具体的には、左上円盤12Lは、左キングピン17Lに対して左側に偏芯量dだけ偏心しており、一方、左下円盤14Lは、左キングピン17Lに対して右側に偏芯量dだけ偏心している。この構成により、図1(a)に示す状態において、転舵モータSMにより右上円盤12Rおよび右下円盤14Rを時計回りに一体的に回転駆動させた場合には、右上円盤12Rの回転駆動力を上側駆動力伝達ベルト13を介して左上円盤12Lに伝達させて、左上円盤12Lおよび左下円盤14Lを、偏芯した状態を維持したまま左キングピン17Lを回転中心として、左キングピン17Lと一緒に時計回りに一体的に回転駆動させることができる。これとは反対に、転舵モータSMにより右上円盤12Rおよび右下円盤14Rを反時計回りに一体的に回転駆動させた場合には、右下円盤14Rの回転駆動力を下側駆動力伝達ベルト15を介して左下円盤14Lに伝達させて、左上円盤12Lおよび左下円盤14Lを、偏芯した状態を維持したまま左キングピン17Lを回転中心として、左キングピン17Lと一緒に反時計回りに一体的に回転駆動させることができる。
【0034】
左ナックルアーム16Lは、図4に示すように、左下円盤14Lの下側に配設されており、車体本体部11に設けられた軸受け19により、上下に延びる回転軸CLを中心として回転自在に支持されている。この左ナックルアーム16Lは、下端部において左前輪11aを回転自在に片持ち支持するとともに上端部が左キングピン17Lに接続されており、左キングピン17Lの回転角度に応じて左前輪11aの舵角を変化させることができるようになっている。また、左ナックルアーム16Lの下端部内側には、左前輪11aを回転駆動させるための電動式の左走行モータLMが設けられている。この左走行モータLMは、インバータIV(図7参照)を介して供給されるバッテリBからの電力により回転駆動される。
【0035】
右ナックルアーム16Rは、右下円盤14Rの下側に配設されており、車体本体部11に設けられた軸受け19により、上下に延びる回転軸CRを中心として回転自在に支持されている。この右ナックルアーム16Rは、下端部において右前輪11bを回転自在に片持ち支持するとともに上端部が右キングピン17Rに接続されており、右キングピン17Rの回転角度に応じて右前輪11bの舵角を変化させることができるようになっている。また、右ナックルアーム16Rの下端部内側には、右前輪11bを回転駆動させるための電動式の右走行モータRMが設けられている。この右走行モータRMは、インバータIVを介して供給されるバッテリBからの電力により回転駆動される。
【0036】
左ナックルアーム16Lおよび右ナックルアーム16Rの少なくとも一方には、車体本体部11に対する左ナックルアーム16L(左キングピン17L)、または車体本体部11に対する右ナックルアーム16R(右キングピン17R)の回転角度を基に、左前輪11aまたは右前輪11bの舵角を検出するための舵角検出器61が取り付けられている(図7参照)。この舵角検出器61で検出された情報は、コントローラ50の操舵制御部52に入力される。
【0037】
このステアリング装置2においては、転舵モータSMにより右キングピン17Rを回転駆動させることで右キングピン17Rと同一方向に左キングピン17Lを回転駆動させて、右キングピン17Rの回転角度に対応して右ナックルアーム16Rを回転駆動させることができるとともに、左キングピン17Lの回転角度に対応して左ナックルアーム16Lを回転駆動させることができる。その結果、右ナックルアーム16Rに支持された右前輪11bが、右キングピン17Rの回転角度に対応して転舵されるとともに、左ナックルアーム16Lに支持された左前輪11aが、左キングピン17Lの回転角度に対応して転舵される。ここで上述したように、図5に示す舵角関係が保たれるように、各円盤12R,12L,14R,14Lの形状、および各円盤12R,12L,14R,14Lの径と偏芯量dとの寸法比等が考慮された上で回転体ユニット3が構成されているので、旋回内輪の舵角が常に一定の比率で旋回外輪の舵角よりも大きくなるように転舵させることができる。
【0038】
すなわち、ステアリング装置2においては、左前輪11aおよび右前輪11bを転舵させる際、車体10を真っ直ぐ前後に直進させるときの舵角(このときの舵角を零度とする)に対して、左前輪11aおよび右前輪11bの舵角が大きくなるに従って、左ナックルアーム16Lと右ナックルアーム16Rとの間の回転角度差が大きくなるように回転体ユニット3が構成されている。そのため、ステアリング装置2は、このような回転角度差を生じさせた上で、左前輪11aおよび右前輪11bのうち旋回外側の前輪よりも旋回内側の前輪を大きな舵角で転舵させることがきるようになっている。
【0039】
この高所作業車1は、エンジンの代わりにバッテリBを搭載することで排気ガスの発生がなく且つ騒音の発生が抑えられているため、屋内作業に用いた場合に排気ガスや騒音を屋内に充満させることがなく快適な作業環境で作業を行うことができる。例えば屋内において高所作業を行う場合には、まず、走行操作レバー41および操舵ダイヤル42操作を操作することで車体10を前後左右に走行させて、作業場所の下方に高所作業車1を移動させる。このようにして作業場所への移動が完了すると、作業者は、昇降操作レバー43を操作して昇降シリンダ23を伸長作動させることで、シザースリンク機構20を上昇させて作業台30を所望の高所に移動させることができる。なお、この状態で走行操作レバー41および操舵ダイヤル42を操作することで、作業台30を高所に位置させたままで高所作業車1を移動させることができる。
【0040】
以上ここまでは、ステアリング装置2の構成について説明した。以下においては、このステアリング装置2の作動について、図8〜図10を追加参照して説明する。
【0041】
図8には、高所作業車1を真っ直ぐ前進走行させようとして、操舵ダイヤル42を中立位置に位置させた状態で(操舵ダイヤル42に触れないで)、走行操作レバー41が前進側に傾動操作された場合を図示している。この場合、走行操作レバー41への操作情報が走行操作検出器41aからインバータ制御部51に入力されるとともに、操舵ダイヤル42への操作情報が操舵操作検出器42aから操舵制御部52に入力される。そうすると、インバータ制御部51は、走行操作検出器41aからの情報に基づいた作動信号をインバータIVに出力することで、右走行モータRMおよび左走行モータLMを前進側に回転駆動させる制御を行う。一方、操舵制御部52は、操舵操作検出器42aからの情報および舵角検出器61からの情報を基にして、左前輪11aおよび右前輪11bを舵角零の回転位置に位置させる作動信号をバッテリBに出力することで、バッテリBから転舵モータSMへの電力供給制御を行う。そうすることで、左前輪11aおよび右前輪11bは、その回転軸Cを左右に向けた状態に転舵される(図8(a)参照)。
【0042】
このとき、回転体ユニット3の上側部分においては、図8(b)に示すように、上側駆動力伝達ベルト13の左端部13L、左上円盤12Lの中心位置C3、左キングピン17L、右キングピン17R、右上円盤12Rの中心位置C1、および上側駆動力伝達ベルト13の右端部13Rが、左右に一直線上に並んで位置している。一方、回転体ユニット3の下側部分においては、図8(c)に示すように、下側駆動力伝達ベルト15の左端部15L、左キングピン17L、左下円盤14Lの中心位置C4、右下円盤14Rの中心位置C2、右キングピン17R、および下側駆動力伝達ベルト15の右端部15Rが、左右に一直線上に並んで位置している。図8(b)および図8(c)に示す状態において、上側駆動力伝達ベルト13および下側駆動力伝達ベルト15は、弛むことがないように各円盤に張持されている。
【0043】
この状態で、操作ボックス40への操作に応じて前進走行されるとき、右前輪11bを回転軸CRを中心として回転させるような外力が作用する場合がある。例えば右前輪11bを右旋回させる方向の外力(図8(a)および図8(b)に矢印Aで示す外力)が作用する場合、この外力が、右ナックルアーム16R、右上円盤12Rおよび上側駆動力伝達ベルト13を介して左上円盤12Lに伝達される。このとき、左前輪11aは上下に荷重を受けた状態で接地しているので、右前輪11bからの外力に抗して左前輪11aを舵角零の状態に保持できるとともに、この左前輪11aと上側駆動力伝達ベルト13を介して接続された右前輪11bも外力に抗して舵角零の状態に保持できる。これとは反対に、右前輪11bを左旋回させる方向の外力(図8(a)および図8(c)に矢印Bで示す外力)が作用した場合、この外力が、右ナックルアーム16R、右下円盤14Rおよび下側駆動力伝達ベルト15を介して左下円盤14Lに伝達される。しかし、左前輪11aは上下に荷重を受けた状態で接地しているので、右前輪11bからの外力に抗して左前輪11aを舵角零の状態に保持できるとともに、この左前輪11aと下側駆動力伝達ベルト15を介して接続された右前輪11bも外力に抗して舵角零の状態に保持できる。
【0044】
図9には、例えば高所作業車1を真っ直ぐ前進走行させている状態において、右旋回させようとして操舵ダイヤル42が右旋回側に捻り操作(最大舵角で転舵させる捻り操作)された場合を図示している。この場合、走行操作レバー41への操作情報が走行操作検出器41aからインバータ制御部51に入力されるとともに、操舵ダイヤル42への操作情報が操舵操作検出器42aから操舵制御部52に入力される。そうすると、インバータ制御部51は、引き続き走行操作検出器41aからの情報に基づいた作動信号をインバータIVに出力することで、右走行モータRMおよび左走行モータLMを前進側に回転駆動させる制御を行う。一方、操舵制御部52は、操舵ダイヤル42への捻り量に対応した旋回内輪(右前輪11b)の舵角を設定し、舵角検出器61においてその設定舵角が検出されるまで左前輪11aおよび右前輪11bを時計回りに回転させるようにバッテリBに作動信号を出力することで、バッテリBから転舵モータSMへの電力供給制御を行う。
【0045】
上記の転舵モータSMへの電力供給制御により転舵モータSMが駆動されると、これに伴って右キングピン17Rが時計回りに回転駆動される。そうすると、右キングピン17Rに取り付けられた右上円盤12Rおよび右下円盤14Rが、右キングピン17Rと一体的に時計回りに回転駆動される。このとき、図9(b)に示すように、右上円盤12Rの回転駆動力が上側駆動力伝達ベルト13を介して左上円盤12Lに伝達され、左上円盤12Lが右上円盤12Rと同一方向(時計回り)に回転駆動される。そして、上側駆動力伝達ベルト13が、右上円盤12Rおよび左上円盤12Lによって張持された状態のままで、左上円盤12Lから繰り出されるとともに右上円盤12Rに巻き取られることで、図5に示す舵角関係を保ちながら右前輪11b(内輪)を左前輪11a(外輪)よりも大きく転舵させることができる。
【0046】
上記のようにして左上円盤12Lが回転駆動されることで、左キングピン17Lおよび左下円盤14Lが左上円盤12Lと一体となって時計回りに回転駆動される。このとき、図9(c)に示すように、下側駆動力伝達ベルト15が、右下円盤14Rおよび左下円盤14Lによって張持された状態のままで、右下円盤14Rから繰り出されるとともに左下円盤14Lに巻き取られていく。ここで、回転体ユニット3の構造上、上側駆動力伝達ベルト13によって右上円盤12Rおよび左上円盤12Lに与えられる回転角度と、下側駆動力伝達ベルト15によって右下円盤14Rおよび左下円盤14Lに与えられえる回転角度とが若干異なる。そこで本実施形態においては、この回転角度差を吸収可能な弾性を備えた上側駆動力伝達ベルト13および下側駆動力伝達ベルト15を用いることで、スムーズ且つ高精度な転舵が行われるように回転体ユニット3が構成されている。
【0047】
また、本実施形態における回転体ユニット3は、右上円盤12R、左上円盤12Lおよび上側駆動力伝達ベルト13からなる上側部分のみではなく、右下円盤14R、左下円盤14Lおよび下側駆動力伝達ベルト15からなる下側部分も備えた上下一対に構成されている。この構成により、例えば図9に示す状態から舵角を小さくする場合に、転舵モータSMを駆動させて右キングピン17Rを反時計回りに回転駆動させることで、右下円盤14Rの回転駆動力を下側駆動力伝達ベルト15を介して左下円盤14Lに伝達して、左下円盤14Lを右下円盤14Rと同一方向(反時計回り)に回転駆動させることができる。よって、1つの転舵モータSMを用いた構成でありながら、舵角を大きくする方向への転舵のみならず、舵角を小さくする方向への転舵も可能である。そのため、例えば2つの転舵モータを用いて左右のキングピンをそれぞれ独立して回転制御する構成と比較して、制御を簡単にすることができる。また、図9に示す状態においても、図8に示す直進時と同様にして、左前輪11aまたは右前輪11bに外力が作用した場合にこの外力に抗して左前輪11aおよび右前輪11bの舵角を保持することができる。
【0048】
図10には、例えば高所作業車1を真っ直ぐ前進走行させている状態において、左旋回させようとして操舵ダイヤル42が左旋回側に捻り操作(最大舵角で転舵させる捻り操作)された場合を図示している。この場合、走行操作レバー41への操作情報が走行操作検出器41aからインバータ制御部51に入力されるとともに、操舵ダイヤル42への操作情報が操舵操作検出器42aから操舵制御部52に入力される。そうすると、インバータ制御部51は、引き続き走行操作検出器41aからの情報に基づいた作動信号をインバータIVに出力することで、右走行モータRMおよび左走行モータLMを前進側に回転駆動させる制御を行う。一方、操舵制御部52は、操舵ダイヤル42への捻り量に対応した旋回内輪(左前輪11a)の舵角を設定し、舵角検出器61においてその設定舵角が検出されるまで左前輪11aおよび右前輪11bを反時計回りに回転させるようにバッテリBに作動信号を出力することで、バッテリBから転舵モータSMへの電力供給制御を行う。
【0049】
上記の転舵モータSMへの電力供給制御により転舵モータSMが駆動されると、これに伴って右キングピン17Rが反時計回りに回転駆動される。そうすると、右キングピン17Rに取り付けられた右上円盤12Rおよび右下円盤14Rが、右キングピン17Rと一体的に時計回りに回転駆動される。このとき、図10(c)に示すように、右下円盤14Rの回転駆動力が下側駆動力伝達ベルト15を介して左下円盤14Lに伝達され、左下円盤14Lが右下円盤14Rと同一方向(反時計回り)に回転駆動される。そして、下側駆動力伝達ベルト15が、右下円盤14Rおよび左下円盤14Lによって張持された状態のままで、左下円盤14Lから繰り出されるとともに右下円盤14Rに巻き取られることで、図5に示す舵角関係を保ちながら左前輪11a(内輪)を右前輪11b(外輪)よりも大きく転舵させることができる。
【0050】
上記のようにして左下円盤14Lが回転駆動されることで、左キングピン17Lおよび左上円盤12Lが左下円盤14Lと一体となって反時計回りに回転駆動される。このとき、図10(b)に示すように、上側駆動力伝達ベルト13が、右上円盤12Rおよび左上円盤12Lによって張持された状態のままで、右上円盤12Rから繰り出されるとともに左上円盤12Lに巻き取られていく。
【0051】
以上のようにステアリング装置2は、複数の円盤12R,12L,14R,14Lを転舵モータSMにより回転駆動させるという簡易且つ安価な構成でありながら、十分な作動速度を確保しつつ、転舵輪から比較的大きな反力が作用する転舵角が大きい領域においてもスムーズに転舵させることができるように構成されている。このように、このステアリング装置2を用いることで、アッカーマンリンクを油圧アクチュエータ(油圧シリンダ)で駆動させる従来構成とほぼ同様に転舵を行わせることが可能となるので、油圧アクチュエータ(油圧シリンダ)を電動アクチュエータ(電動モータ)に置き換えたステアリング装置のさらなる電動化を実現できる。
【0052】
上述の実施形態では、左キングピン17Lおよび右キングピン17Rに対して、左右一対の上側円盤がそれぞれ左右外側に偏芯するとともに、左右一対の下側円盤がそれぞれ左右内側に偏芯した回転体ユニット3を例示して説明したが、本発明はこの構成に限定されるものではない。例えば図11(b)および(c)に示す回転体ユニット103のように、左上円盤12Lの中心位置C3と左キングピン17Lの中心位置とを一致させ、且つ、左下円盤14Lの中心位置C4と左キングピン17Lの中心位置とを一致させ、これ以外の構成については回転体ユニット3と同様とした構成も可能である。この回転体ユニット103を図11(b)および(c)に示す状態に位置させることで、図11(a)に示すように前輪11a,11bを直進方向に転舵することができる。また、この回転体ユニット103を図12(b)および(c)に示すように時計回りに回転させることで、図12(a)に示すように前輪11a,11bを右旋回方向に転舵することができる。一方、回転体ユニット103を図13(b)および(c)に示すように反時計回りに回転させることで、図13(a)に示すように前輪11a,11bを左旋回方向に転舵することができる。
【0053】
また、回転体ユニット3の別の構成例として、図14に示す回転体ユニット203や図15に示す回転体ユニット303のような構成も可能である。図14に示す回転体ユニット203は、左上円盤12Lの中心位置C3と左キングピン17Lの中心位置とを一致させ、これ以外の構成については回転体ユニット3と同様としたものである。一方、図15に示す回転体ユニット303は、左下円盤14Lの中心位置C4と左キングピン17Lの中心位置とを一致させ、これ以外の構成については回転体ユニット3と同様としたものである。
【0054】
以上においては本発明の好ましい実施形態について説明してきたが、本発明の範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲であれば適宜改良可能である。上述の実施形態では、円盤を偏芯させて上下に重ねたものを左右一対設け、このうちの上側の円盤同士および下側の円盤同士を駆動力伝達ベルトで繋いで構成された回転体ユニット3を例示して説明した。しかし、回転体の形状は円盤に限定されず、図5に示す舵角関係となるような外形形状(駆動力伝達ベルトが掛け回される部分)を有した例えば楕円形状や扇形状の回転体を上下に重ね、この上下に重ねて構成された回転体を左右一対設けた上で駆動力伝達ベルトにより繋ぐ構成も可能である。
【0055】
上述の実施形態においては、上側駆動力伝達ベルト13によって右上円盤12Rおよび左上円盤12Lに与えられる回転角度と、下側駆動力伝達ベルト15によって右下円盤14Rおよび左下円盤14Lに与えられえる回転角度との差を吸収可能な弾性を有した上側駆動力伝達ベルト13および下側駆動力伝達ベルト15を用いた構成例について説明したが、本発明はこの構成例に限定されるものではない。例えば、右キングピン17Rと右上円盤12R(右下円盤14R)との間、または、左キングピン17Lと左上円盤12L(左下円盤14L)との間に、回転角度差を吸収可能なばねを介在させて構成しても良い。
【0056】
上述の実施形態では、円盤に駆動力伝達ベルトを掛け回して構成された回転体ユニット3を例示して説明したが、本発明はこの構成に限定されるものではない。例えば、駆動力伝達ベルトの代わりにワイヤーロープを用いることも可能である。また、円盤の代わりにスプロケットを用いるとともに、ベルトの代わりにローラーチェーンを用いた構成も可能であり、この構成の場合には一方のスプロケットの回転駆動力を確実に他方のスプロケットに伝達することができる。
【0057】
上述の実施形態では、左前輪11aおよび右前輪11bが駆動輪且つ転舵輪として構成された走行車両としての高所作業車1に本発明を適用した例について説明したが、本発明はこの構成に限定して適用されるものではない。例えば、左前輪11aおよび右前輪11bが転舵輪で、左後輪11cおよび右後輪11dが駆動輪として構成された走行車両にも、本発明を同様に適用可能である。
【0058】
上述の実施形態においては、シザースリンク機構20により作業台30を昇降移動させるタイプの高所作業車1に本発明を適用した構成例について説明したが、本発明はこの構成例に限定して適用されるものではない。例えば、垂直ポストにより作業台を移動させるタイプの高所作業車や、ブームにより作業台を移動させるタイプの高所作業車にも、同様に本発明を適用可能である。
【符号の説明】
【0059】
1 高所作業車(走行車両)
2 ステアリング装置
11a 左前輪11a(走行輪)
11b 右前輪11b(走行輪)
11c 左後輪11c(走行輪)
11d 右後輪11d(走行輪)
12L 左上円盤(右旋回用回転体)
12R 右上円盤(右旋回用回転体)
13 上側駆動力伝達ベルト(右旋回用駆動力伝達部材)
14L 左下円盤(左旋回用回転体)
14R 右下円盤(左旋回用回転体)
15 下側駆動力伝達ベルト(左旋回用駆動力伝達部材)
16L 左ナックルアーム(ナックル部材)
16R 右ナックルアーム(ナックル部材)
SM 転舵モータ(転舵アクチュエータ)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右一対の走行輪を前後に有した車輪式の走行車両において、前後いずれかの左右一対の走行輪を転舵させるステアリング装置であって、
前記左右一対の走行輪を回転自在に支持するとともに、前記走行車両の左右に当該走行輪の転舵軸を中心として旋回自在に設けられた左右一対のナックル部材と、
前記ナックル部材のそれぞれに対応させて前記走行車両に回転自在に設けられて、回転に応じて前記ナックル部材を旋回させる左右一対の回転体と、
長尺状に形成されて前記回転体同士を繋いで設けられて、前記回転体同士を同一方向に回転させるように回転駆動力を伝達する駆動力伝達部材と、
前記左右一対の回転体のうちの一方の回転体を回転駆動する転舵アクチュエータとを有し、
前記一方の回転体を前記転舵アクチュエータにより回転駆動して前記駆動力伝達部材を介して他方の回転体を回転駆動させるように構成されており、
前記回転体および前記駆動力伝達部材は、前記左右一対の走行輪の転舵角が大きくなるに従って前記ナックル部材間の旋回角度差が大きくなるように前記ナックル部材を旋回させて、前記左右一対の走行輪のうち旋回外側の走行輪よりも旋回内側の走行輪を大きな転舵角で転舵させるように構成されたことを特徴とするステアリング装置。
【請求項2】
前記左右一対の回転体のそれぞれが、円盤状に形成されて前記ナックル部材を右旋回させるための右旋回用回転体と、円盤状に形成されて前記ナックル部材を左旋回させるための左旋回用回転体とから構成され、
前記左右一対の回転体のうちの少なくともいずれかが、偏芯した状態で一体的に回転駆動されるように構成され、
前記駆動力伝達部材が、前記右旋回用回転体同士を繋ぐ右旋回用駆動力伝達部材と、前記左旋回用回転体同士を繋ぐ左旋回用駆動力伝達部材とから構成されており、
前記転舵アクチュエータにより前記一方の回転体を右旋回に対応する方向に回転駆動させたときには、前記他方の回転体を構成する前記右旋回用回転体から繰り出された前記右旋回用駆動力伝達部材を、張持させた状態で前記一方の回転体を構成する前記右旋回用回転体に巻き取らせることで、前記左右一対の走行輪のうち左側の走行輪よりも右側の走行輪を大きな転舵角で転舵させ、
前記転舵アクチュエータにより前記一方の回転体を左旋回に対応する方向に回転駆動させたときには、前記他方の回転体を構成する前記左旋回用回転体から繰り出された前記左旋回用駆動力伝達部材を、張持させた状態で前記一方の回転体を構成する前記左旋回用回転体に巻き取らせることで、前記右側の走行輪よりも前記左側の走行輪を大きな転舵角で転舵させるように構成されたことを特徴とする請求項1に記載のステアリング装置。
【請求項3】
左右一対の走行輪を前後に有した車輪式の走行車両において、前後いずれかの左右一対の走行輪を転舵させるステアリング装置であって、
前記左右一対の走行輪を回転自在に支持するとともに、前記走行車両の左右に当該走行輪の転舵軸を中心として旋回自在に設けられた左右一対のナックル部材と、
前記ナックル部材のそれぞれに対応させて前記走行車両に回転自在に設けられて、回転に応じて前記ナックル部材を旋回させる左右一対の回転体と、
長尺状に形成されて前記回転体同士を繋いで設けられて、前記回転体同士を同一方向に回転させるように回転駆動力を伝達する駆動力伝達部材と、
前記左右一対の回転体のうちの一方の回転体を回転駆動する転舵アクチュエータとを有し、
前記一方の回転体を前記転舵アクチュエータにより回転駆動して前記駆動力伝達部材を介して他方の回転体を回転駆動させるように構成されており、
前記左右一対の回転体のそれぞれが、擬似円盤状に形成されて前記ナックル部材を右旋回させるための右旋回用回転体と、擬似円盤状に形成されて前記ナックル部材を左旋回させるための左旋回用回転体とから構成されるとともに、前記右旋回用回転体と前記左旋回用回転体とが一体的に回転駆動されるように構成され、
前記駆動力伝達部材が、前記右旋回用回転体同士を繋ぐ右旋回用駆動力伝達部材と、前記左旋回用回転体同士を繋ぐ左旋回用駆動力伝達部材とから構成されており、
前記右旋回用回転体および前記左旋回用回転体は、
前記右旋回用回転体間および前記左旋回用回転体間において前記右旋回用駆動力伝達部材および前記左旋回用駆動力伝達部材を張持させた状態で、前記左右一対の走行輪の転舵角が大きくなるに従って前記ナックル部材間の旋回角度差が大きくなるように前記ナックル部材を旋回させて、前記左右一対の走行輪のうち旋回外側の走行輪よりも旋回内側の走行輪を大きな転舵角で転舵させる形状を有することを特徴とするステアリング装置。
【請求項1】
左右一対の走行輪を前後に有した車輪式の走行車両において、前後いずれかの左右一対の走行輪を転舵させるステアリング装置であって、
前記左右一対の走行輪を回転自在に支持するとともに、前記走行車両の左右に当該走行輪の転舵軸を中心として旋回自在に設けられた左右一対のナックル部材と、
前記ナックル部材のそれぞれに対応させて前記走行車両に回転自在に設けられて、回転に応じて前記ナックル部材を旋回させる左右一対の回転体と、
長尺状に形成されて前記回転体同士を繋いで設けられて、前記回転体同士を同一方向に回転させるように回転駆動力を伝達する駆動力伝達部材と、
前記左右一対の回転体のうちの一方の回転体を回転駆動する転舵アクチュエータとを有し、
前記一方の回転体を前記転舵アクチュエータにより回転駆動して前記駆動力伝達部材を介して他方の回転体を回転駆動させるように構成されており、
前記回転体および前記駆動力伝達部材は、前記左右一対の走行輪の転舵角が大きくなるに従って前記ナックル部材間の旋回角度差が大きくなるように前記ナックル部材を旋回させて、前記左右一対の走行輪のうち旋回外側の走行輪よりも旋回内側の走行輪を大きな転舵角で転舵させるように構成されたことを特徴とするステアリング装置。
【請求項2】
前記左右一対の回転体のそれぞれが、円盤状に形成されて前記ナックル部材を右旋回させるための右旋回用回転体と、円盤状に形成されて前記ナックル部材を左旋回させるための左旋回用回転体とから構成され、
前記左右一対の回転体のうちの少なくともいずれかが、偏芯した状態で一体的に回転駆動されるように構成され、
前記駆動力伝達部材が、前記右旋回用回転体同士を繋ぐ右旋回用駆動力伝達部材と、前記左旋回用回転体同士を繋ぐ左旋回用駆動力伝達部材とから構成されており、
前記転舵アクチュエータにより前記一方の回転体を右旋回に対応する方向に回転駆動させたときには、前記他方の回転体を構成する前記右旋回用回転体から繰り出された前記右旋回用駆動力伝達部材を、張持させた状態で前記一方の回転体を構成する前記右旋回用回転体に巻き取らせることで、前記左右一対の走行輪のうち左側の走行輪よりも右側の走行輪を大きな転舵角で転舵させ、
前記転舵アクチュエータにより前記一方の回転体を左旋回に対応する方向に回転駆動させたときには、前記他方の回転体を構成する前記左旋回用回転体から繰り出された前記左旋回用駆動力伝達部材を、張持させた状態で前記一方の回転体を構成する前記左旋回用回転体に巻き取らせることで、前記右側の走行輪よりも前記左側の走行輪を大きな転舵角で転舵させるように構成されたことを特徴とする請求項1に記載のステアリング装置。
【請求項3】
左右一対の走行輪を前後に有した車輪式の走行車両において、前後いずれかの左右一対の走行輪を転舵させるステアリング装置であって、
前記左右一対の走行輪を回転自在に支持するとともに、前記走行車両の左右に当該走行輪の転舵軸を中心として旋回自在に設けられた左右一対のナックル部材と、
前記ナックル部材のそれぞれに対応させて前記走行車両に回転自在に設けられて、回転に応じて前記ナックル部材を旋回させる左右一対の回転体と、
長尺状に形成されて前記回転体同士を繋いで設けられて、前記回転体同士を同一方向に回転させるように回転駆動力を伝達する駆動力伝達部材と、
前記左右一対の回転体のうちの一方の回転体を回転駆動する転舵アクチュエータとを有し、
前記一方の回転体を前記転舵アクチュエータにより回転駆動して前記駆動力伝達部材を介して他方の回転体を回転駆動させるように構成されており、
前記左右一対の回転体のそれぞれが、擬似円盤状に形成されて前記ナックル部材を右旋回させるための右旋回用回転体と、擬似円盤状に形成されて前記ナックル部材を左旋回させるための左旋回用回転体とから構成されるとともに、前記右旋回用回転体と前記左旋回用回転体とが一体的に回転駆動されるように構成され、
前記駆動力伝達部材が、前記右旋回用回転体同士を繋ぐ右旋回用駆動力伝達部材と、前記左旋回用回転体同士を繋ぐ左旋回用駆動力伝達部材とから構成されており、
前記右旋回用回転体および前記左旋回用回転体は、
前記右旋回用回転体間および前記左旋回用回転体間において前記右旋回用駆動力伝達部材および前記左旋回用駆動力伝達部材を張持させた状態で、前記左右一対の走行輪の転舵角が大きくなるに従って前記ナックル部材間の旋回角度差が大きくなるように前記ナックル部材を旋回させて、前記左右一対の走行輪のうち旋回外側の走行輪よりも旋回内側の走行輪を大きな転舵角で転舵させる形状を有することを特徴とするステアリング装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2013−112171(P2013−112171A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−260361(P2011−260361)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(000116644)株式会社アイチコーポレーション (168)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(000116644)株式会社アイチコーポレーション (168)
【Fターム(参考)】
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