説明

ステッピングモータ制御装置および印刷装置

【課題】モータ回転中に励磁方式が切替わったときなど、各励磁方式の基本ステップ角の違いによる制御の不連続性を補正しモータの脱調を防止する。
【解決手段】相励磁方式が切り替わる際に、相切替ステップ値を補正する励磁切替補正部27を設け、相励磁方式が切替わっても、それぞれの励磁方式の基本ステップ角の違いを補正できるようにした。或いは、さらに、割込制御部57を設け、割込みの発生を最小限とし、相励磁方式が切り替わる際のステップ値補正処理の頻度を最小限とするようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンタ、複写機、ファクシミリ等の印刷装置における媒体搬送やヘッドを駆動するステッピングモータの制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、印刷装置の媒体搬送やヘッドを駆動するステッピングモータの電流リップルを小さくでき、ステッピングモータの発熱を抑えることができる技術としてマイクロステップ駆動技術があった。そして、特に、低速回転時および高速回転時の低周波加速・減速領域における振動を抑えたステッピングモータの駆動方法を提供する技術として、以下のような技術があった(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
まず、前記ステッピングモータの構成・動作を説明すると、ステッピングモータは、一般に、図5に示したように、90度間隔で配置された4個の固定子41と、当該固定子の内側に回転自在な永久磁石からなる回転子(以下「ロータ40」という)が設けられており、ロータ40にモータ出力軸が連結された構成となっている。
【0004】
そして、対向する2個の固定子には同一コイルが巻かれ、当該コイルに電磁電流としてA相電流、B相電流の相電流を流すことにより発生する磁界により永久磁石である回転子が反発して回転するトルクを発生するようになっている。
【0005】
前記相電流の供給パターンには1相励磁、1−2相励磁、2−2相励磁などがあり、1相励磁は、1相ごとに順に励磁し、基本ステップ角度で回転させる駆動方式であり、2−2相励磁は、常に相互に隣接する2相(A相・B相)を同時に励磁する駆動方式であり、1−2相励磁は、前記1相励磁と2−2相励磁を交互の繰り返す駆動方式である。
【0006】
そして、高速回転時の振動や騒音を防止するための駆動方式として、ステップ角をさらに細かく分割し回転を滑らかに駆動するマイクロステップ駆動方式があり、1−2相励磁を2倍細かくしたW1−2励磁、さらに2倍細かくした2W1−2励磁方式などがある。
【0007】
以上の各駆動方式による基本ステップを図8に示す。同図の数字は、右下45度の方向を「0」ステップとした相切替ステップ値(以下「ステップ値」という)を表している。同図に示したように、2−2相励磁方式では、相互に隣接する2相(A相・B相)を同時に励磁する励磁方式であるので、4つの45度方向へのステップとして表される。
【0008】
1−2相励磁方式は2−2相励磁方式のステップを2分割し、W1−2相励磁方式ではさらに2分割し、2W1−2相励磁方式ではさらに2分割したステップとなっている。
【0009】
従って、2−2相励磁方式は、基本ステップ角度は粗いが制御部の処理量が少ないので、高速回転での制御に適しており、逆に2W1−2相励磁方式では制御部の処理量は多くなるが、細かい駆動制御ができるので振動を抑えることのできる制御となる。
【0010】
これら各励磁方式の特徴を生かし、高速回転時では2−2相励磁方式或いは1−2相励磁を用い、低速回転時では、マイクロステップ駆動であるW1−2励磁や2W1−2励磁方式等を用い、モータの回転速度に応じて相励磁方式を切り替えることにより、低速回転時では低周波加速領域および減速領域における振動を抑え、高速回転時ではトルク不足を補うようにしている。
【特許文献1】特開平9−313000号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記従来の制御装置では、モータが高速回転しているときであっても、振動をできるだけ少なくする制御を行う必要のある処理を行う場合などでは、2−2相励磁から1−2相励磁に切り替えを行ったり、或いは当該処理後、1−2相励磁から2−2相励磁に戻すように制御する場合がある。
【0012】
以上のようにモータが回転しているときに励磁方式を切り替えると、各励磁方式の基本ステップ角の違いにより、ロータ40を連続的に駆動制御できず、モータ脱調の原因となることがあった。
【0013】
例えば、2−2相励磁方式を継続してモータが回転しているときでは、基本ステップ角が常に「8ステップ」であるので、初期ステップ「0」において想定する1つ前のロータ40の位置は右上位置となり、実際のロータ位置も同様であるので連続性は維持されるが、図7下段に示したように、2−2相励磁方式から1−2相励磁方式に切り替えを行う場合では、2−2相励磁方式の最後のステップは「ステップ24」であり(タイミングTe)、1−2相励磁方式に切り替えた場合の初期ステップ「0」において想定する1つ前のロータ位置はステップ「28」である右方向であるので、想定する前のロータ40位置が実際のロータ位置と異なってくる。
【0014】
その結果、図7の下段のタイムチャートの(A)として示したように、想定していたロータ回転時間が、半分の4ステップ分となる。逆に、1−2相励磁方式から2相励磁方式に切り換える際にも、同様に基本ステップ角の違いにより、初期位置から1つ前のステップにて予定するロータ位置が異なり、この場合は、ロータ40の回転が進み過ぎており、図7の(B)として示したようにロータ回転が4ステップ進み過ぎ、この場合もモータ脱調の原因となることがあった。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、上記課題を解決するため以下の構成を採用する。すなわち、複数の励磁方式にて、所定の時間間隔ごとに相切替ステップ値を更新しながら相切替を順次行って、ステッピングモータを回転駆動する制御装置において、前記励磁方式を切り替える際に、当該切替前後の各励磁方式の基本ステップ角の差に基づき前記相切替ステップ値の補正を行う励磁切替補正手段を設けた。
【発明の効果】
【0016】
以上の本発明によれば、ステッピングモータ制御装置によれば、励磁方式を切り替える際に基本ステップ角の違いを補正する励磁切替補正部を設け、励磁方式の切替による基本ステップ角の変化を補正できるようにしたので、モータが脱調することがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明に係る実施例を、図面を用いて詳細に説明する。なお、図面に共通する要素には同一の符号を付す。
【実施例1】
【0018】
実施例1のステッピングモータ制御装置は、励磁方式が切り替わる際にステップ値を補正する励磁切替補正部を設け、励磁方式の切替による基本ステップ角の変化を補正できるようにしたものである。
【0019】
(構成)
(印刷装置の構成)
まず、図2を用いて、実施例1の印刷装置の概略構成を説明する。同図に示したように、実施例1の印刷装置15は、印刷装置15を制御するCPU1と、CPU1からの指令により印刷やヘッド3等の各部の移動制御を行う制御部2と、制御部2の制御により各部の駆動を行うドライバ16から構成される。
【0020】
そして、CPU1には、制御を実行するためのプログラムを格納するプログラムROM9と、印刷するフォントデータを格納するフォントROM10、後述のホストコンピュータ13から送信されたデータを格納するRAM11が接続されており、さらに媒体位置を検出するセンサ12が接続されている。
【0021】
そして、制御部2には、ドライバ16として、ヘッド3を駆動して印刷を行うドライバ16a、ヘッド3を移動させるスペースモータ6を駆動制御するドライバ16b、媒体を搬送するフィードモータ7を駆動制御するドライバ16cが接続されている。また、制御部2には、印刷装置15の状態をユーザに知らせるLED4や、ユーザが設定できる各種のオプション指定などを行うSW5が接続されている。なお、以下の説明では、スペースモータ6とドライバ16bを例として説明するが、フィードモータ7とドライバ16cについても同様である。
【0022】
そして、ホストコンピュータ13と印刷装置15はIEEE1284、USBやRS232C等のインタフェース8にて接続される。
【0023】
以上の構成により、ホストコンピュータ13が、ホストコンピュータ13内のプリンタドライバ14により制御コマンドや文字データを生成すると、印刷装置15にインタフェース8を経由して転送し、これを受信し、RAM11に格納したCPU1は、当該格納した受信データをデコードしフォントデータをフォントROM10から取得しキャラクタやイメージデータの印刷データを作成し、媒体に印刷を行う。
【0024】
一方、制御部2は、SW5の設定値や媒体の位置を検出するセンサ12に基づき、作成した印刷データを印刷するために、媒体に印刷を行うヘッド3、当該ヘッド3を移動させるためのスペースモータ6、媒体を搬送するためのフィードモータ7を制御して印刷を行い、必要に応じて前記LED4にてユーザに状態等を知らせるようになっている。
【0025】
(制御部のファームウェア機能構成)
次に、図3のファームウェア機能ブロック図を用いて、CPU1にて実行するファームウェアの機能ブロックについて説明する。
【0026】
同図に示したように、CPU1にて実行するファームウェアは、電源投入によりRAM11等のメモリ、スペースモータ6、LED4などのデバイスの初期化を行う初期化処理部30と、初期化が完了した後、ホストコンピュータ13とのデータ送受信を開始するホストインタフェース送受信処理部31と、受信したデータをデコードして印刷データに展開する受信データデコード・展開処理部32とからなる。
【0027】
さらに、デコード処理により展開したデータを媒体に印刷するための制御を行う印刷制御処理33と、媒体を搬送する制御を行うフィードモータ制御処理34と、展開した印刷データを媒体に印刷するための制御を行うヘッド制御処理35と、媒体の任意の位置に印刷を行うためにヘッド3を移動するための制御を行うスペースモータ制御処理36とからなる。
【0028】
(制御部のハードウェア構成)
次に、図2にて説明した制御部2のうち、本発明に特に関係するステッピングモータ制御のハードウェア構成を図1の制御部2のハードウェア構成図を用いて説明する。
【0029】
同図に示したように、実施例1の制御部2は、相切替信号の切替時間をカウントするためのタイマー部23を有し、当該タイマー部23からの出力によってステップ値の更新を行う相切替ステップ更新部24を有する。そして、CPU1には相切替ステップ更新部24からの出力として割込信号29が接続されている。
【0030】
さらに、実施例1の制御部2は、CPU1からの指令に基づき設定する励磁方式と前記更新されたステップ値からA相およびB相の切替信号を生成する相切替信号出力部25aとA相およびB相の電流値に相当するPWM制御のオンデューティ時間を決定する電流制御信号出力部25bと、前記オンデューティ時間に応じたA相及びB相の電流制御信号をモータドライバ16bに出力する電流制御部26とを有する。
【0031】
図4は、32ステップに分割した前記ステップ値に対応するA相及びB相の相切替信号及びA相及びB相の電流値をまとめたテーブルである。なお、相切替信号の「1」は正方向の電流を流すことを表し、「0」は逆方向の電流を流すことを表す。また、ステップ値は、「0」から「31」までの整数で表され、タイマー部23からの出力パルスを相切替ステップ更新部24で検出することによりインクリメントされ、ステップ値が「31」のときに「0」にリセットされるようになっている。
【0032】
そして、各励磁方式によって相切替信号及び電流制御信号の切替タイミングが異なり、「各励磁方式に対する適用」欄の○印のステップ値のときだけ相切替信号、当該出力電流が適用され、相切替信号出力部25a、電流制御信号出力部25bにて当該相切替信号、出力電流に更新される。
【0033】
例えば、2−2相励磁の場合では、ステップ値が「0」、「8」、「16」、「24」に○印が記載されているので、ステップ値が「0」、「8」、「16」、「24」のときのみ、相切替信号、出力電流が適用される。
【0034】
そして、ステップ値が「0」の場合では、A相切替信号は「0」、B相切替信号は「1」、A相電流値、B相電流値はともに「74%」と記載されているので、図6のステップ「0」のように、ステッピングモータ(図5)のA相には74%の逆方向の電流を流し、B相には74%の正方向の電流を流すように電流制御部26により制御される。
【0035】
同様に、ステップ値が「0」、「8」、「16」、「24」のみ相切替信号、出力電流が適用されるので図6の破線の波形のように各相に電流が流れることになる。
【0036】
また、2W1−2相励磁方式では、ステップ値すべてに○印が記載されているので、すべてのステップ値において、相切替信号および出力電流が適用される。
【0037】
例えば、ステップ値が「1」の場合は、A相切替信号は「0」、B相切替信号は「1」、A相電流値は「83%」、B相電流値は「61%」と記載されているので、図6のステップ値「1」のように、ステッピングモータ(図7)のA相には83%の逆方向の電流を流し、B相には61%の正方向の電流を流すように電流制御部26により制御される。
【0038】
同様に、すべてのステップ値に相切替信号および出力電流が適用されるので図6の実線の波形のように各相に電流が流れることになる。
【0039】
実施例1の制御部2は、さらに励磁方式が変更されたときに、基本ステップ角の違いを補正するために適正なステップ値に補正する機能を有する励磁切替補正部27を設けている。励磁切替補正部27には、励磁方式が切替わったかどうかを検出する相切替タイミング検出部27aが内蔵されている。
【0040】
図9は、モータの正回転FOW、逆回転REVごとに、前記励磁切替補正部27にてステップ値を補正する補正値を格納したステップ値補正テーブルである。このステップ値補正テーブルは、例えば、励磁切替補正部27内の図示しないメモリに格納するようにしてもよいし、図示しない制御部2のメモリ等に格納するようにしてもよい。
【0041】
なお、図9の網掛けの部分は励磁方式が切り替わらなかった場合を示し、FOW方向の回転では、次のステップは1カウントアップするので「+1」となっており、REV方向の回転では次のステップは1カウントダウンするので「−1」となっている。
【0042】
そして、例えば、FOW方向の回転において、2−2相励磁方式から1−2相励磁方式に切り替えられたときは、「−3」となっているので4ステップ分、ステップ値を戻すように補正することになる。
【0043】
同様に、REV方向の回転において、2−2相励磁方式から1−2相励磁方式に切り替えられたときは、「+3」となっているので4ステップ分、ステップ値を進めるように補正することになる。
【0044】
(動作)
以上の構成により、実施例1のステッピングモータ制御装置は、以下のように動作する。この動作を図7の励磁方式切替時のタイムチャートおよび図10の動作フローチャート図および図11に示した割込み発生のタイムチャートを用いて詳細に説明する。なお、図7の励磁方式切替時のタイムチャートは、上段のチャートが実施例1を適用したときのタイムチャートであり、下段のチャートが従来技術を適用したときのタイムチャートである。
【0045】
(タイマー割込発生の動作)
まず、実施例1のステッピングモータ制御装置では、CPU1からのステッピングモータ回転駆動指令を受信すると、図11に示したタイムチャートのように所定のタイミングごとに割込み信号を発生させる。
【0046】
すなわち、CPU1から指令されるモータ回転速度に対応したタイマー値を随時セットし、クロック信号の立ち上がりのタイミングでタイマー値をカウントダウンする。
【0047】
そして、タイマー値が「0」となると、タイマー値ラッチフラッグを「1」として次のタイマー値をラッチし(タイミングTa)、次のクロックにて割込み信号を発生させ(タイミングTb)、ステップ値を更新するように動作する。
【0048】
そして、次のタイマー値への更新準備が終了すると、割込み信号を「0」とし、次のタイマー値を確定して置く(タイミングTc)。
【0049】
なお、ラッチするタイマー値は、同図に示したようにあらかじめ準備して置くようにすれば、次のタイマー値を準備するための更新処理時間後にタイマーをセットするような無駄な処理時間が発生することがない。
【0050】
(相切替の動作)
以上のタイマー割込みごとに、以下の処理を行う。この動作を図10の動作フローチャートを用いて説明する。まず、CPU1から励磁方式の切替要求があったかどうかを確認し(ステップS31)、励磁方式の切替要求がなかった場合は、現在の励磁方式のままであるのでステップ値を「+1」してステップS35に進む(ステップS32)。
【0051】
そして、現在の励磁方式と更新したステップ値に基づき図4の切替タイミングおよび各出力値テーブルを参照し、相切替信号、電流値を更新するタイミングか行うかどうかを判定し、切替タイミングでないときは、切替タイミングとなるまで待ち(ステップS35)、切替タイミングとなったときに、該当する相切替信号、電流値をセットし(ステップS36)、本処理を終了する。
【0052】
一方、ステップS31にて励磁方式の切替要求があった場合は、前述ステップS35と類似した処理として、要求のあった励磁方式、すなわち、切替後の励磁方式と次のステップ値に基づき図4の切替タイミングおよび各出力値テーブルを参照し、相切替信号、電流値を更新するタイミングか行うかどうかを判定し、切替タイミングでないときは、切替タイミングとなるまで待つ(ステップS33)。
【0053】
そして、切替タイミングとなったときに、図9のステップ値補正テーブルを参照し、該当する箇所の補正値にてステップ値を補正する(ステップS34)。例えば、ステップ値「0」となるときに、FOW方向の回転指令があり、2−2相励磁方式から1−2相励磁方式に切り替える指令があったときは、ステップ値補正テーブルに「−3」と格納されているので4ステップ分戻すように補正されステップ値は「29」に補正される。なお、本来であれば4ステップ分戻すので、ステップ値は「32−4=28」となるが、FOW方向の回転であるのでさらにインクリメントされた「29」に補正される。
【0054】
また、REV方向の回転指令があり、2−2相励磁方式から1−2相励磁方式に切り替える指令があったときは、ステップ値補正テーブルに「+3」と格納されているので実質4ステップ分先に進むように補正する。なお、この場合も、本来であれば4ステップ分先に進むようにするので、ステップ値は「0+4=4」となるが、REV方向の回転であるのでさらにデクリメントされた「3」に補正される。
【0055】
そして、新たな励磁方式と補正後のステップ値に基づき図4の切替タイミングおよび各出力値テーブルを参照し、相切替信号、電流値を更新するタイミングかどうかを判定し、切替タイミングでないときは、切替タイミングとなるまで待ち、切替タイミングとなったときに、該当する相切替信号、電流値をセットして((ステップS35・S36)、本処理を終了する。
【0056】
以上の動作を図7上段のタイムチャートを用いてさらに詳細に説明する。なお、このタイムチャートでは、2−2相励磁方式にて駆動されているステップ値「24」の後に(タイミングTe)、CPU1から2相励磁方式から1−2相励磁方式に変更する旨の指令があり(タイミングTf)、その後、ステップ値「12」の後に(タイミングTg)、CPU1から再び2相励磁方式に変更する旨の指令があったとき(タイミングTh)の例を示している。
【0057】
まず、2−2相励磁方式にて駆動されているので、ステップ値「8」、「16」、「24」、「0」にて相切替タイミングとなり、図6の破線のような駆動電流によりロータ40が順次回転する。
【0058】
そして、ステップ値「24」の次の相切替タイミングである「0」となったときに(タイミングTe)、前述のステップ値補正テーブルを参照し、4ステップ分ステップ値を戻し、ステップ値を「29」とする。そして、4ステップ経過後、再びステップ値が「0」となるので(タイミングTf)、1−2相励磁方式に切り替え、以降1−2相励磁方式による制御を継続して行う(図7(A)部)。
【0059】
そして、1−2相励磁に切替わった後では、「0」「4」「8」「12」「16」「20」「24」「28」にて相切替タイミングとなり、図4の各出力値テーブルを参照しながら駆動電流を更新しロータ40を同図のように順次回転させる。
【0060】
そして、ステップ値「12」の後に、CPU1から再び2相励磁方式に変更する旨の指令があったときでは、ステップ値「16」にて相切替タイミングとなるので、ステップ値「12」の次の相切替タイミングである「16」となったときに(タイミングTg)、ステップ値補正テーブルを参照し、1−2相励磁から2−2相励磁に切替わるときの補正値「+5」を読出し、ステップ値を「16+5=21」とし4ステップ分先に進むようにする。
【0061】
そして、4ステップ経過後、再びステップ値が「24」となるので(タイミングTh)、2−2相励磁方式に切り替え、以降2−2相励磁方式による制御を継続して行う(図7(B)部)。
【0062】
以上のように、モータが回転しているときに励磁方式が切替わっても、励磁方式間の基本ステップの違いを補正でき、想定するロータ40の位置と実際のロータ位置を合致させることができるので、連続性のある安定なモータ駆動制御を行うことができる。
【0063】
以上の実施例の説明では、図11のようにCPU1への割込信号29への割込みを各ステップごとに発生させ、ステップ値を補正するように説明したが、各励磁方式において切替えタイミング(図4の○印のタイミング)のみ割込みを発生させ、ステップ値を補正するようにすれば、補正の効果に加え、CPU1の負荷を軽減することもできる。
【0064】
また、相切替ステップ更新部24の出力である相切替信号25a・電流制御部信号出力部25bへの出力と、CPU1への割込信号を別にし、例えば、2−2相励磁方式での切替えタイミングにて割込信号29を発生させるようにして、図示しないタイミング分割手段にて補間したタイミングにてステップ値を補正するようにすれば、補正の効果に加え、CPU1の負荷を軽減することもできる。
【0065】
(実施例1の効果)
以上の実施例1のステッピングモータ制御装置によれば、励磁方式が切り替わる際に基本ステップ角の違いを補正する励磁切替補正部を設け、基本ステップ角の違いによるロータ位置の不連続性を補正できるようにしたので、モータが脱調することがない。
【実施例2】
【0066】
実施例2のステッピングモータ制御装置は、励磁方式を変更する際、ステップ値補正処理を実施する最小限の割込みを発生させる割込制御部57を設けたものである
【0067】
(構成)
実施例2のステッピングモータ制御装置の構成は、図12に示したように、実施例1の構成に加え、割込制御部57を新たに設けた構成となっている。その他の構成は、実施例1のステッピングモータ制御装置の構成と同様であるので、簡略化のためにその詳細な説明を省略する。
【0068】
割込制御部57は、相切替ステップ更新部24からCPU1への割込信号29を制御するもので、現在の励磁方式と次の励磁方式の切替タイミングの間隔の長い方の励磁方式の切替タイミングにおいてのみ、ステップ値補正処理を行う割込みを発生させるように割込信号29を制御するものである。
【0069】
ここで、図15は、モータの回転方向をFOWとした場合で、各励磁方式ごとの、ステップ値に対する相切替タイミングおよびA相、B相切替信号、電流値を示したものであり、実施例1の図9の相切替ステップ値補正テーブルの補正値をあらかじめ適用して順番を並べ替えたものである。
【0070】
すなわち、2−2相励磁方式から1−2相励磁方式に切り替えるときは、図9の相切替ステップ値補正テーブルのように、ステップ値を4つ戻すように補正するので、2−2相励磁方式のステップ0に対応する1−2相励磁方式でのステップ値を「28」を基点として並べ替えている。
【0071】
同様に、2−2相励磁方式からW1−2相励磁方式に切り替えるときは、相切替ステップ値補正テーブルによりステップ値を6つ戻すように補正するので、2−2相励磁方式のステップ0に対応するW1−2相励磁方式でのステップ値は「26」を基点として並べ替えている。
【0072】
同様に、2−2相励磁方式から2W1−2相励磁方式に切り替えるときは、相切替ステップ値補正テーブルによりステップ値を7つ戻すように補正するので、2−2相励磁方式のステップ0に対応するW1−2相励磁方式でのステップ値は「25」を基点として並べ替えている。
【0073】
モータの回転方向をREVとした場合でも、同様に、2−2相励磁方式から1−2相励磁方式に切り替えるときは、相切替ステップ値補正テーブルによりステップ値を4つ進むように補正するので、2−2相励磁方式のステップ0に対応する1−2相励磁方式でのステップ値は「4」を基点として並べ替えている。
【0074】
同様に、2−2相励磁方式からW1−2相励磁方式に切り替えるときは、相切替ステップ値補正テーブルによりステップ値を6つ進むように補正するので、2−2相励磁方式のステップ0に対応するW1−2相励磁方式でのステップ値は「6」を基点として並べ替えている。
【0075】
同様に、2−2相励磁方式から2W1−2相励磁方式に切り替えるときは、相切替ステップ値補正テーブルによりステップ値を7つ進むように補正するので、2−2相励磁方式のステップ0に対応するW1−2相励磁方式でのステップ値は「7」を基点として並べ替えている。
【0076】
このように並べ替えると、例えば、2−2相励磁方式から別の相励磁方式に変更する場合および別の相励磁方式から2−2相励磁方式に切り替える場合では、2−2相励磁方式の相切替タイミングにおいてのみ補正処理を行えばよいことがわかる。
【0077】
すなわち、ある励磁方式から別の励磁方式に切り替える場合、相切替タイミングの間隔が長い方の励磁方式の切替タイミングにおいてのみステップ値の補正を行えばよいことがわかる。このように、ステップ値の補正処理の間隔を長くするようにすれば、CPU1の処理量を大幅に削減することができる。
【0078】
(動作)
以上の実施例2のステッピングモータ制御装置の動作を図13の割込み発生のタイムチャートおよび図14の動作フローチャートを用いて詳細に説明する。なお、割込み信号以外のステップ値、タイマー値、タイマー値(ラッチ)、タイマー値ラッチフラッグ、カウンタ回路内部、クロック信号は、図11のタイムチャートと同様となっている。
【0079】
また、図14の動作フローチャートにおいて、ステップS41・S42、ステップ44・S45の動作は、実施例1のステップS31、S32、ステップ35・S36と同様であるので、簡略化して説明する。
【0080】
(タイマー割込発生の動作)
まず、実施例2のステッピングモータ制御装置では、CPU1からのステッピングモータ回転駆動指令を受信すると、図11に示したタイムチャートのようにクロックのタイミングにて所定のタイミングごとに割込み信号をステートカウントフラッグとして発生させる。
【0081】
すなわち、CPU1から指令されるモータ回転速度に対応したタイマー値を随時セットし、クロック信号の立ち上がりのタイミングでタイマー値をカウントダウンし、タイマー値が「0」となると、ラッチフラッグを「1」とし次のタイマー値をラッチし、次のクロックにてステートカウントフラッグを発生させ、ステップ値を更新するように動作する。そして、次のタイマー値への更新準備が終了すると、ステートカウントフラッグを「0」とし、次のタイマー値を確定する。
【0082】
そして、ステートカウントフラッグに基づき、現在の励磁方式と次の励磁方式の切替タイミングの長い方の励磁方式を選出し、当該励磁方式の相切替タイミングにて割込み信号として発生させる。
【0083】
例えば、2−2相励磁方式から1−2相励磁方式に切り替えるとき或いは逆に1−2相励磁方式から2−2相励磁方式に切り替えるときは、2−2相励磁方式の方が相切替タイミングの間隔が長いので、図13に示した2−2相励磁方式の間隔の割込みを発生させる。
【0084】
また、W1−2相励磁方式から2W1−2相励磁方式に切り替えるとき或いは逆に2W1−2相励磁方式からW1−2相励磁方式に切り替えるときは、W1−2相励磁方式の方が相切替タイミングの間隔が長いので、W1−2相励磁方式の間隔の割込みを発生させる。なお、励磁方式が同じ場合は、当該励磁方式の間隔にて割込みを発生させる。
【0085】
(相切替の動作)
実施例2のステッピングモータ制御装置では、以上の割込みごとに、図14に示した動作フローチャートの処理を行う。すなわち、まず、CPU1から励磁方式の切替要求があったかどうかを確認し、励磁方式の切替要求がなかった場合は、現在の励磁方式のままであるのでステップ値をインクリメントしてステップS44に進む((ステップS41・S42)。
【0086】
そして、現在の励磁方式と更新後のステップ値に基づき図4の切替タイミングおよび各出力値テーブルを参照し、相切替信号、電流値を更新するタイミングか行うかどうかを判定し、切替タイミングでないときは、切替タイミングとなるまで待ち、切替タイミングとなったときに、該当する相切替信号、電流値をセットし((ステップS44・S45)、本処理を終了する。
【0087】
一方、励磁方式の切替要求があった場合は、実施例1のステップS33のような相切替タイミングの確認処理は行わず、図9のステップ値補正テーブルを参照し、該当する箇所の補正値にてステップ値を補正する。例えば、FOW方向の回転指令があり、2−2相励磁方式から1−2相励磁方式に切り替える指令があったときは、ステップ値補正テーブルに「−3」と格納されているので4ステップ分ステップ値を戻すように補正されステップ値は「29」に補正される。
【0088】
一方、REV方向の回転指令があり、2−2相励磁方式から1−2相励磁方式に切り替える指令があったときは、ステップ値補正テーブルに「+3」と格納されているので実質4ステップ分先に進むように補正され、「3」に補正される。
【0089】
そして、新たな励磁方式と補正されたステップ値に基づき図4の切替タイミングおよび各出力値テーブルを参照し、相切替信号、電流値を更新するタイミングか行うかどうかを判定し、切替タイミングでないときは、切替タイミングとなるまで待ち、切替タイミングとなったときに、該当する相切替信号、電流値をセットして(ステップS44・S45)、本処理を終了する。
【0090】
(実施例2の効果)
以上のように実施例2のステッピングモータ制御装置によれば、励磁方式を変更する際、ステップ値補正処理を実施する最小限の割込みを発生させる割込制御部57を設け、ステップ値補正処理を最小限としたので、実施例1の効果に加え、CPU等の負荷を大幅に減らすことができる。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明は、プリンタ、複写機、ファクシミリ等の印刷装置など、媒体搬送やヘッドを駆動するステッピングモータを用いる機器に広く用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】実施例1の印刷装置の制御部の構成図である。
【図2】実施例1の印刷装置の構成図である。
【図3】実施例1の印刷装置のファームウェア機能ブロック図である。
【図4】実施例1の印刷装置の各ステップ値における切替タイミングおよび各出力値テーブルである。
【図5】ステッピングモータのA相・B相を説明する図である。
【図6】実施例1の印刷装置の各ステップ値における電流波形を説明する図である。
【図7】従来および実施例1の励磁方式切替時のタイムチャート図である。
【図8】各相励磁方式を説明する図である。
【図9】実施例1の印刷装置の相切替ステップ値補正テーブルである。
【図10】実施例1の印刷装置の動作フローチャート図である。
【図11】実施例1の印刷装置の割込み発生のタイムチャート図である。
【図12】実施例2の印刷装置の制御部の構成図である。
【図13】実施例2の印刷装置の割込み発生のタイムチャート図である。
【図14】実施例2の印刷装置の動作フローチャート図である。
【図15】実施例2の各ステップ値における切替タイミングおよび各出力値テーブルである。
【図16】実施例2の各ステップ値における切替タイミングおよび各出力値テーブルである。
【符号の説明】
【0093】
1 CPU
2 制御部
6 スペースモータ
7 フィードモータ
13 ホストコンピュータ
16b モータドライバ部
23 タイマー部
24 相切替ステップ更新部
25a 相切替出力部
25b 電流制御信号出力部
26 電流制御部
27 相励磁切替補正部
27a 相切替タイミング検出部
29 割込信号
33 印刷制御処理
34 フィードモータ制御処理
35 ヘッド制御処理
36 スペースモータ制御処理
40 ロータ
41 固定子
57 割込制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の励磁方式にて、所定の時間間隔ごとに相切替ステップ値を更新しながら相切替を順次行って、ステッピングモータを回転駆動するステッピングモータ制御装置であって、
前記励磁方式を切り替える際に、当該切替前後の各励磁方式の基本ステップ角の差に基づき前記相切替ステップ値の補正を行う励磁切替補正手段を設けたことを特徴とするステッピングモータ制御装置。
【請求項2】
前記相切替ステップ値の補正は、正回転のときは基本ステップ角の差を加算し、逆回転のときは、基本ステップ角の差を減算するようにしたことを特徴とする請求項1記載のステッピングモータ制御装置。
【請求項3】
前記所定の時間間隔を、切替前後の各励磁方式の基本ステップ角が大きい励磁方式の相切替の間隔とする割込制御手段を設け、
当該間隔にて発生させる割込みごとに、前記相切替ステップ値の補正を行うようにしたことを特徴とする請求項1および請求項2記載のステッピングモータ制御装置。
【請求項4】
前記励磁切替補正手段は、モータ回転中に励磁方式が切替わったときに、前記相切替ステップ値の補正を行うようにしたことを特徴とする請求項1ないし請求項3いずれか記載のステッピングモータ制御装置。
【請求項5】
複数の励磁方式を切替えてステッピングモータを制御するステッピングモータ制御装置であって、
第1の励磁方式から第2の励磁方式に切替える際に、ロータの現在位置、またはロータの移動時間に基づいて該第2の励磁方式の制御を行う相切替部を有することを特徴とするステッピングモータ制御装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5いずれか記載のステッピングモータ制御装置を設けたことを特徴とする印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2008−160900(P2008−160900A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−343478(P2006−343478)
【出願日】平成18年12月20日(2006.12.20)
【出願人】(591044164)株式会社沖データ (2,444)
【出願人】(594202361)株式会社沖データシステムズ (259)
【Fターム(参考)】