説明

ステントグラフト及び導入器アッセンブリ

上行大動脈(22)のA型解離を治療するためのステントグラフト(40)には、ステントグラフトを患者の大動脈に配備している間、当該ステントグラフトを束縛する働きをする縮径縫合糸ループ(56−60)が設けられている。縮径ループ(56−60)は、ステントグラフト(40)の場所を患者の管腔の中で精密に調節できる方式で、当該ステントグラフト(40)を中途まで配備させられるようにしている。この様にして、ステントグラフトを冠状動脈(26、28)のすぐそばに、それら冠状動脈が塞がれようがないという確信を持って設置することができる。ステントグラフト(40)には、固定を目的として、近位と遠位の裸ステント(44、52)も設けられている。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2009年11月19日出願の米国仮特許出願第61/262,839号、及び2009年11月18日出願のイギリス特許出願第GB0920235.9号並びに2009年11月19日出願の同第GB0920327.4号に対する優先権を主張し、前記特許出願それぞれをここに参考文献としてそっくりそのまま援用する。
【0002】
本発明の実施形態は、心臓に近接して上行大動脈に起こる解離であるA型解離を治療するために設計されたステントグラフトに関する。実施形態は、更に、A型解離を治療するべく上行大動脈の中へステントグラフトを配備するための導入器アッセンブリに関する。ここに開示されているステントグラフト及び導入器アッセンブリは、大動脈破裂、交流(transactions)、冠状動脈解離、弁断裂、心タンポナーゼ、遠位潅流障害、及び他の類似の欠陥を治療するのにも使用することができるであろう。
【背景技術】
【0003】
解離は、管腔の壁が裂け二次的な管腔即ち擬腔が生じて起こる。血液は、擬腔の中へ流れ込み、大抵は脈管を管腔壁が脆弱化した結果として外向きに風船の様に膨らませてしまう。解離を治療せずに放っておくと、管腔が破裂して患者に重大な結果を招く危険がある。解離は、縫合による亀裂の閉鎖や同様に縫合によることの多い管腔壁の強化を伴う開放性手術によって治療することができる。とはいえ、開放性手術手法は、患者に外傷が生じるという観点から、なるべく避けたく、特に胸部領域に対しては避けたいものである。この目的で、解離を、ステント又はステントグラフトを脈管壁の損傷のある部分に宛がって設置することによって治療する、管腔内治療法が幾つか開発されている。ステント又はステントグラフトが、管腔壁の2つの部分を一体に押圧するように働いて偽腔を封鎖する。偽腔を封鎖することができたなら、管腔壁は、多くの場合、自己修復することが分かっている。ステントグラフトは、亀裂箇所に設置するのが有用であり、そうすると偽腔への血液供給がせき止められる。これにより、偽腔の血圧が取り除かれ、かくして管腔壁の2つの部分が互いに接することが可能になり、やがては治癒する。
【0004】
解離を治療するためのステント及びステントグラフトの使用は、特にステント及びステントグラフトを管腔に精度よく設置することの難しさの観点から、分枝脈管や複雑な管腔幾何学形状などの様な厄介な問題を抱えていない管腔場所及び帯域に限定されてきた。A型解離は上行大動脈内での解離であるというその特殊な複雑性の結果として、ステント又はステントグラフトは使用されてこなかった。この場所では、患者の健康にとって極めて決定的な側枝のない大動脈は少しの長さしかない。大動脈弓の向こう側の管腔の幾何学形状も位置決め困難を生じさせる。
【0005】
より具体的には、A型胸部大動脈解離(TAD−A)は、上行胸部大動脈の内膜層が亀裂を発生させ、血液が大動脈壁の層へ流れ込むのを許してしまい、中膜又は内膜下血腫の発症が引き起こされる病態である。TAD−Aには、最初の48時間では1時間当たり約1乃至2%という非常に高い死亡率が付きまとう。現在、TAD−Aを治療する場合の唯一の選択肢は開放性手術による修復であり、それには、胸腔を開き、大動脈を挟み付け、脈管人工気管をその場に縫い付けることが含まれる。TAD−Aでの手術死亡率は大凡10%と際立っている。
【0006】
TAD−Aを迅速に治療できるようにすることは急務であるが、現在の手法は冗長で、侵襲的であり、高い疾病率と死亡率が付きまとう。TAD−Aを管腔内手法を介して治療することができれば、有意な一歩前進と死亡率の低下を象徴するものとなろう。しかしながら、上行大動脈弓は、冠状動脈及び腕頭動脈のせいで入り組んでおり、これらに何か詰まりがあれば患者の死亡につながりかねない。これが故に、上行大動脈のA型解離及び他の脈管欠陥の治療は、今なお開放性手術手法に制限されたままである。
【特許文献1】米国仮特許出願第61/262,839号
【特許文献2】イギリス特許出願第GB0920235.9号
【特許文献3】イギリス特許出願第GB0920327.4号
【発明の概要】
【0007】
1つの態様では、本発明の実施形態は、A型解離を治療するためのステントグラフトアッセンブリと、ステントグラフトを上行大動脈にA型解離の治療のために設置することのできる導入器アッセンブリと、を含むものである。ここに開示されているステントグラフト及び導入器アッセンブリは、大動脈破裂、交流、冠状動脈解離、弁断裂、心タンポナーゼ、遠位潅流障害、及び他の類似の欠陥を治療するのにも使用することができる。
【0008】
別の実施形態は、上行大動脈の欠陥を治療するためのステントグラフトにおいて、近位端と遠位端の設けられているグラフト材料の管状部分と、グラフト管に取り付けられている複数のステントリングと、グラフト管の近位端から延びていて、使用時に患者の大動脈洞に係合させるために当該グラフト管に対して外向きに張り出すように設計されている、少なくとも1つの裸ステントとを、を含んでいるステントグラフトを含むものである。
【0009】
ステントグラフトのこの配設には、ステントグラフトを所定位置に維持し、その移動を防止するという利点がある。このことは、患者の解剖学的構造のこの部分に掛かりを使用することの不都合を考えるととりわけ有用であり、よってステントグラフトの好適な実施形態には掛かりが一切設けられていない、少なくともその近位端には掛かりがないものとなっている。従って、この構造は上行大動脈の脈管欠陥を治療することのできる医療装置を提供することができる。
【0010】
実践上は、裸ステントは、大動脈動脈に近く且つ心臓そのものに近い大動脈の球状部分に位置付けられるように設計及び配設されている。この裸ステントは、こうして、ステントグラフトを管腔の所定位置に保持するのを支援することができる。
【0011】
1つの好適な実施形態では、グラフト管の近位端と遠位端の両方に裸ステントが設けられている。グラフト管の遠位端の裸ステントは、ステントグラフトが腕頭動脈の向こうへ移動しないようにステントグラフトを上行大動脈に固定するのを支援することができる。遠位の裸ステントは、グラフト管材料に対して外向きに張り出すのが好ましい。
【0012】
それぞれの裸ステントは、グラフト管材料の周りに周方向に配設されていて湾曲した端又は頂端を有している一連の指を提供するように波状のステント構造で形成されているのが好ましい。裸ステントのこの設計は、ステント構造への鋭い尖を回避しており、その結果、脈管壁への外傷は最小限に抑えられる。
【0013】
1つの好適な実施形態では、グラフト管材料は、長さが65mm程度であり、前記(又はそれぞれの)裸ステントは、グラフト管材料から約10mm延びている。
【0014】
ここに説明されている別の実施形態は、患者の上行大動脈の脈管欠陥を治療する方法において、上行大動脈に、近位端と遠位端の設けられているグラフト材料の管状部分と、グラフト管に取り付けられている複数のステントリングと、グラフト管の近位端から延びていて、グラフト管に対して外向きに張り出すように設計されている少なくとも1つの裸ステントと、が設けられたステントグラフトを位置付ける段階を含んでおり、前記配置段階によって、裸ステントは、ステントグラフトが所定位置に固定されるように患者の大動脈洞に位置付けられる、方法を含むものである。
【0015】
ステントグラフトの別の実施形態は、近位端と遠位端の設けられているグラフト材料の管状部分と、グラフト管に取り付けられている複数のステントリングと、少なくとも第1と第2の直径拘束装置であって、第1の直径拘束装置はグラフト管の近位端に又は近位端に近接して置かれており、前記又は少なくとも1つの第2の直径拘束装置はグラフト管に沿った中間の位置に置かれている、第1と第2の直径拘束装置と、を含むものである。
【0016】
直径拘束装置は、グラフト管ひいてはステントグラフトを初期の展開途上状態で配備させようとするものであって、展開途上状態では、グラフト管は、当該グラフト管の中央部分が束縛された形態に保たれた状態で、拘束装置によって拘束されていない帯域では半径方向外向きに展開することができる。これにより、ステントグラフトは、その完全配備に先立って患者の管腔内で位置直しできる形態に保たれる。ステントグラフトが正確精密な位置に入れば、拘束装置を解放してステントを管腔の中で一杯に配備することができる。
【0017】
その様な位置直しは、A型解離をステントグラフトによって治療できるようにする上で、ステントグラフトの位置を非常に精密に調節して、確実に、グラフト管が冠状動脈を塞ぐことも腕頭動脈を塞ぐこともないようにすることができるという点で極めて重要である。
【0018】
好適な実施形態では、拘束装置は、グラフト管の周りに周方向に配置される縮径ループである。その様なループは、ステントグラフトのループ設置場所の直径の拘束に、トリガーワイヤと組み合わせて使用することができる。
【0019】
グラフト管上に置かれた或るステント又はグラフト管に沿った中間の位置に配置された複数のステントの近位端と遠位端を拘束する働きをする、少なくとも2つの中間直径拘束装置が設けられているのが好適である。
【0020】
直径拘束装置は、こうして、グラフト管材料の近位帯域と遠位帯域が、第1の配備段階で、即ち一般的には導入器アッセンブリの外シースが引き込まれたときに、外向きに展開するのを許容することができる。これは、ステントグラフトの一部の部分が管腔壁に接触しはするがそれでもなお動かせる状態である、スントグラフトの第1の配備状態を提供する。
【0021】
好適な実施形態では、ステントグラフトは、グラフト管の近位端から延びる少なくとも1つの裸ステントを含んでいる。その様な裸ステントは、ステントグラフトを所定位置に維持しその移動を防ぐ機能を有している。これは、特に、患者の解剖学的構造のこの部分に掛かりを使用することの不都合を考えるととりわけ有用である。
【0022】
裸ステントは、グラフト管材料に対して外向きに張り出すように設計されているのが好都合である。実践上は、裸ステントは、大動脈動脈に近く且つ心臓そのものに近い大動脈の球状部分に位置付けられるように設計及び配設されている。この裸ステントは、こうして、ステントグラフトを管腔の所定位置に保持するのを支援することができる。
【0023】
好適な実施形態では、グラフト管の近位端と遠位端の両方に裸ステントが設けられている。グラフト管の遠位端の裸ステントは、ステントグラフトが腕頭動脈の向こうへ移動しないようにステントグラフトを上行大動脈に固定するのを支援することができる。遠位の裸ステントは、グラフト管に対して外向きに張り出すのが好ましい。
【0024】
前記又はそれぞれの裸ステントは、グラフト管材料の周りに周方向に配設されていて湾曲した端又は頂端を有する一連の指を提供するように波状のステント構造で形成されているのが好ましい。裸ステントのこの設計は、ステント構造への鋭い尖を回避しており、その結果、脈管壁への外傷は最小限に抑えられる。
【0025】
グラフト管材料は、長さが65mm程度であり、前記(又はそれぞれの)裸ステントは、グラフト管材料から約10mm延びているのが好都合である。
【0026】
好適な実施形態では、ステントグラフトには、グラフト管材料の遠位端から延びるステント区間が設けられている。使用時、当該ステント区間は、腕頭動脈、左総頚動脈、そして左鎖骨下動脈を横断して延びる。開放された造りであるため、ステントは、当該グラフト区間に移動に抗う支持を提供しながらもこれらの動脈への血液の流入を侵さない。当該ステント区間は、グラフト区間と一体とする、即ち単体構造とすることもできるが、好適な実施形態では、ステントグラフト区間の配備後に配備できる別体の構成要素として形成されている。
【0027】
別の実施形態は、ここに特定されているステントグラフトを配備するための導入器アッセンブリであって、ステントグラフトを担持するための担持体と、担持体を覆う位置から担持体を露出する引き込み位置へ動かせる外シースと、を含んでおり、且つシースの引き込み後にステントグラフトの拘束装置を半径方向に圧縮された形態に維持するための複数の拘束要素を含んでいる、導入器アッセンブリを含むものである。
【0028】
拘束要素は、こうして、取り付けられているステントグラフトを、完全配備前の最終的な位置決めに向けて導入器上に展開途上状態に保つことができる。
【0029】
拘束要素は、1つ又はそれ以上のトリガーワイヤを含んでいるのが好都合である。1つの実施形態では、トリガーワイヤは、近位の裸ステント並びに拘束装置を拘束するように、そして拘束ワイヤが引き込まれるとそれらを最近位位置から最遠位位置へ向かって解放してゆくように、配設されている。拘束ワイヤは、更に、ステントグラフトの遠位端、例えば、遠位の裸ステントが設けられている場合には当該遠位の裸ステントを、保持していてもよい。拘束ワイヤは、こうして、ステントグラフトの最近位部分からその遠位端へ向けての段階的配備を許容することができる。
【0030】
別の実施形態では、ステントグラフトを、グラフト管の一端から他端へ向かうのとは異なった順序で解放するために、トリガーワイヤの複数のセットが提供されている。例えば、トリガーワイヤの1つのセットが、ステントグラフトの遠位端を最初に解放するように配設され、トリガーワイヤの1つ又はそれ以上の他のセットが、ステントグラフトの他の部分、例えば、その近位端及び/又は中央部分を、一体か又は互いに独立かを問わず、解放するように配設されていてもよいであろう。
【0031】
導入器には、配備処置中に患者の心臓弁を通過させることのできる柔軟な拡張器先端が設けられているのが好都合である。
【0032】
以下に、本発明の実施形態を、単に非限定的な例として、添付図面を参照しながら説明する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】患者の大動脈の一例を示している。
【0034】
【図2】ステントグラフトの或る好適な実施形態の側面図である。
【0035】
【図3】図2のステントグラフトを前から見た図であり、直径束縛機構を示している図である。
【0036】
【図4】半ば束縛された形態にある、図2のステントグラフトの側面図である。
【0037】
【図5】半ば束縛された形態にあってその遠位端と近位の裸ステントとが解放された状態の、図2のステントグラフトの側面図である。
【0038】
【図6】図2のステントグラフトを所定位置に固定する場合に使用するためのステントの或る実施形態の側面図である。
【0039】
【図7】患者の大動脈にある、図2のステントグラフトと図6のステントの概略図である。
【0040】
【図8】患者の大動脈の中で配備途上形態にある図2のステントグラフトの概略図である。
【0041】
【図9】図2のステントグラフトのための導入器アッセンブリの或る実施形態の分解図である。
【0042】
【図10】図9と同じく、図2のステントグラフトのための導入器アッセンブリの或る実施形態の分解図である。
【0043】
【図11】図9及び図10の導入器アッセンブリの遠位端の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
図1を参照すると、患者の大動脈10の一例が示されている。大動脈は、大動脈弓14へつながる下行大動脈部分12を含んでおり、大動脈弓からは、腕頭動脈16と、左総頚動脈18と、左鎖骨下動脈20が延びている。大動脈弓14の向こう側では、上行大動脈22が心臓開口部24へとつながり、心臓開口部のすぐ手前で冠状動脈26、28が分岐している。
【0045】
これまでは、解離及び動脈瘤をステント又はステントグラフトによって治療する場合、その様な装置を大動脈弓14又は上行大動脈22に精度よく位置決めすることの難しさから、そして大動脈のこれらの部分からは多数の動脈分枝が始まっていることから、下行大動脈12しか治療することができなかった。例えば図1に点線の輪郭線で示されている、心臓の口や冠状動脈の近傍に又は冠状動脈を跨いで起こる解離や動脈瘤では、特殊な難しさが生じる。輪郭線30は、冠状動脈26、28のすぐ下流の解離の影響を模式的に示しており、一方、線32は、冠状動脈26、28の上流に起始する解離の輪郭線を示している。
【0046】
実践上は、上行大動脈22の管腔で分枝動脈のない長さ部分は、せいぜい約50乃至60mmであり、ということは、この区域に位置付けられることになる医療装置はどれも、分枝動脈の何れかを塞いだり管腔壁の組織へ外傷を引き起こしたりする危険を冒さないためには、非常に精度よく位置決めされなくてはならないことを意味する。
【0047】
図2を参照すると、A型解離30、32を治療するべく上行大動脈22の中へ装着するように設計されているステントグラフト40の或る実施形態が示されている。ここに開示されているステントグラフト及び導入器アッセンブリは、A型解離の治療に焦点を当てているが、それらは、大動脈破裂、交流、冠状動脈解離、弁断裂、心タンポナーゼ、遠位潅流障害、動脈瘤、及び他の類似の欠陥を治療するのにも使用することができる。
【0048】
ステントグラフト40は、現在入手できるグラフト材料又は当技術で考えられる他の材料の何れであってもよいとされるグラフト材料の管42を含んでいる。グラフト管材料42は、好ましくは、約50−70mmの長さ、好適な実施形態では約65mmの長さと、28mmから46mmの範囲の直径を有している。これらの寸法は、当然ながら、患者の上行大動脈22のサイズ及び冠状動脈26、28と腕頭動脈16の間の距離によって決まる。
【0049】
この実施形態では、ステントグラフト40には、5つのステントリング44−52が設けられており、そのうちの2つ、即ちステント44と52は、グラフト管42の末端を越えて延びている裸ステントである。他の3つのステントリング46、48、50は、この実施形態では、グラフト管42の内部に配置されていて、ステントリング46と50がグラフト管の端に近接しステントリング48が大凡その中心になるようにして、グラフト管の長さに沿って離間されている。
【0050】
裸ステント44及び52は、好適な実施形態では、脈管壁への損傷の危険を最小限にするために丸みのある頂端54を有している。好適な実施形態は、近位ステント44と遠位ステント52の2つの裸ステントを有しているが、遠位ステント52は省略することもできる。図面からは、少なくとも1つの近位の裸ステント44が外向きに張り出している、即ち半径方向にグラフト管42を越えているのが分かるであろう。遠位の裸ステント52は、同様の方式で張り出すものとすることができる。
【0051】
内部のステントリング46、48、50は、先の尖った頂端を有する従来のジグザグ形のステントリングとすることができるが、裸ステント44及び52の様に丸みのある頂端又はその他の適したステントリング設計を有していてもよい。
【0052】
示されている実施形態では、ステントリング44−52は、従来の方式でグラフト管に縫い付けられているが、それらは、その他の適した手段によってグラフト管42に固着されていてもよい。
【0053】
グラフト管42には、複数の直径拘束装置、即ちこの実施形態では縮径縫合糸ループ56、58、60、が装着されている。近位の縫合糸ループ56は、グラフト管42の近位端の周りに延びていて、この実施形態では、グラフト材料の中をくぐって外に出され、グラフト管の内側で、以下に更に詳細に説明されている様に導入器の担持体に縛るための実質的に均一に離間された複数のスレッド部分を提供している。縮径ループ56は、ステント44の頂端のところでグラフト管の内側へ通されているのが有用であり、そうすれば、ステント構造はループ56のための支持体となる。
【0054】
中間の縮径ループ58、60は、この実施形態では、真ん中のステントリング48の各端に設けられており、やはりここでもステントリング48の頂端のところでグラフト管42の内側へくぐらされている。
【0055】
この実施形態では、ステントグラフト40の遠位端には、縮径縫合糸ループが何も設けられていない。他の実施形態では、グラフト管42のこの端に、別の縮径縫合糸ループを設けているものもある。
【0056】
グラフトリング48の設計及びグラフト管42の中央部分に設けられるステントリングの数によって、中間の縮径ループ56、60は、1つしか設けられていない場合もあれば、2つより多く設けられている場合もあり得ることが理解されるであろう。この実施形態では、以下に更に詳しく説明されている様に、中央のステントリング48をその両端のところで導入器の担持体に束縛するために、2つの中間の縮径ループ58、60を有しているのが好適である。
【0057】
次に図3を参照すると、縮径ループ56、58、60が各々のグラフト管材料42の中へ延びている部分によってステントグラフトの中心点に向かって(実践上は、図に示されている様に担持体カニューレに向かって)牽引された状態で、導入器上に束縛されているステントグラフト40が示されている。グラフト管42上の束縛点の数は、ループ56、58、60のグラフト管の中へ延びている部分の数によって決まることになる。この実施例では、図3から明らかである様に、ループ毎に3つの束縛点56’、58’、60’がある。
【0058】
次に図4を参照すると、導入器100の遠位端の上へ装着されているステントグラフト40であって、半ば配備されたものの今なお導入器100上に束縛されたままの状態にあるステントグラフト40の側面図が示されている。この形態では、縮径ループ58、60は、以下に説明されている様に、それらが導入器100から解放されるまでステントグラフト40の半径方向展開を抑制する。こうして、この形態では、ステントグラフト42は、その中心部分の両側に、グラフト管の端より内に、2つの球状領域62、64を作り出している。この状態では、配備途上形態にあると言ってもよいステントグラフト40は、患者の管腔の中で位置直しすることができるので、上行大動脈22にステントグラフトを非常に精度よく位置決めすることが可能になる。
【0059】
図4は、裸ステント44、52の端が、導入器の担持体に束縛されていることも示している。
【0060】
次に図5を参照すると、ステントグラフト40は、裸ステントが担持体から解放され、その結果、半径方向外向きに、即ち実践上は患者の管腔壁に向かって展開できる形態にあるところが示されている。図5の図では、裸ステント44、52はどちらも解放されているが、幾つかの実施形態では、遠位の裸ステント52は、ステントグラフト40の残り部分が配備されてしまうまでは束縛されたままとされており、つまりそれは解放して展開させるステントグラフトの最後の要素とされているわけである。このことについては以下に更に詳しく説明する。
【0061】
次に図6を参照すると、ステントグラフト40と共に使用される遠位ステント70の或る実施形態が示されている。ステント70は、何れの所望の形式をとることもできるが、この実施形態では、複数のスレッド74によって一体に縛られた複数のジグザグ状ステントリング72で形成されている。この型式のステントは、長手方向には非常に可撓性に富み、なお且つ管腔壁に対する十分な半径方向展開力を提供することができる。
【0062】
図7は、患者の大動脈に装着されたステントグラフト40及びステント70アッセンブリを示しており、具体的には、ステントグラフト40は上行大動脈22に位置付けられており、ステント70は動脈分枝16−20に亘って延びている。
【0063】
近位の裸ステント44は、心臓開口部24のすぐそばの大動脈の球状領域23の中へ、冠状動脈26、28を横断して位置付けられている。張り出し形態を所与として、裸ステントは、球状領域23の中へ開き、ステントグラフト40を所定位置に保持するのを支援する役目を果たす。グラフト区間42は、進入点即ち解離の開口部を形成している亀裂80を上から覆って腕頭動脈16の近くまで延びていっている。
【0064】
遠位ステント70は、その近位端がステントグラフト40の内側にステントグラフト40に当接して嵌るように配置されていて、分枝動脈16−20を横切って延びている。ステント70は、ステントグラフト40の遠位端を管腔壁に当てて押圧し、ステントグラフト40の位置を維持し、それによってその移動を防止する役目を果たしている。
【0065】
幾つかの実施形態では、ステントグラフト40とステント70は、一体に形成すること、即ち単体構造とすることができよう。とはいえ、それら2つは別々の構成要素であるのが好適である。
【0066】
図8は、上行大動脈の所定位置で半ば配備状態にありながらなお導入器100に取り付けられ半ば束縛されているステントグラフト40を示している。見て分かる様に、ステントグラフト40は、管腔の壁に向かって展開することができるが、ステントグラフトを導入器から完全に解放する前に正確な位置決めを確保するために、必要に応じ、なおも管腔に沿って前後に動かすことができる。
【0067】
図2から図8は、複数の直径絞り装置56、58、60が設けられているステントグラフトの実施形態に焦点を当てているが、これらは本発明の実施形態どれも必須というわけではない。具体的には、ステントグラフトは、裸ステント44をその近位端に備え複数のステントをグラフト管42に結合させた構造として提供することもできよう。ループ56、58、60、及び遠位の裸ステント52は、使用される必要はない。この実施形態では、裸ステント44は、使用時に大動脈洞23の凹部に係合するように外向きに張り出し、そうして、確実に、ステントグラフト40を冠状動脈26、28の向こうの所定位置に留まらせ腕頭動脈16を遮るように移動してゆかないようにする固定要素としての役目を果たす。裸ステント44は、グラフト管から外へ、大動脈洞23への適度な固定を提供する所定の距離だけ延びているのが好適であり、例えば、成人では約10mm延びていてもよい。裸ステントのこの設計は、更に、裸ステントが大動脈根組織に係合することで、装置を近位方向に押すように作用する何らかの力に抵抗する働きをする(ステントの頂端が凹んだ大動脈根の中へ押し込まれ近位方向へ装置が動くのを防止することになる)。
【0068】
ステントグラフト40は、更に、ステントグラフト40を上流へ移動してゆかないように固定し、それにより大動脈弁に向けた移動を防止する機能を有する、遠位の裸ステント52を含んでいるのが好適である。裸ステント44、52のおかげで、ステントグラフトには、脈管壁への損傷を引き起こしかねない掛かりを一切持たせないようにすることができる。
【0069】
裸ステントのグラフト管42の向こう側に露出させる量は、裸ステントを保持する縫合糸の位置によって制御することができる。
【0070】
示されているステントグラフトの実施形態は、グラフト管42内部に置かれているステント46、48、50を有しているが、好適な実施形態では、真ん中のステント48はグラフト管42の外部に置かれている。この方式では、ステント48は、装置の長手方向及び周方向の安定性を提供して、装置を角及び/又は蛇行のある解剖学的構造に配備させるときに確実に装置が脈管構造に整合し座屈しないようにする、本体ステントの役目を果たす。ステント46及び50は、ステントグラフト40の脈管壁に対する良好なシール性を確保するシールステントである。
【0071】
ステントグラフトのこの実施形態も同様に、図6に示されている型式の遠位ステントと共に使用することができ、遠位ステントはステントグラフト40と別の構成要素であってもよいし一体化されていてもよい。
【0072】
グラフト管には、図2から図8の実施形態と同様に、成人の場合で約50乃至70mmの長さ、好適には約65mmの長さを持たせることができる。グラフト管には、図2から図8の実施形態と同様の直径を持たせることができる。
【0073】
全ての実施形態では、ステントは、形状記憶材料、好適にはニチノールから形成されているのが好ましい。
【0074】
次に図9及び図10を参照すると、図1から図8に示されているステントグラフト40を配備するための導入器アッセンブリの或る実施形態が示されている。導入器100は、外部操作部区間112と、遠位取付部領域114と、近位取付部領域116と、を含んでいる。遠位取付部領域114と近位取付部領域116は、それぞれ、ステントグラフト118の遠位端と近位端を固定している。ステントグラフトを配備するための医療処置中、遠位取付部領域114と近位取付部領域116は、患者の管腔を通って所望の配備部位へ進められる。導入器を操作するべく外科医が働き掛ける外部操作部区間112は、処置の間中患者の外に留められる。
【0075】
導入器110の近位取付部領域116は拡張器先端120を含んでおり、拡張器先端には典型的には従来型のガイドワイヤ(図示せず)を受け入れるための孔122が設けられている。長手方向孔122は、同時に、医用試薬を導入するためのチャネルを提供している。例えば、医療処置の設置段階及び配備段階で血管造影を施行できるように造影剤を供給するのが望ましいこともあろう。
【0076】
拡張器先端120には従来式に可撓性の薄壁金属管から作られたガイドワイヤカテーテル124が締結されている。ガイドワイヤカテーテル124は、導入器100結果、遠位取付部領域114は、長手方向及び回転方向に操作できる。ガイドワイヤカテーテル124は、導入器100を抜けて操作部区間112へ延び、接続装置126のところで従来の方式で終端している。
【0077】
接続装置126は、試薬を内側のカテーテル124の中へ導入するのを捗らせるシリンジを受け入れるように設計されている。ガイドワイヤカテーテル124は、可撓性の拡張器先端120の開口128と流体連通している。従って、接続装置126の中へ導入された試薬は、開口128へ流れ、そこから流出してゆく。
【0078】
典型的にはプラスチック材料で作られている押出器シース又はロッド130(以下では押出器部材と呼称)が、ガイドワイヤカテーテル124の半径方向外側に当該カテーテルと同軸に搭載されている。押出器部材130は、「厚肉壁」であり、即ちその壁の厚さは好適にはガイドワイヤカテーテル124の壁の数倍大きい。
【0079】
押出器部材130の半径方向外側には当該押出器部材の上を同軸にシース132が延びている。押出器部材130とシース132は、遠位方向に操作領域112まで延びている。
【0080】
この実施形態ではステントグラフト40であるインプラント118は、シース132によって圧縮状態に保定されている。シース132は、遠位方向に、外部操作部区間112のシースマニピュレータ及び止血シールユニット134へ延びている。止血シールユニット134は、止血シール(図示せず)と、従来のルアロック138によって当該ユニット134に保持されている側管136と、を含んでいる。
【0081】
シースマニピュレータ及び止血シールユニット134は、更に、シース132を止血シールへ締め付ける締付カラー(図示せず)と、押出器ロッド130の周りに止血シールを形成するシリコンシールリング(図示せず)を含んでいる。側管138は、押出器ロッド130とシース132の間での医用流体の導入をやり易くする。典型的には食塩水が使用されている。
【0082】
導入器100の組立時、インプラント118を外力によって圧縮状態に保持させながら、近位取付部領域116の拡張器先端120の近位端の上からシース132を前進させる。適した遠位取付(保定)部区間(本図には見えない)が押出器ロッド130に連結されていて、処置中、人工器官118の遠位端140を保定している。
【0083】
人工器官118の遠位端には、複数のトリガーワイヤ142、144が設けられている。外部操作部区間112の近位部分は、本体148に搭載された少なくとも1つの解放ワイヤ作動部区間150を含んでおり、当該本体148自体は押出器部材130に搭載されている。ガイドワイヤカテーテル124は本体148を通り抜けている。トリガーワイヤ解放機構146、150は、本体148上に滑動可能に搭載されている。
【0084】
止血シール(図示せず)は、解放ワイヤを医療処置中の無益な血液損失なしに本体148を通して外へ延ばせるようにするために含まれている。
【0085】
外部操作部区間112の近位部分は、本体148の近位端の上へ搭載されているピン万力154を含んでいる。ピン万力154は、ねじ込み口金156を有している。ねじ込まれているときは、ピン万力154の万力ジョー(図示せず)がガイドワイヤカテーテル124を締め付け又は係合している。万力ジョーが係合しているとき、ガイドワイヤカテーテル124は本体148と一体に動くことしかできず、ひいては押出器部材130と一体に動くことしかできない。ねじ込み口金156が締められた状態では、アッセンブリ全体が1個の部品として一体に動かされることになる。導入器アッセンブリ112が所望の配備位置に入ってしまえば、シース132を遠位取付部区間114の近位側手前まで引っ込める。
【0086】
次に図11を参照すると、導入器100の遠位端が示されている。ステントグラフト40を担持しているカニューレ124には、この実施形態では、第1及び第2のスロット160、162がカニューレの壁に設けられている。スロットは、トリガーワイヤ142、144にアクセスできるサイズ、具体的には、縮径縫合糸ループ58、60をトリガーワイヤに連結できるサイズである。
【0087】
好適な実施形態では、一体に働かせるように配設されている3本のトリガーワイヤ142、144が設けられている。トリガーワイヤ142、144は、担持体130の孔を通って、裸ステント44、52の端に相当する位置並びに縮径縫合糸ループ56、58、60の位置の開口そばを通過している。この方式では、トリガーワイヤは、ステントグラフト40を半径方向に図4及び図8に示されている形態へ縛り付ける、即ち束縛することができる。実践上、ステントグラフト40は、図4及び図8に示されているよりも更に長手方向に引き伸ばされた状態にあるはずであり、その結果、外向きの膨らみはこれらの図面に示されているより小さいはずである。
【0088】
外シース132が配備処置中はステントグラフトを覆っており、ひいてはステントグラフト40全体を担持体124に当てて押圧している。
【0089】
配備に際し、導入器100の遠位端が管腔内的に治療部位である上行大動脈22へ送り込まれてしまえば、シース132を引き戻し、即ち引き込んで、ステントグラフト40を露出する。ステントグラフト40は、シースから解放されてしまえば、図4及び図8に示されているその展開途上位置へ配備されることになる。この形態では、上行大動脈22内でステントグラフト40の位置をその精密な位置決めを確保するように調節することはなお可能である。外科医がこの位置決めに満足したら、トリガーワイヤを解放すればよい。一致して働く3本のトリガーワイヤを使用している好適な実施形態では、ステントグラフト40がその近位位置から最初に解放される。即ち、近位の裸ステント44が最初に解放され、解放と同時に外向きに張り出すことになる。トリガーワイヤを継続して引き込んでゆくと、第1の直径束縛ループ56が次に解放されて、グラフト管42の近位端が展開できるようになる。この形態では、ステントグラフト40の位置を調節すること、具体的には、確実に、その近位端が冠状動脈26、28を塞ぐのを回避し裸ステント44を大動脈の球状部分23の開口に着座させるようにすること、はなお可能である。
【0090】
多くの事例では、ステントグラフト40は、偽腔壁に当接し、こうして、その完全配備まではそれら壁によってその場に半ば保持されることになる。
【0091】
トリガーワイヤが更に引き込まれてゆくと、順番に、縮径ループ58と60、そして次に遠位の裸ステント52が解放される。こうして、ステントグラフト40は、段階的に、その位置を精密に調節できる方式で配備されてゆく。
【0092】
ステントグラフト40が配備されてしまえば、配備動作の第2段階で、遠位ステント70が、例えば図7に示されている様に、遠位ステントをその近位端がステントグラフト40の遠位端内に嵌るように展開させることによって配備される。
【0093】
以上に説明されている様に、他の実施形態では、配備順序は変えられることもあり、具体的には、追加のトリガ機構が設けられることによって、変えられることもあろう。例えば、遠位の裸ステント52は、トリガーワイヤではなしにスリーブによって保定されることもあろうし、そうなればトリガーワイヤとは独立に配備させることができるであろう。別の実施形態では、トリガーワイヤの複数のセットが設けられていてもよく、例えば、裸ステントと縮径ループの各々に1セットずつ連結して2つのセットが設けられていてもよく、そうすれば、裸ステントとグラフト管本体の配備を外科医の好む順序又は特定の配備処置にとって適した順序で起こすことができる。例えば、状況によっては、ステントグラフト本体40を、裸ステント44、52であるステントグラフトの端を解放するより前に配備するのが望ましい場合もあろう。別の実施例では、ステントグラフト40を、その遠位端から最初に配備するのが望ましい場合もあろう。
【0094】
様々な実施形態を示している図の描画は必ずしも縮尺が合っているわけではない。一部には或る特定の詳細事項が強調のために拡大されている描画もあり、諸部分の数又は比率が様々に異なっているからといって、1つ又はそれ以上の特許請求項によって別途規定のない限り、それを限定を課すものとの意に読み取ってはならない。当業者には、実施形態については、異なった実施形態に関してここに説明されている特徴を、ここに提示されている特許請求の範囲による範囲内に留まりながらも、互いに組み合わせたり、現在知られている技術又は将来開発されるであろう技術と組み合わせたりできることを含め、ここに明示的に示されていない実施形態も本発明の範囲内で実践され得るものであることが理解されるであろう。故に、以上の詳細な説明は、限定を課すのではなくむしろ説明目的であると見なされることを主旨とする。そして、付随の特許請求の範囲が、そのあらゆる等価物を含め、本発明の精神及び範囲を定義することを意図するものであることを理解されたい。
【符号の説明】
【0095】
10 大動脈
12 下行大動脈
14 大動脈弓
16 腕頭動脈
18 左総頚動脈
20 左鎖骨下動脈
22 上行大動脈
23 大動脈洞
24 心臓開口部
26、28 冠状動脈
30、32 A型解離の輪郭線
40 ステントグラフト
42 グラフト管
44、46、48、50、52 ステントリング (44と52は裸)
54 ステント頂端
56、58、60 縮径縫合糸ループ
56’、58’、60’ 拘束点
62、64 球状領域
70 遠位ステント
72 ステントリング
74 スレッド
80 亀裂
100 導入器
112 外部操作部区間
114 遠位取付部領域
116 近位取付部領域
118 インプラント、人工器官、ステントグラフト
120 拡張器先端
122 ガイドワイヤ受け入れ用の孔
124 ガイドワイヤカテーテル
126 接続装置
128 拡張器先端の開口
130 押出器部材、押出器ロッド
132 シース
134 シースマニピュレータ及び止血シールユニット
136 側管
138 ルアロック
140 118の遠位端
142、144 トリガーワイヤ
146、150 トリガーワイヤ解放機構
148 本体
154 ピン万力
156 ねじ込み口金
160、162 スロット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
近位端と遠位端の設けられているグラフト材料の管状部分と、前記グラフト管に取り付けられている複数のステントリングと、少なくとも第1と第2の直径拘束装置とを有し、前記第1の直径拘束装置は前記グラフト管の前記近位端に又は前記近位端に近接して置かれており、少なくとも1つの前記第2の直径拘束装置は前記グラフト管に沿った中間の位置に置かれているステントグラフト。
【請求項2】
前記第2の直径拘束装置は、前記グラフト管に沿った実質的に半分の地点に置かれている、請求項1に記載のステントグラフト。
【請求項3】
前記拘束装置は、前記グラフト管の周りに周方向に配置されている直径収縮ループである、請求項1又は2に記載のステントグラフト。
【請求項4】
前記グラフト管上に置かれている1つのステント又は前記グラフト管に沿った中間の位置に配置されている複数のステントの近位端と遠位端を拘束する働きをする少なくとも2つの第2の直径拘束装置が設けられている、上記請求項1乃至3の何れか一項に記載のステントグラフト。
【請求項5】
前記グラフト管の近位端から延びる裸ステントを含んでいる、上記請求項1乃至4の何れか一項に記載のステントグラフト。
【請求項6】
前記裸ステントは、前記グラフト管に対して外向きに張り出すように設計されている、請求項5に記載のステントグラフト。
【請求項7】
前記裸ステントは、グラフト管材料の周りに周方向に配設されていて、湾曲した頂端を有している一連の指状部分を提供する波状のステント構造で形成されている、請求項6に記載のステントグラフト。
【請求項8】
前記グラフト管の前記近位端と前記遠位端の両方に裸ステントが設けられている、上記請求項1乃至7の何れか一項に記載のステントグラフト。
【請求項9】
前記遠位の裸ステントは、前記グラフト管材料に対して外向きに張り出す、請求項8に記載のステントグラフト。
【請求項10】
それぞれの裸ステントは、前記グラフト管材料の周りに周方向に配設されていて湾曲した頂端を有している一連の指状部分を提供する波状ステント構造で形成されている、請求項8に記載のステントグラフト。
【請求項11】
前記グラフト管は長さが65mm程度である、上記請求項1乃至10の何れか一項に記載のステントグラフト。
【請求項12】
前記ステントグラフトには、前記グラフト管材料の前記遠位端から延びるステント区間が設けられている、上記請求項1乃至11項の何れか一項に記載のステントグラフト。
【請求項13】
前記ステント区間は、前記グラフト区間と一体化されているものと別体構成要素のうちの一方である、請求項12に記載のステントグラフト。
【請求項14】
請求項1に記載のステントグラフトを配備するための導入器アッセンブリにおいて、前記ステントグラフトを担持するための担持体と、前記担持体を覆う位置から当該担持体を露出する引き込み位置へ動かせる外シースと、を含んでおり、且つ前記シースの引き込み後に前記ステントグラフトの前記拘束装置を半径方向に圧縮された形態に維持するための複数の拘束要素を含んでいる、導入器アッセンブリ。
【請求項15】
前記拘束要素は、1つ又はそれ以上のトリガーワイヤを含んでいる、請求項14に記載の導入器アッセンブリ。
【請求項16】
前記トリガーワイヤは、前記ステントグラフトの近位の裸ステント並びに拘束装置を拘束するように、そして前記拘束ワイヤが引き込まれるとそれらを最近位位置から最遠位位置へ向かって解放してゆくように、配設されている、請求項15に記載の導入器アッセンブリ。
【請求項17】
前記拘束ワイヤは、前記ステントグラフトの前記遠位端も保持する、請求項16に記載の導入器アッセンブリ。
【請求項18】
トリガーワイヤの複数のセットを含んでいる、請求項15に記載の導入器アッセンブリ。
【請求項19】
前記配備処置時に患者の心臓弁を通過させることのできる柔軟な拡張器先端を含んでいる、請求項14に記載の導入器アッセンブリ。
【請求項20】
上行大動脈の欠陥を治療するためのステントグラフトにおいて、近位端と遠位端の設けられているグラフト材料の管状部分と、前記グラフト管に取り付けられている複数のステントリングと、前記グラフト管の前記近位端から延びていて、使用時に患者の大動脈洞の腔に係合させるために当該グラフト管に対して外向きに張り出すように設計されている、少なくとも1つの裸ステントと、を含んでいるステントグラフト。
【請求項21】
前記グラフト管の前記近位端と前記遠位端の両方に裸ステントが設けられている、請求項20に記載のステントグラフト。
【請求項22】
前記遠位の裸ステントは、前記グラフト管材料に対して外向きに張り出す、請求項21に記載のステントグラフト。
【請求項23】
前記裸ステントは、前記グラフト管材料の周りに周方向に配設されていて湾曲した端又は頂端を有している一連の指を提供するように波状のステント構造で形成されている、請求項20に記載のステントグラフト。
【請求項24】
前記グラフト管材料は、長さが65mm程度である、請求項20乃至23の何れか一項に記載のステントグラフト。
【請求項25】
前記裸ステントは、前記グラフト管材料から約10mm延びている、請求項20乃至24の何れか一項に記載のステントグラフト。
【請求項26】
少なくとも第1と第2の直径拘束装置であって、前記第1の直径拘束装置は前記グラフト管の前記近位端に又は前記近位端に近接して置かれており、前記又は少なくとも1つの第2の直径拘束装置は前記グラフト管に沿った中間の位置に置かれている、第1と第2の直径拘束装置を含んでいる、請求項20乃至25の何れか一項に記載のステントグラフト。
【請求項27】
前記第2の直径拘束装置は、前記グラフト管に沿った実質的に半分の地点に置かれている、請求項26に記載のステントグラフト。
【請求項28】
前記拘束装置は、前記グラフト管の周りに周方向に配置されている直径収縮ループである、請求項26又は27に記載のステントグラフト。
【請求項29】
前記グラフト管上に置かれている1つのステント又は前記グラフト管に沿った中間の位置に配置されている複数のステントの近位端と遠位端を拘束する働きをする少なくとも2つの第2直径拘束装置が設けられている、請求項26、27、又は28に記載のステントグラフト。
【請求項30】
前記ステントグラフトには、前記グラフト管材料の前記遠位端から延びるステント区間が設けられている、請求項20乃至29の何れか一項に記載のステントグラフト。
【請求項31】
前記ステント区間は、前記グラフト区間と一体化されているものと別体構成要素のうちの一方である、請求項30に記載のステントグラフト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2013−511335(P2013−511335A)
【公表日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−539958(P2012−539958)
【出願日】平成22年11月15日(2010.11.15)
【国際出願番号】PCT/US2010/056673
【国際公開番号】WO2011/062858
【国際公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(511152957)クック メディカル テクノロジーズ エルエルシー (76)
【氏名又は名称原語表記】COOK MEDICAL TECHNOLOGIES LLC
【Fターム(参考)】