説明

ストレス下にある患者の処置

重篤な患者に栄養を供給する方法及び組成物が提供される。一実施形態では、この方法は、全身性炎症反応段階及び続く代償性抗炎症反応段階を特徴とする病状を有する患者に、患者が第1段階にある間に第1の栄養組成物を投与すること、患者が第2段階にある間に患者に第2の異なる栄養組成物を投与することを含む。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[背景技術]
[0001]本発明は、一般には健康及び栄養に関する。より具体的には、本発明は、ストレス下にあるか又は重篤な患者に栄養を供給する方法及び組成物に関する。
【0002】
[0002]医療センターの集中治療室(「ICU」)においては、ストレス下にあるか又は重篤な患者は、一般的に、敗血症、重症感染症、急性膵炎、外傷及び火傷などの病状を有する患者、又は腹部大手術を受けた患者である。当初、これらの患者はショック又はストレス状態にあり、彼らの代謝反応はフリーラジカル及び炎症誘発性サイトカインを生成させる。さらに、腸管領域への血流量が低下し、代謝速度が低下し、グルタチオンレベルが低下する。この段階での患者への最終結果は、酸化的ストレスの増加、炎症、異化過大、高血糖及び腸管統合性の喪失である。
【0003】
[0003]この段階が過ぎると、患者は代償性抗炎症反応が起こる異化段階に入る。一般的に、エネルギー消費が増加し、筋タンパク質の減少がある。さらに、免疫機能が損なわれ、腸管萎縮が起こる。一般に、患者はこの段階でICUを離れる。これらの2段階は異なる様式で体に影響を及ぼすので、患者は、各段階で、非常に異なる栄養要求性を示す可能性がある。
[概要]
【0004】
[0004]本発明は、一般には健康及び栄養に関する。より具体的には、本発明は、重篤な患者、例えばICU患者に栄養を供給する方法及び組成物に関する。
【0005】
[0005]一実施形態では、本発明は、全身性炎症反応段階(以下、「SIRS」)及び代償性抗炎症反応段階(以下、「CARS」)を特徴とする病状を有する重症患者に栄養を供給する方法を提供する。例えば、本方法は、患者がSIRS段階にある間に患者に第1の栄養組成物を投与すること、及び患者がCARS段階にある間に患者に第2の異なる栄養組成物を投与することを含む。
【0006】
[0006]一実施形態では、第1の栄養組成物は、タンパク源、炭水化物源、脂質源、ビタミン類、ミネラル類及びそれらの組合せからなる群から選択される1つ又は複数の成分を含む。
【0007】
[0007]一実施形態では、第1の栄養組成物のタンパク源は、スレオニンを含む。タンパク源は、甘味ホエータンパク質、カゼイン−糖マクロペプチド、遊離スレオニンを添加したカゼイン、スレオニンを含有する化合物及びそれらの組合せからなる群から選択される成分を含むこともできる。スレオニンは、タンパク源のアミノ酸の少なくとも約5.5重量%を構成することができる。
【0008】
[0008]一実施形態では、第1の栄養組成物のタンパク源は、システインを含む。タンパク源は、ホエータンパク質、遊離グルタチオン、システイン前駆体、プロドラッグ及びそれらの組合せからなる群から選択される成分を含むこともできる。
【0009】
[0009]一実施形態では、第1の栄養組成物のタンパク源は、タンパク質加水分解物を含む。タンパク源は、加水分解されたホエータンパク質を含むこともできる。
【0010】
[0010]一実施形態では、タンパク源は、第1の栄養組成物のエネルギーの約10%から約20%を提供する。
【0011】
[0011]一実施形態では、第1の栄養組成物の炭水化物源は、マルトデキストリン、コーンスターチ、化工デンプン、ショ糖及びそれらの組合せからなる群から選択される成分を含む。一実施形態では、炭水化物源は、第1の栄養組成物のエネルギーの約35%から約65%を提供することができる。
【0012】
[0012]一実施形態では、第1の栄養組成物は、ラクトースを含有しない。
【0013】
[0013]一実施形態では、第1の栄養組成物の脂質源は、中鎖トリグリセリドと長鎖トリグリセリドとの混合物を含む。脂質源は、少なくとも約30重量%から約80重量%の中鎖トリグリセリドを含むことができる。脂質源は、ヒマワリ油、ナタネ油、ダイズ油、乳脂、トウモロコシ油、ダイズレシチン、ヤシ油及びそれらの組合せからなる群から選択される成分を含むことができる。
【0014】
[0014]一実施形態では、第1の栄養組成物は、多価不飽和脂肪酸オメガ6(n−6)とオメガ3(n−3)との比が、約1:1から約10:1となるように設計された脂質プロフィールを含む。
【0015】
[0015]一実施形態では、脂質源は、第1の栄養組成物のエネルギーの約20%から約50%を提供する。
【0016】
[0016]一実施形態では、第1の栄養組成物は、約800kcal/lから約1200kcal/lのエネルギー含量を有する。
【0017】
[0017]一実施形態では、第1の栄養組成物は、溶解性の粉末、濃縮液、直接飲用可能な製剤及びそれらの組合せの形である。
【0018】
[0018]一実施形態では、第2の栄養組成物は、タンパク源、脂質源、炭水化物源及びそれらの組合せからなる群から選択される1つ又は複数の成分を含む。タンパク源は、第2の栄養組成物のエネルギーの約18%から約28%を構成することができる。タンパク源は、タンパク質加水分解物を含むことができる。タンパク源は、カゼイン加水分解物、ホエー加水分解物及びそれらの組合せからなる群から選択される成分を含むことができる。タンパク質加水分解物は、システインを含むことができる。
【0019】
[0019]一実施形態では、第2の栄養組成物のタンパク源は、一部を遊離アミノ酸として含むことができる。例えば、タンパク源は、約80%から85%のタンパク質加水分解物及び約15%から20%の遊離アミノ酸を含むことができる。
【0020】
[0020]一実施形態では、脂質源は、第2の栄養組成物のエネルギーの約30%から約45%を構成する。脂質源は、中鎖トリグリセリドと長鎖トリグリセリドとの混合物を含むことができる。脂質源は、約30重量%から約80重量%の中鎖トリグリセリドを含むことができる。
【0021】
[0021]一実施形態では、第2の栄養組成物の脂質源は、ヤシ油、魚油、ヒマワリ油、ナタネ油、ダイズ油、乳脂、トウモロコシ油、ダイズレシチン及びそれらの組合せからなる群から選択される成分を含む。
【0022】
[0022]一実施形態では、第2の栄養組成物は、オメガ3に富む脂肪酸を含有する。
【0023】
[0023]一実施形態では、第2の栄養組成物は、多価不飽和脂肪酸オメガ6(n−6)とオメガ3(n−3)との比が、約1:1から約10:1となるように設計された脂質プロフィールを含む。
【0024】
[0024]一実施形態では、第2の栄養組成物の炭水化物源は、第2の栄養組成物のエネルギーの約30%から約65%を提供する。炭水化物源は、マルトデキストリン、コーンスターチ、化工デンプン、ショ糖及びそれらの組合せからなる群から選択される成分を含むことができる。
【0025】
[0025]一実施形態では、第2の栄養組成物は、ラクトースを含有しない。
【0026】
[0026]一実施形態では、第2の栄養組成物は、溶解性の粉末、濃縮液、直接飲用可能な製剤及びそれらの組合せの形である。
【0027】
[0027]本発明の利点は、重篤な患者、例えばICU患者に栄養を供給するための改善された方法を提供することである。
【0028】
[0028]本発明の他の利点は、改善された臨床用栄養製品を提供することである。
【0029】
[0029]追加の特徴及び利点は本明細書で記載され、以下の詳細な説明から明らかになる。
[詳細な説明]
【0030】
[0030]本発明は、一般には健康及び栄養に関する。より具体的には、本発明は、重篤な患者に栄養を供給する方法及び組成物に関する。
【0031】
[0031]本明細書において、用語「重篤な」は、SIRS段階及びCARS段階を特徴とする病状を有する患者を意味すると理解されなければならない。強いストレス又はショック状態にある重篤な患者、例えば、ICU患者は、一般的にSIRS段階に入り、その後CARS段階に入る。例えば、SIRS段階の間、身体は全身性炎症反応を起こす可能性がある。これは、酸化的ストレス、炎症、高血糖及び腸管統合性の喪失をもたらす可能性がある、グルタチオンレベル、代謝速度及び腸管への血流量の減少を伴う、フリーラジカル及び炎症誘発性サイトカインの生成の増加を特徴とする。SIRS段階は、低い代謝活性を特徴とする最初の衰退又はショックの段階の後に続くことがある。この後に、炎症性活性のピークを当初伴う代謝活性の増加と、その後のSIRS段階からCARS段階への変換に伴う炎症の減少とを特徴とする状態である、流動段階が続く。CARS段階の間、身体は、エネルギー消費の増加、筋タンパク質減少及び腸管起源の敗血症をもたらす、異化亢進及び代謝亢進、免疫機能不全高血糖及び腸管萎縮を特徴とする、代償性抗炎症反応を起こす可能性がある。
【0032】
[0032]一実施形態では、本発明は、酸化的ストレスを減少させ、腸管統合性を促進する1つ又は複数の栄養組成物を患者に供給すること、その後、除脂肪体重を保存し、筋肉分解を減少させる1つ又は複数の異なる栄養組成物を患者に供給すること含む方法を提供する。例えば、SIRS段階の前又はその間に、酸化的ストレスを減少させ、腸管統合性を促進する栄養組成物を患者に与えることができる。その後のCARS段階の前又はその間に、除脂肪体重を保存し、筋肉分解を減少させる栄養組成物を患者に与えることができる。このように栄養面から患者を管理することは、感染症のリスク及び体重の減少を低下させ、患者が回復する可能性、及びより速く回復する可能性を高くする。
【0033】
[0033]一実施形態では、SIRS段階のための栄養組成物(以下、「NCSP」)は、理想的には、酸化的ストレスの減少及び腸管統合性の促進に寄与するタンパク源を含有する。腸管統合性を促進するために、適当なタンパク源は、例えば甘味ホエータンパク質又はカゼイン−糖マクロペプチドなどの、元来スレオニンが豊富なものでよい。甘味ホエータンパク質はアミノ酸の約7.4重量%のスレオニン含量を有し、カゼイン−糖マクロペプチドはアミノ酸の約14重量%のスレオニン含量を有する。
【0034】
[0034]タンパク源は、任意の適当なタンパク質、例えば、遊離のスレオニンを補充したカゼイン又はスレオニンを含有する任意の化合物若しくは供給源であってよいことは、理解されなければならない。好ましくは、スレオニンは、タンパク源のアミノ酸の少なくとも約5.5重量%を供給する。より好ましくは、スレオニンは、タンパク源のアミノ酸の少なくとも約6重量%を供給する。スレオニンは、腸管でのムチン合成を増加させ、その結果、腸管統合性を高める。
【0035】
[0035]酸化的ストレスの減少を促進するために、適当なタンパク源は、例えばホエータンパク質などの、元来システインが豊富なものでよい。システインの投与は、細胞内グルタチオンレベルを増加させる。グルタチオンは、内因性及び外因性の起源のフリーラジカル、活性酸素中間体及び毒性化合物から細胞を保護する。Meister, "New Aspects of Glutathione Biochemistry and Transport-Selective Alteration of Glutathione Metabolism," Nutrition Review, 42:397-410を参照。或いは、タンパク源は、遊離グルタチオン又はシステイン前駆体又はプロドラッグ、例えば、本明細書で参照により組み込まれる米国特許第5,863,906号明細書で記載されるものなどを含むことができる。
【0036】
[0036]タンパク源は、好ましくはタンパク質加水分解物に基づく。この点に関して特に好ましいのは、加水分解されたホエータンパク質である。タンパク質加水分解物は、腸管統合性を支える。タンパク源は、栄養組成物のエネルギーの約10%から約20%を提供することができる。例えば、タンパク源は、栄養組成物のエネルギーの約15%から約18%を提供することができる。
【0037】
[0037]他の実施形態において、NCSPは炭水化物源を含むこともできる。炭水化物源は、好ましくは栄養組成物のエネルギーの約35%から約65%を提供する。より好ましくは、炭水化物源は、栄養組成物のエネルギーの約40%から約60%を提供する。例えば、炭水化物源は、組成物のエネルギーの約51%を提供することができる。マルトデキストリン、コーンスターチ、化工デンプン、ショ糖又はそれらの混合物を含む、いくつかの炭水化物を用いることができる。好ましくは、組成物は、ラクトースを含有しない。
【0038】
[0038]代替の実施形態では、NCSPは脂質源をさらに含むことができる。好ましくは、脂質源は、栄養組成物のエネルギーの約20%から約50%を提供する。より好ましくは、脂質源は、栄養組成物のエネルギーの約25%から約40%を提供する。例えば、脂質源は、栄養組成物のエネルギーの約33%を提供することができる。
【0039】
[0039]脂質源は、中鎖トリグリセリド(MCT)と長鎖トリグリセリド(LCT)との混合物を含むことができる。脂質源は、好ましくは、少なくとも約30重量%から約80重量%の中鎖トリグリセリドを含む。例えば、中鎖トリグリセリドは、脂質源の約70重量%を占めることができる。長鎖トリグリセリドの適当な源は、ヒマワリ油、ナタネ油、ダイズ油、乳脂、トウモロコシ油及び/又はダイズレシチンである。ヤシ油は、中鎖トリグリセリドの適当な源である。
【0040】
[0040]腸溶組成物の脂質プロフィールは、好ましくは、多価不飽和脂肪酸オメガ6(n−6)とオメガ3(n−3)との比が、約1:1から約10:1となるように設計される。例えば、n−6とn−3脂肪酸との比は、約6:1から約9:1であることができる。
【0041】
[0041]他の実施形態において、NCSPは好ましくは、完全なビタミン及びミネラルのプロフィールを含む。例えば、栄養組成物の1000カロリーにつき、ビタミン及びミネラルの推奨される適当な日許容量の約75%から約250%を供給するのに十分なビタミン及びミネラルを提供することができる。好ましくは、NCSPは、抗酸化特性を有するビタミン及びミネラルを含有する。
【0042】
[0042]NCSPは、好ましくは、約800kcal/lから約1200kcal/lのエネルギー含量を有する。より好ましくは、NCSPは、約1000kcal/lのエネルギー含量を有する。
【0043】
[0043]NCSPは任意の適当な形態であることができることは、理解されなければならない。例えば、NCSPは、溶解性の粉末、濃縮液、及び/又は直接飲用可能な製剤の形態であることができる。
【0044】
[0044]限定するものではなく例として、以下の実施例は、NCSPの様々な実施形態を例示する。一実施形態では、適当なNCSPは、Nestle Nutritionによって商品名PEPTAMEN(登録商標)の下で商品化されている。この組成物は、例えば、以下の特性を含む。
1.0kcal/mlのエネルギー密度
加水分解ホエータンパク質からなり、全エネルギーの16%を提供するタンパク源
70%のMCT(ヤシ油及びパーム核油)及び30%のLCTを含有する脂質源
7.4:1のn6:n3比
1500mL(1500kcal)中の、22個の重要なビタミン及びミネラルの参照日摂取量(「RDI」)の100%を満たすか又は超える
ビタミン類には、A、B、B、B、B12、ナイアシン、葉酸、ビオチン、パントテン酸、C、D、E、K、その他が含まれ、ミネラル類には、カルシウム、リン、マグネシウム、亜鉛、鉄、銅、マンガン、ヨウ素、ナトリウム、カリウム、塩化物、クロミウム、モリブデン、セレニウム、その他が含まれる
ラクトース非含有、グルテン非含有
マルトデキストリン、コーンスターチ、ダイズ油、ダイズレシチン
【0045】
[0045]CARS段階のための栄養組成物(以下、「NCCP」)は、異化段階にある患者を治療するための特別仕様の成分も含む。好ましくは、NCCPは高いエネルギー含量を有する。例えば、エネルギー含量は、約1.3〜約1.5kcal/ml又はそれ以上であることができる。中程度から高いエネルギー摂取量を提供することは、筋タンパク質の温存にとって重要である。
【0046】
[0046]さらに、代謝活性の増加のために、NCCPのタンパク含有量は増加される。例えば、タンパク含有量は、製品のエネルギーの約18%から約28%を提供するものでよい。タンパク源は、好ましくは、タンパク質加水分解物を含む。タンパク質加水分解物の使用は、栄養素の吸収不良の可能性を減少させる。様々なタンパク質加水分解物を利用することができる。適当な例には、カゼイン加水分解物及びホエー加水分解物が含まれる。加水分解物源は、好ましくは、患者で細胞内グルタチオンを補充するのに十分な量のシステインを含む。
【0047】
[0047]NCCPのタンパク源は、さらに、一部を遊離アミノ酸として含むことができる。例えば、タンパク源をアルギニンで増量することができる。好ましくは、タンパク源は、約80%から85%のタンパク質加水分解物及び約15%から20%の遊離アミノ酸を含む。
【0048】
[0048]NCCPは脂質源をさらに含むことができる。製剤は、脂質分画を含むこともできる。好ましくは、エネルギーで製剤の約30%から約45%は、脂質として提供される。
【0049】
[0049]NCCPの脂質源は、中鎖トリグリセリド(MCT)と長鎖トリグリセリド(LCT)との混合物を含むことができる。脂質源は、好ましくは、少なくとも約30重量%から約80重量%の中鎖トリグリセリドを含む。例えば、中鎖トリグリセリドは、脂質源の約50重量%から70重量%を占めることができる。MCTは、LCTと比較してより容易に吸収及び代謝される。したがって、MCTの使用はエネルギー取り込みを増加させ、したがって、同化のために体内で窒素を温存することができる。ヤシ油は、中鎖トリグリセリドの適当な源である。長鎖トリグリセリドの適当な源は、魚油、ヒマワリ油、ナタネ油、ダイズ油、乳脂、トウモロコシ油及び/又はダイズレシチンである。
【0050】
[0050]脂質源のLCT部分は、炎症性反応の発生率及び程度を減少させる、オメガ3に富む脂肪酸を含有する。オメガ3脂肪酸は、オメガ6の高摂取量によってもたらされる、マイナスの免疫媒介性反応を調節することができる。したがって、オメガ3を含有する(又は、オメガ6含有量が最小限で低い)混合油が好ましい。腸溶組成物の脂質プロフィールは、好ましくは、多価不飽和脂肪酸オメガ6(n−6)とオメガ3(n−3)との比が、約1:1から約10:1となるように設計される。例えば、n−6とn−3脂肪酸との比は、約1:1から約3:1であることができる。
【0051】
[0051]魚油は2つのより長い鎖長のオメガ3脂肪酸、すなわち、エイコサペンタエン酸(EPA、C22:5、n3)及びドコサヘキサエン酸(DHA、C22:6、n3)を含有するので、オメガ3脂肪酸が豊富な魚油が好ましい。
【0052】
[0052]NCCPは、炭水化物源を含むこともできる。炭水化物源は、好ましくは、栄養組成物のエネルギーの約30%から約65%を提供する。より好ましくは、炭水化物源は、栄養組成物のエネルギーの約35%から約60%を提供する。マルトデキストリン、コーンスターチ、化工デンプン、ショ糖又はそれらの混合物を含む、いくつかの炭水化物を用いることができる。好ましくは、組成物は、ラクトースを含有しない。
【0053】
[0053]NCCPは任意の適当な形態をとることができることは、理解されなければならない。例えば、NCCPは、溶解性の粉末、濃縮液、及び/又は直接飲用可能な製剤の形態であることができる。
【0054】
[0054]限定するものではなく例として、以下の実施例は、NCCPの様々な実施形態を例示する。一実施形態では、適当なNCCPは、Nestle Nutritionによって商品名CRUCIAL(登録商標)の下で商品化されている。この組成物は、例えば、以下の特性を含む。
1.5kcal/mlの高エネルギー密度
組成物のエネルギーの25%に寄与するタンパク源としてのタンパク加水分解物(加水分解されたカゼイン)(タンパク源はアルギニンも含有する)
n6:n3比が1.5:1である、魚油、MCT(ヤシ油及びパーム核油)及びダイズ油の脂質混合物
βカロテン、ビタミンA、ビタミンC及び亜鉛のレベルの上昇
1000mL(1500kcal)中の23個の重要なビタミン類及びミネラル類のRDIの100%を満たすか又はそれを超える
ビタミン類には、A、B、B、B、B12、ナイアシン、葉酸、ビオチン、パントテン酸、C、D、E、K、その他が含まれ、ミネラル類には、カルシウム、リン、マグネシウム、亜鉛、鉄、銅、マンガン、ヨウ素、ナトリウム、カリウム、塩化物、クロミウム、モリブデン、セレニウム、その他が含まれる
中程度のモル浸透圧(490mOsm/kg HO)
ラクトース非含有、グルテン非含有、低コレステロール
マルトデキストリン、魚油、コーンスターチ、ダイズレシチン
【0055】
[0055]他の適当なNCCPは、Nestle Nutritionによって商品名PEPTAMEN(登録商標)1.5の下で商品化されている。この組成物は、例えば、以下の特性を含む。
1.5kcal/mlのエネルギー密度
加水分解ホエータンパク質からなり、全エネルギーの18%を提供するタンパク源
70%のMCT(ヤシ油及びパーム核油)及び30%のLCTを含有し、n6:n3比が7.4:1の脂質源
1500mL(1500kcal)中の22個の重要なミネラル類のRDIの100%を満たすか又はそれを超える
ビタミン類には、A、B、B、B、B12、ナイアシン、葉酸、ビオチン、パントテン酸、C、D、E、K、その他が含まれ、ミネラル類には、カルシウム、リン、マグネシウム、亜鉛、鉄、銅、マンガン、ヨウ素、ナトリウム、カリウム、塩化物、クロミウム、モリブデン、セレニウム、その他が含まれる
ラクトース非含有、グルテン非含有
マルトデキストリン、コーンスターチ、ダイズ油、ダイズレシチン
【0056】
[0056]本明細書で記載される現在好ましい実施形態への様々な変更及び修正が当業者にとって明らかになることは、理解されなければならない。本主題の精神及び範囲から逸脱することなく、及び、その意図する利点を減少させることなく、そのような変更及び修正を加えることができる。したがって、そのような変更及び修正は、添付した請求項に包括されるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
SIRS段階及びCARS段階を特徴とする病状を有する重篤な患者に栄養を供給する方法であって、
患者がSIRS段階にある間に患者に第1の栄養組成物を投与するステップと、
患者がCARS段階にある間に患者に第2の異なる栄養組成物を投与するステップと
を含む方法。
【請求項2】
第1の栄養組成物が、タンパク源、炭水化物源、脂質源、ビタミン類、ミネラル類及びそれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1つの成分を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
タンパク源がスレオニンを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
タンパク源が、甘味ホエータンパク質、カゼイン−糖マクロペプチド、遊離スレオニンを添加したカゼイン、スレオニンを含有する化合物及びそれらの組合せからなる群から選択される成分を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
タンパク源がシステインを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
タンパク源が、ホエータンパク質、遊離グルタチオン、システイン前駆体、プロドラッグ及びそれらの組合せからなる群から選択される成分を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
タンパク源がタンパク加水分解物を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
タンパク源が、加水分解されたホエータンパク質を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項9】
炭水化物源が、マルトデキストリン、コーンスターチ、化工デンプン、ショ糖及びそれらの組合せからなる群から選択される成分を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項10】
第1の栄養組成物がラクトースを含有しない、請求項2に記載の方法。
【請求項11】
脂質源が中鎖トリグリセリドと長鎖トリグリセリドとの混合物を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項12】
脂質源が少なくとも約30重量%から約80重量%の中鎖トリグリセリドを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
脂質源が、ヒマワリ油、ナタネ油、ダイズ油、乳脂、トウモロコシ油、ダイズレシチン、ヤシ油及びそれらの組合せからなる群から選択される成分を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項14】
第1の栄養組成物が、多価不飽和脂肪酸オメガ6(n−6)とオメガ3(n−3)との比が約1:1から約10:1となるように設計された脂質プロフィールを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項15】
第1の栄養組成物が、溶解性の粉末、濃縮液、直接飲用可能な製剤及びそれらの組合せの形態である、請求項2に記載の方法。
【請求項16】
第2の異なる栄養組成物が、タンパク源、脂質源、炭水化物源及びそれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1つの成分を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
タンパク源がタンパク加水分解物を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
タンパク加水分解物がシステインを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
タンパク源が、カゼイン加水分解物、ホエー加水分解物及びそれらの組合せからなる群から選択される成分を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
タンパク源が、一部を遊離アミノ酸として含む、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
脂質源は、中鎖トリグリセリドと長鎖トリグリセリドとの混合物を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項22】
脂質源が、ヤシ油、魚油、ヒマワリ油、ナタネ油、ダイズ油、乳脂、トウモロコシ油、ダイズレシチン及びそれらの組合せからなる群から選択される成分を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項23】
脂質源が、オメガ3に富む脂肪酸を含有する、請求項16に記載の方法。
【請求項24】
第2の栄養組成物が、多価不飽和脂肪酸オメガ6(n−6)とオメガ3(n−3)との比が約1:1から約10:1となるように設計された脂質プロフィールを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項25】
炭水化物源が、マルトデキストリン、コーンスターチ、化工デンプン、ショ糖及びそれらの組合せからなる群から選択される成分を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項26】
第2の栄養組成物がラクトースを含有しない、請求項16に記載の方法。
【請求項27】
第2の栄養組成物が、溶解性の粉末、濃縮液、直接飲用可能な製剤及びそれらの組合せの形態である、請求項16に記載の方法。
【請求項28】
重篤な患者に栄養を供給する方法であって、
患者のSIRS段階の間に患者に第1の栄養組成物を投与するステップであって、第1の栄養組成物は、スレオニンを含むタンパク源、炭水化物源、脂質源、ビタミン及びミネラルを含むステップと、
患者のCARS段階の間に患者に第2の栄養組成物を投与するステップであって、第2の異なる栄養組成物は、タンパク加水分解物及び遊離アミノ酸を含むタンパク源、脂質源及び炭水化物源を含むステップと
を含む方法。
【請求項29】
重篤な患者に栄養を供給する方法であって、
患者がストレスに対する患者の全身性炎症反応から生じるSIRS段階にある間に患者に第1の栄養組成物を投与するステップであって、第1の栄養組成物は、スレオニンを有するタンパク源、システインを有するタンパク源、並びに中鎖トリグリセリド及び長鎖トリグリセリドの混合物を有する脂質源を含むステップと、
患者がストレスに対する患者の代償性抗炎症反応から生じるCARS段階にある間に患者に第2の栄養組成物を投与するステップであって、第2の異なる栄養組成物は、タンパク加水分解物を有するタンパク源及び一部を遊離アミノ酸として有するタンパク源を含むステップと
を含む方法。

【公表番号】特表2009−522334(P2009−522334A)
【公表日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−549011(P2008−549011)
【出願日】平成19年1月4日(2007.1.4)
【国際出願番号】PCT/EP2007/050098
【国際公開番号】WO2007/080149
【国際公開日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【出願人】(599132904)ネステク ソシエテ アノニム (637)
【Fターム(参考)】