説明

スパッタリング方法及び成膜装置

【課題】物理的気相成長法(PVD)により基板上に層を形成するプロセス中に、層の特性を制御可能なスパッタリング方法及び成膜装置を提供する。
【解決手段】 ターゲット物質(例えば、PZT)をスパッタリングする方法及び装置であって、ターゲットと基板との間に導電グリッドを配置する。ターゲット、基板及びスパッタリング・ガスをチャンバー内に収容し、第1のRF電源の電力がチャンバー内のプラズマを維持するために加えられる。第2のRF電源の電力は導電グリッドに加えられる。ターゲット物質はターゲットから基板にスパッタされる。導電グリッドの位置及び第2のRF電源により加えられる電力により、ターゲット物質のスパッタ成膜の特性が変化する。例えば、第2のRF電源及び導電グリッドは、容量性回路の一部を構成しており、容量性回路内における電圧の変化によりスパッタリング・ガスの特性が変化し、その後、スパッタ・成膜プロセスの特性が変化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、基板上に物質の薄い層を堆積(成膜)する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
物理的気相成長法(PVD)は、基板(例えば、シリコン・ウェハ)上に薄いフイルムを堆積する真空堆積プロセスである。PVDスパッタリング・プロセスでは、前記基板と、前記基板上に堆積される前記物質(又は前記物質の原材料(precursor:前躯体))により形成されたターゲットは真空チャンバー内に収容される。前記ターゲットには、高エネルギーのイオンが衝突させられて、前記ターゲットの物質が蒸発する。その後、前記蒸発した物質は、通常、前記ターゲットと前記基板との間の視線(見通し線)に沿って前記基板に運ばれる。前記イオンを供給するスパッタリング・ガスは、不活性ガスであってもよいし、反応性が高い反応性ガスを含んでいてもよい。スパッタリング・ガスが反応性ガスを含む場合には、前記蒸発した物質が運ばれるときに、前記ターゲット物質の化学反応が起こり得る。前記ターゲット物質(又は前記反応の結果得られる物質)は、前記基板の表面において凝結し、層を形成する。
【0003】
特許文献1は、プラズマ生成室とプラズマ処理室との間にプラズマ分離用のメッシュプレートを配設することを開示する。分離用のメッシュには0から30Vの電圧を印加するようになっている。しかしながら、RF(無線周波数、高周波電源)の印加等の記述はなく、さらにメッシュの材質については特に述べられていない。特許文献1に記載の技術では、プラズマの制御と膜材料の組成制御とが不十分である。
【0004】
また特許文献2は、スパッタリングにおいて透明電極を形成する際にメッシュ状中間アノード電極を配置させる方法を開示する。この方法では、プラズマの制御と膜材料の組成制御が不十分である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3353514号公報
【特許文献2】特開2004−332030号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記PVDスパッタリング・プロセスでは、PVDを行っている間、前記堆積した薄膜の特性を制御することが好ましい。
【0007】
本発明は、物理的気相成長法(PVD)により基板上に層を形成するプロセス中に、層の特性を制御することが可能なスパッタリング方法及び成膜装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の態様において、本開示に係る方法及び装置は、ターゲット物質(例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT))をスパッタリングすることを特徴とする。導電グリッドは、ターゲットと基板との間に配置される。前記ターゲット、前記基板及びスパッタリング・ガスは、チャンバー内に収容される。第1のRF電源(無線周波数、高周波電源)の電力は、前記チャンバー内のプラズマを維持するために加えられる。第2のRF電源の電力は、前記導電グリッドに加えられ、ターゲット物質は、前記ターゲットから前記基板上にスパッタ可能である。
【0009】
第2の態様において、本開示に係る方法及び装置は、チャンバーがターゲット、基板及びスパッタリング・ガスを収容するように構成される。第1のRF電源は、前記チャンバー内に電力を加えるように構成される。導電グリッドは、前記ターゲットと前記基板との間に配置され、第2のRF電源は、前記導電グリッドに電気的に接続される。
【0010】
実施例は、下記に挙げる特徴のうちの1以上を含んでいてもよい。前記第2のRF電源及び前記導電グリッドは、容量性回路であって、前記容量性回路内の電圧の変化によって前記スパッタリング・ガスの特性が変化するように構成された回路の一部であってもよい。前記導電グリッドと前記基板との間の距離は調整可能であってもよいし、前記ターゲットと前記基板との間の距離の約1/4から3/4であってもよい。前記第2のRF電源は、DCバイアスを含んでいてもよいし、前記第2のRF電源の電力の出力は調整可能であってもよい。前記導電グリッドは、鉛を含んでいてもよいし、少なくとも90%のオープン・スペースを含んでいてもよい。前記導電グリッドは、前記ターゲットと前記基板との間の空間(path)をほぼ覆うように構成されていてもよい。第3のRF電源は、前記基板に電力を加えるように構成されていてもよい。前記スパッタリング・ガスは、酸素を含んでいてもよいし、前記ターゲットは、PZTを含んでいてもよい。
【発明の効果】
【0011】
実施例は、下記に挙げる効果のうちの一部又はすべての効果を奏しうる。前記導電部材の位置とともに、前記導電部材に加えられるRF電力の量及び周波数を調整することによって、例えば、前記堆積用チャンバー内のプラズマの特性を変化させることにより、前記成膜プロセスの制御を容易に行うことができる。別の例では、DCバイアスを前記導電部材に加えて前記DCバイアスを調整することにより、ターゲット物質が前記基板に到達するときのエネルギーレベルの調整を容易にすることができる。これにより、前記成膜プロセスの制御を更に改善することができる。前記成膜プロセスの制御を改善したことにより、前記基板上に所望のターゲット物質層を容易に形成することができる。前記基板上におけるターゲット物質のデポジション(成膜)をより一様(均一)に行うことができる。厚さ分布、結晶の配向性、及び前記基板上に堆積されたターゲット物質層の内部応力が制御、改善することができる。前記導電部材を介してプラズマに電力を加えることにより、前記ターゲット物質が前記基板上に堆積するときの堆積効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1(a)】成膜装置を模式的に示す横断立面図
【図1(b)】図1(a)の成膜装置を模式的に示す横断平面図
【図2】別の実施形態に係る成膜装置を模式的に示す横断立面図
【図3】成膜プロセスを示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面に従って本発明の実施形態に係るスパッタリング方法及び成膜装置について説明する。なお、各図中における類似の参照符号は、類似の構成要素を示す。
【0014】
基板(例えば、シリコン・ウェハ)上への物質(例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT))のデポジションは、反応真空チャンバー内で行われうる。前記反応真空チャンバーは、PZTを含むターゲットと、前記ターゲットと前記基板との間に配置された導電グリッドとを収容しうる。前記導電グリッドは、無線周波数(RF:Radio Frequency)回路に容量結合可能であり、RF電力は、前記グリッドに加えられて、前記基板上に物質を堆積するプロセスに影響を与えることが可能である。DCバイアスは、前記グリッドにも加えることができる。前記成膜プロセスは、PVDスパッタリング・プロセスであってもよい。
【0015】
図1(a)は、成膜装置100の横断立面図である。デポジション・チャンバー110は、チャンバー・スペース114を収容して密閉することができる。図1(b)は、図1(a)の成膜装置100を模式的に示す横断平面図である。図1(a)及び図1(b)において、前記デポジション・チャンバー110は、大気圧(例えば、約760Torr)に耐えるとともに、高温(例えば、約500℃)に耐えるように、十分な強度で構成することが可能である。マグネトロン(磁場生成機構)120は、前記デポジション・チャンバー110に取り付けることが可能であり、前記デポジション・チャンバー110内に磁場を発生するように構成されている。前記マグネトロン120は、前記デポジション・チャンバー110の端部又はその近くに配置することが可能である。
【0016】
ターゲット130は、前記デポジション・チャンバー110の中、例えば、前記マグネトロン120の近傍、前記デポジション・チャンバー110の端部に配置される。一部の実施例では、前記ターゲット130はPZTを含んでいる。RF電源(無線周波数、高周波電源)132は、前記ターゲット130に接続可能であり、RF電圧(高周波電圧)を加えて、前記ターゲット上に自己バイアスを引き起こす。前記RF電源は、約500Wから約5000W、又は約2000Wから約4000W、又は周波数が約13.56MHzの場合に、例えば、約3000Wの電力を供給可能である。
【0017】
基板140は、前記デポジション・チャンバー110内に(例えば、前記ターゲット130の反対側の前記デポジション・チャンバー110の端部近傍、前記ターゲット130の視線上に)配置可能である。前記基板140は、半導体ウェハ(例えば、シリコン・ウェハ)とすることが可能である。前記基板140の直径Dは、一例で約300mmとすることが可能である。前記基板140は、基板支持器142によって支持することができる。一部の実施例では、前記基板支持器142によって、前記ターゲット130に対する前記デポジション・チャンバー110内における前記基板140の位置が調整可能となっている。任意的に、前記基板140は、基板電源144に電気的に接続可能である。一部の実施例では、前記基板電源144は、直流(DC)電圧バイアスを前記基板140に加える。上記の代わりに、又は上記に加えて、前記基板電源144は、前記基板140にRF電圧を加えることが可能である。
【0018】
気体は、真空ポンプ154と流体的に接続可能な排気口152を通して前記チャンバー・スペース114から排出可能となっている。スパッタリング・ガス150は、ガス供給器158に流体的に接続可能な吸気口156によって前記チャンバー・スペース114に導入可能となっている。一部の実施例では、前記スパッタリング・ガス150は、反応性が高い高反応性ガスと不活性ガスの両方を含んでいる。例えば、前記スパッタリング・ガス150は、約1%から約4%の高反応性ガスを含み、前記スパッタリング・ガス150の残りを不活性ガスとすることができる。一部の実施例では、前記高反応性ガスは酸素であり、前記不活性ガスはアルゴンである。前記スパッタリング・ガス150は、前記デポジション・チャンバー内に比較的低気圧(例えば、絶対圧力約2mTorrから約10mTorr)で存在し得る。スパッタリング・ガス150の圧力は調整可能としてもよい。
【0019】
前記スパッタリング・ガス150は、イオン化されて正イオンを生成する。ターゲット130上における前記自己バイアス電圧と前記磁場との組み合わせにより、前記エネルギーを加えられた正イオンが前記ターゲット130に衝突する。
【0020】
また、前記成膜装置100は、前記蒸発したターゲット物質が通過可能な導電部材(例えば、前記ターゲット130と前記基板140との間に配置可能な導電グリッド160)を含んでいてもよい。例えば、前記導電グリッド160は、前記ターゲット130と前記基板140との間の中途に配置される。前記ターゲット130と前記基板140に対する前記導電グリッド160の位置は調整可能である。例えば、前記導電グリッド160は、前記基板140から距離Gの位置、即ち、前記ターゲット130と前記基板140との間の距離Tの約1/4から約3/4に配置可能である。前記距離Gは、一例で約20mmから約50mmとしうる。前記導電グリッド160は、一般に平面形状であり、前記基板に平行に配置可能である。前記導電グリッド160は、例えば、ワイヤー(金属線)161により構成可能であり、例えば、ワイヤーの網状部材である。一部の実施例では、前記導電グリッド160の面積の少なくとも約90%は、オープン・スペース(open space)であってもよい。一部の実施例では、前記導電グリッド160は、前記ターゲット130と前記基板140との間の空間(path)をほぼ覆う。即ち、前記導電グリッド160は、前記ターゲット130と前記基板140との間の直線状の視線(見通し線)に沿う空間(path)が前記導電グリッド160を通過するように構成可能である。蒸発したターゲット物質の一部は、前記導電グリッド160によってブロックされ得るが、前記蒸発したターゲット物質の一部は、例えば、前記導電グリッド160のワイヤー161の間を通過し得る。一部の実施例では、前記導電グリッド160がカバーする面積は、前記基板140の表面積よりも相当大きくしてもよい。
【0021】
グリッド電源164は、前記導電グリッド160に電気的に接続可能である。前記グリッド電源164は、前記導電グリッド160にRF信号(高周波信号)を加えるように構成されていてもよい。例えば、前記グリッド電源164は、グラウンド165を基準として周期的に変化する電圧を、前記導電グリッド160に加えることが可能である。一部の実施例では、前記導電グリッド160及び前記グリッド電源164は、主に容量性回路を形成する。即ち、前記グリッド電源164は、前記導電グリッド160に電流が全く又はほとんど流れていない間、前記導電グリッド160の電圧を基準電圧に対して変化させることができる。例えば、前記グリッド電源164は、周波数が約13.56MHzで、約100Wから約500Wを、前記導電グリッド160に適用することができる。前記グリッド電源164の電力の出力は調整可能としてもよい。前記導電グリッド160に電力を加えることにより、前記デポジション・チャンバー110内に磁場が形成可能である。上記のような磁場は、前記デポジション・チャンバー110内のプラズマの特性を変化させるものであることが好ましい。上記特性について下記に述べる。グリッドDCバイアス回路166は、前記導電グリッド160に電気的に接続され、前記導電グリッド160にDCバイアスを加えるように構成されていてもよい。
【0022】
前記導電グリッド160に電力又はDCバイアスを加えると、例えば、前記デポジション・チャンバー110内のプラズマの特性を変化させることができ、前記基板140に到達するターゲット物質134のエネルギー量を変化させることができる。例えば、あるエネルギーレベルの場合、他のエネルギーレベルの場合に比べて、ターゲット物質134により、前記基板上に、より容易に又はより一様に薄膜が形成される場合があるため、上記のようにターゲット物質134が前記基板140に到達するときのエネルギー量を変化させることが好ましい。前記導電グリッド160に供給される前記電力又はDCバイアスを調整することにより、成膜の効率(速度)、成膜の一様性(均一性)、又は上記以外の成膜の特性を最適化又は制御することが可能である。一部の実施例では、前記グリッドDCバイアス回路166は、コンデンサ(不図示)、コンデンサ及び抵抗(不図示)、又は上記以外の適当な回路を含んでいてもよい。
【0023】
一部の実施例では、前記導電グリッド160が単体の鉛、例えば、ほぼ純粋な単体の鉛を含む場合に、前記基板140へのPZTの成膜を改善することができる。鉛は、成膜プロセスの間に前記基板140から蒸発しやすい。前記鉛を含む導電グリッド160を用いることにより、前記基板140近傍における鉛原子の濃度が大きくなるので、前記基板140上におけるPZTの形成に使用可能な鉛の量を増加させることができるが、本開示はこれに限定されるものではない。前記導電グリッド160の前記ワイヤー161は、すべて鉛で形成されていてもよいし、ほぼ純粋な鉛の層が前記導電グリッド160の前記ワイヤー161上にコーティングされるように成膜されてもよい。一部の実施例では、前記基板140の表面のPZTの組成は、前記導電グリッド160に加えられる電力又はDCバイアスを調整することにより、又は前記導電グリッド160中の鉛の量を調整することにより調整可能である。
【0024】
図2は、別の実施形態に係る成膜装置100´の横断立面図である。導電コイル260は、前記ターゲット130と前記基板140との間に配置可能である。前記導電コイル260の直径Aは、一例で約300mmから約350mmである。前記ターゲット130及び前記基板14に対する前記導電コイル260の位置は調整可能である。例えば、前記導電コイル260は、前記基板140から距離Cの位置、即ち、前記ターゲット130と前記基板140との間の距離Tの約1/4から約3/4の位置に配置可能である。前記距離Cは、一例で約20mmから約50mmである。一部の実施例では、前記導電コイル260は、コイルRF電源264に電気的に接続されている。例えば、前記コイルRF電源264及び前記導電コイル260は、主に誘導性回路を形成してもよい。上記のような実施例では、前記コイルRF電源264は、前記導電コイル260に電流の流れを生じさせることができ、前記デポジション・チャンバー110内に電磁場を生じさせることができる。この電磁場によって、前記デポジション・チャンバー110内のプラズマの特性を変化させることができ、前記基板140への前記ターゲット物質134の成膜に影響を与えることができる。一部の実施例では、前記コイル260は、前記デポジション・チャンバー110内に配置される。また、別の一部の実施例では、前記コイル260は、前記デポジション・チャンバー110の外部又は周りに配置される。上記のような実施例では、前記デポジション・チャンバー110を非導電性の物質(例えば、セラミクス)で構成することが可能である。
【0025】
図3は、PVDスパッタリング・プロセス300を示すフローチャートである。前記導電グリッド160が、前記ターゲット130と前記基板140との間に配置される(ステップ320)。前記ターゲット130、前記基板140及び前記スパッタリング・ガス150が、前記デポジション・チャンバー110内に収容される(ステップ330)。
【0026】
前記ターゲット130にイオンが衝突され(PVDスパッタリング・プロセスの一部)、前記ターゲット130から、ターゲット物質134の原子又は分子が分離される(ステップ340)。例えば、前記スパッタリング・ガス150がイオン化され、前記磁場によって、前記ターゲット130の近傍のプラズマの密度を高くすることができる。前記スパッタリング・ガス150の正イオンが前記ターゲット130に衝突して、運動量が移ることにより、前記ターゲット物質134の原子又は分子が前記ターゲット130から取り出される。前記ターゲット物質134は、前記ターゲット130から、前記基板140に向かう方向(図1及び図2中の矢印の方向)を含む多方向又は全方向に移動する。
【0027】
RF電力は、前記導電グリッド160又は前記導電コイル260に加えられて、前記スパッタリング・プロセス300の特性を変化させることができる(ステップ350)。成膜プロセスの特性は、例えば、プラズマの密度、プラズマのポテンシャル、シース幅の分布(sheath wide re-distribution)、電子温度、及びイオン束の分布を含み得る。他のデポジション特性は、前記基板140上に成膜された物質の厚さ分布、結晶の配向性及び内部応力を含み得る。更なるデポジション特性は、前記基板140上における表面凸部と表面凹部の範囲、及び表面凸部と表面凹部の間の領域の特性(例えば、前記基板140の表面形状(topography)のステップカバレッジ(step coverage))を含み得る。例えば、前記基板140上に堆積されたターゲット物質134の層の一様性(均一性)を高めるために、前記成膜プロセスの特性を制御することが好ましい。前記導電グリッド160又は導電コイル260に加えられる電力は、例えば、前記基板140に接するときのターゲット物質134のエネルギーを変化させることにより、デポジション特性が影響され得るが、本開示はこれに限定されるものではない。RF電力又はDCバイアスを前記導電グリッド160又は前記導電コイル260に加えることにより、前記チャンバー・スペース114内におけるプラズマの密度を増加させることができる。プラズマの密度を高くすることにより、成膜の効率を高めることが好ましい。
【0028】
前記スパッタリング・プロセス300は、上述のように、前記ターゲット130から前記基板140上にPZTを成膜することができる(ステップ360)。
【0029】
上記の実施例によれば、下記の効果のうちの一部又はすべてを達成しうる。前記導電部材の位置を調整するとともに、前記導電部材に加えるRF電力の量及び周波数を調整することにより、成膜プロセスの制御(例えば、前記デポジション・チャンバー内のプラズマの特性を変化させることにより)を容易に行うことができる。別の例では、前記導電部材にDCバイアスを加えて、前記DCバイアスを調整することにより、ターゲット物質が前記基板に接するときのエネルギーレベルの調整を容易にすることができ、更に前記成膜プロセスの制御を改善することができる。前記成膜プロセスの制御を改善することにより、前記基板上に所望のターゲット物質層を容易に形成することができる。前記基板上におけるターゲット物質の成膜の一様性(均一性)を改善することができる。前記基板上に成膜されたターゲット物質層の厚さ分布、結晶の配向性及び内部応力が制御可能となり、改善可能となる。前記導電部材を介してプラズマに電力を加えることにより、前記ターゲット物質の前記基板上における成膜効率を高めることが可能になる。
【0030】
多数の実施の形態について説明したが、当然のことながら、本開示の精神及び範囲から逸脱しない範囲において、本開示の内容について多様な変形が可能である。例えば、グリッド又はコイルを用いる代わりに、他の形態の導電部材(例えば、広範な金属のメッシュ(網)、穴の空いたホイル(金属箔)、又は上記以外の適当な導電部材)を用いることが可能である。従って、上記のような本開示の精神及び範囲から逸脱しない他の実施形態も本願特許請求の範囲の権利範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0031】
100、100´…成膜装置、110…デポジション・チャンバー、114…チャンバー・スペース、120…マグネトロン、130…ターゲット、132…RF電源、134…ターゲット物質、140…基板、142…基板支持器、144…基板電源、150…スパッタリング・ガス、152…排気口、154…真空ポンプ、156…吸気口、158…ガス供給器、160…導電グリッド、161…ワイヤー、164…グリッド電源、165…グラウンド、166…グリッドDCバイアス回路、260…導電コイル、264…コイルRF電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターゲットと基板との間に導電グリッドを配置するステップと、
前記ターゲット、前記基板及びスパッタリング・ガスをチャンバー内に収容するステップと、
第1のRF電源の電力を加えて、前記チャンバー内のプラズマを維持するステップと、
前記導電グリッドに第2のRF電源の電力を加えるステップと、
前記ターゲットから前記基板に物質をスパッタするステップと、
を備えるスパッタリング方法。
【請求項2】
前記第2のRF電源及び前記導電グリッドは、容量性回路の一部であり、
前記容量性回路は、前記容量性回路内の電圧変化が前記スパッタリング・ガスの特性を変化させるように構成される、請求項1記載のスパッタリング方法。
【請求項3】
前記導電グリッドと前記基板との間の距離は、前記ターゲットと前記基板との間の距離の約1/4から3/4である、請求項1又は2記載のスパッタリング方法。
【請求項4】
前記導電グリッドと前記基板との間の距離が調整可能である、請求項1〜3のいずれかに記載のスパッタリング方法。
【請求項5】
前記第2のRF電源は、DCバイアスを含む、請求項1〜4のいずれかに記載のスパッタリング方法。
【請求項6】
前記第2のRF電源の電力の出力が調整可能である、請求項1〜5のいずれかに記載のスパッタリング方法。
【請求項7】
前記導電グリッドが鉛を含む、請求項1〜6のいずれかに記載のスパッタリング方法。
【請求項8】
前記導電グリッドは、前記ターゲットと前記基板との間の空間をほぼ覆う、請求項1〜7のいずれかに記載のスパッタリング方法。
【請求項9】
前記導電グリッドは、少なくとも90%のオープン・スペースを含む、請求項1〜8のいずれかに記載のスパッタリング方法。
【請求項10】
第3のRF電源の電力を前記基板に加えるステップを更に備える請求項1〜9のいずれかに記載のスパッタリング方法。
【請求項11】
前記スパッタリング・ガスが酸素を含む、請求項1〜10のいずれかに記載のスパッタリング方法。
【請求項12】
前記ターゲットがジルコン酸チタン酸鉛(PZT)を含む、請求項1〜11のいずれかに記載のスパッタリング方法。
【請求項13】
ターゲット、基板及びスパッタリング・ガスを収容するチャンバーと、
前記チャンバー内に電力を加える第1のRF電源と、
前記ターゲットと前記基板との間に配置可能な導電グリッドと、
前記導電グリッドと電気的に接続された第2のRF電源と、
を備える成膜装置。
【請求項14】
前記第2のRF電源及び前記導電グリッドは、容量性回路の一部であり、
前記容量性回路は、前記容量性回路内の電圧変化が前記スパッタリング・ガスの特性を変化させるように構成される、請求項13記載の成膜装置。
【請求項15】
前記導電グリッドと前記基板との間の距離は、前記ターゲットと前記基板との間の距離の約1/4から3/4である、請求項13又は14記載の成膜装置。
【請求項16】
前記導電グリッドと前記基板との間の距離が調整可能である、請求項13〜15のいずれかに記載の成膜装置。
【請求項17】
前記第2のRF電源は、DCバイアスを含む、請求項13〜16のいずれかに記載の成膜装置。
【請求項18】
前記導電グリッドが鉛を含む、請求項13〜17のいずれかに記載の成膜装置。
【請求項19】
前記導電グリッドは、前記ターゲットと前記基板との間の空間をほぼ覆う、請求項13〜18のいずれかに記載の成膜装置。
【請求項20】
前記導電グリッドは、少なくとも90%のオープン・スペースを含む、請求項13〜19のいずれかに記載の成膜装置。
【請求項21】
前記基板と電気的に接続された第3のRF電源を更に備える請求項13〜20のいずれかに記載の成膜装置。
【請求項22】
前記スパッタリング・ガスが酸素を含む、請求項13〜21のいずれかに記載の成膜装置。
【請求項23】
前記ターゲットがジルコン酸チタン酸鉛(PZT)を含む、請求項13〜22のいずれかに記載の成膜装置。

【図1(a)】
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【図1(b)】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−242213(P2010−242213A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−11359(P2010−11359)
【出願日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】