説明

スピン偏光したキセノン−129用の低温アキュムレーター

【課題】過偏光129Xeを蓄積するための方法および装置を開示する。
【解決手段】本発明の方法および装置を使用すると、流動する過偏光129Xeを凍結状で連続的にあるいは一時的に蓄積することが可能である。この方法を使用すると、過偏光129Xeを蓄積することも可能である。本発明は、連続流動配置またはパルス流動配置で129Xe過偏光手段と統合された129Xe蓄積手段(17)をさらに含む。この方法および装置を使用すると、磁気共鳴イメージング(MRI)技術によるヒト被験者および動物被験者のイメージングを含め、多数の目的のための、過偏光129Xeの大規模製造、保存および使用が可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、認可番号第DAAH04-94-G-0204号、第DAMD1794J4469号、および第F49620-94-0466号の下に政府援助を受けて行われた。本発明における権益は、政府が有することができる。
本発明は希ガスを過偏光(hyperpolarize)させる装置および方法に関する。詳細には、本発明は連続方式でかなりの量の過偏光希ガスを製造して蓄積する方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
核磁気共鳴(NMR)は、磁界内に維持されている原子核にエネルギーを印加することによって誘導できる現象である。核は、磁気モーメントを有する場合、外部から印加された磁界内に配向させることができる。この配向は、無線周波エネルギーの短いバーストを系に加えることによって一時的に乱される。結果として生じた核の乱れは、外的磁界に関連して、測定可能な核の共鳴または動揺として現れる。
【0003】
しかし、外的磁界と相互に作用する核の場合、核は磁気モーメントを有していなければならない、すなわちゼロ以外のスピンを有していなければならない。したがって、核磁気共鳴実験技術は、ゼロ以外のスピンを示す核をかなりの比率で含む試料を標的とする試験に限定される。非常に好ましいこのような核は、磁界内で水プロトン(12O)の挙動を観察して操作することにより試験を行うプロトン(1H)である。3Heや129Xeなどの希ガスを含め、他の核は原則的にNMRで試験するのに適している。しかし、これらの同位元素は相対的天然存在度が低いこと、磁気モーメントが小さいこと、および他の物理的要因のため、これらの核のNMR試験は、達成不可能でないとしても困難である。
【0004】
NMRで希ガスの核を試験するにあたって、考慮すべき重要な事柄は、希ガスの核は、通常、非常に弱いNMR信号を生じるにすぎないことである。しかし、3Heや129Xeなどの希ガスのスピン偏光を自然のレベルよりも高めることができる、すなわち、これらの同位元素を人工的に「過偏光」させて、はるかに大きいNMR信号を提供することができることは周知の通りである。一つの好ましい過偏光技術は、スピン交換過偏光として知られている。この技術を徹底的に詳しく説明するまではしないが、大筋で、適当な波長のレーザーエネルギーを吸収することによって偏光していたルビジウムなどのアルカリ金属蒸気との相互作用によって、希ガスが過偏光される。偏光したルビジウムは、スピン交換移動として知られる現象によって、その偏光を希ガスに移動させる。その最終結果として、希ガスは「過偏光(hyperpolarized)」される、すなわち、それ以外の場合よりもさらに偏光される。スピン交換過偏光技術の基礎をなす理論の詳細は、文献に報告されている。
【0005】
スピン交換過偏光は、理論的現象として確立されているものの、その実行は熟練を要することがわかっている。過偏光した希ガスの製造および取扱は論理学的に困難なばかりではなく、高価でもある。さらに、スピン交換試験の実験の性質上、過偏光した希ガスの製造は、一般に小規模で行われるにすぎない。レーザー、電子工学、ガラス吹き、超高真空ポンプ操作、高純度ガス取扱、ならびに核磁気共鳴分光学など、様々な分野における専門技術を含め、繊細な技能を一般に必要とする。
【0006】
たとえば、過偏光希ガスの一つの試料の製造は、一般に、容積が僅か数十から数百立方センチメートルの、使い捨ての密封されたガラスセルの製作を含む。このようなセルは、製造する際に慎重さを必要としてきたが、希ガスを偏光解消する傾向によってセルを測定したとき、その品質を常に予測できるとは限らない。さらに、このようなセルをスピン交換に使用するためには、中に存在するアルカリ金属でセルを密封することが必要である。これは、金属の酸化およびその結果としてのセルの破滅を引起こす可能性がある不純物を除去するように気を付けなければならないことを意味する。希ガスを偏光できるより速く偏光解消できるガラス自体の問題もある。偏光した希ガスをNMR技術で試験する場合、密封したセルを砕いて開くか破壊して過偏光ガスをNMR分光計内に放出しなければならない。次の試料に進むためには、同様の品質を有するかもしれないしそうではないかもしれない、新しいガラスセルを製作して充填することを含め、これらの工程を全て繰り返すことが必要であり、その結果、面倒で且つ多くの場合予断を許さない手順となる。
【0007】
Middletonは、スピン交換技術による過偏光用に、より多量の希ガスを入れることができる、密封されたポンピングセルを製作する可能性をはじめて立証した。MiddLeton H.,"The Spin Structure of the Neutron Determined Using a Polarized 3He Target",Ph.D.Dissertation,Princeton Univerisity(偏光した3He標的を使用して決定した中性子のスピン構造、博士論文、プリンストン大学)。そうではあっても、試料ごとの変動性が問題のまま残っていたため、この論文物に記載されている手順の信頼性は日常的な使用に適していなかった。さらに、この資料には詰め替えることができるセルまたはさほど修復せずに連続的または流動(フロー)ベースで使用することが可能なセルの製作方法が全く開示されていない。したがって、セルの製造技術は進歩したものの、詰め換え可能なスピン交換ポンピングセルまたは連続的流動スピン交換ポンピングセルを製作する方法は提供されていない。
【0008】
過偏光129Xeは凍結することができ、しかもその偏光のかなりの部分が維持されることも知られている。実際、129Xeを凍結すると、129Xeを気体状で保つことによって通常達成されるよりも、偏光寿命を実質的に延長することができる。したがって、少量の過偏光129Xeが入った密封されたガラスセルは凍結され、保存され、使用するためにその後解凍され(昇華され)てきた。たとえば、Cates et al.,Phys.Rev.Lett.65(20),2591-2594(1990)を参照されたい。Catesは、少量(最大限約1g/時間まで)の129Xeを蓄積することが可能な設計を提供したが、このような成果を達成できる方法に関する実際的開示は全くない。この論文はより多量の129Xeを蓄積することが可能かどうかも示していない。
【0009】
あるいは、Becker et al.,Nucl.Inst.& Meth.in Phys.Res.A,346:45-51(1994)による刊行物には、準安定性交換として知られる明確に異なる偏光法によって過偏光3Heを製造する方法が記載されている。この方法は極端に低圧、すなわち、約0.001〜約0.01気圧の3Heを使用することが必要であるが、アルカリ金属を使用せず、3Heはレーザーで直接偏光される。この方法は巨大なポンピングセル(すなわち、長さ約1m)を使用し、その後、ガスを有用なレベルまで圧縮することが必要なため、過偏光した3Heをこの方法で相当量蓄積するには制限がある。Beckerらの出版物には、ガスをほぼ大気圧まで圧縮するためのチタン製大量コンプレッサーを使用する、独創的ではあるが技術的に難しい方法が開示されている。不運なことに、このようなシステムの製造および操作には工学技術熟練を要するため、日常ベースでのシステムの再現性および実施可能性は限定される。Beckerらが記載した装置は、相当量の据付面積も必要とし、移動させることはできない。Beckerらの論文では、ポンピングセルにアルカリ金属の使用を避けており、スピン交換によって過偏光希ガスを製造する方法は開示されていない。それ故、Beckerらの論文では、アルカリ金属を使用するポンピングセルを製造する方法の複雑さは解決されない。結果として、スピン交換による任意に多量または少量の過偏光希ガスの製造および供給に関する方法または装置は、この刊行物に記載されたり示唆されたりしていない。
【0010】
過偏光希ガスは、核磁気共鳴イメージング(MRI)技術によって画像化されることが最近実証された。米国特許出願番号第08/225,243号を参照されたい。さらに、希ガスは族として不活性であり非毒性であるため、過偏光希ガスをヒト被験者および動物被験者のMRIに使用できることが判明した。結果として、多量の過偏光希ガスを発生させる必要性が増大している。さらに、医学および獣医学に関するものであるため、ガスの純度および過偏光の量に関してコントロールされた均一性および信頼性が必要になった。また、上述の検査室技術の特訓をほとんどまたは全く受けていない医療技術者でも、MRIを受ける被験者に不連続なまたは連続した過偏光希ガスを提供することができる臨床環境で使用するためには、これらの過偏光ガスの便利で且つ信頼できる発生が重要となる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述の考慮すべき事柄を斟酌すると、既存の技術で用いられている装置および方法は数々の点で制限されていることは明白である。たとえば、既存の技術では、一度使用した後、スピン交換偏光チャンバ(セル)を詰め換える実用的な手段は得られない。現行のチャンバは、そのほとんどが初回充填後、永久的に密封されるか、せいぜい詰め替えられても不満足な結果に終わる。それ故、材料費および人件費を低減させるために、同一チャンバ内で連続的流動モードで光ポンプピングする場合でも、ポンピングチャンバを効果的に詰め替える手段を開発することが有益であろう。
【0012】
さらに、以前に使用された永久的に密封されたセルにとって申し分ない充填でも、著しく異なるシステムで行われた。従来、高品質偏光チャンバを充填することができるほど十分に清潔な装置を製造するためには、油非含有ポンプか低温捕捉油含有ポンプのいずれかを備えた高価な超高真空システムが必要であった。このようなシステムは高価であり(約30,000ドル)、あまり小型ではなく(占有面積3(91cm)フィート×6フィート(183cm))、且つ訓練を受けた真空技術者による高度のメンテナンスを必要とする。最小限のメンテナンスのみを必要とし、真空テクノロジーに関する専門知識がなくても操作することができる新規システムが望ましい。また、臨床環境では、より便利なサイズのシステムが有用であろう。
【0013】
さらに、連続様式で過偏光ガスを製造する実用的な方法は皆無であった。各スピン交換過偏光手順で、新しい密封された試料を調製して過偏光器に導入しなければならなかった。したがって、この制限を克服するシステムを開発し、流動する希ガスを連続的に過偏光させる手段を提供することが望ましい。
【0014】
過偏光ガスを製造するシステムもかなり嵩張り、一般にシステムを設置するための別の部屋が必要である。このようなシステムは移動させたり、様々な他の目的に使用される部屋に装置の一部として設置することができない。それ故、小さくて便利な過偏光器が有利である。また、スペースが重大な考慮すべき事柄である状況では、移動させることができるシステムも有益である。
【0015】
また、以前には、後で任意の量(大気圧で最大限数十リットルまでのガス)を不連続の量で後に供給するための、かなりの量の過偏光希ガス、特に129Xeを保存する便利な方法はなかった。この制限を克服し、その上、過偏光希ガスを連続的に蓄積するための装置を提供することも、必要に応じて過偏光ガスを保存したりコントロールされた放出をすると同時に、かなりの量の過偏光を維持することも重要であろう。
【課題を解決するための手段】
【0016】
したがって、本発明の結果として、過偏光希ガスを蓄積するための改良された装置および方法が提供される。特に、磁気共鳴イメージング用の多量の高純度過偏光希ガスを蓄積する装置が提供される。また、過偏光希ガスを連続的に発生して蓄積し、多量の過偏光希ガスを保存するための方法および装置が提供される。
【0017】
本発明の装置は、連続モードまたは半連続モードで過偏光129Xeを蓄積することが可能なアキュムレーターシステムを含む。このアキュムレーターシステムは、過偏光キセノンが低温トラップ貯蔵器を通過できるようにし、且つ漏出する前に効率よく且つ選択的にキセノン氷として捕捉されるようにすることができる。このアキュムレーターは、他のガスにシステムを通過させ、その結果過偏光キセノンを選択的に凝縮することも可能である。アキュムレーターは、トラップがキセノンの凍結温度又はそれより低い温度まで冷却される低温トラップ貯蔵器を使用することが好ましい。アキュムレーターに入ったキセノンは、次に凍結状でアキュムレーター貯蔵器の壁に効率よく付着する。さらに、アキュムレーターは貯蔵器内で流動しているキセノンを、先に付着したキセノンの上に付着させることが可能であり、その結果、凍結ガスを連続的または半連続的に蓄積することが可能である。固体の過偏光129Xeは気体状よりも偏光寿命が長いため、アキュムレーターは保存装置の役割を果たし、後で使用するために、かなりの量の過偏光ガスを蓄積することができる。さらに、本発明は様々に記載された装置の使用方法を提供する。
【0018】
場合に応じて、アキュムレーター貯蔵器は冷却装置から外して、流入管および流出管から離すことができる。それ故、着脱可能な貯蔵器カートリッジを取外して、別の冷却装置または冷蔵装置内に別々に保存することができる。このようにして、別の着脱可能な貯蔵器カートリッジを取付けることによってアキュムレーターの操作を続けることができる。
【0019】
本発明に従って過偏光129Xeを蓄積するために、キセノンの過偏光は、ガス混合物の状態で供給されたキセノンを使用して実施することが好ましい。ガス混合物は、少なくとも天然同位元素存在度の129Xeを含むキセノンを含む。さらに、スピン交換偏光の効率を高めるために、窒素や水素などの消光用(クエンチング)ガスをガス混合物に含めて、光ポンピング手順中のアルカリ金属の蛍光発光を抑制する。高分圧キセノンの過偏光は、望むほど効率が良くない、すなわち、高圧キセノンはアルカリ金属をあまりにも効率よく偏光解消することによって、キセノン自身の過偏光を阻害し得ることが確認されている。したがって、低圧過偏光は必要不可欠な基準である。しかし、本発明によるキセノン過偏光の効率を高める新しい方法は、緩衝ガスを使用して、アルカリ金属蒸気によって吸収される波長の帯域を広げ、その結果過偏光過程効率を高めることを含む。1つの好ましい緩衝ガスはヘリウムである。本発明は、ある消光用ガスが高い消光用ガス圧でアルカリ金属蒸気の偏光解消を引起こすという問題を解決するために、消光用ガスと異なる緩衝ガスの使用を含む。したがって、本発明による好ましいガス混合物は少量の129Xe、少量の消光用ガス、および残りを占める(バランス)ヘリウムを含む。
【0020】
それ故、本発明の装置は、従来可能であったよりもかなり大量に希ガスを過偏光させることが可能な高容量過偏光器と共に有効に使用される。この過偏光器は、連続方式または少なくとも半連続方式で、希ガスを過偏光させる手段を含む。たとえば、希ガスを連続モードで過偏光器の偏光チャンバ内を貫流させ、核が偏光チャンバを通過する間に、核のかなりの部分が過偏光することができるような流れの速さとする。あるいは、半連続(時たまのまたは周期的な)アプローチで、希ガスを不連続の量で偏光チャンバに入れ、過偏光させ、その後放出させ、結果として生じた量のガスを処理することが可能である。この装置では、連続的通過または繰り返し充填および排出によって同一チャンバを使用することができるため、個々のセルを製作する必要はない。それ故、新しい過偏光セルを製作する必要性によって、比較的多量の過偏光希ガスの発生が妨げられたりさもなければ制限されたりしない。
【0021】
本発明は129Xeを過偏光させ、且つかなりの量の過偏光ガスを蓄積する方法にも関する。詳細には、この方法は、低比率で希ガスを含む標的ガス混合物を過偏光させること、過偏光した標的ガス混合物をアキュムレーターに流し入れること、およびガス混合物中の他のガスが実質的に排除されるまで、過偏光した希ガスを蓄積することを含む。好ましくは、この方法は、ヘリウムなどの緩衝ガスおよび窒素などの消光用ガスとの混合物中の、低比率の129Xeを過偏光させることを含む。いつも少量の129Xeが製造されるに過ぎないが、混合物中の他のガスの相変化を避けながら、キセノンを凍結させるアキュムレーターに標的ガスを流し入れる。このようにして、キセノンは実質的に精製された形でアキュムレーター貯蔵器内に付着し、他のガスは選択的に除去される。さらに、キセノンが蓄積して、別な方法で可能であるよりもはるかに多量の過偏光ガスを生じる。
【0022】
次に、本発明の個々の実施態様について考えると、一つの実施態様で、本発明は過偏光した129Xeを蓄積する方法を含む。この方法は、過偏光129Xeをはじめとする起源(ソース)ガスを、蓄積手段の中を貫流させることと、蓄積手段内の過偏光129Xeを蓄積することを含む。好ましくは、この蓄積方法は、
a)ガスが貫流することが可能な蓄積貯蔵器と、
b)129Xeを凍結状で蓄積貯蔵器内に蓄積させるのに十分な温度まで蓄積貯蔵器を冷蔵するための冷蔵手段と
を含む蓄積手段内に129Xeを蓄積することを含む。
【0023】
この方法に、印加された磁界内に過偏光129Xeを蓄積することが含まれることが好ましい。印加される磁界の好ましい強度は、蓄積温度で過偏光129Xeのスピン格子緩和時間を最大化するのに十分である。たとえば、磁界は、液体窒素温度で少なくとも約500Gでなければならない。一般に、より低温では、適当に高い磁界を必要とする。
【0024】
本発明の方法を使用すると、任意の所定の期間に蓄積を行うことが可能になるものの、蓄積期間が、キセノン氷の温度における129Xeの最大可能スピン格子緩和時間を超えるとき、過偏光129Xeの緩和のために、蓄積された正味のキセノン氷の過偏光部分が減少すると考えられる。したがって、129Xeが蓄積される温度における129Xeのほぼ最大可能スピン格子緩和時間までの期間、キセノンを収集することが好ましい。より低い冷蔵温度を使用すると緩和時間が増大し、その結果、より長い蓄積期間が可能になる。
【0025】
起源ガスは少なくとも天然存在度の129Xeを有するキセノンを含む。さらに好ましくは、起源ガス中のキセノンは、天然存在度より高いレベルまで129Xeが濃厚化されている。キセノンの高圧スピン交換過偏光で認定されている特定の制限があるため、キセノンは一種以上の他のガスも含む起源ガス中で提供されることが好ましい。詳細には、本方法は、窒素や水素など、アルカリ金属蛍光消光用ガスをさらに含む起源ガスを使用して実施することができる。また、本方法は、スピン交換手順で使用されるアルカリ金属原子の光吸収スペクトルのプレッシャーブロードニングが可能な緩衝ガスを含む起源ガスを使用して実施することができる。一つの好ましい緩衝ガスはヘリウムである。水素は、消光用ガスと緩衝ガスの両者の役目をして、光吸収線を広げることができる。窒素はアルカリ金属原子を実質上偏光解消させるため、光吸収線を広げるには、窒素は水素やヘリウムほど優れたガスではない。
【0026】
好ましくは、本発明によるアキュムレーターを貫流する起源ガスは、過偏光129Xeに加えて窒素およびヘリウムを含む。これは、主として過偏光129Xeの製造にXe:He:N2ガス混合物が好ましいためである。さらに好ましくは、起源ガスは、過偏光129Xeを約0.1%〜約5%、N2を約0.1%〜約3%含み、残り(バランス)はヘリウムである。あるいは、起源ガスは過偏光129Xeを約0.1%〜約5%、H2を約1%〜約30%含んでもよく、残りはヘリウムである。現在好まれる起源ガス混合物は、過偏光129Xeを約1%、N2を約1%、ヘリウムを約98%含む。
【0027】
この方法は、好ましくは、過偏光129Xeを蓄積させると同時に、少なくとも実質的に他のガスの蓄積を許さない。このようにして、過偏光129Xeが実質上精製され、他のガスをかなりの比率で含有する起源ガス中のキセノンの初期濃度が低いことを克服する。
【0028】
本発明の方法は、好ましくは、冷蔵システムによる過偏光129Xeの蓄積を含む。冷蔵システムの一タイプは、液体窒素や液体へリウムなど、液化ガスを用いて蓄積貯蔵器を冷蔵する手段を含む。この種のシステムの貯蔵器は、液化ガス中に浸漬してもよく、液体によって生じる冷たい蒸気と接触させておいてもよい。また別のアプローチで、本方法はクローズドサイクル冷蔵システムを含む冷蔵手段を使用することができる。過偏光129Xeの寿命を延長するためには、低温が望ましいと考えられる。
【0029】
本発明の方法は、好ましくは、起源ガスから過偏光129Xeを蓄積する前に、129Xeを過偏光させることをさらに含む。この過偏光は、好ましくは、ルビジウムやセシウムなど、アルカリ金属とのスピン交換による129Xeの過偏光を含む。また、過偏光手順は、好ましくは、過偏光129Xeを含有する起源ガスの連続した流れを使用して実施し、蓄積手段の温度における129Xeのほぼ最大可能スピン格子緩和時間までの期間、過偏光129Xeを蓄積させることができる。
【0030】
蓄積した過偏光129Xeを、129Xeの凝固点付近またはそれ未満で保存することによって、本発明の方法を補足することはさらに望ましい。実際、蓄積した過偏光129Xeを、蓄積場所から隔たった(遠い)位置で保存できることは本方法の長所である。それ故、蓄積貯蔵器、あるいは冷蔵手段と一緒の貯蔵器を、保存するために別の場所に移動させることができる。これによって、蓄積を再開し、新たな過偏光129Xeを提供することが可能である。蓄積したキセノンの保存は、蓄積に使用された温度より低い温度を使用して実施することが好ましい。また、保存は、保存温度における過偏光129Xeのスピン格子緩和時間を最大化するのに十分な磁界を印加して実施することが好ましい。
【0031】
別の実施態様で、本発明は、過偏光129Xeの連続蓄積用アキュムレーター装置も提供する。この実施態様で、装置は、
a)貫通する過偏光129Xeを蓄積するための蓄積貯蔵器と、
b)過偏光129Xeを凍結状で蓄積させるのに十分な温度まで蓄積貯蔵器を冷蔵するための冷蔵手段と
を含む。
【0032】
蓄積装置は、好ましくは、磁界を、さらに好ましくは、蓄積温度における過偏光129Xeのスピン格子緩和時間を最大化するのに十分な磁界を、蓄積貯蔵器に印加する手段もさらに含む。
【0033】
この装置は、好ましくは、液体窒素、液体ヘリウム、または他の液化ガスで蓄積貯蔵器を冷蔵するための冷蔵手段も含む。あるいは、この冷蔵手段はクローズドサイクル冷蔵システムを含む。
【0034】
さらに好ましくは、装置は、さらに過偏光129Xeを提供する手段も含む。好ましくはアルカリ金属とのスピン交換によって129Xeを過偏光させる手段を、装置が含むことが好ましい。好ましい過偏光器は、過偏光129Xeを連続モードまたはパルスフローモードで供給することができる装置を含む。
【0035】
好ましくは、この装置は、凍結キセノンを遠い位置で保存できるために蓄積貯蔵器が着脱可能であるように、モジュラーデザインのものである。それ故、蓄積貯蔵器は、冷蔵手段から取外せることが望ましい。あるいは、過偏光手段が含まれるとき、蓄積貯蔵器は過偏光手段および冷蔵手段から取外すことができる。別の代替構成で、蓄積貯蔵器および冷蔵手段は過偏光手段から取外すことができる。
【0036】
本発明の装置で、蓄積貯蔵器は、貯蔵器の内外へのガス漏れを防止するために、密封できることが好ましい。このことは、キセノンの蓄積後、貯蔵器を保存する状況で特に重要である。したがって、蓄積貯蔵器は、貯蔵器内外へのガス流れを調節することが可能な一個以上の弁(バルブ)付ガスポートなど、様々な手段で密封される。
【0037】
装置は、凍結キセノンを昇華させて、過偏光129Xeを含有する気体状のキセノンを提供する手段をさらに含んでもよい。
【0038】
別の実施態様で、本発明は過偏光129Xeの連続製造装置を提供する。この場合、装置は
a)流動する129Xeを提供するのに適した起源ガス供給システムと、
b)流動する129Xeを過偏光して流動する過偏光129Xeを提供するための過偏光手段と、
c)過偏光129Xeを蓄積するための蓄積手段と
を含む。
好ましくは、蓄積手段は、
a)過偏光129Xeを蓄積するための蓄積貯蔵器と、
b)129Xeを凍結状で蓄積貯蔵器内に蓄積させるのに十分な温度まで貯蔵器を冷蔵するための冷蔵手段と
を含む。
磁界を、好ましくは、蓄積温度における過偏光129Xeのスピン格子緩和時間を最大化するのに十分な磁界を、蓄積貯蔵器に印加する手段を、蓄積手段がさらに含む装置も望ましい。
【0039】
好ましくは、装置は、
a)流動する129Xeを偏光するための偏光チャンバと、
b)偏光チャンバ内に過偏光放射線を送ることができる光源と
を含む過偏光手段を含む。
スピン交換過偏光手順中に、アルカリ金属蒸気を提供するのに十分な量のアルカリ金属、好ましくはルビジウムまたはセシウムを、偏光チャンバに提供することができる。アルカリ金属気化装置およびアルカリ金属還流装置を組込んで、流動構成におけるアルカリ金属の損失を制限することが可能である。
【0040】
光源は、レーザーダイオードアレーなどのレーザーであり、且つアルカリ金属原子とのスピン交換によって129Xeの過偏光を誘導するのに十分な過偏光放射線を送ることができることが好ましい。
【0041】
さらなる実施態様で、本発明は過偏光129Xeの連続蓄積法を提供する。この実施態様で、本発明は
a)129Xeを蓄積するための蓄積貯蔵器と、
b)蓄積貯蔵器内に129Xeを蓄積させるのに十分な温度まで蓄積貯蔵器を冷蔵するための冷蔵手段と、
c)蓄積貯蔵器に磁界を印加するための手段と
を含むアキュムレーター手段の中を、過偏光129Xeを含有す標的ガスを貫流させて過偏光129Xeを蓄積することを含む。
【0042】
別の実施態様で、本発明は
a)過偏光129Xeを含有す標的ガスを、過偏光手段の中を貫流させることと、
b)過偏光手段内でアルカリ金属原子とのスピン交換によって129Xeを過偏光させ、標的ガス中に過偏光129Xeを提供することと、
c)標的ガスを、蓄積手段の中を貫流させ、凍結状で過偏光129Xeを蓄積させることと
を含み、
アキュムレーター手段が、
1)凍結した過偏光129Xeを蓄積するための蓄積貯蔵器と、
2)129Xeを凍結状で蓄積貯蔵器内に蓄積させるのに十分な温度まで蓄積貯蔵器を冷蔵するための冷蔵手段と
を含む過偏光129Xeの連続蓄積法を提供する。
【0043】
さらに、本発明は、過偏光129Xeを含有するガスを貫流できるように適合された取り替え可能な蓄積貯蔵器を含み、取り替え可能な蓄積貯蔵器が、凍結した過偏光129Xeを蓄積するのに十分な温度まで蓄積貯蔵器を冷蔵するための冷蔵手段と取り替え可能に連動するように適合されている過偏光129Xeを蓄積するためのアキュムレーター装置を含む実施態様を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
本発明のこれらの長所およびこれら以外の長所は、本願明細書に記載されている詳細な説明および実施例から認識されるであろう。詳細な説明および実施例は、本発明の理解を高めるものであり、本発明の範囲を限定するためのものではない。
本発明の好ましい実施態様は、例示および説明のために選択されたものであり、いずれにしても、本発明の範囲を制限するためのものではない。本発明のある局面の好ましい実施態様を添付の図面に示す。
【0045】
図1は、本発明による統合された過偏光器および多量の過偏光129Xeの発生および蓄積に有用なアキュムレーターシステムを示す。この図では、イメージング(imaging)試験に必要なときに偏光したガスを供給することができるMRIガス供給システムをはじめとする幾つかの重要なサブシステムを含む過偏光器ユニットを示す。
【0046】
図1で、レーザーダイオードアレイ1は約100W〜約500Wの出力を有し、アルカリ金属による吸収に適した波長λの放射線を放出する。波長の幅Δλは約2nmFWHMであり、直線偏光は約95%以上である。波長の幅が広いため、本願明細書ではこの種のレーザーを「広帯域」レーザーと呼ぶ。代替実施態様では、ポンピングセル4の向かい合った両面からポンピングする二つのレーザーを使用することができ、適当な新しいデザインのセル4および光診断システム10を備えている。
【0047】
非球面フレネルレンズFresnel lens (一般にプラスチック)は、ダイオードレーザーアレイ1からの光の大部分を光ポンピングセル4に注ぐ。光ポンピングセル4の端のすぐ向こうにダイオード表面の画像が形成される。フレネルレンズは安く且つ現在使用できるダイオードレーザーアレイに十分適応するが、現在使用できるものより高い固有輝度を有すると考えられる将来のレーザーには、異なる光学器械の方が適当かもしれない。
【0048】
四分の一波長板3は、ダイオードレーザーアレイからの直線偏光を円偏光に変換する。表示の通り、レンズおよび四分の一波長板の加熱が問題ではないほどレーザービームが広がるフレネルレンズ2のすぐ後ろにプラスチック製の四分の一波長板を置く。既に高度に直線偏光しているレーザー1からの光は、自然の直線偏光が十分でなければ、直線偏光器(表示せず)を通過してから四分の一波長板3に到達することができる。
【0049】
飽和アルカリ金属蒸気、たとえば、RbやCs、および予め混合されているガスタンク11と関連して下に記載されている、129Xe、N2およびHeの至適ガス混合物が提供される光ポンピングセル4が表示されている。セル4は、レンズ2からの収束光を受け入れることができるように、先端を切った円錐形をしている。出口管6からの還流アルカリ金属は、セルを通って後退し、気化装置5に収集される。セルおよび付随の管は、予め混合されたガスの高圧、一般に約1気圧〜約30気圧をこえる圧力に耐えなければならない。セル内部の高いガス圧は、ダイオードレーザーからの広帯域光を効率よく吸収させるために重要である。
【0050】
気化装置5は、ポンピングセル4より上流に設けられ、ガスがセルに入る前に、流動ガス混合物にアルカリ金属蒸気を加える。気化装置5は、銅、または液体アルカリ金属で容易に濡れる他の非磁気金属または焼結金属のくしゃくしゃのワイヤー(たとえば、金属スポンジ)で製作することが可能である。気化装置5を液体アルカリ金属で濡らし、適当な材料および寸法の容器に詰め込んで、確実にガスに蒸気を十分加える。ガスが光ポンピングセルに入る前に、ガスが確実にアルカリ金属蒸気で完全に飽和されるように、ガスの流速、ガスが貫流する距離、「スポンジ」の細孔直径を調節する。
【0051】
気化装置5は、還流出口パイプ6から凝縮したアルカリ金属の重量流によって補充され、そのため、セルは実質的に垂直方向のままである。還流出口パイプ6は、流出ガスからアルカリ金属を凝縮させるために含まれる。確実に、アルカリ金属の大部分が凝縮し、且つ重力流によって光ポンピングセル内に滴下し、最終的に気化装置に戻るように、寸法および流速を調節する。
【0052】
光ポンプで輸送されたアルカリ金属蒸気からの弱い、まだ消えていないD2蛍光を観測するために、たとえば電荷結合素子(CCD)カメラおよび適当なフィルターを含む、蛍光モニタリング用検出器7が取付けられている。セルの両側の二つのレーザーポンピングと共に使用するために、蛍光モニタリング配列を調節する。
【0053】
ポンピング光がオーブンおよび光ポンピングセルに入れるように、絶縁窓8が設けられている。この窓および他の光透過表面に、反射防止膜を使用してもよい。蛍光モニター7および光学マルチチャネルアナライザー(OMA)10のために、同様の窓が設けられている。
【0054】
光ポンピングセルを、ダイオードレーザーからの有用な光の大部分を吸収するのに適した温度に維持するために、オーブン9が備え付けられている。一般的なルビジウムの操作温度は約100℃から約200℃である。より気化しやすいセシウムには、幾らか低い温度が適当である。熱風または内部の非磁気電気ヒーターでオーブンを加熱することができる。
【0055】
広帯域ダイオードレーザーアレイからの光の吸収効率を測定するための光学マルチチャネルアナライザー(OMA)10。セルを両側からポンピングするのであれば、異なるOMA配置が必要である。
【0056】
高圧タンク11は、予め混合された標的ガスを数百気圧の圧力に維持するために含まれている。好ましい標的ガス成分は、分圧で、次の通りである。
a.光ポンピングセル4の中での過偏光およびキセノンアキュムレーター17での蓄積用には、約0.1%から約5%の129Xe(すなわち少なくともほぼ天然の同位元素組成のキセノン)。
b.光ポンピングセル4内で蛍光を消すためには、約1%から約3%のN2。N2の代わりに幾らか高い分圧(たとえば、約1%から約30%)でH2を使用し、N2ガスと比較して小さいH2中のアルカリ金属原子のスピン偏光解消横断面を利用することが可能である。
c.光ポンピングセル4内のアルカリ金属原子の光吸収線を広げる圧力の場合、ガスの残りは緩衝ガス、好ましくはHeである。Heガスが、キセノンと比較して無視できるスピン偏光を確実に惹起するように、Heガス圧を調節する。他のガス混合物を使用して、消光特性およびプレッシャーブロードニング特性を標的ガスに与えることが可能である。
【0057】
圧調節器12は、貯蔵タンク11内の予め混合されているガスの非常に高い圧力を、光ポンピングセル4に適した圧力まで下げるために使用される。これは、一般に約10〜約30気圧であり、広帯域レーザー光線の最適使用に、いかに多くのプレッシャブロードニングを必要とするかによって異なる。
【0058】
ガス清浄器(ゲッター)13は、微量の不純物、主として水蒸気を、予め混合されている標的ガス流から除去するために使用される。
【0059】
表示の通り、蓄積貯蔵器17は、デュアー瓶内の液体窒素または他の寒剤によって冷却された逆流コールドトラップを含む。閉回路冷蔵庫を冷却に使用してもよい。
【0060】
分離位置15は、分離位置20と一緒に使用すると、蓄積貯蔵器17を取外すことができる。弁14は光ポンピングセル4を分離位置15から隔離したり、その間の流れを調節したりする。弁16は、蓄積貯蔵器17を分離位置15から隔離する。
【0061】
永久磁石18は、蓄積貯蔵器内の凍結キセノンの位置で約500ガウス(0.05T)を超える静磁界を生じるために使用される。このように大きい磁界は、最長可能スピン格子緩和時間(たとえば、液体窒素温度で約3時間)を得るのに十分である。はるかに長いスピン格子緩和時間を達成できる低凝縮温度では、より大きい磁界を必要とする。磁石は、低温アセンブリ内部に入れて、キセノン蓄積貯蔵器と一緒に低温に保つことが可能である。
【0062】
弁19は、キセノンコンデンサー17を分離位置20から隔離するために使用され、この分離位置20を分離位置15と一緒に使用すると、キセノンコンデンサー17を取外すことが可能である。
【0063】
弁21は、昇華した過偏光129Xeガスをトランスファーバッグ22または様々な用途、たとえば、患者のMRI、非破壊的評価などのために過偏光129Xeを大気圧で輸送するための任意の他の容器に放出するために使用される。壁の堅い容器を使用して、過偏光129Xeガスを他の気圧で輸送することができる。
【0064】
弁23は、凝縮したキセノンの昇華中およびバッグまたは他の容器22へのガス移動中、キセノンアキュムレーター17を隔離する。
【0065】
ガラスと金属のシール24が施されるが、シールのポンプ側の管はステンレススチールまたは他の金属であることが好ましい。シールのキセノンコンデンサー側では、管はガラスである。ガス流れの投入側の同様のガラスと金属のシールおよび適切なステンレス補助ベローは表示していないが、通常は存在する方が好ましい。
【0066】
圧力計25は、蓄積相の間、圧力をモニタリングして調節するために使用される。
【0067】
弁26によって隔離されるポンプ27は、蓄積期間の終わりに、キセノンコンデンサー17からの残りのHeおよびN2を評価するために使用される。
【0068】
ニードル弁28または他の流れ調節装置は、残りのHeガスおよびN2ガスを部屋または再使用するための回収容器に排出させるために含まれる。この弁28は、光ポンピングセル4を貫流する速度を調節する。排出速度は、我々が開発した方式による過偏光129Xeの調製を最適化するように調節する。ガスの流れを流量計29でモニタリングする。
【0069】
大気、または使用済みのHeガスおよび消光用ガス(たとえば、N2やH2)の回収容器につながっているベント30が取付けられている。
【0070】
ポート31は、予め混合されているガスのタンクを取付けた後、ベント24を通過する清浄ガス(たとえば、アルゴン、ヘリウム、窒素)でガス配管網をパージするために含まれる。ベント33は、ポート31で導入されたパージ用ガスを放出することができる。
【0071】
取付け位置32は、予め混合されているガス供給物を光ポンピングセルに接続するために供給される。弁34は、ガス供給管のパージ中、光ポンピングセルを隔離する。
【0072】
ポンピングチャンバ内の129Xe偏光をモニタリングするために核磁気共鳴ピックアップコイル35も含まれ、これは、ガス流速の最適化に有用である。
【0073】
オーブンの温度をモニタリングするために、温度センサー36、たとえば、抵抗温度装置(RTD)が使用されている。
【0074】
静磁界37も図示されている。その起源は表示されていないが、我々は、ヘルムホルツコイルまたは磁気共鳴イメージング磁石のフリンジ電界のいずれかまたは二者の組合せを使用して成功をおさめた。
【0075】
制御サブシステム(表示せず)は一般に統一コンピューターソフトウエアおよび様々なサブシステムで発生する異なる処理の制御やモニタリングに使用されるハードウエアに組み込まれているサブシステムとして望ましい。
【0076】
以下に詳述するが、本発明のアキュムレーター装置と共に使用するのに適しているような、高容量過偏光システムの製造および操作は、本願と同日に提出された、「スピン偏光希ガス用高容量過偏光器High-Volume Hyperpolarizer for Spin-Polarized Noble Gas」と題する同時係属米国特許出願番号第08/XXX,XXXにもっと詳しく記載されている。同出願の全開示内容を本願明細書に取り込んで本明細書の一部とする。
【0077】
偏光チャンバの1つの実現を図1に示す。偏光チャンバは、光ポンピングおよびスピン交換が行われるチャンバとして、多数の必要条件を満たさなければならない。たとえば、ポンピングチャンバは、実質的に耐漏出環境で適量の偏光ガスを保持しなければならない。ガラスセルの場合、チャンバのガス圧は装置の必要条件に従って維持され、好ましくは約30気圧(atm)までの大気圧より高い圧力(本願明細書では「高圧」と表す)、さらに好ましくは約8atmから約12atmに維持される。要求に応じて、ガス圧はこの範囲外(上または下)であってもよい。目下、好ましい圧力は約10気圧であり、これは、偏光チャンバの製造で最も一般的に使用される材料であるガラスの構造上の制限を表わす。他の偏光チャンバ構造では、より高い圧力またはガス密度を使用することが可能であろう。
【0078】
ポンピングチャンバはレーザー起源からの偏光放射線を導入しなければならない。好ましいチャンバの構造としては、円錐構造または先端を切った円錐(円錐台)構造などがあるが、ある構成では、円柱型セルが適している。チャンバ内およびその内部全体への光供給を最大にして、過偏光手順の効率を最大にするために、チャンバはレーザーシステムと関連して設計される。
【0079】
好ましいタイプのポンピングチャンバ(図1に示さず)は、同一軸に沿って放射するように配列された二つのレーザーからセルに過偏光放射線を導入するための二つの光ポート(窓)を有する。一または二以上の光ポートを使用するかどうかと関係なく、ポートは少なくとも実質的に光を通し、且つ/または光ポンピングに使用されるアルカリ金属の光ポンピング遷移線の波長に近いことが好ましい(すなわち、「過偏光放射線」)。たとえば、ルビジウムのD1遷移の波長は794.7nmであり、ルビジウムと一緒に使用するのに適した光ポートは少なくとも実質的にこの波長の光を通さなければならない。ポンピング効率を最適化するには、光ポートは必要な波長の光をできる限り通すことが必要である、すなわち、過偏光放射線の吸収を最小限に抑えなければならない。光透過を最大限にするために、反射防止剤が塗布されていてもよい。向き合ったレーザーと関連して二つのポートを使用するとき、ポートの内面を反射するようにしてチャンバ内部の光を保持することが可能である。
【0080】
セル内で所望のレベルの偏光を達成できるように、ポンピングチャンバ内のガスの核偏光の体積平均緩和時間は、アルカリ金属原子と希ガス核との間のスピン交換速度と比較して、十分に遅くなければならない。したがって、偏光チャンバの材料およびデザインは、注意して選択しなければならない。たとえば、ポンピングチャンバは、化学的にアルカリ金属と共存(compatible)できなければならず、好ましくは光ポンピングに適した高温で(たとえば、約200℃以上まで)、アルカリ金属と共存できる。さらに、NMR偏光分析を使用して過偏光手順をモニタリングできる場合、ポンピングチャンバの壁は実質的に偏光分析に必要な無線周波電界と干渉しないことが好ましい。
【0081】
ポンピングチャンバの具体的な実現は、偏光させるガスのタイプによって異なる。上述の通り、本発明に従って使用するのに適した偏光チャンバは一般にガラス製である。このガラスは、スピン交換法で使用されるアルカリ金属(類)に抵抗性でなければならない。このようなガラスの例は、アルミノケイ酸ガラス(Corning 1720など)、金属封止ホウケイ酸ガラス(Corning 7052やSchott 8502など)である。より低温の用途では、標準的なホウケイ酸実験器具、たとえば、Pyrex(商標)、Duran(商標)を使用することができる。高圧操作が可能な他のポンピングチャンバのデザインは、ガラス製の光ポートが取付けられた金属構造を含む。さらに、別のアプローチでは、セルを熱高圧ガスまたは透明な液体(たとえば、ポンプ油)で包囲してガラスセル壁および窓全体の圧差を最小限に抑えることができる。
【0082】
図1に示す通り、ポンピングチャンバは、偏光させるガスの連続的な流れまたは一時的な流れを除去したり補充することができる、別の再密封可能な(たとえば、弁がついた)流入口および流出口を有することも望ましい。流れを調節できる適当なガスポートを使用することが可能である。あるいは、チャンバは、ガスがそれを通って周期的にセルに流入したりセルから流出する1つのガスポートを有してもよい。図1で、ガス取扱システムは、光ポンピングセルをアキュムレーターおよびガス供給から隔離するための弁14および弁34を必要に応じて含む。
【0083】
再密封可能なガスポートはガスの流れを調節するための、Oリング弁などの弁手段を含む。一般に、これらの弁はPyrex(商標)ガラス本体と心棒を有し、その結果、それらと一体化した流入口および流出口を具有する偏光チャンバを製作することができる。このような弁に、アルカリ金属に抵抗性でもある可撓性で且つ弾力性のシールを取付ける。このようなシールは一般にOリングであり、エチレン−プロピレン共重合体など、様々な高分子材料材料で製作される。作動しなくなったOリングを通って酸素がチャンバに入るとポンピングチャンバの酸化が起こり得るため、Oリングのアルカリ攻撃に対する抵抗性は、重要な特徴である。
【0084】
再密封可能なガス流入装置およびガス装置のバルブは、導管、好ましくは偏光チャンバに使用されているものと同様のガラスで製作された管によってポンピングチャンバの本体から離れている。これらの管は、偏光工程中に、Oリングの限界より高温まで加熱されることが多いセル本体およびセルの周囲のオーブンから熱感受性Oリング材料を熱的に離すことができる。操作ガス圧が高い場合、管の長さの下方への拡散は、バルク体積(管の体積と総体積の比率によって異なる)の偏光解消時間定数と比べて遅いため、管によって、弁本体による正味の偏光緩和が減少する。この配列で、非鉄金属で構成された弁を使用することも可能である。
【0085】
我々は、ポンピングセルによるガス偏光解消を有利に減少できることを発見した。たとえば、セル壁上に金属フィルム被膜(金、アルカリ金属など)を使用すると、偏光寿命が改善され、セルの洗浄および製作に要する努力が減少する。1995年6月7日に提出された米国特許出願番号第08/478,276号に記載されている高分子被膜を有益に使用することもできる。他の方法も利用することができ、前述の米国特許出願第08/XXX,XXX号に詳述されている。
【0086】
本発明のアキュムレーター装置用受入れ貯蔵器は、アルカリ金属化学的抵抗性および光ポンピングレーザー光線の透過性という必要条件を緩和できること以外は、ポンピングチャンバに必要なものと同じ厳しい基準で製作することが可能である。過偏光129Xeの緩和は凍結状態で非常に効率よく抑制されるため、蓄積貯蔵器の壁の製品品質はさほど重要ではないことを、我々は発見した。したがって、この特徴のため、より低い品質基準の維持が可能であり、同時に費用が節約される。
【0087】
アルカリ金属蒸気は、かなり用心しなければ、控えめなガス流れ(10〜20cm3/分)の間でも流動ガス偏光チャンバから失われる傾向があることを、我々は確認した。これは、以前には、詰め替え可能なセルまたは連続流れ用セルの開発に相当の障害であった。たとえば、不利な環境では、ルビジウム吸収共鳴およびD2共鳴が完全に消失することを、我々は確認した。我々の研究から、流動ガス系におけるルビジウム喪失の主たる原因は、ルビジウム蒸気による不純物(たぶんH2OおよびO2)のゲターリングであることがわかる。通常であれば、供給ガス中に存在するこれらの不純物は少量であり、密封されたセル内のルビジウムに対してほとんど全く影響を与えない。しかし、ガスの流れによって、このようなアルカリ金属反応性不純物の新たな供給が偏光チャンバに継続的に供給され、その結果、利用できるアルカリ蒸気が断続的且つ実質的に減少する。我々の見解は、このルビジウム蒸気の損失は、Ultra-Pure Systems,Inc.から入手可能な窒素精製装置(ゲッター)の1つなどのような、直列形精製装置を装備することによって実質的に防止できるという我々の発見に基づいている。このような精製装置は、広範囲の流速でルビジウム蒸気損失が実質的に排除されるほど、供給ガスを十分清浄化することが確認されている。このような精製装置は一般に窒素を精製するためのものであるが、希ガスも問題なく通過させるため、たとえば、本発明の方法に従って好ましく使用されるHe:Xe:N2混合物の精製に申し分なく適していることが確認されている。
【0088】
さほど重要ではないが、ガスとしてセルを出るルビジウムがセルを貫流するため、別のルビジウム損失が起こる。我々は、この問題を二通りの方法で克服した。先ず、ポンピングセルから遠くに通じる導管の温度を確実に十分低くすることによって、ルビジウムを導管の壁に付着させる。通常、室温が適当である。新たなフィルターやトラップを必要としないが、医療用途では、低温トラップを使用して完全なルビジウム除去を確実にすることが可能である。しかし、還流システムによって蒸気相にアルカリ金属を維持できることはさらに好ましい。
【0089】
上に簡単に記載したとおり、図1は偏光チャンバ4を収容するオーブン9も表している。光ポンピングオーブンはある温度範囲で作動するが、過度に高い温度ではアルカリ金属蒸気偏光の損失が起こるため、この温度範囲は限定される。アルカリ金属偏光を犠牲にせずに温度を最高にすることはスピン交換速度の最大化に役立ち、偏光した希ガスをより速く蓄積することができる。一般に、オーブンの温度範囲は約80〜約200℃である。好ましい温度は約105℃〜約150℃の範囲である。たとえば、約150℃の温度では、Rb−129Xeスピン交換時間は約22秒となり、平均ルビジウム偏光は約50%である。この温度で、レーザ-光線の約20〜30%がルビジウムに吸収される。約130℃の温度が好ましく、それより高い温度では、129XeNMR信号は急激に下がる。130℃で、Rb−129Xeスピン交換時間は約65秒であり、150℃におけるスピン交換時間よりおおよそ3倍低い。したがって、より低温であれば流速はより低くなければならず、偏光129Xeの収率は低くなる。レーザー誘導性加熱は、オーブン温度計が示す温度より高い(〜20℃高い)実効セル温度(およびしたがって、より高いルビジウム数密度[Rb])の原因となる。セシウムまたは他のアルカリ金属をポンピングチャンバに使用したとき、同様の考えが当てはまる。
【0090】
偏光チャンバ内のガス流速および温度を調節することによって、偏光の程度および生じる129Xe総量を調節することができる。所与の利用できるレーザーおよび帯域幅では、ポンピングチャンバの温度は、アルカリ金属蒸気の体積平均偏光を犠牲にしない、できる限り高い温度に設定される。この最適化によって、偏光が129Xeに移動するスピン交換速度γSEが決定される。その後、偏光チャンバ内で、129Xe原子が平均して約1〜3スピン交換時間定数(1/γSE)を費やすように流速を調節することが好ましい。チャンバがそれより熱いと、スピン交換が速くなり、それ故、129Xeの流速を速くすることが可能である。流速に対する129XeNMR信号を比較することによって、流れの状況を確認することができる。流れが速すぎる場合、試料は完全に偏光する機会を持たないため、129Xe信号は下がる。
【0091】
オーブンは、希ガス中で核緩和を誘導することができる磁界勾配の惹起を最低限に抑えるように構築しなければならない。オーブンは、希ガス中で顕著な核緩和を誘導するのに十分な勾配を生じない材料で構築されることが好ましい。オーブンの材料は、少なくとも約250℃までの温度で実質的な構造完全性を保持しなければならない。高温プラスチックまたはアルミニウムが適当な選択である。スチールなどの強磁性材料は、希ガスを速やかに偏光解消することができる磁界勾配を惹起するため、さほど望ましい材料ではない。
【0092】
図1を参照しながら上述したように、システムの光軸に沿ってレーザー光線をオーブンの内外に通過させることが可能な図示したオーブン4にレーザー窓を設ける。(光軸は、パスとして定義され、レーザー、光学器械、およびセルを含み、それに沿ってレーザー光線が進む)。オーブンは、光軸が光ポンピングに必要な印加された磁界の方向に並ぶような方向に置いてあることが好ましい。オーブンの窓によって、両側からの光軸に沿ったレーザー光線で偏光チャンバを照明することが可能である。この窓は、反射および/または吸収によってレーザー光線の透過を著しく損なわないことが好ましい。この窓は、光透過性を最大にするために、反射防止コーティングを施されていてもよい。
【0093】
再び図1を参照すると、オーブン9に蛍光観察窓を取付けることが可能である。観察窓は、実質的に光軸と垂直な位置から偏光チャンバを見ることが可能な方向を向いていることが好ましい。この窓から、アルカリ金属蒸気の光ポンピングによって生じるD2共鳴蛍光を観察することができる。一般に、蛍光可視化手段は、蛍光観察用のD2フィルターを備えたビデオカメラおよびモニターを含む。画像を使用してレーザー波長を整調したり、光ポンピング温度を最適化したり、レーザーを調整することができる。
【0094】
オーブンは、上述の磁界勾配を最小限に抑えるために、同一条件を満たす材料および方式で加熱しなければならない。図1に表示されていないが、好ましい実施態様では、圧縮空気を、(磁界勾配を最小限に抑えるために)適当なフィラメントヒーター上を、オーブンから少し離して通過させる。熱風を、オーブンの中を貫流させて、所望の温度を得る。温度コントローラーは、オーブン内部の温度センサーの読みに基づいてヒーターを作動させる。あるいは、高無線周波電気ヒーターを使用してもよい。
【0095】
ガス取扱システムおよび精製システムは様々な形をとることができる。理想的には、システムは正確なガス混合物を偏光チャンバに導入すると同時に、偏光チャンバの顕著な品質低下を防止するのに十分なガス流れの純度を保証する。偏光チャンバの品質は、その中の偏光ガスのT1(偏光寿命)によって決定される。
【0096】
偏光チャンバの品質は、ガス状の不純物と壁上の汚染物質の両者による影響を受ける。
偏光工程は、偏光可能な希ガス(一般に、だいたい0.1〜数十気圧)と少量(一般に10〜100Torr)の消光用ガス(通常は窒素であるが、水素または他のガスでも可)の両者を必要とする。消光用ガスは光ポンピングエ程の効率を高める。過偏光129Xeの場合、アルカリ金属吸収線を広げて偏光効率を高める作用をする、多量の緩衝ガス(一般に約1〜数十気圧)も含むことが好ましい。
【0097】
したがって、ガス取扱システムによって、容易に調節できる方式でガス混合物を給送することが可能能でなければならない。たとえば、システムは各ガス用の別々のガス容器と共に、必要に応じて導管、流量計、調節器、圧力計などを含むことができる。圧誘導性破壊を最小限に抑えるために、低圧(N2)ガスおよび高圧ガスを導入するための別々の経路を含んでもよい。上述の通り、ガスの純度を高めるためには、必要に応じて化学的ゲッターまたは低温ゲッターをガスフローライン内に設置すべきであることが確認されている。様々な純度のガスを利用できるため、さらなる精製の量は、偏光チャンバの劣化と詰め替えた回数(不連続の充填を使用する場合)か全操作時間(連続フローシステムを使用する場合)のいずれかの測定値に基づいて確定される。しかし、高純度ガスであっても、O2やH2Oなど、比較的短期間の流れのうちに、または2〜3回の詰め換え後にセルを著しく劣化させるのに十分な不純物を含むことが確認されている。
【0098】
極めて好ましい実施態様では、予め混合されている標的ガス用のシステムが使用される。この場合、ガス混合物は偏光チャンバに直接供給され、相対的流速を調節する必要はない。このため、システムの操作は簡便になり、偏光工程はさらに再現性が高まり一貫する。適当なガス混合物については本願明細書のほかの場所で検討されており、特別に要請すれば、商業的起源から入手することが可能である。
【0099】
過偏光が進行するにつれて、ガス含有率の状態を測定することによって過偏光手順をモニタリングしなければならない。NMR偏光分析は、偏光チャンバ(セル)内のガス偏光をモニタリングする好ましい方法である。偏光分析サブシステムは、典型的なNMR原理に従って作動する。あるいは、別個の出口バルブを偏光チャンバに取付けて、偏光ガスの試験試料を蓄積させる。一般的により多量の試料を必要とするが、ポンプチャンバを使用するパルスNMRよりもはるかに優れたNMR信号を生じることが可能なAdiabatic Fast Passage(AFP)装置でバルブを測定することができる。この装置を較正して129Xe偏光を実験的に測定することができ、これを使用して蓄積パラメータの調節をさらに精密にすることができる。
【0100】
少数の特別な回路板を備えたデスクトップコンピューターから過偏光システム全部を実行することができる。一つのこのような回路板は、Direct Digital Synthesis(DDS)によって必要な無線周波パルスを発生することができる。別の望ましい回路板は、信号をディジタル化するアナログからデジタルへのコンバーター(ADC回路板)である。
【0101】
過偏光装置のレーザーサブシステムは、光ポンピング工程に必要な光子(過偏光放射線)を供給する。光子は、連続波(cw)出力を生ずる1つ以上のレーザーダイオードアレイによって供給されることが好ましい。しかし、アルカリ金属D1線またはD2線で十分な出力を提供するレーザーシステムであればどれでも基準に合う。しかし、明細書に記載されているような高圧操作は、10Wを超える力、好ましくは50Wを超える力を送出することができるレーザーを必要とすることが確認されている。このような力を送出することができる従来のレーザーは、購入したり操作したりするには余りにも高価である。さらに、このようなレーザーは嵩高く、且つ高価で多かれ少なかれ永久的な装置を必要とする。移動可能な過偏光ユニットまたは一体型過偏光ユニットにとっては、このようなレーザーは余りにも扱いにくい。このような実施態様で、レーザーダイオードアレイは小型で効率がよく、且つ比較的安価に獲得したり操作したりできるため、極めて好ましいものとなった。
【0102】
単一波長(極端に狭いプロフィール)のコヒーレント光線を放出する従来のレーザーと違って、ダイオードアレイレーザーはその放出電磁波がスペクトル幅を有する、すなわち、一般に連続した波長帯域の光線を放出する、広帯域装置である。通常、このスペクトル幅は比較的狭く、主波長付近のブロードニングとして現れ、その幅は約1〜5nmにすぎない。3Heのスピン交換偏光には低出力GaAlAsダイオードアレイが使用されてきた。Chupp et al.,Phys.Rev.A 40(8):4447-4454(1989)には、約1Wのダイオードアレイの使用について記載されており、Cummings et al.,Phys.Rev.A 51(6)4842-4851(1995)には、20Wのダイオードアレイについて記載されている。本発明の方法および装置の場合、ダイオードアレイの出力は好ましくは著しく大きくて、約50W以上であり、さらに好ましくは約100W以上である。
【0103】
レーザー放出波長λの選択は、スピン交換に使用されるアルカリ金属の選択によって決定される。ルビジウムの場合、λは約795nmでなければならず、セシウムの場合、λは約894nmでなければならない。それ故、ルビジウムの場合、レーザーはGaAlAsでり、セシウムの場合、レーザーはアルミニウムを含まないレーザー、たとえば、InGaAsPであろう。現在好ましいレーザーダイオードアレイ(Opto Power of Tucson,Arizonaから入手可能)は、約125Wの連続波(cw)力を発生し、794.44nmのピーク波長にすることができ、約2nmの半値全スペクトル幅(FWHM)を示す。
【0104】
レーザーの帯域幅が狭ければ、将来は従来のアレイと競合するようになり(効率、価格など)、現在利用できるレーザーほど線ブロードニング緩衝ガスを必要としないであろう。これよって、標的ガス混合物中の比率が高いキセノンを使用できるようになり、次にはアキュムレーター装置の収率が向上する。過偏光に関するエンジニアリングの問題も、低圧操作によって簡潔になる。
【0105】
以前に、高圧(〜10atm)におけるスピン交換によって、過偏光3Heが高偏光で製造されることが確認されている。しかし、我々は、高圧の129Xeを使用したとき、これは不可能であることを確認した。特に、キセノンがルビジウムの偏光を解消する効率は驚くほど高い。我々は、分子の貢献を無視して、0.1atmのキセノンが270atmのヘリウムとほぼ同じスピン破壊作用を有すると推定した。結果として、現在では、最も強い(すなわち、数千ワット)ポンプレーザー以外は全て、約1atmを超えたキセノンによって非常に低いルビジウム偏光が生じると考えられている。
【0106】
たとえば、ダイオードレーザーの場合、約20W/cm2(すなわち100W/5cm2)のレーザー強度は、10atmのキセノンが入っているチャンバの正面で約25%のRb電子偏光をもたらすに過ぎない。この偏光レベルはチャンバの後方に向かってひたすら低減するため、少量の偏光が耐えられるにすぎず、相応して偏光した129Xeの収率は低い。
【0107】
低圧のキセノンを使用するとRb偏光は高くなるが、かなり不利である。ガス圧が低いとRb D1共鳴線は狭く、それ故、ダイオードアレイの広いスペクトル出力(2nm FWHM)のほんの一部しか使用できない。さらに、狭いD1共鳴に起因するスペクトルホール燃焼も、やはり非常に少量のRbが偏光するにすぎず、少量の偏光129Xeを生じることを意味する。たとえば、0.5atmのキセノンが入っており、且つ壁緩和時間が1000秒の20cm3のセルは、最大限で56%の129Xeを与えるが、セルに入射する100Wのうち2.3Wのみを使用するにすぎない。結果として生じる10cm3の偏光ガス(1atm)は、関心事のほとんどの用途で十分ではない。
【0108】
一般的な過偏光手順では、レーザー励起ルビジウム原子の蛍光を消し、その結果、光ポンピング工程を促進する数十Torrの消光用ガス(多くの場合窒素)と一緒に未偏光Xeを密封されたポンピングセルに入れる。しかし、我々は、緩衝ガスを試料に加えてアルカリ金属共鳴線を広げることができ、現在の高出力レーザーダイオードアレイの広いスペクトル出力をもっと効率よく吸収できることを予期せず発見した。ダイオードアレイのスペクトル帯域幅は広く(2nm以上)、低圧ではアルカリ金属原子の吸収帯域幅が非常に狭い(0.01nm)ため、この高圧緩衝ガスがなければ、ダイオードレーザーからの光は非常に僅か(約1%)しか吸収されない。しかし、所期の作用を達成するためには、緩衝ガスは、光ポンピング中に、アルカリ金属蒸気または129Xeのいずれにも顕著なスピン破壊を惹起してはならない。好ましい緩衝ガスはヘリウム(主として4He)であるが、類似した特性を有する他のガス、たとえば、水素を使用してもよい。緩衝ガス圧を高くするとルビジウムの吸収帯域が広がり、所期のブロードニングを達成するには約10atm以上のガス圧が好ましい。しかし、キセノン固有のアルカリ金属偏光破壊力があるため、約10atm以上の純キセノンを含有する試料は適当ではないと考えられる。対照してみると、ヘリウムはアルカリ金属スピンに対して事実上非破壊的であり、不利になることなく、線ブロードニング剤として使用することができる。
【0109】
したがって、本発明の方法による過偏光に好ましいガス混合物は、少量ではあるが有意量の129Xeと、かなりの比率の緩衝ガス、たとえば、ヘリウムとを含有する。たとえば、混合物は、少なくとも天然同位元素存在度の129Xeを含有するキセノンを約0.1%〜約5%、N2を約0.1〜約3%を含み、バランスはヘリウムである。最も好ましくは、混合物は129Xe約1%、N2約1%、およびヘリウム約98%を含む。あるいは、消光用ガスが水素の場合、ガス混合物の約1〜30%は水素であり、ヘリウムの正味の比率は相応して低減する。
【0110】
好ましい方法で使用される低いキセノン分圧によって、幾つかの問題が起こる。第1に、有用な濃度の129Xeを達成するために、偏光した129Xeを4Heから分離しなければならない。第2に、偏光した129Xeを偏光装置から抽出できるように、偏光した129Xeを加圧しなければならない。第3に、非常に短期間に高い129Xe偏光が達成されるが、ポンプチャンバからの偏光ガスの収量は非常に少ない。偏光した129Xeを凍結して固体(T≦160K)にすると、上記の3つの問題は全て解決することが判明した。
【0111】
かなりの量のレーザー偏光129Xeを製造するために、我々は固体129Xeの極端に長いスピン光子緩和時間T1を利用した。一度偏光すると、偏光をほとんど喪失せずに、129Xeを凍結させて固体にすることができることが証明されている。Gatzke et al.,Phys.Rev.Lett.70(5):690-693(1993)に記載されている通り、固相129Xeの緩和時間は、今まで気相で達成された緩和時間よりもはるかに長い。
【0112】
今では、本発明のアキュムレーター装置を使用して、キセノン氷の特性を利用することが可能である。詳細には、液体窒素温度の氷では、129Xeの緩和時間は3時間であり、偏光129Xeのポンピングおよび連続蓄積は、この温度で一度に3時間まで可能になる。さらに低い温度を使用すると、可能な蓄積期間をさらに延長することができる。
【0113】
本発明に従って保存可能な量の129Xeを蓄積するための低温アキュムレーターの概略を図1に図示し、その特徴を以下に簡単に説明する。偏光チャンバ内のガス流速および温度を調節することによって、偏光の程度および製造される129Xeの量を調節することができる。所定の利用可能なレーザー出力および帯域幅で、ポンピングチャンバの温度を、アルカリ金属蒸気の体積平均偏光を犠牲にしない、できる限り高い温度に設定する。この最適化によって、偏光が129Xeに移動するスピン交換速度γSEが決定される。その後、偏光チャンバ内で、129Xe原子が平均して約1〜3スピン交換時間定数(1/γSE)を費やすように流速を調節することが好ましい。チャンバがそれより熱いと、スピン交換が速くなり、それ故、129Xeの流速を速くすることが可能である。流速に対する129XeNMR信号を比較することによって、流れの状況を確認することができる。流れが速すぎる場合、試料は完全に偏光する機会を持たないため、129Xe信号は下がる。
【0114】
この発見の重大な特徴は、今では本方法に従えば、標的ガスとして実質的に純粋なキセノンを使用して可能であった量よりも、かなり大量の過偏光キセノンを製造できることである。すなわち、キセノンは標的ガスのほんの一部として存在しているにも拘わらず、過偏光キセノンの時間の関数としての収量はかなり増加している。
【0115】
流れている標的ガスが一度過偏光されると、ガス流れ全部(129Xe、4He、およびN2)が本発明によるアキュムレーターを貫流することができる。アキュムレーターは、好ましくは約4.2K〜約157Kの温度範囲で作動する、低温保存装置を含む。約77Kの温度は便利なため、すなわち、容易に入手できる冷凍剤である液体窒素(沸点=77K)の温度であるため、好ましい。しかし、蓄積温度および保存温度が低下するにつれて、より長い偏光寿命を得ることができるため、一般にそれより低温が好ましい。したがって、過偏光129Xeの保存には液体リチウム(沸点=4.2K)が卓越した冷凍剤であると考えられるが、その理由は、このような並外れて低い温度では理論的に129Xeのスピン格子緩和時間を約2900時間まで延長することができるためである。クローズドサイクル冷蔵ユニットも使用することが可能である。
【0116】
いずれの場合にも、低温保存装置を通過する偏光129Xeは、その融点が157Kであるため、直ちに凍結される。液体窒素冷却を使用する場合、消光用窒素ガスはどれも、その分圧が液体窒素の凝縮圧力である1気圧よりはるかに低いため、過偏光された129Xeのみがガス流れから凝縮される。より低い蓄積温度での窒素の凝縮はたぶん害にならないが、必要に応じて、窒素消光用ガス(N2)を水素(H2)と取り替えることによって完全に回避することができる。ガスの大部分、すなわち、ヘリウムは、低温保存装置を通過して出口ポートから出て行くだけである。それ故、この方法の有用な特徴は、この方法を使用して過偏光キセノンを標的ガス混合物の他の望ましくない成分から効果的に分離(精製)できることである。したがって、緩衝ガスの好ましい特性は、この様式で緩衝ガスがキセノンから実質的に分離されなければならないことである。
【0117】
印加された磁界内に維持されるとき、凍結129Xeの緩和時間T1は有意に長いため、保持時間を改善するために、このような磁界強さが可能な小さい永久磁石を低温保存用アキュムレーターに取付けることが好ましい。印加する磁界の強さを選択する際に最初に考えるべき事柄は、その磁界が、蓄積および/または保存温度におけるほぼ最大可能スピン格子緩和時間の間、蓄積および/または保存を可能にしなければならないことである。したがって、印加される磁界は液体窒素温度で少なくとも約500G(0.05T)でなければならない。しかし、磁界の強さの選択は、129Xeが蓄積または保存される温度によって異なることを、我々は確認した。特に、より低温の蓄積および/または保存は、より高い磁界強さを使用することから利益を得る。
【0118】
使用前に空にして、酸素など、あらゆる常磁性汚染物質を排除できるように、アキュムレーターマニホールドにポンピングポートを取付けることが好ましい。さらに、129Xeに対して少なくとも実質的に非偏光解消性であるように、マニホールドの内面を適切にコーティングするか処理する(たとえば、本願明細書の他の場所の、偏光チャンバに関する記載のように)。
【0119】
アキュムレーターの入口ポートは、レーザー光ポンピングおよびスピン交換が起こる偏光チャンバと流体連絡して配置されるように改造することが好ましい。このように、高度に偏光した129Xeをポンピングチャンバからアキュムレーターの入口ポートまで流すことができる。バルブを使用すると、流れを望み通りに調節することができる。偏光チャンバおよびアキュムレーター貯蔵器は、単一ユニットとして製造することができる。あるいは、アキュムレーター貯蔵器の取外しおよび交換を可能にするために、アキュムレーターと偏光チャンバとの間に幾つかの接続を含んでもよい。
【0120】
偏光工程が進行するにつれて、かなりの質量の偏光129Xeが保存貯蔵器内に形成される。いったん所望の量のキセノン氷が形成されると、貯蔵器を空にし、場合に応じて、様々な目的のためにアキュムレーターから取外すことができる。たとえば、移動可能な貯蔵器を長期保存装置に移し、その結果、アキュムレーターを解放し、過偏光129Xeの延長蓄積用の新たな貯蔵器を受け入れることができる。アキュムレーターまたは長期保存装置から取外す際に、一杯になった貯蔵器をその場で使用したり、代わりの使用場所に移したりすることができる。
【0121】
所望する時はいつでも、保存過偏光キセノンが入っている貯蔵器を室温まで(受動的または能動的に)加熱し、偏光した固体を解凍(昇華)して高圧ガスを形成させることができる。それ故、アキュムレーター装置そのものが加熱手段を含んでもよい。あるいは、遠隔保存装置または送出装置がこのような加熱手段を含んでもよい。能動的に加熱する場合、早期緩和を引起こす可能性がある過偏光試料に磁界勾配を賦課しないように気を付けなければならない。保存チャンバの出口ポートの弁を開放することによって、偏光した高圧ガスを回収することができる。出口マニホールドの圧力放出弁(たとえば、50psi)は、爆発的放出の防止に役立ち、その結果、人または特性に対して起こし得る障害を防止することができる。
【0122】
本願明細書に記載の装置は、米国特許出願番号第08/225,243号に記載されている過偏光希ガスを使用してイメージングするのに有用なシステムと一致するMRIイメージングシステムと統合することができ、その開示内容を本願明細書に援用する。このようなシステムの代表は、Middleton et al.,Magn.Reson.in Med.33:271-275(1995)に非常に詳しく記載されている2-Tesla 30cm水平Omega CSI磁石(G.E.NMR Instruments,Fremont,CA)および付随装置を含む市販のMRイメージングユニットである。今では、多量の過偏光希ガスを製造する能力を有効に利用して、それ自身のイメージング中に追加の過偏光を全く必要としなことが約束されるほど十分なガスをイメージング前に蓄積し、保存することが可能である。それ故、予め蓄積したキセノンの起源をただ一つ使用する医療環境で、一人以上の被験者をイメージングすることができる。あるいは、呼吸または他の生理学的プロセスに関する試験の被験者に供給される断続的な過偏光ガス起源を、希ガスのすばらしい特性によって可能になった連続過偏光手順で発生させるイメージングを引き受けることができる。以前は、使用できる過偏光ガスの量が少なかったため、この種のイメージングは不可能であるかあるいは極めて非実用的であった。
【0123】
以下の実施例は、本発明のさらなる理解を助けるために提供するものである。
使用した個々の材料および条件は、本発明をさらに例証するためであり、発明の妥当な範囲を制限するものではない。
【0124】
実施例1
連続流れ偏光装置は一般に上記図1に図示した構造に準拠して構築されてきた。ポンピングチャンバは長さ6cm、容積約30cm3のガラス製円筒である。光軸は、チャンバの縦軸と同一線上にある。
ポンピングチャンバを通る最適流れは温度によって異なることを我々は発見した。この30cm3のチャンバ内で129Xe(96%の4He中に3%、10atm)を過偏光させる場合、流速は150℃で約300cm3〜約600cm3/分の範囲内であろう。150℃でレーザー光線の約20%〜約30%が吸収され、これはスピン交換時間(τSE)22秒に相応し、平均ルビジウム偏光は約50%であることがモデリングでわかる。
【0125】
実施例2
偏光した固体129Xeの緩和時間によって、蓄積の時間尺度が決定される。蓄積時間が固体129Xeの緩和時間より著しく長いと、129Xe偏光は低減する。77Kで且つ磁界が500G以上のとき、T1=3時間である。上記の通り、ポンプチャンバ温度が150℃の場合、スピン交換時間はτSE=22秒である。[He]=10amagat中[Xe]=2amagatの飽和偏光は88%である。所定の129Xeがポンプチャンバ内で時間2τSEを費やす流速を設定すると、結果として生じる129Xe偏光はその86%であり、すなわち、P=76%である。相応するキセノン流速はF=(0.2amagat×20cm3/44秒)=0.09amagat cm3s-1である。3時間の蓄積で、標準温度および標準圧力(STP)で約1Lの偏光ガスが生じる。固体の緩和時間を考慮すると、このようにして得られた1Lは、凍結時に初期偏光の63%を保持し、P=48%である。
【0126】
実施例3
実施例1に記載の装置を使用して、天然同位元素存在度が129Xe約26%であるXe3%、N21%、4He96%のガス混合物を偏光させた。さらに、本発明によるアキュムレーターを使用して、ポンプチャンバを出るガスを蓄積した。このアキュムレーターは液体窒素をアキュムレーター貯蔵器の冷凍剤として使用した。貯蔵器は、過偏光129Xe含有ガスがその中を貫流するガラス製の冷たい指状のものであった。約1800Gの磁界を生じる小さい永久磁石を設置して、貯蔵器に適当な磁場を提供した。ガラス製導管を使用して、ポンピングチャンバからアキュムレーター貯蔵器にガスを運んだ。
このシステムを使用すると、0.5時間で120cm3(STPで)の過偏光129Xeが蓄積した。蓄積中の標的ガスの名目上の流速はSTPで80〜100cm3/分であった。ガス混合物は、Xeが僅か3%であっため、STPで約3cm3/分までのキセノン蓄積速度が可能であった。129Xeは、昇華すると同時に、パルスNMRコイルを備えたポンピングチャンバ内で膨張した。NMR信号の強さは、密封されたポンプチャンバ内のHe:Xe:N2ガス混合物でも見られる最大飽和の約1/4であると決定された。コンピュータのモデリングから、光ポンピング手順中の129Xeの飽和偏光は約75%であると考えられる。静電容量型圧力計で、昇華したキセノンの圧力は1.21atmであると決定されたのに対して、ポンピング中のガス混合物のキセノンは0.27atmであった。圧力とNMR信号の比率を与えると、蓄積された129Xeのおおよその偏光は5%であった。
【0127】
この実験で得られた正味の偏光は、最大偏光理論値のオーダーであった。それ故、この手順は最適化されていなかったが、本発明の方法および装置を使用すれば、過偏光129Xeの連続製造が可能であることが証明されたことを認めなければならない。さらに、この製造工程および蓄積工程で、かなりの量のキセノン偏光が保存される。この研究に基づいて、我々は昇華したガスの収量向上を期待した。
【0128】
明らかに、本発明の装置を使用して得られる過偏光129Xeの量であれば、少なくとも1日当たり何リットルかのオーダーで過偏光希ガスを発生することが可能である。したがって、本発明を使用すれば、MRIでヒト肺の臨床換気試験をすることができる十分な偏光希ガスを製造することが可能になる。
【0129】
実施例4
構築された装置の出口マニホールド部品の体積をおおまかに較正し(〜±5%)、流量計上の流速も同様に較正してきたが、これは正確と考えられる。アキュムレーター貯蔵器内に蓄積されたキセノンの量は、誤差の範囲内から蓄積中の流量計の流速示度に蓄積時間を掛けた積に相当する。これは、ガス混合物中のキセノンの実質的に全部がアキュムレーター内に効果的に捕捉されることを示す。
【0130】
このように、現在、本発明の好ましい実施態様であると考えられるものを記載してきたが、当業者は、本発明の精神から逸脱せずに、他の実施態様およびさらなる実施態様を行えることを理解するであろう。また、本願明細書に記載の特許請求の範囲の本当の範囲内にある、このようなさらなる修正および変更をすべて含むものとする。
【図面の簡単な説明】
【0131】
【図1】過偏光129Xeを提供するための過偏光器と連結した、本発明による低温捕捉用アキュムレーターの概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
129Xeを少なくとも一つの他の選択されたガスと組み合わせて偏光セル中で過偏光するステップと、
上記過偏光された129Xeと上記少なくとも一つの他の選択されたガスを上記偏光セルからガス導入ポートを通って蓄積貯蔵器に流動させるステップであって、該蓄積貯蔵器での貫流を許容する流動ステップと、
上記蓄積貯蔵器を129Xeが凍結する温度まで冷却するステップと、
上記蓄積貯蔵器に上記過偏光された129Xeを凍結状で蓄積するステップであって、上記凍結された129Xeを上記蓄積貯蔵器に保持しながら、上記少なくとも一つの他のガスを上記蓄積貯蔵器から流動的に導出させる蓄積ステップと、
上記蓄積貯蔵器に磁界を印加するステップと、
を含んでなる過偏光された129Xeを蓄積する方法。
【請求項2】
上記蓄積ステップが、上記偏光セルから上記ガス中に存在する他のガスの蓄積を実質的に排除しながら、上記過偏光された129Xeを凍結状で蓄積することを含んでなる請求項1に記載の蓄積方法。
【請求項3】
上記冷却ステップの温度における上記過偏光された129Xeのほぼ最大可能スピン格子緩和時間までの時間、該過偏光された129Xeを蓄積するステップをさらに含む請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
上記蓄積された過偏光129Xeを任意選択的に上記蓄積がされた場所から離れた位置で、かつ上記キセノンの凍結温度の範囲又は凍結温度未満で貯蔵するステップを更に含み、上記貯蔵ステップが、上記蓄積された過偏光129Xeを貯蔵温度において上記過偏光129Xeのスピン格子緩和時間の長さを促進させるのに充分な印加磁場内に貯蔵することを含む請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
上記少なくとも一つの他の選択ガスが、少なくとも一つの消光用ガスと緩衝ガスを含み、上記蓄積ステップが、上記消光用ガスと緩衝ガスの実質的な凝縮を上記蓄積貯蔵器中で起こさないように実施される請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
上記流動ステップの前に、マニホールドと上記蓄積貯蔵器から酸素を除去するステップをさらに含む請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
上記蓄積貯蔵器を密封するステップと、その後の上記過偏光ガスを加熱するステップと、上記加熱ステップの間、過偏光ガスの過剰加圧を抑制するために過剰の圧力を抜くステップとをさらに含んでなる請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
上記蓄積貯蔵器と上記偏光セルに連結するマニホールドの弁を閉めるステップと、使用中の上記蓄積貯蔵器を交換するために、凍結129Xeを有する蓄積貯蔵器を上記マニホールドから取り外すステップと、空の蓄積貯蔵器を取り付けるステップとをさらに含んでなる請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
実質的にキセノンからなり過偏光129Xeを含むガスを得るために上記蓄積された凍結過偏光129Xeを解凍するステップと、
上記過偏光129Xeを供給するために、上記蓄積貯蔵器から実質的にキセノンからなり過偏光129Xeを含む上記ガスを放出するステップと
をさらに含む請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
(a)偏光されたガスを含む起源ガス混合物を貫流でき、起源ガス混合物流中の過偏光129Xeを蓄積するための蓄積貯蔵器と、
(b)過偏光129Xeを凍結状で蓄積させるのに充分な低温に上記蓄積貯蔵器を冷蔵するために、該貯蔵器に連結した冷蔵手段と、
(c)上記蓄積温度における上記過偏光129Xeのスピン格子緩和時間を最大化するのに充分な磁界を上記蓄積貯蔵器に印加する手段と、
を含んでなる過偏光129Xeを蓄積するための蓄積装置。
【請求項11】
上記蓄積貯蔵器の流動ガス導入ポートと連結する弁と、上記導入ポートの下流で上記蓄積貯蔵器の流動ガス放出ポートと連結する別個の放出弁とをさらに備えてなり、これらの弁が、それぞれの導入ガス路と放出ガス路を開閉でき、上記蓄積貯蔵器及び/又はガス抜きを通るガス流を調節する請求項10に記載の装置。
【請求項12】
上記蓄積貯蔵器に連結する偏光セルをさらに備え、該蓄積貯蔵器が該偏光セルの下流に設けられる請求項10又は請求項11に記載の装置。
【請求項13】
上記蓄積貯蔵器が、上記偏光セルと上記蓄積貯蔵器に連結する流路を有するマニホールドに解除できるように密封可能である請求項12に記載の装置。
【請求項14】
過偏光129Xeを含むキセノンガスを加圧するために、蓄積された過偏光129Xeを昇華させる手段をさらに含む請求項10〜13のいずれかに記載の装置。
【請求項15】
上記冷蔵手段が、上記蓄積貯蔵器を4.2K〜157Kの温度に冷蔵するために形成され、該蓄積貯蔵器が、別個の入口と出口、及び該貯蔵器を貫流するガス流を制御するために密封可能な弁を備える請求項10に記載の装置。
【請求項16】
上記蓄積貯蔵器が、連続するガス流を貫流するために、入口と出口を有する取り替え可能なものとして形成され、該取り替え可能な蓄積貯蔵器が、過偏光129Xe流を生成し該蓄積貯蔵器に送るための過偏光装置と取り外し可能に連動するための手段を備える請求項10に記載の装置。
【請求項17】
(a)上記偏光セルと上記蓄積貯蔵器に連結するマニホールドであって、該マニホールドによって画定される流路を選択的に開閉可能とする弁を有するマニホールドと、
(b)上記マニホールドから酸素を除去するために真空源と連結されたポンピングポートと
をさらに備える請求項12に記載の装置。
【請求項18】
上記マニホールドが、上記蓄積貯蔵器の下流でトランスファーバッグまで延び、解放弁が該蓄積貯蔵器と該トランスファーバッグの間に存在する請求項17に記載の装置。
【請求項19】
上記蓄積貯蔵器を密閉するための弁と、
上記弁が閉められている間、上記凍結129Xeを加熱するために上記蓄積貯蔵器と連結する熱源と、
加熱時に過偏光129Xeの過剰の加圧を抑制するために上記蓄積貯蔵器と連結する圧力ベントと
をさらに備える請求項17又は請求項18に記載の装置。

【図1】
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【公開番号】特開2008−36443(P2008−36443A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−216138(P2007−216138)
【出願日】平成19年8月22日(2007.8.22)
【分割の表示】特願平9−535422の分割
【原出願日】平成9年3月27日(1997.3.27)
【出願人】(507247139)ザ・トラスティーズ・オヴ・プリンストン・ユニヴァーシティ (2)
【Fターム(参考)】