説明

スピーカシステムおよびスピーカ駆動方法

【課題】ディスプレイパネルと一体化したスピーカシステムで、ディスプレイパネル部の厚みを十分に小さくすることができるようにする。
【解決手段】ディスプレイパネル40をベゼル10の内側に挿入し、ベゼル10をディスプレイパネル40に支持する。ベゼル10の左辺板部13の背面側には積層圧電アクチュエータ70Lを取り付け、右辺板部14の背面側には積層圧電アクチュエータ70Rを取り付ける。積層圧電アクチュエータ70Lおよび70Rの変位方向(振動方向)は、ベゼル10の板面方向となるようにする。積層圧電アクチュエータ70Lおよび70Rの振動は、ベゼル10の板面に沿う縦振動としてベゼル10に伝達され、ベゼル10の板面に垂直な正面方向に音波が放射される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、薄型テレビジョン受信機の映像表示音声出力装置のような、ディスプレイパネルと一体化したスピーカシステム、および、このスピーカシステムを駆動する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
テレビジョン受信機は、ますます薄型化の傾向にある。2007年10月には、出願人によって、有機ELディスプレイを用い、ディスプレイパネル部を3mmの厚さに薄型化したものも、発売されている。
【0003】
一方、スピーカ装置として、ボイスコイルおよびコーンを有する通常のスピーカユニットではなく、超磁歪アクチュエータなどのアクチュエータによって音響振動板に振動を加えて音響を発生させるものが考えられている。
【0004】
具体的に、特許文献1(特開平4−313999号公報)および特許文献2(特開2005−177688号公報)には、図18(A)(B)に示すようなスピーカ装置が示されている。
【0005】
図18のスピーカ装置では、平板状の音響振動板1の中心部に超磁歪アクチュエータ2の駆動ロッド2aを、その変位方向が音響振動板1の板面に垂直となるように当接させて、音響振動板1を板面に垂直な方向に振動させる。
【0006】
しかし、図18のスピーカ装置では、音響振動板1の中心部では矢印3aで示すように振動の振幅が最大となり、加振点から離れた点では矢印3bで示すように振動の振幅が小さくなって、音響振動板1の各部で均一な振動が得られない。
【0007】
これに対して、特許文献3(特開2007−166027号公報)には、図19(A)(B)に示すようなスピーカ装置が示されている。
【0008】
図19のスピーカ装置では、円筒状の音響振動板4を鉛直に支持し、音響振動板4の下端側に超磁歪アクチュエータなどのアクチュエータ5を複数配置して、それぞれの駆動ロッド5aを音響振動板4の下端面に当接させ、音響振動板4を下端面に垂直な方向に振動させる。
【0009】
図19のスピーカ装置では、音響振動板4の下端面は縦波で励起されるが、振動弾性波が音響振動板4の板面方向に伝播することによって縦波と横波が混在した波となって、音響振動板4の板面に垂直な方向に横波によって音波が放射される。
【0010】
そのため、図19のスピーカ装置では、矢印6aで示すように音響振動板4の軸方向のどの位置でも均一なレベルで音波が放射され、音響振動板4全体に渡って均一に音像が定位する。
【0011】
上に挙げた先行技術文献は、以下の通りである。
【特許文献1】特開平4−313999号公報
【特許文献2】特開2005−177688号公報
【特許文献3】特開2007−166027号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
いまだ出願公開されていないため、先行技術文献として示していないが、特願2007−304010によって、図20(A)(B)に示すようなスピーカ装置も提案されている。
【0013】
図20のスピーカ装置では、平板状の音響振動板7に角穴7aを形成し、駆動ロッド8aを有するアクチュエータ8を角穴7aに装着して、音響振動板7に板面方向の振動を加える。
【0014】
図20のスピーカ装置でも、図19のスピーカ装置と同様に、矢印9aで示すように音響振動板7のどの部分でも均一なレベルで音波が放射される。
【0015】
さらに、図20のスピーカ装置では、スピーカの厚さを音響振動板7の厚さと同程度に小さくすることができる。
【0016】
上述したようにディスプレイパネル部を数mm程度ないしそれ以下に薄型化した場合、そのディスプレイパネル部に通常のスピーカユニットを組み込んで、ディスプレイパネル部の厚みを数mm程度ないしそれ以下に維持することは困難である。
【0017】
図18に示すような、音響振動板1を板面に垂直な方向に振動させるスピーカ装置を、ディスプレイパネル部に組み込む場合も、超磁歪アクチュエータ2の長さ方向がパネル面に垂直な方向となるため、ディスプレイパネル部の厚みを数mm程度ないしそれ以下に維持することは困難である。
【0018】
そこで、この発明は、ディスプレイパネルと一体化したスピーカシステムで、ディスプレイパネル部の厚みを十分に小さくすることができるようにしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
この発明のスピーカシステムは、
表示画面を有するディスプレイパネルと、
上記表示画面の周辺外側に位置する、音響振動板として機能する板部を有し、上記ディスプレイパネルに支持された構造体と、
当該のアクチュエータの変位方向が上記板部の板面方向となるように上記構造体に取り付けられたアクチュエータと、
を備えるものである。
【0020】
上記の、この発明のスピーカシステムは、例えば、枠板状の構造体の、表示画面の左側および右側の辺部に、それぞれアクチュエータを、それぞれの長さ方向が構造体の板面方向となるように取り付けたものである。
【0021】
そのため、加振部としてのアクチュエータの長さが大きくても、ディスプレイパネル部の厚さは十分に小さくすることができる。
【発明の効果】
【0022】
以上のように、この発明によれば、ディスプレイパネルと一体化したスピーカシステムのディスプレイパネル部の厚さを十分に小さくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
[1.第1の実施形態:図1〜図9]
この発明のスピーカシステムの第1の実施形態として、構造体としてのベゼルの、表示画面の左側および右側の板部に、それぞれ積層圧電アクチュエータを取り付ける場合を示す。
【0024】
(1−1.第1の実施形態の一例:図1〜図6)
<1−1−1.全体の構成:図1〜図3>
図1、図2および図3は、第1の実施形態のスピーカシステムの一例を示す。
【0025】
図1は、ベゼルを背面側から見た図であり、図2は、そのベゼルをディスプレイパネルに支持した状態を背面側から見た図であり、図3は、図1および図2におけるアクチュエータ取り付け部の断面を示す図である。
【0026】
以下で、上辺とは表示画面の上側であり、下辺とは表示画面の下側であり、左辺とは正面側から見て表示画面の左側であり、右辺とは正面側から見て表示画面の右側である。
【0027】
図1および図2に示すように、ベゼル10は、上辺板部11、下辺板部12、左辺板部13および右辺板部14を有する枠板状(額縁状)のものである。
【0028】
ベゼル10は、音響振動板として機能させるので、音響特性の良い材質のものが望ましい。例えば、金属であれば、マグネシウムが好適である。
【0029】
上辺板部11の背面側には、帯状のゴム片15が取り付けられ、下辺板部12、左辺板部13および右辺板部14の背面側には、リング状のゴム片16が取り付けられる。
【0030】
左辺板部13および右辺板部14の背面側には、ベゼル10をディスプレイパネル40に取り付けるためのビス穴部17が形成される。
【0031】
ベゼル10の各コーナー部の背面側、および上辺板部11および下辺板部12の背面側には、図3に示すリアカバー60を取り付けるためのビス穴部18および19が形成される。
【0032】
さらに、ベゼル10の左辺板部13および右辺板部14の背面側には、積層圧電アクチュエータ70Lおよび70Rを取り付ける。
【0033】
この例では、左辺板部13に背面側に突出した受け部21および22を設け、積層圧電アクチュエータ70Lを、その変位方向(振動方向)が画面上下方向となるように受け部21と受け部22との間に取り付ける。
【0034】
同様に、右辺板部14に背面側に突出した受け部21および22を設け、積層圧電アクチュエータ70Rを、その変位方向(振動方向)が画面上下方向となるように受け部21と受け部22との間に取り付ける。
【0035】
受け部21および22は、ベゼル10と一体に形成し、またはベゼル10とは別に形成してビスや接着剤などによってベゼル10に取り付ける。積層圧電アクチュエータ70Lおよび70Rは、例えば、それぞれ、受け部21および22との間に接着剤を介してベゼル10に取り付ける。
【0036】
積層圧電アクチュエータ70Lおよび70Rの振動は、それぞれ、受け部21および22を介してベゼル10に、その板面に沿う縦振動として伝達される。これによって、ベゼル10の板面に垂直な正面方向に音波が放射される。
【0037】
そのため、受け部21および22は、振動を効率良く伝播させるために硬い材質とすることが望ましい。
【0038】
さらに、上辺板部11、下辺板部12、左辺板部13および右辺板部14の背面側には、テープ状の緩衝部材31を、両面テープなどによって貼り付ける。緩衝部材31としては、ヒメロン(商品名)などの不織布を用いることができる。
【0039】
ディスプレイパネル40は、有機ELディスプレイパネルなどのフラットディスプレイパネルであり、表示画面に画像が表示される。
【0040】
ディスプレイパネル40の背面には、シャーシ50が取り付けられる。図では省略したが、シャーシ50には回路基板などが取り付けられる。
【0041】
図2に示すように、このシャーシ50が取り付けられたディスプレイパネル40を、ゴム片15および16で挟持されるようにベゼル10の背面側に挿入し、シャーシ50の外側からビス51を、図1に示したビス穴部17に締め込んで、ベゼル10をディスプレイパネル40に支持する。
【0042】
このとき、ゴム片15および16が僅かに凹んでディスプレイパネル40の周端面に弾性的に当接することによって、ベゼル10とディスプレイパネル40の表示画面の面方向における相対的な位置のばらつきが吸収されるとともに、衝撃によるディスプレイパネル40の破損が防止される。
【0043】
また、このとき、ベゼル10とディスプレイパネル40の周辺部との間に緩衝部材31が介在されて、後述のように音響特性が向上する。
【0044】
ベゼル10をディスプレイパネル40に支持したら、図3に示すようにベゼル10の背面側にリアカバー60を当てがい、リアカバー60の外側からビスを、図1に示したビス穴部18および19に締め込んで、リアカバー60をベゼル10に取り付ける。
【0045】
この場合、アクチュエータ取り付け部を構成する受け部21および22とリアカバー60とが近接する場合には、受け部21および22にも緩衝部材32を貼り付け、受け部21および22とリアカバー60との間に緩衝部材32が介在されるようにする。
【0046】
<1−1−2.積層圧電アクチュエータ:図4>
図4に、積層圧電アクチュエータ70Lまたは70Rとして使用する積層圧電アクチュエータの一例を示す。図4(A)は概略的な斜視図、図4(B)は概略的な断面図である。
【0047】
この例の積層圧電アクチュエータ子は、圧電セラミック薄板積層体71の対向する側面に外部電極72および73を形成したものである。
【0048】
圧電セラミック薄板積層体71は、圧電セラミック薄板を多数、間に内部電極74および75を交互に挟んで積層したものである。内部電極74は外部電極72に接続され、内部電極75は外部電極73に接続される。
【0049】
信号源76から得られる信号電圧Vsを外部電極72,73間に印加すると、分極によって個々の圧電セラミック薄板が厚さ方向に変位し、圧電セラミック薄板積層体71は、それぞれの変位の総和分、積層方向に変位して振動する。
【0050】
積層圧電アクチュエータ子は、外部電極72,73が対向する方向の幅Wを3.5mm程度、奥行きDを2mm程度とすることができる。
【0051】
そのため、積層圧電アクチュエータ子は、幅Wの方向を表示画面に平行とし、奥行きDの方向を表示画面に垂直とするように、ベゼル10に取り付ける。
【0052】
これによって、図1〜図3の例のスピーカシステムは、厚さを数mm程度ないしそれ以下とすることができる。
【0053】
このように、積層圧電アクチュエータは、磁歪アクチュエータとは異なり、磁界バイアスが必要ないため、アクチュエータを、よりシンプルに構成することができ、より小型化することができる。
【0054】
しかも、積層圧電アクチュエータは、磁歪アクチュエータと同様に、発生応力および応答速度が大きい。
【0055】
<1−1−3.作用:図5および図6>
図1〜図3の例のスピーカシステムでは、上述したように、積層圧電アクチュエータ70Lおよび70Rの振動がベゼル10に縦振動として伝達され、ベゼル10の板面に垂直な正面方向に音波が放射される。
【0056】
さらに、ベゼル10とディスプレイパネル40の周辺部との間に緩衝部材31が介在されることによって、以下のようにベゼル10の個体差による音響特性のばらつきが吸収され、音響特性が向上する。
【0057】
図5に、緩衝部材31が存在せず、ベゼル10がディスプレイパネル40の周辺部に直接接触する場合の、ベゼル10の個体差による音圧レベル周波数特性の違いを示す。
【0058】
サンプルA、サンプルB、サンプルCおよびサンプルDは、同じ材料(マグネシウム)から、同じ製造方法によって、同じサイズで製作された4つのベゼルで、反り具合などが微妙に相違するものである。
【0059】
この場合、そのベゼルの個体差によって、音圧レベルの周波数特性がばらつき、また、サンプルAでは、8kHz付近で音圧レベルが大きく低下することが認められた。
【0060】
これに対して、図6は、上記の例のようにベゼル10とディスプレイパネル40の周辺部との間に緩衝部材31を介在させた場合である。
【0061】
この場合には、ベゼル10の振動のディスプレイパネル40への伝達が阻止されることによって、ベゼル10の個体差による音圧レベル周波数特性の違いが著しく小さくなり、或るサンプルの音圧レベルが中高域における或る周波数付近で大きく低下することもない。
【0062】
なお、積層圧電アクチュエータは容量性であるため、図1〜図3の例のようにベゼル10に積層圧電アクチュエータ70Lおよび70Rを取り付けた場合、図5および図6に示すように、高域では周波数が高くなるに従って音圧レベルが大きくなる。これに対しては、後述のように対応することができる。
【0063】
<1−1−4.駆動方法>
図1〜図3の例のスピーカシステムは、積層圧電アクチュエータ70Lおよび70Rを同じ音声信号によって駆動することができる。
【0064】
また、積層圧電アクチュエータ70Lをステレオ音声信号の左チャンネルの信号によって駆動し、積層圧電アクチュエータ70Rをステレオ音声信号の右チャンネルの信号によって駆動するなど、積層圧電アクチュエータ70Lおよび70Rを別の音声信号によって駆動することもできる。
【0065】
さらに、後述のように積層圧電アクチュエータ70Lおよび70Rを音声信号中の中高域成分によって駆動することもできる。
【0066】
いずれの場合も、聴感上、表示画面の左辺外側および右辺外側に音像が定位するようになる。
【0067】
(1−2.予荷重を加える場合の一例:図7)
図1〜図3の例のスピーカシステムでは、例えば、ベゼル10をマグネシウムなどの金属によって形成した場合、温度の上昇によってベゼル10が伸長すると、積層圧電アクチュエータ70Lおよび70Rが引っ張られる。
【0068】
しかし、圧電素子は引っ張りに対して機械的に弱い。そのため、積層圧電アクチュエータ70Lおよび70Rには予荷重を加えることが望ましい。積層圧電アクチュエータ70Lおよび70Rに予荷重を加えることによって、音質も向上する。
【0069】
そのため、アクチュエータ取り付け部に偏心カムリングや円板カムなどを用いることによって、積層圧電アクチュエータ70Lおよび70Rに予荷重を加えることが望ましい。
【0070】
図7に、その一例を示す。図7(A)(B)(C)は、ベゼル10の左辺板部および右辺板部を背面側から見た図である。
【0071】
この例では、受け部24を積層圧電アクチュエータ子の一端部が上方から挿入される形状として、積層圧電アクチュエータ子の一端部を受け部24に挿入する。
【0072】
積層圧電アクチュエータ子の一端部を受け部24に挿入したら、図7(A)に示すように、積層圧電アクチュエータ子の他端側の位置においてベゼル10の軸部23aに偏心カムリング23を装着する。
【0073】
この状態から、図7(B)の状態を経て、図7(C)に示すように偏心カムリング23が積層圧電アクチュエータ子を変位方向(振動方向)に押圧するように、偏心カムリング23を回転させる。
【0074】
外部からの振動や衝撃によって偏心カムリング23が調整された回転位置に対して回転してしまうことがないように、調整後、偏心カムリング23を接着剤などによってベゼル10に固定してもよい。
【0075】
(1−3.アクチュエータ取り付け部の他の例:図8および図9)
ベゼル10のアクチュエータ取り付け部は、以下のように構成することもできる。
【0076】
図8に、その一例を示す。図8(A)は、ベゼル10の左辺板部および右辺板部を背面側から見た図であり、図8(B)は、その断面図である。
【0077】
この例では、ベゼル10の左辺板部および右辺板部の背面側に溝25を形成し、その溝25内に積層圧電アクチュエータ子を接着剤26によって取り付ける。
【0078】
積層圧電アクチュエータ子の振動を効率良くベゼル10に伝達するために、接着剤26は硬い材質のものが望ましい。
【0079】
図9に、別の例を示す。図9(A)は、積層圧電アクチュエータが取り付けられたアクチュエータ取り付け板を示し、図9(B)は、ベゼル部分を断面にした側面図である。
【0080】
この例では、ベゼル10とは別に、ネジを通す穴28が形成されたアクチュエータ取り付け板27を用意して、これに積層圧電アクチュエータ子を接着剤や両面テープなどによって取り付ける。
【0081】
このように積層圧電アクチュエータ子が取り付けられたアクチュエータ取り付け板27を、それぞれ、ベゼル10の左辺板部および右辺板部の背面側にネジ29によって取り付ける。
【0082】
この例では、積層圧電アクチュエータ子をアダプタ化するので、積層圧電アクチュエータ子をベゼル10に効率的に取り付けることができ、スピーカシステムの量産性が向上する。
【0083】
[2.第2の実施形態:図10および図11]
上述した第1の実施形態では、図10(A)に示すように、積層圧電アクチュエータ子の矢印79で示す変位方向(振動方向)のベゼル10の端面10aの延長方向(画面左右方向)に対する角度αが直角である。
【0084】
そのため、ベゼル10の加振点Paから端面10a上の点Prに伝播した縦波は、点Prで積層圧電アクチュエータ子の変位方向に反射し、点Prに伝播する縦波と点Prで反射した縦波との間で共振を生じる。端面10aと反対側の端面についても、同じである。
【0085】
そのため、第2の実施形態では、図10(B)に示すように、積層圧電アクチュエータ子の矢印79で示す変位方向(振動方向)のベゼル10の端面10aの延長方向(画面左右方向)に対する角度を、直角ではなく、0°と90°との間にする。
【0086】
これによれば、ベゼル10の加振点から端面10a上の点に伝播した縦波は、その端面10a上の点で主として、積層圧電アクチュエータ子の変位方向とは異なる方向に反射するので、反射波による共振が低減する。端面10aと反対側の端面についても、同じである。
【0087】
図11に、第2の実施形態のスピーカシステムの一例を示す。図11は、スピーカシステムを正面側から見た図であり、積層圧電アクチュエータを破線で示す。
【0088】
この例では、ベゼル10の左辺板部の背面側に積層圧電アクチュエータ70Lを、その変位方向を画面上下方向に対して幾分傾けて取り付け、ベゼル10の右辺板部の背面側に積層圧電アクチュエータ70Rを、積層圧電アクチュエータ70Lに対して左右対称に取り付ける。
【0089】
[3.第3の実施形態:図12および図13]
この発明のスピーカシステムの第3の実施形態として、ベゼルに積層圧電アクチュエータを4つ取り付ける場合を示す。
【0090】
(3−1.第3の実施形態の一例:図12)
図12は、第3の実施形態のスピーカシステムの一例を示し、図11と同様に、スピーカシステムを正面側から見た図である。
【0091】
この例では、ベゼル10の左辺板部の画面上下方向における中央部の背面側に、積層圧電アクチュエータ70Lを取り付け、ベゼル10の右辺板部の画面上下方向における中央部の背面側に、積層圧電アクチュエータ70Rを取り付ける。
【0092】
さらに、ベゼル10の上辺板部の画面左右方向における中央部の背面側に、積層圧電アクチュエータ子Cuを取り付け、ベゼル10の下辺板部の画面左右方向における中央部の背面側に、積層圧電アクチュエータ子Cdを取り付ける。
【0093】
この例では、個々の積層圧電アクチュエータに供給される音声信号のレベルや位相を制御することによって、表示画面41上に表示される物体などの動きに連動させて音像を移動定位させることができる。
【0094】
例えば、積層圧電アクチュエータ70Lに供給される信号のレベルと積層圧電アクチュエータ70Rに供給される信号のレベルとを等しくし、積層圧電アクチュエータ子Cuに供給される信号のレベルを積層圧電アクチュエータ子Cdに供給される信号のレベルより大きくする。これによって、表示画面41の左右方向における中央の上下方向における上部の位置に音像を定位させることができる。
【0095】
(3−2.第3の実施形態の他の例:図13)
図13は、第3の実施形態のスピーカシステムの他の例を示し、図12と同様に、スピーカシステムを正面側から見た図である。
【0096】
この例では、ベゼル10の左上コーナー部の背面側に積層圧電アクチュエータ70Luを、その変位方向を画面左右方向および画面上下方向に対して45°傾けて取り付け、ベゼル10の左下コーナー部の背面側に積層圧電アクチュエータ70Ldを、積層圧電アクチュエータ70Luに対して上下対称に取り付ける。
【0097】
ベゼル10の右上コーナー部および右下コーナー部の背面側には、積層圧電アクチュエータ70Ruおよび70Rdを、それぞれ積層圧電アクチュエータ70Luおよび70Ldに対して左右対称に取り付ける。
【0098】
この例でも、個々の積層圧電アクチュエータに供給される音声信号のレベルや位相を制御することによって、表示画面41上に表示される物体などの動きに連動させて音像を移動定位させることができる。
【0099】
例えば、積層圧電アクチュエータ70Luおよび70Ruに供給される信号のレベルを大きくし、積層圧電アクチュエータ70Ldおよび70Rdに供給される信号のレベルを小さくする。これによって、表示画面41の左右方向における中央の上下方向における上部の位置に音像を定位させることができる。
【0100】
さらに、この例では、それぞれの積層圧電アクチュエータの変位方向(振動方向)のベゼル10の端面の延長方向に対する角度が45°であるため、上述した第2の実施形態の一例として、反射波による共振が低減する。
【0101】
[4.第4の実施形態:図14〜図16]
この発明のスピーカシステムとしては、以下に第4の実施形態として示すように、上記のようにディスプレイパネル部にアクチュエータを取り付けるだけでなく、同時に通常のスピーカユニットを設けることができる。
【0102】
(4−1.第4の実施形態の一例:図14および図15)
図14に、第4の実施形態のスピーカシステムの一例を示す。この例では、ディスプレイパネル部90を支柱100によって台座ボックス110に取り付ける。
【0103】
ディスプレイパネル部90は、図1〜図3の例のスピーカシステムなどと同様に、ベゼル10の左辺板部および右辺板部の背面側に積層圧電アクチュエータ70Lおよび70Rを取り付けたものとする。
【0104】
台座ボックス110には、正面側から見て左右の位置に、それぞれボイスコイルおよびコーンを有する通常のスピーカユニット120Lおよび120Rを、それぞれスピーカ前面側を上方に向けて取り付ける。
【0105】
この例では、積層圧電アクチュエータ70L,70Rおよびベゼル10によって構成される加振型スピーカをツィータとして機能させ、通常のスピーカユニット120Lおよび120Rをウーファとして機能させる。
【0106】
この場合、ツィータ帯域は、加振型スピーカの構成に特有な周波数応答になるため、必要に応じて、DSP(Digital Signal Processor)によって周波数特性を補正する。
【0107】
具体的に、DSP130から、ステレオ音声信号の、それぞれ周波数補正などのためのデジタル処理後にアナログ信号に変換された、左チャンネルの信号SLおよび右チャンネルの信号SRを得る。
【0108】
左チャンネルの信号SLは、音声増幅回路141で増幅した後、アナログHPF(ハイパスフィルタ)151およびアナログLPF(ローパスフィルタ)152によって、左チャンネルの中高域成分および低域成分に分離する。
【0109】
アナログHPF151からの左チャンネルの中高域成分の信号は、積層圧電アクチュエータ70Lに供給し、アナログLPF152からの左チャンネルの低域成分の信号は、スピーカユニット120Lに供給する。
【0110】
一方、右チャンネルの信号SRは、音声増幅回路145で増幅した後、アナログHPF(ハイパスフィルタ)155およびアナログLPF(ローパスフィルタ)156によって、右チャンネルの中高域成分および低域成分に分離する。
【0111】
アナログHPF155からの右チャンネルの中高域成分の信号は、積層圧電アクチュエータ70Rに供給し、アナログLPF156からの右チャンネルの低域成分の信号は、スピーカユニット120Rに供給する。
【0112】
積層圧電アクチュエータ70Lおよび70Rは電圧駆動であり、スピーカユニット120Lおよび120Rは電流駆動である。そのため、積層圧電アクチュエータ70Lおよび70R側とスピーカユニット120Lおよび120R側との音圧マッチングが取れるようにスピーカユニット120Lおよび120RのDCR(直流抵抗)を選定するなど、スピーカシステム全体を設計する。
【0113】
アナログLPF152および156の周波数特性は、図15(A)に示すように、低域でフラットとする。
【0114】
アナログHPF151および155の周波数特性は、図5または図6に示したように高域では周波数が高くなるに従って音圧レベルが大きくなる場合には、図15(B)の破線で示すように中高域でフラットではなく、図15(B)の実線で示すように中高域で周波数が高くなるに従って通過レベルが小さくなる特性とする。
【0115】
なお、この高域を落とす処理は、アナログHPF151および155ではなく、前段のDSP130で行うこともできる。
【0116】
(4−2.第4の実施形態の他の例:図16)
図16に、第4の実施形態のスピーカシステムの他の例を示す。この例は、スピーカ駆動方法を除いては、図14の例と同じである。
【0117】
スピーカ駆動方法としては、この例では、DSP130において、左チャンネルの中高域成分の信号、左チャンネルの低域成分の信号、右チャンネルの中高域成分の信号、および右チャンネルの低域成分の信号を、別個に処理する。
【0118】
左チャンネルの中高域成分の信号は、DSP130でのデジタル処理後、DSP130でアナログ信号SLHに変換し、音声増幅回路161で増幅した後、積層圧電アクチュエータ70Lに供給する。
【0119】
左チャンネルの低域成分の信号は、DSP130でのデジタル処理後、DSP130でアナログ信号SLLに変換し、音声増幅回路162で増幅した後、スピーカユニット120Lに供給する。
【0120】
右チャンネルの中高域成分の信号は、DSP130でのデジタル処理後、DSP130でアナログ信号SRHに変換し、音声増幅回路165で増幅した後、積層圧電アクチュエータ70Rに供給する。
【0121】
右チャンネルの低域成分の信号は、DSP130でのデジタル処理後、DSP130でアナログ信号SRLに変換し、音声増幅回路166で増幅した後、スピーカユニット120Rに供給する。
【0122】
この例では、図15(B)に示したような高域を落とす処理を、DSP130において行う。
【0123】
この例では、例えば、積層圧電アクチュエータ70Lおよび70Rに供給される信号とスピーカユニット120Lおよび120Rに供給される信号との間に数ミリ秒〜数十ミリ秒程度の時間差を持たせて低域成分の信号を遅延させることによって、ハース効果による表示画面への音像定位効果を高めることができる。
【0124】
[5.他の実施形態または例:図17]
(5−1.構造体について:図17)
上述した各例は、音響振動板として機能する構造体が枠板状(額縁状)のベゼル10の場合であるが、構造体は必ずしも枠板状でなくてもよい。
【0125】
図17に、構造体が枠板状ではなく、矩形の平板である場合の例を示す。図17(A)は、スピーカシステムを正面側から見た図であり、図17(B)は、図17(A)のラインYの位置での横断面を示す。
【0126】
この例では、アクリル板などの透明な矩形の平板をフロントパネル80として設け、その背面側に、ディスプレイパネル40、および積層圧電アクチュエータ70Lおよび70Rを取り付ける。積層圧電アクチュエータ70Lおよび70Rは、表示画面41の左側および右側においてフロントパネル80に取り付ける。
【0127】
この場合、フロントパネル80の表示画面41の前方に位置する部分は透明である必要があるが、その上下左右の周辺部分まで透明であると、正面側から積層圧電アクチュエータ70Lおよび70Rなどが見えてしまい、体裁が良くない。
【0128】
そのため、フロントパネル80の前面中の、表示画面41の周辺となる部分には、その部分を不透明にする膜81を形成する。
【0129】
(5−2.アクチュエータについて)
上述した各例は、アクチュエータとして積層圧電アクチュエータを用いる場合であるが、アクチュエータとしては、超磁歪アクチュエータや静電アクチュエータなどを用いることもできる。
【0130】
また、アクチュエータの取り付け構成としては、例えば、ベゼルに角穴を形成し、その角穴にアクチュエータを装着して、ベゼルに板面方向の振動を加えるようにしてもよい。
【0131】
(5−3.スピーカ駆動方法について)
スピーカ駆動方法としても、アクチュエータの数や取り付け位置、および通常のスピーカユニットを設ける場合のスピーカユニットの数や配置位置などに応じて、上述した駆動方法以外の駆動方法を用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0132】
【図1】第1の実施形態のスピーカシステムの一例のベゼルを背面側から見た図である。
【図2】第1の実施形態のスピーカシステムの一例のベゼルおよびディスプレイパネルを背面側から見た図である。
【図3】第1の実施形態のスピーカシステムの一例の積層圧電アクチュエータの中心軸に沿う断面構造を示す図である。
【図4】積層圧電アクチュエータの一例を示す図である。
【図5】ベゼルの個体差による周波数特性の違いを示す図である。
【図6】ベゼルの個体差による周波数特性の違いが小さくなる場合を示す図である。
【図7】積層圧電アクチュエータに予荷重を加える場合のスピーカシステムの一例を示す図である。
【図8】第1の実施形態のスピーカシステムの他の例のアクチュエータ取り付け構成を示す図である。
【図9】第1の実施形態のスピーカシステムの他の例のアクチュエータ取り付け構成を示す図である。
【図10】第1の実施形態と第2の実施形態との違いの説明に供する図である。
【図11】第2の実施形態のスピーカシステムの一例を示す図である。
【図12】第3の実施形態のスピーカシステムの一例を示す図である。
【図13】第3の実施形態のスピーカシステムの他の例を示す図である。
【図14】第4の実施形態のスピーカシステムの一例を示す図である。
【図15】図14中のフィルタの周波数特性の一例を示す図である。
【図16】第4の実施形態のスピーカシステムの他の例を示す図である。
【図17】この発明のスピーカシステムの一例を示す図である。
【図18】特許文献1,2に示されたスピーカ装置を示す図である。
【図19】特許文献3に示されたスピーカ装置を示す図である。
【図20】未公開の特許出願で提案されたスピーカ装置を示す図である。
【符号の説明】
【0133】
主要部については図中に記述したので、ここでは省略する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示画面を有するディスプレイパネルと、
上記表示画面の周辺外側に位置する、音響振動板として機能する板部を有し、上記ディスプレイパネルに支持された構造体と、
当該のアクチュエータの変位方向が上記板部の板面方向となるように上記構造体に取り付けられたアクチュエータと、
を備えるスピーカシステム。
【請求項2】
請求項1のスピーカシステムにおいて、
上記構造体は、枠板状であるスピーカシステム。
【請求項3】
請求項1のスピーカシステムにおいて、
上記構造体は、少なくとも上記表示画面と対向する部分が透明なフロントパネルであるスピーカシステム。
【請求項4】
請求項1のスピーカシステムにおいて、
上記構造体と上記ディスプレイパネルの周辺部との間に緩衝部材が介在されたスピーカシステム。
【請求項5】
請求項1のスピーカシステムにおいて、
上記アクチュエータとして、上記構造体の上記表示画面の左側および右側の位置に、それぞれアクチュエータが取り付けられたスピーカシステム。
【請求項6】
請求項5のスピーカシステムにおいて、
上記それぞれのアクチュエータの変位方向が、それぞれ上記表示画面の上下方向とされたスピーカシステム。
【請求項7】
請求項5のスピーカシステムにおいて、
上記それぞれのアクチュエータの変位方向が、それぞれ上記表示画面の上下方向および左右方向に対して傾けられたスピーカシステム。
【請求項8】
請求項5のスピーカシステムにおいて、
さらに、上記構造体の上記表示画面の上側および下側の位置に、それぞれアクチュエータが取り付けられたスピーカシステム。
【請求項9】
請求項1のスピーカシステムにおいて、
上記アクチュエータが、積層圧電アクチュエータであるスピーカシステム。
【請求項10】
請求項9のスピーカシステムにおいて、
上記積層圧電アクチュエータに予荷重を加える手段を備えるスピーカシステム。
【請求項11】
請求項1のスピーカシステムにおいて、
さらに、ボイスコイルおよびコーンを有するスピーカユニットを備えるスピーカシステム。
【請求項12】
請求項11のスピーカシステムにおいて、
上記アクチュエータとして、上記構造体の上記表示画面の左側および右側の位置に、左チャンネル用アクチュエータおよび右チャンネル用アクチュエータが取り付けられ、上記スピーカユニットとして、左チャンネル用スピーカユニットおよび右チャンネル用スピーカユニットを備えるスピーカシステム。
【請求項13】
請求項1のスピーカシステムを駆動する方法として、
上記アクチュエータを、少なくとも高域成分を含む音声信号によって駆動して、上記表示画面の周辺外側に音像を定位させるスピーカ駆動方法。
【請求項14】
請求項11のスピーカシステムを駆動する方法として、
上記アクチュエータを、中高域成分の音声信号によって駆動し、上記スピーカユニットを、低域成分の音声信号によって駆動するスピーカ駆動方法。
【請求項15】
請求項14のスピーカ駆動方法において、
上記中高域成分の音声信号を、周波数が高くなるに従って通過レベルが低下するフィルタを通じて上記アクチュエータに供給するスピーカ駆動方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2010−93769(P2010−93769A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−323420(P2008−323420)
【出願日】平成20年12月19日(2008.12.19)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】