説明

スピーカー装置

【課題】省スペースで高音圧が得られると共に、音の歪みを抑制したスピーカー装置を提供すること。
【解決手段】略筒状に形成されたスピーカーフレーム1の両側に、第1振動板21b、第2振動板21c、第3振動板21dとそれらの振動板21を起振させる振動手段23とを備えてなるスピーカー部2を、左右の振動板21が交互となるように対向配置し、スピーカーフレーム1に振動板21同士の間から外部に音声を出力させる音声出力孔11を設ける。さらに、その音声出力孔11を、外方に向かって漸次幅広となる凸湾曲状に形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はスピーカー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
旧来のスピーカー装置は、一つの振動板に設けられたボイスコイルと、そのボイスコイルに遊挿されたポールと、そのポールに固着されボイスコイルを覆うように配置されたマグネットとを備えて構成されており、ボイスコイルに電気信号(音声信号)を流すことで、振動板が前後に振動して鳴音するようになっている。
しかしながら、旧来のスピーカー装置は、かかる構造であるがゆえに、省スペースで高音圧を得ることは極めて難しい。
【0003】
そこで、下記のようなスピーカー装置が提案されている。
そのスピーカー装置は、マグネットの上下部にトッププレートとボトムプレートを設置し、外周にヨークを設置して上下部磁気ギャップを形成し、上下部ボイスコイルをこれらの磁気ギャップに半分オフセットした状態で配置し、振動板をデュアルギャップ用ボイスコイル7の上部に載置し、これらを上下部ダンパーで支持している。
このスピーカー装置によれば、小口径であっても十分な駆動範囲と耐入力を得ることにより低音再生を可能にするスピーカユニットを提供することができる、としている(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平9−182188号公報(第1頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した先行のスピーカー装置は、鳴音させる部材である振動板が旧来と変わらず一枚であるため、性能の向上には限界があった。しかも、振動板を支持するヨークは、振動板より上方のヨーク内壁が垂直状に形成されていることから、音の歪みが発生しやすかった。
【0005】
そこで本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、上記問題点を解決できるスピーカー装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記技術課題を達成するために、本発明にかかるスピーカー装置は、下記の技術的手段を講じた。
すなわち、本発明にかかるスピーカー装置は、振動板と、該振動板と係合され前記振動板を起振させる振動手段とを備えてなるスピーカー部が、略筒状に形成されたスピーカーフレームの両側に対向配置され、前記スピーカーフレームは、前記振動板同士の間から外部に音声を出力させる音声出力孔が設けられてなるスピーカー装置であって、前記音声出力孔は、外方に向かって漸次幅広となる凸湾曲状または傾斜面状に形成されていることを特徴とする。
また、本発明にかかるスピーカー装置は、略筒状に形成されたスピーカーフレーム内に所定間隔をおいて並設された複数の振動板が振動杆を介して接続され、その複数の前記振動板のうち、一端に配置された振動板と係合され前記振動板を起振させる振動手段が前記スピーカーフレームに支持されて、夫々の前記振動板が同調可能に構成されてなるスピーカー部が、前記スピーカーフレームの両側に対向配置されたスピーカー装置であって、前記スピーカー部は、前記振動手段が係合された前記振動板以外の前記振動板に、対向配置された一方の前記振動杆を挿通させる連通孔が設けられて、夫々の前記スピーカー部を構成する夫々の複数の前記振動板が交互に配置されて、前記スピーカーフレームの両側に当該スピーカー部が対向配置され、前記スピーカーフレームは、交互に配置された複数の前記振動板同士の間から外部に音声を出力させる音声出力孔が設けられていると共に、その音声出力孔は、外方に向かって漸次幅広となる凸湾曲状または傾斜面状に形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、略筒状に形成されたスピーカーフレームの両側に、振動板とその振動板を起振させる振動手段とを備えてなるスピーカー部を対向配置し、スピーカーフレームに振動板同士の間から外部に音声を出力させる音声出力孔を設けたから、省スペースでもって高音圧を得ることができる。しかも、その音声出力孔は、外方に向かって漸次幅広となる凸湾曲状または傾斜面状に形成しているから、音の歪みを低減することができる。
また、スピーカー部を構成する振動板を複数で構成し、対向配置した夫々の振動板を交互に配置するようにしたから、省スペースでもって更に高音圧を得ることができ、その音声出力孔も上記と同様に、外方に向かって漸次幅広となる凸湾曲状または傾斜面状に形成しているから、音の歪みを低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
次に本発明にかかるスピーカー装置Aの実施の形態について、添付図面を参照しながら説明する。
本実施の形態にかかるスピーカー装置Aは、図1に示すように、スピーカーフレーム1と、一対のスピーカー部2とを備えて構成され、スピーカーフレーム1を挟んでその両側にスピーカー部2が対向配置される。
【0009】
スピーカーフレーム1は、薄板状部材でもって両端部が略すり鉢状に形成されると共に中間部が略筒状に形成されている。このスピーカーフレーム1は、その内部に後述する複数の振動板21が並設されるが、その振動板21同士間となる所要位置に夫々の振動板21から外部に音声が出力されるように長孔状の音声出力孔11が複数開口されている。
【0010】
この長孔状の音声出力孔11は、図2に示すように、スピーカーフレーム1の形成させる薄板状部材を穿孔した後、夫々の振動板21の外周部に形成されたエッジ21aの頂部と略同じ高さとなる位置に向かって(内方に向かって)孔の縁部11aを凸湾曲するように折り曲げ形成されている。換言すれば、この音声出力孔11は、外方に向かって漸次幅広となる凸湾曲状に形成されている。
【0011】
また、略すり鉢状に形成された両端部の傾斜面には後述する夫々の第1振動板21bの音抜け用孔12(空気抜け用孔)が設けられ、略すり鉢状に形成された一方側の端部の端面には、後述する筒部23cが遊挿される開口部13が設けられている。
【0012】
スピーカー部2は、振動板21と、振動杆22と、振動手段23とを備えて構成されている。
【0013】
振動板21は、スピーカーフレーム1の略すり鉢状に形成された端部に配設され、そのスピーカーフレーム1の略すり鉢状の頂部にエッジ21aを介して接続された左右の第1振動板21bと、その第1振動板21bから所要の間隔をおいてエッジ21aを介してスピーカーフレーム1内壁に接続された左右の第2振動板21cと、その第2振動板21cから所要の間隔をおいてエッジ21aを介してスピーカーフレーム1内壁に接続された左右の第3振動板21dと備えてなる。
【0014】
これら左右の第1振動板21b、左右の第2振動板21c、左右の第3振動板21dの配置関係は、図示したように、左の第1振動板21bと左の第2振動板21cとの間に右の第3振動板21dが配置され、左の第2振動板21cと左の第3振動板21dとの間に右の第2振動板21cが配置され、そして右端に右の第1振動板21bが配置されており、後述する振動杆22を挿通させる挿通孔21eが左右の第2振動板21cと左右の第3振動板21dの夫々に設けられている。この挿通孔21eは、可能な限り振動板21の中心寄りにして一箇所であることが好ましいが、2個所、あるいは、3個所にする場合は、等配となるような配置とすることが好適である(なお、図示は中心寄りにして一箇所である場合を誇張表現して中心からずれた位置に記載してある)。なお、これら左右の第1〜第3振動板21b…は、平坦状に形成されている。
【0015】
振動杆22は、第1振動板21bと第2振動板21cとを、また、第2振動板21cと第3振動板21dとを結ぶように、対向配置されたスピーカー部2の第2振動板21cと第3振動板21dに形成された挿通孔21eを介して夫々架設された棒状部材であり、後述する振動手段23によって起振された第1振動板21bと、第2振動板21c及び第3振動板21dとが同調するようになっている。
【0016】
振動手段23は、拡径された一端側が第1振動板21bのエッジ21aと接続されたテーパー部23bとそのテーパー部23bと接続された筒部23cとで構成された振動伝達部23aと、テーパー部23bと筒部23cとの交差部から張り出すように設けられ外周部がスピーカーフレーム1に接続されたダンパー23dと、筒部23cの外周に巻回されたボイスコイル23eと、略すり鉢状に形成されたスピーカーフレーム1端面に設けられた開口部13を中心にして、そのスピーカーフレーム1端面に取り付けられた略円筒状のマグネット23fと、そのマグネット23fの終端面と接続されると共に筒部23cに遊挿された断面視略T字状のポール23gとを備えてなり、スピーカーフレーム1を挟んでその両側に対向配置されている。
【0017】
以上のように構成された本実施の形態にかかるスピーカー装置Aは、対向配置された夫々のボイスコイル23eに電気信号(音声信号)を流すことにより、固定された磁石に対してボイスコイル23eが前後し、それが、振動伝達部23a、第1振動板21b、振動杆22、第2振動板21c、第3振動板21dとに伝播する。
このようにして、第1振動板21b、第2振動板21c、第3振動板21dの夫々が前後に振動して音が発生し、発生した音が音声出力孔11を介して外部に鳴音する。このとき、音声出力孔11が、外方に向かって漸次幅広となる凸湾曲状または傾斜面状に形成していることから、音の歪みを低減して高品位の音質を実現する。
【0018】
このように本実施の形態にかかるスピーカー装置Aは、略筒状に形成されたスピーカーフレーム1の両側に、第1振動板21b、第2振動板21c、第3振動板21dとそれらの振動板21を起振させる振動手段23とを備えてなるスピーカー部2を、左右の振動板21が交互となるように対向配置し、スピーカーフレーム1に振動板21同士の間から外部に音声を出力させる音声出力孔11を設けたから、省スペースでもって高音圧を得ることができるようになっている。しかも、その音声出力孔11は、外方に向かって漸次幅広となる凸湾曲状に形成しているから、音の歪みを低減して高品位の音質を実現するようになっている。
【0019】
以上、具体的な実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されず、発明の要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施できることは言うまでもない。
【0020】
例えば、本実施の形態では、左右の振動板21の数を夫々3つにしているが、左右の振動板21の数を夫々一つ、すなわち、スピーカーフレーム1を共用してスピーカー部2を対向配置(したがって振動杆を通す挿通孔は不要となる)したり、左右の振動板21の数を上記した3つ以外の複数で構成しても良い。
また、本実施の形態では、スピーカーフレーム1を略円筒状のものを例示しているが、矩形体状のものでも良い。
【0021】
また、本実施の形態では、スピーカーフレーム1を形成させる薄板状部材を穿孔し、夫々の振動板21の外周部に形成されたエッジの頂部と略同じ高さとなる位置に向かって(内方に向かって)孔の縁部を凸湾曲するように折り曲げ形成した音声出力孔を例示しているが、この折り曲げ形成に替えて、孔の縁部を凸湾曲した部材で固着させても良い。また、これら凸湾曲状ではなく、外方に向かって漸次幅広となる傾斜面状に形成しても良い。
さらに、図3に示すように、スピーカーフレーム1の外周面に、外方に向かって漸次幅広となる傾斜面状部材14を取り付けても良い。この場合も、傾斜面状に替えて、凸湾曲状部材としても良い。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本実施の形態にかかるスピーカー装置の側面図である。
【図2】同、縦断側面図である。
【図3】他の態様のスピーカー装置の側面図である。
【符号の説明】
【0023】
A スピーカー装置
1 スピーカーフレーム
11 音声出力孔
11a 縁部
12 音抜け用孔
13 開口部
14 傾斜面状部材
2 スピーカー部
21 振動板
21a エッジ
21b 第1振動板
21c 第2振動板
21d 第3振動板
21e 挿通孔
22 振動杆
23 振動手段
23a 振動伝達部
23b テーパー部
23c 筒部
23d ダンパー
23e ボイスコイル
23f マグネット
23g ポール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動板と、該振動板と係合され前記振動板を起振させる振動手段とを備えてなるスピーカー部が、略筒状に形成されたスピーカーフレームの両側に対向配置され、前記スピーカーフレームは、前記振動板同士の間から外部に音声を出力させる音声出力孔が設けられてなるスピーカー装置であって、
前記音声出力孔は、外方に向かって漸次幅広となる凸湾曲状または傾斜面状に形成されていることを特徴とするスピーカー装置。
【請求項2】
略筒状に形成されたスピーカーフレーム内に所定間隔をおいて並設された複数の振動板が振動杆を介して接続され、その複数の前記振動板のうち、一端に配置された振動板と係合され前記振動板を起振させる振動手段が前記スピーカーフレームに支持されて、夫々の前記振動板が同調可能に構成されてなるスピーカー部が、前記スピーカーフレームの両側に対向配置されたスピーカー装置であって、
前記スピーカー部は、
前記振動手段が係合された前記振動板以外の前記振動板に、対向配置された一方の前記振動杆を挿通させる連通孔が設けられて、夫々の前記スピーカー部を構成する夫々の複数の前記振動板が交互に配置されて、前記スピーカーフレームの両側に当該スピーカー部が対向配置され、
前記スピーカーフレームは、交互に配置された複数の前記振動板同士の間から外部に音声を出力させる音声出力孔が設けられていると共に、その音声出力孔は、外方に向かって漸次幅広となる凸湾曲状または傾斜面状に形成されていることを特徴とするスピーカー装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−42614(P2008−42614A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−215572(P2006−215572)
【出願日】平成18年8月8日(2006.8.8)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】