スピーカ装置
【課題】特性の優れた新規な形状のスピーカ装置を提供することを目的とする。
【解決手段】このため本発明では、キャビネットに複数のスピーカユニットを収納させて構成されるスピーカ装置において、キャビネットのバッフル面101aを所定の曲率で外側に突出した曲面とする。そして、各スピーカユニットが備える振動板120L,120Rを、バッフル面101aの曲率とほぼ同一の曲率で外側に突出した形状とし、振動板120L,120Rをバッフル面101aから露出させて、ほぼ連続した曲率の曲面形状となるように配置した。このようにスピーカ装置のバッフル面と複数の振動板の双方が、ほぼ同一の曲率の曲面形状としたことで、複数の振動板の振動による音の出力を効率良く行うことができ、周波数特性や指向特性を改善することができる。
【解決手段】このため本発明では、キャビネットに複数のスピーカユニットを収納させて構成されるスピーカ装置において、キャビネットのバッフル面101aを所定の曲率で外側に突出した曲面とする。そして、各スピーカユニットが備える振動板120L,120Rを、バッフル面101aの曲率とほぼ同一の曲率で外側に突出した形状とし、振動板120L,120Rをバッフル面101aから露出させて、ほぼ連続した曲率の曲面形状となるように配置した。このようにスピーカ装置のバッフル面と複数の振動板の双方が、ほぼ同一の曲率の曲面形状としたことで、複数の振動板の振動による音の出力を効率良く行うことができ、周波数特性や指向特性を改善することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スピーカボックスにスピーカユニットを収納させて構成される、ハイファイオーディオ再生用のスピーカ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ハイファイオーディオ再生用のスピーカ装置としては、例えば図16に示す構成である。即ち、角型のスピーカボックス1の前面のバッフル板2に、スピーカユニット3,4を配置して構成される。各スピーカユニット3,4としては、例えばスピーカユニット3は中低域音を再生するユニットであり、スピーカユニット4は高域音を再生するユニットである。中低域音を再生するスピーカユニット3が備える振動板は、例えばコーン型の振動板である。高域音を再生するスピーカユニット4は、例えばドーム型の振動板である。
【0003】
スピーカボックス1は、例えば木材を組み合わせて作成してあり、使用するスピーカユニット3,4に合わせたサイズのボックスが使用される。バッフル板2についても、通常は平面板である。特許文献1には、この種のスピーカ装置の一例についての記載がある。
【特許文献1】特開2006−174077号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、広く普及している角型のスピーカボックスにコーン型のスピーカユニットを収納させたスピーカ装置については、音質改善のために各種改良が行われているが、振動板そのものがコーン型でバッフルからボックス内に窪んだ形状であり、その窪んだ形状のために、スピーカ装置から出力される音の広がり状態 が必ずしも自然な状態とは言えず、そのために特性の劣化があった。具体的には、コーン型振動板によるバッフル面からの窪みがあるために、回析効果による軸 上特性、指向特性の劣化がある。
また、スピーカボックスそのものの形状についても、角型であるために、ボックス内での音の伝わり状態が均一とは言えず、そのための特性劣化がある問題があった。即ち、バッフル端部からの音の反射、キャビネット内部での反射音が不要な音をもたらし、音を劣化させていた。
【0005】
本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、特性の優れた新規な形状のスピーカ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、キャビネットに複数のスピーカユニットを収納させて構成されるスピーカ装置において、キャビネットのバッフル面を所定の曲率で外側に突出した曲面とする。そして、スピーカユニットが備えるそれぞれの振動板を、バッフル面の曲率とほぼ同一の曲率で外側に突出した形状とし、複数の振動板をバッフル面のそれぞれ異なる位置から露出させて、ほぼ連続した曲率の曲面形状となるように配置したものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によると、スピーカ装置のバッフル面と、複数配置した振動板の双方が、ほぼ同一の曲率の曲面形状としたことで、振動板の振動による音の出力を効率良く行うことができ、周波数特性や指向特性を改善することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の第1の実施の形態を、図1〜図6を参照して説明する。
図1〜図3は、本実施の形態の例によるスピーカ装置の外観形状を示した斜視図である。図1は正面側の斜視図であり、図2は斜め左側から見た斜視図であり、図3は上面から見た図である。図4は、本実施の形態の例によるスピーカ装置の縦断面図である。図5は、本実施の形態の例によるスピーカ装置が備えるスピーカユニット単体で示した斜視図である。
【0009】
これらの各図を参照して構成を順に説明すると、本実施の形態においては、図1及び図2に示すように、スピーカ装置100として、卵型形状の球形のスピーカボックス101をキャビネットとして使用して構成させる。卵型形状は一例であり、その他の球形としてもよい。例えば完全な球形としてもよい。なお、図3は、図1に示した頂点tの位置が中心になるようにして示した図である。
【0010】
卵型形状の球形のスピーカボックス101は、例えば木材、合成樹脂などで構成させる。図1,図2の例では、卵型に楕円形状となったスピーカボックス101を、縦長に直立させた状態としてある。スピーカボックス101のサイズとしては、種々のサイズが適用可能であるが、例えば一例としては高さ20cm程度とする。図1,図2の例では、スピーカボックス101の底部についても円形としてあり、そのままでは直立させることが困難であるが、図示しない脚部を底面に取り付けたり、或いは、スピーカボックス101の底面の外側を平面状として、容易に直立状態で設置できる形状としてもよい。
【0011】
卵型形状のスピーカボックス101の側面には、2つのスピーカユニット110(図4)を配置するためのバッフル部101aを構成させてあり、それぞれのバッフル部101aにスピーカユニット配置用の透孔101bが設けてある。但し、本例の場合にはスピーカボックス101が一体に卵型形状をしているので、2つのバッフル部101aは、スピーカボックス101の他の部分と一体に接続された状態となっており、2つのバッフル部101aと他の部分とがほぼ同一の曲率の曲面で連続している。2つのバッフル部101aの透孔101bは、図3に上面から見た状態で示すように、相互に180°離れた位置に配置してある。それぞれのバッフル部101aをスピーカボックス101の他の部分と別体で構成させてもよい。図1の例では、透孔101bは中央から若干下の位置に配置してある。
【0012】
それぞれのバッフル部101aの透孔101bには、図1に示すように、スピーカユニット110の振動板120L,120Rが配置してある。それぞれの振動板120L,120Rは、透孔101bより若干小さいサイズとしてある。
本例の場合には、バッフル部101aそのものが卵形形状に立体的な曲面となっているが、それぞれの振動板120L,120Rの表面についても、それぞれのバッフル部101aと連続した曲面となるように、それぞれのバッフル部101aとほぼ同一の曲率の立体的な曲面に形成させてある。従って、図1に示すように組み立てられた状態では、バッフル部101aと振動板120L,120Rとで連続した曲面が構成され、それぞれの振動板120L,120Rの周囲とそれぞれのバッフル部101aとの間に、環状に溝が配置された状態となっている。なお、図2では2つの振動板120L,120Rの内の一方の振動板120Rが裏側に隠れた状態で破線で示してある。
各スピーカユニット110の振動板120L,120Rの裏側のスピーカボックス101内の空間は、それぞれ壁140(図4参照)で仕切られており、相互に干渉しない構成としてある。
【0013】
それぞれのスピーカユニット110にオーディオ信号を供給する端子(図示せず)については、例えば卵型形状のスピーカボックス101の底面などの比較的目立たない位置に配置する。2つのスピーカユニット110には、同じオーディオ信号を供給して同じ音響を再生させるようにする。この同じオーディオ信号を2つのスピーカユニット110に供給した場合には、スピーカ装置100の周囲360°に同じ音が広がって再生される。
或いは、左側の振動板120Lを有するスピーカユニット110に、左チャンネル用のオーディオ信号を供給し、右側の振動板120Rを有するスピーカユニット110に、右チャンネル用のオーディオ信号を供給して、2チャンネルオーディオ信号によるステレオ再生が行えるようにしてもよい。この2チャンネルオーディオ信号によるステレオ再生を行う構成とした場合には、スピーカ装置100を配置した位置の左側で左チャンネルの音が広がり、スピーカ装置100を配置した位置の右側で右チャンネルの音が広がり、2チャンネルのステレオ再生が、スピーカ装置100を配置した位置を中心として良好に行える。
【0014】
次に、図4を参照して本実施の形態のスピーカ装置100の内部構成例について説明する。スピーカボックス101の内部は、各スピーカユニット110を配置する位置ごとに個別の空間が形成されるように仕切り140で区切ってある。スピーカボックス101の2つのバッフル部101aの各透孔101bには、それぞれ別のスピーカユニット110を配置する。それぞれのスピーカユニット110は、図5に示すように、金属製の円形のフレーム111の内部に各部材を配置して構成される。
図4の断面図に示したように、それぞれのスピーカユニット110は、フレーム111の中央部に、磁石112aとヨーク112bなどで構成される磁気回路112が配置してあり、その磁気回路112のギャップ112cに、コイルボビン113に巻回されたボイスコイル113aを近接して配置してある。ボイスコイル113aには、スピーカ装置の端子(図示せず)から信号線を介してオーディオ信号が供給される構成としてあり、その供給されるオーディオ信号に応じて、コイルボビン113が振動する。
【0015】
コイルボビン113の先端には、振動板120L又は120Rが取り付けてある。図4の例では、コイルボビン113と振動板120L又は120Rとの接続部に、補強材115が取り付けてある。振動板120は、既に説明したように、スピーカボックス101の形状と連続する曲面形状としてあり、振動板120のエッジ部121が、接続部材116を介してフレーム111の外周部111aに接続してある。コイルボビン113は、ダンパ114を介してフレーム111に接続してある。
【0016】
図4に示したように、各スピーカユニット110に取り付けられた振動板120L及び120Rは、側面部122がエッジ部121から若干立ち上がって、その立ち上がった位置から、バッフル部101aと同一曲率の曲面状となるように、若干弓なりに湾曲して突出した状態としてある。このような形状の振動板120L及び120Rは、例えば木材を削りだして構成させるか、或いは、樹脂成型により構成させる等、種々の素材により構成させることが可能である。この図5に示した各スピーカユニット110は、低域音から高域音までを再生する、いわゆるフルレンジ型のスピーカユニットとして構成してある。但し、後述する変形例(図15の例)では、高域音を別のユニットから再生させる構成としてある。
【0017】
図4の説明に戻ると、各スピーカユニット110のフレーム111の外周部111aは、制振材117を介して、スピーカボックス101のバッフル部101aの背面に取り付けてある。
なお、図示はしないが、卵形のスピーカボックス101の内側のほぼ中央となる位置には、吸音材を配置してもよい。
【0018】
このように配置されることで、スピーカユニット110の側面の2カ所に配置された振動板120L及び120Rは、図1や図4に示すように、スピーカボックス101全体の曲面と一体化した曲面として配置されるようになる。また、振動板120L及び120Rは、図4に示すように側面部122がエッジ部121から若干立ち上がる形状としてあるため、バッフル部101aでは振動板120だけが見えた状態となり、フレーム外周部111aなどは隠された形状となる。
【0019】
このように構成される本実施の形態によるスピーカ装置100は、特性として優れたものが得られる。即ち、以下に示す効果を有する。
1)回折効果が少ない。
2)窪みによる特性劣化が無い。
3)指向特性にピークディップが少なくなり良好になる。
4)回折、窪み効果による2次音源が発生しない為、音の解像度が向上する。
5)キャビネット内に定在波がたちにくいので音質が向上する。
6)特に音源(振動板)とキャビネットの形状が、人間における口と頭部形状の関係に似てくるため、音声の再現に優れたシステムになる。
7)キャビネット形状が形状的に強い構造となる為、キャビネット振動が減少し、音質が向上する。
8)定在波、キャビネット振動共に特定の振動が発生しにくい構造となるので、音質が向上する。
【0020】
回折効果が少ない効果は、スピーカユニット110と各振動板120L及び120Rとが卵型で連続した球形であり、従来の角型のバッフルとした場合に、そのバッフルの端部(角部)で発生していた回折効果が減少するためである。窪みによる特性劣化が無い点は、従来のコーン型振動板と異なり、バッフルからの窪みが全くないと共に、振動板とバッフルとがほぼ同一曲率で連続した曲面形状のためである。指向特性の改善についても同様である。音源(振動板)とキャビネットの形状が、人間における口と頭部形状の関係に似てくるため、音声の再現に優れたシステムになる点は、例えば高さ20cm程度の卵型のスピーカボックスとして構成させた場合、そのスピーカボックス(キャビネット)が、人間の頭部に近似した形状となり、人間における口と頭部形状の関係に似た状態となって、人間が話す場合と類似した音声出力状態となるためである。
【0021】
なお、本実施の形態のように卵型として構成した場合、内部定在波の替わりに、キャビネット内のほぼ中心に焦点を結ぶが(卵型は完全な球ではないので焦点は若干分散するが)、その中心位置に吸音材を配置することで、効果的に内部音を吸音することが出来る。従来の角型のスピーカボックスの場合には、定在波などを防止するために吸音材を配置する場合には、キャビネットの背面などに沿って比較的多量の吸音材を配置する必要があったが、本例の場合には、ほぼ焦点位置に相当する中心位置の近傍に比較的少ない量の吸音材を配置するだけで、キャビネット内の中心位置に集まった音が効果的に吸音され、少ない量の吸音材で高い効果が得られる。
【0022】
そして本実施の形態のスピーカ装置の場合には、2つのスピーカユニット110を、ほぼ180°異なる位置に配置したことで、スピーカ装置100の周囲360°でほぼ均一な特性で音響再生されるようになる。
図6は、本実施の形態のスピーカ装置の1つのスピーカユニット110から出力される音の水平面での360°の指向特性を各周波数帯域で示した図であり、0°が正面である。図6(a)が本実施の形態の例であり、図6(b)が比較のために示した従来の箱形のスピーカボックスでコーン形スピーカユニットを使用した例である。図6に示した各数値は周波数の値であり、ここでは1000Hz,2000Hz,7000Hz,20000Hzを示してある。1000Hzが実線、2000Hzが破線、7000Hzが一点鎖線、20000Hzが二点鎖線で示してある。
図6(b)に示した従来のスピーカ装置の場合には、周波数が高くなるに従って、背面側でかなりのレベル低下があり、正面から90°の角度でも、高域になるに従って大きな下ベル低下があることがわかる。これに対して、図6(a)の本実施の形態のスピーカ装置の場合には、正面から±90°を越える範囲で、高域までほぼ均一なレベルが維持されていることが判る。
従って、図1〜図4に示したように2つのスピーカユニット110を180°異なる位置に配置することで、それぞれのスピーカユニット110の振動板120L又は120Rから出力される音は、正面から±90°の範囲内の音となり、スピーカ装置に対してどの角度位置にいる人に対しても、周波数特性が良好な音を聞かせることができるようになる。
先に説明したように、2つのスピーカユニット110に同じオーディオ信号を供給した場合には、どの角度位置にいるリスナーに対しても、同じ音を聞かせることが可能となる。また、2つのスピーカユニット110に2チャンネルのステレオオーディオ信号の各チャンネルの信号を供給した場合には、位置に応じたチャンネルの音を聞かせることが可能となる。
【0023】
次に、本発明の他の実施の形態の例について、図7以降の図を参照して順に説明する。この図7以降の図において、一実施の形態の例として説明した図1〜図6に対応する部分には同一符号を付す。
まず、図7及び図8を参照して、卵型形状の球形のスピーカボックス101を有するスピーカ装置100のバッフル部101aへのスピーカユニットの振動板の取付け状態の他の例を示す。図7は斜視図であり、図8は断面図である。
この図7及び図8の例のスピーカ装置100では、図7に示すように、各振動板120L,120Rの縁部に、突起状のリブ123を環状に設ける。そして、図8に断面で示すように、そのリブ123の縁をスピーカユニット110のフレーム111の縁部と接続させてあり、そのフレーム111の縁部を、透孔101bの縁に接着させて、バッフル部101aに取付ける構成とする。その他の部分は、図1例のスピーカ装置100と同様に構成する。
【0024】
この図7,図8例のスピーカ装置100の場合には、図7に示すように各振動板120L,120Rとバッフル部101aとの間に、突起状のリブ123が存在することになるが、このリブ123の突出量はわずかであり、スピーカ装置全体の球形形状が持つ特性の良さを損なうことがなく、図1例のスピーカ装置に場合と同様の良好な指向特性などが得られる。
【0025】
次に、図9及び図10を参照して、スピーカユニット110を3個配置した例について説明ずる。図9は正面から見た図であり、図10は上面から見た図である。図9及び図10において、tは卵型形状の球形のスピーカボックス101の頂点を示し、図10はその頂点を中心に示してある。
【0026】
この例では、図10に示すように、卵型形状の球形のスピーカボックス101を有するスピーカ装置100の側面に、120°間隔で均等に3つのバッフル部101aを配置して、それぞれのバッフル部101aに透孔101bを設ける。各バッフル部101aの裏側のスピーカボックス101内の空間は、それぞれ個別に仕切られた空間として、各スピーカユニット110が相互に干渉しない構成としてある。それぞれの透孔101bには、それぞれ別のスピーカユニット110を配置し、3つの振動板120X,120Y,120Zが透孔101bに収まるようにする。図9では、2つの振動板120X,120Yが見えた状態となっており、裏側の振動板120Zは破線で示してある。
【0027】
このように3つのスピーカユニットの振動板120X,120Y,120Zを配置することで、卵型形状の球形のスピーカボックス101の側面から、3つの方向に音が出力されることになり、スピーカボックス101の周囲のどの角度位置にいる人に対しても、周波数特性が良好な音を聞かせることができるようになる。即ち、既に説明した図6に示したように、本例のスピーカ装置として構成させることで、1つの振動板から出力される音の周波数特性が、広い角度範囲で良好であるが、図1例のように180°間隔で2つのスピーカ装置を設ける場合よりも、さらに周波数特性が良好な角度範囲で使用でき、スピーカ装置としての特性を改善できる。
【0028】
3つの振動板120X,120Y,120Zを駆動するスピーカユニットには、全て同じオーディオ信号を供給する。或いは、複数チャンネルのオーディオ信号を供給する構成としてもよい。
【0029】
次に、図11及び図12を参照して、スピーカユニット110を2個配置すると共に、その2個のスピーカユニット110の振動板120L,120Rの配置状態を、図1の例とは変えた例について説明する。図11は正面から見た図であり、図12は上面から見た図である。図11及び図12において、tは卵型形状の球形のスピーカボックス101の頂点を示し、図12はその頂点を中心に示してある。
【0030】
この例では、図12に示すように、卵型形状の球形のスピーカボックス101を有するスピーカ装置100の側面に、180°よりも短い間隔(例えば120°間隔)で2つのバッフル部101aを配置して、それぞれのバッフル部101aに透孔101bを設ける。それぞれの透孔101bには、それぞれ別のスピーカユニット110を配置し、2つの振動板120L,120Rが透孔101bに収まるようにする。各バッフル部101aの裏側のスピーカボックス101内の空間は、それぞれ個別に仕切られた空間として、各スピーカユニット110が相互に干渉しない構成としてある。
【0031】
このように2つのスピーカユニットの振動板120L,120Rを近接して配置することで、卵型形状の球形のスピーカボックス101から、ある程度周波数特性に方向を持って音が出力されることになる。即ち、例えば振動板120Lから左チャンネルのオーディオ信号を出力させ、振動板120Rから右チャンネルのオーディオ信号を出力させることで、スピーカボックス101のほぼ正面(図11に示した面)を向いた人に対して、左右双方のチャンネルのオーディオを良好な周波数特性で聞かせることが可能になる。2つの振動板120L,120Rを駆動するスピーカユニットに、全て同じオーディオ信号を供給するようにしてもよい。
【0032】
次に、図13及び図14を参照して、スピーカユニット110を5個配置した例について説明ずる。図13は正面から見た図であり、図14は上面から見た図である。図13及び図14において、tは卵型形状の球形のスピーカボックス101の頂点を示し、図14はその頂点を中心に示してある。
【0033】
この例では、図13に示すように、卵型形状の球形のスピーカボックス101を有するスピーカ装置100の側面に、5つのバッフル部101aを配置して、それぞれのバッフル部101aに透孔101bを設ける。5つの透孔101bには、それぞれ別のスピーカユニット110を配置し、5つの振動板120L,120R,120C,120RL,120RRが透孔101bに収まるようにする。図13では、3つの振動板120L,120R,120Cが見えた状態となっており、裏側の振動板120RL,120RRは破線で示してある。図13から判るように、5つの振動板120L,120R,120C,120RL,120RRは、この例では均等な間隔では配置していないが、均等な角度位置ごとに5つを配置してもよい。各バッフル部101aの裏側のスピーカボックス101内の空間は、それぞれ個別に仕切られた空間として、各スピーカユニット110が相互に干渉しない構成としてある。
【0034】
このように5つのスピーカユニットの振動板120L,120R,120C,120RL,120RRを配置することで、卵型形状の球形のスピーカボックス101の側面から、5つの方向に音が出力されることになり、スピーカボックス101の周囲のどの角度位置にいる人に対しても、周波数特性が良好な音を聞かせることができるようになる。
【0035】
5つの振動板120L,120R,120C,120RL,120RRを駆動するスピーカユニットには、全て同じオーディオ信号を供給する場合と、複数チャンネルのオーディオ信号を供給する場合のいずれでもよい。
複数チャンネルのオーディオ信号を供給する場合には、例えば、振動板120Lから左フロントチャンネルのオーディオ信号を出力させ、振動板120Rから右フロントチャンネルのオーディオ信号を出力させ、振動板120Cからセンターチャンネルのオーディオ信号を出力させ、振動板120RLから左リアーチャンネルのオーディオ信号を出力させ、振動板120RRから右リアーチャンネルのオーディオ信号を出力させる。
【0036】
このように5チャンネルの信号をそれぞれ別のスピーカユニットの振動板から出力させることで、1つのスピーカ装置100を使って、5つの方向にそれぞれの方向に適した音を出力させることが可能となり、マルチチャンネルオーディオを、1つのスピーカ装置100だけで良好に再生できるようになる。
【0037】
次に、図15を参照して、各スピーカユニットを2ウェイ構成とした例について説明ずる。図15の例は、図1の例と同様に、2つのスピーカユニット110の振動板120L,120Rを、ほぼ180°間隔で配置した例である。この例では、各バッフル部101aの振動板120L,120R配置位置の上側に、高域音を再生するツィータ用スピーカユニット130L,130Rを配置した構成としたものである。従って、ツィータ用スピーカユニット130L,130Rについても、ほぼ180°間隔で配置してある。この場合、各振動板120L,120Rからは、低域音及び中域音の出力を行い、ツィータ用スピーカユニット130L,130Rからは高域音の出力を行う。
2チャンネルオーディオ信号を供給する場合には、振動板120Lを駆動するスピーカユニットと、ツィータ用スピーカユニット130Lとに、左チャンネルのオーディオ信号を供給し、振動板120Rを駆動するスピーカユニットと、ツィータ用スピーカユニット130Rとに、右チャンネルのオーディオ信号を供給する。
このように複数配置したそれぞれのスピーカユニットを、高域とそれ以外の帯域との2ウェイ構成としたことで、スピーカユニットとしてそれぞれ周波数特性に優れたものが使用でき、よりスピーカ装置として良好な特性とすることができる。
なお、図15の例では、図1のスピーカ装置を2ウェイ構成とした例を示したが、図9,図11,図13の構成のスピーカ装置を、同様に2ウェイ構成としてもよい。
【0038】
なお、ここまで説明した実施の形態では、振動板とバッフルとがほぼ同一曲率で連続した曲面形状と説明したが、ここでのほぼ同一曲率で連続した曲面形状とは、必ずしも振動板とバッフルとの曲率が同じであることを意味するのではない。本発明の場合には、ここまでの説明から判るように、スピーカ装置を表面から見て、振動板とバッフルとが連続したように見える曲面になっていることを意味しており、それぞれの曲率が異なっても問題はない。また、図1〜図4の例では、卵形状のスピーカボックスの曲率の緩い曲面(大きな曲率)の箇所に振動板を配置したが、卵形状の頂点部(例えば図1の上側)に透孔を設けて、その透孔に振動板を配置した構成としてもよい。この場合には、バッフル部よりも振動板の方が、曲率が小さくなるが、このような形状も本発明でのほぼ同一曲率で連続した曲面形状に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の一実施の形態によるスピーカ装置の例を示す正面側の斜視図である。
【図2】本発明の一実施の形態によるスピーカ装置の斜め左側の斜視図である。
【図3】本発明の一実施の形態によるスピーカ装置を上面から見た上面図である。
【図4】本発明の一実施の形態によるスピーカ装置の例を示す断面図である。
【図5】本発明の一実施の形態によるスピーカユニットの例を示す斜視図である。
【図6】本発明の一実施の形態によるスピーカ装置の指向特性の例(a)と、従来の指向特性の例(b)を示した特性図である。
【図7】本発明の他の実施の形態によるスピーカ装置の例(エッジを直接接続した例)を示す正面側の斜視図である。
【図8】図7例の断面図である。
【図9】本発明の他の実施の形態によるスピーカ装置の例(3つのユニットの例)を示す正面側の斜視図である。
【図10】図9例のスピーカ装置を上面から見た上面図である。
【図11】本発明の他の実施の形態によるスピーカ装置の例(2つのユニットを近づけた例)を示す正面側の斜視図である。
【図12】図11例のスピーカ装置を上面から見た上面図である。
【図13】本発明の他の実施の形態によるスピーカ装置の例(5つのユニットの例)を示す正面側の斜視図である。
【図14】図13例のスピーカ装置を上面から見た上面図である。
【図15】本発明の他の実施の形態によるスピーカ装置の例(2ウェイ構成の例)を示す正面側の斜視図である。
【図16】従来のスピーカ装置の構成例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0040】
100…スピーカ装置、101…スピーカボックス、101a…バッフル部、101b…透孔、110,110…スピーカユニット、111…フレーム、111a…フレーム外周部、112…磁気回路、112a…磁石、112b…ヨーク、112c…ギャップ、113…コイルボビン、113a…ボイスコイル、114…ダンパ、115…補強材、116…接続部材、117…制振材、120C,120L,120R,120RL,120RR,120X,120Y,120Z…振動板、121…エッジ部、122…側面部、123…リブ、130L,130R…ツィータ用スピーカユニット、140…仕切り
【技術分野】
【0001】
本発明は、スピーカボックスにスピーカユニットを収納させて構成される、ハイファイオーディオ再生用のスピーカ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ハイファイオーディオ再生用のスピーカ装置としては、例えば図16に示す構成である。即ち、角型のスピーカボックス1の前面のバッフル板2に、スピーカユニット3,4を配置して構成される。各スピーカユニット3,4としては、例えばスピーカユニット3は中低域音を再生するユニットであり、スピーカユニット4は高域音を再生するユニットである。中低域音を再生するスピーカユニット3が備える振動板は、例えばコーン型の振動板である。高域音を再生するスピーカユニット4は、例えばドーム型の振動板である。
【0003】
スピーカボックス1は、例えば木材を組み合わせて作成してあり、使用するスピーカユニット3,4に合わせたサイズのボックスが使用される。バッフル板2についても、通常は平面板である。特許文献1には、この種のスピーカ装置の一例についての記載がある。
【特許文献1】特開2006−174077号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、広く普及している角型のスピーカボックスにコーン型のスピーカユニットを収納させたスピーカ装置については、音質改善のために各種改良が行われているが、振動板そのものがコーン型でバッフルからボックス内に窪んだ形状であり、その窪んだ形状のために、スピーカ装置から出力される音の広がり状態 が必ずしも自然な状態とは言えず、そのために特性の劣化があった。具体的には、コーン型振動板によるバッフル面からの窪みがあるために、回析効果による軸 上特性、指向特性の劣化がある。
また、スピーカボックスそのものの形状についても、角型であるために、ボックス内での音の伝わり状態が均一とは言えず、そのための特性劣化がある問題があった。即ち、バッフル端部からの音の反射、キャビネット内部での反射音が不要な音をもたらし、音を劣化させていた。
【0005】
本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、特性の優れた新規な形状のスピーカ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、キャビネットに複数のスピーカユニットを収納させて構成されるスピーカ装置において、キャビネットのバッフル面を所定の曲率で外側に突出した曲面とする。そして、スピーカユニットが備えるそれぞれの振動板を、バッフル面の曲率とほぼ同一の曲率で外側に突出した形状とし、複数の振動板をバッフル面のそれぞれ異なる位置から露出させて、ほぼ連続した曲率の曲面形状となるように配置したものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によると、スピーカ装置のバッフル面と、複数配置した振動板の双方が、ほぼ同一の曲率の曲面形状としたことで、振動板の振動による音の出力を効率良く行うことができ、周波数特性や指向特性を改善することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の第1の実施の形態を、図1〜図6を参照して説明する。
図1〜図3は、本実施の形態の例によるスピーカ装置の外観形状を示した斜視図である。図1は正面側の斜視図であり、図2は斜め左側から見た斜視図であり、図3は上面から見た図である。図4は、本実施の形態の例によるスピーカ装置の縦断面図である。図5は、本実施の形態の例によるスピーカ装置が備えるスピーカユニット単体で示した斜視図である。
【0009】
これらの各図を参照して構成を順に説明すると、本実施の形態においては、図1及び図2に示すように、スピーカ装置100として、卵型形状の球形のスピーカボックス101をキャビネットとして使用して構成させる。卵型形状は一例であり、その他の球形としてもよい。例えば完全な球形としてもよい。なお、図3は、図1に示した頂点tの位置が中心になるようにして示した図である。
【0010】
卵型形状の球形のスピーカボックス101は、例えば木材、合成樹脂などで構成させる。図1,図2の例では、卵型に楕円形状となったスピーカボックス101を、縦長に直立させた状態としてある。スピーカボックス101のサイズとしては、種々のサイズが適用可能であるが、例えば一例としては高さ20cm程度とする。図1,図2の例では、スピーカボックス101の底部についても円形としてあり、そのままでは直立させることが困難であるが、図示しない脚部を底面に取り付けたり、或いは、スピーカボックス101の底面の外側を平面状として、容易に直立状態で設置できる形状としてもよい。
【0011】
卵型形状のスピーカボックス101の側面には、2つのスピーカユニット110(図4)を配置するためのバッフル部101aを構成させてあり、それぞれのバッフル部101aにスピーカユニット配置用の透孔101bが設けてある。但し、本例の場合にはスピーカボックス101が一体に卵型形状をしているので、2つのバッフル部101aは、スピーカボックス101の他の部分と一体に接続された状態となっており、2つのバッフル部101aと他の部分とがほぼ同一の曲率の曲面で連続している。2つのバッフル部101aの透孔101bは、図3に上面から見た状態で示すように、相互に180°離れた位置に配置してある。それぞれのバッフル部101aをスピーカボックス101の他の部分と別体で構成させてもよい。図1の例では、透孔101bは中央から若干下の位置に配置してある。
【0012】
それぞれのバッフル部101aの透孔101bには、図1に示すように、スピーカユニット110の振動板120L,120Rが配置してある。それぞれの振動板120L,120Rは、透孔101bより若干小さいサイズとしてある。
本例の場合には、バッフル部101aそのものが卵形形状に立体的な曲面となっているが、それぞれの振動板120L,120Rの表面についても、それぞれのバッフル部101aと連続した曲面となるように、それぞれのバッフル部101aとほぼ同一の曲率の立体的な曲面に形成させてある。従って、図1に示すように組み立てられた状態では、バッフル部101aと振動板120L,120Rとで連続した曲面が構成され、それぞれの振動板120L,120Rの周囲とそれぞれのバッフル部101aとの間に、環状に溝が配置された状態となっている。なお、図2では2つの振動板120L,120Rの内の一方の振動板120Rが裏側に隠れた状態で破線で示してある。
各スピーカユニット110の振動板120L,120Rの裏側のスピーカボックス101内の空間は、それぞれ壁140(図4参照)で仕切られており、相互に干渉しない構成としてある。
【0013】
それぞれのスピーカユニット110にオーディオ信号を供給する端子(図示せず)については、例えば卵型形状のスピーカボックス101の底面などの比較的目立たない位置に配置する。2つのスピーカユニット110には、同じオーディオ信号を供給して同じ音響を再生させるようにする。この同じオーディオ信号を2つのスピーカユニット110に供給した場合には、スピーカ装置100の周囲360°に同じ音が広がって再生される。
或いは、左側の振動板120Lを有するスピーカユニット110に、左チャンネル用のオーディオ信号を供給し、右側の振動板120Rを有するスピーカユニット110に、右チャンネル用のオーディオ信号を供給して、2チャンネルオーディオ信号によるステレオ再生が行えるようにしてもよい。この2チャンネルオーディオ信号によるステレオ再生を行う構成とした場合には、スピーカ装置100を配置した位置の左側で左チャンネルの音が広がり、スピーカ装置100を配置した位置の右側で右チャンネルの音が広がり、2チャンネルのステレオ再生が、スピーカ装置100を配置した位置を中心として良好に行える。
【0014】
次に、図4を参照して本実施の形態のスピーカ装置100の内部構成例について説明する。スピーカボックス101の内部は、各スピーカユニット110を配置する位置ごとに個別の空間が形成されるように仕切り140で区切ってある。スピーカボックス101の2つのバッフル部101aの各透孔101bには、それぞれ別のスピーカユニット110を配置する。それぞれのスピーカユニット110は、図5に示すように、金属製の円形のフレーム111の内部に各部材を配置して構成される。
図4の断面図に示したように、それぞれのスピーカユニット110は、フレーム111の中央部に、磁石112aとヨーク112bなどで構成される磁気回路112が配置してあり、その磁気回路112のギャップ112cに、コイルボビン113に巻回されたボイスコイル113aを近接して配置してある。ボイスコイル113aには、スピーカ装置の端子(図示せず)から信号線を介してオーディオ信号が供給される構成としてあり、その供給されるオーディオ信号に応じて、コイルボビン113が振動する。
【0015】
コイルボビン113の先端には、振動板120L又は120Rが取り付けてある。図4の例では、コイルボビン113と振動板120L又は120Rとの接続部に、補強材115が取り付けてある。振動板120は、既に説明したように、スピーカボックス101の形状と連続する曲面形状としてあり、振動板120のエッジ部121が、接続部材116を介してフレーム111の外周部111aに接続してある。コイルボビン113は、ダンパ114を介してフレーム111に接続してある。
【0016】
図4に示したように、各スピーカユニット110に取り付けられた振動板120L及び120Rは、側面部122がエッジ部121から若干立ち上がって、その立ち上がった位置から、バッフル部101aと同一曲率の曲面状となるように、若干弓なりに湾曲して突出した状態としてある。このような形状の振動板120L及び120Rは、例えば木材を削りだして構成させるか、或いは、樹脂成型により構成させる等、種々の素材により構成させることが可能である。この図5に示した各スピーカユニット110は、低域音から高域音までを再生する、いわゆるフルレンジ型のスピーカユニットとして構成してある。但し、後述する変形例(図15の例)では、高域音を別のユニットから再生させる構成としてある。
【0017】
図4の説明に戻ると、各スピーカユニット110のフレーム111の外周部111aは、制振材117を介して、スピーカボックス101のバッフル部101aの背面に取り付けてある。
なお、図示はしないが、卵形のスピーカボックス101の内側のほぼ中央となる位置には、吸音材を配置してもよい。
【0018】
このように配置されることで、スピーカユニット110の側面の2カ所に配置された振動板120L及び120Rは、図1や図4に示すように、スピーカボックス101全体の曲面と一体化した曲面として配置されるようになる。また、振動板120L及び120Rは、図4に示すように側面部122がエッジ部121から若干立ち上がる形状としてあるため、バッフル部101aでは振動板120だけが見えた状態となり、フレーム外周部111aなどは隠された形状となる。
【0019】
このように構成される本実施の形態によるスピーカ装置100は、特性として優れたものが得られる。即ち、以下に示す効果を有する。
1)回折効果が少ない。
2)窪みによる特性劣化が無い。
3)指向特性にピークディップが少なくなり良好になる。
4)回折、窪み効果による2次音源が発生しない為、音の解像度が向上する。
5)キャビネット内に定在波がたちにくいので音質が向上する。
6)特に音源(振動板)とキャビネットの形状が、人間における口と頭部形状の関係に似てくるため、音声の再現に優れたシステムになる。
7)キャビネット形状が形状的に強い構造となる為、キャビネット振動が減少し、音質が向上する。
8)定在波、キャビネット振動共に特定の振動が発生しにくい構造となるので、音質が向上する。
【0020】
回折効果が少ない効果は、スピーカユニット110と各振動板120L及び120Rとが卵型で連続した球形であり、従来の角型のバッフルとした場合に、そのバッフルの端部(角部)で発生していた回折効果が減少するためである。窪みによる特性劣化が無い点は、従来のコーン型振動板と異なり、バッフルからの窪みが全くないと共に、振動板とバッフルとがほぼ同一曲率で連続した曲面形状のためである。指向特性の改善についても同様である。音源(振動板)とキャビネットの形状が、人間における口と頭部形状の関係に似てくるため、音声の再現に優れたシステムになる点は、例えば高さ20cm程度の卵型のスピーカボックスとして構成させた場合、そのスピーカボックス(キャビネット)が、人間の頭部に近似した形状となり、人間における口と頭部形状の関係に似た状態となって、人間が話す場合と類似した音声出力状態となるためである。
【0021】
なお、本実施の形態のように卵型として構成した場合、内部定在波の替わりに、キャビネット内のほぼ中心に焦点を結ぶが(卵型は完全な球ではないので焦点は若干分散するが)、その中心位置に吸音材を配置することで、効果的に内部音を吸音することが出来る。従来の角型のスピーカボックスの場合には、定在波などを防止するために吸音材を配置する場合には、キャビネットの背面などに沿って比較的多量の吸音材を配置する必要があったが、本例の場合には、ほぼ焦点位置に相当する中心位置の近傍に比較的少ない量の吸音材を配置するだけで、キャビネット内の中心位置に集まった音が効果的に吸音され、少ない量の吸音材で高い効果が得られる。
【0022】
そして本実施の形態のスピーカ装置の場合には、2つのスピーカユニット110を、ほぼ180°異なる位置に配置したことで、スピーカ装置100の周囲360°でほぼ均一な特性で音響再生されるようになる。
図6は、本実施の形態のスピーカ装置の1つのスピーカユニット110から出力される音の水平面での360°の指向特性を各周波数帯域で示した図であり、0°が正面である。図6(a)が本実施の形態の例であり、図6(b)が比較のために示した従来の箱形のスピーカボックスでコーン形スピーカユニットを使用した例である。図6に示した各数値は周波数の値であり、ここでは1000Hz,2000Hz,7000Hz,20000Hzを示してある。1000Hzが実線、2000Hzが破線、7000Hzが一点鎖線、20000Hzが二点鎖線で示してある。
図6(b)に示した従来のスピーカ装置の場合には、周波数が高くなるに従って、背面側でかなりのレベル低下があり、正面から90°の角度でも、高域になるに従って大きな下ベル低下があることがわかる。これに対して、図6(a)の本実施の形態のスピーカ装置の場合には、正面から±90°を越える範囲で、高域までほぼ均一なレベルが維持されていることが判る。
従って、図1〜図4に示したように2つのスピーカユニット110を180°異なる位置に配置することで、それぞれのスピーカユニット110の振動板120L又は120Rから出力される音は、正面から±90°の範囲内の音となり、スピーカ装置に対してどの角度位置にいる人に対しても、周波数特性が良好な音を聞かせることができるようになる。
先に説明したように、2つのスピーカユニット110に同じオーディオ信号を供給した場合には、どの角度位置にいるリスナーに対しても、同じ音を聞かせることが可能となる。また、2つのスピーカユニット110に2チャンネルのステレオオーディオ信号の各チャンネルの信号を供給した場合には、位置に応じたチャンネルの音を聞かせることが可能となる。
【0023】
次に、本発明の他の実施の形態の例について、図7以降の図を参照して順に説明する。この図7以降の図において、一実施の形態の例として説明した図1〜図6に対応する部分には同一符号を付す。
まず、図7及び図8を参照して、卵型形状の球形のスピーカボックス101を有するスピーカ装置100のバッフル部101aへのスピーカユニットの振動板の取付け状態の他の例を示す。図7は斜視図であり、図8は断面図である。
この図7及び図8の例のスピーカ装置100では、図7に示すように、各振動板120L,120Rの縁部に、突起状のリブ123を環状に設ける。そして、図8に断面で示すように、そのリブ123の縁をスピーカユニット110のフレーム111の縁部と接続させてあり、そのフレーム111の縁部を、透孔101bの縁に接着させて、バッフル部101aに取付ける構成とする。その他の部分は、図1例のスピーカ装置100と同様に構成する。
【0024】
この図7,図8例のスピーカ装置100の場合には、図7に示すように各振動板120L,120Rとバッフル部101aとの間に、突起状のリブ123が存在することになるが、このリブ123の突出量はわずかであり、スピーカ装置全体の球形形状が持つ特性の良さを損なうことがなく、図1例のスピーカ装置に場合と同様の良好な指向特性などが得られる。
【0025】
次に、図9及び図10を参照して、スピーカユニット110を3個配置した例について説明ずる。図9は正面から見た図であり、図10は上面から見た図である。図9及び図10において、tは卵型形状の球形のスピーカボックス101の頂点を示し、図10はその頂点を中心に示してある。
【0026】
この例では、図10に示すように、卵型形状の球形のスピーカボックス101を有するスピーカ装置100の側面に、120°間隔で均等に3つのバッフル部101aを配置して、それぞれのバッフル部101aに透孔101bを設ける。各バッフル部101aの裏側のスピーカボックス101内の空間は、それぞれ個別に仕切られた空間として、各スピーカユニット110が相互に干渉しない構成としてある。それぞれの透孔101bには、それぞれ別のスピーカユニット110を配置し、3つの振動板120X,120Y,120Zが透孔101bに収まるようにする。図9では、2つの振動板120X,120Yが見えた状態となっており、裏側の振動板120Zは破線で示してある。
【0027】
このように3つのスピーカユニットの振動板120X,120Y,120Zを配置することで、卵型形状の球形のスピーカボックス101の側面から、3つの方向に音が出力されることになり、スピーカボックス101の周囲のどの角度位置にいる人に対しても、周波数特性が良好な音を聞かせることができるようになる。即ち、既に説明した図6に示したように、本例のスピーカ装置として構成させることで、1つの振動板から出力される音の周波数特性が、広い角度範囲で良好であるが、図1例のように180°間隔で2つのスピーカ装置を設ける場合よりも、さらに周波数特性が良好な角度範囲で使用でき、スピーカ装置としての特性を改善できる。
【0028】
3つの振動板120X,120Y,120Zを駆動するスピーカユニットには、全て同じオーディオ信号を供給する。或いは、複数チャンネルのオーディオ信号を供給する構成としてもよい。
【0029】
次に、図11及び図12を参照して、スピーカユニット110を2個配置すると共に、その2個のスピーカユニット110の振動板120L,120Rの配置状態を、図1の例とは変えた例について説明する。図11は正面から見た図であり、図12は上面から見た図である。図11及び図12において、tは卵型形状の球形のスピーカボックス101の頂点を示し、図12はその頂点を中心に示してある。
【0030】
この例では、図12に示すように、卵型形状の球形のスピーカボックス101を有するスピーカ装置100の側面に、180°よりも短い間隔(例えば120°間隔)で2つのバッフル部101aを配置して、それぞれのバッフル部101aに透孔101bを設ける。それぞれの透孔101bには、それぞれ別のスピーカユニット110を配置し、2つの振動板120L,120Rが透孔101bに収まるようにする。各バッフル部101aの裏側のスピーカボックス101内の空間は、それぞれ個別に仕切られた空間として、各スピーカユニット110が相互に干渉しない構成としてある。
【0031】
このように2つのスピーカユニットの振動板120L,120Rを近接して配置することで、卵型形状の球形のスピーカボックス101から、ある程度周波数特性に方向を持って音が出力されることになる。即ち、例えば振動板120Lから左チャンネルのオーディオ信号を出力させ、振動板120Rから右チャンネルのオーディオ信号を出力させることで、スピーカボックス101のほぼ正面(図11に示した面)を向いた人に対して、左右双方のチャンネルのオーディオを良好な周波数特性で聞かせることが可能になる。2つの振動板120L,120Rを駆動するスピーカユニットに、全て同じオーディオ信号を供給するようにしてもよい。
【0032】
次に、図13及び図14を参照して、スピーカユニット110を5個配置した例について説明ずる。図13は正面から見た図であり、図14は上面から見た図である。図13及び図14において、tは卵型形状の球形のスピーカボックス101の頂点を示し、図14はその頂点を中心に示してある。
【0033】
この例では、図13に示すように、卵型形状の球形のスピーカボックス101を有するスピーカ装置100の側面に、5つのバッフル部101aを配置して、それぞれのバッフル部101aに透孔101bを設ける。5つの透孔101bには、それぞれ別のスピーカユニット110を配置し、5つの振動板120L,120R,120C,120RL,120RRが透孔101bに収まるようにする。図13では、3つの振動板120L,120R,120Cが見えた状態となっており、裏側の振動板120RL,120RRは破線で示してある。図13から判るように、5つの振動板120L,120R,120C,120RL,120RRは、この例では均等な間隔では配置していないが、均等な角度位置ごとに5つを配置してもよい。各バッフル部101aの裏側のスピーカボックス101内の空間は、それぞれ個別に仕切られた空間として、各スピーカユニット110が相互に干渉しない構成としてある。
【0034】
このように5つのスピーカユニットの振動板120L,120R,120C,120RL,120RRを配置することで、卵型形状の球形のスピーカボックス101の側面から、5つの方向に音が出力されることになり、スピーカボックス101の周囲のどの角度位置にいる人に対しても、周波数特性が良好な音を聞かせることができるようになる。
【0035】
5つの振動板120L,120R,120C,120RL,120RRを駆動するスピーカユニットには、全て同じオーディオ信号を供給する場合と、複数チャンネルのオーディオ信号を供給する場合のいずれでもよい。
複数チャンネルのオーディオ信号を供給する場合には、例えば、振動板120Lから左フロントチャンネルのオーディオ信号を出力させ、振動板120Rから右フロントチャンネルのオーディオ信号を出力させ、振動板120Cからセンターチャンネルのオーディオ信号を出力させ、振動板120RLから左リアーチャンネルのオーディオ信号を出力させ、振動板120RRから右リアーチャンネルのオーディオ信号を出力させる。
【0036】
このように5チャンネルの信号をそれぞれ別のスピーカユニットの振動板から出力させることで、1つのスピーカ装置100を使って、5つの方向にそれぞれの方向に適した音を出力させることが可能となり、マルチチャンネルオーディオを、1つのスピーカ装置100だけで良好に再生できるようになる。
【0037】
次に、図15を参照して、各スピーカユニットを2ウェイ構成とした例について説明ずる。図15の例は、図1の例と同様に、2つのスピーカユニット110の振動板120L,120Rを、ほぼ180°間隔で配置した例である。この例では、各バッフル部101aの振動板120L,120R配置位置の上側に、高域音を再生するツィータ用スピーカユニット130L,130Rを配置した構成としたものである。従って、ツィータ用スピーカユニット130L,130Rについても、ほぼ180°間隔で配置してある。この場合、各振動板120L,120Rからは、低域音及び中域音の出力を行い、ツィータ用スピーカユニット130L,130Rからは高域音の出力を行う。
2チャンネルオーディオ信号を供給する場合には、振動板120Lを駆動するスピーカユニットと、ツィータ用スピーカユニット130Lとに、左チャンネルのオーディオ信号を供給し、振動板120Rを駆動するスピーカユニットと、ツィータ用スピーカユニット130Rとに、右チャンネルのオーディオ信号を供給する。
このように複数配置したそれぞれのスピーカユニットを、高域とそれ以外の帯域との2ウェイ構成としたことで、スピーカユニットとしてそれぞれ周波数特性に優れたものが使用でき、よりスピーカ装置として良好な特性とすることができる。
なお、図15の例では、図1のスピーカ装置を2ウェイ構成とした例を示したが、図9,図11,図13の構成のスピーカ装置を、同様に2ウェイ構成としてもよい。
【0038】
なお、ここまで説明した実施の形態では、振動板とバッフルとがほぼ同一曲率で連続した曲面形状と説明したが、ここでのほぼ同一曲率で連続した曲面形状とは、必ずしも振動板とバッフルとの曲率が同じであることを意味するのではない。本発明の場合には、ここまでの説明から判るように、スピーカ装置を表面から見て、振動板とバッフルとが連続したように見える曲面になっていることを意味しており、それぞれの曲率が異なっても問題はない。また、図1〜図4の例では、卵形状のスピーカボックスの曲率の緩い曲面(大きな曲率)の箇所に振動板を配置したが、卵形状の頂点部(例えば図1の上側)に透孔を設けて、その透孔に振動板を配置した構成としてもよい。この場合には、バッフル部よりも振動板の方が、曲率が小さくなるが、このような形状も本発明でのほぼ同一曲率で連続した曲面形状に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の一実施の形態によるスピーカ装置の例を示す正面側の斜視図である。
【図2】本発明の一実施の形態によるスピーカ装置の斜め左側の斜視図である。
【図3】本発明の一実施の形態によるスピーカ装置を上面から見た上面図である。
【図4】本発明の一実施の形態によるスピーカ装置の例を示す断面図である。
【図5】本発明の一実施の形態によるスピーカユニットの例を示す斜視図である。
【図6】本発明の一実施の形態によるスピーカ装置の指向特性の例(a)と、従来の指向特性の例(b)を示した特性図である。
【図7】本発明の他の実施の形態によるスピーカ装置の例(エッジを直接接続した例)を示す正面側の斜視図である。
【図8】図7例の断面図である。
【図9】本発明の他の実施の形態によるスピーカ装置の例(3つのユニットの例)を示す正面側の斜視図である。
【図10】図9例のスピーカ装置を上面から見た上面図である。
【図11】本発明の他の実施の形態によるスピーカ装置の例(2つのユニットを近づけた例)を示す正面側の斜視図である。
【図12】図11例のスピーカ装置を上面から見た上面図である。
【図13】本発明の他の実施の形態によるスピーカ装置の例(5つのユニットの例)を示す正面側の斜視図である。
【図14】図13例のスピーカ装置を上面から見た上面図である。
【図15】本発明の他の実施の形態によるスピーカ装置の例(2ウェイ構成の例)を示す正面側の斜視図である。
【図16】従来のスピーカ装置の構成例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0040】
100…スピーカ装置、101…スピーカボックス、101a…バッフル部、101b…透孔、110,110…スピーカユニット、111…フレーム、111a…フレーム外周部、112…磁気回路、112a…磁石、112b…ヨーク、112c…ギャップ、113…コイルボビン、113a…ボイスコイル、114…ダンパ、115…補強材、116…接続部材、117…制振材、120C,120L,120R,120RL,120RR,120X,120Y,120Z…振動板、121…エッジ部、122…側面部、123…リブ、130L,130R…ツィータ用スピーカユニット、140…仕切り
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャビネットに複数のスピーカユニットを収納させて構成されるスピーカ装置において、
前記キャビネットのバッフル面を所定の曲率で外側に突出した曲面とし、
前記複数のスピーカユニットが備えるそれぞれの振動板を、前記所定の曲率とほぼ同一の曲率で外側に突出した形状とし、
前記複数の振動板を前記バッフル面のそれぞれ異なる位置から露出させて、ほぼ連続した曲率の曲面形状となるように配置したことを特徴とするスピーカ装置。
【請求項2】
請求項1記載のスピーカ装置において、
前記バッフル面が取り付けられたスピーカボックス全体についても、バッフル面の曲面と連続する曲面として、スピーカボックスを球形としたことを特徴とするスピーカ装置。
【請求項3】
請求項1記載のスピーカ装置において、
前記複数の振動板で構成されるそれぞれのスピーカユニットに、それぞれ別のチャンネルのオーディオ信号を供給して、ステレオ音響が再生されるようにしたことを特徴とするスピーカ装置。
【請求項1】
キャビネットに複数のスピーカユニットを収納させて構成されるスピーカ装置において、
前記キャビネットのバッフル面を所定の曲率で外側に突出した曲面とし、
前記複数のスピーカユニットが備えるそれぞれの振動板を、前記所定の曲率とほぼ同一の曲率で外側に突出した形状とし、
前記複数の振動板を前記バッフル面のそれぞれ異なる位置から露出させて、ほぼ連続した曲率の曲面形状となるように配置したことを特徴とするスピーカ装置。
【請求項2】
請求項1記載のスピーカ装置において、
前記バッフル面が取り付けられたスピーカボックス全体についても、バッフル面の曲面と連続する曲面として、スピーカボックスを球形としたことを特徴とするスピーカ装置。
【請求項3】
請求項1記載のスピーカ装置において、
前記複数の振動板で構成されるそれぞれのスピーカユニットに、それぞれ別のチャンネルのオーディオ信号を供給して、ステレオ音響が再生されるようにしたことを特徴とするスピーカ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2010−81441(P2010−81441A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−249278(P2008−249278)
【出願日】平成20年9月26日(2008.9.26)
【出願人】(506150146)ビフレステック株式会社 (16)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年9月26日(2008.9.26)
【出願人】(506150146)ビフレステック株式会社 (16)
【Fターム(参考)】
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