説明

スピーカ装置

【課題】 磁気回路部を薄型にでき、しかも駆動負荷が小さく駆動効率の良い「スピーカ装置」を提供する。
【解決手段】 スピーカ装置1は筐体2に振動部11が振動自在に支持されており、振動部11に一対のシート状の駆動部13,13が連結されている。駆動部13の第1の対向部13bは磁気回路部20の第1の案内ギャップG1でZ方向へ案内され、第2の対向部13cは第2の案内ギャップG2でX方向へ案内され、第1の案内ギャップG1と第2の案内ギャップG2との間で、駆動部13が湾曲している。第1の対向部13bと第2の対向部13cにボイスコイルを設け、第1の案内ギャップG1と第2の案内ギャップG2を横断する磁路を形成することで、振動部11がZ方向に駆動される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイルと磁気回路とによる駆動力で振動部が振動させられるスピーカ装置に係り、特に薄型化を可能としたスピーカ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されたスピーカ装置は、振動板がダンパーで振動自在に支持されているとともに、振動板と一緒に動作するボビンが設けられている。ボビンは絶縁フィルムで形成され、絶縁フィルムに互いに逆方向に電流が流れる2箇所のコイル部分が設けられている。筐体側には、2つの磁気ギャップを有する磁気回路部が設けられ、それぞれのコイル部分が2つの磁気ギャップのそれぞれの内部に位置している。
【0003】
特許文献2に記載されたスピーカ装置は、一方向へ湾曲した振動板を有しており、振動板の両縁部がゴムなどの弾性部材を介してフレームに支持されている。振動板の一方の縁部にボイスコイルが形成されており、ボイスコイルは電流が互いに逆向きに流れる2箇所の直線状部分を有している。フレームに2つの磁気ギャップを有する磁気回路部が設けられ、それぞれの直線状部分が2つの磁気ギャップのそれぞれの内部に位置している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第2553478号公報
【特許文献2】特開2009−278523号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1と特許文献2に記載されたスピーカ装置は、いずれも2つの磁気ギャップの内部にコイルが位置することで音圧を高める構造を採用している。しかし、2つの磁気ギャップが、振動板の主な振動方向に沿う向きに距離を空けて配置されているため、磁気回路部の厚さ寸法が大きくなり、薄型のスピーカ装置を構成しにくい。
【0006】
また、特許文献2に記載されたスピーカ装置は、可撓性のシート材が一方向へ湾曲して振動板とボビンとが一体化されている。しかし、振動板はその両端がゴムなどの弾性部材を介してフレームに支持されているため、振動板の振動の際の抵抗が大きい。また、ボイスコイルは振動板の一方の縁部にのみ設けられているため、大きな音圧が発生しにくい。
【0007】
本発明は上記従来の課題を解決するものであり、駆動部を振動体の主たる振動方向と交叉する向きに駆動することで、全体を薄型化しやすいスピーカ装置を提供することを目的としている。
【0008】
また、本発明は、振動板の支持抵抗を小さくして十分な音圧を発生させることが可能なスピーカ装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、振動部と、前記振動部に連続するシート状の駆動部と、前記駆動部に設けられたコイルと、前記コイルを横断する磁界を発生する磁気回路部とを有するスピーカ装置において、
前記駆動部を、前記振動部の主たる振動方向に往復移動できるように案内する第1の案内ギャップと、前記振動部の主たる振動方向と交叉する方向へ往復移動できるように案内する第2の案内ギャップとが設けられ、シート状の前記駆動部が、前記第1の案内ギャップと前記第2の案内ギャップとの間で湾曲しており、
前記コイルは、前記駆動部の少なくとも前記第2の案内ギャップに位置する箇所に設けられ、少なくとも前記第2の案内ギャップに、前記コイルを横断する磁路が形成されていることを特徴とするものである。
【0010】
本発明のスピーカ装置は、シート状の駆動部が湾曲して全体が薄型化されているが、シート状の駆動部が、第1の案内ギャップと第2の案内ギャップとに案内されることで、比較的低負荷で、湾曲している駆動部および振動部を振動させることができる。また、第2の案内ギャップに磁路が形成されて、第2の案内ギャップに位置するコイルに駆動力を与えることで、磁気回路も薄型に構成することが可能になる。
【0011】
本発明は、前記コイルは、前記駆動部の前記第1の案内ギャップに位置する箇所と前記第2の案内ギャップに位置する箇所の双方に設けられ、前記第1の案内ギャップと前記第2の案内ギャップの双方に、前記コイルを横断する磁路が形成されているものが好ましい。
【0012】
第1の案内ギャップと第2の案内ギャップの双方で駆動部に磁気駆動力を与えることで、薄型で且つ大きな音圧を与えることが可能になる。
【0013】
本発明は、前記磁気回路部は、磁石と、磁石の一方の極に配置された第1の磁性体ヨークと、前記磁石の他方の極に配置された第2の磁性体ヨークと、前記第1の磁性体ヨークと前記第2の磁性体ヨークの双方に対向する第3の磁性体ヨークとを有しており、前記第1の磁性体ヨークと前記第3の磁性体ヨークとの対向部に前記第1の案内ギャップが形成され、前記第2の磁性体ヨークと前記第3の磁性ヨークとの対向部に前記第2の案内ギャップが形成されているものとして構成できる。
【0014】
上記構造では、少ない数の磁性体ヨークを設けることで、第1の案内ギャップと第2の案内ギャップを構成でき、しかも両案内ギャップに磁束を集中させることができる。
【0015】
本発明は、前記振動部と前記駆動部とを、可撓性のシート材で一体に形成することが可能である。
【0016】
本発明は、前記駆動部を構成するシート材の一部が分離されてダンパー部が形成され、前記ダンパー部が筐体に固定されて、前記振動部と前記駆動部が筐体に対して往復移動自在に支持されているものとして構成できる。
【0017】
シート材で形成された駆動部の一部を切り出してダンパー部を形成することで、振動板や駆動部に接合される別部材のダンパー材を設ける必要がなく、しかもシート材の一部でダンパー部を形成することで、振動板を低負荷で駆動しやすくなる。
【0018】
あるいは、本発明は、前記振動部と前記駆動部を筐体に支持する支持部が設けられておらず、前記振動部が、前記第1の案内ギャップと前記第2の案内ギャップの内部に位置する前記駆動部によって振動自在に支持されているものであってもよい。
【0019】
上記構成では、シート状の駆動部が湾曲させられて、第1の案内ギャップと第2の案内ギャップとで駆動部が往復移動自在に支持されているので、ダンパー部を設けなくても、振動部と駆動部を振動自在に支持することができる。ダンパー部を設けないので、振動部を低負荷で駆動できるようになる。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、第2の案内ギャップで主たる振動方向と交叉する向きの磁気駆動力を発生させているため、全体を薄型に構成できる。シート状の駆動部が第1の磁気ギャップと第2の磁気ギャップで案内されているため、振動部が湾曲していても、駆動部をスムースに振動でき、薄型であっても駆動負荷を比較的小さくできる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1の実施の形態のスピーカ装置の全体構造を示す斜視図、
【図2】第1の実施の形態のスピーカ装置の振動部と駆動部およびダンパー部と、これを支持する筐体側の構造を示す分解斜視図、
【図3】磁気ギャップにおける駆動部の支持構造を示す図1のIII−III線での断面図、
【図4】本発明の第2の実施の形態のスピーカ装置を示す断面図、
【図5】第2の実施の形態のスピーカ装置に設けられた振動部と駆動部の斜視図、
【図6】第2の実施の形態のスピーカ装置に設けられた振動部と駆動部の他の例を示す斜視図、
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1ないし図3に示す第1の実施の形態のスピーカ装置1は、筐体2を有している。筐体2は合成樹脂材料または非磁性の金属材料で形成されている。
【0023】
図2に示すように、筐体2は底板部3と側壁部4,4とが一体に形成されている。側壁部4,4はX方向において対向し、Y方向へ互いに平行に延びている。側壁部4,4の上端部には、X方向に所定の幅寸法を有してY方向に平行に延びる第1のダンパー支持部4a,4aが形成されている。側壁部4,4の対向する内面には、Y−Z平面と平行なヨーク支持面4b,4bが形成されている。
【0024】
筐体2には、Y方向に間隔を空けて一対の支持部材5,5が設けられている。それぞれの支持部材5は合成樹脂材料などの非磁性材料で形成されている。支持部材5の下面5aは、筐体2の底板部3の上面に接着などの手段で固定されている。支持部材5の上部の中央部には、第2のダンパー支持面5bが形成されている。
【0025】
図2と図3に示すように、振動部11は筐体2の上方の開口部を覆うように配置されている。振動部11は、薄板状またはさらに薄いシート状である。例えば、薄い樹脂板またはさらに薄い樹脂シート、または紙材に樹脂が含浸した補強紙、あるいは樹脂シートと紙材との積層体など、可撓性と弾性を有する材料で形成されている。
【0026】
振動部11は、互いに平行でY方向に延びる縁部11a,11aを有している。この縁部11aに第1のダンパー部12が接合されている。第1のダンパー部12は振動部11とは別体に形成されたものであり、薄板状またはさらに薄いシート状である。第1のダンパー部12は、振動部11と同種の材料で形成されている。
【0027】
第1のダンパー部12の内縁部12aは振動部の縁部11aと接着剤によって接合されている。第1のダンパー部12の外縁部12bは、筐体2の側壁部4の上端部に形成された第1のダンパー支持部4aに接着されて固定されている。第1のダンパー部12は、内縁部12aと外縁部12bとの間に弾性変形部12cが形成されている。弾性変形部12cはX方向へのみ曲率を有してZ方向に向けて突出しており、弾性変形部12cはY方向に延びている。
【0028】
振動部11の両縁部11a,11aのそれぞれには駆動部13,13が連結されている。駆動部13,13は、可撓性のシート材で形成されてX方向に対向しY方向に平行に延びている。駆動部13,13は、可撓性のシート材で形成されている。可撓性のシート材は、ポリイミドやポリアミドなどの絶縁性で可撓性であり弾性力を発揮できる樹脂シートである。それぞれの駆動部13の上縁部13aは、第1のダンパー部材12の内縁部12aに接着されて接合されている。または上縁部13aが、振動部11の縁部11aに接着されて接合されている。
【0029】
2つの駆動部13,13は1枚のシート材から加工されたものであり、図1と図2に示すように、2つの駆動部13,13の縁部どうしを結ぶ連結片14が一体に設けられている。連結片14は、駆動部13,13のY方向に向く両端部において、それぞれの駆動部13,13から分離して延びている。それぞれの連結片14は、一方の駆動部13から連続してループ状に湾曲して弾性変形可能な第2のダンパー部14aと、他方の駆動部から連続してループ状に湾曲した第2のダンパー部14aと、2つの第2のダンパー部14a,14aの間に形成された固定部14bとを有している。
【0030】
図1に示すように、前記固定部14b,14bが、それぞれ前記支持部材5,5に形成された第2のダンパー支持面5b,5bに接着されて固定されている。
【0031】
振動部11の両側部が弾性変形可能な第1のダンパー部12,12で支持され、X方向に対向する一対の駆動部13が、Y方向の両端部において、変形可能な第2のダンパー部14aで支持されているため、振動部11と駆動部13,13が一体となって主な振動方向であるZ方向へ振動可能である。また、駆動力が作用していないときに、振動部11と駆動部13,13が、振動方向(Z方向)での振幅の中立位置に復帰しやすくなっている。
【0032】
特に、駆動部13,13のY方向の両端部がそれぞれ連結片14で連結され、この連結片14に第2のダンパー部14a,14aが形成されているため、2つの駆動部13がX方向の対向間隔を維持した状態で、Z方向へ振動できるようになっている。
【0033】
筐体2の側壁部4,4で挟まれ且つ一対の前記支持部材5,5で挟まれた内部空間に磁気回路部20が収納されている。
【0034】
図3に示すように、磁気回路部20は、磁石21を有している。磁石21はZ方向に向く上面21aと下面21bとを有し、上面21aと下面21bの一方がN極で他方がS極に着磁されている。磁石21の上面21aに第1の磁性体ヨーク22が接合され、下面21bに第2の磁性体ヨーク23が接合されている。第1の磁性体ヨーク22と第2の磁性体ヨーク23は、互いに平行に対面する板形状である。第2の磁性体ヨーク23のX方向の幅寸法は第1の磁性体ヨーク22のX方向の幅寸法よりも大きく、第2の磁性体ヨーク23の両端部は、第1の磁性体ヨーク22よりもX方向の両側へ突出している。
【0035】
磁石21および第1の磁性体ヨーク22と第2の磁性体ヨーク23は、Y方向に長く延びている。第2の磁性体ヨーク23の下面が筐体2の底板部3の上面に接着などの手段で固定されて、筐体2の内部で、磁石21および第1の磁性体ヨーク22と第2の磁性体ヨーク23の位置が決められている。
【0036】
図3に示すように、筐体2の側壁部4,4の内面であるヨーク支持面4b,4bにそれぞれ第3の磁性体ヨーク24が接着されて固定されている。第3の磁性体ヨーク24,24はX方向に間隔を空けて、Y方向に長く延びている。
【0037】
第1の磁性体ヨーク22の左右の側端面22a,22aと、それぞれの第3の磁性体ヨーク24,24の側端面24a,24aとの対向部に第1の案内ギャップG1,G1が形成されている。側端面22aと側端面24aはY−Z平面と平行な平面であり、それぞれの第1の案内ギャップG1は、X方向に微小間隔の隙間を有して、Z方向およびY方向に延びている。
【0038】
第2の磁性体ヨーク23の上面23aと、それぞれの第3の磁性体ヨーク24,24の下面24b,24bとの対向部に第2の案内ギャップG2,G2が形成されている。上面23aと下面24bはX−Y平面と平行な平面であり、それぞれの第2の案内ギャップG2は、Z方向に微小間隔の隙間を有して、X方向およびY方向に延びている。
【0039】
それぞれの駆動部13は、第1の案内ギャップG1の内部に対向する第1の対向部13bと第2の案内ギャップG2の内部に対向する第2の対向部13cとを有している。第1の対向部13bと第2の対向部13cとの間に湾曲部13dが形成されている。湾曲部13dは、平面状のシート材で形成された駆動部13を強制的に弾性変形させて形成されたものである。あるいは、駆動部13を構成するシート材に予め湾曲形状の曲げ癖を付しておいてもよい。
【0040】
図2に示すように、それぞれの駆動部13の表面にボイスコイルパターン15が設けられている。ボイスコイルパターン15は、駆動部13を構成するシート材の表面に形成された導電体の薄膜パターンで形成され、その表面が有機絶縁膜で覆われている。ボイスコイルパターン15は、第1の対向部13bに位置する電流路15aと第2の対向部13cに位置する電流路15bを有している。ボイスコイルパターン15は、電流路15aと電流路15bとを複数巻きに周回するパターンで形成されており、電流路15aでは、Y方向のいずれかの向きに電流が直線的に流れ、電流路15bでは、電流が前記電流路15aと逆向きでY方向に直線的に流れる。
【0041】
このスピーカ装置1は、シート状の駆動部13が、第1の案内ギャップG1によって主な振動方向であるZ方向へ案内され、第2の案内ギャップG2によりZ方向と直交するX方向へ案内されているが、シート状の駆動部13は、第1の案内ギャップG1と第2の案内ギャップG2との間で湾曲している。そのため、振動部11に大きな負荷を与えることなく、振動部11をZ方向へ振動させることが可能である。
【0042】
磁気回路部20では、磁石21から第1の磁性体ヨーク22を経て第1の案内ギャップG1を横断し、第3の磁性体ヨーク24内を通り、第2の案内ギャップG2を横断して第2の磁性体ヨーク23に至る磁路が形成され、また前記と逆経路の磁路が形成される。ボイスコイルパターン15では、第1の案内ギャップG1内に位置する電流路15aと第2の案内ギャップG2内に位置する電流路15bとで、Y方向への電流方向が逆向きになる。したがって、駆動部13の第1の対向部13bと第2の対向部13cに対して、振動部11を同じ方向に振動するための駆動力が作用する。
【0043】
前記のように、シート状の駆動部13が比較的低負荷で駆動できるように案内されているため、ボイスコイルパターン15に通電されるボイス電流に対して振動部11が応答性良く振動し、音圧も大きくできる。特に、スピーカ装置1を高音発生用のツイータとして使用すると、振動部11と駆動部13が小さな振幅で応答性良く振動できるようになる。また、第1の案内ギャップG1と第2の案内ギャップG2に、磁性を有し且つ所定の粘度を有する磁性流体を介在させると、ボイスコイルパターン15に磁束を集中させることができ、且つ駆動部13の振動負荷を低減させることができるようになる。
【0044】
駆動部13が第1の対向部13bと第2の対向部13cとの間で湾曲しており、第2の対向部13cを水平方向であるX方向に振動する構成であるため、駆動回路部20とボイスコイルパターン15との対向部のZ方向の寸法を短くできる。特に、第2の案内ギャップG2が、第2の磁性体ヨーク23の上面23aと第3の磁性体ヨーク24の下面24bとの対向部で形成されているため、磁気回路部20のZ方向の寸法を、磁石21と第1の磁性体ヨーク22および第2の磁性体ヨーク23の3つの部材の厚さ寸法の合計に一致させることができ、薄型化を構成しやすくなる。
【0045】
図4は第2の実施の形態のスピーカ装置101を示している。
このスピーカ装置101の筐体102は、底板部103と両側の側壁部104,104を有しており、それぞれの側壁部104の内面にヨーク支持面104aが形成されている。筐体102の内部に、磁気回路部20が収納されている。磁気回路部20は、第1の実施の形態のスピーカ装置1に使用されたものと同じであり、磁石21と第1の磁性体ヨーク22と第2の磁性体ヨーク23ならびに一対の第3の磁性体ヨーク24,24を有している。第2の磁性体ヨーク23は、筐体102の底板部103の上面に固定されており、それぞれの第3の磁性体ヨーク24は、ヨーク支持面104aに固定されている。
【0046】
第1の磁性体ヨーク22と第3の磁性体ヨーク24との対向部に、Z方向に延びる第1の案内ギャップG1が形成され、第2の磁性体ヨーク23と第3の磁性体ヨーク24との対向部に第2の案内ギャップG2が形成されている。第1の案内ギャップG1は一定幅の隙間でZ方向に延びており、第2の案内ギャップG2は一定幅の隙間でX方向に延びている。
【0047】
スピーカ装置101には、振動部111と駆動部113,113とが一体化された可撓性シート110が搭載されている。可撓性シート110は、絶縁性で薄くて可撓性であり且つ弾性力を発揮できるシート材料で形成されており、例えば、ポリイミドやポリアミドなどの樹脂シート、樹脂が含浸した紙材、紙材と樹脂シートとのラミネート材などで形成されている。
【0048】
図5にも示すように、可撓性シート110は長方形であり、Y方向に湾曲しておらず、X方向にのみ曲率を有するように湾曲させられて使用される。可撓性シート110は平面状に形成されて、湾曲形状に弾性変形させられて使用される。あるいは、可撓性シート110に予め図5に示す形状に近い湾曲形状の曲げ癖を付けておいてもよい。
【0049】
可撓性シート110は、振動部111と駆動部113,113との明確な境界部を有していないが、図4に示すように、磁気回路部20からZ方向の前方へ突出して湾曲している部分が振動部111であり、磁気回路部20の内部に位置している部分が駆動部113,113である。
【0050】
それぞれの駆動部113は、第1の案内ギャップG1の内部に対向する第1の対向部113bと、第2の案内ギャップG2の内部に対向する第2の対向部113c、および第1の案内ギャップG1と第2の案内ギャップG2との間で湾曲する湾曲部113dを有している。
【0051】
図5では省略されているが、それぞれの駆動部113の表面に、図2に示したようなボイスコイルパターン15が形成されており、第1の案内ギャップG1内にボイスコイルパターン15の電流路15aが位置し、第2の案内ギャップG2内に他方の電流路15bが位置している。
【0052】
図4と図5に示すスピーカ装置101は、振動部111と駆動部113,113とが一枚の可撓性シート110で一体に形成されているため、部品点数を削減することができる。ただし、振動部111と駆動部113,113が別々の可撓性シートで形成され、互いに貼り合わされて一体化されたものであっても、実質的に1枚のシートとして取り扱うことができるため、同じくスピーカ装置101を構成する部品の数を減らすことができる。
【0053】
図5に示すように、可撓性シート110は、筐体102に対してダンパー部やその他の支持部によって支持されておらず、可撓性シート110は、駆動部113,113が、第1の案内ギャップG1,G1と第2の案内ギャップG2,G2の内部に挿入されることで支持されており、このように支持された駆動部113,113によって振動部111が支えられている。この構造では、可撓性シート110の両側部を磁気回路部20の内部に差し込むだけで組み立てられるため、組立作業がきわめて容易である。
【0054】
ボイスコイルパターン15にボイス電流が与えられると、駆動部113の第1の対向部113bにZ方向への駆動力が与えられ、第2の対向部113cにX方向への駆動力が与えられて、振動部111が主な振動方向であるZ方向へ振動する。
【0055】
このスピーカ装置101を、高音用に使用すると、駆動部113,113に与えられる駆動力の振幅がわずかであるため、駆動部113,113と振動部111がダンパー部で支持されていなくても、可撓性シート110の自らの弾性力により使用時に駆動部113,113と磁気回路部20との相対位置がずれにくい。このスピーカ装置101は、ダンパー部を有していないため、振動部111と駆動部113,113に筐体102に支持さえるための支持構造の負荷が作用しないため、ボイスコイルパターン15に与えられるボイス電流によって、振動部111を振動させるときの効率がきわめて良くなる。
【0056】
また、第1の案内ギャップG1,G1と第2の案内ギャップG2,G2に磁性流体を介在させておくと、この磁性流体の粘度がダンパーとして機能し、駆動部113,113に駆動力が作用していないときに、駆動部113,113を中立位置に復帰させやすくなる。
【0057】
図4に示すスピーカ装置101において、図6に示す可撓性シート110Aを使用することが可能である。図6に示す可撓性シート110Aは、図5に示したものと同様に、振動部111と駆動部113,113とが一体化されている。
【0058】
可撓性シート110AのY側の両端部では、その一部が分離されており、駆動部113,113の間を繋ぐ連結片114,114が形成されている。それぞれの連結片114は、湾曲変形したダンパー部114a,114aと、両ダンパー部114a,114aの間に位置する固定部114bを有している。
【0059】
筐体102には、図2に示したのと同じ支持部材5,5が固定されており、連結片114,114の固定部114b,114bがそれぞれ、支持部材5のダンパー支持面5bに固定されている。
【0060】
図6に示す可撓性シート110Aを使用したスピーカ装置101は、振動部111と駆動部113,113およびダンパー部114aを1枚の可撓性シートで一体に形成できるので、部品点数を削減することができる。
【0061】
なお、前記各実施の形態では、第1の案内ギャップG1による駆動部の案内方向と第2の案内ギャップG2による駆動部の案内方向が90度となっているが、この角度は、90度よりもやや大きく120度程度であってもよい。
【符号の説明】
【0062】
1 スピーカ装置
2 筐体
5 支持部材
11 振動部
12 第1のダンパー部
13 駆動部
13b 第1の対向部
13c 第2の対向部
13d 湾曲部
14 連結片
14a 第1のダンパー部
15 ボイスコイルパターン
15a,15b 電流路
20 磁気回路部
21 磁石
22 第1の磁性体ヨーク
23 第2の磁性体ヨーク
24 第3の磁性体ヨーク
101 スピーカ装置
110,110A 可撓性シート
111 振動部
113 駆動部
114 連結片
114a ダンパー部
G1 第1の案内ギャップ
G2 第2の案内ギャップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動部と、前記振動部に連続するシート状の駆動部と、前記駆動部に設けられたコイルと、前記コイルを横断する磁界を発生する磁気回路部とを有するスピーカ装置において、
前記駆動部を、前記振動部の主たる振動方向に往復移動できるように案内する第1の案内ギャップと、前記振動部の主たる振動方向と交叉する方向へ往復移動できるように案内する第2の案内ギャップとが設けられ、シート状の前記駆動部が、前記第1の案内ギャップと前記第2の案内ギャップとの間で湾曲しており、
前記コイルは、前記駆動部の少なくとも前記第2の案内ギャップに位置する箇所に設けられ、少なくとも前記第2の案内ギャップに、前記コイルを横断する磁路が形成されていることを特徴とするスピーカ装置。
【請求項2】
前記コイルは、前記駆動部の前記第1の案内ギャップに位置する箇所と前記第2の案内ギャップに位置する箇所の双方に設けられ、前記第1の案内ギャップと前記第2の案内ギャップの双方に、前記コイルを横断する磁路が形成されている請求項1記載のスピーカ装置。
【請求項3】
前記磁気回路部は、磁石と、磁石の一方の極に配置された第1の磁性体ヨークと、前記磁石の他方の極に配置された第2の磁性体ヨークと、前記第1の磁性体ヨークと前記第2の磁性体ヨークの双方に対向する第3の磁性体ヨークとを有しており、前記第1の磁性体ヨークと前記第3の磁性体ヨークとの対向部に前記第1の案内ギャップが形成され、前記第2の磁性体ヨークと前記第3の磁性ヨークとの対向部に前記第2の案内ギャップが形成されている請求項1または2記載のスピーカ装置。
【請求項4】
前記振動部と前記駆動部とが、可撓性のシート材で一体に形成されている請求項1ないし3のいずれかに記載のスピーカ装置。
【請求項5】
前記駆動部を構成するシート材の一部が分離されてダンパー部が形成され、前記ダンパー部が筐体に固定されて、前記振動部と前記駆動部が筐体に対して往復移動自在に支持されている請求項1ないし4のいずれかに記載のスピーカ装置。
【請求項6】
前記振動部と前記駆動部を筐体に支持する支持部が設けられておらず、前記振動部が、前記第1の案内ギャップと前記第2の案内ギャップの内部に位置する前記駆動部によって振動自在に支持されている請求項1ないし4のいずれかに記載のスピーカ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−34184(P2012−34184A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−171950(P2010−171950)
【出願日】平成22年7月30日(2010.7.30)
【出願人】(000101732)アルパイン株式会社 (2,424)
【Fターム(参考)】