説明

スプリンクラヘッド

【課題】 通常時には、散水口を大きくして熱気流が感熱部材に当たりやすくするともに、散水時には、散水口を小さくして均一に散水が行えるようにする。
【解決手段】 内部に放水口1が形成されたヘッド本体3と、該放水口1を塞ぐ弁体5と、該弁体5を支持するグラスバルブ7と、前記ヘッド本体3の下端に接続され、開口9を有する有底筒状のフレーム11と、を備えたスプリンクラヘッドSPにおいて、前記フレーム11内に閉塞部材17が上下動可能に設けられ、該閉塞部材17は、通常時、前記フレーム11の開口9よりも上部に位置し、散水時に落下して前記開口9の一部を閉塞する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、消火装置として用いられるスプリンクラヘッドに関するものであり、更に述べると、マルチ型スプリンクラヘッドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
マルチ型スプリンクラヘッドは、フレーム本体に複数の散水口(開口)が設けられているが、この散水口の大きさは、均一散水できる様に所定の寸法で設計されている。また、このヘッドのフレーム本体の下端には、溶融金属からなる感熱部材が設けられているが、近年、前記感熱部材として感熱膨張剤を封入したグラスバルブが利用されている(例えば、特許文献1、参照)。
【0003】
このスプリンクラヘッドでは、火災の発生により周囲温度が上昇すると、感熱膨張部材が膨張するので、グラスバルブが破壊する。そうすると、放水口を閉鎖している弁体が落下して開弁し、該放水口が開放され、放水が開始されるが、この消火水は前記散水口を通ってフレームの外側に散水される。
【0004】
【特許文献1】意匠登録第1303972号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
感熱部材としてグラスバルブをフレーム本体内に配設する場合には、グラスバルブに熱気流を十分に当てるために、該フレーム本体の周面に形成される散水口を大きくしなければならない。該散水口を大きくすると、熱気流はフレーム本体内に入り易くなり、グラスバルブに当たりやすくなる。しかし、その反面、散水時には、大きくなった散水口から多量の水が放出されることになるので、散水分布を均一にできなくなる、と言う問題が発生する。
【0006】
この発明は、上記事情に鑑み、通常時には、散水口を大きくして熱気流が感熱部材に当たりやすくするとともに、散水時には、散水口を小さくして均一散水が行えるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、内部に放水口が形成されたヘッド本体と、該放水口を塞ぐ弁体と、該弁体を支持する感熱部材と、前記ヘッド本体の下端に接続され、開口を有する有底筒状のフレームとを備えたスプリンクラヘッドにおいて、前記フレーム内に閉塞部材が上下動可能に設けられ、該閉塞部材は通常時、前記フレームの開口よりも上部に位置し、散水時に落下して前記開口の一部を閉塞することを特徴とする。
【0008】
この発明の前記フレームの開口の上部に内面側に突出したストッパ部材を設け、該ストッパ部材によって、前記閉塞部材の落下が停止することを特徴とする。この発明の前記閉塞部材は、上端が連結部によって連結された複数本の脚部から構成され、散水時、該連結部が前記ストッパ部材に当接することを特徴とする。この発明の前記フレームの内径とほぼ等しい外形を有する円筒体を、前記フレーム内の上部に設け、該円筒体の下端に前記ストッパ部材を形成したことを特徴とする。この発明の前記感熱部材として、グラスバルブを使用し、前記開口の周方向の長さは、該グラスバルブの直径よりも大きいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
この発明は、以上のように構成したので、通常時、開口は従来のマルチ型スプリンクラヘッド(以下、「従来ヘッド」、ということがある)の開口より大きく開かれている。そのため、熱気流は、該開口を通ってフレーム本体内にスムーズに流入して、感熱部材に当たるので、感熱機能を向上させることができる。又、散水時、前記開口は閉塞部材によりその一部が閉鎖され、前記従来ヘッドのように、散水に適した大きさになるので、均一な散水を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
この発明の第1実施の形態を図1〜図12により説明する。
マルチ型スプリンクラヘッドSPは、内部に放水口1を形成されたヘッド本体3と、該放水口1を塞ぐ弁体5と、該弁体5を支持する感熱部材7と、前記ヘッド本体3の下端部3cに接続され、かつ、開口9を有する有底筒状のフレーム11と、を備えている。
【0011】
前記ヘッド本体3の放水流路2の内周壁面には、高圧水が流れたときに渦流を発生させる環状溝2aが設けられている。前記ヘッド本体3の下端部3aは、円筒フランジ部となっており、その内周面及び外周面にはねじ部が形成されている。
【0012】
フレーム11の開口9は、該フレーム11の周面に、所定大きさで、方形状に形成されている。この開口9は、周方向に等間隔をおいて4個設けられている。この開口9の大きさは、前記従来ヘッドの開口より大きく、例えば、前記従来ヘッドの1.5〜2倍位であるが、少なくとも、その周方向の長さ(幅)9wは熱気流の流れを良くするため、感熱部材7の直径(幅)7wよりも大きいことが好ましい。この開口9の形状、大きさ、位置、個数等は、必要に応じて適宜選択される。
【0013】
フレーム11の下端には、止めねじ13が設けられ、該止めねじ13は感熱部材であるグラスバルブ7の下端部を支持している。前記グラスバルブ7には、周囲温度により膨張する感熱膨張剤が封入されている。この止めねじ13を締め付けると、グラスバルブ7は弁体5を押し上げ、放水口1に密着させるので、閉弁状態となる。
【0014】
フレーム11の上端部は、ヘッド本体3の下端部3aの内周面に螺着されている。フレーム11の内側には、円筒体15が嵌着され、該円筒体15の上端フランジ部15aはフレーム11の上端とヘッド本体3の下端部3aとにより挟持されている。前記円筒体15の外径はほぼフレーム11の内径と等しく形成され、その円環状の底部15bには、4個の遊嵌合溝部15cと、ストッパ部材15dとが設けられている。
【0015】
前記遊嵌合溝部15cは、ストッパ部材15dを挟む様に配設された左右一対の溝15c、15cから構成されている。この遊嵌合溝部15cは、周方向に等間隔をおいて4個配設されているが、該溝部15cは、前記開口9の真上に対応するように位置調整されている。
【0016】
前記円筒体15には、閉塞部材である環状体17が摺動可能に嵌着されている。この環状体17は前記遊嵌合溝部15cに挿着される脚部17aを備えている。この脚部17aは左右一対のL字形の脚17a、17aからなり、上端は連結部17bにより連結され、その下端の内周面はリング状の弁体支持部17cに連結されている。この脚部17aは前記遊嵌合溝部15cに対応して4組設けられている。
【0017】
この脚部17aの2本の脚17a、17aの幅17wは、環状体17が落下して開口9に対向した時に、2本の脚17a、17aが、前記開口9の開口面積の約5分の2を塞げるような寸法が選ばれる。この様な寸法にすると、散水時、従来ヘッドの開口の開口面積とほぼ同一となるので、散水分布を均一に行うことができる。
【0018】
前記閉塞部材17の連結部17bの上端には、リング19が設けられ、このリング19の上部とヘッド本体3との間には、ばね21が配設されている。このばね21は、弁体5を開弁方向に付勢しているが、このばね21は省略することも可能である。
【0019】
次に本実施の形態の作動について説明する。
通常時、即ち、火災監視時、天井面等に配設されたスプリンクラヘッドSPは、図1に示すように、弁体5がグラスバルブ7に押されて放水口1に密着し、閉弁状態となっている。従って、この状態では、閉塞部材17は開口7より上方で支持されているので、開口9は全開となっている。
【0020】
監視区域内で火災が発生すると、開口9から熱気流がフレーム11内に流入し、グラスバルブ7内の感熱膨張剤を加熱し膨張させるので、グラスバルブ7は破裂する。この時、開口9の開口面積は、従来ヘッドの開口に比べ広いために、熱気流がフレーム11内に流入しやすい。そのため、グラスバルブ7は短時間で多量の熱気流と接触するので、従来ヘッドのグラスバルブ7に比べ早く破壊する。
【0021】
前記グラスバルブ7が破壊すると、ばね21の力及び自重により弁体5が放水口1から離れて落下し、開弁状態となる(図10、図11参照)。この時、該弁体5は、環状体17の弁体支持部17cに固定されているので、該弁体5は前記環状体17の移動に伴って変位する。
【0022】
前記環状体17の脚部17aは、円筒体15の遊嵌合溝部15cに案内されながらフレーム11の内面に沿って落下する。そして、前記脚部17aが、開口9と対向する位置に到達すると、連結部17bが円筒体15のストッパ部材15dに当接し、その移動は停止される。
【0023】
この時、図12に示すように、脚部17aの脚17a、17aは、開口9と正対し、その一部(全開口面積の約2/5)を閉塞するので、開口部9a1、9a2、9a3の合計面積は、開口9の全開口面積の約5分の3となる。この時の開口面積は、従来ヘッドの開口面積と略同じ大きさとなる。
【0024】
前記放水口1から放出された消火水wは、コーン状の弁体2aに衝突して流れ方向を変えられ、開口9の開口部9a1〜9a3から器外に散水される。そのため、均一な散水分布を得ることができる。
【0025】
この発明の第2実施の形態を図13により説明するが、図1〜図12と同一図面符号は、その名称も機能も同一である。
この実施の形態と第1実施の形態との相違点は、閉塞部材17である。即ち、前記閉塞部材17は、間隔をおいて配設された2本の縦方向の脚27a、27aと、前記脚27a、27aの中央部に直交して連結された横方向連結帯27bと、から構成され、前記連結帯27bの上側に3つの開口部9a、9a、9a、その下側に3つの開口部9a,9a,9aが設けられていることである。
【0026】
この発明の実施の形態は、上記に限定されるものではなく、例えば、閉塞部材の脚部(脚)の数を増減したり、該脚部(脚)の開口を閉塞する位置を変更したり、又は、複数の開口のうち、ある方向の開口のみを塞いだりすることも可能である。
また、円筒体を省略してフレームに直接、開口の上部に内面側に突出したストッパ部材を設けるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第1実施の形態を示す図で、図2の縦断面である。
【図2】本発明の第1実施の形態を示す正面図である。
【図3】本発明の第1実施の形態を示す底面図である。
【図4】閉塞部材が円筒体から突出した状態を示す正面図である。
【図5】図4の正面斜視図である。
【図6】図4の底面斜視図である。
【図7】閉塞部材が円筒体内に収納されている状態を示す平面図である。
【図8】閉塞部材が円筒体内に収納されている状態を示す正面図である。
【図9】閉塞部材が円筒体内に収納されている状態を示す底面図である。
【図10】閉弁状態を示す図で、図11の縦断面図である。
【図11】閉弁状態を示す正面図である。
【図12】開口と閉塞部材との位置関係を示す正面図である。
【図13】本発明の第2実施の形態を示す正面図で、図12に対応する図である。
【符号の説明】
【0028】
1 放水口
3 ヘッド本体
5 弁体
7 感熱部材
9 開口
11 フレーム
15 円筒体
17 閉塞部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に放水口が形成されたヘッド本体と、該放水口を塞ぐ弁体と、該弁体を支持する感熱部材と、前記ヘッド本体の下端に接続され、開口を有する有底筒状のフレームと、を備えたスプリンクラヘッドにおいて、
前記フレーム内に閉塞部材が上下動可能に設けられ、該閉塞部材は通常時、前記フレームの開口よりも上部に位置し、散水時に落下して前記開口の一部を閉塞することを特徴とするスプリンクラヘッド。
【請求項2】
前記フレームの開口の上部に内面側に突出したストッパ部材を設け、該ストッパ部材によって、前記閉塞部材の落下が停止することを特徴とする請求項1記載のスプリンクラヘッド。
【請求項3】
前記閉塞部材は、上端が連結部によって連結された複数本の脚部から構成され、散水時、該連結部が前記ストッパ部材に当接することを特徴とする請求項2記載のスプリンクラヘッド。
【請求項4】
前記フレームの内径とほぼ等しい外径を有する円筒体を、前記フレーム内の上部に設け、該円筒体の下端に前記ストッパ部材を形成したことを特徴とする請求項2.又は、3記載のスプリンクラヘッド。
【請求項5】
前記感熱部材として、グラスバルブを使用し、前記開口の周方向の長さは、該グラスバルブの直径よりも大きいことを特徴とする請求項1、2、3、又は、4記載のスプリンックラヘッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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