説明

スプリングスタビライザマウント

【課題】従来技術におけるカメラクレーン防振器では、アームを急激に移動させたり、風などによりアームの先端が揺らされたりすると、これらの動きが直接カメラに伝達してしまい、カメラにて撮影された映像には画像振れが発生してしまう。このため、鮮明で振れの少ない映像を撮影することが困難であった。
【解決手段】本発明のカメラクレーン防振器では、コイル状ばねが鉛直方向の振動を効率的に吸収することで、カメラクレーン防振器に懸架させたカメラにおける振動を抑制し、鮮明で振れの少ない映像を撮影することができる。また、既存のカメラクレーン本体を大幅に改良することなく、これに懸架されるカメラとの間に設置することができるため、既存の設備を有効活用することができ、低コストで防振機能を付加させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラクレーンの先端に懸架するカメラの防振制御を行うための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
カメラクレーンとは、クレーンのアームの先にカメラを懸架して、高所や離れた箇所の映像を撮影するために用いられるクレーンである。図14に従来技術におけるカメラクレーンの概略図を例示する。従来技術のカメラクレーンは、アーム(1401)と、アームの先端にカメラ(1406)を懸架するためのカメラ懸架手段(1402)と、アームのカメラが取り付けられる端部と逆側の端部に設けられたカウンターウェイト(1403)と、アームを支える支持柱(1404)と、カメラクレーンを移動させるためのホイールベース(1405)とからなる。アームは、撮影対象物の動きやカメラアングルに応じて上下左右に移動させるため、アームの先端に懸架されたカメラもアームの動きに合わせて移動する。アームを急激に移動させたり、風などによりアームの先端が揺らされたりすると、これらの動きが直接カメラに伝達してしまい、カメラにて撮影された映像には画像振れが発生してしまう。このため、鮮明で振れの少ない映像を撮影することが困難であった。
【0003】
そこで、特許文献1では、筺体に備え付けられたカメラをチルト方向及びパン方向に回転した場合に生じる過剰回転や振動を制御するための防振装置を設けた撮像装置に関する発明を開示している。
【0004】
また、特許文献2では、移動体に載置した全方位カメラ装置の下方に防振装置を配置した移動体用全方位カメラ装置の防振機構に関する発明を開示している。該防振機構は、垂直に設置された支持軸の一方のカメラを取り付け、もう一方にカウンターウェイトを有することで重心を低くし、安定感を保つ仕組みにて構成されている。
【特許文献1】特開2000−358172号公報
【特許文献2】特開2004−297670号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の防振装置は、カメラのパン方向及びチルト方向の回転に対する振動を制御することができるが、これ以外の振動は制御することができない。例えば、カメラが備え付けられた筺体自体の振動などは制御することができない。このため、特許文献1に記載の防振装置を備えた撮像装置を従来技術におけるカメラクレーンに用いたとしても、アームから伝達される振動を効率的に制御することはできない。
【0006】
また、特許文献2の防振機構は、全方位カメラ装置を直立状態に保つように防振を制御する技術であるため、当該技術をそのままカメラクレーンに採用することは困難である。仮に特許文献2の防振機構をカメラクレーンに採用するとしても、既存のカメラクレーンに設置することはできないため、カメラクレーン自体の構造を大幅に変更しなければならない。
【0007】
以上の課題に鑑み、本発明では、カメラクレーンに懸架するカメラにアームから伝達される振動の抑制を可能とし、かつ、既存のカメラクレーンに設置可能なカメラクレーン防振器、及び、該カメラクレーン防振器を利用したカメラクレーンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような課題を解決するため、本発明では以下のカメラクレーン防振器を提供する。
1)第一発明では、クレーンの先端にカメラを懸架するためのカメラクレーン防振器であって、寝かせて配置したコイル状ばねと、コイル状ばねの下側周に配置されてクレーン本体懸架端側に接続されるべき第一受面と、第一受面に対向するようにコイル状ばねの上側周に配置されカメラ側と接続されるべき第二受面と、を有するカメラクレーン防振器を提供する。
2)第二発明では、コイル状ばねは環状に形成された環状コイルばねであり、環状コイルをその外周側で迂回して第一受面とクレーン本体懸架端側との接続をする第一接続部と、環状コイルをその内周側で迂回して第二受面とカメラ側との接続をする第二接続部と、をさらに有する第一発明に記載のカメラクレーン防振器を提供する。
3)第三発明では、コイル状ばねは環状に形成された環状コイルばねであり、環状コイルをその内周側で迂回して第一受面とクレーン本体懸架端側との接続をする第三接続部と、環状コイルをその外周側で迂回して第二受面とカメラ側との接続をする第四接続部と、をさらに有する第一発明又は第二発明に記載のカメラクレーン防振器を提供する。
4)第四発明では、第一接続部は、クレーン本体懸架端側と第一受面間に生じる水平方向衝撃を吸収するショックアブソーバーを有する第二発明に記載のカメラクレーン防振器を提供する。
5)第五発明では、第三接続部は、クレーン本体懸架端側と第一受面間に生じる水平方向衝撃を吸収するショックアブソーバーを有する第三発明に記載のカメラクレーン防振器を提供する。
6)第六発明では、環状コイルばねは、直線状コイルばねを正六角形以上の多角形に配置することで形成されている第二発明から第五発明のいずれか一に記載のカメラクレーン防振器を提供する。
7)第七発明では、クレーン本体と、クレーン本体と接続される第一発明から第六発明のいずれか一に記載のカメラクレーン防振器と、カメラクレーン防振器に接続されるカメラと、からなるカメラクレーンを提供する。
【発明の効果】
【0009】
以上のような構成をとる本発明のカメラクレーン防振器は、コイル状ばねが振動を効率的に吸収することで、カメラクレーン防振器に懸架させたカメラにおける振動を抑制し、鮮明で振れの少ない映像を撮影することができる。また、本発明のカメラクレーン防振器は、既存のカメラクレーン本体を大幅に改良することなく、これに懸架されるカメラとの間に設置することができるため、既存の設備を有効活用することができ、低コストで防振機能を付加させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に、図を用いて本発明の実施の形態を説明する。なお、本発明はこれら実施の形態に何ら限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施しうる。なお、実施形態1は主として請求項1、2、3、6、7について説明する。実施形態2は主として請求項4、5、7について説明する。
【0011】
≪実施形態1≫
【0012】
(実施形態1の概要)図1に本実施形態のカメラクレーン防振器の概要を示す。カメラクレーン防振器(0101)は、クレーン(0102)と、クレーンの先端に懸架するカメラ(0103)との間に設置され、クレーンの移動に伴いクレーンからカメラに伝達される振動を吸収することができる。これにより、カメラにて鮮明で振れの少ない映像を撮影することができる。
【0013】
(実施形態1の構成)図2は本実施形態のカメラクレーン防振器の構成を示す断面図の概略である。カメラクレーン防振器(0200)は、コイル状ばね(0201)と、第一受面(0202)と、第二受面(0203)とからなる。
【0014】
(実施形態1の構成の説明)「カメラクレーン防振器」(0200)は、クレーンの先端にカメラを懸架するようにコイル状ばね(0201)、第一受面(0202)、第二受面(0203)を有する。カメラクレーンでは、一般的にアームの先端にカメラを設置するため、「クレーンの先端」とは、一般的にはアームの先端を指すがこれに限られない。例えば、アームの先端に付属する機器が設けられ、さらにその先端にカメラを懸架する場合には、付属する機器の先端がクレーンの先端に該当する。
【0015】
「コイル状ばね」(0201)とは、コイル状に形成されたばねであり寝かせて配置する。「寝かせて配置」とは、コイルの周方向が荷重を受けるように配置した状態である。コイル状とは、金属線を螺旋状に巻いた状態であるが、単一の螺旋に限定されず、途中で螺旋が反転しているものであっても良い。また、材質は、鉄、銅、ステンレスであることが望ましいが、これらに限定されるものではない。
【0016】
「第一受面」(0202)とは、コイル状ばねの下側周に配置されてクレーン本体懸架側に接続されるべき面である。「クレーン本体懸架側」(0206)とは、クレーン本体(0208)が備えている、本カメラクレーン防振器がクレーン本体に懸架される部位である。
【0017】
「第二受面」(0203)とは、第一受面に対向するようにコイル状ばねの上側周に配置されカメラ側と接続されるべき面である。「カメラ側」(0207)とは、カメラ(0209)が備えている、本カメラクレーン防振器がカメラを懸架する部位である。
【0018】
すなわち、コイル状ばねの下側周に配置されている第一受面(0202)がクレーン本体懸架側にてクレーン本体と接続されており、コイル状ばねの上側周に配置されている第二受面(0203)がカメラ側に接続されている。また、コイル状ばねは、第一受面及び第二受面に対してコイルの軸を略平行とし、側周が接するように寝かせて配置される。このようにコイル状ばねを配置することにより、コイル状ばねにかかる荷重を複数点で支持することができ、各点にかかる荷重を分散することができる。また、第一受面と第二受面は上記機能を有する限りにおいて特定の形状に限定されず、図3(a)に示すように第一受面と第二受面の迂回方向が図2とは異なっていても良いし、図3(b)に示すように第一受面等が略山形であっても良い。
【0019】
さらに、コイル状ばねの変形は、単純な伸縮に限らず、様々な形状に変形しうる。このため、鉛直方向の荷重のみならず、あらゆる方向の圧縮荷重に対応することができる。図3(c)〜(f)にこれを図示する。図3(c)は、通常のコイル状ばねの状態である。図3(d)は、鉛直方向に荷重を受けた場合のコイル状ばねの状態である。図3(e)は、コイル状ばねが鉛直方向に対して所定の角度を有する斜めの圧縮荷重を受けた場合の変形を示している。図3(f)は、コイルの幅方向に対する荷重を受けた場合の変形を示している。このため、同様のコイル状ばねを各受面に対して軸方向が略垂直になるように配置した場合よりも効率的に振動を吸収することができる。
【0020】
図2の矢印は本カメラクレーン防振器にかかる内部応力を図示する。本カメラクレーン防振器は、クレーン(0208)の先端に懸架され、さらにクレーンの先端に懸架された本カメラクレーン防振器にカメラ(0209)が懸架される。このため、本カメラクレーン防振器には、カメラの重量に応じた引張荷重が作用する。しかし、第一受面と第二受面がコイル状ばねを挟み込むようにして配置されるため、第一受面(0202)が受ける上方向への荷重はコイル状ばね(0201)の下側周に上向きの荷重として作用し、第二受面(0203)が受ける下方向への荷重はコイル状ばね(0201)の上側周に下向きの荷重として作用する。従って、カメラクレーン防振器全体にかかる引張荷重はコイル状ばねに対して圧縮荷重となって作用する。コイル状ばねは、引張荷重には適していないが、圧縮荷重に対しては優れた防振効果を発揮するため、このような構造によりコイル状ばねの防振効果を最大限に生かすことができる。
【0021】
図4は、カメラクレーン防振器の上面透視図である。カメラクレーン防振器はいかなる外形であっても良く、コイル状ばねの配置位置も特定の位置に限られない。カメラクレーン防振器の外形が四角形である場合には、コイル状ばね(0401)は、図4(a)に示すように各辺に配置したり、図4(b)に示すように各頂点付近に配置したりすることができる。なお、点線はばねの上側周に配置される第二受面(0402)を示す。
【0022】
図5(a)は、カメラクレーン防振器の外形を略円形にした場合の上面透視図である。カメラクレーン防振器の外形が略円形である場合には、コイル状ばねは環状に形成された環状コイルばね(0501a)を用いることが望ましい。点線はばねの上側周に配置される第二受面(0503a)を示す。図5(a)の環状コイルばねを利用したカメラクレーン防振器におけるA−A断面図は図2と同様である。環状コイルばねを用いる場合には、カメラクレーン防振器は、環状コイルばねをその外周側で迂回して第一受面とクレーン本体懸架側との接続をする第一接続部(0204)と、環状コイルをその内周側で迂回して第二受面とカメラ側との接続をする第二接続部(0205)とからなることが望ましい。
【0023】
図5(b)は、カメラクレーン防振器の外形を略円形にした場合の上記とは異なる上面透視図である。コイル状ばねは環状に形成された環状コイルばねを利用している点は図5(a)と同様であるが、図5(b)は、環状コイルばね(0501b)と第一受面及び第二受面との構造が異なる。点線はばねの下側周に配置される第一受面(0502b)を示す。図5(b)の環状コイルばねを利用したカメラクレーン防振器におけるB−B断面図は図3(a)と同様である。すなわち、該カメラクレーン防振器は、環状コイル(0301)と、環状コイルをその内周側で迂回して第一受面(0302)とクレーン本体懸架側との接続をする第三接続部(0304)と、環状コイルをその外周側で迂回して第二受面(0303)とカメラ側との接続をする第四接続部(0305)とからなる。
【0024】
図5(a)、(b)に示すように、コイル状ばねを環状コイルばねとすることにより、カメラクレーン防振器の特定の位置にかけられた荷重を効率的に分散することができる。これにより、カメラクレーン防振器にかかる振動を分散することが可能となり、カメラに伝達する振動の影響を抑制することができる。
【0025】
なお、図5(a)、(b)に示す環状コイルばねは切れ目のない環状である必要はなく、複数の直線状コイルばねを環状に配置して形成しても良い。図6に複数の直線状コイルばね(0601)を用いて形成した環状コイルばねを例示する。環状コイルばねは、カメラクレーン防振器の外形にもよるが、なるべく多くの直線状コイルばねを用いて形成することで滑らかな環状を形成することができる。このため、環状コイルばねを直線状コイルばねで形成する場合には、直線状コイルばねを正六角形以上の多角形に配置することで環状コイルばねを形成することが望ましい。
【0026】
(実施形態1の具体例)図7に本実施形態のカメラクレーン防振器の具体例を示す。図7(a)は斜視図、図7(b)は側面図、図7(c)は裏面図である。
【0027】
カメラクレーン防振器のクレーン本体懸架端側である蓋面部(0701)には、クレーンの先端にカメラクレーン防振器を接続するためのクレーン接続部(0702)を備えており、該クレーン接続部にてカメラクレーン防振器がクレーン本体懸架側に取り付けられる。また、カメラクレーン防振器のカメラ側である底面には、カメラを懸架するカメラ懸架部(0703)を備えており、該カメラ懸架部にてカメラクレーン防振器がカメラ側に接続される。
【0028】
該蓋面部は、環状コイルばね(0704)の外周側を迂回する第一接続部(0705)にて第一受面(0706)と接続され、カメラ懸架部は環状コイルばねの内周側を迂回する第二接続部(0707)にて第二受面(0708)と接続される。クレーン本体懸架側である蓋面部に第一接続部にて接続された第一受面は環状コイルばねの下側周に配置されており、カメラ側であるカメラ懸架部に第二接続部にて接続された第二受面は環状コイルばねの上側周に配置されているため、カメラクレーン防振器全体にかかる引張荷重は環状コイルばねには圧縮荷重として作用する。
【0029】
環状コイルばねは、コイル状ばねを環状に配置したものであり、図7(c)に示すように、6本の直線状コイルばね(0704a)を正六角形上に配置して形成している。図8に図7で用いられている直線状コイルばねの一つを例示する。図8に示すように、直線状コイルばねは、ばね(0801)に側周方向からの荷重をかけやすくするために、側周に軸方向と略平行な2本の対向する連結板(0802)を供えており、各連結板が第一受面と第二受面に接するように配置される。これにより、第一受面及び第二受面に作用する荷重を環状コイルばねに分散して伝達することができる。
【0030】
上記のカメラクレーン防振器を、クレーン本体に接続し、カメラクレーン防振器にカメラを接続することで鉛直方向の防振機能を付加したカメラクレーンを提供することができる。
【0031】
(実施形態1の効果の簡単な説明)以上のような構成をとる本実施形態のカメラクレーン防振器は、コイル状ばねが鉛直方向の振動を効率的に吸収することで、カメラクレーン防振器に懸架させたカメラにおける振動を抑制し、鮮明で振れの少ない映像を撮影することができる。また、本実施形態のカメラクレーン防振器は、既存のカメラクレーン本体を大幅に改良することなく、これに懸架されるカメラとの間に設置することができるため、既存の設備を有効活用することができ、低コストで防振機能を付加させることができる。
【0032】
≪実施形態2≫
【0033】
(実施形態2の概念)実施形態1に記載のカメラクレーン防振器では、上下方向の振動を抑制することは可能であるが、水平方向の振動を抑制することはできない。そこで、実施形態2では、水平方向の振動も抑制可能カメラクレーン防振器を提供する。
【0034】
(実施形態2の構成)図9に本実施形態のカメラクレーン防振器の概要を示す。本カメラクレーン防振器(0900)は、環状コイルばね(0901)と、第一受面(0902)と、第二受面(0903)と、第一接続部(0904)と、第二接続部(0905)と、ショックアブソーバー(0906)からなる。また、本カメラクレーン防振器は、第一接続部及び第二接続部に代えて、第三接続部及び第四接続部とを有しても良い。「ショックアブソーバー」以外の構成は実施形態1にて説明済みであるため説明を省略する。
【0035】
(実施形態2の構成の説明)「ショックアブソーバー」(0906)は、第一接続部又は第三接続部に有し、クレーン本体懸架側と第一受面間に生じる水平方向衝撃を吸収するように構成されている。クレーンが水平方向に移動すると、カメラクレーン防振器を介して懸架されているカメラに水平方向の衝撃が加わる。ショックアブソーバーは、粘性を有するオイルやばねによってこの衝撃を吸収する働きを有する。また、ベアリングなどを用いて移動の際の衝撃を緩やかに伝達することも可能である。
【0036】
図10は本カメラクレーン防振器のショックアブソーバーの一例を示す断面概略図である。カメラクレーン防振器に水平方向への自由度を持たせるように、第一接続部(1001)がクレーン本体(1003)のクレーン本体懸架側と点接続可能に構成されており、第一接続部から水平方向にばね(1002)が配置されている。該ばねは、クレーン本体から突出した垂直な固定板(1004)に接続される。カメラクレーン防振器が第一接続部の代わりに第三接続部を有する場合にも同様に構成される。
【0037】
しかし、図10に示すショックアブソーバーでは、水平方向衝撃が大きい場合には、ばね(1002)が振動を完全に吸収できずに伸縮運動を繰返してしまう可能性がある。このため、ショックアブソーバーはオイル式などで構成されることが望ましい。オイル式の場合には、ばねの代わりに油圧シリンダーなどを用いることで同様の構成を実現することができる。さらに、ショックアブソーバーは、ベアリング式であることがより望ましい。ベアリング式のショックアブソーバーを以下の具体例にて説明する。
【0038】
(実施形態2の具体例)図11は、実施形態1の具体例にて示したカメラクレーン防振器に、さらにベアリング式のショックアブソーバーを設けたものである。図11(a)は斜視図、図11(b)は側面図、図11(c)は上面図である。
【0039】
図11に示すベアリング式のショックアブソーバーは、クレーン本体懸架側に固定されるクレーン側固定部(1108)と、コイル状ばねを覆う蓋面部(1101)に固定される蓋面部側固定部(1110)と、クレーン側固定部及び蓋面部側固定部にベアリングを介して接続される略正方形の枠体部(1109)と、からなる。クレーン側固定部と蓋面部側固定部は、軸方向が略平行である筒状のベアリングを備える。また、枠体部の各辺は、隣接する辺同士は異なる平面、対向する辺同士は同一平面となるように構成されている。枠体部の対向する一組の辺はクレーン側固定部にベアリングを介して接続されており、もう一組の辺は蓋面部側固定部にベアリングを介して接続されている。他の構成は実施形態1と同様である。
【0040】
次に、図11に示すショックアブソーバーの動作を説明する。仮に、枠体部の各辺のうち、クレーン側固定部に接続された辺方向をX軸方向、蓋面部側固定部に接続された辺方向をY軸方向とする。
【0041】
図12は、クレーンがX軸方向へ移動した場合のショックアブソーバーの動作を説明する図である。クレーンがX軸方向に移動すると、まず、ショックアブソーバーのうちクレーン側固定部(1201)がクレーンの移動に伴って移動する。このとき、図12(a)に示すように、クレーン側固定部のみが枠体部(1202)に対してX軸方向に相対的に移動する。枠体部に対するクレーン側固定部の移動が、枠体部の辺の端部まで達しない場合には、クレーン側固定部の移動により生じる衝撃は枠体部にてほぼ吸収され、僅かに生じるのはベアリングと枠体部との間の摩擦力のみである。このとき、カメラクレーン防振器に懸架されたカメラを含むクレーン側固定部以外の枠体部(1202)以下の各部(1203)は、慣性の法則により元の位置に留まろうとする力が働くため、カメラに伝達される振動は極めて小さい。また、図12(b)に示すように、クレーン側固定部(1201)の移動が、枠体部の辺の端部まで達した場合には、クレーンのX軸方向への移動に伴って枠体部(1202)以下の各部(1203)もクレーンと同じ速度で移動することとなる。そして、クレーンが止まるとクレーン側固定部(1201)も止まるが、枠体部(1202)以下の各部は、慣性の法則によりクレーンが移動していた方向に移動し続けようとする。このため、図12(c)に示すように、枠体部以下の各部はクレーンが停止した後にもX軸方向に移動を続ける。このとき、枠体部(1202)以下の各部(1203)は、クレーン側固定部(1201)のベアリングと枠体部との間に僅かに生じる摩擦力により減速しながら、クレーン側固定部に対して相対的にクレーンが移動した方向と同じ方向へ移動する。そして、クレーン側固定部(1201)が枠体部(1202)の辺の反対側の端部に達すると枠体部以下の各部(1203)は停止する。
【0042】
なお、このときのカメラクレーン防振器に懸架されたカメラでは、クレーンの移動に対してやや遅れて移動を開始し、クレーンの停止に対して緩やかに減速しながら停止する。このため、例えば、クレーンが被写体に対して近づくように移動した場合には、クレーンの停止後のカメラにより撮影される映像は、被写体に対して緩やかにズームアップしていく映像となり、映像効果上も望ましい。クレーンが被写体に対して遠ざかるように移動した場合も同様である。
【0043】
図13は、クレーンがY軸方向へ移動した場合のショックアブソーバーの動作を説明する図である。クレーンがY軸方向に移動すると、まず、ショックアブソーバーのうちクレーン側固定部(1301)がクレーンの移動に伴って移動する。また、クレーン側固定部と枠体部(1302)とは、Y軸方向に対する自由度がないため、枠体部もクレーン側固定部の移動に伴い移動する。しかし、枠体部と蓋面部側固定部(1303)とはベアリングを介して接続されているため、図13(a)に示すように、クレーン側固定部及び枠体部が蓋面部側固定部に対して相対的に移動する。蓋面部側固定部に対する枠体部の移動により、蓋面部側固定部が枠体部の辺の端部まで達しない場合には、クレーンの移動により生じる衝撃は枠体部にてほぼ吸収され、僅かに生じるのは蓋面部側固定部のベアリングと枠体部との間の摩擦力のみである。このとき、クレーン側固定部及び枠体部以外のカメラクレーン防振器に懸架されたカメラを含む蓋面部側固定部以下の各部(1304)は、慣性の法則により元の位置に留まろうとする力が働くため、カメラに伝達される振動は極めて小さい。そして、図13(b)に示すように、蓋面部側固定部(1303)が枠体部(1302)の辺の端部まで達した場合には、クレーンのY軸方向への移動に伴って蓋面部側固定部以下の各部(1304)もクレーンと同じ速度でY軸方向へ移動することとなる。そして、クレーンが止まるとクレーン側固定部(1301)及び枠体部(1302)も止まるが、クレーン側固定部及び枠体部以外の蓋面部側固定部以下の各部とこれに懸架されたカメラは、慣性の法則により今度はクレーンが移動していた方向に移動し続けようとする。このため、図13(c)に示すように、蓋面部側固定部(1303)以下の各部(1304)はクレーンが停止した後にもY軸方向に移動を続ける。このとき、蓋面部側固定部は、蓋面部側固定部のベアリングと枠体部(1302)との間に僅かに生じる摩擦力により減速しながら、枠体部に対して相対的にクレーンが移動した方向と同じ方向へ移動する。そして、蓋面部側固定部が枠体部の辺の反対側の端部に達すると蓋面部側固定部は停止する。
【0044】
なお、このときのカメラクレーン防振器に懸架されたカメラでは、クレーンの移動に対してやや遅れて移動を開始し、クレーンの停止に対して緩やかに減速しながら停止する。このため、例えば、クレーンが被写体に対して近づくように移動した場合には、クレーンの停止後のカメラにより撮影される映像は、被写体に対して緩やかにズームアップしていく映像となり、映像効果上も望ましい。クレーンが被写体に対して遠ざかるように移動した場合も同様である。
【0045】
以上の通り、具体例に示したベアリング式のショックアブソーバーを用いても、水平方向の衝撃を吸収することができる。さらに、クレーンが急激に移動した場合にカメラにて撮影される映像も映像効果上望ましいものとすることができる。
【0046】
上記のカメラクレーン防振器を、クレーン本体に接続し、カメラクレーン防振器にカメラを接続することで鉛直方向及び水平方向の防振機能を付加したカメラクレーンを提供することができる。
【0047】
(実施形態2の効果の簡単な説明)以上のような構成をとる本実施形態のカメラクレーン防振器は、実施形態1に記載の機能に加えて、水平方向の衝撃をも吸収することができるため、3次元的に生じるあらゆる振動を効率的に吸収することで、カメラクレーン防振器に懸架させたカメラの振動を抑制し、極めて鮮明で振れの少ない映像を撮影することができる。また、本実施形態のカメラクレーン防振器についても、既存のカメラクレーン本体を大幅に改良することなく、これに懸架されるカメラとの間に設置することができるため、既存の設備を有効活用することができ、低コストで防振機能を付加させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】実施形態1のカメラクレーン防振器を例示する図
【図2】実施形態1のカメラクレーン防振器を例示する断面図
【図3】第一受面と第二受面の形状及びコイル状ばねの変形状態を示す図
【図4】コイル状ばねの配置例を示す図
【図5】環状コイルばねを例示する図
【図6】直線状コイルばねを配置して形成した環状コイルばねを例示する図
【図7】実施形態1のカメラクレーン防振器の具体例を示す図
【図8】コイル状ばねの具体例を示す図
【図9】実施形態2のカメラクレーン防振器を例示する図
【図10】ショックアブソーバーの具体例を示す図
【図11】実施形態2のカメラクレーン防振器の具体例を示す図
【図12】クレーンがX軸方向に移動した場合のショックアブソーバーの動作を説明する図
【図13】クレーンがY軸方向に移動した場合のショックアブソーバーの動作を説明する図
【図14】従来技術を説明するための図
【符号の説明】
【0049】
0101 カメラクレーン防振器
0102 クレーン
0103 カメラ
0201 コイル状ばね
0202 第一受面
0203 第二受面
0204 第一接続部
0205 第二接続部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クレーンの先端にカメラを懸架するためのカメラクレーン防振器であって、
寝かせて配置したコイル状ばねと、
コイル状ばねの下側周に配置されてクレーン本体懸架端側に接続されるべき第一受面と、
第一受面に対向するようにコイル状ばねの上側周に配置されカメラ側と接続されるべき第二受面と、
を有するカメラクレーン防振器。
【請求項2】
コイル状ばねは環状に形成された環状コイルばねであり、
環状コイルをその外周側で迂回して第一受面とクレーン本体懸架端側との接続をする第一接続部と、
環状コイルをその内周側で迂回して第二受面とカメラ側との接続をする第二接続部と、
をさらに有する請求項1に記載のカメラクレーン防振器。
【請求項3】
コイル状ばねは環状に形成された環状コイルばねであり、
環状コイルをその内周側で迂回して第一受面とクレーン本体懸架端側との接続をする第三接続部と、
環状コイルをその外周側で迂回して第二受面とカメラ側との接続をする第四接続部と、
をさらに有する請求項1又は2に記載のカメラクレーン防振器。
【請求項4】
第一接続部は、クレーン本体懸架端側と第一受面間に生じる水平方向衝撃を吸収するショックアブソーバーを有する請求項2に記載のカメラクレーン防振器。
【請求項5】
第三接続部は、クレーン本体懸架端側と第一受面間に生じる水平方向衝撃を吸収するショックアブソーバーを有する請求項3に記載のカメラクレーン防振器。
【請求項6】
環状コイルばねは、直線状コイルばねを正六角形以上の多角形に配置することで形成されている請求項2から5のいずれか一に記載のカメラクレーン防振器。
【請求項7】
クレーン本体と、
クレーン本体と接続される請求項1から6のいずれか一に記載のカメラクレーン防振器と、
カメラクレーン防振器に接続されるカメラと、
からなるカメラクレーン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2008−263514(P2008−263514A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−106003(P2007−106003)
【出願日】平成19年4月13日(2007.4.13)
【出願人】(507123291)株式会社ロケット (1)
【Fターム(参考)】