説明

スプレー塗装装置

コンベヤー2によって移動される円形の対象物の正面/背面16、特に、ホール及びリム4の正面16をスプレー塗装するためのスプレー塗装装置。スプレー装置80,81が、弓形に往復回転可能であり、駆動回転軸線66に対して偏心している。対象物4の駆動回転軸線66及び中心軸線14は互いに一直線である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、これから先、請求項1の「おいて書き」の部分の特徴を備えたスプレー塗装装置と、円形の対象物の正面及び背面を塗料でスプレー塗装するスプレー方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
これら円形の対象物は、例示的に、任意のホイール及び車両のホイールリムである。特に、本発明は、ホイールの正面(外面)及びリムを塗装することに関することだけではない。ホイール及びリムは、その背面よりも外面で、より高い塗装の質と塗装の寿命が要求される。
【0003】
塗料は、液体塗装、特にニス、或いは好ましくは、塗装粉末である。
【0004】
特許文献1は、特に塗装粉末のスプレー塗装を自動的に制御するスプレー塗装装置を示す。
【0005】
スプレー装置としては、スプレーヘッド又はスプレーヘッドが取り付けられたスプレーガンを使用できる。塗料スプレーヘッドはスプレーノズル又は回転要素を有する。塗装粉末を粉砕する回転要素を備えるスプレー装置が特許文献2から公知である。さらに、液体塗料を霧化する回転要素が従来技術において公知である。
【0006】
車両のホイールリムの正面(外面)をスプレー塗装するための二つの処理が公知であり、その一方は、添付した図1,2に示されており、他方は添付した図3に示されている。
【0007】
略横断面図及び側面図において、図1は、スプレーガン8,9,10,11からそれらのスプレー領域を介してスプレー噴射6に対して横方の二つの重畳したリムの二つの組をそれぞれ移動させるオーバーヘッドコンベヤーのコンベヤーチェーン2を示すのに対して、図2は、スプレーガン8,9,10,11が、図1に示す実線及び破線の間で上下に移動されることを示す。リム4は、中心軸線14が略水平となり、リムの正面外側16が、スプレーガン8,9,10,11に面するようにコンベヤーチェーン2から吊り下げられている。各スプレーステーションは柱18が取り付けられ、毎回それに沿って、二つのスプレーガン8,9,10,11が、省略した駆動手段によって上下に移動される。柱18は、コンベヤーチェーン2の長手方向において静止している。同じように、スプレーガン20,22は、リム4の背面を塗装するために柱24に沿って上下に移動可能である。この公知の装置は、大量のこの粉末がリムのそばを通り越してスプレーされるので、多量の粉末が必要になるという不利益を被る。別の欠点は、リムが、リム上の粉末塗装によって不均一に覆われるということである。スプレー噴射上に突出するリムの表面は、スプレー噴射から奥まったリムの表面よりも多くの塗装粉末を受け入れる(影の副作用)。リムフランジは非常にたくさんの塗装粉末を受容してしまう。リムにスプレーされた塗装粉末は徐々に下がり、従って、リムの下方領域が、上方領域よりも多くの塗装粉末を収集する。この公知の処理は、いくつかのリム、例えば二つのリムを、各スプレー領域で同時に塗装可能であるという利点を提供する。従って、多数のリム4はコンベヤーチェーン2の低速時でさえ塗装可能である。その結果として、リムに塗料をスプレーした後、前記付着した塗料をオーブンで焼くことが短時間であるので有利である。
【0008】
車両のホイールリムの正面に塗装粉末をスプレーする公知のスプレー塗装装置の、図3は側面図であり、図4は平面図であり、図5は図3の平面V−Vに沿った断面図である。このスプレー塗装装置は、上方の受容面33上に、正面(外面)が上方を向いているリム4の一つをそれぞれ支持する連続して取り付けられたモーター回転式のスピンドル34が取り付けられたフロアコンベヤー32を有する。例示的に、四つのスプレーステーションは、そのそれぞれは、下方に配置されたリム4の上方に面した正面16上に塗装粉末をスプレーするために、非回転にリムの上方に互いに正反対側で鉛直下方に向いて搭載された二つのスプレーガン38,39が取り付けられ、スピンドル24が、リム4と共同して鉛直の回転軸線40周りに、第一の二つのスプレーステーションに関しては一つの回転方向42で回転するのに対して、最後の二つのスプレーステーションに関しては反対の回転方向43に回転する。リム4の中心軸線が鉛直であり、スピンドル34の回転軸線40と一直線になっている。別のスプレー装置42は、リム4の裏面を塗装するために用いられる。一つの実施態様において、フロアコンベヤーは、リムが塗装されている間に断続的に停止するように動作する。別の実施態様において、フロアコンベヤーは、リムが塗装されているときでさえ、静止したスプレーガンを通り過ぎて連続的に移動している。これら公知の実施態様の欠点は以下の通りである。すなわち、コンベヤーの急速な汚れとリムを支持するスピンドル34の頂上の支持面33上の粉末の集積によって、リム4が電気接地から電気的に絶縁してしまう。結果として、スプレーガン38,39の一つ又は複数の高圧電極によって通常生じる高圧の静電場の作用が大きく減少してしまう。従って、フロアコンベヤー32及びスピンドル34を頻繁に掃除しなければならない。スピンドル34でフロアコンベヤー32内への塗装粉末の進入を防ぐため、或いは、少なくとも減少させるため、過度の空気圧を、前記コンベヤーを保護するハウジング44内に生じさせなければならない。リム4に定着する周囲の塵埃は塗装の質を低下させてしまう。コンベヤー32上のリム4が連続して配置されると共に塗装されているだけなので、同じ数のリムが図1,2のような公知の装置で塗装されるためには、運搬速度が二倍とされなければならない。この特徴には、リム4上の塗装粉末をオーブンで焼くことが図1、2の装置の場合より長時間かかるというさらなる欠点を伴う。一方、図3〜5の装置は、塗装粉末がリムの凹所により進入することが可能になるという図1、2の装置を超える利点を提供すると共に、低減した影の副作用を提供する。
【0009】
【特許文献1】米国特許第4357900号明細書
【特許文献2】米国特許第5353995号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、塗装の質の改善を実現すると共により少ない塗料で済む装置及び方法を作り出すことである。さらに、本発明は、より少ない設備機器を用いる一方で、一つの塗装ステーションで同時にいくつかの対象物を塗装することができ、それによって、対象物の低速な運搬速度でたくさんの対象物が短時間で塗装され、塗装された対象物を焼くために比較的短時間のオーブンだけが必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
これらの問題は請求項1の特徴による本発明によって解決される。
【0012】
従って、本発明は、円形の対象物の正面/背面を、特に、ホイール及びリムの正面及び背面を、対象物がコンベヤー上にある間に塗料でスプレー塗装する塗装装置に関し、該塗装装置は、回転軸線周りに回転可能な少なくとも一つの動力取出要素が取り付けられた柱と、所定の回転角で最低限一つの動力取出要素を往復回転させる少なくとも一つの駆動要素とを有し、動力取出要素毎に一つのスプレー装置ホルダ要素をさらに有し、前記ホルダ要素は、動力取出要素に非回転に接続された又は接続可能な、スプレー方向に見て後方のホルダ端部と、少なくとも一つのスプレー装置に接続された又は接続可能な、少なくとも一つの、スプレー方向に見て前方のホルダ要素端部とを有し、前方ホルダ端部は回転軸線から径方向に偏倚しており、その結果として、スプレー装置及びそのスプレー噴射と共同して、所定の回転角だけ動力取出要素の回転軸線周りに往復回転可能である一方、塗装される対象物はスプレー装置に対向して配置されると共に非回転であることを特徴とする。
【0013】
さらに、本発明の目的は特許請求の範囲に定められる方法によって達成される。
【0014】
従って、また、本発明の目的は、円形の対象物、特に、ホイール及びリムの正面及び背面に、対象物がコンベヤーによって運搬されている間に正面上に少なくとも一つのスプレー装置を用いてスプレーされる塗料をスプレー塗装する方法によって達成され、該方法は、最低限一つのスプレー装置が回転軸線周りに所定の回転角だけ円形の軌道に沿って往復移動され、このスプレー装置は、回転軸線から所定の径方向の距離だけ離れて配置され、塗料が、円形の往復運動中に対象物の正面にスプレー装置によってスプレーされ、スプレーしながら、最低限一つのスプレー装置が前記対象物に対して平行な運動方向に、対象物と同じ速度で移動されるか、又は対象物及び最低限一つのスプレー装置が運搬方向に不動にされ(静止され)続けていることを特徴とする。
【0015】
従属した特許請求の範囲が本発明のさらなる特徴を定めている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
添付図面に示した例示的な実施態様を用いて本発明を以下に説明する。
【0017】
本発明は、正面/背面16の中心軸線14が略水平となるように、対象物4がコンベヤーのコンベヤー要素によって移動される間に、円形の対象物4の正面/背面16を塗料でスプレー塗装するためのスプレー塗装装置に関する。
【0018】
例示的に、対象物4は、任意の目的のために用いられる任意のホイール、特に、車両のホイールリムである。例えば、前記リムの正面(外面)16は、リム土台座部52及びリムフランジ54を含む。さらに、本発明のスプレー塗装装置は、リム4の背面(反対面)56の塗装も可能にする。しかし、前記背面はリムの正面18と同じ高い品質を必要としないので、例えば、前記背面が、単にリフト24で上下に移動可能なスプレー装置20、22を単に備えるだけの図1に示すスプレー塗装装置を単に必要とする他のスプレー塗装装置を用いても良い。塗料は液体でも良いが、好ましくは、粉末状である。様々な液体の塗料の場合と異なり、塗装粉末は、有害な溶剤が入っていないか、或いは、環境に配慮した溶剤である。
【0019】
好ましくは、コンベヤーは、リム4が、例えば吊り具58によってそこから吊り下げられているコンベヤーチェーン2が例示的に取り付けられているオーバーヘッドコンベヤーであり、その結果として、リム4の中心軸線14は略水平である。「略水平」という表現は、中心軸線14が水平にできるだけ接近して整列されており、水平から20度以上離れておらず、さもなければ、作用し始めるスプレー装置から等しい距離だけ離れていることが好ましい。
【0020】
本発明は、少なくとも一つ、好ましくは二つの支柱60(例えば、柱、壁、又はロボット)を有し、そのそれぞれは、一つ又は好ましくは二つ又はそれ以上の鉛直に重畳したモーター回転式の動力取出要素62,63と64,65をそれぞれ支持し、そのそれぞれは、略水平の回転軸線66を備えると共に、双方向矢印67/68によって図6、8に概略的に示されるような駆動要素による最大180度の回転角に亘って往復回転する。動力取出要素62,63,64,65の駆動要素は、それ自身の駆動要素70を備えた動力取出要素であるか、又は連結駆動要素72が、二つ毎又はそれ以上毎の動力取出要素62,63又は64,65のために用いられる。連結駆動要素72は、例示的に、支柱60の脚要素74上又は脚要素内に取り付けられている。スプレー塗装動作中に、回転軸線66は、塗装されたリム4の中心軸線14と略一直線である。
【0021】
一つのスプレー装置ホルダ76は、各動力取出要素62,63,64,65に備わり、特定の動力取出要素62,63,64,65に非回転に接続された又は接続可能な一つの後方ホルダ端部78と、スプレー装置80,81に接続された又は接続可能な二つの前方ホルダ端部84、86とを有する。スプレー装置ホルダ76の二つの前方ホルダ端部84、86は、後方ホルダ端部78及び関連する動力取出要素62,63,64,65の回転軸線66に対して径方向に等しい量偏倚しており、その結果として、それら及び二つのスプレー装置80,81は、関連する動力取出要素62,63,64,65の回転軸線66周りに前記スプレー装置のスプレー噴射6に対して最大180度の回転角に亘って弓形に往復回転可能である。
【0022】
図7は、リム4の正面を示すと共に、動力取出要素62,63,64,65のうちの一つの二つのスプレー装置80,81と、それぞれ180度程度の往復回転を示す矢印67,68とを概略的に示す。スプレー装置80,81の両方は、回転方向67に約180度だけ同時に回転し、そして反対の回転方向68に約180度だけ同時に回転する。
【0023】
本発明の好適な実施態様において、関連する動力取出要素62,63,64,65の回転軸線66周りのスプレー装置80,81の回転角が、それぞれ180度未満であるが、スプレー装置80のスプレー噴射の横断面6−1及び特定の他方のスプレー装置81のスプレー噴射の横断面6−2は、図9に概略的に示すように回転方向の反転位置で部分的に重複するのに十分に大きい。この特徴は、回転方向の反転位置に行われた塗装でさえ、スプレー装置80,81が移動されている正面16の他方の位置で厚くはなく、均一であるという利点を提供する。
【0024】
本発明の好適な実施態様において、各スプレー装置の支柱76のスプレー装置80,81の回転方向の反転位置の中心は、理論的に、そしておよそ、特定の関連する動力取出要素62,63,64,65の水平の回転軸線66に位置すると共に前記回転軸線66に対して放射状の水平面に位置すると同時に、水平方向に対して0度と30度程度の間、好ましくは約0度である角度を限定している。0度で、二つのスプレー装置80,81は、図8に平面図で示すようなスプレー噴射6の中心軸線に対して理論的に同一平面内に隣同士水平に位置する。対応するように、図9は、二つの回転方向の反転位置間で回転移動の軌道上に90度回転した中間位置の二つのスプレー装置80,81を示す。
【0025】
図9の好適な実施態様に関して「およそ水平」という表現は、平面が、スプレー装置ホルダ76の二つのスプレー装置80,81の二つの回転端部位置の少なくとも一方において、又は、回転端部位置の両方において水平方向から、スプレー噴射の横断面6−1及び6−2が回転方向の反転位置で少なくとも部分的に重複している範囲にまで、偏倚していることを意味する。
【0026】
塗装粉末で塗装するとき、わずかな粉末粒子が常に下方へ流されるだろう。それにもかかわらず、下方のリム半体で同じ塗装厚さを上方のリム半体と同様に塗装されるために、単位時間当たりに、より少ない塗装粉末が、上方のリム半体を塗装するスプレー装置80又は81よりも、下方のリム半体を塗装するスプレー装置80又は81に供給される。
【0027】
スプレー装置ホルダ76は、単一のスプレー装置80(又は81)のみが取り付けられている場合には、そのとき、水平の回転軸線66周りの回転角が最大限でも360度であり、或いは、図10に関して、スプレー噴射の横断面6−1のみが回転方向の反転位置にそれ自身部分的に重複している場合には、若干より少ない。
【0028】
図6,7,8,9に示す好適な実施態様に関して、各支柱60は、互いに平行な回転軸線66を備える二つの鉛直に重畳した動力取出要素62,63又は64,65を有し、その結果として、二つのリム4を各支柱60で同時に塗装可能である。四つのうちの二つの回転軸線66は、上下に鉛直に配置され、二つは水平方向に隣同士である。例示的に、二つのリムは一方の支柱60で一回目の塗装がなされ、すでに一度塗装がされた二つのリムは他方の支柱で二回目の塗装がなされる。
【0029】
電子制御装置90は、動力取出要素62,63,64,65の往復運動、ひいてはスプレー装置80,81の円形の往復運動の開始/停止と、さらに、コンベヤー2の運搬速度に応じて、そしてまた、スプレー装置80,81の前に存在するリムに応じて、スプレー処理(塗料のスプレー)の開始/停止とを自動的に制御する。好ましくは、リム4は、スプレー装置80,81のスプレー噴射領域を通る横方の水平方向92に一定速度でコンベヤー2によって移動する。スプレー装置80,81が塗料をリム4上へスプレーする間に、支柱60が、同じ速度で(同調して)、コンベヤー2のコンベヤーチェーンに対して平行に移動する。スプレーの終了時に、支柱60は、コンベヤーチェーン18に対して平行に、前記チェーンの運動方向と反対に移動して初期位置に戻る。また、電子制御装置90は、支柱60のこの前後運動を自動的に制御する。このために、支柱60は、コンベヤーチェーン2に対して平行な省略した駆動手段によって移動される台車又は送り台であることが好ましい。
【0030】
リムの異なる幅が、常に、スプレー装置80,81から同じ距離であるために、以下に挙げるものが様々な位置に調節可能であるので有利である。すなわち、図6の矢印92によって概略的に示されるように、支柱60、及び/又は、支柱60に関するスプレー装置80,81、及び/又は、スプレー装置台76、及び/又は、コンベヤーチェーン2の運搬方向90に対して横方の支柱60に関するそれぞれの動力取出要素62,63,64,65である。このような調節は、ホール又はリム4の寸法及び形状に応じて、電子制御装置90によって自動的に制御される。また、相互の調節は、単純な態様の実装で実現可能である。
【0031】
図6,8によれば、スプレー装置80,81は、水平且つ動力取出要素62,63,64,65の回転軸線66に対して平行なスプレー噴射6、或いは、前記回転軸線66に対して、例えば、外方向に斜めのスプレー噴射6の方向に配置される。このように、様々な直径を備え、且つ、径方向内側又は斜めに内側に向いた正面/背面を備えるホイール及びリム4、例えば、リムフランジ52を集中的に塗装可能である。好適な実施態様において、スプレー装置は、支柱60に対してスプレー方向において可変に調節可能である。
【0032】
スプレー装置80,81は、スプレーノズル又は回転式霧化ヘッド又は、好ましくはスプレー装置(スプレーガン)であって、塗料のこのようなスプレーガン又は回転式霧化ヘッドがその前端部に取り付けられると共に、後方ハウジング部分に、塗料及び圧縮空気用流体管と、好ましくは高電圧装置も備えるスプレー装置である。ほとんどの場合、塗料が、電気接地で対象物(リム4)によって静電気的に引きつけられるように、一体の、或いは外付けの高電圧装置が、一つ又は複数の高圧電極を用いて塗料を帯電させるために備わっている。
【0033】
スプレー装置ホルダ76は、付加的な構成要素であり、すなわち、例えばスプレー装置80,81のハウジングのような構成要素を構成する。
【0034】
本発明のすべての実施態様において、動力取出要素62及び/又は63及び/又は64及び/又は65の回転軸線66周りの一つ又は複数のスプレー装置80又は81の回転移動の回転角は、前記180度又は360度よりも大きい。前記回転角が、360度よりも大きく、特に720度より大きいとき、スプレー装置80,81の供給管(塗料、圧縮空気、電気ケーブル)がスプレー装置ホルダ76に巻かれ或いはそこから巻き戻す場合に問題が生じ、すなわち、予防手段が講じられなければならない。
【0035】
スプレー噴射6が、リム4に向けられているがリム間の間隙には向けられていない二つのアプローチが用いられる。好適なアプローチは、コンベヤーチェーン2を連続的に操作すると共に各スプレー処理の間にコンベヤーチェーン2と同調して支柱60を移動させ、その後、支柱60を、コンベヤーチェーン2の進行方向反対に、それらの初期位置に戻すことである。他方のアプローチでは、コンベヤーチェーン2が断続的に移動し、コンベヤーチェーン2が停止されると共に、リム4が、コンベヤーチェーンの長手方向には移動しないスプレー装置80,81と対向する位置にあるときにのみスプレーが行われる。
【0036】
図12に示す本発明の実施態様において、フロアコンベヤー96は、コンベヤーチェーン2を備えるオーバーヘッドコンベヤーの代わりに用いられ、対象物4が、前記フロアコンベヤー上に非回転に配置され、それによってその中心軸線14が鉛直になる。支柱60の最低限一つの動力取出要素62は、その回転軸線が鉛直になるように配置される。回転軸線66は、塗装される特定の対象物の中心軸線14との一直線がスプレー中に保たれている。そのために、フロアコンベヤー96は運搬方向97に断続的に移動されると共に支柱60はこの方向に固定されるか、または、フロアコンベヤー96は運搬方向に連続的に移動すると共に支柱60はフロアコンベヤーと同調して移動し、そして、双方向矢印98によって示されるような各スプレー処理の後に逆行する。別の双方向矢印99は、動力取出要素62の回転軸線66の長手方向に、従って、フロアコンベヤー96に対して横方に支柱60及び/又はスプレー装置ホルダ76及び/又はスプレー装置80,81を調節する方向を示す。その他の点では、前述の実施態様は、図6から11に関して述べたのと同じ特徴及び変更例を有する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】従来型の粉末スプレー塗装装置の対象物の運動方向における横断面図である。
【図2】図1の従来型のスプレー塗装装置の側断面図である。
【図3】従来型の粉末スプレー塗装装置の別の実施態様の側面図である。
【図4】図3のスプレー塗装装置の平面図である。
【図5】図3の従来型のスプレー塗装装置の平面V−Vにおける横断面図である。
【図6】対象物の運動方向に見られる、車両のホイールリム形状の円形の対象物の正面/背面にスプレー塗装をするための本発明のスプレー塗装装置の好適な実施態様を概略的に示す。
【図7】図6のリムの正面図を概略的に示す。
【図8】図6に示す本発明のスプレー塗装装置の平面図を概略的に示す。
【図9】スプレー中の本発明の二つのスプレー装置の約180度に亘る円形の往復運動を概略的に示す。
【図10】本発明の別の実施態様の一つのスプレー処理の間に約360度に亘る円形の往復運動を概略的に示す。
【図11】図6の平面XI−XIにおける縦断面図である。
【図12】本発明の別のスプレー塗装装置の側面図を概略的に示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円形の対象物(4)の正面及び/又は背面(16)、特に、ホイール及びリムの正面/背面を、前記対象物(4)がコンベヤー(2,96)によって運搬されている間に塗料でスプレー塗装するためのスプレー塗装装置において、回転軸線(66)周りに回転可能な少なくとも一つの動力取出要素(62,63,64,65)及び所定の回転角に亘って最低限一つの前記動力取出要素(62,63,64,65)を往復回転させる少なくとも一つの駆動要素(70,72)を備える支柱(60)と、前記動力取出要素(62,63,64,65)毎に一つあるスプレー装置ホルダ(76)であって、該スプレー装置ホルダ(76)が、前記動力取出要素(62,63,64,65)に非回転に接続された又は接続可能な、スプレー方向に見て後方のホルダ端部(78)と、少なくとも一つのスプレー装置(80,81)に接続された又は接続可能な、少なくとも一つの、スプレー方向に見て前方のホルダ端部(84,86)とを有し、前記スプレー装置(80,81)及びこのスプレー装置のスプレー噴射(6)と共同して、前記前方ホルダ端部が、所定の回転角だけ弓形に前記動力取出要素(62,63,64,65)の回転軸線(66)周りに往復回転可能である一方、塗装される前記対象物がスプレー装置(80,81)に対向して非回転に配置されるように、前記前方ホルダ端部(84,86)が前記回転軸線(66)に対して径方向に偏倚しているスプレー装置ホルダ(76)とを有することを特徴とするスプレー塗装装置。
【請求項2】
前記動力取出要素(62,63,64,65)の回転軸線(66)が略鉛直下方に向いており、最低限一つの前記スプレー装置(80,81)が前記動力取出要素よりも下方に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のスプレー塗装装置。
【請求項3】
前記動力取出要素(62,63,64,65)の回転軸線(66)が略水平に配置されており、最低限一つの前記スプレー装置(80,81)が前記動力取出要素よりもさらに前方に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のスプレー塗装装置。
【請求項4】
前記所定の回転角が360度、又は360度未満ではあるが、前記対象物(4)の正面(16)で前記スプレー装置(80,81)のスプレー噴射の横断面が、前記回転方向の反転位置でそれ自身少なくとも部分的に重複するのに十分大きい角度であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一つに記載のスプレー塗装装置。
【請求項5】
前記スプレー装置ホルダ(76)は二つの前記前方ホルダ端部(84,86)が取り付けられ、そのそれぞれが少なくとも一つの前記スプレー装置(80,81)に接続された又は接続可能であり、前記二つの前方ホルダ端部(84,86)が前記回転軸線に対して約180度だけ正反対にあることを特徴とする請求項1から4のいずれか一つに記載のスプレー塗装装置。
【請求項6】
前記所定の回転角が180度、又は180度未満ではあるが、前記二つのスプレー装置(80,81)のスプレー噴射の横断面が、前記回転方向の反転位置で少なくとも部分的に重複するのに十分大きい角度であることを特徴とする請求項5に記載のスプレー塗装装置。
【請求項7】
前記スプレー装置(80,81)のスプレー噴射の中心が前記回転方向の反転位置にあるときに、前記回転軸線(66)に位置すると共に該回転軸線に対して放射状の理論的な平面に位置し、該理論的な平面が水平方向に対して0度と30度程度の間の角度を限定していることを特徴とする請求項5又は6に記載のスプレー塗装装置。
【請求項8】
前記支柱(60)は前記動力取出要素(62,63,64,65)の少なくとも二つが取り付けられ、それらの水平の前記回転軸線(66)が平行に配置されると共に相互に鉛直に重畳していることを特徴とする請求項1から7のいずれか一つに記載のスプレー塗装装置。
【請求項9】
前記支柱(60)が水平な台車又は送り台であって、制御装置からの信号に応じて、前記回転軸線(66)に対して横方に、前記対象物と同調すると共に平行に自動的に移動可能であることを特徴とする請求項1から8のいずれか一つに記載のスプレー塗装装置。
【請求項10】
前記支柱(60)が前記回転軸線(66)の軸方向に往復移動可能な台車又は送り台であることを特徴とする請求項1から9のいずれか一つに記載のスプレー塗装装置。
【請求項11】
前記スプレー装置ホルダ(76)が、前記回転可能な動力取出要素(62,63,64,65)から様々な距離に最低限一つの前記スプレー装置(80,81)を配置するように設計されていることを特徴とする請求項1から10のいずれか一つに記載のスプレー塗装装置。
【請求項12】
前記動力取出要素(62,63,64,65)が、その回転軸線(66)に沿って前記支柱(60)に対して様々な位置に軸方向移動可能であることを特徴とする請求項1から11のいずれか一つに記載のスプレー塗装装置。
【請求項13】
最低限一つの前記動力取出要素(62,63,64,65)の回転軸線に対して横方に前記対象物を移動させるコンベヤーを特徴とする請求項1から12のいずれか一つに記載のスプレー塗装装置。
【請求項14】
円形の対象物(4)の正面/背面(16)、特に、ホイール及びリムの正面/背面に、前記対象物(4)がコンベヤー(2,96)によって運搬されている間に前記正面(16)上に少なくとも一つのスプレー装置(80,81)によってスプレーされる塗料をスプレー塗装するための方法において、最低限一つの前記スプレー装置(80,81)が回転軸線(66)周りに所定の回転角だけ円形の軌道に沿って往復移動され、前記スプレー装置が、前記回転軸線(66)から所定の径方向の距離だけ離され、塗料が、前記円形の往復運動中に前記対象物の正面に最低限一つの前記スプレー装置によってスプレーされ、スプレー処理中に、最低限一つの前記スプレー装置(80,81)が前記対象物に対して平行な対象物の進行方向に対象物と同じ速度で移動されるか、又は前記対象物(4)及び最低限一つの前記スプレー装置(80,81)が進行方向に不動にされ(静止され)続けていることを特徴とする方法。
【請求項15】
動力取出要素(62,63,64,65)の回転軸線(66)が鉛直下方に向いており、最低限一つの前記スプレー装置(80,81)が前記動力取出要素よりも下方に配置されていることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
動力取出要素(62,63,64,65)の回転軸線(66)が水平前方に向いており、最低限一つの前記スプレー装置(80,81)が前記動力取出要素よりもスプレー方向においてさらに前方にあることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項17】
二つの前記スプレー装置(80,81)が用いられ、これらスプレー装置が、前記回転軸線(66)からそれぞれ径方向均等な距離だけ離れて相互に反対の位置で、動力取出要素(62,63,64,65)の回転軸線(66)に正反対に配置されていることを特徴とする請求項14から16のいずれか一つに記載の方法。
【請求項18】
前記往復運動が、前記スプレー装置(80,81)のスプレー噴射の横断面が、回転方向の反転位置で部分的に重複する程度に少なくとも大きいが180度未満である回転角に亘って行われることを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記動力取出要素(62,63,64,65)の回転軸線(66)が略水平で、前記スプレー装置(80,81)の中心が前記回転方向の反転位置にあるときに、前記回転軸線(66)に位置すると共に水平方向に対して0度と30度程度の間の角度で前記回転軸線に対して軸方向に亘る理論的な平面に位置することを特徴とする請求項17又は18に記載の方法。
【請求項20】
前記回転中に、上方の円弧に沿って移動する特定のスプレー装置によって前記正面(16)にスプレーされるよりも、単位時間当たりにより少ない塗料が、下方の円弧に沿って移動する特定のスプレー装置によって前記対象物の正面(16)にスプレーされることを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項21】
スプレー処理中に、最低限一つの前記スプレー装置が、前述のように円形に往復回転すると同時に、塗装される前記特定の対象物に対して平行且つ同調して、対象物の運搬方向に移動されることを特徴とする請求項14から20のいずれか一つに記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2007−514532(P2007−514532A)
【公表日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−544588(P2006−544588)
【出願日】平成16年12月15日(2004.12.15)
【国際出願番号】PCT/IB2004/004145
【国際公開番号】WO2005/058508
【国際公開日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【出願人】(501060792)イーテーベー ゲマ アクチェンゲゼルシャフト (8)
【Fターム(参考)】