説明

スプーフィングによる信号の矛盾の検出器

本発明は、スプーフィングの信号の矛盾の検出(SIDS)、すなわち、空間中の複数の地点で受信された信号の矛盾を利用してスプーフィングを検出することに関した方法および装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に言えば、位置決定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
米国国防総省の全地球位置決定システム(GPS)、およびロシア測位衛星システム(GLONASS)といった位置決定システムは、民間用および軍隊用の両方で、さまざまな用途においてますます用いられるようになっている。こうしたシステムにおいては、1以上の受信機またはそれと類似の装置を用いて受信信号を解析し、特に前記1以上の受信機および受信機を携帯している人または物の現在位置を特定する。
【0003】
残念ながら、位置決定システムは、スプーフィング(すなわち、位置特定システムの受信機に対し偽装信号を提示することで、偽の位置、速度、および/あるいはタイミング情報を有効なものとして受け取らせること)によるシステム転覆の試みから逃れられない。一般的に、スプーフィングの目的とは、ダイナミックプラットフォーム(以下、「犠牲者」とも言う)を、意図する経路から、スプーフィング工作者(以下、「スプーファ」とも言う)の思い通りに他の経路へと、気付かれないようにそらせることである。本明細書では以下、「航法信号」という言葉を使用する場合、受信機(たとえば、無線航法受信機)のアンテナまたはアンテナ素子の位置特定に役立つ情報を前記受信機に供給する形(目的)で航法システムによって送信される信号のことを示す。
【0004】

は、アンテナまたはアンテナ素子a、すなわち無線航法の受信機の部品の位置(Xa,Ya,Za)を特徴付けるベクトルとする。

は、aから無線航法信号nmの無線送信機rmへの見通し(Line of sight: LOS)の単位ベクトルとする。rmそれぞれの位置

は、データベースの中に記憶されているか、航法信号と共に発信されるか、あるいは両方の何らかの組み合わせにより既知である。
aにおいて観測される信号nmの値の測定値をスカラー

とする。この信号値は、信号により伝達される航法情報(たとえば、距離、擬似距離、位相、またはタイミング情報)を量子化したもので、これらは全て実質的には座標軸x,y,zという基本空間単位に尺度付けられる。この測定

のaの位置の航法推定に対する寄与は、等式

によって特徴付けられる。この等式は、

(等式1)に変形できる。測定が位相である場合には、等式には未知数の全周波と部分周波とが含まれ、すなわち、

(Iは整数)となる。n個の発信機からの十分な数の一連の測定値によりaの位置の解を得ることができる。
【0005】
スプーファは、航法システムに検出されない形で同システムによる位置推定に間違いを生じさせることを目的として、正しい航法信号nmの一部または全てを偽りの信号またはスプーフィング信号smに置き換える。
【0006】
航法システムはその位置に関し何らかの推定値

を有し、したがって事前の推定

が形成されていると考えられる。スプーファにより生成された偽りの測定

が信頼性を持つためには次の条件が満たされなければならない。その条件とは、

(等式2)で、

は事前の推定

における可能誤差の統計と、測定ノイズおよび測定の信憑性についての所望のレベルの確実性に関する統計とを考慮に入れたしきい値である。等式2のしきい値条件をパスすることに加え、スプーファが超えなければならないもう1つの障害がある。n個の発信機からの等式1の一連の測定は首尾一貫していなければならない。

を取り込んだ航法解の形成後の遡及推定を

とする。一連のn個の測定が首尾一貫していると見なすには、次の条件が満たされなければならない。その条件とは、

(等式3)で、しきい値

は、等式2におけるしきい値と同様の統計的な方法で計算される。スプーファは、スプーフィングの対象となる移動体を正確に追跡し、慎重に航法信号をシュミレートし、そして偽りの情報が正しい情報からそれる率を制御して、等式2および等式3の条件の順守性を確実にすることによって、全てのスプーフィング信号を1箇所から送信している場合でさえ成功する可能性がある。一般的な習慣として、誤った測定が受け入れられる事態を回避するため、航行解に組み込まれる測定に対しては、上述の等式2および等式3、またはそれらと同様の手段によるテストが適用される。
【0007】
従来から知られた方法および装置とを用いると、スプーファが成功する可能性があるため、位置決定システムの受信機(具体的に言えば、GPSおよびGLONASSといった衛星位置決定システムの受信機)へのスプーフィングを阻止するための方法および装置が必要である。
位置決定システムとそれらに用いられる技術については、少なくとも次の出版物を参照すればさらに情報を得ることができる。なお、これら出版物はそれぞれ、ここでの参照により全体が本発明に組み入れられるものとする。
【0008】
【非特許文献1】Global Positioning System: Signals, Measurements and Performance,(Pratap Misra他著、 ISBN: 0970954409)
【非特許文献2】GPS Bluebook, (The Institute of Navigation出版)
【非特許文献3】Monographs of the Global Positioning System ("GPS Red Books"), (The Institute of Navigation出版)
【非特許文献4】Institute of Navigation Proceedings of the National Technical Meeting 2003, Precise Velocity Estimation Using a Stand-Alone GPS Receiver, (F. van Graas, A. Soloviev著、 NTM 03)
【特許文献1】米国特許文書 5,583,774号, Assured-Integrity Monitored-Extrapolation Navigation Apparatus, (1996年2月10日)
【特許文献2】米国特許文書 6,417,802号, Integrated Inertial/GPS Navigation System, (2002年7月9日)
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の実施の形態は、スプーフィングの信号矛盾の検出(SIDS)、すなわち、空間中の複数の地点で受信された信号の矛盾を利用したスプーフィングの検出に関する方法と装置とで成る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の目的および効果、そして本質については、添付図面を参照しながら以下の詳細な説明を読めば容易に明らかになるだろう。なお、全図を通じて同じ参照番号は同じ部品を示している。
SIDS(スプーフィングの信号の矛盾の検出)は、標準のテストの適用に加え、スプーフィング信号が予想されるLOSに沿って放射されず、空間中の複数の地点から観測された場合には、関連する計測は必然的に矛盾していることになる、という事実を利用している。
【0011】
一対のアンテナまたはアンテナ素子(ai,aj)はベクトル

で表されるとする。アンテナ対(ai,aj)の中点

から無線航法信号nmの発信機

の位置までの見通しの単位ベクトルを

とする。
nmにより伝達される情報について、

で生成される計測値と

で生成される計測値との間の差をスカラー

と考える(特定の情報が位相である場合は、

は2つのアンテナ間の位相差、すなわち

である)。こうした種類の計測は、等式

(等式4)により一般化することができ、添え字(i,j, m)のユニークな組み合わせはそれぞれ1回の観測を表している。
【0012】
図1には、1組のアンテナ対と1つの航海情報源とに関し、通常の(スプーフィングされていない)状態が示されている。図は注釈付きの「位相」であるが、測定は、距離、擬似距離、位相、またはタイミングで行うことができる。無線航法情報源までの距離がアンテナ同士の距離間隔に比べてはるかに大きいならば、アンテナ対の中点までの単位ベクトルを用いた第1近似は有効である。代替的な方法として、アンテナ対のそれぞれのアンテナから無線航法情報源までの単位ベクトルを利用するものがある。
【0013】
図1の右側にある数式は上述した等式4から導かれたものである。留意すべき点として、両辺の測定単位は一貫していなければならない。測定値Φが距離または擬似距離であれば問題はない。もし測定値がタイミングまたは位相であれば、各等式の一辺または他辺は適切に尺度付ける必要がある。
【0014】
図2は、図1にスプーフィングの事例を重ね合わせた図である。記号<・>は、スプーフィング信号からの計測であることを示すのに用いられている。また、図2は、スプーフィングの波長と航法信号とが異なっている状態を示している。この波長の差異は、航空機が航路に沿って走行する際に、本物の航法信号から見られるはずの位相変化率と同じものがスプーフィング信号からも見られるように、スプーファの手でスプーフィング信号の周波数が調整された場合に発生する。
【0015】
同時SIDS
同時SIDSの方法は、等式4によって特徴付けられ、図2に図示されるような同時観測値の組を一貫性に関して分析するものである。同時SIDSには、空間中の2つの地点において観測が同時になされるよう物理的なアンテナ対が少なくとも1対存在する必要がある。この文脈において、同時という言葉は、複数の測定の間のいかなる時間のずれも工程中に補償されるか、あるいは、補償されなくても工程の全体的な結果に重大な影響を及ぼさない、という意味で理解されるべきである。許容できる時間のずれの厳密な範囲は、実装時の仕様である。この点をさらに詳述するため、以下の状況を考える。その状況とは、(a)受信および発信アンテナの相対速度はゼロであり、(b)発信機の周波数は完全に安定かつ既知であり、(c)各測定が行われた時間は既知であり、(d)他に一時的誤差原因がなかった、というものである。こうした場合には、多くの秒差を空けて行われた位相差測定も同時と見なすことができるだろう。なぜなら、時間差を位相変化に変換し直し、そうして前記時間差の影響を取り除くことができるからである。適切な誤報率の設定を別にすれば、スプーフィング信号の検知の確率はSIDSの有効性に左右される。
【0016】
SIDSの有効性は以下の点に影響される。それらの点とは、(a)本物の情報源までのLOSとスプーフィング情報源までのLOSとの間の角度(すなわち、

)、(b)

の測定におけるノイズ、(c)

それぞれの推定における不確実性、そして(d)

の認識における不確実性(

の推定が

および

から引き出されることによるもの)、である。
【0017】
rmは航法情報源であるため、その位置は、要求性能を備えた形で航行するのに必要な精度の範囲内で既知であると考えられる。さらに、

は航法信号であるため、信号のノイズは航法作業にとって不都合のないものであると考えられる。最後に、信号を航法信号のために使用するのに必要な信号特性も既知であると考えられる(たとえば、位相測定が利用される場合は、周波数や変調は既知であると考えられる)。
【0018】
SIDSの有効性の決定において最も重要な変数は、LOSの差異と

の推定における不確実性であり、

は次の3つの成分要素を有すると考えられる。それら要素とは、(1)大きさ

(既知であると考えられる)、(2)単位ベクトル

により特定される方向、そして(3)

によって特定される位置、である。
【0019】

の3つの成分要素全てが既知ならば(または合理的に推定されていれば)、

の推定

が形成でき、

(等式5)となる。
【0020】

の成分要素の既知でない直交要素それぞれに対しては、さらに別個の測定が必要となる。こうした測定は、別の(理想的には直交の)アンテナ対または別の航法情報源を用いて実現することができる。別個に追加で行う測定により、観測に対するノイズの影響が小さくなることで、工程の有効性が高められる。さらに、時系列に数回行う同時測定を用いてノイズの影響を減少させることもできる。
【0021】
観測の一部または全てがスプーフィングされているかどうかの決定は、等式2の方法で残差を見直すことで実現できる。
測定が位相領域で行われる場合は複雑な問題がある。アンテナ基線対キャリア波長の大きさ

によっては、

となるような多値の

があり得る。すなわち、スプーフィング測定値と本物の測定値とを区別できない。他の複数の航海情報源からの測定により、スプーフィングの進行が明らかになるかもしれないが、現時点のあいまい性の問題は具体的に解決されるわけではない。別のアンテナ対を使用すれば、課題となっているあいまい性の問題は殆ど確実に解決されるだろう。
3つ目の取り得る方法は、ジオメトリが変化するのを待つか、またはそれを変化させることである。ジオメトリが変化すると、矛盾は急速に観測可能になり、角度のあいまい性が大きくなれば、それだけシステムが矛盾を判別する力は高くなる。
【0022】
いったん矛盾が立証されれば、測定を用いて、残差が最小になる値(一組の測定の等式の場合には、多重決定されていない唯一の解となる値)

を確立することができる。

は、スプーフィング発信機の方位(bearing)を示し、

の変化率を用いて距離を推定できる。
【0023】
連続SIDS
連続SIDSは、同時SIDSと同じ基本原理(すなわち、スプーファまでのLOS(見通し)と本物の情報源までの見通しとが同一線上にない場合、等式4により特徴付けられる一組の測定値の中に、アンテナ対が矛盾を観測するという事実)を利用している。同時SIDSは、2つのアンテナまたはアンテナ素子における同時期の測定値間の差異

に基づいている。連続SIDSは、同じアンテナにおいて時間tiと時間ti+1に行われた連続的な測定値間の差異

に基づいており、前記アンテナの位置は2回の測定の間に変化する。この一対のアンテナの位置は

と表示される。
【0024】
連続SIDSでは、スプーフィング検査の対象となる無線航法情報源からは独立したシステムによって、アンテナの相対的な位置変化を追跡しなければならない。この追跡は、慣性基準装置(IRS)を利用することで最も効率的に達成でき、前記装置は、装置自身とアンテナとの間でレバーアームを定めておくか、レバーアームの知識を事前に与えられている。場合によっては、慣性基準装置を適切な方法で設定および更新するために航法信号が用いられる(このことについては、米国特許文書5,583,774号の中で説明されているNorthrop Grumman社のAIME filterにより例示されている)。
【0025】
連続SIDSの決定手順は、次の点を除いて同時SIDSと同様である。その点とは、比較が



との間でなされ、

はアンテナの位置の相対的な変化に関する慣性推定に基づいている点である。連続SIDSにおいては、

に関する合理的に正確な事前の知識があれば、スプーフィング信号を信号により検査することができる。スプーファがスプーフィング信号を同じ位置から複数回放射している場合は、検知の有効性は向上し、

に関する事前の知識の欠如による影響は小さくなる。アンテナの追跡誤差は、同じ位置からのスプーフィング信号全てに共通であり、相関した誤差を示す。前記関連誤差は、カルマンフィルタ(たとえば、米国特許文書5,583,774号で説明されたNorthrop Grumman社の特許取得AIMEtmフィルタを適切な形で機械化したバージョン)の仮説検証において特定できる。この機械化において、矛盾の性質はスプーフィング信号の実際の到着角に関連しており、したがってスプーファの方位の推定を行うことができる。この方位の変化率により、スプーファまでの距離の推定値が示される。
【0026】
もしスプーファがアンテナを完璧に追跡でき、本物のアンテナから発せられたはずの信号を(もっともらしいスプーフィングを段々と引き起こしながら)模倣できれば、前記スプーファは検知されないままだろう。通常、信号対ノイズの考慮とは別に、スプーフィングの存在を正確に特定できる可能性は、以下の条件が備われば向上する。それら条件とは、(a)アンテナの動性が高まること(少なくとも部分的には、スプーファが追跡および模倣を行うのがより困難になるため)、(b)観測と観測との間隔を小さくすること(少なくとも部分的には、スプーファの側で必要となる精度が高くなるため)、(c)観測の時系列の長さを延ばすこと(少なくとも部分的には、ノイズの影響が小さくなるため)、(d)別個のアンテナによる位置決定システム(たとえば、IRS)の精度を高めること(少なくとも部分的には、スプーファの側で必要となる精度が高くなるため)、(e)レバーアームの推定における誤差を小さくすること(少なくとも部分的には、スプーファの側で必要となる精度が高くなるため)、(f)本物のLOSとスプーファへのLOSとの間の角度関数、そして(g)同じ位置から放射されるスプーフィング信号の数を大きくすること、である。
【0027】
観測と観測との間の時間的な間隔が十分短ければ、同時SIDSは相対位置領域ではなく速度領域において作用すると考えられ、問題となる航法情報源が無線航法衛星(たとえば、GPS)である場合は、参照1で説明された手法をこの問題に適用することができる。
【0028】
同時SIDSと連続SIDSとの相違
連続SIDSは、次の点で同時SIDSと異なる。それらの点とは、以下である。
(a)連続SIDSは、物理的なアンテナ対は必要とせず、単一のアンテナしか利用できない状態であっても使用できる。
(b)同時SIDSにより、完全なスプーフィング信号を失敗させることができる。なぜなら、スプーファが一貫性のある信号を別個のアンテナに送るには、本物の情報源へのLOSに沿って発信するしかないからである(そして、これは非実際的である)。連続SIDSはスプーファが完全でないことに基づいている。言い換えれば、連続SIDSは、スプーファがアンテナの電気的中点を厳密に追跡することはできないという点に依存している。
(c)同時SIDSはアンテナ間に同時に形成される差異を利用している。連続SIDSは同じアンテナにおいて時間を置いてなされた測定の間の差異を形成する。また、同時SIDSと連続SIDSとの両方で、ノイズの影響を減少させるためそうした時系列測定を利用することができる。
(d)同時SIDSにはアンテナの移動が必要ではない。一方、連続SIDSはアンテナの移動により生じるスプーフィングの誤差の検知に基づく方法である。
(e)同時SIDSにおいて、アンテナ対の指向方向は未知であってもよく、さらに観測を行うことで解決される。連続SIDSは、1つのアンテナの少なくとも2つの時点における相対位置についての事前の知識に基づいている。
【0029】
例示的な実施の形態の特徴
本明細書に記載の実施の形態には複数の新規な特徴が含まれ、実施の形態はそれぞれ、そうした特徴を1つ、またはそうした特徴の複数の組み合わせを有する。ここまで説明してきたそうした組み合わせに加えて、他に考えられる実施の形態として、ここでは明確には説明していない1つまたは複数のそうした特徴のあらゆる組み合わせ(こうした組み合わせは、説明してきた実施の形態と容易に区別がつくものである)が挙げられる。以下の段落でそうした特徴のうちいくつかの例を示しながら、本発明について多くの形で特徴付けることができる。
【0030】
本発明のいくつかの実施の形態はそれぞれ、場合によっては、空間中の複数の地点で受信された信号の矛盾を利用してスプーフィングを検知する装置であると特徴付けることができる。またそうしたいくつかの場合において、装置は衛星航法受信機303と、受信機303に電気的に連結された少なくとも1つのアンテナまたはアンテナ素子305と、少なくとも1つの慣性基準装置311と、を有する移動体301として特徴付けることができ、前記移動体301は、慣性基準装置311を利用して少なくとも1つのアンテナまたはアンテナ素子305の位置の変化を追跡するよう作られている(図3参照)。こうした例の他のものにおいて、装置は、衛星航法受信機403と、受信機403に電気的に連結された少なくとも2つのアンテナまたはアンテナ素子405、407とを有する移動体401として特徴付けることができる(図4参照)。
【0031】
本発明のいくつかの実施の形態はそれぞれ、場合によっては、1以上の無線受信機と少なくとも2つのアンテナまたはアンテナ素子とを使ったスプーフィングの検出方法として特徴付けることができ、その検出方法には、図5に例示されているように、ステップ501と、ステップ503と、そしてステップ505とが含まれる。ステップ501は、第1のアンテナで計測された第1の位相と第2のアンテナで計測された第2の位相との間の1つ目の差異を特定するステップ(第1の位相と第2の位相とは、受信された1つの航法信号を用いて同時に計測されている)、ステップ503は、1つ目の差異と位相差予測との間の2つ目の差異を特定するステップ(位相差予測は、航法信号の特徴と受信アンテナまたはアンテナ素子に対する航法信号のエミッタの位置とに関する知識をもとに予測されたもの)、そしてステップ505は、2つ目の差異を用いて、受信された航法信号が有効なものであるか否か特定するステップである。
【0032】
本発明のいくつかの実施の形態はそれぞれ、場合によっては、1つまたは複数の無線受信機と、少なくとも1つのアンテナまたはアンテナ素子と、そして慣性基準装置とを使ったスプーフィングの検出方法として特徴付けることができ、その方法には、ステップ601とステップ603とが含まれる。ステップ601は、慣性基準装置とアンテナとの間のレバーアームの動力の評価によりアンテナの速度変化を計算するステップで、ステップ603は、計算された速度変化を航法信号から導かれた速度変化と比較し、航法信号の有効性を推測するステップである。
【0033】
まとめ
SIDSは、信号のジオメトリにおける矛盾の検出によりスプーフィングの存在を発見するように設計されており、前記矛盾は、スプーファが一貫性のある信号を2つのアンテナの位置で同時に送り出すことができないという事実、または、スプーファが走行中の移動体のアンテナの電気的中点を、空間的な矛盾に関する検知を逃れるほど十分に正確な形で追跡できないという事実のために生じる。
【0034】
SIDSはスプーフィング検出のための3つのモードを有する。
(1)標準のしきい値テストモード
標準のしきい値テストモードでは、先述したように、信号値に関する事前の推定および遡及推定を、測定された信号値と比較する。
(2)同時モード
同時モードでは、アンテナ対またはアンテナ素子同士の間の信号値の相対的差異の推定が、統計的に適切な識別しきい値と比較される。航法システムの知識の状態により、識別には、別個の同時測定を1回または複数回行うことが必要だろう。望ましい最大誤報率は保ちつつ、ノイズを減らすと共に、検出の可能性を向上させるには、時系列の複数の測定値セットを用いればよく、各測定値セットは、1つまたは複数の航法信号について、および/あるいは1つまたは複数のアンテナ対によって行われた同時測定値から成る。
【0035】
(3)連続モード
連続モードでは、1つのアンテナにより2つの空間・時間的地点で連続的に観測された信号値の相対的差異の推定が、IRSといった別個の情報源により推定される相対的差異と比較される。望ましい最大誤報率は保ちつつ、ノイズを減らすと共に、検出の可能性を向上させるには、時系列の複数の測定値セットを用いればよく、各測定値セットは、1つまたは複数の航法信号について同時に行われた連続的な測定が含まれる。
【0036】
検出工程の一部として、同時SIDSと連続SIDSとの両方で、スプーフィング信号が来る方位を推定することができ、さらに、前記方位の変化率を推測することで、スプーファまでの距離を推定することができる。
利用可能なアンテナの構造が許すのであれば、以上の3つのモードを同時に組み合わせてSIDSを作用させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】移動体は1つのアンテナ対と1つの航法情報源とを有し、スプーフィングは発生していない、という状況を示す図である。
【図2】移動体は1つのアンテナ対と1つの航法情報源とを有し、スプーフィングが発生している、という状況を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態による装置のブロック図である。
【図4】本発明の実施の形態による装置のブロック図である。
【図5】本発明の実施の形態による方法のフローチャートである。
【図6】本発明の実施の形態による方法のフローチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空間中の複数の地点において受信された信号の矛盾を利用してスプーフィングを検出すること、
を特徴とする装置。
【請求項2】
無線航法受信機が組み込まれていること、
を特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
無線航法受信機は、衛星位置決めシステムの受信機であること、
を特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項4】
スプーフィングが検出されたことの明らかな情報源の距離と方位とを特定すること、
を特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項5】
1つの信号または複数の信号のサブセットそれぞれに関し、空間中の第1の地点で受信された信号の値と空間中の第2の地点で受信された信号の値との間の差異PHIを特定し、特定された差異PHIのそれぞれは、距離または擬似距離領域、時間領域、あるいは位相領域で測定されること、
を特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項6】
1つの信号、または複数の信号のサブセットそれぞれに対し、特定された差異PHIを差異の予想値と比較し、少なくとも1組の特定された差異と予想された差異との間の差異の大きさが、あらかじめ決められたしきい値より大きい場合には、スプーフィングが存在すると判断すること、
を特徴とする請求項5に記載の装置。
【請求項7】
複数のアンテナまたはアンテナ素子を用いて、アンテナまたはアンテナ素子の利用可能な全ての対のサブセットのそれぞれの対において測定された信号値の間の各差異PHIが同時に特定され、前記アンテナまたはアンテナ素子同士の距離間隔の大きさは既知であること、
を特徴とする請求項6に記載の装置。
【請求項8】
航法信号の受信のため受信アンテナを1つだけ利用し、アンテナの移動を追跡するための別個の手段をさらに有すること、
を特徴とする請求項6に記載の装置。
【請求項9】
アンテナの移動を追跡するための別個の手段は慣性基準装置であること、
を特徴とする請求項8に記載の装置。
【請求項10】
航法信号を利用して完成基準装置を設定および更新すること、
を特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載の装置。
【請求項11】
いくらかの時間間隔の間に第1の地点から第2の地点まで移動する1つのアンテナを使ってそれぞれの差異PHIを特定し、アンテナの移動を追跡する別個の手段に基づいて予想差異を形成すること、
を特徴とする請求項8に記載の装置。
【請求項12】
測定された少なくとも1つの航法記号の情報源の位置を、情報源の想定された位置と比較することでスプーフィングを検出し、想定された位置はシステムに記憶されたエフェメリスデータから特定されること、
を特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項13】
複数の航法信号情報源のサブセットに対する相対的な見通し(lines of sight)を特定し、装置の少なくとも1つの受信アンテナ位置の合理的な推定と相対的な見通しのパターンとが矛盾することを観測してスプーフィングが実行中であると推測すること、
を特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項14】
通常は同じ位置にはない情報源から発信される複数の航法信号が、1つまたは複数の同じ位置にある情報源から発信されたと見られる場合に、スプーフィングを検出すること、
を特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項15】
衛星航法受信機と、受信機に電気的に連結された少なくとも1つのアンテナまたはアンテナ素子とを有する移動体であること、
を特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項16】
移動体は、少なくとも1つの慣性基準装置をさらに有し、慣性基準装置を利用して少なくとも1つのアンテナまたはアンテナ素子の位置の変化を追跡すること、
を特徴とする請求項15に記載の装置。
【請求項17】
受信機に電気的に連結された少なくとも2つのアンテナまたはアンテナ素子を有すること、
を特徴とする請求項15に記載の装置。
【請求項18】
(a)同時モードおよび連続モードのSIDSを使う、(b)同時モードのSIDSだけを使う、そして(c)連続モードのSIDSだけを使う、のいずれかのやり方でスプーフィングを検出するように設定可能であること、
を特徴とする装置。
【請求項19】
1以上の無線受信機と少なくとも2つのアンテナまたはアンテナ素子とを使ったスプーフィングの検出方法であって、
少なくとも2つのアンテナまたはアンテナ素子のうち第1のアンテナで計測された第1の位相と、少なくとも2つのアンテナまたはアンテナ素子のうち第2のアンテナで計測された第2の位相との間の1つ目の差異を特定するステップであって、第1の位相と第2の位相とは、1つの航法信号を用いて同時に計測されている、というステップと、
航法信号の特徴と、少なくとも2つのアンテナまたはアンテナ素子の位置に対する航法信号のエミッタの位置とに関する知識をもとに、1つ目の差異の値を予測するステップと、
1つ目の差異と1つ目の差異の予測値との間の2つ目の差異を特定するステップと、
そして、2つ目の差異を用いて、受信された航法信号が有効なものであるか否か特定するステップ、とを有すること、
を特徴とする方法。
【請求項20】
少なくとも1つの航法信号から特定された複数の差異それぞれに対し比較が行われること、
を特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項21】
少なくとも2つの差異は同時に特定されないこと、
を特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項22】
1以上の無線受信機と少なくとも1つのアンテナまたはアンテナ素子とを使ったスプーフィングの検出方法であって、
慣性基準装置と少なくとも1つのアンテナまたはアンテナ素子との間のレバーアームの動力の評価により、少なくとも1つのアンテナまたはアンテナ素子の速度変化を計算するステップと、
計算された速度変化を、少なくとも1つの航法信号から導かれた速度変化と比較し、少なくとも1つの航法信号の有効性を推測するステップと、を有すること、
を特徴とする方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2008−510138(P2008−510138A)
【公表日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−525617(P2007−525617)
【出願日】平成17年7月6日(2005.7.6)
【国際出願番号】PCT/US2005/023923
【国際公開番号】WO2006/085976
【国際公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【出願人】(506118629)ノースロップ グルーマン コーポレーション (7)
【Fターム(参考)】