説明

スペクトル画像取得装置

【課題】簡単な構成で所定の波長領域に於けるスペクトル画像を取得可能なスペクトル画像取得装置を提供する。
【解決手段】対物レンズを含む第1光学系47,48と、該第1光学系を介する光束の一部を選択的に通過させる光束選択部材55と、該光束選択部材が物側焦点位置又は略物側焦点位置となる様配置されると共に干渉膜が形成され、前記光束選択部材の位置に応じて該光束選択部材を通過する光束の波長領域を選択する光学部材58と、該光学部材へ光束を導く第2光学系49と、前記光学部材により選択される波長領域の光を受光する撮像素子52とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の波長領域のスペクトル画像を取得するスペクトル画像取得装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
スペクトル画像を取得するスペクトル画像取得装置の1つとしてハイパースペクトルカメラがあり、該ハイパースペクトルカメラは、被測定物からの光をハイパースペクトルで定義される複数の波長領域に分光し、波長領域毎の画像を取得する撮像装置である。ハイパースペクトルセンサは、主に衛星や航空機に搭載され、農業や環境等の分野に使用されている。又、将来的には、医療や食品等の分野での活用が期待されている。
【0003】
ハイパースペクトルカメラは、視野の絞りとして機能するスリットを通った光を回折格子により分光させ、前記スリットの視野についての分光画像を取得する。又、前記スリットを移動させることにより、カメラ視野のスペクトル画像を取得するものとなっている。
【0004】
然し乍ら、従来のハイパースペクトルカメラは、視野の絞りにより限定領域の光を回折格子により分光させ、撮像する為、1度に1次元のスペクトル画像を得ることしかできない。更に、回折格子が非常に高価である為、コストが掛る。
【0005】
尚、被写体からの光をスリットより透過させ、スリットを透過した光を回折格子にて複数の波長領域に分光させ、分光された波長領域毎の光を撮像素子に受光させ、該撮像素子に受光された光を基に2次元画像を生成するハイパースペクトル撮像装置及びハイパースペクトル撮像方法として、特許文献1に示されるものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−89895号公報
【特許文献2】特開2006−10376号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は斯かる実情に鑑み、簡単な構成で所定の波長領域に於けるスペクトル画像を取得可能なスペクトル画像取得装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、対物レンズを含む第1光学系と、該第1光学系を介する光束の一部を選択的に通過させる光束選択部材と、該光束選択部材が物側焦点位置又は略物側焦点位置となる様配置されると共に干渉膜が形成され、前記光束選択部材の位置に応じて該光束選択部材を通過する光束の波長領域を選択する光学部材と、該光学部材へ光束を導く第2光学系と、前記光学部材により選択される波長領域の光を受光する撮像素子とを具備するスペクトル画像取得装置に係るものである。
【0009】
又本発明は、前記光束選択部材はスリットを有し、該スリットと前記第2光学系とによりテレセントリック光学系が構成されるスペクトル画像取得装置に係り、又前記光学部材は、前記テレセントリック光学系の結像位置又は略結像位置に配置されるスペクトル画像取得装置に係り、又前記光学部材は前記第2光学系の光軸に対して傾斜された状態で配置されるスペクトル画像取得装置に係るものである。
【0010】
又本発明は、前記スリットの位置により前記光学部材へ入射する光の入射角が変更されるスペクトル画像取得装置に係るものである。
【0011】
又本発明は、前記光学部材は透過式の干渉フィルタであるスペクトル画像取得装置に係り、又前記光学部材は反射式の干渉フィルタであるスペクトル画像取得装置に係るものである。
【0012】
又本発明は、前記光学部材は複数の部位に分割され、分割された部位には波長特性が異なる干渉膜が形成されたスペクトル画像取得装置に係り、又前記複数の部位の切替えによる波長特性の切替えと、前記光束選択部材の位置変更とが同期されるスペクトル画像取得装置に係るものである。
【0013】
又本発明は、前記光学部材の少なくとも一部に全透過領域を有し、前記撮像素子は前記全透過領域からの光の少なくとも一部をリアル画像としてスペクトル画像と同時に取得するスペクトル画像取得装置に係るものである。
【0014】
又本発明は、前記光学部材の少なくとも一部に全反射領域を有し、前記撮像素子は前記全反射領域からの光の少なくとも一部をリアル画像としてスペクトル画像と同時に取得するスペクトル画像取得装置に係るものである。
【0015】
更に又本発明は、前記リアル画像とスペクトル画像が同時に取得され、リアル画像間で画像マッチングが行われ、画像マッチングに基づき複数のスペクトル画像間の位置合せを行うスペクトル画像取得装置に係るものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、対物レンズを含む第1光学系と、該第1光学系を介する光束の一部を選択的に通過させる光束選択部材と、該光束選択部材が物側焦点位置又は略物側焦点位置となる様配置されると共に干渉膜が形成され、前記光束選択部材の位置に応じて該光束選択部材を通過する光束の波長領域を選択する光学部材と、該光学部材へ光束を導く第2光学系と、前記光学部材により選択される波長領域の光を受光する撮像素子とを具備するので、所定の波長領域に於ける特定波長の光スペクトルを容易に取得できると共に、特定波長の変更が容易であり、更に構造の簡易化が図れ、コストの低減を図ることができる。
【0017】
又本発明によれば、前記光束選択部材はスリットを有し、該スリットと前記第2光学系とによりテレセントリック光学系が構成されるので、前記光学部材に導かれる光束の入射角が常に等しくなる。
【0018】
又本発明によれば、前記光学部材は、前記テレセントリック光学系の結像位置又は略結像位置に配置されるので、前記光学部材の位置設定に厳密さが要求されない。
【0019】
又本発明によれば、前記光学部材は前記第2光学系の光軸に対して傾斜された状態で配置されるので、前記光束選択部材の変位に対する選択波長の変化を効率的に得ることができる。
【0020】
又本発明によれば、前記スリットの位置により前記光学部材へ入射する光の入射角が変更されるので、所定の波長領域に於ける特定波長の変更が容易である。
【0021】
又本発明によれば、前記光学部材は透過式の干渉フィルタであるので、高コストの回折格子を用いる必要がなく、コストの低減を図ることができる。
【0022】
又本発明によれば、前記光学部材は反射式の干渉フィルタであるので、高コストの回折格子を用いる必要がなく、コストの低減を図ることができると共に、光学系自体の長さを縮小することができ、コンパクト化を図ることができる。
【0023】
又本発明によれば、前記光学部材は複数の部位に分割され、分割された部位には波長特性が異なる干渉膜が形成されたので、特定波長の変更が容易である。
【0024】
又本発明によれば、前記複数の部位の切替えによる波長特性の切替えと、前記光束選択部材の位置変更とが同期されるので、前記撮像素子に受光させる光の波長の変更が容易となる。
【0025】
又本発明によれば、前記光学部材の少なくとも一部に全透過領域を有し、前記撮像素子は前記全透過領域からの光の少なくとも一部をリアル画像としてスペクトル画像と同時に取得するので、別途写真撮影用のカメラを設けることなくリアル画像を取得することができる。
【0026】
又本発明によれば、前記光学部材の少なくとも一部に全反射領域を有し、前記撮像素子は前記全反射領域からの光の少なくとも一部をリアル画像としてスペクトル画像と同時に取得するので、別途写真撮影用のカメラを設けることなくリアル画像を取得することができる。
【0027】
更に又本発明によれば、前記リアル画像とスペクトル画像が同時に取得され、リアル画像間で画像マッチングが行われ、画像マッチングに基づき複数のスペクトル画像間の位置合せを行うので、別途位置合せ用のリアル画像を取得するカメラを設ける必要がなく、コストの低減を図ることができるという優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の第1の実施例に係るスペクトル画像取得装置の光学系を示す説明図であり、(A)は絞り孔が光軸と一致した状態を示し、(B)は絞り孔が光軸と離反した状態を示している。
【図2】入射角と透過するピーク波長の関係を示すグラフである。
【図3】干渉フィルタへの入射角に対応する波長透過特性を示すグラフである。
【図4】本発明の第2の実施例に係るスペクトル画像取得装置の光学系を示す説明図であり、(A)は絞り孔が光軸と一致した状態を示し、(B)は絞り孔が光軸と離反した状態を示している。
【図5】本発明の第2の実施例の干渉フィルタを示す正面図である。
【図6】本発明の第3の実施例の干渉フィルタを示す正面図である。
【図7】本発明の第2の実施例に係るスペクトル画像の取得処理を説明するフローチャートである。
【図8】本発明の第3の実施例に係るスペクトル画像の取得処理を説明するフローチャートである。
【図9】本発明の第4の実施例に係るスペクトル画像取得装置の光学系を示す説明図であり、(A)は絞り孔が光軸と一致した状態を示し、(B)は絞り孔が光軸と離反した状態を示している。
【図10】本発明の第5の実施例に係るスペクトル画像取得装置の光学系を示す説明図であり、(A)は絞り孔が光軸と一致した状態を示し、(B)は絞り孔が光軸と離反した状態を示している。
【図11】本発明の第5の実施例の干渉フィルタを示す正面図である。
【図12】本発明の第6の実施例の干渉フィルタを示す正面図である。
【図13】本発明の第7の実施例に係るスペクトル画像取得装置の光学系を示す説明図であり、(A)は絞り孔が光軸と一致した状態を示し、(B)は絞り孔が光軸と離反した状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施例を説明する。
【0030】
図1(A)、図1(B)に於いて、本発明の第1の実施例に係るスペクトル画像取得装置であるスペクトルカメラの光学系45について説明する。
【0031】
図1(A)、図1(B)中、46は該光学系45の光軸を示し、該光軸46上に対物レンズ47、第1リレーレンズ48、第2リレーレンズ49、第3リレーレンズ50、結像レンズ51、CCDやCMOSセンサ等の撮像素子52が配設される。又、図1中、53は前記対物レンズ47によって結像された像を示し、fは前記第2リレーレンズ49の焦点距離を示している。尚、前記対物レンズ47及び前記第1リレーレンズ48は第1光学系を模式的に示しており、又前記第2リレーレンズ49は第2光学系を模式的に示している。
【0032】
前記第1リレーレンズ48の前記第2リレーレンズ49側に、光束選択部材である絞り55が配設される。該絞り55は、図1中紙面に対して垂直なスリットである絞り孔55aを有している。又、該絞り55は前記第2リレーレンズ49の物側焦点位置又は略物側焦点位置に配設され、前記絞り55は前記光軸46に対して垂直な方向で、且つ前記絞り孔55aと直交する方向に移動可能に支持されている。
【0033】
ここで、前記絞り55、前記第2リレーレンズ49はテレセントリック光学系56を構成する。前記第1リレーレンズ48を透過した光束は、前記テレセントリック光学系56によって平行な多数の光束(主光線57)に分割される。
【0034】
該主光線57の集光位置(前記第2リレーレンズ49による結像位置)に光学部材である干渉フィルタ58が配設される。該干渉フィルタ58は波長選択フィルタとして機能し、前記干渉フィルタ58を通過した特定波長の光線が前記第3リレーレンズ50及び前記結像レンズ51によって前記撮像素子52上に結像され、スペクトル画像を取得できる。
【0035】
前記干渉フィルタ58は、該干渉フィルタ58に入射する光線の入射角によって波長選択特性が変化する性質を有する。図2は、入射角と透過するピーク波長の関係(ピーク波長の入射角依存性)を示しており、入射角を変化させることでピーク波長が変化していることが分る。
【0036】
又、図1(A)は、前記絞り55の前記絞り孔55aが前記光軸46上に位置しており、この場合前記主光線57は前記光軸46と平行となる。次に、図1(B)に示す様に前記絞り55を移動させた場合、例えば図示の様に、上方に移動させると、前記絞り孔55aが前記光軸46から離反し、前記絞り55によって選択される光束が前記光軸46から離反した位置となる。この為、前記主光線57は前記光軸46に対して傾斜する。即ち、前記干渉フィルタ58に対する入射角が変化する。従って、前記絞り55を移動させることで、所定の波長領域に於ける前記干渉フィルタ58を透過する波長を変化させることが可能となる。
【0037】
例えば、図2を参照すれば、前記干渉フィルタ58に対する入射角を0°〜50°に変化させると、透過する波長のピークは600nm〜520nmに変化する。即ち、前記干渉フィルタ58は、600nm〜520nmの波長選択範囲Wを有することになる。図3は、前記干渉フィルタ58への入射角に対応する波長透過特性を示している。
【0038】
次に、図1(A)、図1(B)では、前記干渉フィルタ58を前記光軸46に対して傾斜させているが、図2に示される様に、入射依存性は入射角が10°を超えた辺りからリニアとなる。従って、予め前記干渉フィルタ58を傾斜させておくことで、前記絞り55の変位に対する選択波長の変化が効率的に得られる。
【0039】
従って、前記絞り55を変位させる度に、前記撮像素子52より画像を取得することで、又図2の波長透過特性を有する干渉フィルタ58を使用すれば、600nm〜520nmの範囲でのスペクトル画像を取得することができる。又、600nm〜520nmを超える波長領域でのスペクトル画像を取得する場合は、異なる波長選択範囲W′を有する干渉フィルタに交換すればよい。
【0040】
上述の様に、第1の実施例では、前記絞り55を移動させるだけで、前記干渉フィルタ58への入射角が変化し、取得するスペクトル画像の選択波長を変更することができる。従って、所定の波長選択範囲に於いては、取得するスペクトル画像の選択波長を変更する際に、干渉フィルタを交換する等の前記光学系45自体の構成を変更する必要がない。従って、構造の簡易化が図れ、又高価な回折格子を使用する必要がなく、コストの低減を図ることができる。
【0041】
図4(A)、図4(B)、図5に於いて、本発明の第2の実施例に於ける光学系45について説明する。第2の実施例に於いては、干渉フィルタ58′が回転軸59を中心として回転可能に支持され、更にモータ等の回転手段により回転可能となっている。
【0042】
前記干渉フィルタ58′は、図5で示す様に形状が円板であり、透過面が円周方向に所要角度に等分(図示では6等分)された分割透過面60a〜60fが形成され、各分割透過面60a〜60f毎に波長選択λ1〜λ6の波長選択特性の異なる透過干渉膜が形成されている。
【0043】
例えば、分割透過面60aには選択波長λ1が400nm〜450nm、分割透過面60bには選択波長λ2が450nm〜525nm、分割透過面60cには選択波長λ3が525nm〜650nm、分割透過面60dには選択波長λ4が650nm〜750nm、分割透過面60eには選択波長λ5が750nm〜870nm、分割透過面60fには選択波長λ6が870nm〜950nmの透過干渉膜がそれぞれ形成される。
【0044】
前記干渉フィルタ58′で透過された光束は、第3リレーレンズ50、結像レンズ51を経て撮像素子52に結像される様になっている。尚、図5中、57aは前記主光線57が前記干渉フィルタ58′で結像した像を示している。
【0045】
次に、図7のフローチャートを参照して、前記干渉フィルタ58′が用いられる第2の実施例のスペクトル画像取得処理について説明する。
【0046】
STEP:01 先ず、スペクトル画像取得処理が開始されると、所要のスペクトル画像の波長領域に合致する様、例えば前記分割透過面60aと前記光軸46とが合致する様前記干渉フィルタ58′が回転される。
【0047】
STEP:02 STEP:01の該干渉フィルタ58′の回転と同期して、絞り55が移動され、絞り孔55aが基準位置に復帰される。
【0048】
STEP:03 前記絞り孔55aが基準位置へと復帰された後、前記絞り55を所定量移動(ステップ送り)させる。
【0049】
STEP:04 前記干渉フィルタ58′、前記絞り55の位置が設定されると、撮像が開始され、前記干渉フィルタ58′で透過され、特定波長に選択された光束が前記撮像素子52に結像され、所定の選択波長λ1領域での前記絞り55の前記設定された位置に於けるスペクトル画像が取得される。
【0050】
STEP:05 スペクトル画像が取得されると、前記絞り55の全ての位置に於けるスペクトル画像が取得されたかどうかが判断され、全て取得されていない場合には、再度STEP:03の処理に基づき前記絞り55の位置を所定量移動させ、STEP:04のスペクトル画像取得処理が行われる。全ての位置に於けるスペクトル画像が取得されたと判断されると、STEP:06に移行する。
【0051】
STEP:06 前記絞り55の全ての位置に於けるスペクトル画像が取得された後、所望の波長領域のスペクトル画像を取得したかどうかが判断され、所望の波長領域のスペクトル画像の取得が終了していない、即ち得たいスペクトル画像の波長領域がλ1の選択波長領域を超えている場合には、例えば前記干渉フィルタ58′が前記光軸46と前記分割透過面60bとが合致する様回転され、STEP:02〜STEP:05の処理が再度行われる。
【0052】
所望の波長領域のスペクトル画像を全て取得すると、全てのスペクトル画像を合成し、スペクトル画像の取得処理を終了する。
【0053】
尚、例えば該干渉フィルタ58′を間欠送り回転させ、該干渉フィルタ58′の回転に応じて前記絞り孔55aを基準位置に復帰させ、次にステップ送りし、各ステップ毎にスペクトル画像を取得する等、STEP:01の前記干渉フィルタ58′の回転と、STEP:02の前記絞り55の移動とを機械的に同期させる様にしてもよい。
【0054】
又、上記第2の実施例によれば、干渉フィルタを交換することなく、前記干渉フィルタ58′を回転させるだけで600nm〜520nm(図2参照)を超える波長領域でのスペクトル画像を取得することができるので、別途干渉フィルタ58′を複数用意する必要がなくコストの低減を図ることができ、広範囲の波長領域のスペクトル画像を迅速に取得することができる。
【0055】
更に、前記干渉フィルタ58′は円板とし、回転可能としたが、長矩形形状とし、干渉フィルタ58′を長手方向に分割して、分割透過面60a〜60fを形成し、リニアモータ等の位置変更手段により前記干渉フィルタ58′を長手方向にスライドさせ、分割透過面60a〜60fの切替えを行ってもよい。
【0056】
次に、本発明の第3の実施例について説明する。第3の実施例は、第2の実施例に於ける干渉フィルタ58′を干渉フィルタ58′′に変更した構成であり、ヘリコプタ等の振動が生じる移動体にスペクトルカメラを搭載する際に好適な実施例である。尚、第3の実施例に於いては、前記干渉フィルタ58′′以外の構成は第2の実施例と同様であるので、図4(A)、図4(B)、図6を参照して説明する。
【0057】
該干渉フィルタ58′′では、分割透過面60a〜60fの内、分割透過面60fが全ての波長を透過する全透過面となっており、更に各分割透過面60a〜60eは外周部60a′〜60e′と内周部60a′′〜60e′′が全透過面となっている。前記干渉フィルタ58′′上に結像される結像57aは、外周側の一部が前記外周部60a′〜60e′にオーバラップし、内周側の一部が前記内周部60a′′〜60e′′にオーバラップする様になっている。
【0058】
前記干渉フィルタ58′′を用いた場合では、前記分割透過面60fを選択し、該分割透過面60fに前記光軸46を合致させた場合は、波長選択されずに全透過され、リアル画像が取得される。又、前記分割透過面60a〜60eのいずれかが選択された場合、例えば分割透過面60eが選択された場合、分割透過面60eの透過干渉膜で波長選択されると共に、前記結像57aの内、前記外周部60e′を透過する部分αと前記内周部60e′′を透過する部分βとで部分的に全透過される。
【0059】
次に、図8のフローチャートを参照して、前記干渉フィルタ58′′が用いられる第3の実施例のスペクトル画像取得処理について説明する。尚、STEP:11〜STEP:13については、図7中のSTEP:01〜STEP:03と同様であるので説明を省略する。
【0060】
STEP:14 前記干渉フィルタ58′′、絞り55の位置が設定されると、撮像が開始され、分割透過面60a〜60fで透過され、特定波長に選択された光束が撮像素子52に結像されるスペクトル画像が取得されると共に、外周部60a′〜60e′及び内周部60a′′〜60e′′の全透過部α及びβで透過された光束によりリアル画像が取得される。
【0061】
STEP:15 スペクトル画像及びリアル画像が取得されると、リアル画像をエッジ処理する等により特徴点が抽出され、抽出された特徴点を基に時間的に隣接するリアル画像間でトラッキングが行われ、次画像に特徴点が特定される。抽出された特徴点及び特定された特徴点に基づき画像のマッチングが行われる。ここで、リアル画像とスペクトル画像は1つの画像を形成しているので、リアル画像で画像マッチングを行えば、同時にスペクトル画像のマッチングも完了する。尚、画像トラッキングについては特許文献2に記載されている。
【0062】
STEP:16 画像間のマッチングを行った後、抽出したスペクトル画像の特徴点を画像座標変換し、該座標を基にマッチングさせたスペクトル画像の画像位置を補正する。
【0063】
STEP:17 スペクトル画像の画像位置を補正した後、前記絞り55の全ての位置に於けるスペクトル画像が取得されたかどうかが判断され、全て取得されていない場合には、STEP:13〜STEP:17の処理が再度行われる。
【0064】
STEP:18 前記絞り55の全ての位置に於けるスペクトル画像が取得された後、所望の波長領域のスペクトル画像を取得したかどうかが判断され、所望の波長領域のスペクトル画像が取得されていない場合には、更に前記干渉フィルタ58′′が回転され(STEP:11)、STEP:12〜STEP:17の処理が再度行われる。
【0065】
上述の様に、第3の実施例に於いては、分割透過面60a〜60fに、全透過面である外周部60a′〜60e′と内周部60a′′〜60e′′が形成されているので、スペクトル画像だけではなく外周部60a′〜60e′と内周部60a′′〜60e′′を透過した光束によりリアル画像を取得できる。従って、特徴点の抽出やスペクトル画像同士のトラッキングを行う為の、リアル画像を取得し、写真撮影用のカメラを別途設ける必要がなく、コストの低減を図ることができる。
【0066】
又、取得したスペクトル画像同士を容易にマッチング可能であるので、振動によりブレが生じるヘリコプタ等の移動体にスペクトルカメラを搭載する場合にも適用することができる。
【0067】
次に、図9(A)、図9(B)に於いて、本発明の第4の実施例について説明する。尚、図9(A)、図9(B)中、図1(A)、図1(B)中で示したものと同等のものには同符号を付してあり、その説明を省略する。
【0068】
第1の実施例に於ける光学系45では透過式の干渉フィルタ58を用いたが、図9(A)、図9(B)で示される様に、第4の実施例では反射式の干渉フィルタ61を用いて光学系45′を構成している。該光学系45′では、前記干渉フィルタ61が光を反射することで波長が選択される。
【0069】
光軸46上に対物レンズ47、第1リレーレンズ48、絞り55が配設され、第2リレーレンズ49が配設され、該第2リレーレンズ49に対向して前記干渉フィルタ61が傾斜して設けられている。又、該干渉フィルタ61により偏向された前記光軸46上に第3リレーレンズ50、結像レンズ51、撮像素子52が配設され、前記干渉フィルタ61で反射された光束は、前記結像レンズ51を経て前記撮像素子52に結像され、該撮像素子52によってスペクトル画像が取得される。
【0070】
又、前記絞り55を移動させ、絞り孔55aの位置を変位させることで、前記干渉フィルタ61に対する入射角を変化させることができ、該干渉フィルタ61に反射される波長を変化させることができる。尚、スペクトル画像を取得する作用については第1の実施例と同様であるので説明を省略する。
【0071】
次に、図10(A)、図10(B)、図11に於いて、本発明の第5の実施例について説明する。第5の実施例に於いては、干渉フィルタ61′が回転軸59を中心として回転可能に支持され、更にモータ等の回転手段により回転可能となっている。尚、図10(A)、図10(B)、図11中、図9(A)、図9(B)中と同等のものには同符号を付し、その説明を省略する。
【0072】
前記干渉フィルタ61′は、図11で示す様に形状が円板であり、反射面に円周方向に所要角度に等分(図示では6等分)された分割反射面63a〜63fが形成され、各分割反射面63a〜63f毎に波長選択λ1〜λ6の波長選択特性の異なる反射干渉膜が形成されている。
【0073】
前記干渉フィルタ61′で反射された光束は、第3リレーレンズ50、結像レンズ51を経て撮像素子52に結像される様になっており、第2の実施例と同様に前記分割反射面63a〜63fを順次切替え、各分割反射面63a〜63f毎に絞り55を移動させ、撮像処理を行うことで、前記分割反射面63a〜63fを反射した光束が所望の波長領域に於けるスペクトル画像として取得される。
【0074】
第5の実施例では、干渉フィルタ61′により透過ではなく反射する構成となっているので、光学系45′の全長を短くすることができ、スペクトルカメラのコンパクト化を図ることができる。尚、第5の実施例の作用については第2の実施例と同様であるので説明を省略する。
【0075】
次に、本発明の第6の実施例について説明する。第6の実施例は、第5の実施例に於ける干渉フィルタ61′を干渉フィルタ61′′に変更した構成であり、ヘリコプタ等の振動が生じる移動体にスペクトルカメラを搭載する際に好適な実施例である。尚、第6の実施例に於いては、前記干渉フィルタ61′′以外の構成は第5の実施例と同様であるので、図10(A)、図10(B)、図12を参照して説明する。
【0076】
前記干渉フィルタ61′′では、前記分割反射面63a〜63fの内、分割反射面63fが全ての波長を反射する全反射面となっており、更に各分割反射面63a〜63eは外周部63a′〜63e′と内周部63a′′〜63e′′が全反射面となっている。前記干渉フィルタ61′′上に結像される結像57aは、外周側の一部が前記外周部63a′〜63e′とオーバラップし、内周側の一部が前記内周部63a′′〜63e′′にオーバラップする様になっている。
【0077】
前記干渉フィルタ61′′を用いた場合では、前記分割反射面63fを選択し、該分割反射面63fに光軸46を合致させた場合は、波長選択されずに全反射され、リアル画像が取得される。又、前記分割反射面63a〜63eのいずれかが選択された場合、例えば分割反射面63eが選択された場合、分割反射面63eの反射干渉膜で波長選択されると共に、前記結像57aの内、前記外周部63e′を反射する部分αと、前記内周部63e′′を反射する部分βとで部分的に全反射される。
【0078】
前記干渉フィルタ61′′で反射された光束は、第3リレーレンズ50、結像レンズ51を経て撮像素子52に結像される様になっており、前記分割反射面63a〜63fを反射した光束が所望の波長領域に於けるスペクトル画像として取得され、外周部63a′〜63e′及び内周部63a′′〜63e′′に反射された光束がリアル画像として取得される様になっている。従って、取得されたリアル画像を用いてスペクトル画像同士のトラッキング及び画像位置の補正を行うことができ、振動が生ずるヘリコプタ等の移動体にスペクトルカメラを搭載する場合にも本実施例を適用することができる。尚、第6の実施例の作用については第3の実施例と同様であるので、説明を省略する。
【0079】
次に、図13(A)、図13(B)に於いて、本発明の第7の実施例について説明する。尚、図13(A)、図13(B)中、図1(A)、図1(B)中で示したものと同等のものには同符号を付してあり、その説明を省略する。
【0080】
第7の実施例に於ける光学系45′′は、光軸46上に対物レンズ47、第1リレーレンズ48、絞り55が配設され、前記光軸46と平行で所定量離反した光軸上に第2リレーレンズ49が配設され、該第2リレーレンズ49に対向して干渉フィルタ62が設けられている。該干渉フィルタ62で反射された光束は、前記第2リレーレンズ49を透過した後、反射鏡64によって偏向され、偏向された光束は結像レンズ51を経て撮像素子52に結像される。
【0081】
第7の実施例では、前記第1リレーレンズ48、前記絞り55が前記第2リレーレンズ49の光軸とはずれた位置にあるので、テレセントリック光学系56によって分割された主光線57は前記干渉フィルタ62に傾斜して入射する。更に、図13(B)に示される様に、前記絞り55を前記光軸46より離反する様に移動させれば、前記主光線57の入射角は更に大きくなる。従って、前記絞り55を移動させることで選択波長を変更することができる。
【0082】
又、得たいスペクトル画像の波長領域が、例えば400nm〜950nmに及ぶ時は、前記干渉フィルタ62を第5の実施例の干渉フィルタ61′(図11参照)、或は第6の実施例の干渉フィルタ61′′(図12参照)に変更することもできる。
【0083】
例えば前記干渉フィルタ61′を適用した場合、前記分割反射面63aから前記分割反射面63f迄、順次分割反射面63a〜63fを切替え、切替えられた分割反射面63毎に前記絞り55を移動させ、該絞り55の移動位置毎の波長で画像を取得する。又、前記分割反射面63a〜63fの切替えと、前記絞り55の移動は同期して行われ、前記分割反射面63の切替えが行われる毎に、スリット孔が前記光軸46の位置から該光軸46から離反する様に前記絞り55が移動される。
【0084】
而して、400nm〜950nm迄の波長が連続して選択され、選択した波長毎に前記撮像素子52で画像が取得され、400nm〜950nmの全域でのスペクトル画像を取得することができる。
【0085】
尚、得たいスペクトル画像の範囲が限られている場合は、該当する波長選択特性を有する分割反射面を選択してスペクトル画像を取得すればよい。
【0086】
第7の実施例では、反射式の前記干渉フィルタ62を使用しているので、前記光学系45′′のコンパクト化が図れると共に、第1〜第6の実施例に於ける第3リレーレンズ50を前記第2リレーレンズ49が兼用している為、部品点数が削減でき、コストの低減を図ることができる。
【符号の説明】
【0087】
45 光学系
47 対物レンズ
48 第1リレーレンズ
49 第2リレーレンズ
50 第3リレーレンズ
51 結像レンズ
52 撮像素子
55 絞り
56 テレセントリック光学系
57 主光線
58 干渉フィルタ
60 分割透過面
61 干渉フィルタ
62 干渉フィルタ
63 分割反射面
64 反射鏡

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対物レンズを含む第1光学系と、該第1光学系を介する光束の一部を選択的に通過させる光束選択部材と、該光束選択部材が物側焦点位置又は略物側焦点位置となる様配置されると共に干渉膜が形成され、前記光束選択部材の位置に応じて該光束選択部材を通過する光束の波長領域を選択する光学部材と、該光学部材へ光束を導く第2光学系と、前記光学部材により選択される波長領域の光を受光する撮像素子とを具備することを特徴とするスペクトル画像取得装置。
【請求項2】
前記光束選択部材はスリットを有し、該スリットと前記第2光学系とによりテレセントリック光学系が構成される請求項1のスペクトル画像取得装置。
【請求項3】
前記光学部材は、前記テレセントリック光学系の結像位置又は略結像位置に配置される請求項2のスペクトル画像取得装置。
【請求項4】
前記光学部材は前記第2光学系の光軸に対して傾斜された状態で配置される請求項1〜請求項3のうちいずれかのスペクトル画像取得装置。
【請求項5】
前記スリットの位置により前記光学部材へ入射する光の入射角が変更される請求項2〜請求項4のうちいずれかのスペクトル画像取得装置。
【請求項6】
前記光学部材は透過式の干渉フィルタである請求項1〜請求項5のうちいずれかのスペクトル画像取得装置。
【請求項7】
前記光学部材は反射式の干渉フィルタである請求項1〜請求項5のうちいずれかのスペクトル画像取得装置。
【請求項8】
前記光学部材は複数の部位に分割され、分割された部位には波長特性が異なる干渉膜が形成された請求項6又は請求項7のスペクトル画像取得装置。
【請求項9】
前記複数の部位の切替えによる波長特性の切替えと、前記光束選択部材の位置変更とが同期される請求項8のスペクトル画像取得装置。
【請求項10】
前記光学部材の少なくとも一部に全透過領域を有し、前記撮像素子は前記全透過領域からの光の少なくとも一部をリアル画像としてスペクトル画像と同時に取得する請求項6のスペクトル画像取得装置。
【請求項11】
前記光学部材の少なくとも一部に全反射領域を有し、前記撮像素子は前記全反射領域からの光の少なくとも一部をリアル画像としてスペクトル画像と同時に取得する請求項7のスペクトル画像取得装置。
【請求項12】
前記リアル画像とスペクトル画像が同時に取得され、リアル画像間で画像マッチングが行われ、画像マッチングに基づき複数のスペクトル画像間の位置合せを行う請求項10又は請求項11のスペクトル画像取得装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−72771(P2013−72771A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−212478(P2011−212478)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000220343)株式会社トプコン (904)
【Fターム(参考)】