説明

スペーサ要素およびスペーサ要素を製造するための方法

ウェハスタック(8)のためのスペーサウェハ(1)は、第1の表面(11)および第2の表面(12)を有するスペーサ本体(10)を含み、第1のウェハ(6)と第2のウェハ(7)との間に挟まれることが意図される。つまり、スペーサ(1)は、第1の表面(11)に対して配置された第1のウェハ(6)と第2の表面(12)に対して配置された第2のウェハ(7)とを互いから一定の距離に保つものである。スペーサ(1)は、第1のウェハ(6)の機能的要素(9)および第2のウェハ(7)の機能的要素(9)を開口部と整列させることができるように配置された開口部(13)を有する。スペーサ(1)は、形状複製処理によって成形工具(2)で成形され、好ましくは硬化によって固化される材料からなる。
発明の好ましい実施例において、第1および第2の表面(11,12)の少なくとも一方は、開口部(13)から表面(11,12)を分離するエッジ(15)を含み、エッジ(15)におけるスペーサウェハ(1)の厚さは、エッジ(15)の周りの表面位置におけるスペーサウェハ(1)の厚さを上回る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、1つ以上の光学要素、たとえば屈折および/または回折レンズを有する集積光学装置を、明確に規定された空間的配列でウェハ規模にて複製処理によって製造する分野に属する。より具体的には、対応する独立請求項の序文に記載されているスペーサ要素を製造するための方法およびスペーサ要素に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
集積光学装置は、たとえばカメラ装置、カメラ装置用の光学部品、または特にカメラ携帯電話用の平行光学部品である。エンボス加工または鋳造などの複製技術による光学要素の製造が知られている。低コストの大量生産に関して特に関心が高いのは、光学要素たとえばレンズのアレイが複製によって円板状構造(ウェハ)上に製造されるウェハ規模の製造処理である。大部分の場合、光学要素が取付けられた2枚以上のウェハが積層され、異なる基板に取付けられた光学要素が整列されたウェハ規模パッケージまたはウェハスタックが形成される。複製の後で、このウェハ構造を個々の光学装置に分離(ダイシング)することができる。
【0003】
本稿で使用される意味でのウェハまたは基板は、円板もしくは長方形のプレート、または寸法が安定した、多くの場合透明な材料からなるいずれかの他の形状のプレートである。ウェハ円板の直径は、典型的には5cm〜40cmの間、たとえば10cm〜31cmの間である。多くの場合、円柱状であり、直径は2、4、6、8または12インチのいずれかであり、1インチは約2.54cmである。ウェハの厚さは、たとえば0.2mm〜10mmの間、典型的には0.4mm〜6mmの間である。
【0004】
集積光学装置は、光伝搬の一般的な方向に沿って互いに積層され、少なくとも1つが光学要素である機能的要素を含む。したがって、装置中を伝わる光は、複数の要素を順番に通過する。これらの機能的要素は、互いにさらに整列させる必要がなく、光学装置だけをそのまま他のシステムと整列させるだけでよいように、互いに所定の空間関係で配置されている(集積装置)。
【0005】
このような光学装置は、機能的たとえば光学要素を含むウェハを、明確に規定された空間的配列でウェハ上に積層することによって製造することができる。このようなウェハ規模パッケージ(ウェハスタック)は、最小ウェハ寸法の方向(軸方向)に対応する軸に沿って積層され、かつ互いに取付けられた少なくとも2枚のウェハを含む。当該ウェハのうち少なくとも一方は複製された光学要素を担持し、他方は、電子光学要素(たとえばCCDもしくはCMOSセンサアレイ)などの光学要素または他の機能的要素を含むことができるか、または収容することができる。したがってウェハスタックは、並列に配置された複数のおおむね同一の集積光学装置を含む。
【0006】
スペーサ手段、たとえばUS2003/0010431またはWO2004/027880に開示されている複数の分離されたスペーサもしくは相互接続されたスペーサマトリックスによってウェハを互いに離間することができ、ウェハ同士の間において、別のウェハに対面するウェハ表面に光学要素を配置することもできる。したがって、スペーサは上側ウェハと下側ウェハとの間に挟まれる。この配置は、さらなるウェハおよび中間スペーサによって繰返してもよい。
【0007】
発明の説明
本発明の目的は、スペーサウェハと、初めに述べた種類のスペーサウェハを製造するための方法とを創出することであり、簡単かつ低コストな製造処理を可能とする。さらなる目的は、得られるウェハスタックの品質および歩留まりを向上させるスペーサウェハを提供することである。
【0008】
これらの目的は、それぞれの独立請求項に記載のスペーサウェハとスペーサウェハを製造するための方法とによって実現される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
ウェハスタックのためのスペーサウェハは、第1の表面および第2の表面を有するスペーサ本体を含み、第1のウェハと第2のウェハとの間に挟まれることが意図される。つまり、スペーサは、第1の表面に対して配置された第1のウェハと第2の表面に対して配置された第2のウェハとを互いから一定の距離に保つものである。スペーサはさらに、第1のウェハの機能的要素および第2のウェハの機能的要素を開口部と整列させることができるように配置された開口部を有する。
【0010】
スペーサウェハを製造するための方法は、
・成形工具を供給するステップと、
・形状複製処理によって、工具の形態に従ってスペーサを成形するステップとを含む。
【0011】
本発明の好ましい実施例において、スペーサを成形するステップは、
・スペーサ材料を変形可能な、つまり液体または粘性の状態で供給するステップと、
・スペーサ材料の形状を工具のネガとして規定するステップと、
・スペーサ材料を固化し、それによりスペーサウェハを作製するステップと、
・スペーサウェハを工具から分離するステップとを含む。
【0012】
スペーサ材料は、硬化によって固化することが好ましい。硬化は、ポリマー化学およびプロセス工学の用語であり、ポリマー鎖の架橋結合によるポリマー材料の強化もしくは固化を指し、化学添加剤、紫外線放射、電子ビーム(EB)または熱によって引起される。したがってスペーサは、当初は液体または粘性状態にあり、かつ硬化可能な合成有機もしくは無機ベース材料からなり得る。好ましいベース材料の1つはエポキシである。ベース材料は、着色用染料、および/またはガラスファイバなどの充填材料と任意に混合され得る。成形工具が所定の位置にある状態で、当該材料が硬化、たとえば紫外線硬化される。紫外線光硬化は、固化処理を良好に制御することを可能とする迅速な処理である。
【0013】
本発明の別の好ましい実施例において、スペーサは熱可塑性材料からなる。スペーサは加熱され、次いで、射出成形を含む、たとえば型押しまたは鋳造による形状複製処理によって形作られる。冷却後、材料はスペーサの所望の形状に固化する。
【0014】
複製処理はエンボス加工または型押し処理であり得、変形可能な、すなわち粘性または液体成分のスペーサ材料が、基板の表面上または成形工具上に配置される。つまり基板材料は、工具と基板との間に配置される。基板は、ウェハ規模の寸法でもある典型的に硬いプレートである。「ウェハ規模」とは、直径2インチ〜12インチの円板などの半導体ウェハに相当する寸法の円板状もしくは板状の基板の寸法を指す。次いで、複製工具もしくは成形工具を基板に対して移動させるか、または押付ける。この移動は、遅くとも成形工具が基板に当接すると停止する。
【0015】
代替例として、複製処理は鋳造処理であり得る。鋳造処理では、対照的に、スペーサを形作る成形工具をまず基板の表面に押付けて規定された空洞を形成し、次いで鋳造処理によって空洞が充填される。
【0016】
本発明のさらなる好ましい実施例において、基板を工具に対して移動させる前に、スペーサ材料が工具上に配置され、基板プレートとスペーサ材料との間に付着防止層が配置される。付着防止層によって、固化したスペーサが基板プレートから容易に分離することが可能となる。付着防止層は、たとえばmylar(登録商標)からなる薄箔であり得る、または噴霧することもしくは基板を濡らすことによって塗布される材料(たとえばTeflon(登録商標))からなる付着防止膜であり得る。付着防止層は、硬化後スペーサ上に残すことができる。
【0017】
本発明の好ましい実施例において、成形工具を供給するステップは、形状複製処理によって原型の形状に従って工具を成形するステップを含む。次いで工具を補助的に用いて、剛性および強靭さを増すためにバックプレートを構成することができる。
【0018】
本発明のさらなる好ましい実施例において、第1および第2の表面の少なくとも一方は、開口部から上記表面を分離するエッジを含み、スペーサ材料を固化するステップは、エッジ自身よりもエッジ付近の領域において、スペーサウェハの厚さを収縮させるステップを含む。これにより、エッジにおけるスペーサウェハの厚さがエッジの周りの表面位置におけるスペーサウェハの厚さを超えるスペーサとなる。換言すると、スペーサの平均厚さに対してエッジを高くする。本発明の好ましい実施例では、周囲の表面に対するエッジの高さは、およそ1〜10マイクロメートルである。スペーサ自身の厚さは、典型的に100〜1500マイクロメートルである。
【0019】
スペーサを用いてスタックが形成されると、結合剤、すなわち液体または粘性接着剤がスペーサの表面に塗布される。エッジの高さによって、スペーサと隣接するウェハとの間の自由空間は、エッジに向かって漸減する。液体結合剤は、毛管力によってエッジの方に引寄せられる。これにより、結合剤中に気泡が存在したとしても、エッジまたはその付近には気泡が残存しないことが確実となる。むしろ、エッジに引寄せられる結合剤によって、エッジから空気が押出される。その結果、ウェハスタックを個々のユニットにダイシングした後でも、エッジは良好に封止されている。
【0020】
エッジに明らかな高さがない場合、または高さが全くない場合でも、結合剤の供給源が存在する限り、結合剤は2枚のウェハの間の間隙に沿って広がる。このような供給源は、ウェハが互いに対して配置されると滴が他方のウェハに接触するように、ウェハの一方上、後で別のウェハに対して移動される表面上、および/または空洞内に堆積された結合剤の滴または小塊であり得る。近接するウェハ表面同士の間隙は、毛管力によって接着剤/結合剤で充填され、逆に、空気が空洞に移動する。
【0021】
これは、たとえば約1mm(ミリメートル)〜3mm未満(特に典型的な結合剤について)の範囲内において空気と接着剤との交換が起こるという点で、比較的局所的な効果である。たとえば、一次元において、所与の空洞同士の間に空洞のない領域が約3mm延在している場合、この3mmに沿った不特定の任意の位置に気泡が生じ得る。中間すなわち、存在する空洞から1.5mmのところにある中央に空洞を導入することによって、空洞、すなわち明確に規定された場所に空気が集まることになる。
【0022】
これらの追加的な空洞または窪みは、それらの機能に鑑みて、流量制御空洞とも称される。しかしこれは、他の機能も有することを排除するものではない。これに対して他の空洞または開口部は、たとえば光を透過させるための光電子またはマイクロ電子素子の主要な機能に関連して用いられるため、装置空洞と称される。互いに接着される2つの表面の間(たとえばスペーサと基板との間)の間隙もしくは狭い空間は、単に間隙と称される。
【0023】
本発明の好ましい実施例において、窪みまたは空洞が隣接しており、かつウェハを切断するためのダイシングラインに沿って位置する場合は、窪みまたは空洞のさらなる機能が生じる。スペーサウェハが上側ウェハに接着されずに切断された場合、ダイシング鋸によって生じるギザギザのエッジは窪み領域に位置し、エッジ領域などの一番上側の領域には存在しない。後で1つのスペーサウェハをその上側表面によってさらなる他の表面に接着させる際、ギザギザのエッジは、上側表面がさらなる他の表面に対して整列するのに干渉しない。
【0024】
後で作製される光学要素に必要な装置空洞または開口部しかない場合は、余分な接着剤は空洞のエッジに蓄積する。余分な接着剤が多すぎると、光学もしくは電子素子の機能または空洞内の光路に干渉する程度にまで空洞を最終的に充填することになるため、接着剤の投与方法に一定の精度が必要となる。しかし、追加的な空洞があれば、余分な接着剤がそこに流れ込み、干渉することがない。また、空気および余分な接着剤は、チャネルとして形作られた空洞中をより迅速に流れ、処理速度および接着剤の厚さの均一性が向上する。
【0025】
接着剤の流れをより良好に制御するために、本発明の好ましい変形例において、接着剤は流量制御空洞上または流量制御空洞内に配置される。この接着剤の配置には、互いに接着される2つの表面の間の間隙を接着剤が濡らすという前提条件が必要となる。その結果、接着剤は、間隙の端部すなわち装置空洞のエッジに到達するまで、毛管力によって間隙に引込まれる。接着剤の境界線は、これらのエッジによって明確に規定される。余分な接着剤は、元々存在していた流量制御空洞内に残存する。接着剤が流れることができる距離は、利用可能な接着剤の量と、その粘度と、接着剤およびウェハ材料の濡れ特性などのさらなる物理的パラメータとによって当然制限される。
【0026】
流量制御空洞は、形状複製処理によって作製されたウェハ(スペーサウェハだけでなく)において製造するのが比較的容易である。しかし、流量制御空洞および対応する結合方法は、他の処理および材料で作製されたウェハにも適用することができる。
【0027】
スペーサは(ガラスプレートから機械加工するのではなく)形状複製処理によって形成されるため、スペーサの表面に仮想的に任意の形状を形成し、アンダーカット形状を除く任意の形状を開口部に与えることが可能である。したがって、本発明のさらなる好ましい実施例では、原型と、したがって対応するスペーサとの上側表面または下側表面の少なくとも一方は、余分な接着剤および空気を集めるための溝もしくはチャネル、またはウェハスタックを形成した後でスペーサの開口部を周囲の空気につなぐためのチャネルを含む。このようなチャネルは、スペーサの上側表面および/または下側表面に形成され得る。
【0028】
ウェハスタックは、本発明に係る少なくとも1つのスペーサを、機能的要素を保持する少なくとも1つのウェハと積層することによって作製される。対応する集積光学装置は、ウェハスタックを複数のウェハスタック要素に分離またはダイシングすることによって、ウェハスタックからウェハスタック要素として製造される。ウェハスタックは、たとえば1つのウェハおよび1つのスペーサを含む中間生成物であり得る。このようなスタックに、スペーサによって離間されたさらなるウェハを後で設けることができる。またはスタックを、個々にスペーサを用いて組立てられる別個の要素にダイシングすることができる。
【0029】
本発明の好ましい実施例において、ウェハは、開口部(または装置空洞)を包囲するスペーサ領域を一方に、残りの領域を他方に含む。残りの領域すなわち接続領域は、ウェハの厚さ全体の少なくとも半分、好ましくは20%未満の厚さで作製される。絶対的に、接続領域は好ましくは少なくとも0.2mm〜0.3mm厚さであり、全体の厚さは、たとえば0.5mm〜1mm〜1.5mmの範囲である。その結果、ウェハの機械的安定性は、開口部および周囲のスペーサ領域の相対的な配置を規定するのに十分である。しかし、接続領域が相対的に薄いため、以下の利点が生じる。
・ウェハは、その領域全体にわたって十分な厚さを有するウェハよりも反りにくい。これは、ウェハが厚くなるほど、たとえば1mmを上回る厚さについて特に重要となる。
・ウェハは、ウェハを型から取外した後の材料の膨張によるxy方向すなわちウェハの面内における膨張が起こりにくい。
・ウェハのいずれかの部分の有効壁厚さが減少する。つまり、ウェハの最も内側の点からウェハ表面までの距離が減少する。その結果、固化に用いられる、紫外線光がより多く最も内側の点に到達し、固化処理が向上する。ウェハが型内になく、かつウェハの望ましくない変形も伴い得る紫外線放射後に生じる固化の時間が短縮される。
【0030】
接続領域、典型的にはウェハの少なくとも一方の表面に形成された溝をスペーサウェハに組込むことができるが、ウェハ中またはウェハ上に鋳造されたレンズを組込んだ鋳造されたウェハなどの、機能的要素を保持するウェハにも組込むことができる。
【0031】
本発明のさらなる好ましい実施例において、スペーサ領域は、スペーサウェハの全体の厚さを規定する、スペーサウェハの面に平行な本質的に平坦な表面を有する小さく高い突起を含む。これは、スペーサの厚さが明確に規定されなければならない用途について必要となり得る。
【0032】
本発明のさらなる好ましい実施例において、接続領域は直角格子のチャネルを含む。これにより、長方形のメサ状スペーサ領域が残る。チャネルは、(規定された?)ウェハスタックが個々の要素に、すなわちダイシングラインに沿って切断される位置にあるように配置されることが好ましい。この理由から、チャネルは、ダイシングチャネルとも称され得る。以下のさらなる利点が生じる。
・ダイシング鋸が切断すべきスペーサウェハ材料が減少し、鋸刃の摩耗が減少し、および/またはより迅速な切断が可能となる。
・鋸切断処理における任意の改善は、ダイシングする際の鋸切断ステップの減少である。鋸切断処理を材料の変化に適合させることなく、いくつかの材料層を鋸切断することができる。
【0033】
本発明のさらなる好ましい実施例において、接続領域は、スペーサ領域に接合するブリッジ要素によって分離された貫通孔を含む。これにより、スペーサウェハの反りおよび他の変形に寄与し得る接続領域の材料の量がさらに減少する。
【0034】
好ましくは、ダイシングチャネルの幅はおよそ0.2mmであり、すなわちダイシング鋸刃の厚さと同様である。チャネルと鋸との対応する不整列を見越して、チャネル幅の方が若干大きいことが好ましい。
【0035】
接続領域が深いという利点と、流量制御空洞が深すぎてはならないという要件とを組合せると、本発明の複合的な好ましい実施例に繋がる。ここで、表面領域は、スペーサウェハの厚さを規定する突起を一方に、接着剤を堆積させるための、および/または余分な接着剤を吸収するための局所的な流量制御空洞を他方に含む。相対的に深い接続領域が深すぎて、スペーサ領域に接着される基板に、適切な量の接着剤が到達することができない。したがって、これらの1つ以上の局所的な流動制御空洞は、スペーサ領域の上側表面に配置される。接着剤はこれらの流動制御空洞に堆積され、スペーサを別の表面に接合させると、すでに説明したような接着剤の流れが生じる。
【0036】
スペーサウェハまたは工具を作製するための複製処理において、深い接続領域によって、空気の取込みによる問題が生じ得る。この理由から、複製を型(すなわち工具または原型)上に流し込む代わりに、以下のステップが行なわれる。
・最初に、複製材料の少なくとも一部を型上に噴霧し、それにより複製表面全体を濡らし、好ましくは深い形状を充填する。一方で、これにより型の深い特徴が空気を取込むことなく充填され、他方で型表面の濡れ特性が大幅に向上する。
・次に、液体の複製材料を型上に広げる。これは、所定量の液体複製材料を型上に、少なくとも型のほぼ中央に配置し、次いでプレートを型の方に(またはその逆に)移動させて、複製材料を外側に流れさせ、型全体を覆い、空気を押出すことによって行われることが好ましい。
【0037】
後で塗布される複製材料に対して濡れ特性を向上させるために、最初に型に複製材料を噴霧するこの方法は、いずれの複製段階にも、特に深く狭い特徴を伴う段階にも当然適用可能である。
【0038】
接着剤は、特定の濡れ角度または接触角度(すなわち型表面と接着剤表面との間の、接着剤中の内側角度)にて、型の乾いた表面に沿って流れる。乾いた型については、この角度は典型的に90度よりも大きい。その結果、型の形状の周りを流れ、再び集合する接着剤は、合流する接着剤の間に空気を取込みやすい。
【0039】
逆に、型表面が少なくとも接着剤の薄い膜で覆われていれば、型表面上を流れる接着剤の大部分の間の濡れ角度は小さく、典型的に90度より十分に小さい。その結果、ある形状の周りを流れる接着剤は、当該形状の表面のある点にまず集合し、接着剤の2つの合流部分の間には空気は取込まれない。
【0040】
本発明のさらなる実施例において、スペーサだけではなく、ウェハスタックの他の要素もプラスチック材料で形成され、形状複製処理によって製造される。このような他の要素は特に、機能的要素および光学的機能要素(回折および/または屈折レンズ)自身を保持するウェハである。プラスチック材料は、樹脂、エポキシ、または熱可塑性材料であり得、好ましくは硬化可能、特に紫外線硬化可能である。
【0041】
選択されるプラスチック材料は、たとえばウェハスタックおよびそれが搭載される印刷回路のリフローはんだ付けを可能とするために、約260℃までの温度に耐えるように設計されることが好ましい。
【0042】
その結果、ウェハ基板に用いられる通常のガラス材料をプラスチック材料で置換することによって、同じまたは同様の処理によって異なる種類のウェハを製造することができ、製造処理が容易となり、使用される工具および設備の数が減少する。
【0043】
さらなる好ましい実施例は、従属特許請求項から明らかである。方法請求項の特徴を装置請求項の特徴と組合せてもよく、その逆も同様である。
【0044】
添付の図面に概略的に示される好ましい例示的な実施例を参照して、本発明の主題を以下の説明においてより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】原型の上面図である。
【図2】原型の断面の横断面図である。
【図3】原型で形作られた工具を伴った、原型の断面の横断面図である。
【図4】複製材料を伴った、工具の断面の横断面図である。
【図5】複製材料が工具とプレートとの間に形作られた状態の、工具の断面の横断面図である。
【図6】得られたスペーサの断面の横断面図である。
【図7】スペーサの立面図である。
【図8】スペーサの細部の横断面図である。
【図9】ウェハスタックの細部の横断面図である。
【図10】原型のさらなる実施例の横断面図である。
【図11】スペーサの対応する細部の横断面図である。
【図12】スペーサの対応する細部の立面図である。
【図13】連続したすなわち接続されたチャネルと堆積された接着剤の滴とを有するスペーサの立面図および横断面図である。
【図14】接続されていない溝またはチャネルを示す図である。
【図15】開口部に関連する機能を有さず、スペーサの接続されていない溝またはチャネルを示す図である。
【図16】空気および余分な接着剤の溝への流れを示す図である。
【図17】深い溝を有し、したがって反りにくいスペーサウェハを示す図である。
【図18】本発明の好ましい実施例におけるスペーサウェハの1つの切出されたスペーサ要素を示す図である。
【図19】本発明の好ましい実施例における1つの切出されたウェハスタック要素を示す図である。
【図20】接着剤の二段階の塗布を含む、スペーサウェハを複製するための処理ステップを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
図面で使用される参照符号およびそれらの意味は、参照符号のリストに要約して列挙する。原則として、図面において同じ部分には同じ参照符号を付す。
【0047】
好ましい実施例の詳細な説明
図1は原型3の上面図であり、図2は原型3の断面の横断面図である。原型3は空洞23を含み、スペーサウェハ製造処理中に生じる収縮を補償するために何らかの寸法(x,y,z)が拡大されることを除いて、最終的なスペーサウェハと本質的に同じ形状を有する。典型的に、スペーサウェハの高さまたは厚さが特定の高さを超えない限り、ウェハの高さ(z寸法)における収縮のみを補償すればよく、平面(xおよびy寸法)内の収縮は無視することができる。たとえば特定の材料について1mmを上回る、より厚いスペーサウェハについては、硬化中または硬化後にウェハが反る可能性がある。原型3は、金属もしくはガラスまたは他の材料からなる高精度に機械加工された部品であり得る。スペーサウェハを製造する現在の目的から、原型は、スチールまたはガラスで原型スペーサウェハを製造し、次いでそれをスチールまたはガラスからなる平坦な表面に接着することによって作製されることが好ましい。原型は、成形工具製造ステップ中に成形工具2をよりよく解放するために、付着防止コーティングによって処理され得る。空洞23は垂直な側壁を有する円形として示されるが、他の形状および傾斜した壁も含み得、スペーサは対応して形成されることになる。空洞23またはスペーサウェハ上の他の特徴は、たとえば2mm〜3mm〜5mmごとに反復する格子を形成する。
【0048】
次のステップにおいて、成形工具または単純な工具2が原型3から製造される。これは、原型3の上に液体または粘性の材料を流し込むことによって行なわれる。図3は、原型3で形作られた工具2を伴った、原型3の断面の横断面図である。液体または粘性の材料が凝固すると、工具2は原型3から分離される。したがって工具2は、原型3の逆の輪郭を有する。工具2は、材料合成物で作製することができる。たとえば、ガラスのバックプレート(図示せず)を用いて工具の剛性を高めつつ、軟らかい材料を用いて原型の輪郭を形作ることができる。(ガラスに比べて)相対的に軟らかい工具材料は、PDMS(ポリジメチルシロキサン)などのプラスチックで作製することができる。
【0049】
工具が準備できた状態で、スペーサウェハ製造を開始することができる。そのために、規定量の硬化可能材料(好ましくは、エポキシ材料などの紫外線硬化可能材料)が工具2上に堆積されるか、または流し込まれる。図4は、この段階の横断面図、つまり複製材料20が加えられた状態の工具2の断面を示す。
【0050】
次いで、プレート4が工具2および複製材料20上に配置される。何らかの圧力をプレート4に加えて、複製材料20を工具2の空洞に押込む。硬化後のスペーサウェハの分離を容易にするために、スペーサ材料20に対面するプレート4の側に接着防止層5を塗布することができる。付着防止層5は、スペーサウェハについて1回のみ使用される犠牲mylar(登録商標)箔であり得る。複製材料20の紫外線硬化中にガラスプレート4に紫外線光を通過させるためにも、剛性のバックプレート4はガラスプレートであり得る。図5はこの段階の横断面図であり、複製材料20が工具2とプレート4(または、存在する場合は箔5)との間に成形された状態の工具2の断面を示す。
【0051】
スペーサウェハ材料20が工具2に均一に広げられると、サンドイッチ構造(工具2、カバープレート4、任意の箔5、およびスペーサ材料20)全体が紫外線光下に配置され、スペーサウェハ材料20を凝固させる。凝固後、トッププレート4を持上げ、新たに形作られたスペーサウェハ1からスペーサウェハ工具2を取外すことによってサンドイッチ構造を開くことができる。次いで工具2を再び充填して、次のスペーサウェハ1を製造することができる。典型的に、数ダースから数百個のスペーサウェハを1つの工具から製造することができる。1つの工具から製造されるスペーサウェハの数は、スペーサウェハおよび工具材料の適合性の関数である。経済的な理由から、工具材料とスペーサウェハ材料との良好な適合性は、工具の寿命を最大化するのに好都合である。
【0052】
スペーサウェハ1を工具から分離した後、犠牲mylar(登録商標)箔5はスペーサウェハ1に取付けられたままであってもよい。このmylar(登録商標)箔5は、保存またはさらなる処理ステップ中の保護箔として、スペーサウェハ1上に留まることができる。図6は、工具2およびプレート4の硬化および取外し後に得られるスペーサまたはスペーサウェハ1の断面の横断面図である。この例では、箔5はスペーサ1に密着した状態で示される。
【0053】
一部の場合、mylar(登録商標)箔5と工具2との間に、エポキシ材料の薄い層または薄膜が生じ得る。この薄膜は、箔5がスペーサ1から取外されるときに剥がれるか、または圧縮空気によって吹き飛ばすことができる。
【0054】
図7は、スペーサ1の立面図を示す。スペーサ1の形態は、工具複製およびスペーサ複製処理中の収縮による寸法の変化がなければ、原型3の形状によって規定される。スペーサ1は相応して複数の開口部13を含み、開口部13は、スペーサの上側表面11および下側表面12からエッジまたはエッジ領域15によって分離されている。
【0055】
本発明の好ましい実施例において、硬化中、またはより一般的な用語では凝固処理中の複製材料20の収縮挙動によって、スペーサ穴の周りの側壁が全体としてスペーサウェハ1の平均高さよりも若干高い状態で残る。この高さの差は、数マイクロメートル、たとえば1〜10マイクロメートルの範囲にあり得る。図8は、スペーサの細部の対応する横側面図である。
【0056】
スペーサウェハ穴または開口部13の周りのこの高さの増大は、スペーサウェハ1を平坦なウェハに接着する間、たとえばウェハスタック8を形成する際に明確な効果を有する。これは、ウェハスタック8の細部の横側面図を示す図9に例示される。毛管力の効果によって、スペーサ1の表面に塗布された接着剤17は、接着剤の間隙の最も薄い部分、つまりスペーサ開口部13を包囲する表面領域に引き寄せられる。したがって、接着剤はスペーサ開口部13の周りに集まり、スペーサ1と隣接する上側ウェハ6との間の、接着剤に取込まれ得る気泡18がエッジ15から押出される。その結果、開口部13を上側ウェハ6(および下側ウェハ下側ウェハ7)で覆うことによって作製されるスペーサ穴空洞が接着剤17によって封止される。本発明のさらなる好ましい実施例では、窪み16を作製するために原型3および工具2を形作ることによって、窪み16が(同様に)形成される。
【0057】
注:上側表面11および下側表面12、ならびに上側ウェハ6および下側ウェハ7は、説明を容易にするために「上側」および「下側」と表記される。より一般的な用語で、「第1」および「第2」の表面/ウェハとも表記され得る。
【0058】
空気の取込みは、主に上側ウェハ6がスペーサに接着される際の問題である。下側ウェハ7がまずスペーサ1に接着される場合は、開口部13が開けられ、接着剤がスペーサの下から開口部13に流入し、開口部13を介して空気を移動させ得る。しかし、上側ウェハ6がその後スペーサ1上に接着されると、開口部が両端で閉じられているため、空気は開口部13から流出することができない。これは、高いエッジによって生じる毛管効果が作用し、エッジ15が封止される場合である。
【0059】
図9は、一例として、開口部13によって規定される空洞の1つにおける機能的要素9も示す。実際には、典型的に開口部13の各々がこのような機能的要素9を含む。これらの機能的要素9は典型的に、光学または電子光学装置、たとえば屈折もしくは回折レンズ、受光素子、感光もしくは発光装置、撮像センサ等である。ウェハの各々について、機能的要素9は典型的に互いに同じであり、ウェハ規模の製造処理、たとえば光学素子を形成するための複製処理、または電子もしくは電子光学素子を形成するためのIC製造によって作製される。機能的要素9は、スペーサ1と組合せられる前の上側ウェハ6および/または下側ウェハ7上に配置される。図示しない追加的なウェハおよびスペーサを含み得るウェハスタック8が完成すると、ウェハスタック8は、ダイシングライン22に沿って、個々の要素、または好ましくは集積光学装置21であるウェハスタック要素19に切断される。
【0060】
図10は、複製後に、開口部13の周りに配置される図11に示すスペーサ溝25となる原型溝24を含む原型3を示す。スペーサ溝25は、好ましくはダイシングラインに沿って配置され、上側ウェハ6がスペーサ1上に配置されると余分な接着剤を集めるように機能する。スペーサ溝25は、互いにかつスペーサ1の側面に接続され得るか、または毛管力によってエッジもしくはエッジ領域15から押出された余分な接着剤および空気を集めて含む分離した塊を形成し得る。上側ウェハ6をスペーサ1上に接着するための対応する方法において、接着剤は上側表面11の選択領域にのみ塗布される。この選択的な接着剤の堆積は、たとえば(シルク)スクリーン印刷または(インクジェットプリンタのジェット印刷と同様の)噴射によって行われる。選択領域すなわち接着部位28は、開口部13とスペーサ溝25と、任意に、以下で説明する通気チャネル26との間に残された表面部位における上側表面11上に配置される。
【0061】
図12は、スペーサ1の対応する細部の立面図を示す。複数のスペーサ要素のうち4つのみが描かれている。スペーサ要素は、この後のダイシングラインに対応するスペーサ溝25によって分離されている。スペーサ要素のうち3つは、図9を参照して説明したように、上側ウェハ6をスペーサ1上に接着した後で開口部13が封止されるように、開口部13が上側表面11によって完全に包囲された状態で示される。スペーサ要素の1つは、上側表面11において、開口部13から遠ざかる通気チャネル26を含む。このような実施例は、開口部13を封止すべきでない用途において用いられる。通気チャネル26は開口部13から離れた位置に至り、ウェハスタックをダイシングする際に、たとえば切開される。通気チャネル26が切開されると、開口部13が周囲の空気に晒される。通気チャネル26は、障害物、たとえば蛇行27または狭い部分などの形状特徴を含むことが好ましい。このような障害物により、完成したチャネル26を空気が流れることが可能になるが、たとえば、ウェハスタックをダイシングする際に使用される冷却液については障害物となり、したがって液体が開口部13に入るのを防ぐ。接着剤を上側表面11に塗布する際、通気チャネル26も当然接着部位28から除外される。接着剤は、接着面28自身だけでなく、溝25の選択部分、たとえば溝25の格子の交差点29にも塗布され得る。後者の場合は、上側ウェハ6がスペーサウェハ1上に配置される際、毛管力によって接着剤が溝25から引出され、接着面28上に広がることになる。
【0062】
本発明の好ましい実施例では、各開口部13について、このような通気チャネル26が1本だけ存在する。これにより、ダイシング鋸が通気チャネル26を切り開く際に、通気チャネル26を介して水が入るのを防ぐことになる。これは、対応する量の空気を開口部13から流出させることができるような第2のチャネルがないためである。
【0063】
図12は、同じスペーサ1の一部である2つの異なる種類のスペーサ要素を一例として示すが、実際には、通常はすべてのスペーサ要素が同じ種類となる。つまり通気チャネル26を有するか有さないかのいずれかである。
【0064】
図13は、図12のような同様のチャネルまたは溝25の立面図および横断面図A−A′を示す。断面図A−A′は、溝25の交差点において溝25内または上に配置された接着剤の小滴30を概略的に示す。小滴30は、溝25に沿った他の位置、またはエッジ領域15にも塗布され得る。すべての場合において、毛管力によって、溝25から、スペーサウェハ1上に配置された別のウェハとの間の空間に接着剤が引出され、ウェハ同士の間に接着剤が広がる。この手法が機能するための前提条件は、他のウェハをスペーサウェハ1上に配置した後、接着剤が2枚のウェハの間の狭い空間または間隙と接触して間隙内に引き込まれなければならない点である。この手法が機能するためには、液体のエポキシ接着剤については、溝25と他の溝25または開口部13との距離が、およそ2mmもしくは3mmもしくは5mmでなければならない。
【0065】
図14は、分離した、すなわち接続されていない溝をスペーサに有するさらなる配置の立面図を示す。図12の交差し接合された溝25とは異なり、溝25は交わらない。溝25は、エッジ領域15における空気および接着剤の流れを制御する点で、流量制御空洞として機能する。流量制御空洞は、ウェハ表面にわたって寸法および分布が異なり得る。流量制御空洞の幅は0.05mm〜10mm、深さはたとえば0.02mm〜10mm、空洞同士の間隔は0.1mm〜10mmであり得る。
【0066】
図15に係る本発明のさらなる好ましい実施例は、開口部13を有さないウェハを基板に接着するのに用いられる。溝25は、一方で余分な接着剤が溝に集められ、他方で、取込まれた空気が溝25に集められるように、接着剤の流れを制御する。これにより、接着層の所定の接着部位28に空気が存在しないように気泡の位置を制御することが可能となる。この流量制御は、交差しかつ接合された溝によっても当然実現される。図16は、接着剤17が溝25(または開口部13)から離れた位置に配置された場合の、溝25への空気および余分な接着剤17の流れを矢印で示した横断面図を概略的に示す。
【0067】
図示した例は小滴の堆積に基づく、すなわち接着剤の1つの滴が個々に堆積されるが、本発明は、接着剤が1本の線または複数の線部分に沿って堆積される場合にも適用可能である。このような線は、直線であっても蛇行線であってもよい。
【0068】
原則として、図11から図16を参照して説明した流れの効果、形状的特徴15、16、25、および接着剤の配置は、複製処理で作製されるスペーサウェハ1だけでなく、いずれの種類のウェハにも適用可能である。しかし、複製処理によって、接着剤の流れを制御するための形状的特徴を有するスペーサウェハ1を製造することが特に容易となる。
【0069】
ウェハが後で製造処理において切断される場合は、溝25は、再度ダイシングライン22と一致して配置されることが好ましい。
【0070】
本発明のさらなる好ましい実施例では、溝25の深さは、スペーサウェハ1の厚さの少なくとも半分、または80%まで、またはそれ以上である。絶対的に、たとえば1mm〜1.5mmまたは2mmのスペーサウェハについては、ウェハを互いに保持する残りの材料の厚さが0.2mm〜0.4mm〜0.5mmとなるように、溝またはチャネル25は深いことが好ましい。図17は、このようなスペーサウェハ1の断面を概略的に示し、深い溝25は、残りの材料をメサ状スペーサ要素31として規定している。このような深い溝25を有することで、スペーサウェハ1が反ったり過度に収縮するのを防止する。ダイシングライン22を深い溝25に一致させれば、ダイシング処理によって生じる鋸の摩耗が少なくなり、ダイシング処理が簡略化され得る。
【0071】
図18は、ウェハから分離された1つのスペーサ要素31を示す。スペーサ要素31の上側表面33は、上側表面33から突出するマイクロスペーサ32を含む。突出する高さは、好ましくはおよそ20マイクロメートル、つまり10または15〜25または35マイクロメートルである。この実施例の深い溝25は深すぎるため、スペーサウェハ1を上側ウェハ6に接合する前に接着剤17を堆積することができない場合があることから、接着剤17は上側表面33に塗布されることが好ましい。マイクロスペーサ32は、上側ウェハ6がスペーサウェハ1に支えられる正確な距離を規定する。接着剤の流れに関する限り、マイクロスペーサ32は図11のエッジ15に対応し、残りの上側表面33は図11の窪み16に対応する。これらの上側表面33は、局所的な流量制御空洞33、つまり1つのウェハスタック要素19に対応する特定のメサのスペーサ領域に対して局所的な流量制御空洞であるとも考えられ得る。上側表面は、図12に示されるような1本以上の通気チャネルも含み得る。
【0072】
上側ウェハ6を有さない中間生成物が製造され、ダイシングされ得る、すなわち別個のウェハスタック要素19に切断され得る。したがって、得られるウェハスタック要素19は、(たとえば光学または電子素子を有する)下側ウェハ7およびスペーサウェハ1の切出された部分を少なくとも含む。このウェハスタック要素19は、個々に、かつ別個の後の処理において、スペーサウェハの自由上側表面によって、別の物体に接着することができる。そうすれば流量制御空洞はそれらの機能を果たすことができる。
【0073】
図19は、ウェハスタックから切出され、かつ下側ウェハ7およびスペーサ要素31の切出された部分を少なくとも含む、このような1つの切出されたウェハスタック要素19を示す。ここに示されるスペーサ要素は、スペーサ要素31の上側表面のほぼ全体を覆うが、残りの上側表面33を構成する小さな棚状部によって、当初の溝25と溝25に対応するダイシングラインとから離間されるマイクロスペーサ32を含む。この棚状部は、図9および図11に示される窪み領域16に対応する。したがって、1つ以上のマイクロスペーサ32が、第1および第2の表面11および12の少なくとも一方上に配置され、所定の距離だけダイシングライン22から離間されている。
【0074】
当然、このようなウェハスタック要素19は、図18のように形作られたスペーサとともに製造してもよい。
【0075】
図18および図19のように、マイクロスペーサ32がダイシングラインから離間されるということによって、ダイシング鋸が、スペーサウェハのまたは1つのウェハスタック要素19の上側表面(すなわちマイクロスペーサ32の上側表面)を妨害しないという追加的な利点がもたらされる。スペーサ要素31の本体に切込むダイシング鋸によって生じるギザギザのエッジは、マイクロスペーサ32の領域よりも低い残りの上側表面33の領域に限られることになる。その結果、上側表面を別の要素に接着する際に、このような理想的でないエッジが干渉することはない。棚状部の幅は、たとえば100〜300マイクロメートルであり、その高さは、図18を参照して説明したマイクロスペーサ32の高さと同様である。
【0076】
図20は、ステップa)で供給される、深い溝25などの深い特徴と、工具において対応して相対的に薄く高いスペーサ要素31とを含むスペーサウェハ1を複製するための処理ステップを例示する。これらのスペーサ要素31は、工具2の深いスペーサ要素ネガ34に対応する。深い溝25は、工具2の高い隆起35に対応する。図4に例示した複製ステップ、すなわちスペーサ材料20の小塊を工具2上に堆積して、スペーサ材料20を工具2上に広げることによって、工具2のより深い特徴34に空気が取込まれる場合がある。この理由から、本発明の好ましい変形例では、第1の堆積ステップb)において、スペーサ材料または複製材料20が工具2上に噴霧され、工具2の複製面全体を薄い層で覆う。このステップにおいて、より深い特徴34が少なくとも部分的に充填されることが好ましい。
【0077】
次の堆積ステップc)において、複製材料20が工具の上に、好ましくは工具の中央付近に配置されるか、または流し込まれる。さらなるステップd)において、矢印で示すように、プレート4が工具2を基準として工具2の方に動かされるにつれて、複製材料20が引力および/またはプレート4によって動かされて、工具2上を外側に流れる。代替的に、工具2を複製材料に浸漬させて、残りの空洞を充填してもよい。
【0078】
同じ処理は、原型3から工具2自身を作製することと、深い特徴を充填する必要があるいずれかの他の複製処理とに当然適用可能である。
【0079】
本発明の好ましい実施例において本発明を説明したが、本発明はこれに限定されず、請求項の範囲内において異なる方法で多様に具体化され、かつ実施され得ることが明瞭に理解される。
【符号の説明】
【0080】
1 スペーサ、2 工具、3 原型、4 バックプレート、5 箔、付着防止層、6 上側ウェハ、7 下側ウェハ、8 ウェハスタック、9 機能的要素、10 スペーサ本体、11 上側表面、12 下側表面、13 開口部、14 側壁、15 エッジ、16 窪み、17 接着剤、18 空気、19 ウェハスタック要素、20 スペーサ材料、21 光学装置、22 ダイシングライン、23 空洞、24 原型の溝、25 スペーサまたはウェハの溝、26 通気チャネル、27 蛇行、28 接着部位、29 交差点、30 接着剤の小滴、31 スペーサ要素、32 マイクロスペーサ、33 上側表面、34 スペーサ要素ネガ、35 隆起。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の機能的要素(9)を保持する第1のウェハ(6)と、前記第1のウェハ(6)の前記機能的要素(9)に整列される複数の機能的要素(9)を保持する第2のウェハ(7)との間にスペーサウェハを挟むことによりウェハスタック(8)を作製し、かつ前記ウェハスタック(8)を複数の集積光学装置(21)に分離することによって、集積光学装置(21)を製造するための方法において、
ウェハスタック(8)のためのスペーサウェハ(1)を製造するための方法であって、
前記スペーサウェハ(1)は、第1の表面(11)および第2の表面(12)を有するスペーサ本体(10)を含み、前記スペーサウェハ(1)は、前記第1の表面(11)に対して配置された第1のウェハ(6)と前記第2の表面(12)に対して配置された第2のウェハ(7)とを互いから一定の距離に保つように形作られ、
前記スペーサウェハ(1)は、複数の開口部(13)をさらに含み、
成形工具(2)を供給するステップと、
形状複製処理によって、前記工具(2)の形態に従って前記スペーサ(1)を成形するステップとを含む、方法。
【請求項2】
前記スペーサ(1)を成形するステップは、
スペーサ材料(20)を変形可能な状態で供給するステップと、
前記スペーサ材料(20)の形状を前記工具(2)のネガとして規定するステップと、
前記スペーサ材料(20)を固化し、それにより前記スペーサウェハ(1)を作製するステップと、
前記スペーサウェハ(1)を前記工具(2)から分離するステップとを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記スペーサ材料(20)を変形可能な状態で供給するステップは、
スペーサ材料(20)の量の少なくとも一部を噴霧によって前記工具(2)上に堆積するステップと、
任意に、スペーサ材料(20)の量の残りの部分を、流し込むかまたは浸漬することによって前記工具(2)上に堆積するステップとを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記スペーサ材料(20)の形状を規定するステップは、
前記スペーサ材料(20)を前記工具(2)と剛性プレート(4)との間に、好ましくは前記工具(2)の中心領域付近に配置するステップと、
前記プレート(4)が前記工具(2)から所定の距離のところに至るまで、前記プレート(4)と前記工具(2)とを互いの方に移動させ、好ましくは前記スペーサ材料(20)を中心領域から外側に押出すステップとを含む、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
前記プレート(4)と前記スペーサ材料(20)との間に付着防止層(5)が配置される、請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
前記第1および第2の表面(11,12)の少なくとも一方は、前記開口部(13)から前記第1および第2の表面(11,12)を分離するエッジ(15)を含み、前記スペーサ材料(20)を固化するステップは、前記エッジ(15)自身よりも前記エッジ(15)付近の領域において、前記スペーサウェハ(1)の厚さを収縮させるステップを含む、請求項2から5のうちいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
成形工具(2)を供給するステップは、形状複製処理によって原型(3)の形状に従って工具(2)を成形するステップを含む、先行する請求項のうちいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
ウェハスタック(8)の2枚のウェハを分離するためのスペーサ(1)であって、前記ウェハスタック(8)は、複数の機能的要素(9)を保持する第1のウェハ(6)と、前記第1のウェハ(6)の前記機能的要素(9)に整列される複数の機能的要素(9)を保持する第2のウェハ(7)とを少なくとも含み、前記ウェハスタック(8)は、複数の集積光学装置(21)に分離可能であり、
前記スペーサは、第1の表面(11)および第2の表面(12)を有するスペーサ本体(10)を含むスペーサウェハ(1)であり、前記スペーサウェハ(1)は、前記第1の表面(11)に対して配置された第1のウェハ(6)と第2の表面(12)に対して配置された第2のウェハ(7)とを互いに一定の距離に保つように形作られ、
前記スペーサウェハ(1)は、複数の開口部(13)をさらに備え、
前記スペーサウェハ(1)は、形状複製処理によって製造される、スペーサ(1)。
【請求項9】
前記スペーサ(1)は、硬化によって固化する材料からなる、請求項8に記載のスペーサ(1)。
【請求項10】
前記スペーサウェハ(1)は、紫外線硬化材料、特にエポキシからなる、請求項9に記載のスペーサ(1)。
【請求項11】
前記スペーサ(1)は、熱可塑性材料からなる、請求項10に記載のスペーサ(1)。
【請求項12】
好ましくは請求項1から7のうちいずれか1項に従って製造され、ウェハスタック(8)に組込まれることになるウェハ(1)であって、前記ウェハスタック(8)は、複数の機能的要素(9)を保持する第1のウェハ(6)と、前記第1のウェハ(6)の前記機能的要素(9)に整列される複数の機能的要素(9)を保持する第2のウェハ(7)とを少なくとも含み、前記ウェハスタック(8)は、複数の集積光学装置(21)に分離可能であり、
前記ウェハ(1)は、別のウェハ(6)の表面に対して配置されることになる第1の表面(11)を少なくとも有するスペーサ本体(10)を備え、
前記ウェハ(1)はさらに、少なくとも、ウェハが前記別のウェハ(6)に対して接着される際に余分な接着剤および空気のうち少なくとも一方を集めるのに好適な複数の空洞(25)を前記第1の表面(11)において備える、ウェハ(1)。
【請求項13】
前記ウェハは、前記ウェハスタック(8)の2枚のウェハを分離するためのスペーサウェハ(1)であり、
前記スペーサウェハ(1)は、第1の表面(11)および第2の表面(12)を有するスペーサ本体(10)を備え、前記スペーサウェハ(1)は、前記第1の表面(11)に対して配置された第1のウェハ(6)と第2の表面(12)に対して配置された第2のウェハ(7)とを互いに一定の距離に保つように形作られ、
前記スペーサウェハ(1)は、複数の開口部(13)をさらに備え、
前記第1および第2の表面(11,12)の少なくとも一方は、前記開口部(13)から前記表面(11,12)を分離するエッジ領域(15)を含み、前記スペーサウェハ(1)の前記エッジ領域(15)における厚さは、前記エッジ領域の周りの表面位置(16,25)における前記スペーサウェハ(1)の厚さを上回る、請求項12に記載のウェハ(1)。
【請求項14】
前記表面(11)は、前記エッジ領域(15)に対する窪み(16)を形成する、請求項13に記載のウェハ(1)。
【請求項15】
前記エッジ領域(15)と前記エッジ領域(15)の周りの表面位置とにおける厚さの差は、1〜10マイクロメートルの範囲にある、請求項14に記載のウェハ(1)。
【請求項16】
余分な接着剤および空気のうち少なくとも一方を集めるのに好適な前記空洞(25)は、開口部(13)同士の間の前記第1および第2の表面(11,12)の少なくとも一方上に配置され、かつ前記エッジ領域(15)によって前記開口部(13)から分離されたスペーサ溝(25)である、請求項13から15のうちいずれか1項に記載の、ウェハスタック(8)の2枚のウェハを分離するためのウェハ(1)。
【請求項17】
前記スペーサ溝(25)は、前記ウェハスタック(8)を個々の装置(21)に分離するためのダイシングライン(22)と一致する、請求項13から16のうちいずれか1項に記載のウェハ(1)。
【請求項18】
前記スペーサ溝(25)の深さは、前記スペーサ(1)の高さの少なくとも50%〜80%または90%であり、前記ウェハ(1)は、好ましくは形状複製処理によって製造される、請求項16または17に記載のウェハ(1)。
【請求項19】
前記スペーサ(1)の表面(11,12)において形作られ、前記開口部(13)から、それぞれの前記開口部(13)から離間された前記表面の位置に至る通気チャネル(26)を備える、請求項8から11または13から18のうちいずれか1項に記載のスペーサウェハ(1)。
【請求項20】
前記通気チャネル(26)は、前記通気チャネル(26)中の材料の流れを妨害する障害物を含む、請求項19に記載のスペーサウェハ(1)。
【請求項21】
前記第1および第2の表面(11,12)の少なくとも一方上に配置され、かつ前記ダイシングライン(22)から所定の距離だけ離間された1つ以上のマイクロスペーサ(32)を備える、請求項17から20のうちいずれか1項に記載のスペーサウェハ(1)。
【請求項22】
請求項8から21のうちいずれか1項に記載のスペーサまたはウェハ(1)を備える、ウェハスタック(8)。
【請求項23】
前記ウェハスタック(8)を複数のウェハスタック要素(19)に分離することによって、請求項22に記載のウェハスタック(8)から製造される、ウェハスタック要素(19)。
【請求項24】
少なくとも2枚のウェハ(1,6)を結合するための方法であって、
第1のウェハ(1)を供給するステップを含み、前記第1のウェハ(1)は、複数の流量制御空洞(25)と、前記第1のウェハ(1)の少なくとも第1の表面において複数の高い領域(15)とを含み、さらに、
他のウェハ(6)を供給するステップと、
前記第1のウェハ(1)および前記他のウェハ(6)のうち少なくとも一方上に結合剤(17)を堆積するステップと、
前記結合剤(17)を間に介在させた状態で、前記第1のウェハ(1)の前記第1の表面(11)を前記他のウェハ(6)に近接させて配置し、それにより前記結合剤(17)を前記流量制御空洞(25)から前記高い領域(15)に毛管力によって流れさせ、かつそれにより前記ウェハ(1,6)の間に取込まれた空気を前記高い領域(15)から前記流量制御空洞(25)に移動させるステップと、を含む方法。
【請求項25】
前記第1のウェハ(1)および前記他のウェハ(6)が互いに近接して配置される際に、前記第1のウェハ(1)の前記流量制御空洞(25)内に、または前記流量制御空洞(25)の位置に対応する位置において前記他のウェハ(6)上に、前記結合剤(17)を堆積するステップを含む、請求項24に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13−14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20a)】
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【図20b)】
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【図20c)】
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【図20d)】
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【公表番号】特表2011−508900(P2011−508900A)
【公表日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−538307(P2010−538307)
【出願日】平成20年12月16日(2008.12.16)
【国際出願番号】PCT/CH2008/000530
【国際公開番号】WO2009/076786
【国際公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【出願人】(505175489)
【氏名又は名称原語表記】HEPTAGON OY
【Fターム(参考)】