説明

スポットめっき装置

【課題】めっき位置精度を向上させ、かつ、キャリア穴が支持体ドラムの突起部から外れるといったトラブルの発生を防止し、高品質の部分めっきを可能とするスポットめっき装置を提供する。
【解決手段】スポットめっき装置において、支持体ドラム10は、金属又はセラミックにて作製した、複数の突起部13aと複数のめっき孔13bとを外周部に有した円筒状のドラム本体13と、ドラム本体13を装置本体に設けた回転支持軸に回転自在に装着するための軸受け部12と、を有する。また、支持体ドラム10を駆動ロール18にて当接駆動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端子、コネクタ等の電子部品の製造に用いる長尺の金属条に貴金属をスポットめっきするスポットめっき装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、端子、コネクタ等の電子部品の製造に用いられる長尺の金属条には、耐食性の向上、半田付け性の向上、接触抵抗の劣化防止を目的として、貴金属めっきが施される。めっきを施す貴金属としては、金が主として用いられているが、金が高価であることから、必要部にのみ線状にめっきを施すストライプめっき、必要なエリアのみにめっきを施すスポットめっきが行われている。図8及び図9に、従来のスポットめっき装置の一例を示す。
【0003】
本例にて、スポットめっき装置1は、樹脂製の支持体ドラム10と、射出機構20と、めっき液が溜められためっき槽5と、を備えている。
【0004】
スポットめっきを施す長尺の金属条3は、供給側装置(図示せず)から樹脂製の支持体ドラム10へと供給され、支持体ドラム10の入口側ガイドロール15aに案内されて支持体ドラム10の上方外周部に巻回され、その後、支持体ドラム10の出口側ガイドロール15bに案内されて巻取側装置30に巻き取られる。支持体ドラム10は、耐食性、電気絶縁性、適度な強度、取り扱い重量を考慮し、上述のように、樹脂製のドラムが用いられる。
【0005】
金属条3は、その長手方向に複数のキャリア穴3aが穿設されており、支持体ドラム10のドラム本体13の外周面に設けられた突起部13aに係合する。
【0006】
上記構成にて、ドラム本体13の外周部に沿って搬送される金属条3に、ドラム本体13に形成されためっき孔13bを介して射出機構20からめっき液を供給することにより金属条3にスポットめっきが施される。
【0007】
前記支持体ドラム10は、外周部に回転自在に当接した回転支持ロール(図示せず)により担持される。
【0008】
図10(a)に、スポットめっき7が施された金属条3を示す。スポットめっき7が施された金属条3は、その後、図10(b)に示すように、プレス加工により所定形状に打ち抜かれて、製品となる。
【0009】
以下に、スポットめっきの位置制御に関して説明する。
【0010】
その後の工程であるプレス加工において所定必要部に金めっきが施されているプレス加工材を製造するためには、ストライプめっきの場合は、幅方向の金めっき位置のみ制御すれば良く、その幅方向位置の基準は材料幅方向の端部であるが、スポットめっきでは幅方向に加えて長さ方向の位置も一致させる必要がある。そのため、スポットめっきにおいては、スポットめっき前の金属材料に、スポットめっき位置の基準点として、キャリア穴3aを1次プレスで穿設する。このキャリア穴3aを基準に所定部に金等のスポットめっきし、更に、2次プレスを行うことにより、スポットめっきが施された金属端子等が製造される。
【0011】
スポットめっきを施す位置は、樹脂製支持体ドラム外周面に設けられた突起部13aとスポットめっき孔13bとの相対位置関係により決まる。そして、所定の位置に正確にめっきされるためには、金属条3に穿設されたキャリア穴3aがスポットめっきの樹脂製支持体ドラム10上の突起部13aにきちんと係合し、ずれが生じないことが要求される。
【0012】
キャリア穴3aの直径は、突起部13aに係合させるため、突起部13aの直径より大きく穿設されるが、これらの直径の差が大きいと、支持体ドラム外周面に設置されためっき孔13bと金属条3との間にずれが生じ、めっき位置精度が悪くなる。また、めっき後の2次プレスにおいてもプレス位置精度が低下する。
【0013】
一方、位置精度を向上させるため、キャリア穴3aと突起部13aの直径の差を小さくし過ぎると、キャリア穴3aが突起部13aに係合しずらくなる。キャリア穴3aが突起部13aに係合せず、外れたまま、支持体ドラム10に巻回されると、所定部にめっきが施されず、また、金属条3に折れが発生することもあり、装置の運転を中断しなければならない。
【0014】
金属条3のキャリア穴3aがスポットめっきの樹脂製支持体ドラム10上の突起部13aに係合せず、外れてしまう原因として、樹脂製支持体ドラム10とめっきを施す金属条3との熱膨張差もある。
【0015】
すなわち、めっき液を加温せずに支持体ドラム10に金属条3を巻回させ、キャリア穴3aが突起部13aにきちんと係合することが確認できても、めっき液を50〜60℃程度に加温し、装置を運転し、支持体ドラム10、金属条3も加温された状態となると、キャリア穴3aが突起部13aにきちんと係合せず、外れてしまうことがある。
【0016】
これは、加温により樹脂製支持体ドラム10が熱膨張し、突起部13aのピッチが広くなり、そして、同時に金属条3も加温され、熱膨張するが、金属条3の熱膨張量は、樹脂性支持体ドラム10に比べてかなり小さく、キャリア穴3aと突起部13aのピッチに差が生じてしまうためである。
【0017】
樹脂製支持体ドラム10及び金属条3は、両者が均一にかつ再現性良く熱膨張すれば、熱膨張後のピッチが一致するように、樹脂製支持体ドラム10の突起部13aのピッチを設計すれば良いが、実際には、均一に再現性良く熱膨張を管理することはできない。
【0018】
そこで、上記キャリア穴3aが突起部13aから外れるトラブル防止するには、突起部13aとキャリア穴3aとが係合しやすいよう、突起部先端のテーパ形状を工夫したり、キャリア穴3aの直径を大きくしたり、或いは、突起部13aの直径を小さくしていた。
【0019】
しかし、この直径の差を大きくする対応では、金属条3と支持体ドラム10の相対位置は、キャリア穴3aと突起部13aの直径の差に見合うだけばらつき、結果として、スポットめっき位置もばらついてしまう。その結果、スポットめっき必要部位に対して、このばらつきを考慮し、余分にめっきを施す必要が生じ、金の使用量が大きくなってしまう。
【0020】
また、電子部品の小型化により、金めっきが必要とされる部位も小さくなり、狭ピッチ化してきた。この場合、めっきの必要面積に対し、実際にめっきされる面積の比率が高くなり、結果として、無駄にめっきされる領域がさらに増えてしまう。
【0021】
特許文献1は、図8及び図9に示すように、樹脂製支持体ドラム10の熱膨張を防止するために、樹脂製のドラム本体13の両側に形成したリング部材11を、剛性を有するステンレス製のホイルとして配置し、該ホイル11にて樹脂製ドラム本体13を挟持する技術を開示している。
【0022】
しかしながら、本発明者らの研究実験の結果によると、±1mm程度の誤差は依然として生じ、従って、2mm□の部位をめっきするには、誤差を考慮すると4mm□の部位をめっきしなければならず、必要量の4倍の面積めっきを施さなければならないことになる。
【特許文献1】特開2000−87289号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
そこで、本発明の目的は、めっき位置精度を向上させ、かつ、キャリア穴が支持体ドラムの突起部から外れるといったトラブルの発生を防止し、高品質のスポットめっきを可能とするスポットめっき装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0024】
上記目的は本発明に係るめっき装置にて達成される。要約すれば、本発明は、キャリア穴が形成された長尺の金属条を、前記金属条のキャリア穴に係合する複数の突起部と複数のめっき孔とを外周部に有した支持体ドラムの外周部に沿って巻回し、前記めっき孔を介してめっき液を供給することにより前記金属条にスポットめっきするスポットめっき装置において、
前記支持体ドラムは、金属又はセラミックにて作製した、複数の突起部と複数のめっき孔とを外周部に有した円筒状のドラム本体と、前記ドラム本体を装置本体に設けた回転支持軸に回転自在に装着するための軸受け部と、を有し、
前記ドラム本体の円筒状外周面には、前記ドラム本体に形成されためっき孔と合致した透孔が形成された厚さ0.5〜3.0mmの弾性を有するクッション部材が配置され、
前記支持体ドラムを金属で作製した場合には、前記ドラム本体の前記クッション部材が配置された外周面以外の領域は、フッ素系樹脂がコーティングされ、そして、
前記支持体ドラムは、該支持体ドラムの外周部に当接して回転する駆動ロールにより駆動力が伝達されることを特徴とするスポットめっき装置である。
【0025】
本発明の一実施態様によると、支持体ドラムは、ステンレスにて作製される。
【0026】
本発明の他の実施態様によると、前記軸受け部は、セラミックベアリングを備えている。
【0027】
本発明の他の実施態様によると、前記クッション部材は、複数の部材から成り、前記ドラム本体の円筒状外周面に貼り付けられる。好ましくは、前記クッション部材は、天然ゴム、合成ゴム又はシリコンゴムである。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、スポットめっき位置精度を向上させ、かつ、キャリア穴が支持体ドラムの突起部から外れるといったトラブルの発生を防止し、高品質のスポットめっきを可能とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明に係るスポットめっき装置を図面に則して更に詳しく説明する。
【0030】
実施例1
図1〜図4に、本発明に係るスポットめっき装置1の一実施例の概略構成を示す。本実施例にて、スポットめっき装置1は、金属条3に、金めっきを施す装置として説明するが、これに限定されるものではない。
【0031】
(めっき装置の全体構成)
図1〜図3を参照すると、本実施例のスポットめっき装置1は、従来の装置と同様に、支持体ドラム10と、噴出機構20と、めっき液が溜められためっき槽5と、を備えている。
【0032】
スポットめっきを施す長尺の金属条3は、供給側装置(図示せず)から支持体ドラム10へと供給され、支持体ドラム10の入口側ガイドロール15aに案内されて支持体ドラム10の上方外周部に巻回され、その後、支持体ドラム10の出口側ガイドロール15bに案内されて巻取側装置30に巻き取られる。
【0033】
金属条3は、その表面にスポットめっきが施される細長い帯状の金属製部材であり、銅合金、ステンレス等の金属製材料から形成されている。また、金属条3の長手方向には、詳しくは後述する支持体ドラム10の外周面に設けられた複数の突起部13aと嵌合する複数のキャリア穴3aが穿設されている。また、金属条3は、図示しない電極と接続されて陰極とされる。
【0034】
(支持体ドラム)
支持体ドラム10は、上述のように、その外周部に金属条3を密着させた状態で巻回して支持する。支持体ドラム10用の材料に対しては、低熱膨張性、耐食性、電気絶縁性、適度な強度、軽重量化、が要求される。
【0035】
上記した金属条3のキャリア穴3aが、支持体ドラム10に設けられた突起部13aから外れるトラブルを解決するためには、支持体ドラム10に用いる材料に対して、低熱膨張(めっきする金属材料に熱膨張が近いこと)であることが要求される。樹脂は、熱膨張以外の要求は満たすものの、熱膨張係数が大き過ぎるために、上記トラブルが発生しやすく、キャリア穴3aと突起部13aの直径の差を大きくせざるを得ない。そのため、めっき位置精度を向上させることが困難である。
【0036】
本発明においては、支持体ドラム10の材質として金属、好ましくは耐食性を考慮してステンレスを用いる。
【0037】
なお、この支持体ドラム10の材質を樹脂から金属、好ましくはステンレスに変更すると、支持体ドラム本体の重量が大きくなり、従来のように、支持体ドラム10を回転支持ロールで支える場合、回転抵抗が大きくなり、金属条3のキャリア穴3aが支持体ドラム10の突起部13aにスムーズに係合することの妨害になってしまう。
【0038】
そのため、本発明においては、回転支持ロールを用いず、転がり軸受け機構とした。すなわち、ドラム支持体13は、図4を参照すると理解されるように、外周面が円筒形とされ、中心部に軸受け部12を備けた。軸受け部12は、ドラム本体13の一端側に形成した環状の支持部12aによりドラム本体13と一体とされる。
【0039】
なお、本実施例では、図示するように、円筒状とされるドラム本体13の両端に一体に鍔状のリング部材11が形成されているが、このリング部材11は設けなくとも良い。
【0040】
支持体ドラム10の軸受け部12は、転がり軸受け方式とされ、軸線方向に中心穴12bが形成され、中心穴12bの両端部に軸受け部材12cが配置される。軸受け部材12cとしては、転がりベアリングを用いた。また、ベアリング12cには絶縁性を考慮し、セラミックベアリングを採用した。セラミックベアリング12cは、一般に市販されているものを好適に使用し得る。
【0041】
支持体ドラム10は、この軸受け部材12cを、めっき装置本体100に固定された支持軸101に嵌合することにより、めっき装置本体100に対して回転自在に担持される。
【0042】
支持体ドラム10は、本実施例の上記軸受け構成により、回転精度が格段に向上する。
【0043】
ドラム本体13は、図3に図示するように、外周面には円周方向に複数の突起部13a及び複数のめっき孔13bが設けられている。突起部13aは、金属条3に設けられたキャリア穴3aと嵌合して金属条3を支持体ドラム表面の所定の位置に正確に定着させると共に、金属条3が巻取側装置30により巻き取られることにより、支持体ドラム10を回転させる。
【0044】
突起部13aは、図3(b)に示すように、円柱の先端部が円錐状に窄まったような形状をしている。この様な形状としたことにより、金属条3が支持体ドラム10に巻回される際に突起部13aがキャリア穴3aにスムーズに嵌合されると共に、支持体ドラム10から外れる際にもスムーズな脱離を可能とする。
【0045】
突起部13aは、キャリア穴3aに絶えず嵌脱が繰り返されるので摩耗して変形することがないように硬質材料で、かつ、めっき液と接触するのでめっきがされないよう絶縁性材料で形成することが好ましく、例えば、セラミック等が好ましい。また、突起部13aは、必ずしもキャリア穴3aと1対1で対応して設置しなくてもよい。
【0046】
また、めっき孔13bは、金属条3の表面にめっき液を接触させるためにドラム本体13の表面に開口して設けられた透孔であり、金属条3に施すめっきの形状及び大きさに対応している。
【0047】
めっき孔13bは、ドラム本体13の表面にピッチ幅5〜30mm程度の間隔で複数設けられている。めっき孔13bは、ドラム本体13の表面に均等に配置されることが必要であるためピッチ幅(P)が均等になるようにドラム本体13の直径を変化させて調整する。すなわち、めっき孔13bのピッチ幅(P)、めっき孔13bの数(整数)(n)、ドラム本体13の直径(D)とすると、「Pn=Dπ」となるようにDを設定する。
【0048】
従って、金属条3に異なるサイズのスポットめっきを施す場合には、支持体ドラム10を交換することにより対応する。
【0049】
本発明にて支持体ドラム10の材質として金属、好ましくはステンレスを用いるが、金属は、電気絶縁性がなく、そのままの使用では、金属、例えばステンレス製のドラム本体13に金めっきがついてしまい、金スポットめっきのめっき厚が制御できない。また、高価な金が、金属、例えばステンレス製のドラム本体に電着し無駄になるなどの不具合が発生する。
【0050】
そこで、金属、好ましくはステンレスをドラム形状に加工した後、表面にフッ素系樹脂をコーティングする。樹脂コーティングは吹き付けや浸漬のどちらでも良いが、何れもコーティング膜厚を精度良く制御することは難しい。この膜厚のバラツキは、ドラムの外周のバラツキとなり、樹脂の熱膨張の場合と同じように、避けなければならない。
【0051】
そこで、本実施例によれば、図3(a)に示すように、ドラム本体13のクッション14が貼付けられた外周面にはフッ素系樹脂のコーティングは行わない。ドラム本体13の外周面のクッション14は、めっき孔13bと対応した透孔(めっき孔)14b(図4)が同じピッチ幅Pで形成され、厚さ0.5〜3.0mmとされ、弾性を有したものであり、ドラム本体13に貼り付けられる。また、このクッション14は、金属条3との隙間にめっき液が浸入し、めっきがにじむのを防止する。
【0052】
このクッション14の厚さが薄すぎるとクッションの役目を果たさず、逆に厚すぎるとクッションの変形(所謂、「めっき液の加温による熱膨張や金属条の押し付け力による収縮」)が大きく、スポットめっきのピッチ精度が悪くなる。従って、厚さ0.5〜3.0mmが好ましい。また、ドラム本体13の表面に設けられるめっき孔13bのピッチ幅(P)はこのクッション14の厚さも考慮して決定される。
【0053】
尚、クッション14の材質としては、例えば、天然ゴム、合成ゴム、シリコンゴム等がある。
【0054】
クッション14は、連続した帯状体をドラム本体外周面に貼り付けることも可能であるが、図3(a)に示すように、所定の長さ(L)とされるクッション分割体14aをドラム本体13の外周面に周方向に沿って密に配置して、貼着し、その隙間には硬化性のシリコン接着剤などを充填する構成とすることができる。このとき、長さ(L)としては、5〜50mmが適当である。
【0055】
なお、支持体ドラム10の材質はフッ素樹脂コーティングされた金属に代わり、高価ではあるが、セラミックを用いることもでき、その場合、コーティングは不要である。
【0056】
このようにして、精度良い外周寸法を持ち、且つ、低熱膨張、耐食性、電気絶縁性、適度な強度を兼ね備えた支持体ドラム10を得ることができる。
【0057】
(回転駆動ロール)
本実施例によれば、支持体ドラム10は、その突起部13aが金属条3に設けられたキャリア穴3aと嵌合しており、従って、金属条3が巻取側装置30により巻き取られるその張力により支持体ドラム10を回転させる。
【0058】
しかしながら、本実施例によれば、支持体ドラム10の回転抵抗減のために以下の方法を併用する。
【0059】
つまり、上述のように、支持体ドラム自体の回転抵抗を小さくするために、その中心に軸受け部12を設け、ベアリング12cを備え付けたが、後述するように、金属条押圧機構40(図1)により支持体ドラム10は下方へと押し付けられており、その押し付けによるバックアップ抵抗のために支持体ドラム10にはまだ回転抵抗が残る。
【0060】
そこで、支持体ドラム10に回転駆動を付加できる構成とするのが好ましい。
【0061】
本実施例によれば、支持体ドラム10の外周部に、即ち、図示するようにリング部材11をドラム本体13に形成した場合には、リング部材11の外周面に回転駆動ロール18を押し付け支持体ドラム10に回転駆動を与える。勿論、支持体ドラム10にリング部材11を設けない構成とした場合には、円筒状の支持体ドラム10、即ち、ドラム本体13の外周部に直接回転駆動ロール18を押し付け支持体ドラム10に回転駆動を与える。
【0062】
回転駆動ロール18は、材質としては耐食性、耐摩耗性、耐すべり性を考慮し、シリコンゴム、フッ素ゴム等で作製するのが好ましい。
【0063】
回転駆動ロール18にはモータ(図示せず)で回転駆動を伝達する。また、めっき装置1から送出された金属条3の速度変動をセンサーで感知し、これをモーターにフィードバックすることにより同期させることもできる。
【0064】
また、回転駆動ロール18より支持体ドラム10に伝達する駆動力は、巻取側装置30から伝達される駆動力より大きな駆動力を与えることもできる。
【0065】
回転駆動ロール18の駆動力が巻取側装置30の駆動力に比べて小さい時は、回転駆動ロール18は金属条3の搬送のサポートとして機能し、金属条3のキャリア穴3aが支持体ドラム10に設置された突起部13aを引っ張ることとなる。一方,回転駆動ロール18の駆動力が巻取側装置30の駆動力より大きいときは、支持体ドラム10に設置された突起部13aが金属条3のキャリア穴3aを引っ張ることとなる。
【0066】
このように、回転駆動ロール18の駆動力を自在に制御可能とすることにより、以下のような副次的効果も期待できる。
【0067】
すなわち、支持体ドラム10と金属条3の熱膨張量に差がある場合、熱膨張量が大きい方に伝達される駆動力を、他方に伝達される駆動力より大きくする。このことにより、キャリア穴3aが突起部13aに係合しやすくなり、外れにくくなる効果が期待できる。
【0068】
例えば、支持体ドラム10に用いた材料(例えば、ステンレス)の熱膨張量が金属条3より大きければ、支持体ドラム10に設置された回転駆動ロール18の駆動力を巻取側装置30の駆動力より大きくする。また、金属条3の方の熱膨張量が大きい場合は、巻取側装置30の駆動力を回転駆動ロール18の駆動力より大きくする。
【0069】
以上の制御により、金属条3のキャリア穴3aが支持体ドラム10の突起部13aに係合しやすくなり、外れにくくすることができる。
【0070】
この効果について、図6を参照して以下に説明する。
【0071】
図6(a)、(b)は、支持体ドラム10の熱膨張量が金属条3の熱膨張量より大きい場合のキャリア穴3aと突起部13aの位置関係を示した図である。
【0072】
図6(a)は、支持体ドラム10側に伝達される回転駆動ロール18の駆動力が巻取側装置30の駆動力より大きく制御したときの例で、この場合、突起部13aがキャリア穴3aを引っ張ることとなるので、突起部13aは、図6(a)右側にて、キャリア穴3aと右端にて接することとなる。そのため、この位置のキャリア穴3aと突起部13aの左側は、直径の差から隙間(ギャップ)が生じる。
【0073】
支持体ドラム10と金属条3はめっき液からの加温により熱膨張するが、その膨張量の差により、キャリア穴3aのピッチと突起部13aのピッチに差が生じてしまう。すなわち、熱膨張量の大きい、支持体ドラム10に設置された突起部13aのピッチがキャリア穴3aのピッチに比べて広くなる。すると、ドラム回転先端側である図6(a)右側においては、突起部13aとキャリア穴3aは右側端で接触するがドラム後端側(図6(a)左側)では上記ピッチの差により、突起部13aは、キャリア穴3aに比べて相対的に左側に寄る。
【0074】
図6(a)において、左側はキャリア穴3aが突起部13aに係合し始める位置であるが、熱膨張量の差による相対位置の「ずれ」が、直径差から生じる図6(a)右側の「隙間(ギャップ)」に比べて小さければ、キャリア穴3aは突起部13aとうまく係合し、キャリア穴3aは突起部13aから外れにくい状態となる。
【0075】
一方、図6(b)は、支持体ドラム10の膨張が金属条3より大きく、そして巻取側装置30の駆動力の方が回転駆動ロール18の駆動力より大きいときの例である。この場合は、キャリア穴3aが突起部13aを引っ張ることとなり、キャリア穴3aと突起部13aは、支持体ドラム10の先端(図6(b)右側)にて左側で接し、右側に直径の差による隙間(ギャップ)が生じることになる。
【0076】
このときドラム後端では、熱膨張量の差により、前記と同様に、キャリア穴3aと突起部13aのピッチに差が生じ、突起部13aはキャリア穴3aに比べて相対的に左側に寄る。しかし、ドラム先端側(図6(b)右側)において、突起部13aと接したキャリア穴3aの左側は隙間がないため、ドラム後端(図6(b)左側)において、キャリア穴3aは突起部13aに係合しにくく、外れやすくなる。
【0077】
上記の例と逆に、金属条3の熱膨張が支持体ドラム10の膨張より大きい場合にも、同様に、突起部13aとキャリア穴3aとの熱膨張によるピッチ差を考慮し、駆動力の大きさの相対関係を適正に制御することにより、キャリア穴3aは突起部13aと係合しやすくなり、外れにくくなる。
【0078】
以上のように、駆動力の相対関係の制御により、キャリア穴3aを突起部13aから外れにくくすることができる。
【0079】
(めっき液射出機構)
次に、めっき液射出機構について説明する。
【0080】
本実施例によれば、めっき液射出機構20は、支持体ドラム10の内側、即ち、ドラム本体13と軸受け部12との間の環状領域であって且つ支持体ドラム10の上方部に配置される。
【0081】
めっき液射出機構20は、ドラム本体側へ向かってめっき液を噴出させ、ドラム本体13及びクッション14のめっき孔13b、14bを介してめっき液を金属条3の表面に接触させると共に、噴出されためっき液に電流を供給する電極の役割をなす。
【0082】
噴出機構20は、図4に概略示すように、2つの半円盤状の射出板21、21が内側に間隙Gを形成するように互いに近接した状態でボルトとナット(図示せず)などにより固着され、そして、めっき槽5に溜められためっき液が供給ポンプ6により一方の射出板21に供給され、図示されないノズルからめっき孔13b、14bを介して金属条3のスポット部に噴射される。
【0083】
射出板21は、導電可能な金属製材料で形成され、電極23が取り付けられており、この電極23と2つの射出板21、21で構成される間隙内に設置されたアノード(Pt線)23aが通電可能とされている。
【0084】
(押圧機構)
本実施例においては、さらに、押圧機構40が設けられている。この押圧機構40は、支持体ドラム10に巻回された金属条3を外側方向から、所定の張力で張架されたベルト41により押圧してドラム本体13、即ち、クッション14に密着させるものである。
【0085】
図1及び図2に示すように、押圧機構40は支持体ドラム10の上部に位置し、所定位置に配置された上部ローラ47a、47a及び下部ローラ47b、47bで案内されるベルト41が取り付けられている。下部ローラ47b、47bは上下に移動可能とされており、金属条3を支持体ドラム10に巻回するときには上部方向に移動し、金属条3を押圧するときには下部方向へ移動してドラム本体外周面のクッション14に密着させる。また、ベルト41の張力を調整するために上下方向に移動可能なプーリ45が設けられている。
【0086】
ベルト41は軟質性の材質、例えば塩化ビニル等が用いられ、金属条3と接する側のベルト41には、金属条3とベルト41の間に入り込んだめっき液を逃がすために所定の間隔で幅方向に溝41aが設けられている。
【0087】
金属条3とベルト41の間にめっき液が入り込むとベルト41がスリップし易くなり、その際、金属条3も支持体ドラム10からズレてしまい正確なめっきができなくなってしまう。そこで、ベルト41の金属条3と接触する面に溝41aを設け間に入り込んだめっき液を溝41aに沿って逃がすことによりベルト41のスリップを防止する。
【0088】
溝41aの形状は直線形状に限るものではなく、金属条3とベルト41の間に入り込んだめっき液を逃がすためであればどんな形状でもよい。例えば、タイヤのトレッドパターンのような溝であってもよい。
【0089】
(めっき装置の作動説明)
次に、上記構成とされる本実施例のめっき装置1の作動態様について説明する。
【0090】
先ず、下部ローラ47b、47bを上部方向に移動し、長尺の金属条3をガイドローラ15a、15bを介してドラム本体13に設けられた突起部13aにキャリア穴3aを嵌合させて支持体ドラム10に巻回し、金属条3の端部を巻取側装置30に係止する。
【0091】
そして、下部ローラ47b、47bを下部方向に移動させて金属条3を外側方向から押圧し、ドラム本体13表面に貼り付けられたクッション14上に密着させる。
【0092】
金属条3の巻回が完了したらめっき槽5に溜められためっき液を供給ポンプ6で2つの円盤状の射出板21、21により形成された間隙G内に一方の射出板21から供給し、射出板21、21の外周部の間隙からめっき液を勢い良く噴出させる。そして、射出板21に取り付けられた電極23をプラスとし、金属条3に接続される図示しない電極をマイナスとして電流を通電する。このとき噴出されためっき液が金属条3と常に接触した状態となるのでめっき液を介して電流が流れ、めっき液中の金属イオンがめっき孔13bから金属条3の表面に付着しめっきが行なわれる。噴出されためっき液はめっき槽5内に落下し再び供給ポンプ6で射出板21へ送られる。
【0093】
金属条3は、図示しないモータにより駆動される巻取側装置30により順次巻き取られ回収される。この巻取側装置30の駆動により金属条3を介して支持体ドラム10も回転する。又、本実施例によれば、回転駆動ロール18により、支持体ドラム10に駆動力が伝達される。
【0094】
従って、金属条3の巻取り速度は、金属条3がドラム本体13の表面に接触している間にめっきが完了するような回転速度で行なわれる。
【0095】
最後に、めっきが完了した金属条3は、所定の形状に打ち抜かれて(図10(b)参照)製品となる。
【0096】
従来、先に説明した特許文献1に記載の装置では、めっき位置のバラツキ(最大−最小)が、約1mmであったものが、本発明のスポットめっき装置を用いると同0.2mmとすることができ、格段にスポットめっき位置精度を向上させることができた。
【0097】
つまり、金スポットめっきの大きさは、コネクタの種類によって種々あるが、おおよそ、1mm□〜3mm□である。例として2mm□を取り上げると、図5に示すように、従来の金スポットめっき面積は、(2+1×2)×(2+1×2)=16mmとなる。
【0098】
本発明による金スポット面積は、(2+0.2×2)×(2+0.2×2)=5.76mmとなり、約1/3の金スポット面積となる。つまり、金の消費量は1/3に改善される。
【0099】
上記実施例では、金属条3に金めっきを施すものとして説明したが、金めっきの他に銀めっき、ニッケルめっきなども同様に実施し得ることは当然である。
【0100】
実施例2
図7に、本発明のスポットめっき装置の他の実施例を示す。
【0101】
本実施例のスポットめっき装置1は、図1〜図5を参照して実施例1で説明したスポットめっき装置1とは、天、地を逆とし、押圧機構40が、支持体ドラム10の下方に配置されている。その他は、実施例1のスポットめっき装置と同様の構成とされる。従って、同じ構成及び機能をなす部材には同じ参照番号を付し、実施例1の説明を援用し、ここでの再度の説明は省略する。本実施例のスポットめっき装置も、実施例1の場合と同様の作用効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】本発明に係るスポットめっき装置の一実施例の概略構成を示す斜視図である。
【図2】図1に示したスポットめっき装置の正面図である。
【図3】図3(a)は、支持体ドラムの一実施例の斜視図であり、図3(b)は、突起部の一実施例の斜視図である。
【図4】スポットめっき装置の側面断面図である。
【図5】本発明の効果を説明するための図である。
【図6】支持体ドラムに設置された突起部とキャリア穴の位置関係を示す図である。
【図7】本発明に係るスポットめっき装置の他の実施例の概略構成を示す正面図である。
【図8】従来のスポットめっき装置の概略構成を示す斜視図である。
【図9】従来の支持体ドラムの斜視図である。
【図10】図10(a)はめっきが完了した金属条の打ち抜き前の平面図であり、図10(b)は打ち抜き後の金属条の平面である。
【符号の説明】
【0103】
1 スポットめっき装置
3 金属条
3a キャリア穴
5 めっき槽
6 供給ポンプ
7 めっき部
10 支持体ドラム
11 リング部材
12 軸受け部
12c セラミックベアリング(軸受け部材)
13 ドラム本体
13a 突起部
13b めっき孔
14 クッション
14a クッション分割体
14b 透孔(めっき孔)
18 回転駆動ロール
20 噴出機構
21 射出板
23 電極
23a アノード
30 巻取側装置
40 押圧機構
41 ベルト
100 装置本体
101 回転支持軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリア穴が形成された長尺の金属条を、前記金属条のキャリア穴に係合する複数の突起部と複数のめっき孔とを外周部に有した支持体ドラムの外周部に沿って巻回し、前記めっき孔を介してめっき液を供給することにより前記金属条にスポットめっきするスポットめっき装置において、
前記支持体ドラムは、金属又はセラミックにて作製した、複数の突起部と複数のめっき孔とを外周部に有した円筒状のドラム本体と、前記ドラム本体を装置本体に設けた回転支持軸に回転自在に装着するための軸受け部と、を有し、
前記ドラム本体の円筒状外周面には、前記ドラム本体に形成されためっき孔と合致した透孔が形成された厚さ0.5〜3.0mmの弾性を有するクッション部材が配置され、
前記支持体ドラムを金属で作製した場合には、前記ドラム本体の前記クッション部材が配置された外周面以外の領域は、フッ素系樹脂がコーティングされ、そして、
前記支持体ドラムは、該支持体ドラムの外周部に当接して回転する駆動ロールにより駆動力が伝達されることを特徴とするスポットめっき装置。
【請求項2】
前記支持体ドラムがステンレスにて作製されることを特徴とする請求項1のスポットめっき装置。
【請求項3】
前記軸受け部は、セラミックベアリングを備えていることを特徴とする請求項1又は2のスポットめっき装置。
【請求項4】
前記クッション部材は、複数の部材から成り、前記ドラム本体の円筒状外周面に貼り付けられることを特徴とする請求項1、2又は3のスポットめっき装置。
【請求項5】
前記クッション部材は、天然ゴム、合成ゴム又はシリコンゴムであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかの項に記載のスポットめっき装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−283127(P2006−283127A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−104724(P2005−104724)
【出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(593148077)冨士電子工業株式会社 (7)
【Fターム(参考)】